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特許7064661外径増減制御の研削研磨砥石とこの外径増減制御の研削研磨砥石による研削・研磨・ホーニング加工方法
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  • 特許-外径増減制御の研削研磨砥石とこの外径増減制御の研削研磨砥石による研削・研磨・ホーニング加工方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-27
(45)【発行日】2022-05-11
(54)【発明の名称】外径増減制御の研削研磨砥石とこの外径増減制御の研削研磨砥石による研削・研磨・ホーニング加工方法
(51)【国際特許分類】
   B24D 13/06 20060101AFI20220428BHJP
   B24B 33/08 20060101ALI20220428BHJP
   B24B 55/02 20060101ALI20220428BHJP
【FI】
B24D13/06
B24B33/08
B24B55/02 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019100745
(22)【出願日】2019-05-13
(65)【公開番号】P2020185660
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2021-02-12
(73)【特許権者】
【識別番号】519193965
【氏名又は名称】伊藤 憲秀
(72)【発明者】
【氏名】松原 隆太郎
(72)【発明者】
【氏名】松原 成希
(72)【発明者】
【氏名】松原 光作
(72)【発明者】
【氏名】日下部 篤史
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 幸男
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 憲秀
【審査官】山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】特開平2-106267(JP,A)
【文献】実公昭12-1731(JP,Y1)
【文献】特開2014-121753(JP,A)
【文献】特開平9-309074(JP,A)
【文献】特開平8-192344(JP,A)
【文献】特開2017-1172(JP,A)
【文献】実公昭51-45037(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24D 3/00 - 99/00
B24B 33/00
B24B 55/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項7】
請求項6の外径増減制御の研削研磨砥石において、当該外径増減制御の研削研磨砥石の大径円筒体を被削材の外面乃至大きな円周の内面に接近させた状態にて、クーラント供給装置からのクーラント液はNC制御装置のNCプログラムによる静圧乃至脈動圧のクーラント液をセンタースルーに明けた砥石取付主軸から上記大径円筒体内に送り込み、該クーラント液で大径円筒体の円周面上の各可撓性砥石帯片を増径方向に制御し、当該可撓性砥石帯片が被削材の外側面乃至円周の内面に鞭のしなり力で押付けて研磨可能としたことを特徴とする外径増減制御の研削研磨砥石による研削・研磨・ホーニング加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被削材の内径面や外側面を研削・研磨・ホーニング・ポリシング仕上げまで可能とした外径増減制御の研削研磨砥石とこの砥石による研削・研磨・ホーニング・ポリシング加工方法に係わり、特に外径増減制御される砥石に要求される特性を砥石内部に供給されるクーラント液の各種波形を圧力制御することで実行する砥石に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、被削材の内径を増減径するホーニング砥石により、被削材の内径面をホーニング・ラッピング仕上げする内径加工用増径ホーニングユニットやホーニングヘッドやホーニング加工制御装置が下記するように、多く提供されている。これに対して、本願出願者の発明に係わり、リックホーンと命名する外径増減制御の研削研磨砥石「ホーニング砥石」を新たに提供する。
