(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-27
(45)【発行日】2022-05-11
(54)【発明の名称】IL-13RA2を標的とする抗体及びその応用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20220428BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20220428BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20220428BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20220428BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20220428BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220428BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20220428BHJP
C12N 15/86 20060101ALI20220428BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20220428BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20220428BHJP
C07K 16/30 20060101ALI20220428BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20220428BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20220428BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20220428BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220428BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20220428BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20220428BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20220428BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220428BHJP
【FI】
C12N15/13
C12N15/63 Z ZNA
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/62 Z
C12N15/86 Z
C12N5/0783
C07K16/28
C07K16/30
C07K16/46
C07K19/00
A61K48/00
A61K39/395 T
A61K39/395 L
A61K35/76
A61K35/17 A
A61K47/68
A61P35/00
(21)【出願番号】P 2019544896
(86)(22)【出願日】2018-02-08
(86)【国際出願番号】 CN2018075859
(87)【国際公開番号】W WO2018149358
(87)【国際公開日】2018-08-23
【審査請求日】2020-01-22
(31)【優先権主張番号】201710087299.2
(32)【優先日】2017-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201810079015.X
(32)【優先日】2018-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522072507
【氏名又は名称】クレージュ メディカル カンパニー,リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CRAGE MEDICAL CO.,LIMITED
【住所又は居所原語表記】RM12,20/F,Ho King Comm CTR,2-16 FaYuen ST,Mongkok Kowloon,Hong Kong,China
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】王鵬
(72)【発明者】
【氏名】王▲華▼茂
【審査官】小田 浩代
(56)【参考文献】
【文献】Kioi, M. et al.,Targeting IL-13Ralpha2-positive cancer with a novel recombinant immunotoxin composed of a single-chain antibody and mutated Pseudomonas exotoxin,Mol. Cancer Ther.,2008年,Vol. 7(6),pp. 1579-1587
【文献】中沢 洋三,キメラ抗原受容体(CAR)を用いた遺伝子改変T細胞療法,信州医誌,2013年,Vol. 61(4),pp. 197-203
【文献】浅野 竜太郎 ほか,タンパク質工学を駆使した高機能性二重特異性抗体の開発,生化学,2014年,Vol. 86(4),pp. 469-473
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
IL-13RA2を特異的に認識する抗体であって、
(1)SEQ ID NO:9、45、46、47、48、49、50、51、63、または64に示されるHCDR1、SEQ ID NO:10、52、53、54、55、56、57、58、65、または66に示されるHCDR2、及びSEQ ID NO:11またはSEQ ID NO:12のいずれかに示されるHCDR3を含む重鎖可変領域を含み;かつ
(2)SEQ ID NO:13に示されるLCDR1、SEQ ID NO:14に示されるLCDR2、及びSEQ ID NO:15またはSEQ ID NO:16のいずれかに示されるLCDR3を含む軽鎖可変領域を含むことを特徴とする、抗体。
【請求項2】
前記抗体とIL-13RA2を内在的に発現するU251細胞との結合相対親和力EC50は、10nM以下であることを特徴とする、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
前記抗体は以下から選ばれるいずれか一種であることを特徴とする、請求項1に記載の抗体:
(1)SEQ ID NO:4に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:8に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体;
(2)SEQ ID NO:2、6、29、31、33、35、37、39、41、43、59または61に示される配列を含む重鎖可変領域を含む抗体。
【請求項4】
前記軽鎖可変領域のCDR領域及び前記重鎖可変領域のCDR領域が以下のいずれかの配列を有することを特徴とする、請求項1に記載の抗体:
(1)SEQ ID NO:13に示されるLCDR1、SEQ ID NO:14に示されるLCDR2及びSEQ ID NO:15に示されるLCDR3;並びに、SEQ
ID NO:9に示されるHCDR1、SEQ ID NO:10に示されるHCDR2及びSEQ ID NO:11に示されるHCDR3;
(2)SEQ ID NO:13に示されるLCDR1、SEQ ID NO:14に示されるLCDR2及びSEQ ID NO:16に示されるLCDR3;並びに、SEQ
ID NO:9に示されるHCDR1、SEQ ID NO:10に示されるHCDR2及びSEQ ID NO:12に示されるHCDR3;
(3)SEQ ID NO:13に示されるLCDR1、SEQ ID NO:14に示されるLCDR2及びSEQ ID NO:16に示されるLCDR3;並びに、SEQ
ID NO:64に示されるHCDR1、SEQ ID NO:66に示されるHCDR2及びSEQ ID NO:12に示されるHCDR3;
(4)SEQ ID NO:13に示されるLCDR1、SEQ ID NO:14に示されるLCDR2及びSEQ ID NO:15に示されるLCDR3;並びに、SEQ
ID NO:45に示されるHCDR1、SEQ ID NO:52に示されるHCDR2及びSEQ ID NO:11に示されるHCDR3;
(5)SEQ ID NO:13に示されるLCDR1、SEQ ID NO:14に示されるLCDR2及びSEQ ID NO:16に示されるLCDR3;並びに、SEQ
ID NO:63に示されるHCDR1、SEQ ID NO:65に示されるHCDR2及びSEQ ID NO:12に示されるHCDR3;
(6)SEQ ID NO:13に示されるLCDR1、SEQ ID NO:14に示されるLCDR2及びSEQ ID NO:15に示されるLCDR3;並びに、SEQ
ID NO:50に示されるHCDR1、SEQ ID NO:56に示されるHCDR2及びSEQ ID NO:11に示されるHCDR3;
(7)SEQ ID NO:13に示されるLCDR1、SEQ ID NO:14に示されるLCDR2及びSEQ ID NO:15に示されるLCDR3;並びに、SEQ
ID NO:46に示されるHCDR1、SEQ ID NO:52に示されるHCDR2及びSEQ ID NO:11に示されるHCDR3;
(8)SEQ ID NO:13に示されるLCDR1、SEQ ID NO:14に示されるLCDR2及びSEQ ID NO:15に示されるLCDR3;並びに、SEQ
ID NO:48に示されるHCDR1、SEQ ID NO:54に示されるHCDR2及びSEQ ID NO:11に示されるHCDR3;
(9)SEQ ID NO:13に示されるLCDR1、SEQ ID NO:14に示されるLCDR2及びSEQ ID NO:15に示されるLCDR3;並びに、SEQ
ID NO:47に示されるHCDR1、SEQ ID NO:53に示されるHCDR2及びSEQ ID NO:11に示されるHCDR3;
(10)SEQ ID NO:13に示されるLCDR1、SEQ ID NO:14に示されるLCDR2及びSEQ ID NO:15に示されるLCDR3;並びに、SEQ ID NO:49に示されるHCDR1、SEQ ID NO:55に示されるHCDR2及びSEQ ID NO:11に示されるHCDR3;
(11)SEQ ID NO:13に示されるLCDR1、SEQ ID NO:14に示されるLCDR2及びSEQ ID NO:15に示されるLCDR3;並びに、SEQ ID NO:51に示されるHCDR1、SEQ ID NO:57に示されるHCDR2及びSEQ ID NO:11に示されるHCDR3;
(12)SEQ ID NO:13に示されるLCDR1、SEQ ID NO:14に示されるLCDR2及びSEQ ID NO:15に示されるLCDR3;並びに、SEQ ID NO:49に示されるHCDR1、SEQ ID NO:58に示されるHCDR2及びSEQ ID NO:11に示されるHCDR3。
【請求項5】
以下のいずれかの配列を有することを特徴とする、請求項3に記載の抗体:
(1)前記軽鎖可変領域はSEQ ID NO:4に示される配列を有し、かつ、前記重鎖可変領域はSEQ ID NO:2に示される配列を有するものである;
(2)前記軽鎖可変領域はSEQ ID NO:8に示される配列を有し、かつ、前記重鎖可変領域はSEQ ID NO:6に示される配列を有するものである;
(3)前記軽鎖可変領域はSEQ ID NO:8に示される配列を有し、かつ、前記重鎖可変領域はSEQ ID NO:61に示される配列を有するものである;
(4)前記軽鎖可変領域はSEQ ID NO:4に示される配列を有し、かつ、前記重鎖可変領域はSEQ ID NO:29に示される配列を有するものである;
(5)前記軽鎖可変領域はSEQ ID NO:8に示される配列を有し、かつ、前記重鎖可変領域はSEQ ID NO:59に示される配列を有するものである;
(6)前記軽鎖可変領域はSEQ ID NO:4に示される配列を有し、かつ、前記重鎖可変領域はSEQ ID NO:39に示される配列を有するものである;
(7)前記軽鎖可変領域はSEQ ID NO:4に示される配列を有し、かつ、前記重鎖可変領域はSEQ ID NO:31に示される配列を有するものである;
(8)前記軽鎖可変領域はSEQ ID NO:4に示される配列を有し、かつ、前記重鎖可変領域はSEQ ID NO:35に示される配列を有するものである;
(9)前記軽鎖可変領域はSEQ ID NO:4に示される配列を有し、かつ、前記重鎖可変領域はSEQ ID NO:33に示される配列を有するものである;
(10)前記軽鎖可変領域はSEQ ID NO:4に示される配列を有し、かつ、前記重鎖可変領域はSEQ ID NO:37に示される配列を有するものである;
(11)前記軽鎖可変領域はSEQ ID NO:4に示される配列を有し、かつ、前記重鎖可変領域はSEQ ID NO:41に示される配列を有するものである;
(12)前記軽鎖可変領域はSEQ ID NO:4に示される配列を有し、かつ、前記重鎖可変領域はSEQ ID NO:43に示される配列を有するものである。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の抗体と、前記抗体と連結する機能性分子とを含み、
前記機能性分子は、腫瘍表面マーカーを標的とする分子、腫瘍を抑制する分子、免疫細胞の表面マーカーを標的とする分子、または測定可能マーカーとして使用される分子から選ばれるものであることを特徴とする、多機能免疫複合体。
【請求項7】
前記腫瘍表面マーカーを標的とする分子は、IL-13RA2を除く他の腫瘍表面マーカーに結合する抗体またはリガンドである;または
前記の腫瘍を抑制する分子は抗腫瘍のサイトカインまたは抗腫瘍の毒素である;
ことを特徴とする、請求項6に記載の多機能免疫複合体。
【請求項8】
前記免疫細胞の表面マーカーを標的とする分子は、免疫細胞表面のマーカーに結合する抗体であり、前記結合する免疫細胞の表面マーカーは、CD3、CD16、CD28から選ばれるものであり、または
前記免疫細胞の表面マーカーを標的とする分子は、T細胞表面マーカーに結合する抗体であり、請求項1~5のいずれかに記載の抗体とT細胞が関与する二機能抗体を形成する;
ことを特徴とする、請求項7に記載の多機能免疫複合体。
【請求項9】
前記多機能免疫複合体は融合ポリペプチドであり、請求項1~5のいずれかに記載の抗体と、前記抗体と連結する機能性分子との間に、さらに連結ペプチドを含むことを特徴とする、請求項8に記載の多機能免疫複合体。
【請求項10】
請求項1~5のいずれかに記載の抗体を含み、順に連結されている請求項1~5のいずれかに記載の抗体、膜貫通領域及び細胞内シグナル領域を含むことを特徴とする、キメラ抗原受容体。
【請求項11】
前記細胞内シグナル領域はCD3ζ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、FcRγ(FCER1G)、FcRβ(FcεR1b)、CD79a、CD79b、FcγRIIa、DAP10及びDAP12のタンパク質の機能シグナル伝達ドメイン、またはその組み合わせから選ばれ、
または前記細胞内シグナル領域はさらに共刺激シグナル伝達ドメインを含み、
前記共刺激シグナル伝達ドメインはCD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ細胞機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83に特異的に結合するリガンド、CDS、ICAM-1、GITR、BAFFR、HVEM(LIGHTR)、SLAMF7、NKp80(KLRF1)、CD160、CD19、CD4、CD8α、CD8β、IL2Rβ、IL2Rγ、IL7Rα、ITGA4、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CD11d、ITGAE、CD103、ITGAL、CD11a、LFA-1、ITGAM、CD11b、ITGAX、CD11c、ITGB1、CD29、ITGB2、CD18、LFA-1、ITGB7、TNFR2、TRANCE/RANKL、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244,2B4)、CD84、CD96(Tactile)、CEACAM1、CRTAM、Ly9(CD229)、CD160(BY55)、PSGL1、CD100(SEMA4D)、CD69、SLAMF6(NTB-A,Ly108)、SLAM(SLAMF1,CD150,IPO-3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、LAT、GADS、SLP-76、PAG/Cbp、NKp44、NKp30、NKp46及びNKG2Dまたはその組み合わせから選ばれるタンパク質の機能シグナル伝達ドメインを含むものであることを特徴とする、
請求項10に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項12】
順に連結されている請求項1~5のいずれかに記載の抗体、CD8及びCD3ζ;
順に連結されている請求項1~5のいずれかに記載の抗体、CD8、CD137及びCD3ζ;
順に連結されている請求項1~5のいずれかに記載の抗体、CD28分子の膜貫通領域、CD28分子の細胞内シグナル領域及びCD3ζ;または
順に連結されている請求項1~5のいずれかに記載の抗体、CD28分子の膜貫通領域、CD28分子の細胞内シグナル領域CD137及びCD3ζ;
を含むことを特徴とする、請求項11に記載のキメラ抗原受容体。
【請求項13】
請求項1~5のいずれかに記載の抗体、
請求項6~9のいずれかに記載の
多機能免疫複合体、または
請求項10~12のいずれかに記載のキメラ抗原受容体;
をコードする核酸。
【請求項14】
請求項13に記載の核酸を含む発現ベクター。
【請求項15】
請求項1~5のいずれかに記載の抗体をコードする核酸を有する発現ベクターを含み、またはゲノム中に請求項1~5のいずれかに記載の抗体をコードする核酸が組み込まれていることを特徴とする、宿主細胞。
【請求項16】
請求項10~12のいずれかに記載のキメラ抗原受容体をコードする核酸を有する発現ベクターを含むウイルス。
【請求項17】
請求項10~12のいずれかに記載のキメラ抗原受容体をコードする核酸、
若しくは請求項10~12のいずれかに記載のキメラ抗原受容体をコードする核酸を含む発現ベクター、
若しくは請求項16に記載のウイルスが形質導入される免疫細胞;または
表面において請求項10~12のいずれかに記載のキメラ抗原受容体を発現する免疫細胞であり、
前記免疫細胞はTリンパ細胞、NK細胞またはNKTリンパ細胞であることを特徴とする、キメラ抗原受容体によって修飾される免疫細胞。
【請求項18】
請求項1~5のいずれかに記載の抗体または該抗体をコードする核酸、または
請求項6~9のいずれかに記載の免疫複合体または該免疫複合体をコードする核酸;または
請求項10~12のいずれかに記載のキメラ抗原受容体または該キメラ抗原受容体をコードする核酸;または
請求項17に記載のキメラ抗原受容体によって修飾される免疫細胞、及び
薬学上許容し得る担体または賦形剤を含むことを特徴とする、医薬品組成物。
【請求項19】
容器、及び容器中に収容されている請求項18に記載の医薬組成物、または
容器、及び容器中に収容されている請求項1~5のいずれかに記載の抗体または該抗体をコードする核酸、または
請求項6~9のいずれかに記載の免疫複合体または該免疫複合体をコードする核酸;または
請求項10~12のいずれかに記載のキメラ抗原受容体または該キメラ抗原受容体をコードする核酸;または
