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特許7064666FcγRIIAに特異的な結合分子及びその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-27
(45)【発行日】2022-05-11
(54)【発明の名称】FcγRIIAに特異的な結合分子及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20220428BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20220428BHJP
   C12N 15/85 20060101ALI20220428BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220428BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220428BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20220428BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20220428BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220428BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220428BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20220428BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20220428BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20220428BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20220428BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20220428BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20220428BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20220428BHJP
   A61P 19/04 20060101ALI20220428BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20220428BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20220428BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20220428BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20220428BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20220428BHJP
   A61P 39/02 20060101ALI20220428BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20220428BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220428BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20220428BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C07K16/28
C12N15/85 Z
C12N5/10
A61P29/00
A61P37/02
A61P37/06
A61P43/00 111
A61P43/00 121
A61K45/00
A61P9/00
A61P13/12
A61P7/04
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P17/00
A61P21/00
A61P7/06
A61P19/04
A61P31/04
A61P11/00
A61P1/16
A61P9/10 101
A61P3/10
A61P39/02
A61K47/68
A61K39/395 D
A61K39/395 N
G01N33/53 D
【請求項の数】 36
(21)【出願番号】P 2018556351
(86)(22)【出願日】2017-04-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-09-05
(86)【国際出願番号】 EP2017060188
(87)【国際公開番号】W WO2017186908
(87)【国際公開日】2017-11-02
【審査請求日】2020-04-17
(31)【優先権主張番号】62/329,627
(32)【優先日】2016-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/349,804
(32)【優先日】2016-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518320041