【0003】
先ず、ホーニング工具の径方向の制御を可能としてホーニング砥石の摩耗等による影響を受けることなく高精度の穴加工を行なうものがある。
その構成は、ホーニングユニットを、先端部にホーニングユニットを装着して回転する主軸と、この主軸に貫通して設けられた制御軸に、数値制御によって主軸と相対的な回転を与えるホーニングユニット制御機構とを有し、前記ホーニングユニットが、前記制御軸と係合し、前記制御軸とともに回転する連結軸、この連結軸の先端に形成されたねじとかみ合い連結軸の回転によって軸方向に移動を行なうナット、このナットと連接し軸方向に移動を行なう径方向制御軸、この径方向制御軸の周面に配設され、径方向制御軸の軸方向への移動によってホーニング砥石が径方向に移動するホーニング工具とからなり、前記主軸の回転中であってもホーニング工具の径方向の制御を可能とした数値制御ホーニング装置である(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
次に、有底穴円筒内面のホーニング加工の加工精度、特に真直度の精度向上に好適な有底穴加工用ホーニングヘッドがある。
その構成は、円筒状のホーニングヘッド本体7の外円周に沿って半径方向に移動自在に支持されたホーニング砥石台5は、ホーニングヘッド本体7に収容したテーパコーン2bがテーパコーン1aと独立に軸方向に移動することにより、加工穴の止り側に移動するにつれて砥石台の止り側部を半径方向に強制拡張させるように構成した有底穴加工用ホーニングヘッドである(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
更に、ホーニング加工の形状精度の向上を主体とする品質の安定化、加工時間の短縮化、砥石寿命の延長化に好適なホーニング加工制御装置がある。
その構成は、ホーニングヘッド本体7が支持する複数個のホーニング砥石台5に装着した圧電素子により検出したA、B、C点の圧力値と、エアマイクロ13により測定したA、B、C点の内径値を入力し、第1のテーパコーン1と第2のテーパコーン2の軸方向の移動量を出力制御し、被加工物の円筒内面精度の補正を行なう演算制御部を備えるホーニング加工制御装置である(例えば、特許文献3参照。)。
【0006】
更に、ダイヤモンド砥石あるいはCBN砥石等からなる高硬度ホーニング砥石のツルーイング精度を高めるものである。
その構成は、ホーニング砥石7を砥石シュー6とともに拡張,収縮させる拡張ロッド9の両端面にセンタ穴15,16を形成する。アジャストナット29にて所定の拡張状態となるように調整したのち、センタ穴15,16を使って円筒研削盤のセンタ32,33にてホーニングヘッド1全体を両持ち支持してツルーイング砥石Gにて研削する。ホーニング加工時にはアジャストナット29を外すとともに、めねじ部17にプッシュロッドを連結するものである(例えば、特許文献4参照。)。
【0007】
更に、テーパコーンの摩耗を抑制して、寿命を向上させたホーニング装置がある。
その構成は、主軸2と一体に成形されたテーパコーン5は、ホーニング台6との接触面5aがテーパー状となっている。ホーニング台6の外周部にホーニング砥石4が形成され、このホーニング砥石4が被削材7に接触している。テーパコーン5は、主軸2の回転に伴って回転するとともに下降し、テーパコーン5の下降によって、ホーニング台6は、接触面5aを介して外周方向に押し出される。これにより、ホーニング台6の外周部に設けられたホーニング砥石4が被削材7に押し当てられ、被削材7が研削されて所定の寸法に仕上げられるものである(例えば、特許文献5参照。)。
【文献】
【0008】
【文献】特開平8-216015号公報
【文献】特開平5-004163号公報
【文献】特開平5-277928号公報
【文献】特開2000-6001号公報
【文献】特開2004-268197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記従来の被削材の内径に対して増減径するホーニング砥石は、特許文献1~5で引用するように、概ね全てが、特開平5-004163号公報に見るように、円筒状のホーニングヘッド本体の外円周に沿って半径方向に移動自在に支持されたホーニング砥石台は、ホーニングヘッド本体に収容したテーパコーンがテーパコーンと独立に軸方向に移動することにより、加工穴の止り側に移動するにつれて砥石台の止り側部を半径方向に強制拡張させるように構成した有底穴加工用ホーニングヘッドである。