請求項17に記載のキメラ抗原受容体によって修飾される免疫細胞;
を含むことを特徴とする、試薬キット。
【請求項20】
請求項1~5のいずれかに記載の抗体または該抗体をコードする核酸、または
請求項6~9のいずれかに記載の免疫複合体または該免疫複合体をコードする核酸;または
請求項10~12のいずれかに記載のキメラ抗原受容体または該キメラ抗原受容体をコードする核酸;または
請求項17に記載のキメラ抗原受容体によって修飾される免疫細胞;
を有する、IL-13RA2を発現する腫瘍の治療剤。
【請求項21】
前記のIL-13RA2を発現する腫瘍は、脳がん、膵臓がん、卵巣がん、腎臓がん、膀胱がん、膵臓がん、胃がん、腸がん、頭頸がん、甲状腺がん、前立腺がん、またはカポジ肉腫である、請求項20に記載の治療剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は腫瘍の免疫療法または診断分野に係り、より具体的には、IL-13RA2を特異的に識別する抗体及びその応用に係るものである。
【背景技術】
【0002】
悪性神経膠腫(malignant gliomas,MG)は、多形性膠芽細胞腫及びグリオブラストーマ(glioblastoma multiforme)を含み、米国における毎年の新増疾患数は20000件ある。米国脳腫瘍協会( National Brain Tumor Society)の統計によれば、2010年までに、米国では140000人が悪性脳部腫瘍を患っている。悪性神経膠腫(malignant gliomas,MG)は珍しい疾患ではあるが、その悪性の程度及び致死率は非常に高いものである。従来の標準的な治療手段では効果が非常に限定的で、外科手術及び化学療法後の五年生存率も非常に低い。術後再発する患者にとって、新しい治療の選択肢は非常に少ない。そのため、新しい標的、新しい治療手段を開発することは多くの患者の切実なニーズである。
【0003】
インターロイキン13受容体α2(Interleukin-13 Receptor subunit alpha 2,IL-13RA2)は、ヒト神経膠腫等の悪性腫瘍の細胞表面に特異的に高く発現される腫瘍特異性マーカーである(Dehinskiら,(1995)Clin.Cancer Res.1, 1253-1258)。ヒトIL-13RA2はヒト神経膠腫の治療標的として1988年に米国FDAの注意をひき、米国FDAは前後にヒトIL-13RA2治療標的に対する薬品IL-13-PE38及びヒトIL-13RA2に対する一本鎖抗体scFv-PEの融合分子を製造した。IL-13-PE38は神経膠腫、頭頚部腫瘍、卵巣がん及び腎臓がん等の悪性腫瘍の治療において既に治療効果が得られ且つ既に米国FDAによって臨床期治療に入ることが許可され、しかしながら、治療過程においてIL-13-PE38は腫瘍表面において特異的に発現するヒトIL-13RA2と結合するのみでなく、正常組織細胞表面に発現するIL13-RA1とも結合し、正常組織と細胞を損傷する。厳格な標的性に欠けるため、IL-13-PE38のさらなる応用が制限されている。
【0004】
本発明の目的はIL-13RA2に特異的に反応する抗体、及びIL-13RA2を標的とする免疫エフェクター細胞を開発することである。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は抗IL-13RA2の抗体及びその応用を提供することである。
【0006】
第一において、本発明はIL-13RA2を特異的に識別する抗体を提供し、前記抗体とIL-13RA2を内在的に発現するU251細胞との結合相対親和力EC50は100nM以下であり、好ましくは10nM以下であり、さらに好ましくは0.01-10nMである。
【0007】
一つの好ましい例において、前記相対親和力データの処理はGraphPad Prism 5ソフトウェアを使用する(GraphPad Software, Inc)。
【0008】
具体的な実施形態において、前記抗体は以下から選ばれるいずれか一種である。
(1)抗体であって、重鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域はSEQ ID NO:9、45、46、47、48、49、50、51、63、または64に示されるHCDR1、及び/またはSEQ ID NO:10、52、53、54、55、56、57、58、65、または66に示されるHCDR2、及び/またはSEQ ID NO:11またはSEQ ID NO:12のいずれかに示されるHCDR3を含むものである;
(2)抗体であって、軽鎖可変領域を含み、前記軽鎖可変領域はSEQ ID NO:13に示されるLCDR1、及び/またはSEQ ID NO:14に示されるLCDR2、及び/またはSEQ ID NO:15またはSEQ ID NO:16のいずれかに示されるLCDR3を含むものである;
(3)抗体であって、(1)に記載の抗体の重鎖可変領域と(2)に記載の抗体の軽鎖可変領域を含むものである;
(4)抗体であって、(1)~(3)のいずれかに記載の抗体の変異体であり、且つ(1)~(3)のいずれかに記載の抗体と同じまたは類似の活性を有するものである。
【0009】
具体的な実施形態において、前記抗体は以下から選ばれるいずれか一種である。
(1)抗体であって、軽鎖可変領域を含み、該軽鎖可変領域はSEQ ID NO:4に示されるアミノ酸配列、SEQ ID NO:8に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:4及びSEQ ID NO:8に示される変異体の配列を含むものである;
(2)抗体であって、重鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域はSEQ ID NO:2、6、29、31、33、35、37、39、41、43、59または61に示される配列、または前記配列の変異体を含むものである;
(3)抗体であって、(1)に記載の前記抗体の重鎖可変領域及び(2)に記載の前記抗体の軽鎖可変領域を含むものである。
【0010】
具体的な実施形態において、前記抗体の軽鎖可変領域はSEQ ID NO:13に示されるLCDR1、SEQ ID NO:14に示されるLCDR2及びSEQ ID NO:15またはSEQ ID NO:16に示されるLCDR3を含む。
【0011】
具体的な実施形態において、前記抗体の軽鎖可変領域はSEQ ID NO:4または8に示される配列、または前記いずれかの配列と少なくとも80%、例えば、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の類似性を有する配列である。
【0012】
具体的な実施形態において、前記抗体の重鎖可変領域はSEQ ID NO:9、45、46、47、48、49、50、51、63または64に示されるHCDR1、SEQ ID NO:10、52、53、54、55、56、57、58、65または66に示されるHCDR2、及びSEQ ID NO:11またはSEQ ID NO:12に示されるHCDR3を含む。
【0013】
具体的な実施形態において、前記抗体の重鎖可変領域はSEQ ID NO:2、6、29、31、33、35、37、39、41、43、59または61に示される配列を含み、または前記いずれかの配列と少なくとも80%、より好ましくは85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の類似性を有する配列を有する。
【0014】
具体的な実施形態において、前記軽鎖可変領域のCDR領域及び前記重鎖可変領域のCDR領域は下記いずれかの配列又はその変異体を有するものである。
(1)SEQ ID NO:13に示されるLCDR1、SEQ ID NO:14に示されるLCDR2及びSEQ ID NO:15に示されるLCDR3;SEQ ID NO:9に示されるHCDR1、SEQ ID NO:10に示されるHCDR2及びSEQ ID NO:11に示されるHCDR3;
(2)SEQ ID NO:13に示されるLCDR1、SEQ ID NO:14に示されるLCDR2及びSEQ ID NO:16に示されるLCDR3;SEQ ID NO:9に示されるHCDR1、SEQ ID NO:10に示されるHCDR2及びSEQ ID NO:12に示されるHCDR3;
(3)SEQ ID NO:13に示されるLCDR1、SEQ ID NO:14に示されるLCDR2及びSEQ ID NO:16に示されるLCDR3;SEQ ID NO:64に示されるHCDR1、SEQ ID NO:66に示されるHCDR2及びSEQ ID NO:12に示されるHCDR3;
(4)SEQ ID NO:13に示されるLCDR1、SEQ ID NO:14に示されるLCDR2及びSEQ ID NO:15に示されるLCDR3;SEQ ID NO:45に示されるHCDR1、SEQ ID NO:52に示されるHCDR2及びSEQ ID NO:11に示されるHCDR3;
(5)SEQ ID NO:13に示されるLCDR1、SEQ ID NO:14に示されるLCDR2及びSEQ ID NO:16に示されるLCDR3;SEQ ID NO:63に示されるHCDR1、SEQ ID NO:65に示されるHCDR2及びSEQ ID NO:12に示されるHCDR3;
(6)SEQ ID NO:13に示されるLCDR1、SEQ ID NO:14に示されるLCDR2及びSEQ ID NO:15に示されるLCDR3;SEQ ID NO:50に示されるHCDR1、SEQ ID NO:56に示されるHCDR2及びSEQ ID NO:11に示されるHCDR3;
(7)SEQ ID NO:13に示されるLCDR1、SEQ ID NO:14に示されるLCDR2及びSEQ ID NO:15に示されるLCDR3;SEQ ID NO:46に示されるHCDR1、SEQ ID NO:52に示されるHCDR2及びSEQ ID NO:11に示されるHCDR3;
(8)SEQ ID NO:13に示されるLCDR1、SEQ ID NO:14に示されるLCDR2及びSEQ ID NO:15に示されるLCDR3;SEQ ID NO:48に示されるHCDR1、SEQ ID NO:54に示されるHCDR2及びSEQ ID NO:11に示されるHCDR3;
(9)SEQ ID NO:13に示されるLCDR1、SEQ ID NO:14に示されるLCDR2及びSEQ ID NO:15に示されるLCDR3;SEQ ID NO:47に示されるHCDR1、SEQ ID NO:53に示されるHCDR2及びSEQ ID NO:11に示されるHCDR3;
(10)SEQ ID NO:13に示されるLCDR1、SEQ ID NO:14に示されるLCDR2及びSEQ ID NO:15に示されるLCDR3;SEQ ID NO:49に示されるHCDR1、SEQ ID NO:55に示されるHCDR2及びSEQ ID NO:11に示されるHCDR3;
(11)SEQ ID NO:13に示されるLCDR1、SEQ ID NO:14に示されるLCDR2及びSEQ ID NO:15に示されるLCDR3;SEQ ID NO:51に示されるHCDR1、SEQ ID NO:57に示されるHCDR2及びSEQ ID NO:11に示されるHCDR3;
(12)SEQ ID NO:13に示されるLCDR1、SEQ ID NO:14に示されるLCDR2及びSEQ ID NO:15に示されるLCDR3;SEQ ID NO:49に示されるHCDR1、SEQ ID NO:58に示されるHCDR2及びSEQ ID NO:11に示されるHCDR3。
【0015】
具体的な実施形態において、
(1)前記軽鎖可変領域はSEQ ID NO:4に示される配列またはその変異体の配列を有し、前記重鎖可変領域はSEQ ID NO:2に示される配列またはその変異体の配列を有するものである;
(2)前記軽鎖可変領域はSEQ ID NO:8に示される配列またはその変異体の配列を有し、前記重鎖可変領域はSEQ ID NO:6に示される配列またはその変異体の配列を有するものである;
(3)前記軽鎖可変領域はSEQ ID NO:8に示される配列またはその変異体の配列を有し、前記重鎖可変領域はSEQ ID NO:61に示される配列またはその変異体の配列を有するものである;
(4)前記軽鎖可変領域具有SEQ ID NO:4に示される配列またはその変異体の配列を有し、前記重鎖可変領域具有SEQ ID NO:29に示される配列またはその変異体の配列を有するものである;
(5)前記軽鎖可変領域具有SEQ ID NO:8に示される配列またはその変異体の配列を有し、前記重鎖可変領域具有SEQ ID NO:59に示される配列またはその変異体の配列を有するものである;
(6)前記軽鎖可変領域具有SEQ ID NO:4に示される配列またはその変異体の配列を有し、前記重鎖可変領域具有SEQ ID NO:39に示される配列またはその変異体の配列を有するものである;
(7)前記軽鎖可変領域具有SEQ ID NO:4に示される配列またはその変異体の配列を有し、前記重鎖可変領域具有SEQ ID NO:31に示される配列またはその変異体の配列を有するものである;
(8)前記軽鎖可変領域具有SEQ ID NO:4に示される配列またはその変異体の配列を有し、前記重鎖可変領域具有SEQ ID NO:35に示される配列またはその変異体の配列を有するものである;
(9)前記軽鎖可変領域具有SEQ ID NO:4に示される配列またはその変異体の配列を有し、前記重鎖可変領域具有SEQ ID NO:33に示される配列またはその変異体の配列を有するものである;
(10)前記軽鎖可変領域具有SEQ ID NO:4に示される配列またはその変異体の配列を有し、前記重鎖可変領域具有SEQ ID NO:37に示される配列またはその変異体の配列を有するものである;
(11)前記軽鎖可変領域具有SEQ ID NO:4に示される配列またはその変異体の配列を有し、前記重鎖可変領域具有SEQ ID NO:41に示される配列またはその変異体の配列を有するものである;
(12)前記軽鎖可変領域具有SEQ ID NO:4に示される配列またはその変異体の配列を有し、前記重鎖可変領域具有SEQ ID NO:43に示される配列またはその変異体の配列を有するものである。
【0016】
第二の側面において、本発明はIL-13RA2を特異的に識別する抗体を提供し、該抗体は請求項1~9のいずれかに記載の抗体と同じ抗原決定部位を識別するものである。
【0017】
第三の側面において、本発明はIL-13RA2を特異的に識別する抗体を提供し、該抗体は第一の側面のいずれかに記載の抗体と競合的にIL-13RA2に結合するものである。
【0018】
第四の側面において、本発明は第一~第三の側面に記載の抗体をコードする核酸を提供する。
【0019】
第五の側面において、発明は発現ベクターを提供し、第四の側面に記載の核酸を含む。
【0020】
第六の側面において、本発明は宿主細胞を提供し、第五の側面に記載の発現ベクターまたはゲノム中に第四の側面に記載の核酸を組み込んでいるものである。
【0021】
第七の側面において、本発明は一種の多機能免疫複合体(immunoconjugates)を提供し、前記多機能免疫複合体は、
第一~第三の側面に記載の抗体と、それと接続する機能性分子とを含み、
前記機能性分子は、腫瘍表面マーカーを標的とする分子、腫瘍を抑制する分子、免疫細胞の表面マーカーを標的とする分子、または測定可能マーカーから選ばれるものである。
【0022】
具体的な実施形態において、前記腫瘍表面マーカーを標的とする分子は、IL-13RA2を除く他の腫瘍表面マーカーに結合する抗体またはリガンドである;または
前記の腫瘍を抑制する分子は抗腫瘍のサイトカインまたは抗腫瘍の毒素である;
比較的好ましくは、前記サイトカインは、IL-12、IL-15、I型インターフェロン、TNF-alphaから選ばれるものである。
【0023】
具体的な実施形態において、前記免疫細胞の表面マーカーを標的とする分子は、免疫細胞表面のマーカーに結合する抗体であり、好ましくは、前記結合する免疫細胞の表面マーカーは、CD3、CD16、CD28から選ばれるものであり、より好ましくは、前記免疫細胞の表面マーカーに結合する抗体は、抗CD3抗体である。
【0024】
具体的な実施形態において、前記免疫細胞の表面マーカーを標的とする分子はT細胞表面マーカーに結合する抗体であり、第一の側面~第三の側面のいずれかに記載の抗体とT細胞が関与する二機能抗体を形成する。
具体的な実施形態において、前記多機能免疫複合体は融合ポリペプチドであり、第一の側面~第三の側面のいずれかに記載の抗体と、それと連結する機能性分子との間に、さらに連結ペプチドが含まれる。
【0025】
第八の側面において、本発明は第七の側面に記載の多機能免疫複合体をコードする核酸を提供する。
【0026】
第九の側面において、本発明は第一~第三の側面に記載の抗体のキメラ抗原受容体を提供し、前記キメラ抗原受容体は、順的に連結されている:第一の側面~第三の側面のいずれかに記載の抗体、膜貫通領域及び細胞内シグナル領域。
【0027】
具体的な実施形態において、前記細胞内シグナル領域はCD3ζ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、FcRγ(FCER1G)、FcRβ(FcεR1b)、CD79a、CD79b、FcγRIIa、DAP10及びDAP12から選ばれるタンパク質の機能シグナル伝達ドメイン、またはその組み合わせである。
【0028】
具体的な実施形態において、前記細胞内シグナル領域はさらに共刺激シグナル伝達ドメインを含み、前記共刺激シグナル伝達ドメインはCD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ細胞機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、CD83に特異的に結合するリガンド、CDS、ICAM-1、GITR、BAFFR、HVEM(LIGHTR)、SLAMF7、NKp80(KLRF1)、CD160、CD19、CD4、CD8α、CD8β、IL2Rβ、IL2Rγ、IL7Rα、ITGA4、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA-6、CD49f、ITGAD、CD11d、ITGAE、CD103、ITGAL、CD11a、LFA-1、ITGAM、CD11b、ITGAX、CD11c、ITGB1、CD29、ITGB2、CD18、LFA-1、ITGB7、TNFR2、TRANCE/RANKL、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244,2B4)、CD84、CD96(Tactile)、CEACAM1、CRTAM、Ly9(CD229)、CD160(BY55)、PSGL1、CD100(SEMA4D)、CD69、SLAMF6(NTB-A,Ly108)、SLAM(SLAMF1,CD150,IPO-3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、LAT、GADS、SLP-76、PAG/Cbp、NKp44、NKp30、NKp46及びNKG2Dまたはその組み合わせから選ばれるタンパク質の機能シグナル伝達ドメインを含むものである。
【0029】
具体的な実施形態において、前記のキメラ抗原受容体は以下の順番で接続する抗体、膜貫通領域及び細胞内シグナル伝達領域を含む:
第一~第三の側面に記載のいずれかに記載の抗体、CD8及びCD3ζ;
第一~第三の側面に記載のいずれかに記載の抗体、CD8、CD137及びCD3ζ;または
第一~第三の側面に記載のいずれかに記載の抗体、CD28分子の膜貫通領域、CD28分子の細胞内シグナル領域及びCD3ζ;または
第一~第三の側面に記載のいずれかに記載の抗体、CD28分子の膜貫通領域、CD28分子の細胞内シグナル領域CD137及びCD3ζ。
【0030】
第十の側面において、本発明は第九の側面に記載のキメラ抗原受容体をコードする核酸を含む。
【0031】