【氏名又は名称】ヴィエラ バイオ,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴァウスデン,キャサリン,アン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ボー
(72)【発明者】
【氏名】シムズ,ゲイリー,パトリック
【審査官】玉井 真人
(56)【参考文献】
【文献】THE JOURNAL OF IMMUNOLOGY, 1986, Vol.136, pp.1641-1647
【文献】Blood, 2012, Vol.21, p.3346
【文献】Acta Cryst., 2008, D64, pp.700-704
【文献】THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY, 2006, Vol.281, pp.23514-23524
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 16/00-16/46
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
FcγRIIAと特異的に結合する単離された結合分子であって、
a.(i)配列番号19及び配列番号22、(ii)配列番号19及び配列番号23、(iii)配列番号19及び配列番号24、(iv)配列番号20及び配列番号25、(v)配列番号20及び配列番号23、並びに(vi)配列番号20及び配列番号26からなる群から選択されるアミノ酸配列をそれぞれ含む免疫グロブリン可変重鎖相補性決定領域2(VH-CDR2)及び免疫グロブリン可変軽鎖相補性決定領域1(VL-CDR1)、
b.配列番号29を含む免疫グロブリン可変重鎖相補性決定領域1(VH-CDR1)、
c.配列番号30又は配列番号45を含む免疫グロブリン可変重鎖相補性決定領域3(VH-CDR3)、
d.配列番号31を含む免疫グロブリン可変軽鎖相補性決定領域2(VL-CDR2)、並びに
e.配列番号32を含む免疫グロブリン可変軽鎖相補性決定領域3(VL-CDR3)を含む結合分子。
【請求項2】
VH-CDR2が配列番号19を含み、VL-CDR1が配列番号22を含み、VH-CDR3が配列番号30を含む、請求項1に記載の結合分子。
【請求項3】
(i)配列番号33及び配列番号34、(ii)配列番号35及び配列番号36、(iii)配列番号37及び配列番号38、(iv)配列番号39及び配列番号40、(v)配列番号41及び配列番号42、並びに(vi)配列番号43及び配列番号44からなる群から選択されるアミノ酸配列をそれぞれ含む重鎖可変(VH)領域及び軽鎖可変(VL)領域を含む、請求項1に記載の結合分子。
【請求項4】
配列番号33及び配列番号34のアミノ酸配列をそれぞれ含むVH領域及びVL領域を含む、請求項3に記載の結合分子。
【請求項5】
マウス抗体、ト化抗体、キメラ抗体、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組換え抗体、二重特異性抗体、多特異性抗体及びそれらの抗原結合断片から選択される、請求項1~のいずれか一項に記載の結合分子。
【請求項6】
Fv、Fab、F(ab’)2、Fab’、dsFv断片、一本鎖Fv(scFV)、sc(Fv)2、ジスルフィド連結(dsFv)、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ又は一本鎖抗体から選択される、請求項1~のいずれか一項に記載の結合分子。
【請求項7】
免疫グロブリン(Ig)重鎖定常領域を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の結合分子。
【請求項8】
定常領域が、ヒトIgG定常領域である、請求項に記載の結合分子。
【請求項9】
定常領域が、Kabat位置234、235及び331にアミノ酸置換を含み、
a.Kabat位置234のアミノ酸が、フェニルアラニン(F)で置換され、
b.Kabat位置235のアミノ酸が、グルタミン酸(E)で置換され、
c.Kabat位置331のアミノ酸が、セリン(S)で置換されている、
請求項に記載の結合分子。
【請求項10】
定常領域が、野生型ヒトIgG定常領域に対して、251~257、285~290、308~314、385~389及び428~436位のアミノ酸残基の1つ以上の置換を含み、アミノ酸位置番号付けが、Kabatに示されるEUインデックスに従う、請求項又はに記載の結合分子。
【請求項11】
定常領域が、Kabat位置252、254及び256にアミノ酸置換を含み、
a.Kabat位置252のアミノ酸は、チロシン(Y)で置換され、
b.Kabat位置254のアミノ酸は、トレオニン(T)で置換され、
c.Kabat位置256のアミノ酸は、グルタミン酸(E)で置換されている、
請求項10に記載の結合分子。
【請求項12】
免疫グロブリン軽鎖定常領域を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の結合分子。
【請求項13】
軽鎖定常領域が、ヒトカッパ定常領域である、請求項12に記載の結合分子。
【請求項14】
BIAcoreアッセイによって測定して、約0.15nMの解離定数(K)を特徴とする親和性でヒトFcγRIIA 131Rと特異的に結合する、請求項1~13のいずれか一項に記載の結合分子。
【請求項15】
BIAcoreアッセイによって測定して、約0.13nMの解離定数(K)を特徴とする親和性でヒトFcγRIIA 131Hと特異的に結合する、請求項1~14のいずれか一項に記載の結合分子。