【0010】
然し乍ら、上記ホーニングヘッド本体に収容したテーパコーンがテーパコーンと独立に軸方向に移動することにより、加工穴の止り側に移動するにつれて砥石台の止り側部を半径方向に強制拡張させるように構成した有底穴加工用ホーニングヘッド他では、メカ手段によりホーニング砥石の外径を増減する加工用増径ホーニング砥石である。これが為に、機械的な摩擦部が存在し、しかもテーパコーンを機械的に強制的に回転主軸の軸心方向に微動制御するから、硬い砥石をワーク内壁面に強い力で押し付ける結果、ひび割れさせる他、砥石に機械的ストレスを与える問題点が指摘される。
【0011】
これが為に、被削材の内径面をホーニング・ラッピング仕上げする内径加工用増径ホーニング砥石の寿命や被削材の内径面をホーニング・ラッピング仕上げする為の精度が得られ難いと言う、問題点が指摘される。
【0012】
更に、従来の簡易なフレックスホーンと言われるフレックスホーン砥石は、図1(a)に示すものが提供されている。その構成は、回転軸1の先端側に反発力のある多数本のナイロン樹脂2を円柱状に植え付け、この先端に磨球3を付設させたものである。その磨き作用は、回転軸1の回転に伴い被削材4の内径面4aをナイロン樹脂2の反発力で磨球3が舐める際に、反発力の調節が出来ないから、より高精度な磨き面が得られないと言う、問題がある。更に、上記フレックスホーン砥石Dは、被削材4の外周面研磨のみでホーニング・ラッピング仕上げすることは出来ない。
【0013】
本願発明者は、上記の如く従来技術におけるフレックスホーン砥石Dの問題点に鑑み、特に、フレックスホーン砥石における各種の問題点を飛躍的に改善させた増減径制御する特性性能を砥石内部に供給するクーラント液の圧力制御と噴射圧の波形制御により実行する内径及び外面加工用の増減径ホーニング砥石「図1(b)10に示すリックホーン」を研究開発した。
即ち、リックホーンと命名する外径増減制御の研削研磨砥石は、被削材内面の研削・研磨・ホーニング・ラッピングにも有効で、「砥石内液通研削・研磨」による研削焼けの抑止と「クーラント液圧の静圧乃至脈動により「舌(フラップ)」を被削材内面に押し付け、この舌の押付力の繰り返し作用」させる。即ち、「クーラント液圧の低下による減径した砥石が被削材内径にセットされおり、加圧(一定圧or脈圧)による増径までの間にクーラント液が全周に行渡り加工全面を冷却・潤滑し、被削材内径の全長・全周にわたり同時に研削・研磨・ホーニング・ポリシング加工まで広い範囲の加工を可能」とした。
更に、被削材と砥石の同軸が確保されないことで起こる加工形状が「楕円、鼓、太鼓」状になる可能性を無くすべく、砥石軸と被削材の内径軸との芯出し機構により高精度な加工を可能とした。
そして、外径増減制御の研削研磨砥石により、研削・研磨・ホーニングを外周面加工では「砥石が被削材の形状に倣いながら舌が舐めるように且つ鞭がしなるように被削材に押付けられ加工することで高い精度の面粗さと形状の加工を可能」とすることに成功した。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成する請求項1の外径増減制御の研削研磨砥石は、センタースルーを明けた砥石取付主軸と、該砥石取付主軸の先端には小径部と大径部とを交互に連接し小径部にセンタースルーと繋がる多数の小穴を外径へ放射状に明けた砥石取付軸部と、上記砥石取付軸部に円筒体の内壁面が上記大径部に嵌合し、上記円筒体はこの外周面の多数カ所に最適研磨結果から導き出された穴配列と穴径に設定され軸心方向に並ぶ噴射孔を回転方向となる外径放射方向に向けて連設し、上記各列の各噴射孔を円筒体の回転方向の進行側から各々塞ぐように各可撓性砥石帯片が各々付設され、上記円筒体の両端部を砥石取付軸部に機密に装入包囲し、上記砥石取付軸部の多数の小穴から外周部に固着した各可撓性砥石帯片に向けて円筒体内に送り込まれるクーラント液の静圧又は脈動圧で各可撓性砥石帯片を外径方向への撓みで増減径させ、該可撓性砥石帯片の撓み増減径で被削材の内径面又は平面への撓み押圧力を制御して研削研磨することを特徴とする。
【0015】