第十一の側面において、本発明は発現ベクターを提供し、それは第十の側面に記載の核酸を含むものである。
第十二の側面において、本発明はウイルスを提供し、前記ウイルスは第十一の側面に記載の前記ベクターを含む。
第十三の側面において、本発明はキメラ抗原受容体によって修飾される免疫細胞を提供し、
第十の側面に記載の核酸、または第十一の側面に記載の発現ベクターまたは第十二の側面に記載のウイルスが形質導入され、またはその表面に第九の側面に記載のキメラ抗原受容体を発現するもので、
比較的好ましくは、前記免疫細胞はTリンパ細胞、NK細胞またはNKTリンパ細胞とすることができる。
【0032】
具体的な実施形態において、前記免疫細胞はさらに、
外来のサイトカインをコードする配列を携帯し、または
さらに他の種類のキメラ抗原受容体を発現し、該受容体はCD3ζを含まない;または
さらにケモカイン受容体を発現する;
比較的好ましくは、前記ケモカイン受容体はCCRを含み、または
それはPD-1にて発現するsiRNAを低下させることができまたはPD-L1のタンパク質を遮断できる;または
細胞中の内在のPD-1が遺伝子編集技術によってノックアウトされている;または
さらにセーフティスイッチを発現するものである。
【0033】
第十四の側面において、本発明は医薬組成物を提供し、
第一の側面~第三の側面に記載の抗体、または該抗体をコードする核酸、または
第七の側面に記載の免疫複合体または該免疫複合体をコードする核酸;または
第九の側面に記載のキメラ抗原受容体または該キメラ抗原受容体をコードする核酸;または
第十三の側面に記載のキメラ抗原受容体によって修飾される免疫細胞、及び
薬学上許容されるベクターまたは賦形剤を含む。
【0034】
第十五の側面において、本発明は試薬キットを提供し、
容器、及び容器中にある第十四の側面に記載の医薬組成物、または
容器、及び容器中にある第一~第三の側面に記載の抗体または該抗体をコードする核酸、または
第七の面に記載の免疫複合体または該免疫複合体をコードする核酸;または
第九の面に記載の前記キメラ抗原受容体または該キメラ抗原受容体をコードする核酸;または
第十三の側面に記載のキメラ抗原受容体に修飾される免疫細胞を含む。
【0035】
第十六の側面において、本発明は第一~第三の側面に記載の抗体または該抗体をコードする核酸、または第七の側面に記載の免疫複合体または該免疫複合体をコードする核酸;または第九の側面に記載のキメラ抗原受容体または該キメラ抗原受容体をコードする核酸;または第十三の側面に記載のキメラ抗原受容体によって修飾される免疫細胞の、IL-13RA2を発現する腫瘍の治療における用途を提供し、
比較的好ましくは、前記のIL-13RA2を発現する腫瘍は、脳がん(脳腫瘍)、膵臓がん、卵巣がん、腎臓がん、膀胱がん、膵臓がん、胃がん、腸がん、頭頸がん、甲状腺がん、前立腺がん、カポジ肉腫である;最も好ましくは、前記脳がんは星状細胞腫、髄膜腫、稀突起膠細胞腫、神経膠腫から選ばれるものである。
【0036】
以下のように理解すべきである:本発明の範囲内において、本発明の前記各技術的特徴及び下記(例えば実施例)において具体的に記載されている技術的特徴の間は互いに組み合わせることができ、これにより新しいまたは好ましい技術構成となる。字数の関係上、本文では逐一記載しない。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】
図1はIL-13RA2_huFc、IL13RA1_huFcのSDS電気泳動パターンを示したものである(還元条件)。
【
図2】
図2はELISAを用いて31C2、32H4とIL-13RA2及びIL13Ra1の結合を測定したものを示したものである。
【
図3】
図3はELISAを用いて抗体31C2、32H4とラットのIL-13RA2の結合を測定したものを示したものである。
【
図4】
図4はFACsを用いて抗体31C2、32H4とU251(IL-13RA2陽性)及び293T(IL-13RA2陰性)細胞との結合を示したものである。
【
図5】
図5はBiacoreを用いて31C2、32H4(scFv_Fc)の親和力を測定したものを示したものである。
【
図6】
図6はFACsを用いて抗体31C2、32H4のU215細胞と結合するEC50を測定したものである。
【
図7】
図7は親和性成熟のプライマー情報を示したものである。
【
図8】
図8は親和性成熟後にスクリーニングされた10個のクローンの解離定数Kdを示したものである。
【
図9A】
図9Aは31C2の親和性成熟クローンの重鎖配列対比を示したものである。
【
図9B】
図9Bは31C2の親和性成熟クローンのHCDR1及びHCDR2配列を示したものである。
【
図9C】
図9Cは32H4の親和性成熟クローンの重鎖配列対比を示したものである。
【
図9D】
図9Dは32H4の親和性成熟クローンのHCDR1及びHCDR2の配列を示したものである。
【
図10B】
図10Bは抗体5D7、2C7、5G3、2D4、2D3、1B11の特異性に関する鑑定結果を示したものである。
【
図11A】
図11Aは親和性成熟後の、抗体のscFv_Fc形式の30ml発現系における生成及び精製目的物の凝集の程度の測定結果である。
【
図12】
図12は抗体5D7、2C7、5G3、2D4、2D3、1B11のscFv_Fc形式とU251細胞が結合するEC50を示したものである。
【
図13】
図13は異なるCAR-T細胞の体外キラー活性を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明者らは鋭意研究により、IL-13RA2を特異的に識別する抗体を獲得し、一本鎖抗体及びヒト化抗体(humanized antibody)を含む。本発明の抗体は、各種標的性抗腫瘍薬及び腫瘍診断薬の製造に用いることができる。
【0039】
さらに本発明を理解しやすいように、まず幾つかの技術用語について定義を行う。
【0040】
本発明における用語「IL-13RA2」は、CD213A2であり、インターロイキン-13受容体複合体の一つのサブユニットである。380個のアミノ酸残基からなる膜貫通タンパク質である(NCBI Reference Sequence: NP_000631.1)。IL-13RA1(NCBI Reference Sequence: NP_001551.1)と類似し、IL-13との結合が強く、細胞内シグナル領域を有しない。
【0041】
本文中における用語「抗体」とは免疫系の抗原結合タンパクを指し、抗原結合領域を有する完全な全長抗体であって、さらに「抗原結合部分」または「抗原結合領域」を有するフラグメント、または一本鎖例えば一本鎖可変フラグメント(scFv)を含み、さらに本文が提供する抗体の変異体を含む。抗体フラグメントは以下を含むがこれらに限られない:(i)VL、VH、CL及びCH1ドメインからなるFabフラグメント、Fab’及びFab’-SHを含む;(ii)VH及びCH1ドメインからなるFdフラグメント;(iii)単一抗体のVL及びVHドメインからなるFvフラグメント;(iv)単一の可変領域からなるdAbフラグメント(Wardら,1989,Nature 341:544-546);(v)F(ab’)2フラグメント、二つの連結するFabフラグメントの二価フラグメントを含む;(vi)一本鎖Fv分子抗原結合位置;(vii)二重特異性一本鎖Fv二量体(PCT/US92/09965);(viii)「ダイマー」または「トリマー」、遺伝子融合によって構築される多価または多特異性フラグメント;及び、(ix)と同じまたは異なる抗体と遺伝的に融合するscFv。
【0042】
本文における技術用語「Fc」または「Fc領域」は第一定常領域免疫グロブリンドメイン以外の抗体定常領域のポリペプチドを含む。しかし、FcはIgA、IgD及びIgGの最後の二つの定常領域免疫グロブリンドメイン、及びIgE及びIgMの最後の三つの定常領域免疫グロブリンドメイン、及びこれらのドメインN末端のフレキシブルヒンジを含む。IgA及びIgMにとって、FcはJ鎖を含むことができる。IgGにとって、Fcは免疫グロブリンドメインCγ2及びCγ3及びCγ1とCγ2との間のヒンジ領域を含む。Fc領域の境界が変えられるものの、ヒトIgG重鎖Fc領域は通常、そのカルボキシル末端に残基C226またはP230を含むと定義され、その番号はKabatのEU索引によるものである。ヒトIgG1にとって、Fcは本文において残基P232からそのカルボキシル末端を含むものと定義され、その番号はKabatのEU索引によるものである。Fcとは分離された該領域を指すことができ、またはFcポリペプチドに位置するもので、例えば抗体、環境中の該領域である。前記「ヒンジ領域」は抗体の第一及び第二恒定ドメイン間のアミノ酸のフレキシブルポリペプチドを含む。構造上において、IgG CH1ドメインはEU220位に中止し、IgG CH2ドメインは残基EU237位から始まるものである。そのため、IgGにとって、本文中の抗体ヒンジ領域は221(IgG1のD221)から231(IgG1のA231)位を含むと定義され、その番号はKabatのEUインデックスによるものである。
【0043】
技術用語「変異体」とは本出願が提供する抗体の配列と基本的に同じアミノ酸配列を有しまたは基本的に同じヌクレオチド配列がコードする一種類または複数種類の活性を有するポリペプチドである。前記変異体と本出願の実施例中における抗体は同じまたは類似の活性を有するものである。
【0044】
変異体とは親抗体に比べて、少なくとも一つのアミノ酸によって修飾されている。具体的な実施形態において、本文中の変異体配列は好ましくは親抗体配列と少なくとも約80%、より好ましくは約90%、さらに好ましくは約95%、さらにより好ましくは少なくとも約98%、最も好ましくは約99%のアミノ酸配列同一性を有するものである。変異体とは抗体自身を言い、親抗体を含む組成物を指すこともできる。技術用語「アミノ酸修飾」とはアミノ酸置換、追加及び/または欠損を含み、「アミノ酸置換」とはもう一種のアミノ酸を用いて親ポリペプチド配列の特定位置上のアミノ酸を置換するもので、「アミノ酸挿入」とは親ポリペプチド配列中の特定位置にアミノ酸を追加するもので、「アミノ酸欠損」または「欠損」は親ポリペプチド配列中の特定位置上のアミノ酸を除去することをいう。
【0045】
「アミノ酸修飾」とは本分野の既に知られた標準技術を用いて修飾を本発明の抗体に導入したものであり、例えば定位置変異誘導及びPCR介在の変異誘導がある。保守的なアミノ酸置換とは類似の側鎖を有するアミノ酸残基を用いてアミノ酸残基を置換するものである。本分野は類似の側鎖を有するアミノ酸残基ファミリーを定義している。これらのファミリーはアルカリ性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、電気を帯びない極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、バリン、フェニルアラニン、メチオニン)、β分岐側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸を含む。そのため、他の同じ側鎖を有するファミリーのアミノ酸残基を用いて本発明の抗体のCDR領域中またはフレームワーク領域(framework region)中の一つまたは複数のアミノ酸残基を置換でき、さらに改変された抗体(変異体抗体)に残っている機能を測定できる。
【0046】
前記用語「親抗体」とは本出願が提供する抗体または本出願が提供する抗体が変異したもの、または親和性成熟等処理後に得られる抗体で、好ましくは、実施例に示される抗体である。前記親抗体は天然に存在する抗体、または天然に存在する抗体の変異体または改造体である。親抗体とは抗体自身を言い、前記親抗体の組成物、またはそれをコードするアミノ酸配列を含む。
【0047】
本文において使用する用語「抗原決定部位」は抗原エピトープとも言い、IL-13RA2タンパク質配列の連続配列からなり、IL-13RA2タンパク配列の連続しない三次元構造からなることもできる。
【0048】
「抗IL-13RA2の抗体」
本文において、scFvの抗原結合領域に基づく抗原結合タンパクについて記載し、抗体を含む。そのうち組み換えIL-13RA2を用いて、ヒトscFvファージディスプレイ(Phage display)ライブラリーからscFvを選択する。これらの分子は精細な特異性を示している。例えば、該抗体はIL-13RA2のみを識別し、IL-13RA1を識別しない。本発明において特に説明しない場合、IL-13RA2はヒトIL-13RA2を指す。
【0049】
一部の実施形態において、本発明はscFv配列を有する抗体を含み、前記scFv配列は一つまたは複数の重鎖定常領域と融合してヒトグロブリンFc領域の抗体を形成して二価タンパクを生成し、これにより抗体の全体親和力及び安定性を向上させる。また、Fc部分は他の分子(蛍光染料、細胞毒素、放射性同位体等を含むがこれらに限られない)と例えば抗原定量研究に用いられる抗体と直接複合し、これにより抗体を固定して親和性測定に用いる、定方向治療薬輸送に用いる、免疫エフェクター細胞を使用してFc介在の細胞毒性及び多くの他の応用に使用できる。
【0050】
本文が提供する結果は、本発明の抗体のIL-13RA2を標的とする場合の特異性。感受性及び効果を突出させるものである。
【0051】
本発明の分子はファージディスプレイ(Phage display)を用いて一本鎖可変フラグメント(scFv)を鑑定及び選択するものであり、前記一本鎖可変フラグメントのアミノ酸配列は分子にIL-13RA2に対する特異性を付与し且つ本文の全部の抗原結合タンパク質のベースを形成する。そのため、前記scFvは一連の異なる「抗体」分子を設計することに用いることができ、例えば全長抗体を含み、そのフラグメントは例えばFab及びF(ab’)2、融合タンパク(scFv_Fcを含む)、多価抗体であり、即ち、同じ抗原または異なる抗原に対する一種類より多い特異性を有する抗体で、例えば、二重特異性T細胞結合抗体(BiTE)、トリマー抗体等である(Cuestaら、Multivalent antibodies:when design surpasses evolution, Trends in Biotechnology 28: 355-362,2010)。
【0052】
抗原結合タンパクが全長抗体の場合の一部の実施形態において、本発明の抗体の重鎖及び軽鎖は全長とすることができる(例えば、抗体は少なくとも一本で且つ好ましくは二本の完全な重鎖、及び少なくとも一本で且つ好ましくは二本の完全な軽鎖を含む)または抗原結合部位(Fab、F(ab’)2、FvまたはscFv)を含むことができる。他の実施形態において、抗体重鎖定常領域は例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgD及びIgEから選ぶことができる。抗体タイプの選択は、設計される抗体が引き起こす免疫エフェクター機能によって決まるものである。組み換え免疫グロブリンを構築する際、各種免疫グロブリンの同じタイプの定常領域の適切なアミノ酸配列及び広い種類の抗体を生じさせる方法は当業者が知っている方法である。
【0053】
一つの側面において、本発明はIL-13RA2を特異的に識別する抗体を提供し、且つ安定的にヒトIL-13RA2を形質移入したU251細胞との相対親和力EC50は100nMより小さく、好ましくは10nMより小さく、さらに好ましくは0.1-1nMであり、最も好ましくは0.3-0.6nMである。
【0054】
一つの好ましい形態において、本発明の提供するIL-13RA2の抗体は以下を含む:SEQ ID NO:9のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、及び/またはSEQ ID NO:10のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、及び/またはSEQ ID NO:11または12のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3。もう一つの好ましい形態において、本発明の提供するIL-13RA2に結合する抗体は以下を含む:SEQ ID NO:13のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、及び/またはSEQ ID NO:14のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、及び/またはSEQ ID NO:15または16のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3を含む。もう一つの好ましい形態において、本発明が提供するIL-13RA2結合抗体は以下を含む:SEQ ID NO:9のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、及び/またはSEQ ID NO:10のアミノ酸配列を含む重鎖CDR2、及び/またはSEQ ID NO:11または12のアミノ酸配列を含む重鎖CDR3、及びSEQ ID NO:13のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、及び/またはSEQ ID NO:14のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2、及び/またはSEQ ID NO:15または16のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3。好ましくは、前記IL-13RA2に結合する抗体は以下を含む:SEQ ID NO:9に示されるHCDR1、SEQ ID NO:10に示されるHCDR2、SEQ ID NO:11に示されるHCDR3、及びSEQ ID NO:13に示されるLCDR1、SEQ ID NO:14に示されるLCDR2、SEQ ID NO:15に示されるLCDR3を含む;またはSEQ ID NO: 9に示されるHCDR1、SEQ ID NO:10に示されるHCDR2、SEQ ID NO:12に示されるHCDR3,以及SEQ ID NO:13に示されるLCDR1、SEQ ID NO:14に示されるLCDR2、SEQ ID NO:16に示されるLCDR3を含む。
さらに好ましくは、前記IL-13RA2に結合する抗体はSEQ ID NO:9に示されるHCDR1、NO:10に示されるHCDR2、SEQ ID NO:12に示されるHCDR3、及びSEQ ID NO:13に示されるLCDR1、SEQ ID NO:14に示されるLCDR2、SEQ ID NO:16に示されるLCDR3を含む。
【0055】
もう一つの側面において、本発明はIL-13RA2に結合する抗体を提供し、その重鎖可変領域はSEQ ID NO:2またはSEQ ID NO:6の配列、または二者の変異体の配列から選ばれるものである。
【0056】
もう一つの側面において、本発明はIL-13RA2に結合する抗体またはそのフラグメントを提供し、SEQ ID NO:4またはSEQ ID NO:8の軽鎖可変領域配列を含む。
【0057】
これらの重鎖及び軽鎖可変領域の配列はそれぞれIL-13RA2に結合でき、重鎖及び軽鎖可変領域の配列を「混合及びマッチング」させることにより本発明の抗IL-13RA2結合分子を生む。
【0058】
もう一つの側面において、本発明はIL-13RA2に結合する抗体またはそのフラグメントの変異体を提供する。そのため本発明は抗体またはそのフラグメントを提供し、重鎖または軽鎖の可変領域配列と少なくとも80%が同じの重鎖及び/または軽鎖可変領域を有する。好ましくは、重鎖及び/または軽鎖可変領域のアミノ酸配列の同一性は少なくとも85%、より好ましくは90%で、最も好ましくは少なくとも95%、特に96%、さらに特に97%、よりさらに特に98%、最も特に99%であり、例えば80%,81%,82%,83%,84%,85%,86%,87%,88%,89%,90%,91%,92%,93%,94%,95%,96%,97%,98%,99%及び100%を含む。変異体は本出願に記載の前記抗体を母抗体とし、酵母ライブラリースクリーニング、ファージライブラリースクリーニング、点変異等の方法によって得ることができる。