【請求項16】
FcγRI、FcγRIIB又はFcγRIIIと特異的に結合しない、請求項1~15のいずれか一項に記載の結合分子。
【請求項17】
抗菌剤、治療剤、プロドラッグ、ペプチド、タンパク質、酵素、脂質、生物応答修飾物質、医薬剤、リンホカイン、異種抗体又はその断片、検出可能な標識、ポリエチレングリコール(PEG)、毒素及び任意の前記薬剤のうち2種以上の組合せからなる群から選択される薬剤にコンジュゲートされる、請求項1~16のいずれか一項に記載の結合分子。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか一項に記載の結合分子及び担体を含む組成物。
【請求項19】
診断試薬である、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
末梢血単核細胞(PBMC)においてリボヌクレオタンパク質-免疫複合体(RNP-IC)媒介性I型IFNαを阻害する方法であって、PBMCを、FcγRIIAと結合する単離された結合分子と接触させることを含む方法において使用するための、請求項1から17のいずれか一項に記載の結合分子を含む組成物
【請求項21】
抗好中球細胞質抗体(ANCA)誘導性好中球活性化を阻害する方法であって、好中球を、FcγRIIAと結合する単離された結合分子と接触させることを含む方法において使用するための、請求項1から17のいずれか一項に記載の結合分子を含む組成物
【請求項22】
対象において炎症性、免疫媒介性又は自己免疫性疾患又は障害を治療する方法であって、治療を必要とする対象に、有効量のFcγRIIAと結合する単離された結合分子又はそれを含む組成物を投与することを含む方法において使用するための、請求項1から17のいずれか一項に記載の結合分子又は請求項18に記載の組成物を含む組成物
【請求項23】
対象において炎症性、免疫媒介性又は自己免疫性疾患又は障害を予防する方法であって、疾患又は障害に罹患しやすい対象に、有効量のFcγRIIAと結合する単離された結合分子又はそれを含む組成物を投与することを含む方法において使用するための、請求項1から17のいずれか一項に記載の結合分子又は請求項18に記載の組成物を含む組成物
【請求項24】
方法が、第2の活性薬剤を投与することを含む、請求項22又は請求項23に記載の組成物
【請求項25】
疾患又は障害が、ANCA関連血管炎(AAV)、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎、膜性腎炎、巨大細胞動脈炎(GCA)血管炎、免疫性血小板減少症(ITP)、関節リウマチ、多発性筋炎、皮膚筋炎、天疱瘡、溶血性貧血、混合結合組織疾患、シェーグレン症候群、強皮症、自己抗体障害、免疫複合体媒介性障害、ADA媒介性有害作用、ネトーシス並びに敗血症、血栓症、急性腎傷害、急性肺傷害、慢性閉塞性肺疾患、糸球体腎炎、中毒性肝傷害、卒中、アテローム発生、I型糖尿病及びIgG媒介性過敏反応を含むネトーシス関連障害からなる群から選択される、請求項22から24のいずれか一項に記載の組成物
【請求項26】
サンプル中のFcγRIIAを検出する方法であって、(a)サンプルを、請求項1から17のいずれか一項に記載の結合分子と接触させること、及び(b)結合分子の、FcγRIIAとの結合を検出し、それによって、サンプル中のFcγRIIAを検出することを含み、ヒトを診断する方法を含まない、方法。
【請求項27】
診断を補助する方法である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
請求項1から17のいずれか一項に記載の結合分子をコードするヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子。
【請求項29】
調節配列に作動可能に連結された、請求項28に記載の核酸分子。
【請求項30】
請求項28又は請求項29に記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項31】
請求項28若しくは請求項29に記載の核酸分子又は請求項30に記載のベクターを用いて形質転換された宿主細胞。
【請求項32】
哺乳動物宿主細胞である、請求項31に記載の宿主細胞。
【請求項33】
請求項28若しくは請求項29に記載の核酸分子、請求項30に記載のベクター又は請求項31若しくは請求項32に記載の宿主細胞を含む組成物。
【請求項34】
FcγRIIAと特異的に結合する結合分子を作製する方法であって、請求項31又は請求項32に記載の宿主細胞を、結合分子を産生するのに適した条件下で培養することを含む方法。
【請求項35】
結合分子を単離することをさらに含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
請求項1から17のいずれか一項に記載の結合分子又は請求項28若しくは請求項29に記載の核酸分子を含むキット。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
FcγRは、免疫グロブリンG(IgG)サブクラスの抗体のFc部分と結合する細胞表面受容体のファミリーである。ヒトFcガンマ受容体(FcγR)は、機能、結合親和性、及びその細胞分布において異なっている(非特許文献1)。
【0002】