請求項2の外径増減制御の研削研磨砥石は、請求項1の外径増減制御の研削研磨砥石において、円筒体の外周に付設した各可撓性砥石帯片は、最適研磨結果から導き出された中央部又は任意箇所を長く広く舌状又は異型状にして研削面における研削代の大きい部分を広い形状としたことを特徴とする。
【0016】
請求項3の外径増減制御の研削研磨砥石は、請求項1の外径増減制御の研削研磨砥石において、上記円筒体の外周に付設した可撓性砥石帯片は、ロープ片に砥粒を固着又は編み込んだブラシ形状を最適研磨結果から導き出された配列、密度、径に調整され敷設したことを特徴とする。
【0017】
請求項4の外径増減制御の研削研磨砥石による研削・研磨・ホーニング加工方法は、請求項1~3の外径増減制御の研削研磨砥石において、当該外径増減制御の研削研磨砥石の円筒体を被削材の径内に挿入された状態にて、クーラント供給装置からはNC制御装置からのNCプログラムにより静圧乃至脈動圧のクーラント液をセンタースルーに明けた砥石取付主軸から上記円筒体内に送り込み、当該クーラント液圧で円筒体の可撓性砥石帯片を増径させる間にクーラント液が被削材の径内全周に行渡つて研削全面を冷却・潤滑するとともに、当該クーラント液で円筒体の円周面上の各可撓性砥石帯片を増径方向に制御し、当該可撓性砥石帯片が被削材の内径面に鞭のしなり力で押付けて研磨し、被削材の径内全長・全周を研磨することを特徴とする。
【0018】
請求項5の外径増減制御の研削研磨砥石による研削・研磨・ホーニング加工方法は、請求項4の外径増減制御の研削研磨砥石による研削・研磨・ホーニング加工方法において、当該研削・研磨・ホーニング加工に先立ち、上記円筒体を嵌合する砥石取付軸部とセンタースルーを明けた砥石取付主軸とは芯出し可能に自在継手で繋がれ、上記円筒体を被削材の内径に挿入時に圧入されるクーラント液の脈動圧で自動調芯されることを特徴とする。
【0019】
請求項6の外径増減制御の研削研磨砥石は、センタースルーを明けた砥石取付主軸と、該砥石取付主軸の先端にはセンタースルーと繋がる小穴を明けた砥石取付軸部と、上記砥石取付軸部に大径円筒体の内孔部が上記砥石取付軸部に嵌合し、上記大径円筒体はこの外周面の数カ所に軸心方向に並ぶ小穴を回転方向となる外径放射方向に向けて連設し、上記各小穴列を大径円筒体の回転方向の進行側から塞ぐ様に可撓性砥石帯片が付設され、上記砥石取付軸部から上記大径円筒体の各小穴の外周部に固着した可撓性砥石帯片に向けて送り込まれるクーラント液の脈動圧で可撓性砥石帯片が増減径して被削材の内径面又は平面への撓み押圧力を制御して研削研磨することを特徴とする。
【0020】
請求項7の外径増減制御の研削研磨砥石による研削・研磨・ホーニング加工方法は、請求項6の外径増減制御の研削研磨砥石において、当該外径増減制御の研削研磨砥石の大径円筒体を被削材の外面乃至大きな円周の内面に接近させた状態にて、クーラント供給装置からのクーラント液はNC制御装置のNCプログラムによる静圧乃至脈動圧のクーラント液をセンタースルーに明けた砥石取付主軸から上記大径円筒体内に送り込み、該クーラント液で大径円筒体の円周面上の各可撓性砥石帯片を増径方向に制御し、当該可撓性砥石帯片が被削材の外側面乃至円周の内面に鞭のしなり力で押付けて研磨可能としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
請求項1の外径増減制御の研削研磨砥石によると、砥石内液通研削・研磨による研削焼けの抑止とクーラント液圧の脈動により可撓性砥石帯片「舌(フラップ)」が被削材を弾性的に押し付けたり、緩めたりを繰り返すことで、減径した砥石が内径にセットされ加圧(静圧の一定圧or脈動圧)で増径され、全長・全周にわたり同時に研削研磨からホーニング加工が可能となる。
【0022】
請求項2の外径増減制御の研削研磨砥石は、上記円筒体の外周に付設した各可撓性砥石帯片は、実際の最適研磨結果から導き出された中央部又は任意箇所を長く広く舌状又は異型状にして研削面における研削代の大きい部分を広い形状としたり中央部を長く舌状形状としたから、クーラント液の脈動の高い圧力とし、可撓性砥石帯片の根元で被削材の面全体を強く押し研削代の大きい部分の研削・研磨を能動的に行い、ホーニング時には低い圧力として可撓性砥石帯片の中央部を長くした舌状形状で弱く研磨・ホーニングするから、研削・研磨・ホーニングへと加工が進むに従い微調整ができる。しかして、凹凸のある研削面を均等な仕上げ面となり、高精度な平坦面に仕上げられる。
【0023】
