(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-26
(45)【発行日】2022-05-10
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/534 20060101AFI20220427BHJP
A61F 13/535 20060101ALI20220427BHJP
【FI】
A61F13/534 110
A61F13/535 200
A61F13/535 100
(21)【出願番号】P 2021092999
(22)【出願日】2021-06-02
(62)【分割の表示】P 2016198983の分割
【原出願日】2016-10-07
【審査請求日】2021-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】特許業務法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】安藤 拓郎
【審査官】▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-104021(JP,A)
【文献】特開2008-284190(JP,A)
【文献】特開2005-006954(JP,A)
【文献】特開2016-112047(JP,A)
【文献】特開2001-046435(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/534
A61F 13/535
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、トップシート及びバックシートの間に配置された1枚以上の吸収性シートと、を有する吸収性物品であって、
前記吸収性シートは、
3枚の不織布シートと、
それぞれの不織布シートの間に高吸収性ポリマーを担持させた高吸収性ポリマー層を有し、
最も上側に位置する吸収性シートにおける最上層である第一層の高吸収性ポリマー層は、
前記吸収性シートの幅方向中心部において、高吸収性ポリマーが存在しない高吸収性ポリマー中心非積層部を前記吸収性シートの長手方向に沿って有し、
最も下側に位置する吸収性シートにおける最下層である第二層の高吸収性ポリマー層は、
前記高吸収性ポリマー中心非積層部の幅方向の少なくとも中心線を含む領域に、高吸収性ポリマーが前記吸収性シートの長手方向に沿って存在し、
吸収性物品が上側と下側に2枚の吸収性シートを有し、
下側に位置する吸収性シートにおける上層である第一層の高吸収性ポリマー層は、
前記吸収性シートの幅方向中心部において、高吸収性ポリマー中心非積層部を前記吸収性シートの長手方向に沿って有するか、もしくは、前記吸収性シートの幅方向中心線の両側において、高吸収性ポリマーが存在しない高吸収性ポリマー両側非積層部を前記吸収性シートの長手方向に沿って有し、
前記下側に位置する吸収性シートにおける最下層である第二層の高吸収性ポリマー層は、
前記下側に位置する吸収性シートの幅方向中心線の両側において、高吸収性ポリマーが存在しない高吸収性ポリマー両側非積層部を前記下側に位置する吸収性シートの長手方向に沿って有し、
上側に位置する吸収性シートにおける前記最上層である第一層の高吸収性ポリマー層の下層である第二層の高吸収性ポリマー層は、
前記吸収性シートの幅方向中心部において、高吸収性ポリマーが存在しない高吸収性ポリマー中心非積層部を前記吸収性シートの長手方向に沿って有している吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟失禁パッド等の吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
社会の高齢化の進行と、健康志向の高まりの中で、昨今、活動的な高齢者層の増加が見込まれている。高齢者が使用する、軽失禁パッドや、ライナー等の吸収性物品は、比較的多量の体液を吸収可能なものがほとんどであり、これに対応して、吸収性物品の厚みも厚くならざるを得ない。しかしながら、このような厚みの厚い吸収性物品を着用した場合、高齢者の活動の際に違和感を生じさせてしまう等、活動的な高齢者層による使用の際に問題が生じる可能性があった。
【0003】
このような状況を反映して、近年では、吸収性物品の厚みを薄くし、フィット性を向上させた吸収性物品が上市されている。ここで、吸収性物品を薄型化するために、吸収体に高吸収性ポリマー(SAP)を含む高吸収性ポリマーシート(SAPシート)を用いる場合が多い。SAPシートを用いる場合、不織布等に均一にSAPを分布させると、体液を吸収して膨潤した高吸収性ポリマーによってゲルブロッキングが生じることで吸収性能が損なわれる場合があるほか、SAPシートの剛性が高いために吸収性物品のフィット性が損なわれる場合もある。また、SAPシートを用いる場合、筋状等のパターンで分布させると、体液を吸収して膨潤したSAPによって多数の凹凸が大きく生じ、装着感が損なわれる場合がある。