ヒトでは、5種のFcγR:単量体IgGと結合し得る高親和性受容体FcγRI(CD64)、並びに単量体IgGと弱く結合するが、IgGの免疫複合体とは強く結合する低親和性受容体FcγRIIA(CD32A)、FcγRIIB(CD32B)、FcγRIIIA(CD16A)及びFcγRIIIB(CD16B)がある。FcγRI、FcγRIIA、FcγRIIIA及びFcγRIIIBは、活性化特性を有すると考えられるが、FcγRIIBは、主に阻害性である。FcγRIIA及びFcγRIIBは、最も密接に関連する受容体である。IgGとの相互作用に関与するこれらの受容体の細胞外領域は、90%を超える配列同一性を有する(非特許文献2)。FcγRIIA及びFcγRIIBの細胞内シグナル伝達領域における配列相違は、代替細胞応答を媒介する。
【0003】
FcγRは、抗原又は病原体取り込み、脱顆粒、抗原提示及び抗体依存性細胞性細胞毒性(ADCC)を含むいくつかの細胞プロセスを媒介する。さらに、FcγRは、その他の受容体と相互作用して、特定のサイトカインの産生に影響を及ぼし得る。FcγRの反応性を適宜制限する免疫系の不全は、炎症性、免疫媒介性又は自己免疫性疾患又は障害の発生において役割を果たし得る(非特許文献3)。
【0004】
全身性エリテマトーデス(SLE)は、異種性自己抗体によって駆動される免疫複合体媒介性自己免疫疾患である。SLE患者の顕著な特徴は、dsDNA、ssDNA及び核酸関連タンパク質(例えば、RNP、ヒストン、Smith、Ro)を含む、核内抗原に対する自己抗体の存在である。皮膚、肺及び腎臓における疾患徴候は、免疫複合体の蓄積と関連している(非特許文献4)。FcγRIIAの免疫複合体媒介性活性化は、SLEの病態形成において役割を果たすことが示唆されている(非特許文献5)。SLE患者のおよそ60%は、I型インターフェロン(IFN)遺伝子シグネチャーを有し、これは、重症疾患活性を有する患者において最も蔓延している。重要なことに、DNA及びRNAを含有する免疫複合体は、形質細胞様樹状細胞がI型IFNαをFcγRIIA依存性に産生するように誘導する5、6、7(非特許文献5、6、7)。
【0005】
抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連血管炎(AAV)とは、複数システムにおける徴候を有する血管の炎症性疾患の不均一な群を指す(非特許文献8)。AAVは、多発性血管炎を伴う肉芽腫症(GPA)、顕微鏡的多発血管炎(MPA)、壊死性半月体形成性糸球体腎炎(NCGN)及び好酸球性肉芽腫症(EGPA)を含む。AAV患者の顕著な特徴は、好中球細胞質抗原に直接対する自己抗体の存在である。ANCAの標的抗原として、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)、プロテイナーゼ3(PR3)、ラクトフェリン及びその他が挙げられる。GPAは、主にPR3に対する抗体と関連しているが、MPA及びEGPAは両方とも、MPOに対する抗体と関連している。ANCAは、診断マーカーとして働くだけでなく、疾患において直接的病原性も担っている。ANCAは、FcγRIIAを介して好中球の直接活性化を誘導することができ、これは、血管傷害を進め得る(非特許文献9)。さらに、ANCAはまた、好中球細胞外トラップ(NET)、サイトカイン及びケモカインのFcγRIIA依存性誘導の引き金を引くことがあり、これらは炎症及び自己免疫応答に関与し得る10(非特許文献10)。したがって、FcγRIIAは、AAVの発生及び病理において中心的な役割を果たすと思われる。
【0006】
免疫性血小板減少症(ITP)は、血小板抗原に対して向けられた自己反応性抗体の産生を特徴とする自己免疫出血障害である。血小板の表面をコーティングしている自己抗体は、細網内皮系の貪食マクロファージによるそのクリアランスを促す。FcγRのレパートリー及び細胞内発現は、マウス及びヒトの間で異なり、FcγRIIは、ヒトでは最も広く発現されるFcγRであるが、マウスでは存在しない。ヒトFcγRIIAについてトランスジェニックであり、マウス活性化FcγRについて欠損したマウスを使用して、受動的に投与された抗血小板抗体が、FcγRIIA依存性に免疫性血小板減少症の引き金となったことが実証された11(非特許文献11)。さらに、原発性ITPを有する患者の単球で有意に高いFcγRIIA/B比が観察され、ITP患者の第一選択治療として用いられる高用量デキサメタゾン治療は、FcγRIIA/B比を低下させた12(非特許文献12)。これらのin vitro及びin vivoデータは、ヒトFcγRIIAが、ITPの病態形成において大きな役割を果たすことを示す。
【0007】
好中球細胞外トラップ(NET)の形成は、細菌感染に対する宿主防御において重要であると考えられている17(非特許文献13)。その反面、NETの形成はまた、血栓症、炎症及び内皮機能障害などの有害な効果と関連している18、19、20(非特許文献14、15、16)。ANCA関連血管炎において病原性を担うだけでなく、NETは、敗血症、血栓症、急性腎傷害、急性肺傷害、慢性閉塞性肺疾患、糸球体腎炎、中毒性肝傷害、卒中、アテローム発生及びI型糖尿病にも関与している可能性があるという示す証拠がある21、22(非特許文献17、18)。FcγRIIAは、NETの形成において重大な役割を果たすので10(非特許文献10)、FcγRIIAを遮断することは、NET関連障害の治療において有益な役割を有する場合がある。
【0008】