請求項3の外径増減制御の研削研磨砥石は、円筒体の外周に付設した可撓性砥石帯片を、ロープ片に砥粒を固着又は編み込んだブラシ形状としたから、クーラント液の脈動の高い圧力時にはロープ片の根元で被削材のホーニング面を強く押して研磨でき、低い圧力時にはロープ片の先端で幅広く弱く研磨することで、研削面が高精度に微調整ができる。
【0024】
請求項4の外径増減制御の研削研磨砥石による研削・研磨・ホーニング加工方法は、請求項1~3の外径増減制御の研削研磨砥石において、該外径増減制御の研削研磨砥石の円筒体を被削材の径内に挿入された状態にて、クーラント供給装置からはNC制御装置からのNCプログラムにより静圧乃至脈動圧のクーラント液をセンタースルーに明けた砥石取付主軸から上記円筒体内に送り込み、該クーラント液に対応して円筒体の可撓性砥石帯片を増径方向に制御し、被削材の径内全長・全周を研削・研磨・ホーニングを可能に実施できる。
【0025】
請求項5の外径増減制御の研削研磨砥石による研削・研磨・ホーニング加工方法は、請求項4の研削・研磨・ホーニング加工方法において、上記円筒体を嵌合する砥石取付軸部とセンタースルーを明けた砥石取付主軸とは芯出し可能に自在継手で繋がれ、上記円筒体を被削材の内径に挿入時に圧入されるクーラント液圧の脈動圧で自動調芯できる。この自動調芯後に、請求項4の外径増減制御の研削研磨砥石による研削・研磨・ホーニング加工方法が実施され、上記被削材と砥石の同軸を確保した状態で、被削材の内径面の研磨形状は「楕円、鼓、太鼓」になることがなく、真円研磨・ホーニングが高精度に行える。
【0026】
請求項6の外径増減制御の研削研磨砥石は、大きな内径面の他、外面加工において、被削材の形状に倣いながら舌が舐めるように研削・研磨・ホーニングが可能となる。しかして、高い精度の面粗さと高精度な形状加工が可能である。
【0027】
請求項7の外径増減制御の研削研磨砥石による研削・研磨・ホーニング加工方法は、請求項6の外径増減制御の研削研磨砥石において、該外面加工用増減径ホーニング砥石の大径円筒体を被削材の外面に接触させた状態にて、クーラント供給装置からはNC制御装置からのNCプログラムにより静圧乃至脈動圧のクーラント液をセンタースルーに明けた砥石取付主軸から上記大径円筒体内に送り込み、該クーラント液圧の変化で大径円筒体の可撓性砥石帯片を増径方向に制御し、被削材の広い外面が高精度に研削・研磨・ホーニング加工が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】 本発明の実施形態と従来例を示し、レックスホーンと本発明の外径増減制御の研削研磨砥石の部分図と断面図である。
図2】 本発明の実施形態を示し、外径増減制御の研削研磨砥石と自動芯出し機構の断面図である。
図3】 本発明の実施形態を示し、外径増減制御の研削研磨砥石と自動芯出し機構の作用図である。
図4】 本発明の実施形態を示し、外径増減制御の研削研磨砥石の斜視図と作用断面図である。
図5】 本発明の実施形態を示し、各外径増減制御の研削研磨砥石の要部の作用断面図である。
図6】 本発明の実施形態を示し、クーラント装置と各外径増減制御の研削研磨砥石への配管図である。
図7】 本発明の実施形態を示し、他の外径増減制御の研削研磨砥石の斜視図である。
図8】 本発明の実施形態を示し、他の外径増減制御の研削研磨砥石の平面作用図である。
図9】 本発明の実施形態を示し、外径増減制御の研削研磨砥石による脈圧研磨作用図である。
図10】 本発明の実施形態を示し、歪んだ内径と可撓性砥石帯片による修正関係の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図1図10により、本発明の各外径増減制御の研削研磨砥石の各実施態様を順次に説明する。
【実施例
【0030】