【0004】
この点、SAPシートの幅方向の両端部付近に、高吸収性ポリマーが存在しない領域を長手方向に沿って有する吸収性物品の場合、吸収性物品の幅方向のフィット性は向上する(特許文献1参照)。しかし、排尿領域となる吸収性物品の幅方向中心部では、体液を吸収して膨潤した高吸収性ポリマーによって、吸収性物品の長手方向のフィット性が損なわれ、また吸収性物品の幅方向中心部で装着感が損なわれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、SAPシートの幅方向中心部に、高吸収性ポリマーが存在しない領域を長手方向に沿って有する吸収性物品の場合、吸収性物品の長手方向と幅方向のフィット性が向上し、吸収性物品の幅方向中心部で装着性も向上するが、体液を吸収する領域が存在しなくなり、吸収性能が損なわれてしまう。
【0007】
したがって、本発明は、吸収性物品の厚みが薄く、吸収性能、フィット性、装着感が良好な吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意研究を行った。その結果、吸収性シートを有する吸収性物品において、吸収性シートが3枚の不織布シートと、それぞれの不織布シートの間に高吸収性ポリマーを担持させた高吸収性ポリマー層を有し、最も上側に位置する吸収性シートにおける最上層である第一層の高吸収性ポリマー層は、吸収性シートの幅方向中心部において、高吸収性ポリマーが存在しない高吸収性ポリマー中心非積層部を吸収性シートの長手方向に沿って有し、最も下側に位置する吸収性シートにおける最下層である第二層の高吸収性ポリマー層は、高吸収性ポリマー中心非積層部の幅方向の全部又は一部に、高吸収性ポリマーが吸収性シートの長手方向に沿って存在していることによって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のものを提供する。
(1)本発明の第一の態様は、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、トップシート及びバックシートの間に配置された1枚以上の吸収性シートと、を有する吸収性物品であって、前記吸収性シートは、3枚の不織布シートと、それぞれの不織布シートの間に高吸収性ポリマーを担持させた高吸収性ポリマー層を有し、最も上側に位置する吸収性シートにおける最上層である第一層の高吸収性ポリマー層は、前記吸収性シートの幅方向中心部において、高吸収性ポリマーが存在しない高吸収性ポリマー中心非積層部を前記吸収性シートの長手方向に沿って有し、最も下側に位置する吸収性シートにおける最下層である第二層の高吸収性ポリマー層は、前記高吸収性ポリマー中心非積層部の幅方向の少なくとも中心線を含む領域に、高吸収性ポリマーが前記吸収性シートの長手方向に沿って存在し、吸収性物品が上側と下側に2枚の吸収性シートを有し、下側に位置する吸収性シートにおける上層である第一層の高吸収性ポリマー層は、前記吸収性シートの幅方向中心部において、高吸収性ポリマー中心非積層部を前記吸収性シートの長手方向に沿って有するか、もしくは、前記吸収性シートの幅方向中心線の両側において、高吸収性ポリマーが存在しない高吸収性ポリマー両側非積層部を前記吸収性シートの長手方向に沿って有し、前記下側に位置する吸収性シートにおける最下層である第二層の高吸収性ポリマー層は、前記下側に位置する吸収性シートの幅方向中心線の両側において、高吸収性ポリマーが存在しない高吸収性ポリマー両側非積層部を前記下側に位置する吸収性シートの長手方向に沿って有し、上側に位置する吸収性シートにおける前記最上層である第一層の高吸収性ポリマー層の下層である第二層の高吸収性ポリマー層は、前記吸収性シートの幅方向中心部において、高吸収性ポリマーが存在しない高吸収性ポリマー中心非積層部を前記吸収性シートの長手方向に沿って有している吸収性物品である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、吸収性物品は、最も上側に位置する吸収性シートにおける最上層である第一層の高吸収性ポリマー層に、吸収性シートの幅方向中心部において、高吸収性ポリマーが存在しない高吸収性ポリマー中心非積層部を吸収性シートの長手方向に沿って有している。