抗薬物抗体(ADA)は、治療抗体に応じてin vivoで誘発され得る。治療的曝露に対するADAの影響に加えて、薬物及びADAの間の免疫複合体の形成が、潜在的に有害なFcR媒介性過敏反応を誘発し得る23(非特許文献19)。FcγRIIAは、免疫複合体媒介性エフェクター機能に関与する主な活性化FcγRであるので、FcγRIIAを遮断することは、ADA媒介性有害作用を阻害し得る。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【文献】Nimmerjahn et al. Fc-gamma receptors as regulators of immune responses. Nat Rev Immunol. 2008 Jan; 8(1):34-47
【文献】Hogarth et al. Fc receptor-targeted therapies for the treatment of inflammation, cancer and beyond. Nat Rev Drug Discov. 2012 Mar 30; 11(4):311-31
【文献】Bruhns et al. Properties of mouse and human IgG receptors and their contribution to disease models. Blood. 2012 Jun 14; 119(24):5640-9
【文献】Schiffenbauer et al. Biomarkers, surrogate markers, and design of clinical trials of new therapies for systemic lupus erythematosus. Arthritis Rheum. 2004 Aug; 50(8):2415-22
【文献】Means et al. Human lupus autoantibody-DNA complexes activate DCs through cooperation of CD32 and TLR9. J Clin Invest. 2005 Feb; 115(2):407-17
【文献】Bennett et al. Interferon and granulopoiesis signatures in systemic lupus erythematosus blood. J Exp Med. 2003 Mar 17; 197(6):711-23
【文献】Bave et al. Fc gamma RIIa is expressed on natural IFN-alpha-producing cells (plasmacytoid dendritic cells) and is required for the IFN-alpha production induced by apoptotic cells combined with lupus IgG. J Immunol. 2003 Sep 15; 171(6):3296-302
【文献】Kallenberg et al. Pathogenesis of ANCA-associated vasculitis: new possibilities for intervention. Am J Kidney Dis. 2013 Dec; 62(6):1176-87
【文献】Porges et al. Anti-neutrophil cytoplasmic antibodies engage and activate human neutrophils via Fc gamma RIIa. J Immunol. 1994 Aug 1; 153(3):1271-80
【文献】Chen et al. Endocytosis of soluble immune complexes leads to their clearance by FcγRIIIB but induces neutrophil extracellular traps via FcγRIIA in vivo. Blood. 2012 Nov 22; 120(22):4421-3
【文献】Reilly et al. Heparin-induced thrombocytopenia/thrombosis in a transgenic mouse model requires human platelet factor 4 and platelet activation through FcgammaRIIA. Blood. 2001 Oct 15; 98(8):2442-7
【文献】Liu et al. High-dose dexamethasone shifts the balance of stimulatory and inhibitory Fcgamma receptors on monocytes in patients with primary immune thrombocytopenia. Blood. 2011 Feb 10; 117(6):2061-9
【文献】Brinkmann et al. A Neutrophil extracellular traps kill bacteria. Science 2004 Mar 5; 303(5663):1532-5
【文献】Fuchs et al. Neutrophil extracellular trap (NET) impact on deep vein thrombosis. Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol. 2012; 201232(8):1777-1783