【0059】
もう一つの側面において、本発明は前記の抗IL-13RA2の抗体と同じ抗原結合部位を識別する抗体を提供する。
【0060】
<抗IL-13RA2の抗体特性>
抗体例えば抗IL-13RA2の抗体の結合能力を評価するための標準測定は本分野において知られるものであり、例えばELISA、biacore、ウェスタンブロット及びフローサイトメトリーによる分析である。適切な測定は詳細に実施例中に記載している。
【0061】
<核酸、ベクター及び宿主細胞>
本発明はさらにIL-13RA2に結合する抗体及びそのフラグメントをコードする分離された核酸、ベクター及び前記核酸またはベクターを含む宿主細胞を提供する。核酸は完全細胞、細胞分裂液中または部分的に精製されまたはほぼ精製された形で存在する。
【0062】
標準的な分子生物学技術により本発明の核酸を得ることができ、例えば標準的なPCR増幅またはcDNAクローニング技術により、抗体の軽鎖及び重鎖またはVH及びVLフラグメントをコードするcDNAが得られる。免疫グロブリン遺伝子ライブラリーから得られる抗体(例えば、ファージディスプレイ(Phage display)技術を使用する)について、ライブラリーから抗体をコードする一種類または複数種類の核酸を回収できる。宿主細胞中に外来核酸を導入する方法は本分野において一般的に知られているものであり、使用される宿主細胞に応じて変化できる。
【0063】
好ましい本発明の核酸分子はSEQ ID NO:3またはSEQ ID NO:7から選ばれる軽鎖可変領域、及び/またはSEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:5から選ばれる重鎖可変領域をコードするものである。最も好ましいのは次のような核酸分子で、即ち前記核酸分子はSEQ ID NO:1の重鎖配列、及びSEQ ID NO:3の軽鎖配列またはSEQ ID NO:5の重鎖配列、及びSEQ ID NO:7の軽鎖配列を含むものである。
【0064】
タンパク質を発現させるために、本発明の抗体をコードする核酸を発現ベクター中に組み込むことができる。複数種類の発現ベクターはタンパク質発現に用いることができる。発現ベクターは自己複製した染色体外ベクター、または宿主ゲノム中に組み込まれるベクターを含む。本発明の発現ベクターは、タンパク質を哺乳動物細胞、細菌、昆虫細胞、酵母及びインビトロ系において発現させるものを含むがこれらに限られない。本分野で知られているように、複数の発現ベクターは商業的にまたは他の方式によって得ることができる。本発明中に用いられ抗体を発現させるものである。
【0065】
<免疫複合体>
本発明は多機能免疫複合体を提供し、本文の前記抗体及びさらに少なくとも一種類の他のタイプの機能性分子を含む。前記機能性分子は以下から選ばれるがこれらに限られない:腫瘍表面マーカーを標的とする分子、腫瘍を抑制する分子、免疫細胞の表面マーカーを標的とする分子、または測定可能なマーカーである。前記抗体と前記機能性分子は共有結合、カップリング、付着、クロスリンク等の方式により複合体を形成する。
【0066】
一つの好ましい形態において、前記免疫複合体は以下を含むことができる:本発明の抗体及び少なくとも一種類の腫瘍表面マーカーを標的とする分子、または腫瘍を抑制する分子。前記の腫瘍を抑制する分子は抗腫瘍のサイトカイン、または抗腫瘍の毒素とすることができる。比較的好ましくは、前記サイトカインは以下を含むことができる(これらに限定されない):IL-2、IL-7、IL-12、IL-15、I型IFN、TNF-alpha。具体的な実施形態において、前記腫瘍表面マーカーを標的とする分子は本発明の抗体の標的とする同じ腫瘍の表面マーカー分子である。例えば、前記腫瘍表面マーカーを標的とする分子は腫瘍表面マーカーに結合する抗体またはリガンドであり、例えば本発明の抗体と相乗作用して、より正確に腫瘍細胞を標的とするものである。
【0067】
好ましくは、好ましい形態として、前記免疫複合体は以下を含むことができる:本発明の抗体、及び測定可能マーカー。前記の測定可能マーカーは以下を含むがこれらに限られない:蛍光マーカー、顕色マーカー、例えば:酵素、補因子、蛍光材料、発光材料、生体発光材料、放射性材料、カチオン発射金属及び非放射性の順磁性金属イオンである。一つ以上のマーカーを含むこともできる。測定及び/または分析及び/または診断の目的において、抗体をマークするマーカーは特定の測定/分析/診断技術及び/または方法に依頼し、例えば免疫組織化学染色(組織)サンプル、フローサイトメトリー等である。本分野において知られている測定/分析/診断技術及び/または方法において適切なマーカーは当業者によく知られているものである。
【0068】
一つの好ましい形態において、前記免疫複合体は以下を含む:本発明の抗体及び免疫細胞の表面マーカーを標的とする分子である。前記免疫細胞の表面マーカーを標的とする分子は免疫細胞表面マーカーに結合する抗体またはリガンドであり、免疫細胞を識別でき、本発明の抗体をキャリーして免疫細胞に達することができ、これと共に本発明の抗体は免疫細胞を腫瘍細胞に標的にさせることができ、これにより免疫細胞が特異的に腫瘍を殺傷することを引き起こす。前記免疫細胞表面マーカーはCD3、CD16、CD28から選ぶことができ、さらに好ましくは、免疫細胞表面マーカーに結合する抗体は抗CD3抗体である。免疫細胞はT細胞、NK細胞、NKT細胞から選ばれることができる。
【0069】
直接または間接的に(例えばリンカーにより)複合して化学的に免疫複合体を生成する方式として、前記免疫複合体は融合タンパクとして生成でき、前記融合タンパクは本発明の抗体及び適切な他のタンパク質を含む。融合タンパクは本分野の知られている方法により生成され、例えば核酸分子を構築し及びその後に前記核酸分子を発現することで組み替えることにより生成し、前記核酸分子はリードフレームに適合するコード抗体のヌクレオチド配列及び適切なマーカーをコードするヌクレオチド配列を含む。
【0070】
本発明はもう一つの側面において本発明の少なくとも一種類の抗体、その機能変異体または免疫複合体をコードする核酸分子を提供する。関連の配列を得ることができれば、組み換え法により大量に関連配列を得ることができる。通常はそれをベクターにクローニングして、それから細胞に導入し、それから通常の方法により繁殖後の宿主細胞から分離することで関連配列を得ることができる。
【0071】
もう一つの側面において、本発明はキメラ抗原受容体を提供し、それは細胞外結合ドメイン、膜貫通ドメイン及び細胞内領域を含む。本文に記載の技術用語「キメラ抗体受容体(Chimeric Antigen Receptor,CAR)」とは細胞内細胞伝達ドメインに融合する腫瘍抗原結合ドメインを指し、T細胞を活性化させることができる。よく見られるのは、CARの細胞外結合ドメインはマウスまたはヒト由来またはヒトのモノクローナル抗体である。
【0072】
細胞外結合ドメインは本発明に記載の抗体であり、非制限的な実例は抗体から派生する一本鎖可変フラグメント(scFv)、ライブラリーに由来するフラグメント抗原結合領域(Fab)、単一ドメインフラグメントまたはそれと同由来の受容体に接合する天然リガンドである。一部の実施形態において、細胞外抗原結合領域はscFv、Fabまたは天然リガンド、及びこれらの如何なる誘導体を含むことができる。細胞外抗原結合領域とは、完全抗体以外の分子を指すことができ、完全抗体の一部を含むことができ且つ完全抗体と結合する抗原と結合するものである。抗体フラグメントの実例はFv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2を含むがこれらに限定されない;二機能抗体、線形抗体;一本鎖抗体分子(例えばscFv)及び抗体フラグメントから形成する多特異性抗体である。
【0073】
細胞外抗原結合領域で、例えばscFv、Fabまたは天然リガンドであり、抗原特異性のCARの一部を決めるものとすることができる。細胞外抗原結合領域は如何なる相補ターゲットと結合できる。細胞外抗原結合領域は知られている可変領域配列から派生できる。細胞抗原結合領域は、マウスハイブリドーマの抗体配列から得られることができる。また、腫瘍細胞、または初代細胞例えば腫瘍浸潤リンパ細胞(TIL)のエクソヌクレアーゼ配列決定により細胞外抗原結合領域が得られる。
【0074】
一部の実施形態において、細胞外抗原結合領域の結合特異性は、相補性決定領域またはCDR、例えば軽鎖CDRまたは重鎖CDRによって決まることができる。多くの場合、結合特異性は軽鎖CDR及び重鎖CDRによって決まるものである。他の参考抗原と比べて、与えられた重鎖CDR及び軽鎖CDRの組み合わせは所定の結合ポケットを提供でき、これにより抗原より大きい親和力及び/または特異性を付与できる。
【0075】
本文において開示される如何なる実施形態の幾つかの側面において、細胞外抗原結合領域、例えばscFvは抗原特異性の軽鎖CDRを含むことができる。軽鎖CDRは抗体、例えばCARのscFv軽鎖の相補性決定領域とすることができる。軽鎖CDRは連続的なアミノ酸残基配列を含むことができ、または非相補決定領域(例えばフレームワーク領域)によって隔離された二つまたはさらに多くの連続したアミノ酸残基配列を含むことができる。一部の実施形態において、軽鎖CDRは二つまたはより多くの軽鎖CDRを含むことができ、軽鎖CDR-1、CDR-2等と称されることができる。一部の実施形態において、軽鎖CDRは三つの軽鎖CDRを含むことができ、それぞれ軽鎖CDR-1、軽鎖CDR-2、軽鎖CDR-3と称されることができる。幾つかの実例において、普通の軽鎖上に存在する一組のCDRは全体的に軽鎖CDRと称されることができる。
【0076】
本文が開示する如何なる実施形態の幾つかの側面において、細胞外抗原結合領域、例えばscFvは抗原に特異的な重鎖CDRを含むことができる。重鎖CDRは抗体、例えばscFvの重鎖相補性決定領域とすることができる。重鎖CDRはアミノ酸残基の連続配列、または非相補性決定領域(例えばフレームワーク領域)によって隔離された二つまたはより多くのアミノ酸残基の連続とした配列である。一部の実施形態において、重鎖CDRは二つまたはより多くの重鎖CDRを含むことができ、重鎖CDR-1、CDR-2等と称されるができる。一部の実施形態において、重鎖CDRは三つの重鎖CDRを含むことができ、それぞれ重鎖CDR-1、重鎖CDR-2及び重鎖CDR-3とそれぞれ称されることができる。一部の実施形態において、共同重鎖上に存在する一組のCDRは全体的に重鎖CDRと称されることができる。
【0077】
遺伝子工学により、各種方式により細胞外抗原結合領域を修飾できる。一部の実施形態において、細胞外抗原結合領域を突然変異させることができ、これにより細胞外抗原結合領域を選択してターゲットに対してより高い親和力を有する。一部の実施形態において、細胞外結合領域とそのターゲットの親和力は、正常組織上において低水準で発現するターゲットに対して最適化できる。このような最適化により、潜在的な毒性をなるべく減少させることができる。他の場合において、ターゲットの膜結合形式に対してより高い親和力を有する細胞外抗原結合領域のクローンはその可溶性形式の対応物より優れるものとすることができる。このような修飾により、異なるレベルの可溶形式のターゲットを測定でき、且つそれらのターゲットは期待されない毒性を引き起こすことができる。
【0078】
一部の実施形態において、細胞外抗原結合領域はヒンジまたはスペーサー領域を含む。技術用語のヒンジ及びスペーサー領域は互いに交換して使用できる。ヒンジとは細胞外抗原結合領域に対して柔軟性(フレキシブルさ)を提供するCARの一部と考えることができる。一部の実施形態において、ヒンジは細胞の細胞表面上のCARを測定するもので、特に細胞外抗原結合領域を測定する抗体が作用しないまたは使用できないときに使用できる。例えば、派生免疫グロブリンのヒンジの長さは最適化を必要とする可能性があり、これは細胞外抗原結合領域がターゲット上のエピトープに標的する位置によって決まる。
【0079】
一部の実施形態において、ヒンジ部は免疫グロブリンではなく、他の種類の分子であり、例えばCD8α分子の天然ヒンジ領域である。CD8αヒンジは、CD8補助受容体及びMHC分子の相互作用において作用すると知られているシステイン及びプロリン残基を含むことができる。前記システイン及びプロリン残基は前記CARの性能に影響を及ぼすことができる。
【0080】
CARヒンジはサイズが調整可能である。免疫応答細胞とターゲット細胞の間の免疫シナプスのこれらの形状は細胞表面ターゲット分子上の膜遠端エピトープがCARによって機能性ブリッジする距離に達していなく、即ち短ヒンジCARを用いてもシナプス距離はシグナルが伝達できる近似値に達することはできない。同じように、膜近端部CAR標的抗原エピトープは長ヒンジCARのバックグランド下においてのみシグナルの出力を観察できる。使用する細胞外抗原結合領域を用いてヒンジを調整できる。ヒンジは如何なる長さのものとすることができる。
【0081】
膜貫通ドメイン(transmembrane domain)はCARを細胞の形質膜上にアンカーするものである。CD28の天然膜貫通部分はCARに用いることができる。他の場合において、CARにおいてCD8αの天然膜貫通部分を使用することもできる。「CD8」はNCBIアクセッション番号:NP_001759またはその刺激活性を有するフラグメントと少なくとも85、90、95、96、97、98、99または100%の同一性を有するタンパク質である。「CD8核酸分子」はCD8ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドであり、幾つかの状況において、膜貫通領域はCD28の天然膜貫通部分であり、「CD28」とはNCBIアクセッション番号:NP_006130またはその刺激活性を有するフラグメントと少なくとも85、90、95、96、97、98、99または100%の同一性を有するタンパク質である。「CD28核酸分子」はCD28ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドである。一部の実施形態において、膜貫通部分はCD8α領域を含むことができる。
【0082】
CARの細胞内シグナル伝達領域はCARが中にある免疫応答細胞のエフェクター機能の少なくとも一種を活性化させるものである。CARはT細胞のエフェクター機能を誘導でき、例えば、前記エフェクター機能は細胞溶解活性または補助活性であり、サイトカインの分泌を含む。そのため、技術用語の細胞内シグナル伝達領域はエフェクター機能シグナルを形質移入してさらに細胞の特異機能を誘導するタンパク質部分である。通常は全体の細胞内シグナル伝達領域を使用できるものの、多くの場合、シグナルドメインの全体の鎖を使用する必要はない。一部の実施形態において、細胞内シグナル伝達領域の切断型部分を使用できる。
【0083】
CARにて使用するシグナルドメインの好ましい実例はT細胞受容体(TCR)の細胞質配列及び相乗作用によりターゲット-受容体が結合した後にシグナル伝達を起動する共同受容体、及びそれらの如何なる誘導体または変異体配列及びこれらの配列の同じ機能性を有する如何なる合成配列である。
【0084】
一部の実施形態において、前記細胞内シグナル伝達領域は既に知られている免疫受容体チロシン活性化配列(ITAM)を含むシグナル配列である。細胞質シグナル伝達配列のITAMを含む実例はTCRζ、FcRγ、FcRβ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD5、CD22、CD79a、CD79b及びCD66dから派生されるものを含む。しかし、好ましい実施形態において、細胞内シグナルドメインはCD3ζ鎖から派生するものである。
【0085】
一つまたは複数のITAM配列を含むT細胞シグナルドメインの実例はCD3ζドメインであり、T細胞受容体T3ζ鎖またはCD247とも称される。該ドメインはT細胞受容体―CD3複合体の一部であり、且つ幾つかの種類の細胞内シグナル伝達経路の抗原識別とT細胞の主エフェクター活性化の結合に重要な役割を有する。本文に示されるように、CD3ζは主にヒトCD3ζ及びその同じ型を指し、例えばSwissprotラインP20963で知られるように、基本的に同一の配列を有するタンパク質を含む。キメラ抗原受容体の一部として、再度説明するが、T細胞受容体のT3ζ鎖全体を必要とせず、且つT細胞受容体T3ζ鎖のシグナルドメインを含む如何なる誘導体も適切であり、その如何なる機能を含む均等物を含む。
【0086】
細胞内シグナル伝達ドメインは表1から選ばれるいずれか一つのドメインとすることができる。一部の実施形態において、ドメインを修飾でき、参考ドメインとの同一性は約50%から約100%である。表1の如何なる一つのドメインを修飾でき、これにより修飾された形式は約50、60、70、80、90、95、96、97、98、99または最多100%の同一性を含むことができる。
【0087】
CARの細胞内シグナル伝達領域はさらに一つまたは複数の共刺激ドメインを含むことができる。細胞内シグナル伝達領域はさらに単一の共刺激ドメインを含むことができ、例えばζ鎖(第一世代CAR)またはそのCD28または4-1BB(第二世代CAR)である。他の実例において、細胞内シグナル伝達領域はさらに二つの共刺激ドメインを含むことができ、例えばCD28/OX40またはCD28/4-1BB(第三世代)である。
【0088】
細胞内シグナルドメインは例えばCD8と一緒で、これらの共刺激ドメインはキナーゼ経路の下流の活性化を生じさせることができ、これにより遺伝子転写及び機能性細胞の反応を支持する。CARの共刺激ドメインはCD28(ホスファチジルイノシトール-4,5-二リン酸3-キナーゼ)または4-1BB/OX40(TNF-受容体関連因子連結タンパク)経路及びMAPKとAktの活性化と関連する近位シグナルタンパクを活性化できる。
【0089】
幾つかの場合において、CARによって生じるシグナルは補助または共刺激シグナルと結合できる。共刺激シグナルドメインに対して、キメラ抗原受容体様複合体は幾つかの可能な共刺激シグナルドメインに設計される。当業者が知っているように、幼若T細胞において、T細胞の受容体の単独接合はT細胞が細胞毒性T細胞に完全活性化することを誘導するには至らない。完全の生産性T細胞の活性化は第二共刺激シグナルを必要とする。T細胞活性化に対して共刺激を提供する幾つかの受容体がすでに報道され、CD28、OX40、CD27、CD2、CD5、ICAM-1、LFA-1(CD11a/CD18)、4-1BBL、MyD88及び4-1BBを含むがこれらに限られない。これらの共刺激分子が使用するシグナル伝達経路はいずれも主にT細胞受容体活性化シグナルと共同作用できる。これらの共刺激シグナル伝達領域が提供するシグナルは一つまたは複数のITAM配列(例えばCD3zetaシグナル伝達領域)の主エフェクター活性化シグナル共同作用し、且つT細胞活性化の要求を満たすことができる。
【0090】
一部の実施形態において、キメラ抗原受容体の複合物に共刺激ドメインを添加することでエンジニアリング細胞(engineered cells)の機能及び耐久性を向上できる。他の一部の実施形態において、T細胞ドメインと共刺激ドメインは互いに融合してシグナル伝達領域を構成する。
【0091】
【0092】
キメラ抗原受容体は標的抗原と結合する。インビトロまたは体外においてT細胞活性化を測定する際、各種由来により標的抗原を得るまたは分離することができる。本文において使用する標的抗原は抗原または抗原上の免疫エピトープであり、哺乳動物中において疾患要因または疾患状態を免疫識別及び最終的無くすまたは制御することにおいて重要である。免疫識別は細胞及び/または体液とすることができる。細胞内病原体及びがんの場合、免疫識別は例えばTリンパ細胞反応である。
【0093】