先ず、図1(b)(C)と図4図6において、本発明の第1実施の形態となる外径増減制御の研削研磨砥石10は、センタースルー5を明けた砥石取付主軸6と、該砥石取付主軸の先端には小径部6aと大径部6bとを交互に連接し小径部にセンタースルーと繋がる多数の小穴6Cを外径方向へ放射状に明けた砥石取付軸部7と、上記砥石取付軸部に円筒体11の内壁面11aが上記大径部に嵌合し、上記円筒体はこの外周面11bの多数カ所に最適研磨結果から導き出された小穴11Cの穴配列と穴径に設定され、軸心方向Oに並ぶ噴射孔11Cを回転方向Yとなる外径放射方向に向けて連設する。更に、図4図6において、特に、図5において、上記各列の小穴11C列を円筒体11の回転方向Yの進行側から塞ぐ様に複数の可撓性砥石帯片8が付設され、その表面に砥粒13を固着している。更に、図1(C)において、上記円筒体1Iの両端部を砥石取付軸部7に機密に装入包囲し、上記砥石取付軸部7の多数の小穴6Cから外周部に固着した可撓性砥石帯片に向けて円筒体内に送り込まれるクーラント液(クーラント液圧とも言う)CKの静圧又は脈動圧で各可撓性砥石帯片8を外径方向への撓みで増減径させ、該可撓性砥石帯片の撓み増減径で被削材の内径面又は平面への撓み押圧力を制御して研削研磨するが増減径するリックホーンの外径増減制御の研削研磨砥石10を構成する。
【0031】
また、第2実施態様の外径増減制御の研削研磨砥石12は、上記外径増減制御の研削研磨砥石10において、図4(b)図6(b)に示すように、円筒体11の外周11bに付設した可撓性砥石帯片9の中央部9aを長く舌状形状とし、その表面全体に砥粒13を固着する。更に、図10に示す研削研磨砥石12aは、上記内径加工用増径ホーニング砥石10において、円筒体11の外周11bに付設した可撓性砥石帯片9の中央部9aを凹ませ、左右両9b,9cを舌状形状とし、その全面に砥粒13を固着した変形例である。
【0032】
上記する第2実施態様の外径増減制御の研削研磨砥石12とその変形例の研削研磨砥石12aによると、外径増減制御の研削研磨砥石12及び12aは、上記円筒体の外周に付設した各可撓性砥石帯片9は、被削材Wの内径W3がその中央部で小径な場合は、可撓性砥石帯片9の中央部9aを長く舌状形状の外径増減制御の研削研磨砥石12を採用する。また、被削材Wの内径W4の中央部が大径な場合は、可撓性砥石帯片9の中央部9aを短くし、両側9b,9cを舌状形状に長くした外径増減制御の研削研磨砥石12aを採用する。
【0033】
しかして、舌状形状は、実際の最適研磨結果から導き出された中央部又は任意箇所を長く広く舌状又は異型状にして研削面における研削代の大きい部分を広い形状としたり中央部を長く舌状形状としたから、クーラント液の脈動の高い圧力とし、可撓性砥石帯片の根元で被削材の面全体を強く押し研削代の大きい部分の研削・研磨を能動的に行い、ホーニング時には低い圧力として可撓性砥石帯片の中央部を長くした舌状形状で弱く研磨・ホーニングするから、研削・研磨・ホーニングへと加工が進むに従い微調整ができる。しかして、図10に見るように、凹凸のある研削面の被削材Wの内径W3,W4は、被削材Wの内径W0を均等な仕上面に研削・研磨・ホーニングでき、高精度な平坦面に仕上げられる。
【0034】
また、第3実施態様の外径増減制御の研削研磨砥石14は、上記内径加工用増径ホーニング砥石10において、図4(c)図6(c)に示すように、円筒体11の外周11bに付設した可撓性砥石帯片14を、ロープ片15aに砥粒13を固着又は編み込んだブラシ形状とした。この外径増減制御の研削研磨砥石14は、円筒体の外周に付設した可撓性砥石帯片を、ロープ片15aに砥粒を固着又は編み込んだブラシ形状としたから、クーラント液の脈動の高い圧力時にはロープ片の根元で被削材のホーニング面を強く押して研磨でき、低い圧力時にはロープ片の先端で幅広く弱く研磨することで、研削面が高精度に微調整ができる。
【0035】
更に、第4実施態様は、上記外径増減制御の研削研磨砥石10、12、14において、図6において、クーラント供給装置50は、NC制御装置60で作成されたNCプログラム制御PGにより、静圧P0乃至脈動圧P1,P2,P3のクーラント液圧CKをセンタースルー5に明けた砥石取付主軸6から上記円筒体11内に送り込まれるクーラント液圧CKで可撓性砥石帯片8、9、15を4種類のパターンに増減径に制御するものである。
【0036】
上記外径増減制御の研削研磨砥石10、12、14は、この円筒体を被削材の径内に挿入された状態にて、クーラント供給装置からはNC制御装置からのNCプログラムにより静圧乃至脈動圧のクーラント液をセンタースルーに明けた砥石取付主軸から上記円筒体内に送り込み、該クーラント液に対応して円筒体の可撓性砥石帯片を増径方向に制御し、被削材の径内全長・全周を研削・研磨・ホーニングを可能に実施される。
【0037】