【文献】Villanueva et al. Netting neutrophils induce endothelial damage, infiltrate tissues, and expose immune stimulatory molecules in systemic lupus erythematosus. J. Immunol. 2011; 187(1):538-552
【文献】Carmona-Rivera et al. Neutrophil extracellular traps induce endothelial dysfunction in systemic lupus erythematosus through the activation of matrixmetalloproteinase-2. Ann. Rheum. Dis. 2015 Jul; 74(7):1417-24
【文献】Allam et al. Extracellular histones in tissue injury and inflammation. J. Mol. Med. (Berl.) 2014 May; 92(5):465-72
【文献】Wang et al. Increased neutrophil elastase and proteinase 3 and augmented NETosis are closely associated with (3-cell autoimmunity in patients with type 1 diabetes. Diabetes 2014 Dec; 63(12):4239-48
【文献】Krishna et al. Immunogenicity to Biotherapeutics - The Role of Anti-drug Immune Complexes. Front. Immunol. 2016 Feb 2; 7:21
【発明の概要】
【0010】
本開示は、FcγRIIAと特異的に結合する組成物、及び例えば、炎症性、免疫媒介性又は自己免疫性疾患又は障害の治療又は予防のための、このような組成物の使用方法を提供する。
【0011】
本発明の主な態様の一部を以下に要約する。さらなる態様は、本開示の発明の詳細な説明、実施例、図面及び特許請求の範囲のセクションに記載されている。本開示の各セクションにおける説明は、その他のセクションとともに読まれように意図される。さらに、本開示の各セクションに記載される種々の実施形態は、種々の異なる方法で組み合されてもよく、すべてのこのような組合せは、本発明の範囲内に入ることが意図される。
【0012】
本開示は、FcγRIIA-結合分子、例えば、FcγRIIA活性を阻害可能であるヒト化モノクローナル抗体、及び例えば、炎症性、免疫媒介性又は自己免疫性疾患又は障害の治療又は予防においてFcγRIIA結合分子を使用する方法を提供する。
【0013】
一態様では、本発明は、FcγRIIAと特異的に結合する単離された結合分子を提供し、結合分子は、配列番号19及び配列番号20からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン可変重鎖相補性決定領域2(VH-CDR2)を含む。一態様では、本発明は、FcγRIIAと特異的に結合する単離された結合分子を提供し、結合分子は、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25及び配列番号26からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン可変軽鎖相補性決定領域1(VL-CDR1)を含む。特定の態様では、本発明の結合分子は、アミノ酸配列:(i)配列番号19及び配列番号22、(ii)配列番号19及び配列番号23、(iii)配列番号19及び配列番号24、(iv)配列番号20及び配列番号25、(v)配列番号20及び配列番号23又は(vi)配列番号20及び配列番号26をそれぞれ含むVH-CDR2及びVL-CDR1を含む。
【0014】
本発明は、FcγRIIAと特異的に結合する単離された結合分子を提供し、結合分子は、(a)アミノ酸配列:(i)配列番号19及び配列番号22、(ii)配列番号19及び配列番号23、(iii)配列番号19及び配列番号24、(iv)配列番号20及び配列番号25、(v)配列番号20及び配列番号23又は(vi)配列番号20及び配列番号26をそれぞれ含む免疫グロブリン可変重鎖相補性決定領域2(VH-CDR2)及び免疫グロブリン可変軽鎖相補性決定領域1(VL-CDR1)、(b)配列番号29を含む免疫グロブリン可変重鎖相補性決定領域1(VH-CDR1)、(c)配列番号30又は配列番号45を含む免疫グロブリン可変重鎖相補性決定領域3(VH-CDR3)、(d)配列番号31を含む免疫グロブリン可変軽鎖相補性決定領域2(VL-CDR2)並びに(e)配列番号32を含む免疫グロブリン可変軽鎖相補性決定領域3(VL-CDR3)を含む。一実施形態では、結合分子は、配列番号19及び配列番号22を含む。
【0015】
一実施形態では、結合分子は、(i)配列番号33及び配列番号34、(ii)配列番号35及び配列番号36、(iii)配列番号37及び配列番号38、(iv)配列番号39及び配列番号40、(v)配列番号41及び配列番号42並びに(vi)配列番号43及び配列番号44からなる群から選択されるアミノ酸配列をそれぞれ含む重鎖可変(VH)領域及び軽鎖可変(VL)領域を含む。一実施形態では、結合分子は、配列番号33及び配列番号34を含む。
【0016】
別の態様では、本発明は、上記で記載される1種以上の結合分子と競合又は交差競合する単離された結合分子を提供する。
【0017】