一部の実施形態において、標的抗原は前がんまたは過形成状態に関連する抗原である。標的抗原はがんと関連しまたはがんに起因するものである可能性もある。例えば、一部の実施形態において、本発明のキメラ抗原受容体は本文に記載のIL-13RA2を含む腫瘍抗原を識別且つ結合するものである。
【0094】
一部の実施形態において、本文のキメラ抗原受容体は細胞の形質膜上に存在し、さらにそのターゲットと結合し且つ活性化される場合、前記キメラ抗原受容体の細胞は前記ターゲットをキャリーする細胞に対して細胞毒性を生じる。例えば、一部の実施形態において、前記キメラ抗原受容体は細胞毒性細胞上に存在し、例えばNK細胞または細胞毒性T細胞であり、且つターゲットが活性化される際、前記細胞毒性細胞のターゲット細胞に対する毒性を増大させることができる。一部の実施形態において、本文のキメラ抗原受容体は免疫反応性細胞のIL-13RA2を発現する細胞例えば腫瘍細胞に対する作用を向上できる。一部の実施形態において、本文のキメラ抗原受容体を発現しない細胞に比べ、本文の前記キメラ抗原受容体を発現する細胞はIL-13RA2を発現する細胞の細胞毒性作用より、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも1倍、少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、少なくとも2.5倍、少なくとも3倍、少なくとも3.5倍、少なくとも4倍、少なくとも4.5倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、または少なくとも10倍向上される。
【0095】
目標とする抗原結合受容体またはCARをコードする外来遺伝子を細胞中に組み込む。例えば、外来遺伝子を免疫応答細胞に入れることができ、例えばT細胞である。細胞に挿入する際、外来遺伝子は相補DNA(cDNA)フラグメントとすることができ、これはメッセンジャーRNA(mRNA)のコピーである;またはそのゲノムDNAの原始領域の遺伝子自身である(イントロンを含むまたは含まない)。
【0096】
外来遺伝子配列をコードする核酸は例えばDNAはランダムに細胞の染色体に挿入できる。ランダムな組み込みは核酸(例えばDNA)を細胞に導入する如何なる方法によって行うことが出来る。例えば、該方法は電気穿孔、超音波、遺伝子銃の使用、リポフェクション(lipofection)、リン酸カルシウム形質移入、樹状大分子、顕微注射を使用すること及びアデノウイルス、AAV及びレトロウイルスベクターを含むウイルスベクター、及び/またはII型リボザイムを使用する。
【0097】
外来遺伝子をコードするDNAはレポーター遺伝子を含むように設計でき、これによりレポーター遺伝子の活性化により外来遺伝子またはその発現生成物の存在を測定する。如何なるレポーター遺伝子を使用でき、例えば上記の通りである。細胞培養物中においてそのレポーター遺伝子が活性化された細胞を選択することで、外来遺伝子を含む細胞を選択できる。
【0098】
CARの発現は発現測定法、例えばqPCRまたはRNAのレベルを測定することにより検証できる。発現レベルはコピー数を指すこともできる。例えば、発現レベルが非常に高いであれば、CARの一つ以上のコピーがゲノムに組み込まれていることが示される。また、高い発現とは外来遺伝子を高転写領域に組み入れ、例えば高度に発現するプロモータの近くである。タンパク質のレベルを測定することで発現を検証でき、例えばWesternプロットによって行うことができる。
【0099】
一部の実施形態において、本発明の免疫応答細胞は一種類または複数種類の外来遺伝子を含むことができる。前記一種類または複数種類の外来遺伝子はCARタンパク質を発現でき、該CARタンパク質は抗原上の少なくとも一つのエピトープまたは抗原上の突然変異エピトープを識別さらに結合するものである。一部の実施形態における本発明の免疫応答細胞は一種類または複数種類のCARを含むことができ、または単一のCAR及び二次工程化受容体を含むことができる。
【0100】
一部の実施形態において、外来遺伝子は自殺遺伝子(suicide gene)をコードできる。例えばがん患者の多くの有効的な治療に証明されるように、CAR免疫応答細胞は腫瘍を退化させることができるが毒性を伴う。一部の実施形態において、標的抗原が正常組織及び腫瘍細胞中において共有される際、CAR免疫応答細胞は腫瘍及び正常組織を区別できない可能性がある(オンターゲット/オフターゲット毒性)。他の状況において、免疫系の全身混乱が生じる可能性があり、サイトカイン放出症候群(CRS)と称される。前記CRSは全身炎症反応症候群またはサイトカインストーム(Cytokine Storm)を含むことができ、これはCAR免疫応答細胞が体内において素早くに膨張した結果である。CRSは発熱及び低血圧を特徴とする疾患で、重症者は多臓器機能不全を引き起こすことがある。多くの場合、前記毒性は注入されるCAR免疫応答細胞の体内増殖と関連し、免疫系の全体の混乱を引き起こし、これにより高レベルの炎症性サイトカインを放出でき、例えばTNFα及びIL-6である。自殺遺伝子はCAR免疫反応性細胞の消去を誘導できる。自殺遺伝子は前記CAR免疫反応性細胞中において細胞アポトーシスを誘導する如何なる遺伝子である。自殺遺伝子は前記結合抗原の受容体と共にウイルスベクター内にコードされている。自殺遺伝子をコードすることは特定の状況下において、注入されたCAR免疫反応細胞の体内における増殖により引き起こされる毒性を緩和または徹底的に中止させることができる。
【0101】
一部の実施形態において、正常組織に存在する抗原のCAR免疫反応性細胞が生じることができ、これによりこれらは瞬時的にCARを発現し、例えば受容体をコードするmRNAの電気穿孔後に起きる。また、セーフティスイッチを含むことによりさらにCAR免疫反応性細胞の重大な努力を強化でき、重大なターゲット毒性の場合、CAR免疫反応性細胞を多いに消去することができる。
【0102】
一部の実施形態において、CARをコードするベクターは例えば誘導可能なカスパーゼ-9遺伝子(二量体化学誘導剤によって活性化される)または切断形式のEGF受容体R(モノクローナル抗体セツキシマブにより活性化される)またはRQR8のセーフティスイッチと組み合わせることができる。
【0103】
本文において使用される一つまたは複数の外来遺伝子は異なる種から得ることができる。例えば、一つまたは複数の外来遺伝子はヒト遺伝子、マウス遺伝子、ラット遺伝子、豚遺伝子、牛遺伝子、犬遺伝子、猫遺伝子、サル遺伝子、チンパンジー遺伝子またはその如何なる組み合わせを含むことができる。例えば、外来遺伝子はヒト遺伝子配列を有するヒトに由来することができる。一つまたは複数の外来遺伝子はヒト遺伝子を含むものである。幾つかの状況において、一つまたは複数の外来遺伝子はアデノウイルス遺伝子ではない。
【0104】
以上に記載のように、外来遺伝子はランダムまたは部位特異的(site-specific)の方式により免疫反応性細胞のゲノム中に挿入できる。例えば、外来遺伝子を免疫細胞のゲノム中のランダムな位置に挿入できる。これらの遺伝子は機能性のものであり、例えば、ゲノム中の如何なる位置に挿入する際は完全に機能性のものである。例えば、外来遺伝子はそれ自身のプロモータをコードでき、またはその内部プロモータの制御位置に挿入できる。また、外来遺伝子を遺伝子に挿入でき、例えば遺伝子のイントロンまたは遺伝子のエクソン、プロモータまたは非コード領域である。外来遺伝子を挿入することで挿入が遺伝子を破壊し、例えば内因性の免疫チェック部位である。
【0105】
一部の実施形態において、一つ以上のコピーの外来遺伝子はゲノム内の複数のランダムな位置に挿入できる。例えば、複数のコピーをゲノム中のランダムな位置に挿入できる。外来遺伝子をランダムに一回挿入することに比べ、これは全体の発現の増大をもたらす可能性がある。また、外来遺伝子のコピーは遺伝子中に挿入でき、外来遺伝子のもう一つのコピーは異なる遺伝子中に挿入できる。外来遺伝子を標的とすることができ、免疫反応性細胞のゲノム中の特定位置に挿入させることができる。
【0106】
一部の実施形態において、結合抗原の受容体配列をコードするポリヌクレオチドはプラスミドベクターの形を用いることができる。プラスミドベクターはプロモータを含むことができる。幾つかの場合において、プロモータは組み込み型である。一部の実施形態において、プロモータは誘導できるものである。プロモータはCMV、U6、MNDまたはEF1aから派生されるものとすることができる。一部の実施形態において、プロモータはCAR配列と隣接するものである。一部の実施形態において、プラスミドベクターは切断受容体をさらに含むことができる。一部の実施形態において、切断受容体はCAR配列と隣接するものである。プロモータ配列はPKGまたはMNDプロモータとすることができる。MNDプロモータは骨髄増殖性肉腫ウイルスエンハンサーが修飾するMoMuLV LTRのU3領域の合成プロモータを含むことができる。
【0107】
一部の実施形態において、目標受容体をコードするポリヌクレオチドを設計でき、非ウイルス技術により細胞に導入できる。幾つかの場合において、ポリヌクレオチドは優れた製造規範(GMP)製剤とすることができる。
【0108】
目標結合抗原の受容体またはCARをコードするポリヌクレオチドの発現は一種類または複数種類のプロモータによって制御されることができる。プロモータは一般的に存在するもので、組み込み型(制限されないプロモータ、関連遺伝子の連続転写が可能)、組織特異性プロモータまたは誘導型プロモータがある。プロモータに近接または接近する外来遺伝子の発現を調整できる。例えば、外来遺伝子は一般的に存在するプロモータの近傍または付近に挿入できる。一般的に存在するプロモータはCAGGSプロモータ、hCMVプロモータ、PGKプロモータ、SV40プロモータまたはROSA26プロモータとすることができる。
【0109】
プロモータは内因性(内在的な)または外因性(外在的な)のものとすることができる。例えば、一つまたは複数の外来遺伝子を内因性または外因性のROSA26プロモータの近傍または近接箇所に挿入できる。また、プロモータは免疫反応性細胞の特異性とすることができる。例えば、一つまたは複数の外来遺伝子を豚ROSA26プロモータの近傍または近接箇所に挿入できる。
【0110】
組織特異性プロモータまたは細胞特異性プロモータは発現位置の制御に用いることができる。例えば、一つまたは複数の外来遺伝子を組織特異性プロモータの近傍または近接に挿入できる。組織特異性プロモータはFABPプロモータ、Lckプロモータ、CamKIIプロモータ、CD19プロモータ、ケラチンプロモータ、アルブミンプロモータ、aP2プロモータ、インスリンプロモータ、MCKプロモータ、MyHCプロモータ、WAPプロモータまたはCol2Aプロモータとすることができる。
【0111】
または誘導型プロモータを使用できる。必要であれば、誘導剤を添加または除去することでこれらの誘導型プロモータをオンまたはオフできる。予期される誘導型プロモータはLac、tac、trc、trp、araBAD、phoA、recA、proU、cst-1、tetA、cadA、nar、PL、cspA、T7、VHB、Mx及び/またはTrexとすることができるがこれらに限られない。
【0112】
本文における技術用語「誘導型プロモータ」は制御されるプロモータであり、それは期待の条件が達成されるまで、それと操作可能に連結している遺伝子を発現させずまたは低いレベルで発現させるものであり、期待される条件下が達成した場合それと操作可能に連結している遺伝子を発現させまたは高いレベルで発現させる。
【0113】
しかし、発現に必須でないものの、外来遺伝子配列はさらに転写または翻訳を調整する配列を含むことができ、例えばプロモータ、エンハンサー、絶縁体、内部リボソーム進入部位、2Aペプチド及び/またはポリアデニル酸化シグナルの配列をコードするものである。
【0114】
一部の実施形態において、外来遺伝子は標的結合抗原の受容体またはCARをコードし、そのうち外来遺伝子をセーフティハーバーに挿入し、これにより前記抗原に結合する受容体を発現させる。一部の実施形態において、外来遺伝子をPD1及び/またはCTLA-4遺伝子座に挿入する。他の場合において、外来遺伝子をレンチウイルスにより細胞にランダムに挿入し、PD1-またはCTLA-4特異性ヌクレアーゼはmRNAとして提供できる。一部の実施形態において、外来遺伝子はウイルスベクターシステム、例えばレトロウイルス、AAVまたはアデノウイルス及びセーフティハーバーに対して特異的なヌクレアーゼ(例えばAAVS1、CCR5、アルブミンまたはHPRT)をコードするmRNAによって輸送される。または、PD1及び/またはCTLA-4特異性ヌクレアーゼをコードするmRNAを用いて細胞を処理できる。一部の実施形態において、CARをコードするポリヌクレオチドはウイルス輸送システムによりHPRT特異性ヌクレアーゼPD1-またはCTLA-4特異性ヌクレアーゼをコードするmRNAと共に提供する。本文において開示する方法と組成物と共に使用するCARはすべてのタイプのこれらキメラタンパクを含むことができる。
【0115】
一部の実施形態において、レトロウイルスベクター(γ-レトロウイルスまたはレンチウイルスベクター)を用いて外来遺伝子を免疫反応性細胞に導入できる。例えば、CARをコードする外来遺伝子または抗原に結合する如何なる受容体またはその変異体またはフラグメントはレトロウイルスベクター中にクロ-ニングされ、且つそれは内因性プロモータ、レトロウイルス長端重複配列、またはターゲット細胞タイプに対して特異性を示すプロモータによって駆動される。もちろん非ウイルスベクターを使用できる。非ウイルスベクター輸送系はDNAプラスミド、裸核酸及び輸送ベクター例えばリポソームまたはポロクサマ複合の核酸を含むことができる。
【0116】
既に多くのウイルスに基づく系が開発され、これらは遺伝子を哺乳動物細胞中に形質移入させるものである。例えば、レトロウイルスは遺伝子輸送系に便利なプラットフォームを提供している。本分野において知られている技術により選択された遺伝子をベクターに挿入してさらにレトロウイルス粒子中にパッケージングしている。逆転写ウイルス例えばレトロウイルスから派生した例えばレンチウイルのベクターは長期にわたる遺伝子転移を実現する適切なツールであり、これらは外来遺伝子が長期安定的にその子細胞中において繁殖することを許すものである。レンチウイルスベクターは逆転写ウイルス例えばマウス類白血病ウイルスから派生するベクターに比べて余分な利点を有し、これらは非増殖細胞を形質導入できるからである。これらはさらに低免疫原性という追加の利点を有する。アデノウイルスベクターの利点はこれらはターゲット細胞のゲノム中に融合せず、これによりマイナスの組み込み関連イベントを回避できる。
【0117】
前記結合抗原の受容体をコードする外来遺伝子を用いて細胞に形質移入できる。外来遺伝子の濃度は約100pg(picogram)~50mg(microgram)である。一部の実施形態において、細胞に導入される核酸(例えばssDNA、dsDNAまたはRNA)の量を改変して形質移入効率及び/または細胞活性を最適化させることができる。例えば、それぞれの細胞サンプル中に1mgのdsDNAを添加して電気穿孔に用いることができる。一部の実施形態において、最適な形質移入効率及び/または細胞活力が必要とする核酸(例えば二重鎖DNA)の量は細胞タイプによって異なる。一部の実施形態において、それぞれのサンプルの核酸(例えばdsDNA)の量は直接、形質移入効率及び/または細胞活力に対応する。例えば、一連の形質移入濃度である。ベクターがコードする外来遺伝子は細胞ゲノム中に組み込まれることができる。一部の実施形態において、ベクターがコードする外来遺伝子は前方向に組み込まれている。他の場合において、ベクターがコードする外来遺伝子は逆方向に組み込まれている。
【0118】
全身投薬(例えば静脈内、腹膜内、筋肉内、皮下または頭蓋骨内注入)または局部応用により、個体患者体内にベクターを輸送し、以下に示す通りである。また、ベクターは体外において細胞に輸送されることができ、例えば個体患者(例えばリンパ細胞、T細胞、骨髄吸引物、組織生検)から細胞を取り、それから該ベクターを移入した細胞を選択してさらに細胞を患者体内に再度移植する。選択する前または後において、細胞を増殖させることができる。
【0119】
抗原結合受容体の発現に用いられる適切な免疫反応性細胞は必要とする個体の自身または非自身の細胞(個体自身に由来するものまたは自身由来ではないもの)とすることができる。
【0120】
個体から適切な免疫応答細胞の由来を得ることができる。幾つかの場合において、T細胞を得ることができる。前記T細胞は複数の由来から得ることができ、PBMC、骨髄、リンパ節細胞、臍帯血、胸腺組織及び感染部位、腹水、胸腔滞留液、脾臓組織及び腫瘍組織を含む。幾つかの場合において、いかなる数量の当業者が知っている技術、例えば如FicollTM分離を用いて、前記個体から収集した血液からT細胞を得ることができる。一部の実施形態において、成分採血により個体から循環血液の細胞を得ることができる。成分採血製品は通常リンパ細胞、例えばT細胞、単核細胞、顆粒球(granulocyte)、B細胞、その他の有核白血球、赤血球及び血小板を含む。一部の実施形態において、成分採血により収集された細胞を洗浄することで血漿分を除去しさらに細胞を適切な緩衝液または培地中に入れ後の加工ステップに用いることができる。
【0121】
または、健康なドナー、がんと診断された患者または感染と診断された患者から細胞を派生である。一部の実施形態において、細胞は異なる発現型の混合細胞群の一部である。さらに前記方法により形質移入されたT細胞から細胞株を得ることができる。さらに細胞治療ライブラリーから細胞を得ることができる。本文に記載のいかなる方法により免疫阻害治療に対して抗性のある修飾細胞を得ることができる。さらに修飾前に適切な細胞群を選択できる。修飾後にエンジニアリング細胞群を選択できる。エンジニアリング用細胞は自体(自身)移植に用いることができる。また、細胞は同種異体移植に用いることができる。一部の実施形態において、細胞をサンプルに用いてがんに関連するターゲット配列の同一患者の鑑定に用いられる。他の場合において、細胞をそのサンプルと異なるがんと関連するターゲット配列の患者の患者に用いることができる。
【0122】
一部の実施形態において、適切な初代細胞は末梢血単核球(PBMC)、末梢血リンパ細胞(PBL)及び他の血液細胞亜群を含み、T細胞、天然キラー細胞、単核細胞、天然殺傷剤T細胞、単核細胞前駆体細胞、造血幹細胞または非多能性幹細胞を含むがこれらに限られない。一部の実施形態において、細胞は如何なる免疫細胞とすることができ、如何なるT細胞例えば腫瘍浸潤細胞(TIL)、例えばCD3+T細胞、CD4+T細胞、CD8+T細胞または如何なる他のタイプのT細胞を含む。T細胞はさらに記憶T細胞、記憶幹T細胞またはエフェクターR細胞を含むことができる。大量の群からT細胞を選択でき、例えば全血中からT細胞を選択できる。T細胞は大量の群において増殖できる。T細胞は特定の種及び表現型に偏る傾向がある。例えば、T細胞は表現型としてのCD45RO(-)、CCR7(+)、CD45RA(+)、CD62L(+)、CD27(+)、CD28(+)及び/またはIL-7Rα(+)を含むものに偏ることができる。適切な細胞は以下の配列表中の一種類または複数種類のマーカーから選ぶことができる:CD45RO(-)、CCR7(+)、CD45RA(+)、CD62L(+)、CD27(+)、CD28(+)及び/またはIL-7Rα(+)。適切な細胞はさらに幹細胞を含み、例えば、胚胎幹細胞、誘導された多能幹細胞、造血幹細胞、神経元幹細胞及び間葉系幹細胞である。適切な細胞は如何なる数量の初代細胞を含むことができ、例えばヒト細胞、非ヒト細胞及び/またはマウス細胞である。適切な細胞は前駆細胞とすることができる。適切な細胞は治療を必要とする被験者(例えば、患者)から派生できる。
【0123】