そのため、吸収性物品の厚みを薄く、かつ排尿領域となる吸収性シートの幅方向中心部でゲルブロッキングが少なく吸収性能が良好な吸収性物品となる。そして、吸収性シートの長手方向及び幅方向のフィット性も良好で、吸収性シートの幅方向中心部の高吸収性ポリマーが膨潤しても身体を圧迫しづらく装着感も良好な吸収性物品となる。さらに、本発明によると、吸収性物品は、最も下側に位置する吸収性シートにおける最下層である第二層の高吸収性ポリマー層に、高吸収性ポリマー中心非積層部の幅方向の全部又は一部に、高吸収性ポリマーが吸収性シートの長手方向に沿って存在している。そのため、排尿領域となる吸収性シートの幅方向中心部において、ゲルブロッキングを防止しつつ、体液の漏れも防止する吸収性能が良好な吸収性物品とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第一の実施形態に係る吸収性物品であって、(a)本発明の吸収物品の外観を示す上面平面図、(b)と(c)は(a)におけるA-A断面概略図を示す。
【
図2】本発明の第二の実施形態に係る吸収性物品であって、(a)吸収性物品の外観を示す上面平面図、(b)から(d)は(a)のB-B断面開略図の一例をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の実施形態について詳細に説明するが、これらは例示の目的で掲げたものでこれらにより本発明を限定するものではない。
【0012】
以下では、図面を参照して、本発明の実施形態に係る吸収性物品1について、実施形態ごとに詳細に説明する。なお、本実施形態の説明においては、全体を通して同じ要素には同じ符号を付している。本明細書における以下の説明において、体液とは、尿、血液、軟便中の水分等の体内から体外に排出される液体をいう。さらに、吸収性物品1の着用時とは、吸収性物品1の装着時及び装着後の少なくとも一方を示す。なお、本明細書の説明において、吸収性物品1の長手方向とは、吸収性物品1が着用されたときに着用者の前後に亘る方向であり、吸収性物品1の幅方向とは、長手方向に対して横又は直交する方向である。さらに、本明細書において、吸収性物品1の各構成の上側又は上層とは、吸収性物品1の着用時に着用者に当接する側に配置される側又は層を指し、下側又は下層とは、対応する上側又は上層よりも、吸収性物品1の着用時に着用者の衣類に当接する側に配置される側又は層を指す。
【0013】
[第一の実施形態]
図1は、本発明の第一の実施形態に係る吸収性物品1の平面上面図及び断面図である。
【0014】
<吸収性物品>
本発明の実施形態1に係る吸収性物品1は、液透過性のトップシート10と、液不透過性のバックシート30と、トップシート10及びバックシート30の間に配置された1枚以上の吸収性シート20とを有する。
【0015】
(トップシート)
トップシート10は、吸収性シート20に向けて体液を速やかに通過させるものであり、吸収性シート20を挟んで、バックシート30と対向して配置されている。トップシート10は、肌と当接するシートとなることから、柔らかな感触で、肌に刺激を与えないような基材、例えば、エアスルー不織布を代表とするサーマルボンド不織布等の不織布、サーマルボンド/スパンボンドを積層した複合不織布、開口ポリエチレンフィルム等の開口性フィルム、ポリエチレンフォーム、ウレタンフォーム等の発泡フィルム、又はこれらを積層した複合シートといった材料から形成される。トップシート10は、単層であっても、複数層積層されていてもよく、ドライタッチ性を付与するために多数の透孔が形成されていてもよい。
【0016】
不織布としては、ポリエチレンやポリプロピレン等の合成繊維やレーヨン等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いて、サーマルボンド法のほか、スパンレース法やスパンボンド法等の公知の加工法によって得られたものも用いることができる。加工性及び強度の点から、トップシート10の坪量は、15g/m2以上50g/m2以下であることが好ましい。トップシート10には、肌への刺激を低減させるために、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤等を適用してもよい。トップシート10は、着用者の股部が位置づけられる長手方向中央に括れ部を有する砂時計形状、略矩形状等の形状を有していてもよく、吸収性シート20の側縁よりも若干外方に延在して設けられていてもよい。
【0017】
(バックシート)