いくつかの実施形態では、本発明の結合分子は、マウス抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組換え抗体、二重特異性抗体、多特異性抗体及びそれらの抗原結合断片から選択される。
【0018】
いくつかの実施形態では、本発明の結合分子は、Fv、Fab、F(ab’)2、Fab’、dsFv断片、一本鎖Fv(scFV)、sc(Fv)2、ジスルフィド連結(dsFv)、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ又は一本鎖抗体から選択される。
【0019】
本発明の結合分子は、免疫グロブリン(Ig)重鎖定常領域を含み得る。一態様では、定常領域は、ヒトIgG定常領域である。
【0020】
特定の実施形態では、定常領域は、Kabat位置234、235及び331にアミノ酸置換を含み、Kabat位置234のアミノ酸は、フェニルアラニン(F)で置換され、Kabat位置235のアミノ酸は、グルタミン酸(E)で置換され、Kabat位置331のアミノ酸は、セリン(S)で置換されている。
【0021】
いくつかの実施形態では、定常領域は、野生型ヒトIgG定常領域に対して、251~257、285~290、308~314、385~389及び428~436位のアミノ酸残基の1つ以上の置換を含み、ここで、アミノ酸位置番号付けは、Kabatに示されるEUインデックスに従う。特定の実施形態では、定常領域は、Kabat位置252、254及び256のアミノ酸置換を含み、Kabat位置252のアミノ酸は、チロシン(Y)で置換され、Kabat位置254のアミノ酸は、トレオニン(T)で置換され、Kabat位置256のアミノ酸は、グルタミン酸(E)で置換されている。
【0022】
本発明の結合分子は、免疫グロブリン軽鎖定常領域を含み得る。いくつかの実施形態では、軽鎖定常領域は、ヒトカッパ定常領域である。
【0023】
一態様では、本発明の結合分子は、BIAcoreアッセイによって測定して、約0.16nMの解離定数(K)を特徴とする親和性でヒトFcγRIIA 131Rと特異的に結合する。別の態様では、本発明の結合分子は、BIAcoreアッセイによって測定して、約0.13nMの解離定数(K)を特徴とする親和性でヒトFcγRIIA 131Hと特異的に結合する。好ましくは、結合分子は、FcγRI、FcγRIIB又はFcγRIIIと特異的に結合しない。
【0024】
本発明の結合分子は、薬剤、例えば、抗菌剤、治療剤、プロドラッグ、ペプチド、タンパク質、酵素、脂質、生物応答修飾物質、医薬剤、リンホカイン、異種抗体又はその断片、検出可能な標識、ポリエチレングリコール(PEG)、毒素及び任意の前記の薬剤のうち2種以上の組合せからなる群から選択される薬剤にコンジュゲートされ得る。
【0025】
本発明はさらに、本発明の結合分子を含む組成物を提供する。一実施形態では、組成物は、診断試薬である。
【0026】
さらなる実施形態では、本発明は、末梢血単核細胞(PBMC)においてリボヌクレオタンパク質-免疫複合体(RNP-IC)媒介性I型IFNαを阻害する方法であって、PBMCを、本発明の結合分子と接触させることを含む方法を提供する。また、抗好中球細胞質抗体(ANCA)誘導性好中球活性化を阻害する方法であって、好中球を、本発明の結合分子と接触させることを含む方法も提供される。
【0027】
いくつかの態様では、本発明は、対象において炎症性、免疫媒介性又は自己免疫性疾患又は障害を治療又は予防する方法であって、治療を必要とする対象に、又は疾患若しくは障害に罹患しやすい対象に、有効量の本発明の結合分子又は組成物を投与することを含む方法を提供する。疾患又は障害は、好ましくは、ANCA関連血管炎(AAV)、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎、膜性腎炎、免疫性血小板減少症(ITP)、関節リウマチ、多発性筋炎、皮膚筋炎、天疱瘡、溶血性貧血、混合結合組織疾患、シェーグレン症候群、強皮症、敗血症、血栓症、急性腎傷害、急性肺傷害、慢性閉塞性肺疾患、糸球体腎炎、中毒性肝傷害、卒中、アテローム発生及びI型糖尿病、自己抗体障害及び免疫複合体媒介性障害から選択される。いくつかの実施形態では、方法は、第2の活性薬剤を投与することを含む。
【0028】
サンプル中のFcγRIIAを検出する方法であって、(a)サンプルを、本発明の結合分子を接触させること、及び(b)結合分子のFcγRIIAとの結合を検出し、それによって、サンプル中のFcγRIIAを検出することを含む方法がさらに提供される。いくつかの場合では、方法は、診断方法である。
【0029】
さらなる実施形態では、本発明は、任意選択で、調節配列に連結された本発明の結合分子をコードするヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子、該核酸分子を用いて形質転換された宿主細胞、好ましくは、哺乳動物宿主細胞、及び該核酸分子を含むベクターを提供する。また、本発明の核酸分子、宿主細胞又はベクターを含む組成物も提供する。
【0030】
本発明は、FcγRIIAと特異的に結合する結合分子を作製する方法であって、本発明の宿主細胞を、結合分子を製造するのに適した条件下で培養することを含む方法を提供する。いくつかの態様では、方法は、結合分子を単離することをさらに含む。
【0031】