患者に必要とされる治療上有効の細胞の量は細胞の生存力及び細胞が遺伝的に修飾される効率により変化するものである(例えば、外来遺伝子が一つまたは複数の細胞中に組み込まれる効率、または外来遺伝子がコードするタンパク質の発現レベル)。一部の実施形態において、修飾後の細胞の生存力を遺伝する生成物(例えば、倍増)及び外来遺伝子が組み込まれる効率は被験者に対する細胞の治療量に対応できる。一部の実施形態において、遺伝子修飾後の細胞生存力の向上は患者に与えられる治療上有効の必要細胞量の減少をもたらす可能性がある。一部の実施形態において、外来遺伝子を一つまたは複数の細胞中に組み込む効率の向上は患者に与えられる治療上有効の必要細胞量の減少をもたらす可能性がある。一部の実施形態において、必要とされる治療上有効の細胞の量は、細胞が時間に応じて変化する機能を決めることを含むことができる。一部の実施形態において、治療に必要とされる治療上有効の細胞の量を決めることは、経時変化する量に基づいて遺伝子を一つまたは複数の細胞に組み込まれる際の効率の変化に対応する機能を含むことができる(例えば、細胞培養時間、電気穿孔時間、細胞刺激時間)。一部の実施形態において、治療上有効の細胞は細胞群とすることができ、細胞表面上において約30%から約100%抗原結合受容体を発現させるものを含む。一部の実施形態において、フローサイトメトリーにより、治療上有効の細胞は細胞表面上において前記抗原結合受容体を約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75% 80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、99.9%または約99.9%以上発現できる。
【0124】
本発明の一つの側面において、本発明は前記抗原結合受容体をコードする核酸を含む。本発明はさらに前記ポリヌクレオチドの変異体に係り、それは本発明と同じアミノ酸配列を有するポリペプチドまたはポリペプチドのフラグメント、類似体及び誘導体である。
【0125】
本発明はさらに前記免疫応答細胞の表面に発現される抗原に結合する受容体タンパクをコードする核酸のベクターを提供する。
【0126】
本発明はさらに前記ベクターを有するウイルスを含む。本発明のウイルスはパッケージング後の感染力のあるウイルスを含み、感染力を有するウイルスを必需成分とするパッケージング待ちのウイルスを含むこともできる。当業者において知られている他の外因遺伝子を免疫応答細胞に導入するウイルス及びそれに対応するプラスミドベクターも本発明に用いられる。
【0127】
もう一方において、本文は宿主細胞を提供し、それは本文に記載の抗体またはキメラ抗原受容体、及び如何なるI型インターフェロンを含むことができる。一方において、本文は宿主細胞を提供し、それは本文に記載の抗体またはキメラ抗原受容体、及び如何なるI型インターフェロンをコードする核酸を含む。
【0128】
一部の実施形態において、前記宿主細胞は免疫応答細胞である。一部の実施形態において、前記免疫応答細胞はT細胞、ナチュラルキラー細胞、細胞毒性Tリンパ細胞、ナチュラルキラーT細胞、DNT細胞及びまたは調整性T細胞である。一部の実施形態において、前記宿主細胞はNK92細胞である。
【0129】
本発明に記載の免疫応答細胞はさらに外在的なサイトカインをコードする配列を含むことができる。前記のサイトカインはIL-12、IL-15またはIL-21等を含むことができるがこれらに限られない。これらのサイトカインはさらなる免疫調整または抗腫瘍の活性を有し、T細胞及び活性化したNK細胞の機能を強化でき、または直接抗腫瘍作用を発揮する。そのため、当業者は以下のように理解すべきである:これらのサイトカインの運用は前記免疫応答細胞がよりよく作用を発揮することを助けるものである。
【0130】
本発明に記載の免疫応答細胞はさらに、前記抗原結受容体以外のもう一種類の抗原結合受容体を発現するものである。
【0131】
本発明に記載の免疫応答細胞はさらにケモカイン受容体を発現できる;前記ケモカイン受容体はCCR2を含むがこれに限られない。当業者は以下のように理解すべきである:前記CCR2ケモカイン受容体は体内のCCR2と競合的に結合し、腫瘍の転移を遮断することに有利である。
【0132】
本発明に記載の前記免疫応答細胞はさらにPD-1の発現するsiRNAを低減させまたはPD-L1タンパク質を遮断できる。当業者は以下のように理解すべきである;競合的にPD-L1及びその受容体PD-1の相互作用を遮断することは、抗腫瘍T細胞の反応を回復させることに有利で、これにより腫瘍の成長を阻害する。
【0133】
本発明の前記免疫応答細胞はさらにセーフティスイッチを発現できる:比較的好ましくは、前記セーフティスイッチは以下を含む:iCaspase-9,Truancated EGFRまたはRQR8。
【0134】
一部の実施形態において、本発明の免疫応答細胞は例えば4-1BBLのような共刺激リガンドを発現させない。
【0135】
そのため、一方において、本発明は本文に記載の抗体、またはキメラ抗原受容体またはそれらを含む組成物を生成する方法を提供し、適切な条件下において本文に記載の宿主細胞を培養することを含む。一部の実施形態において、前記方法は前記宿主細胞の発現生成物を分離且つ得ることを含む。
【0136】
一方において、本発明は組成物を提供し、本文に記載の抗体、キメラ抗原受容体または核酸を含む。一部の実施形態において、前記組成物は前記抗体、キメラ抗原受容体または核酸を含む薬物組成物である。一部の実施形態において、前記薬学組成物は薬学上許容し得るベクターを含む。
【0137】
もう一方において、本文は薬物組成物を提供し、本文に記載の宿主細胞及び薬学上許容し得るベクターを含むものである。
【0138】
用語における「薬学上許容し得る」とは分子本体及び組成物を適切に動物またはヒトに与える際、それらが望ましくない、過剰のまたは他の不良反応(副作用)が生じないことをいう。
【0139】
一部の実施形態において、前記組成物は他の治療剤を含む。一部の実施形態において、前記他の治療剤は化学療法剤であり、例えばUS20140271820に記載のそれら及び/または薬学上許容し得る塩または類似物である。一部の実施形態において、前記治療剤は有糸分裂阻害剤(ビンカアルカロイド)を含むがこれに限られず、例えばビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシンおよびノビビン(TM)(ビノレルビン、5’-デヒドロ硫化水素)を含む;トポイソメラーゼI阻害剤で、例えばカンプトテシン化合物、CamptosarTM(イリノテカンHCL)、HycamtinTM(トポテカンHCL)、カンプトテシン及びその類似物に由来するその他の化合物を含む;エトポシド、テニポシド、ミドゾズなどのポドフィロトキシン誘導体;アルキル化剤シスプラチン、シクロホスファミド、メクロレタミン(mechlorethamine)、トリメチレンチオホスホラミド、カルムスチン、ブスルファン、クロラムブシル、ブリケタジン、ウラシルマスタード、クロプロフェン ダカルバジンである;代謝拮抗剤で、シタラビン、5-フルオロウラシル、メトトレキサート、グアニジン、アザチオプリン、およびプロカルバジンを含むものである;抗生物質で、ドキソルビシン、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、マイシンマイシン、マイトマイシン、肉腫毒素Cおよびダウノルビシンを含むがこれらに限定されない;及び他の化学療法薬で、抗腫瘍抗体、ダカルバジン、アザシチジン、アモキサコン、メルファラン、イホスファミド、およびミトキサントロンを含むがこれらに限られない。一部の実施形態において、前記他の治療剤はエピルビシン、オキサリプラチン及び5-フルオロウラシルから選ばれる一種類または複数種類である。一部の実施形態において、前記他の治療剤は抗血管生成剤を含むがこれに限られず、抗VEGF抗体(ヒト由来及びキメラ抗体、抗VEGFリガンド及びアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む)及び他の血管発生阻害剤を含み、例えば、アンジオスタチン、エンドスタチン、インターフェロン、インターロイキン-1(αおよびβを含む)インターロイキン12、レチノイン酸およびメタロプロテイナーゼ-1および-2組織阻害剤等である。
【0140】
薬学上許容し得る担体またはその成分の幾つかの物質の具体的な例は糖類で、例えばラクトース、グルコース、スクロースである;デンプン、例えばコーンスターチ、ジャガイモデンプンである;セルロースとその誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、メチルセルロースなどである;トラガカントパウダー;麦芽;ゼラチン;タルク:固体潤滑剤、例えばステアリン酸やステアリン酸マグネシウムなどである;硫酸カルシウム;ピーナッツ油、綿実油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油、ココアバターなどの植物油;プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコールなどのポリオール;アルギン酸;Tweenなどの乳化剤;ラウリル硫酸ナトリウムなどの湿潤剤;着色剤;調味料;、圧縮錠剤;安定剤;酸化防止剤;防腐剤;蒸留水;等張食塩溶液;及びリン酸緩衝液等である。
【0141】
本文に記載の前記薬学組成物は一種類または複数種類の薬学上許容し得る塩を含む。「薬学上許容し得る塩」とは、次のような塩を言い、親化合物の期待される生物学活性が維持されつつ且つ如何なる毒物学効果もない(例えば、Berge,S.Mら, 1977,J.Pharm.Sci.66:1-19参照)。これらの塩の例は酸付加塩及びアルカリ付加塩を含む。
【0142】
酸付加塩は無毒無機酸、例えば塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、亜リン酸等の塩を含む;及び無毒有機酸から派生されるもの、例えば脂肪族モノカルボン酸とジカルボン酸の塩、フェニルによって置換されたアルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、芳香族酸、脂肪族および芳香族スルホン酸等の塩である。アルカリ付加塩はアルカリ土属(例えばナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム等)に由来する塩、及び無毒有機アミンに由来する塩であり、例えば、N、N’-ジベンジルエチレンジアミン、N-メチルグルカミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、プロカインである。
【0143】
本文に記載の薬学組成物はさらに抗酸化剤を含むことができる。抗酸化剤の実例は以下を含むがこれらに限られない:水溶性抗酸化剤、例えばアスコルビン酸、システイン塩酸塩、硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム等である;油溶性酸化防止剤、例えばパルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α-トコフェロール等である、及び、金属キレート剤、例えばクエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸等である。
【0144】
本発明の組成物は必要に応じて各種剤型にすることができ、医師が患者のタイプ、年齢、体重及びおおよその疾患状況、投薬方式等の要因に基づいて患者にとって有益の剤量を決めて施用できる。投薬方式は胃腸外投薬(例えば注射)またはその他の治療方式を用いることができる。
【0145】
免疫原性組成物の「胃腸外」施用は例えば皮下(s.c.)、静脈内(i.v.)、筋肉内(i.m.)または胸骨内注射または点液技術を含む。
【0146】
個体に与える免疫反応性細胞群の製剤は、特定の適応症または疾患を有効的に治療及び/または予防できる複数の免疫反応性を含む。そのため、個体に対して免疫反応性細胞の治療有効群を投与できる。通常の場合、製剤は約1×104から約1×1010個の免疫反応性細胞を含む製剤を施用できる。大半の場合、製剤は約1×105から約1×109個の免疫反応性細胞、約5×105から約5×108個の免疫反応性細胞、または約1×106から約1×107個の免疫反応性細胞を含む。しかし、がんの位置、由来、身分、程度及び深刻さ、治療する個体の年齢及び身体状況等により、個体に対して施用するCAR免疫反応性細胞の数は広い範囲で変化する。医師が使用する適切な剤量を最終的に決める。
【0147】
一部の実施形態において、キメラ抗原受容体を用いて免疫細胞介在の免疫応答を刺激する。例えば、T細胞が介在する免疫応答はT細胞活性化の免疫応答に係るものである。活性化された抗原特異性細胞毒性T細胞は表面上に外因性抗原エピトープを示す標的細胞におけるアポトーシスを誘導し、例えば腫瘍抗原を示すがん細胞である。他の実施形態において、キメラ抗原受容体を哺乳動物に使用して抗腫瘍免疫を提供する。T細胞が介在する免疫システムにより、被験者は抗腫瘍免疫を持つことになる。
【0148】
幾つかの場合において、がんを疾患する被験者を治療する方法は、治療を必要とする被験者に対して一種類または複数種類の本発明に記載の免疫応答細胞を施用することに係る。前記免疫応答細胞は腫瘍ターゲット分子に結合しさらにがん細胞の死亡を誘導する。前記のように、本発明はさらに個体中の病原体感染を治療する方法を提供し、前記個体に対して治療上有効量の本発明の免疫応答細胞を施用することを含む。
【0149】
本発明の免疫反応性細胞の投薬頻度は治療する疾患の要因、特定免疫反応性細胞の素子及び投薬方式によって決める。例えば毎日4回、3回、2回または毎日1回投薬し、1日おき、3日毎に一回、4日毎に一回、5日毎に一回、6日毎に一回、週一回、8日毎に一回、9日毎に一回、10日毎に一回、週一回、または毎月二回投薬される。本文に記載のように、本出願の免疫応答細胞は改善された活力を有し、これにより類似だが外因性I型インターフェロンを発現しない免疫応答細胞に対してより低い治療上有効量にて投薬し、さらにより低い頻度で投薬でき、これにより少なくとも類似の、且つ好ましくはより顕著な治療効果を有するものを得る。
【0150】
一部の実施形態において、組成物は当張性を有し、即ちこれらは血液及び涙液と同じ浸透圧を有する。本発明の組成物の期待される等張性は塩化ナトリウムまたはその薬学上許容し得る薬剤、例えばブドウ糖、ホウ酸、酒石酸ナトリウム、プロピレングリコールまたは他の無機または有機溶質によって実現される。必要であれば、組成物の粘度は薬学上許容される増粘剤により所定のレベルに維持できる。適切な増粘剤は以下:例えば、メチルセルロース、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボマー等を含む。増粘剤の好ましい濃度は、選択された試薬によって異なる。明らかに、適切なベクター及び他の添加剤の選択は適用される適切な投薬経路及び特定剤型の性質によって決められ、特定剤型は例えば液体剤型である。
【0151】
本発明はさらに本文に記載の抗体、キメラ抗原受容体、核酸または免疫応答細胞のキットを含む。一部の実施形態において、キットは有効量の一種類または複数種類の単位製剤の本文に記載の抗体、キメラ抗原受容体、核酸または免疫応答細胞を治療または予防するための組成物を含む。一部の実施形態において、キットは治療または予防性の組成物を含む無菌容器を含むことができる;これらの容器は箱、アンプル、ボトル、バイアル、チューブ、バッグ、ブリスター(blister)によって包装されまたは本分野で知られる他の適切な容器形式とすることができる。このような容器はプラスチック、ガラス、ラミネート紙、金属箔または他の薬物の保持に適した材料によって製造される。一部の実施形態において、前記キットは本文に記載の抗体、キメラ抗原受容体、核酸または免疫応答細胞を含み、及び本文に記載の抗体、キメラ抗原受容体、核酸または免疫応答細胞を個体に投与する説明書を含む。説明書には通常、本文に記載の抗体、キメラ抗原受容体、核酸または免疫応答細胞を用いてがんまたは腫瘍を治療または予防する方法が含まれている。一部の実施形態において、キットは本文に記載の宿主細胞を含み、且つ約1×104個の細胞から約1×106個の細胞を含むことができる。一部の実施形態において、キットは少なくとも約1×105個の細胞、少なくとも約1×106個の細胞、少なくとも約1×107個の細胞、少なくとも約4×107個の細胞、少なくとも約5×107個の細胞、少なくとも約6×107個の細胞、少なくとも約6×107個の細胞、8×107個の細胞、少なくとも約9×107個の細胞、少なくとも約1×108個の細胞、少なくとも約2×108個の細胞、少なくとも約3×108個の細胞、少なくとも約4×108個の細胞、少なくとも約5×108個の細胞、少なくとも約6×108個の細胞、少なくとも約6×108個の細胞、少なくとも約8×108個の細胞、少なくとも約9×108個の細胞、少なくとも約1×109個の細胞、少なくとも約2×109個の細胞、少なくとも約3×109個の細胞、少なくとも約4×109個の細胞、少なくとも約5×109個の細胞、少なくとも約6×109個の細胞、少なくとも約8×109個の細胞、少なくとも約9×109個の細胞、少なくとも約1×1010個の細胞、少なくとも約2×1010個の細胞、少なくとも約3×1010個の細胞、少なくとも約4×1010個の細胞、少なくとも約5×1010個の細胞、少なくとも約6×1010個の細胞、少なくとも約7×1010個の細胞、少なくとも約8×1010個の細胞、少なくとも約9×1010個の細胞、少なくとも約1×1011個の細胞、少なくとも約2×1011個の細胞、少なくとも約3×1011個の細胞、少なくとも約4×1011個の細胞、少なくとも約5×1011個の細胞、少なくとも約8×1011個の細胞、少なくとも約9×1011個の細胞、または少なくとも約1×1012個の細胞を有する。例えば、キット中に約5×1010個の細胞を含むことができる。他の例において、キットは3×106個の細胞を含む;細胞は5×1010個の細胞に増幅しさらに被験者に施用することができる。
【0152】
一部の実施形態において、試薬キットは同種異体細胞を含むことができる。一部の実施形態において、試薬キットはゲノムによって修飾された細胞を含むことができる。一部の実施形態において、試薬キットは「既製の(すぐに使える)」細胞を含むことができる。一部の実施形態において、試薬キットは臨床において使用する細胞を含むことができる。幾つかの場合において、試薬キットは研究目的の内容物を含むことができる。
【0153】
一部の実施形態において、明細書は以下の少なくとも一つを含む:治療剤に対する記載;腫瘍またはその症状を治療または予防するための剤量案及び投薬;予防措置、警告、禁忌、過量情報、副作用、動物薬理学、臨床研究、及び/または引用文献。説明書は容器上(あるとすれば)に印刷でき、または容器上のラベルとして、または容器内または容器中において提供する単独の紙、パンフレット、カードまたはフォルダに印刷できる。一部の実施形態において、説明書は本発明の前記の免疫応答細胞を腫瘍の治療または予防に用いる方法を提供する。幾つかの場合において、説明書は化学治療剤を施用する前、後または同時に本発明の免疫反応性細胞を施用する方法を提供する。
【0154】
もう一つの側面において、本文はさらにIL-13RA2を含むアポトーシスを誘導する方法を提供し、前記方法は前記細胞と本文に記載の抗体、本文に記載のキメラ抗原受容体、本文に記載の組成物、または本文に記載の宿主細胞とを接触させることを含む。一部の実施形態において、前記接触は体外接触である。一部の実施形態において、前記接触は体内接触である。
一部の実施形態において、前記細胞は腫瘍細胞である。一部の実施形態において、前記細胞は脳腫瘍であり、より具体的に、星状細胞腫、髄膜腫、神経膠腫とすることができる。
もう一方において、本文は治療を必要とする個体の腫瘍を治療する方法を提供し、前記方法は前記個体に対して有効量の本文に記載の抗体、キメラ抗原受容体、組成物、ベクターまたは宿主細胞を提供することを含む。
【0155】