続いて、図6により、上記クーラント供給装置50とNC制御装置60の制御系と外径増減制御の研削研磨砥石10、12、14を説明する。上記クーラント供給装置50は、駆動源のモーターMOによりタンクT内のクーラント液CKを供給する2気筒プランジャーポンプP(単筒AC、BC)と、該プランジャーポンプPから吐出する脈動圧のクーラント液CKを多種多様に切替える逆止弁V1~V5を備えている。上記逆止弁V1~V5と切替弁V6,V7の切り替えで、4種類のクーラント液CKを各外径増減制御の研削研磨砥石10、12、14まで配管・供給する経路を形成している。尚、吐出されるクーラント液CKは、NC制御装置60からのNC制御プログラムPGにより、単筒ACの圧力P1、単筒BCの圧力P2、両方の合成圧力(P1+P2)P3と、該合成圧力(P1+P2)P3をアキュームレーターAQに入れて一定圧P0とする4種類に切替えられる。
【0038】
しかして、先ず、図2図3に示す自動芯出し機構70とその作用が行われる。上記ホーニング作用に先立ち、上記外径増減制御の研削研磨砥石10、12、14は、脈動するクーラント液CKが円筒体11内に供給されて円筒体が脈動増径する時に、自動芯出機構70が働く。その詳細を図3で説明する。先ず、図3(1)は、砥石10と被削材Wとの軸心にズレが有り、図3(2)の如く、そのまま砥石10を被削材W内に挿入する。続いて、図3(3)の如く、脈動するクーラント液CKを円筒体11内に供給して円筒体が脈動増径すると自動芯出し機構が働き、砥石軸は被削材Wの軸心へと移動し、芯出し調心される。この後、図3(4)の如く、研削加工をスタートさせ、図3(5)の如く、円筒体11を脈動増減径して研削加工を行う。最後には、図3(6)の如く、クーラント液CKを止め、研削終了後の砥石10を被削材Wから抜いて自動芯出機構70の作用と同時に研削・ホーニング加工が終了する。
【0039】
図4図6に示すように、上記各外径増減制御の研削研磨砥石10、12、14は、以下のように作用する。各外径増減制御の研削研磨砥石10、12、14における可撓性砥石帯片8、9、15は、各外径増減制御の研削研磨砥石10、12、14を被削材Wに挿入時は、回転を停止しているから、クーラント液圧CKは停止されてクーラントオフの状態とする。これで、各可撓性砥石帯片8、9、15は、円筒体11の外周面11bに接近し、被削材Wの内径W1から離れている。この状態で外径増減制御の研削研磨砥石10、12、14を内径W1に挿入し、この後に外径増減制御の研削研磨砥石10、12、14を回転させ、脈動するクーラント液CKを各円筒体11内に供給して各円筒体が脈動増径すると自動芯出し機構が働き、自動芯出しされる。即ち、内径加工用増径ホーニング・ポリシング砥石において、上記円筒体を嵌合する砥石取付軸部とセンタースルーを明けた砥石取付主軸とは芯出し可能に自在継手で繋がれ、上記円筒体を被削材の内径に挿入時に圧入されるクーラント液圧の脈動圧で自動調芯される。
【0040】
上記自動芯出機構70の作用後に、研削・ホーニング加工が始まる。その様子は、図4に示すクーラントONで、吐出されるクーラント液CKは、NC制御装置60からのNC制御プログラムPGにより、単筒ACの圧力P1、単筒BCの圧力P2、両方の合成圧力(P1+P2)P3と、該合成圧力(P1+P2)P3をアキュームレーターAQに入れて一定圧P0の何れか4種類の一つに、NC制御装置60の制御系により切替えられる。上記クーラント液により、図4図5に示すように、各可撓性砥石帯片8、9、15は、小穴11Cから各可撓性砥石帯片8、9、15の付け根に向けてクーラント液の押力Fで押圧されると、被削材Wの内径W1に押圧される。
【0041】
続いて、外径増減制御の研削研磨砥石10、12、14の回転により、外径増減制御の研削研磨砥石10、12、14の外周に付着した砥粒13により、ホーニング加工する。これにより、「砥石内液通研削・研磨」による研削焼けの抑止と「クーラント液の脈動により「舌(フラップ)」が被削材を押し付けられる」ことで、「減径した砥石が内径に加圧(一定圧or脈圧)で増径され、クーラント液CKの流れで高精度な研削面や磨き面が全長・全周にわたり同時に得られる。
【0042】
続いて、図7図9に示す外径増減制御の研削研磨砥石20について、この構成と脈圧研磨作用を以下に説明する。この外形研磨加工では「ブレードの被削材W2の形状に倣いながら可撓性砥石帯片(舌)21が舐めるように研磨加工することで高い精度の面粗さと形状の研磨加工を可能」とすることに成功した。
【0043】