バックシート30は、吸収性物品1の外部に体液が漏れないよう、液不透過性を有し、遮水性を有するシート材が用いられるが、ムレ防止のために透湿性を有していてもよい。このような特性を有するバックシート30の材料としては、例えば、ポリエチレンシートやポリエチレンラミネート不織布等の厚みの薄いプラスチックシートを挙げることができる。バックシート30は、着用者の股部が位置づけられる長手方向中央に括れ部を有する砂時計形状、略矩形状等の形状を有していてもよく、吸収性シート20の側縁より若干外方に延在して設けられていてもよい。バックシート30の下側表面には、着用時に下着等に吸収性物品1を固着するための粘着剤層が設けられていてもよい。吸収性物品1が粘着剤層を有する場合、後述する、吸収性シート20の幅方向中心部において高吸収性ポリマーが存在しない高吸収性ポリマー中心非積層部23及び吸収性シート20の幅方向中心線の両側において高吸収性ポリマーが存在しない高吸収性ポリマー両側非積層部24の厚さ方向に重なる位置に粘着剤層を設けると着用時に吸収性シート20の変形を抑えることができる。またこの位置を外して粘着剤層を設けてもよい。
【0018】
粘着剤層を保護するために剥離シートを有していてもよく、この剥離シートは、吸収性物品1の包装シートと一体となっていてもよい。トップシート10及びバックシート30は、長手方向端部等、端部の少なくとも一部において、吸収性シート20を挟まずに、ホットメルト接着剤やヒートシール等により固着されるフラップを形成していてもよい。
【0019】
(吸収性シート)
吸収性シート20は、3枚の不織布シート21と、それぞれの不織布シート21の間に高吸収性ポリマーを担持させた高吸収性ポリマー層22を有しており、吸収性物品1に1枚以上の吸収性シート20を設ける。
【0020】
本発明の吸収性シート20に用いることができる不織布シート21としては、従来、吸収性シート20の製造に使用されている不織布と同類の不織布を用いることができるが、具体的には、エアレイド不織布、エアスルー不織布、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、サーマルボンド不織布等、従来公知の製法で製造された任意の親水性不織布又は疎水性不織布を挙げることができる。
【0021】
不織布シート21に用いられる不織布の坪量は、10g/m2以上50g/m2以下であることが好ましく、15g/m2以上45g/m2以下であることがより好ましい。不織布の坪量を上記の範囲内のものとすることにより、吸収性シート20の厚みを十分に薄くすることができる。
【0022】
吸収性シート20における高吸収性ポリマー層22の高吸水性ポリマー(以下、SAPとも称する)としては、体液を吸収し、かつ、逆流を防止できるものであれば特に制限はなく、ポリアクリル酸ナトリウム系、ポリアスパラギン酸塩系、(デンプン-アクリル酸)グラフト共重合体、(アクリル酸-ビニルアルコール)共重合体、(イソブチレン-無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物等の材料から形成されたものを使用することができる。これらの中でも、重量当たりの吸収量の観点から、ポリアクリル酸ナトリウム系が好ましい。
【0023】
吸収性シート20全体での高吸収性ポリマーの量は、30g/m2以上500g/m2以下の坪量とすることが好ましく、吸収性シート20全体の重量に対して、10質量%以上90質量%以下の含有量とすることが好ましい。
【0024】
高吸収性ポリマー層22は、接着剤が塗布された不織布に高吸収性ポリマーを分布させて形成される。接着剤としては特に制限はないがホットメルト接着剤が好ましい。また、接着剤の塗布方法としては特に制限はないが、スロットコートやスプレーコートで塗布することが好ましい。
【0025】
((高吸収性ポリマー中心非積層部))
図1(a)から(b)に示すように、吸収性物品1は、吸収性シート20を1枚以上有しており、最も上側に位置する吸収性シート20における最上層である第一層の高吸収性ポリマー層221は、吸収性シート20の幅方向中心部において、高吸収性ポリマーが存在しない高吸収性ポリマー中心非積層部23を吸収性シート20の長手方向に沿って有している。
【0026】
これにより、吸収性シート20の幅方向中心部において、高吸収性ポリマーが長手方向に存在していないため、排尿領域となる吸収性シート20の幅方向中心部でゲルブロッキングを少なくすることができ、吸収性能が良好となる。また、吸収性シート20の幅方向中心部に高吸収性ポリマー中心非積層部23を長手方向に設けることで、吸収性シート20の長手方向及び幅方向の可撓性が向上し、フィット性が良好となる。また。最上層である第一層の高吸収性ポリマー層221においては、吸収性シート20の幅方向中心部に高吸収性ポリマーが存在していないため、高吸収性ポリマーが体液を吸収して膨潤することで身体に与える圧迫感が減少され、装着感が良好となる。