一部の実施形態において、被験者に対して免疫反応性細胞を与えることができ、そのうち施用できる免疫反応性細胞は約1日から約35日齢である。例えば、施用される細胞は1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34または最も多くは約40日である。刺激時からCAR免疫反応性細胞の年齢を起算できる。血液採取時から免疫反応性細胞の年齢を起算できる。形質移入時から免疫反応性細胞の年齢を起算できる。一部の実施形態において、被験者に与える免疫反応性細胞は約10日から約14または約20日齢である。一部の実施形態において、免疫反応性細胞の「年齢」はテロメア(telomere)の長さから知ることができる。例えば、「若い」免疫反応細胞は「消耗された」または「老いた」免疫反応性細胞より長いテロメアの長さを有する。特定の理論の束縛を受けず、免疫反応性細胞は培養物中において毎週約0.8kbの予測テロメア長さを無くし、且つ若い免疫反応性細胞培養物は約44日の免疫反応性細胞より約1.5kb長いテロメアを有することができる。特定の理論の束縛を受けず、人々はより長いテロメアの長さは患者の陽性客観臨床反応及び体内細胞の持久性と関連すると考えている。
【0156】
移植前、後及び/または期間中において、細胞(例えば、エンジニアリング細胞またはエンジニアリング化された初代T細胞)は機能的なものである。例えば、移植された細胞は移植後において少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18,19、20、21、22、23、24、25、6、27、28、29、30、40、50、60、70、80、90または100日間作用する。移植細胞は移植後に少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12カ月作用する。移植細胞は移植後に少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25または30年間作用する。一部の実施形態において、移植細胞はレシピエントの寿命期間中において作用できる。
【0157】
また、移植細胞は正常の予測機能の100%で作用できる。移植細胞はその正常な予測機能の約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98または約100%の機能を発揮できる。
【0158】
移植細胞はその正常予測機能の100%を超えて作用を発揮できる。例えば、移植細胞は正常予測機能の約110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、250、300、400、500、600、700、800、900、1000または約5000%の機能を発揮できる。
【0159】
移植とは如何なるタイプの移植により行うことができる。局部とは肝被膜下スペース、脾被膜下スペース、腎被膜下スペース、腹膜(Omentum)、胃または腸の粘膜下層、小腸血管部、静脈のう、精巣、脳、脾臓または角膜を含むがこれらに限られない。例えば、移植は被膜下移植とすることができる。移植は筋肉内移植とすることもできる。移植は門脈移植とすることもできる。
【0160】
一つまたは複数の野生型細胞がレシピエントに移植された場合と比較して、本発明の免疫反応細胞を用いて治療した後は移植拒絶(transplant rejection)反応を改善できる。例えば、移植拒絶は超急性拒絶反応とすることができる。移植拒絶は急性拒絶反応とすることができる。他のタイプの拒絶は慢性拒絶反応を含むことができる。移植拒絶は細胞介在の移植反応またはT細胞介在の拒絶反応とすることもできる。移植拒絶はナチュラルキラー細胞が介在する拒絶反応とすることもできる。
【0161】
改善移植は超急性拒絶反応を減軽することを意味する可能性があり、副作用または症状を減少、減軽または低減を含むことができる。移植とは細胞製品の養子性移植(Adoptive transplantation)を指すことができる。
【0162】
移植成功のもう一つのサインはレシピエントが免疫抑制治療を必要としない日数である。例えば、本発明の免疫応答細胞を提供した後、レシピエントは少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはより多くの日数免疫抑制治療を受けないことができる。これは移植の成功を示している。これは移植された細胞、組織及び/または臓器が拒絶されないと示している。
【0163】
一部の実施形態において、本文に記載の抗体、キメラ抗原受容体、組成物、ベクターまたは宿主細胞はもう一つの治療剤と組み合わせて投薬できる。一部の実施形態において、前記もう一つの治療剤は化学療法剤であり、例えばUS20140271820に記載のものである。本発明の免疫応答性細胞と組み合わせて施用する前記治療剤は有糸分裂阻害剤(ビンカアルカロイド)を含むがこれに限られず、例えばビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシンおよびノビビン(TM)(ビノレルビン、5’-デヒドロ硫化水素)を含む;トポイソメラーゼI阻害剤で、例えばカンプトテシンで、CamptosarTM(イリノテカンHCL)、HycamtinTM(トポテカンHCL)、カンプトテシン及びその類似体に由来するその他の化合物を含む;エトポシド、テニポシド、ミドゾズなどのポドフィロトキシン誘導体;アルキル化剤のシスプラチン、シクロホスファミド、メクロレタミン(mechlorethamine)、トリメチレンチオホスホラミド、カルムスチン、ブスルファン、クロラムブシル、ブリケタジン、ウラシルマスタード、クロプロフェン及びダカルバジンである;代謝拮抗剤で、シタラビン、5-フルオロウラシル、メトトレキサート、グアニジン、アザチオプリン、およびプロカルバジンを含む;抗生物質で、ドキソルビシン、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、マイシンマイシン、マイトマイシン、肉腫毒素Cおよびダウノルビシンを含むがこれらに限定されない;及び他の化学療法薬で、抗腫瘍抗体、ダカルバジン、アザシチジン、アモキサコン、メルファラン、イホスファミド、およびミトキサントロンを含むがこれらに限られない。一部の実施形態において、前記他の治療剤はエピルビシン、オキサリプラチン及び5-フルオロウラシルから選ばれる一種類または複数種類である。
【0164】
一部の実施形態において、本発明の免疫応答細胞と組み合わせて応用される化学治療薬は抗血管生成剤を含むがこれらに限られず、抗VEGF抗体(ヒト由来及びキメラ抗体、抗VEGFリガンド及びアンチセンスオリゴヌクレオチド)及び他の血管発生阻害剤を含み、例えば、アンジオスタチン、エンドスタチン、インターフェロン、インターロイキン-1(αおよびβを含む)インターロイキン12、レチノイン酸およびメタロプロテイナーゼ-1および-2組織阻害剤等を含む。
【0165】
本発明はさらに前記の適切なDNA配列及び適切なプロモータまたは制御配列を含むベクターに係る。これらのベクターは適切な宿主細胞の形質移入に用いることができ、これによりタンパク質を発現できる。宿主細胞は原核細胞、例えば細菌細胞とすることができる;または低等真核細胞、例えば酵母細胞;または高等真核細胞、例えば哺乳動物細胞とすることができる。
【0166】
以下において具体的な実施例と組み合わせて、本発明についてさらに説明する。以下のように理解すべきである。これらの実施例は本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を制限するものではない。下記実施例において具体的な条件の実験方法を記載していないが、通常の条件は例えばJ.サムブルクらによって執筆編集された、分子クローン実験指南、第三版、科学出版社、2002に記載の条件に従い、または製造メーカーの勧める条件に従って行うものである。
【0167】
[実施例1]
<IL-13RA2及びIL-13RA1組み換えタンパクの製造>
a.IL-13RA2_huFc、IL-13RA1_huFc発現プラスミドの構築
体外においてヒトIL-13RA2の細胞外ドメイン(extracellular domain)Asp27-Arg343(SEQ ID NO:18)遺伝子(SEQ ID NO:17)を合成し、該遺伝子をヒトIgG1重鎖定常領域のFcフラグメントAsp104-Lys330を含む真核発現プラスミド中に挿入し、間を「GS」で連結させ、融合発現タンパクIL-13RA2_huFc(SEQ ID NO:22)を形成し、対応の遺伝子配列は例えばSEQ ID NO:11に示される通りである。またIL-13RA1細胞外ドメイン遺伝子(SEQ ID NO:19)をヒトIgG1重鎖定常領域のFcフラグメントAsp104-Lys330を含む真核発現プラスミド中に挿入し、融合タンパクIL-13RA1_huFc(SEQ ID NO:24)を形成し、対応の遺伝子配列はSEQ ID NO:23に示される通りである。
【0168】
b.IL-13RA2_huFc、IL-13RA1_huFcを一過性形質転換及び発現させる
1)形質転換する前日に、6~7×105/mlの293F細胞を125ml培養フラスコ中に接種する;
2)形質転換当日に、3×107細胞を28mlのFreeStyleTM 293 expression medium中で調整する;
3)下記操作ステップに応じてlipid-DNA複合体を準備する;
Opti-MEM Iを用いて30ug DNAを希釈し、最終体積が1mlとなるようにし、充分に混合する;
Opti-MEM Iを用いて60ul 293fectinTMを希釈し、最終体積が1mlとなるようにし、充分に混合する;
室温において5分間インキュベーションする;
4)希釈されたDNAと293fectinTMを混合し、20分間保温インキュベーションする;
5)2mlのDNA-293fectin複合体を28ml細胞中に入れ、37℃、8% CO2、125rpmにて3~4日間培養し、上澄みを回収する;
【0169】
c.IL-13RA2_huFc、IL-13RA1_huFcの精製
1)13000rpmにて培養上澄みを15min遠心する;
2)protein Aフィラーを用いてアフィニティ精製を行い、具体的な操作ステップは以下に示す通りである:
平衡化:10カラム体積分の平衡化buffer平衡protein Aフィラー;
サンプルの添加:0.45μmのフィルターメンブレンにより処理されたサンプルを全部添加する;
不純物除去:20カラム体積分の平衡化bufferで不純物を洗浄し、物質の流出がなくなるまでにフロースルーする;
溶出:10カラム体積分の溶出bufferを入れて目的タンパク質を溶出する(収集チューブ中に予め6%の中和バッファーを入れる)。
【0170】
溶液の配合
平衡化buffer:PBS pH7.4
溶出buffer:0.1M グリシン pH2.6
中和buffer:1M Tris
3)溶出した物を0.22umのメンブレンでろ過した後、カットオフ分子量が10KDであるmillipore超ろ過チューブを用いて濃縮を行い、体積が1ml以内になるように濃縮し、PD-Midi脱塩カラムを用いて脱塩し、1.5mlのサンプルを収集する。OD280/1.47によりタンパク質濃度を測定する。
【0171】
2ugを取ってSDS-PAGEを行い、結果は
図1に示す通りである。
【0172】
[実施例2]
<全人ファージディスプレイライブラリを用いてIL-13RA2に特異的scFvをスクリーニングする>
本発明が使用するファージディスプレイライブラリはわが社が構築した全人(ヒト)の天然のscFvファージディスプレイライブラリであり、ライブラリーの規模は1E+11である。当業者が既に知っているスクリーニング方法によりIL-13RA2に対する高度特異的なscFvフラグメントを得る。簡単に言えば、それぞれ10ug/ml抗原IL-13RA2_huFc及びIL-13RA1_huFcを免疫チューブ中にコーテイングする。特異的にIL-13RA2に結合する抗体をスクリーニングするため、ファージディスプレイライブラリをIL-13RA1_huFcをコーテイングした免疫チューブ中に入れて1hr結合させる。上澄みを取ってIL-13RA2_huFcをコーテイングしている免疫チューブ中に入れて1.5時間結合させ、それから非特異性のファージを洗浄により除去し、結合したファージを溶出させてさらに対数成長期にある大腸菌TG1に感染させる。溶出されたファージを拡大培養してさらにPEG/NaClを用いて沈殿を精製した後に拡大後のファージディスプレイライブラリを次のスクリーニングに使用する。3~4サイクルの淘汰選別を行いIL-13RA2と特異的に結合するscFvファージクローンを濃縮する。IL-13RA2_huFcに対する標準的なELISA法により陽性クローンを確定する。ELISAはIL-13RA1_huFcを無関連抗原として抗体の特異性を検証する。全部で3420個のクローンをスクリーニングし、そのうち44個のクローンはELISA実験において特異的にIL-13RA2_huFcと結合し、IL-13RA1_huFcに結合しない。配列決定により、5つの単一の配列が得られた。これらの5つのクローンを発現及び精製し、そのうち2つのみIL13RA2を発現するU251細胞(中国科学院細胞庫から購入)に特異的に結合している(
図2、4)、クローンの名称は31C2、32H4である。
【0173】
31C2の重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:2に示される通りであり、軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:4に示される通りである;32H4の重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO:6に示される通りであり、軽鎖可変領域のアミノ酸配列如SEQ ID NO:8に示される通りである。31C2のHDCR1のアミノ酸配列はSEQ ID NO:9に示される通りであり、HDCR2のアミノ酸配列はSEQ ID NO:10に示される通りであり、HDCR3のアミノ酸配列はSEQ ID NO:11に示される通りであり、LDCR1のアミノ酸配列はSEQ ID NO:13に示される通りであり、LDCR2のアミノ酸配列はSEQ ID NO:14に示される通りであり、LDCR3のアミノ酸配列はSEQ ID NO:15に示される通りである;32H4のHDCR1のアミノ酸配列はSEQ ID NO:9に示される通りであり、HDCR2のアミノ酸配列はSEQ ID NO:10に示される通りであり、HDCR3のアミノ酸配列はSEQ ID NO:12に示される通りであり、LDCR1のアミノ酸配列はSEQ ID NO:13に示される通りであり、LDCR2のアミノ酸配列はSEQ ID NO:14に示される通りであり、LDCR3のアミノ酸配列はSEQ ID NO:16に示される通りである。
【0174】
[実施例3]
<ELISA結合実験>
標準的なELISA法を用いて抗体31C2、32H4の種属特異性を測定する。ラットIL-13RA2はSino Biological Inc社から購入したものである。5ug/ml、100ul/ウェル ラットIL-13RA2でELISAプレートをコーテイングし、4℃において終夜放置する。PBSを用いてコーテイングされたELISAプレートを3回洗浄する。200ul/ウェルの2%脱脂粉乳を含むPBSを入れて室温にて1hrブロックする。PBSを用いて3回洗浄する。段階的に希釈された抗体を入れ、開始濃度は10ug/ml、3倍に希釈され、室温において1hrインキュベーションする。PBSTを用いて3回洗浄し、PBSを用いて3回洗浄する。HRPによってマークされたヒツジ抗ヒトFcを添加し、室温にて1hrインキュベーションする。PBSTで3回洗浄し、PBSで3回洗浄する。TMBを添加して15分間呈色した後、硫酸を入れて反応を終了させマイクロプレートリーダを用いて読み出す。結果は
図3に示される通りである。抗体31C2はラットIL-13RA2と結合できるが、32H4はラットIL-13RA2と結合しない。
【0175】
[実施例4]
<抗IL-13RA2scFv_Fc融合抗体の構築及びその真核細胞中における一過性形質転換(transient transfection)と精製、活性鑑定>
それぞれ31C2、32H4のVH及びVLフラグメントに対してプライマーを設計し、15個のフレキシブルなアミノ酸(GGGGSGGGGSGGGGS)からなるlinkerを導入して連結してscFvとなる;VH上流において適切な酵素消化部位及び保護塩基を導入し、VLの下流において適切な酵素消化位置及び保護塩基を導入する。1%アガロースゲル電気泳動によりPCR生成物を分析しさらに精製して回収を行う。酵素切断(消化)した後に適切な真核発現ベクターに組み込む。293fectin<商標> Transfection reagent (Invitrogen,12347-019)またはポリエチレンイミン(PEI)(Sigma-Aldrich,408727)を用いて対数成長期の293F細胞を一過性形質転換させる。形質転換してから5~7日後に培養上澄みを収集してProtein Aによりアフィニティ精製を行う。
【0176】
フローサイトメトリーにより抗体とIL-13RA2を内在的に発現するU251細胞との結合を測定し、293T細胞を陰性細胞コントロールとする。FACs測定の具体的な方法は以下である:細胞を得て、成長培地を用いて細胞を一回洗浄し、PBS中に再懸濁させ、細胞濃度が4E+5細胞/mlとなるように調整する。氷上において希釈されたscFv_Fc融合抗体と細胞を30分間インキュベーションし、抗体の濃度は111nMである。それからFITCによって標識される抗ヒトIgG二次抗体とインキュベーションを行う。二つの洗浄ステップの後に、Guava easyCyteTM HT System装置を用いて測定を行う。
図4は抗体31C2、32H4 scFv_Fc融合形式及びU251と293T細胞の結合状況を示している。この二つの抗体はいずれも特異的に内在的にIL-13RA2を発現するU251細胞と結合し、陰性細胞293Tには結合しない。
【0177】
[実施例5]
<表面プラズモン共鳴技術(Surface Plasmon Resonance,SPR)を用いて抗体の親和力を測定する>
異なる抗体のIL-13RA2に対する親和力についてbiacoreT200を用いて測定した。具体的なやり方は下記の通りである:
IL-13RA2_huFcを、アミノ基カップリングの方式によりCM5チップ上にコーテイングし、500RU前後にコーテイングする。段階的に希釈された抗体を流動相として30ul/minの流速にて抗原をコーテイングした通路を通過させる。動作緩衝液はHBS-Nであり、温度は25℃である。実験データについてはBIAevaluation3.2を用いて解析を行い、キネティック曲線は1:1のlangmuirモデルを用いてフィッテイングを行う。そのうち31C2(scFv_Fc)のKDは1.79nMで、32H4(scFv_Fc)のKDは3.76nMである(
図5参照)。
【0178】
[実施例6]
<FACsを利用して抗体とU251細胞の結合EC50を測定する>
細胞を収集し、成長培地を用いて細胞を一回洗浄し、PBS中に改めて再懸濁させ、細胞濃度が4E+5細胞/mlとなるように調整する。氷上において段階的に希釈されたscFv_Fc融合抗体と細胞を30分間インキュベーションさせ、抗体の開始濃度は500nMで、5倍希釈し、8つの段階の濃度を有する。それからFITCで標識された抗ヒトIgG二次抗体とインキュベーションする。二回の洗浄ステップの後に、Guava easyCyteTM HT System装置を用いて測定を行う。結果は
図6に示される通りであり、そのうちの二つの抗体はU251細胞と段階的濃度に依存するように結合し、31C2(ScFv_Fc)のEC50は2.8nMで、32H4(ScFv_Fc)のEC50は1nMである。
【0179】
[実施例7]
<抗体の親和性成熟>
ファージディスプレイ技術を用いて親和性成熟を行う。