その構成は、図7(a)と図8において、上記第1実施の形態となる外径増減制御の研削研磨砥石10と同様に、上記センタースルー22を明けた砥石取付主軸23と、該砥石取付主軸23の先端にはセンタースルー22と繋がる通穴22aを明けた砥石取付軸部24と、上記砥石取付軸部の先端部に台金となる大径円筒体25の内孔部25aが上記砥石取付軸部24に嵌合する。上記大径円筒体25は、この外周面26aを形成する環部26の円周上の数カ所に並ぶ小穴27を回転方向Xとなる外径方向に向けて連設し、上記各小穴列を大径円筒体25の回転方向Xの進行側から塞ぐ様に可撓性砥石帯片21が付設され、上記砥石取付軸部23から上記大径円筒体25の各小穴27の外周部26aに固着した可撓性砥石帯片21に向けて送り込まれるクーラント液CKの静圧又は脈動で可撓性砥石帯片が外径方向に旋回して増減径するリックホーンとした外形加工用増減径ホーニング砥石20を成している。尚、上記可撓性砥石帯片21は、舌の先端が四角形21aである。図7(b)は、可撓性砥石帯片21の舌の先端が円形21b、図7(c)は、可撓性砥石帯片21の舌の先端が四角形21aと円形21bとを交互に取付けられている。
【0044】
続いて、外径増減制御の研削研磨砥石20について、図9により、平面となるブレードの被削材W2の形状に倣いながら可撓性砥石帯片(舌)21が舐めるように研磨加工する様子を説明する。上記外径増減制御の研削研磨砥石20において、該外径増減制御の研削研磨砥石の大径円筒体25に敷設した可撓性砥石帯片21を被削材W2の外面に接近させた状態にて、クーラント供給装置50からはNC制御装置60からのNCプログラムPGにより静圧P0乃至脈動圧P1,P2,P3のクーラント液CKをセンタースルー22aを明けた砥石取付主軸23から上記大径円筒体25内に送り込み、該クーラント液で大径円筒体の外周部の可撓性砥石帯片21を増径方向に制御し、被削材W2の側面を研磨・ホーニングする。このホーニング作用は、図9の圧力線図(SINカーブ)に見るように、クーラント液が高いと、可撓性砥石帯片21が増径して被削材W2の側面を研磨・ホーニングし、クーラント液圧が零圧力になると、可撓性砥石帯片21が減径して被削材W2の側面から離れ、研削・研磨・ホーニングを弱める作用となる。以上が外径増減制御の研削研磨砥石20によるホーニング加工方法である。
【0045】
本願発明となる外径増減制御の研削研磨砥石及び外径増減制御の研削研磨砥石とこの研削・研磨・ホーニング加工方法によると、
1、リックホーンと言われる外径増減制御の研削研磨砥石は、内径・外径のホーニング・ラッピングにも有効で、「砥石内液通研削・研磨」による研削焼けの抑止と「クーラント液圧の脈動により「舌(フラップ)」が被削材に押し付けられ、これを繰り返す」ことで「減径した砥石が内径にセットされ加圧(一定圧or脈圧)で増径され、全長・全周にわたり砥石が被削材の内面に押付けられ且つ鞭のしなり力が加わった同時研削研磨が可能」となる。
2、被削材と砥石の同軸が確保されないことで起こる研磨形状が「楕円、鼓、太鼓」になる可能性の低い高精度な加工が可能となる。
3、外径増減制御の研削研磨砥石20による外周面加工では「被削材の形状に倣いながら舌が舐めるように加工することで高い精度の面粗さと形状の加工を可能」となる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、上記各外径増減制御の研削研磨砥石10、12、14、20に限定されず、その他の砥石等の広範囲にわたる実施形態にも適用される。
【符号の説明】
【0047】
5 センタースルー
6 砥石取付主軸
6a 小径部
6b 大径部
6C 小穴
7 砥石取付軸部
8 可撓性砥石帯片
10,12,15 外径増減制御の研削研磨砥石
11 円筒体
11a 内壁面
11b 外周面
11C 小穴
20 外径増減制御の研削研磨砥石
21 可撓性砥石帯片(舌)
22 センタースルー
22a 通穴
23 砥石取付主軸
24 砥石取付軸部
25 大径円筒体
25a 内孔部
27 小穴
26 環部
O 軸心方向
50 クーラント供給装置
60 NC制御装置
70 自動芯出し機構
CK クーラント液
AC 単筒
BC 単筒
P1 圧力
P2 圧力
P0 一定圧
(P1+P2)P3 合成圧力
AQ アキュームレーター
W 被削材
W1,W3,W4 内径
W2 被削材
W0 内径
X,Y 回転方向
図1
図2
図3
図5
図4
図6
図7
図8
図9
図10