【0027】
高吸収性ポリマー中心非積層部23の外形は、直線状、曲線状、破線状等、長手方向に延在できる形状であればよい。
【0028】
高吸収性ポリマー中心非積層部23の長手方向の寸法は、50mm以上300mm以下であることが好ましく、幅方向の寸法は、1mm以上30mm以下であることが好ましい。上記の数値範囲内とすることにより、吸収性シート20の長手方向及び幅方向の可撓性がより向上し、フィット性がより良好となる。
【0029】
図1(b)に示すように、最も下側位置する吸収性シート20における最下層である第二層の高吸収性ポリマー層222は、高吸収性ポリマー中心非積層部23の幅方向の全部又は一部に、高吸収性ポリマーが吸収性シート20の長手方向に沿って存在しており、幅方向の一部に存在していることが好ましい。
【0030】
これにより、高吸収性ポリマーが、排尿領域における体液を、吸収性能、フィット性、装着感を損なうことなく吸収し、吸収性シート20の幅方向中心部における体液の漏れを防止することができる。
【0031】
なお、
図1(b)及び(c)に示すように、最も上側に位置する吸収性シートと最も下側に位置する吸収性シートとが同一の吸収性シート20であってもよく、その場合には、1枚の吸収性シート20になる。
【0032】
((高吸収性ポリマー両側非積層部))
図1(c)に示すように、本発明の第一の実施形態に係る吸収性物品1は1枚のみの吸収性シート20を有し、吸収性シート20における最下層である第二層の高吸収性ポリマー層222は、吸収性シート20の幅方向中心線の両側において、高吸収性ポリマーが存在しない高吸収性ポリマー両側非積層部24を吸収性シート20の長手方向に沿って有していることが好ましい。
【0033】
これにより、不織布シート21と高吸収性ポリマー両側非積層部24を介して、体液が最下層である第二層の高吸収性ポリマー層222に吸収されるため、吸収性能がより良好となる。また、吸収性シート20の幅方向中心線の両側において、高吸収性ポリマーが存在しない高吸収性ポリマー両側非積層部24を設けることで、吸収性シート20の長手方向及び幅方向可撓性がより向上し、フィット性がより良好となる。また、高吸収性ポリマー中心非積層部23と高吸収性ポリマー両側非積層部24を設けることで、高吸収性ポリマーが体液を吸収して膨潤することで身体に与える圧迫感がより減少され、装着感がより良好となる。
【0034】
高吸収性ポリマー両側非積層部24の外形は、直線状、曲線状、破線状等、長手方向に延在できる形状であればよい。
【0035】
高吸収性ポリマー両側非積層部24の長手方向の寸法は、50mm以上300mm以下であることが好ましく、幅方向の寸法は、1mm以上30mm以下であることが好ましい。上記の数値範囲内とすることにより、吸収性シート20の長手方向及び幅方向の可撓性がより向上し、フィット性がより良好となる。
【0036】
<立体ギャザー>
吸収性物品1の上側の表面には、立体ギャザーが設けられていてもよい。この立体ギャザーは、トップシート10とともに体液の閉じ込め空間を形成し、体液の横漏れを防止できるようになっている。立体ギャザーは、立体ギャザーシートと、立体ギャザーシートの自由端部に沿って配された伸縮性弾性部材と、を備えていることが好ましい。伸縮性弾性部材としては、天然ゴム、合成ゴム、及びポリウレタン等からなる、糸状、紐状、平型形状のものを適宜使用することができる。
【0037】
<吸収性物品の製造方法>
吸収性物品1の製造方法としては、特に限定はなく、従来公知の方法を採用することができる。例えば、必要に応じて、液拡散性シート及び立体ギャザーをあらかじめトップシート10上に配置し、このトップシート10とバックシート30との間に吸収性シート20を挟持する。吸収性シート20は、不織布シート21の間に高吸収性ポリマーを担持させる側に、接着剤を塗布し、高吸収性ポリマーを積層することで、高吸収性ポリマー層22を形成することができる。この際、例えば、高吸収性ポリマー中心非積層部23及び/又は高吸収性ポリマー両側非積層部24の外形と同型のブロック材を、高吸収性ポリマー中心非積層部23及び/又は高吸収性ポリマー両側非積層部24が形成される箇所に設けて高吸収性ポリマーを積層することで、高吸収性ポリマー中心非積層部23及び/又は高吸収性ポリマー両側非積層部24を設けることができる。また、トップシート10とバックシート30とを一部又は全周に亘ってホットメルト接着剤やヒートエンボス、超音波エンボス、高周波エンボス等を用いて固定することで、吸収性物品1を製造することができる。
【0038】
[第二の実施形態]