31C2及び32H4を親抗体として、それぞれ二つのファージディスプレイライブラリを構築し、一つはランダム化された軽鎖のCDR1及びCDR2で、もう一つはランダム化された重鎖CDR2及びCDR2である。それから抗原に対して選別を行い、SPR技術を用いて高い親和力を有する抗体をスクリーニングし、即ち31C2及び32H4の変異体である。プライマーの情報は
図7に示される通りである。
【0180】
まずは抗体31C2(scFv)(アミノ酸配列SEQ ID NO:25、核酸配列SEQ ID NO:26)に基づいてテンプレートプラスミドを構築する。軽鎖CDR1及びCDR2のランダム化されたファージディスプレイライブラリに対し、プライマーLMF及びIL1Rを用いて、PCRでフラグメント1を増幅させる;プライマーIL2F及びFdRを使用し、PCRを用いてフラグメント2を増幅させる;それからブリッジPCRによりフラグメント1及びフラグメント2を連結させてランダム化配列のscFv全長を得て、それからNcoI及びNotIを用いて全長フラグメントを酵素切断(消化)し、T4リガーゼにより同じように酵素切断されたテンプレートプラスミド中に連結させ、且つ電気形質転換によりTG1コンピテントセル中に形質移入し、ライブラリー規模は1.68E+9である。重鎖CDR1及びCDR2のランダム化されたファージディスプレイライブラリに対して、プライマーLMF及びBH1Rを使用し、PCRを用いてフラグメント3を増幅させる;プライマーBH2F及びFdRを使用して、フラグメント4をPCRにより増幅させる。それからブリッジPCRによりフラグメント3及び4を接続させることによりランダム化配列を含むscFvの全長を得て、それからNcoI及びNotI酵素を用いて全長フラグメントを切断させ、T4リガーゼにより同様に酵素切断されたテンプレートプラスミド中に導入し、それからTG1コンピテントセル中に電気形質移入させ、ライブラリーの規模は1.75E+9である。
【0181】
抗体32H4の親和性成熟ライブラリーの構築は31C2と類似し、抗体32H4(scFv)(アミノ酸配列SEQ ID NO:26、核酸配列SEQ ID NO:27)に基づいてテンプレートプラスミドを構築する。31C2と同じプライマーを用いることにより軽鎖のCDR1及びCDR2をランダム化し、得られたファージディスプレイライブラリの規模は2.1E+9である。類似のように31C2と同じプライマーを用いることで重鎖のCDR1及びCDR2をランダム化させ、得られたファージディスプレイライブラリの規模は1.5E+9である。
【0182】
[実施例8]
<ファージディスプレイライブラリのスクリーニング>
本発明実施例2の方法を参照する。抗原IL13RA2_huFcの開始濃度は50nMで、2倍に段階的に希釈して次のスクリーニングを行う。淘汰選別を2~3サイクル行いIL13RA2_huFcと特異的に結合するscFvファージクローンを濃縮させる。IL13RA2_huFcに対する標準ELISA法により陽性クローンを決定する。ELISAはヒトIL13RA1_huFcフラグメントを無関連抗原として用いて抗体の特異性を検証する。全部で111個のELISA陽性のクローンを取り、新に誘導した後にbiacoreにより上澄みの解離定数Kdを測定する。そのうち10個のクローンの解離定数Kdは母クローンより10倍以上低く、
図8に示される通りである。
【0183】
配列決定により、クローン2C7、2D3、1D11、1B11、2A5、2D4、1H7、1D8の軽鎖は31C2と同じである (アミノ酸配列SEQ ID NO:4、核酸配列SEQ ID NO:3)。
図9Aはクローン2C7(アミノ酸配列SEQ ID NO:29、核酸配列SEQ ID NO:30)、2D3(アミノ酸配列SEQ ID NO:31、核酸配列SEQ ID NO:32)、1D11(アミノ酸配列SEQ ID NO:33、核酸配列SEQ ID NO:34)、1B11(アミノ酸配列SEQ ID NO:35、核酸配列SEQ ID NO:36)、2A5(アミノ酸配列SEQ ID NO:37、核酸配列SEQ ID NO:38)、2D4(アミノ酸配列SEQ ID NO:39、核酸配列SEQ ID NO:40)、1H7(アミノ酸配列SEQ ID NO:41、核酸配列SEQ ID NO:42)、1D8(アミノ酸配列SEQ ID NO:43、核酸配列SEQ ID NO:44)及び31C2(アミノ酸配列SEQ ID NO:2、核酸配列SEQ ID NO:1)の重鎖アミノ酸配列を比較している。
【0184】
そのうち、31C2の親和性成熟クローンのHCDR1の配列はそれぞれ例えばSEQ ID NO:45-51に示される通りであり、HCDR2の配列はそれぞれSEQ ID NO:52-58に示される通りであり、具体的には
図9Bを参照すること。
【0185】
親抗体31C2のVHに比べて、2C7は四つの部位(site)の変異を有し、類似性は96.7%である;2D3は5つの部位の変異を有し、類似性は95.8%である;1D11は6つの位置の変異を有し、類似性は95%である;1B11は5個の位置の変異を有し、類似性は95.8%である;2A5は4つの位置の変異を有し、類似性は96.7%である;2D4は5つの位置の変異を有し、類似性は95.8%である;1H7は4つの位置の変異を有し、類似性は96.7%である;1D8は四つの位置の変異を有し、類似性は96.7%である。
【0186】
配列決定により、クローン5G3、5D7の軽鎖は32H4と同じである(アミノ酸配列SEQ ID NO:8、核酸配列SEQ ID NO:7)。
図9Cはクローン5G3(アミノ酸配列SEQ ID NO:59、核酸配列SEQ ID NO:60)、5D7(アミノ酸配列SEQ ID NO:61、核酸配列SEQ ID NO:62)及び32H4(アミノ酸配列SEQ ID NO:6、核酸配列SEQ ID NO:5)の重鎖アミノ酸配列を比較している。
【0187】
そのうち、32H4の親和性成熟クローンのHCDR1の配列はそれぞれSEQ ID NO:63、64に示す通りであり、HCDR2の配列はそれぞれSEQ ID NO:65、66に示す通りであり、具体的には
図9Dを参照すること。
【0188】
親抗体32H4のVHに比べて、5G3は5つの部位(site)の変異を有し、類似性は95.7%である;2D3は5つの部位の変異を有し、類似性は95.8%である;5D7は8つの部位の変異を有し、類似性は95%である;1B11は5つの部位の変異を有し、類似性は93.2%である。
【0189】
[実施例9]
<scFvの発現及び精製>
抗体遺伝子を含むTG1に対して線画培養を行い、単一のクローンを選択して2xTY-Amp-5% Glucose培地中に接種し、37℃、220rpmにおいてOD600nM = 0.8~0.9となるように培養し、最終濃度は1 mM IPTGを入れ、25℃ 220rpmにおいて終夜培養し、scFvの発現を誘導する。
【0190】
遠心して菌体を収集し、30mM Tris HCl、20%ショ糖、1 mM EDTA pH 8.0(各グラム菌体80mlとして)で氷浴中に懸濁させ、4℃、8000gで遠心し、上澄みAを取り、沈殿を5mM MgSO4 8mlで氷浴中で懸濁させ、軽く10分間振とうさせ、4℃に、8000gで遠心し、上澄みBを取る。上澄みA及び上澄みBを合併し、12000gで15分間遠心し、上澄み即ちcold osmotic shock fluidを取る。
【0191】
ニッケルカラムを用いてアフィニティ精製を行い、biacoreT200を用いて親和力を測定し、親和性成熟抗体の結合解離定数は
図10Aに示される通りである。
【0192】
実施例3の方法を参照し、標準的なELISAにより抗体5D7、2C7、5G3、2D4、2D3、1B11の特異性を測定する。結果は
図10Bに示される通りである。そのうち親抗体31C2に由来するクローン1B11、2C7、2D3、2D4は特異的にヒトIL13RA2に結合し、IL13RA1に結合せず、且つラットIL13RA2と交差反応を有する。親抗体32H4のクローン5D7、5G3は特異的にヒトIL13RA2と結合し、ヒトIL13RA1と結合せず、ラットIL13RA2と結合しない。
【0193】
[実施例10]
<抗体scFv_Fc形式の発現及び親和性測定>
そのうちの親和力の比較的高い六つの抗体、5D7、2C7、5G3、2D4、2D3、1B11を選んで、scFv_Fc融合形式の構築を行う。
【0194】
実施例4を参照し、VHの上流に適切な酵素切断(消化)部位及び保護塩基を導入し、VLの下流において適切な酵素切断(消化)部位及び保護塩基を導入する。1%アガロースゲル電気泳動によりPCR生成物を分析し且つ精製回収を行う。酵素消化した後にヒトFcフラグメントを含む真核発現ベクターV152中に連結させる(上海鋭勁生物技術有限公司から購入したもの)。293Fectinにより30ml 293F細胞中に一過性形質転換してさらに発現させる。形質転換の5-7日後に培養上澄みを収集してProtein Aによりアフィニティ精製を行う。SECを用いて抗体の凝集する様子を分析する。結果は
図11に示される通りである。
【0195】
実施例5の方法を参照して、biacoreT200を用いて親和力を測定し、結果は
図11B-11Gに示される通りである。親和性成熟後の抗体の親和力は親抗体に比べて3~10倍向上されている。抗体の結合解離定数は
図11Fに示される通りである。
【0196】
[実施例11]
<抗体のscFv_Fc形式のU251細胞との結合EC50の測定>
実施例6の方法を参照して、細胞を収集し、成長培地で細胞を洗浄し、PBS中に再懸濁させ、細胞濃度が4E+5細胞/mlとなるように調整する。氷上において段階的に希釈されたscFv_Fc融合抗体と細胞を30分間インキュベーションさせ、抗体の開始濃度は2000nMで、5倍希釈し、11個の段階を有する。それからFITCで標識した抗ヒトIgG二次抗体とインキュベーションする。二回の洗浄ステップ後に、Guava easyCyteTM HT System装置を用いて測定を行う。結果は
図12に示される通り、抗体5D7、2C7、5G3、2D4、2D3、1B11のscFv_Fc形式のU251細胞との結合EC50がそれぞれ0.56nM、0.57nM、0.53nM、0.37nM、0.33nM、0.47nMである。母抗体と比べて2~8倍向上されている。
【0197】
[実施例12]CAR-T細胞の製造
<2D4及び5G3を用いてCAR-T細胞の製造及び抗腫瘍活性の研究を行う。>
1.レンチウイルスパッケージングプラスミドpRRL-hu8E3-28Zの構築
PRRLSIN-cPPT.EF-1αをベクターとして、抗体2D4及び5G3のキメラ抗原受容体を発現するレンチウイルスプラスミドを構築し、PRRLSIN-cPPT.EF-1α-2D4-28Z、PRRLSIN-cPPT.EF-1α-2D4-BBZ、PRRLSIN-cPPT.EF-1α-2D4-28BBZ以及PRRLSIN-cPPT.EF-1α-5G3-28Z、PRRLSIN-cPPT.EF-1α-5G3-BBZ、PRRLSIN-cPPT.EF-1α-5G3-28BBZを含む。
【0198】
2D4-28Z配列はCD8αシグナルペプチド(SEQ ID NO:68)、2D4scFv(SEQ ID NO:67)、CD8 hinge(SEQ ID NO:69)、CD28膜貫通領域(SEQ ID NO:70)及び細胞内シグナル伝達ドメイン(SEQ ID NO:71)及びCD3の細胞内フラグメントCD3ξ(SEQ ID NO:72)からなるものである。
【0199】
2D4-BBZ配列はCD8αシグナルペプチド(SEQ ID NO:68)、2D4scFv(SEQ ID NO:67)、CD8 hinge(SEQ ID NO:69)、CD8膜貫通領域(SEQ ID NO:73)、CD137の細胞内シグナル伝達ドメイン(SEQ ID NO:74)及びCD3の細胞内フラグメントCD3ξ(SEQ ID NO:72)からなるものである。
【0200】
2D4-28BBZ配列はCD8αシグナルペプチド(SEQ ID NO:68)、2D4scFv(SEQ ID NO:67)、CD8 hinge(SEQ ID NO:69)、CD28膜貫通領域(SEQ ID NO:70)及び細胞内シグナル伝達ドメイン(SEQ ID NO:71)、CD137の細胞内シグナル伝達ドメイン(SEQ ID NO:74)及びCD3の細胞内フラグメントCD3ξ(SEQ ID NO:72)からなるものである。
【0201】
5G3-28Z配列はCD8αシグナルペプチド(SEQ ID NO:68)、5G3scFv(SEQ ID NO:75)、CD8 hinge(SEQ ID NO:69)、CD28膜貫通領域(SEQ ID NO:70)及び細胞内シグナル伝達ドメイン(SEQ ID NO:71)並びにCD3の細胞内フラグメントCD3ξ(SEQ ID NO: 72)からなるものである。
【0202】
5G3-BBZ配列はCD8αシグナルペプチド(SEQ ID NO:68)、5G3scFv(SEQ ID NO: 75)、CD8 hinge(SEQ ID NO:69)、CD8膜貫通領域(SEQ ID NO: 73)、CD137的の細胞内シグナル伝達ドメイン (SEQ ID NO:74)及びCD3の細胞内フラグメントCD3ξ(SEQ ID NO: 72)からなるものである。
【0203】
5G3-28BBZ配列はCD8αシグナルペプチド(SEQ ID NO:68)、5G3scFv(SEQ ID NO: 75)、CD8 hinge(SEQ ID NO:69)、CD28膜貫通領域(SEQ ID NO:70)及び細胞内シグナル伝達ドメイン(SEQ ID NO:71)、CD137の細胞内シグナル伝達ドメイン(SEQ ID NO:74)及びCD3の細胞内フラグメントCD3ξ(SEQ ID NO:72)からなるものである。
【0204】
2.IL13Ra2 CARを標的とするレンチウイルスベクターのレンチウイルスパッケージング、ウイルス濃縮及び力価の測定
1.7×107の密度にて293T細胞を15cm培養皿中に接種し、培地は10%胎児ウシ血清(BioWest)を含むDMEMである。それぞれ目的遺伝子プラスミドPRRLSIN-2D4-28Z、PRRLSIN-2D4-BBZ、PRRLSIN-2D4-28BBZ、PRRLSIN-5G3-28Z、PRRLSIN-5G3-BBZ、PRRLSIN-5G3-28BBZプラスミド13.73μgとパッケージングプラスミドpRsv-REV 16.4μg、RRE-PMDLg 16.4μg、Vsvg 6.4μgを2048μLのブランクDMEM培養液中に溶解させ、均一に混合する。
【0205】
158.4μgのPEI(1μg/μl)を2048μlの無血清DMEM培養液中に溶解し、均一に混合し室温にてインキュベーションする。プラスミド混合液をPEI混合液中に入れ、均一に混合して室温にて20minインキュベーションする。形質転換複合物4.096mlを20ml DMEM培地を含む15cmプレート中に滴下し、4-5h後、10%FBSのDMEM培地を用いて、形質転換された293T細胞液に対して液交換を行い、37℃において72hインキュベーションし、ウイルス液の上澄みを収集して濃縮を行い、ウイルス力価(titer)を測定し、濃縮後のウイルスの力価はそれぞれ以下である:
2D4-28Z:3.89E×108 U/ml
2D4-BBZ:3.08E×108 U/ml
2D4-28BBZ:2.72E×108 U/ml
5G3-28Z:3.7E×108 U/ml
5G3-BBZ:1.88E×108 U/ml
5G3-28BBZ:3.11E×108 U/ml
【0206】
3.レンチウイルスによるTリンパ細胞への形質転換--CAR陽性Tリンパ細胞の製造
Tリンパ細胞活性化:約5×105/mLの密度にてリンパ細胞培地培養液を添加し、磁気ビーズ:細胞の比が2:1となるように同時に抗CD3及び抗CD28抗体をコーテイングしている磁気ビーズ(Invitrogen)及び最終濃度が500U/mLの組み換えヒトIL-2(上海華新生物高技術有限公司)を入れて24-48h刺激培養を行う;
Retronectinを用いて24ウェルプレートをコーテイングする:各ウェルに380μl 5μg/mlのretronectin溶液(PBS)を添加し、4℃において終夜インキュベーションする。24ウェルプレート中のretronectin溶液(PBS)を捨て、1ml PBSで2回洗浄し、培地を一回洗浄する(ウェルを湿潤的に維持する);retronectinをコーテイングしている24ウェルプレート中に細胞を接種して、各ウェルの細胞数は5×105であり、培養液の体積は500μlである;MOI=15に応じて細胞中に濃縮後のレンチウイルスを添加し、32℃、1200gにおいて60min遠心した後、細胞インキュベーター(培養器)中に移動させ、ウイルスにより24h感染した後、低速遠心にて液交換する(300rpm、10min、大型遠心装置)。感染してから3-4日後に磁気ビーズを取り除くことができる。
【0207】
4.Tリンパ細胞キメラ抗原受容体の発現
レンチウイルスによって感染されたTリンパ細胞を培養して7日目に、1×106のT細胞を取り、二等分し、4℃、5000 rpmにおいて5min遠心し、上澄みを廃棄し、PBSで二回洗浄する。コントロール群の細胞に50μl PE-SA(1:200希釈)抗体を添加し、氷上において45minインキュベーションし、PBS(2% NBS)で2回洗浄し、再懸濁後にコントロールとする;測定群の細胞に50μlの1:50で希釈したbiotin-Goat anti human IgG,F(ab’)2抗体を入れて、氷上において45minインキュベーションする;PBS(2% NBS)で2回洗浄する;50μl PE-SA(1:200希釈)抗体を入れて氷上において45minインキュベーションする;2ml PBS(2% NBS)による再懸濁細胞を入れ、4℃,5000rpm/minにて5分間遠心した後上澄みを除去する;二回繰り返す;フローサイトメトリーを用いてCAR陽性のT細胞比を測定する。
【0208】
5.IL-13RA2細胞を標的とするCAR T細胞の細胞毒性測定
UTD、2D4-28Z、2D4-BBZ、2D4-28BBZ、5G3-28Z、5G3-BBZ、5G3-28BBZ CAR T細胞のインビトロキラー活性を測定した際、六種類のCAR T細胞の感染陽性率はそれぞれ66.0%、26.3%、34.8%、59.9%、35.5%及び23.8%である。
【0209】
三つのE-Plate 16中にそれぞれ50ul RMPI+10%胎児ウシ血清(Gibco)+二重抗体を入れ、リアルタイムモニタリング装置上に置きベースラインを調整する。
【0210】
ターゲット細胞:それぞれ50ul 1×104/mLのU251細胞をE-Plate 16プレートに接種し、30-40min静置し、リアルタイムモニターを用いてモニタリングを行う;
エフェクター細胞:18時間後、エフェクター-ターゲット比 3:1、1:1または1:3に応じてUTD及び異なるキメラ抗原受容体を発現するCAR T細胞を添加する;
各群にいずれも2つのウェル(平行ウェル)を設け、2つのウェルの平均値を取る。測定時間は38時間目である。
【0211】
そのうち各実験群及びコントロール群は以下に示す通りである:
各実験群:各ターゲット細胞+異なるキメラ抗原受容体を発現するCAR T
コントロール群1:ターゲット細胞
コントロール群2:ブランク培地
細胞毒性計算式:%細胞毒性=[(実験群-エフェクター細胞自発群-ターゲット細胞自発群)/(ターゲット細胞最大-ターゲット細胞自発)]*100である。
【0212】
実験結果は
図13に示される通りであり、それぞれ異なるキメラ抗原受容体を発現するCAR T細胞はIL13Ra2陽性細胞に対していずれも顕著なインビトロキラー活性を有する。
【0213】
本発明が言及するすべての文献はいずれも本出願において参考として引用され、それぞれの文献は単独で参考として引用される。以下のように理解すべきである:本発明の前記記載内容を閲覧した上で、当業者は本発明に対して各種改変または修正を行うことができ、これらの均等的な形式は本出願の請求の範囲が限定する範囲に属するものである。
【配列表】