図2は本発明の第二の実施形態に係る吸収性物品1の平面上面図及び断面図である。なお、本発明の第一の実施形態に係る吸収性物品1の構成及び製造方法と同様のものについては、上述のとおりであり、説明を省略する。
【0039】
(吸収性シート)
図2(b)から(d)に示すように、本発明の第二の実施形態において、吸収性物品1は、上側に位置する吸収性シート201と下側に位置する吸収性シート202の2枚の吸収性シート20を有し、上側に位置する吸収性シート201における最上層である第一層の高吸収性ポリマー層221の下層である第二層の高吸収性ポリマー層222と、下側に位置する吸収性シート202における上層である第一層の高吸収性ポリマー層223のいずれか一方又は両方は、上側に位置する吸収性シート201及び/又は下側に位置する吸収性シート202の幅方向中心部において、高吸収性ポリマー中心非積層部23を、上側に位置する吸収性シート201及び/又は下側に位置する吸収性シート202の長手方向に沿って有している。
【0040】
これにより、少なくとも2層以上の高吸収性ポリマー層22には、吸収性シート20の幅方向中心部において、高吸収性ポリマーが長手方向に存在していないため、排尿領域となる吸収性シート20の幅方向中心部でゲルブロッキングを少なくすることができ、吸収性能が良好となる。また、少なくとも2層以上の高吸収性ポリマー層22には、吸収性シート20の幅方向中心部に高吸収性ポリマー中心非積層部23が長手方向に設けられていることで、剛性が比較的高い吸収性シート20を2枚有している吸収性物品1であっても、長手方向及び幅方向の可撓性が向上し、フィット性が良好となる。また。少なくとも2層以上の高吸収性ポリマー層には、吸収性シート20の幅方向中心部に高吸収性ポリマーが存在していないため、剛性が比較的高い吸収性シート20を2枚有している吸収性物品1であっても、高吸収性ポリマーが体液を吸収して膨潤することで身体に与える圧迫感が減少され、装着感が良好となる。
【0041】
また、
図2(b)から(c)に示すように、本発明の第二の実施形態において、吸収性物品1は、最も下側に位置する吸収性シート202の最下層である第二層の高吸収性ポリマー層224は、高吸収性ポリマー中心非積層部23の幅方向の全部又は一部に、高吸収性ポリマーが吸収性シート20の長手方向に沿って存在しており、幅方向の一部に存在している。
【0042】
また、
図2(c)及び(d)に示すように、上側に位置する吸収性シート201における下層である第二層の高吸収性ポリマー層222と、下側に位置する吸収性シート202における上層である第一層の高吸収性ポリマー層223のいずれか一方は、上側に位置する吸収性シート201又は下側に位置する吸収性シート202の幅方向中心線の両側において、高吸収性ポリマーが存在しない高吸収性ポリマー両側非積層部24を、上側に位置する吸収性シート201又は下側に位置する吸収性シート202の長手方向に沿って有していることが好ましい。
【0043】
これにより、少なくとも2層以上の高吸収性ポリマー層22に、高吸収性ポリマー両側非積層部24が設けられることで、吸収性物品1において長手方向における可撓性が更に向上し、フィット性が更に良好なものとなる。また、少なくとも2層以上の高吸収性ポリマー層22には、高吸収性ポリマー両側非積層部24が設けられることで、高吸収性ポリマーが体液を吸収して膨潤することで身体に与える圧迫感が更に減少され、装着感が更に良好となる。
【0044】
これにより、吸収性物品1における幅方向中心部の高吸収性ポリマーの分布を少なくしてゲルブロッキングによる吸収性能の低下を防ぎ、かつ、吸収性物品1の長手方向及び幅方向の可撓性を良くしてフィット性を良好にし、高吸収性ポリマーが体液を吸収して膨潤することで身体に与える圧迫感を少なくして装着感も良好にすることができる。
【0045】
以上、本発明について実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記の実施形態に記載の発明の範囲には限定されないことは言うまでもなく、上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0046】
1 吸収性物品
10 トップシート
20 吸収性シート
201 上側に位置する吸収性シート
202 下側に位置する吸収性シート
21 不織布シート
22 高吸収性ポリマー層
221 最上層である第一層の高吸収性ポリマー層
222 下層(最下層)である第二層の高吸収性ポリマー層
223 上層である第一層の高吸収性ポリマー層
224 最下層である第二層の高吸収性ポリマー層
23 高吸収性ポリマー中心非積層部
24 高吸収性ポリマー両側非積層部
30 バックシート