一実施形態では、本発明は、本発明の結合分子又は核酸分子を含むキットを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1-1】図1A-Cは、コンセンサスFcγRIIAカニクイザル配列及びヒトFcγRIIAに対するアラインメントを示す図である。図1Aは、カニクイザルFcγRIIAのコンセンサスアミノ酸配列(配列番号1)を示す。カニクイザル集団の間の一塩基多型(SNP)変異体は、太字で示されている。メジャーヒト対立遺伝子に対応するマイナー対立遺伝子に下線が引かれている。影付きの残基は、>20%のマイナー対立遺伝子頻度(MAF)を示す。図1Bは、ヒトFcγRIIA(P12318、1~317アミノ酸、配列番号2)及びカニクイザルFcγRIIA(配列番号3)のアラインメントを示す。ヒトに対して非相同であるカニクイザル(Cyno)アミノ酸は、影付きである。マイナーカニクイザル(cyno)対立遺伝子がヒトに対応するバリエーションには、下線が引かれている。図1Cは、コンセンサスFcγRIIA全長カニクイザル転写物(配列番号4)を示す。
図1-2】図1-1の続きである。
図2】IV.3のヒト化のエピトープ競合アッセイデータを示す図である。
図3】マウスIV.3 VH(配列番号5)及びVL(配列番号8)の、ヒト化IV.3(CamIV3 VH(配列番号6)及びVL(配列番号9))並びに選択されたヒト生殖系列配列(配列番号7、配列番号10)とのアラインメントを示す図である。
図4図4A-Bは、ヒト化IV.3抗体のパネルのエピトープ競合アッセイデータを示す図である。図4Aは、ヒトFcγRIIA 131Hとの結合を示す。図4Bは、ヒトFcγRIIA 131Rとの結合を示す。
図5図5A-Eは、最適化IV.3 Abが、ヒトFcγRIIA結合に特異的であるが、その他のFcγRに対して特異的ではないことを示す図である。図5Aは、ヒトFcγRIIAの結合データを示す。図5Bは、FcγRIIBの結合データを示す。図5Cは、ヒトFcγRIの結合データを示す。図5Dは、ヒトFcγRIIIA~158Fアロタイプの結合データを示す。図5Eは、ヒトFcγRIIIA~158Vアロタイプの結合データを示す。
図6】MEDI9600が、静脈内免疫グロブリン(IVIG)と、FcγRIIAとの結合について競合することを示す図である。
図7-1】図7A-Cは、最適化IV.3 Abが、FcγRIIAを、ヒト131H/Hドナー(図7A)、ヒト131R/Rドナー(図7B)及びカニクイザル(cynomolgous)(図7C)由来の単球の表面から内部移行させることを示す図である。図7Dは、共焦点顕微鏡を使用するMEDI9600によるFcγRIIAの内部移行を示す図である。
図7-2】図7-1の続きである。
図8図8A-Cは、ヒト131 H/Hドナー(図8A)、ヒト131R/Rドナー(図8B)及びカニクイザル(cynomologus)(図8C)由来の細胞を使用して、最適化IV.3 Abが、ヒト及びカニクイザル(cyno)PBMCからのRNP-IC誘導性IFN-α発現を遮断することを示す図である。
図9-1】図9A-Gは、MEDI9600(クローン32LO0352)が、抗好中球細胞質抗体(ANCA)誘導性好中球活性化を特異的に遮断することを示す図である。
図9-2】図9-1の続きである。
図10図10A-Cは、MEDI9600が、マウスを抗血小板抗体誘導性血小板減少症から保護することを示す図である。
図11図11A-Cは、MEDI9600によるFcγRIIAの遮断が、好中球機能に対して有害作用がないことを示す図である。
図12】MEDI9600単独を用いるヒト全血のex vivo処置が、タンパク質発現プロファイルに対して効果がないことを示す図である。
図13-1】図13A-Cは、MEDI9600の単回用量薬物動態及び探索的薬物動態研究の結果を示す図である。図13Aは、単回用量後種々の時点でのカニクイザルにおけるMEDI9600の血清濃度を示す。カニクイザルから得た血液細胞のフローサイトメトリー解析は、MEDI9600が、単球(図13B)及び顆粒球(図13C)でのFcγRIIA蛍光強度の用量応答低減を誘導したことを示す。
図13-2】図13-1の続きである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明は、FcγRIIAに結合する分子を提供する。幾つかの実施形態では、そのような分子は、FcγRIIAに特異的に結合する抗体、又はその抗原結合断片である。関連するポリヌクレオチド、抗FcγRIIA結合分子を含む組成物、及び抗FcγRIIA結合分子を作製する方法もまた提供する。新規抗FcγRIIA抗体を使用する方法、例えば診断方法、及び炎症性、免疫媒介、又は自己免疫疾患又は障害などの治療方法が更に提供される。
【0034】
本発明の実施には、特に指示されない限り、細胞生物学、細胞培養、分子生物学、トランスジェニック生物学、微生物学、組換えDNA、及び免疫学の従来技術が用いられ、それらは当該技術分野の技術の範囲内にある。かかる技法は、文献に十全に説明されている。例えば、Ausubel et al. eds. (2015) Current Protocols in Molecular Biology (John Wiley and Sons); Greenfield, ed. (2013) Antibodies: A Laboratory Manual (2nd ed., Cold Spring Harbor Press); Green and Sambrook, eds. (2012), Molecular Cloning: A Laboratory Manual (4th ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press); Krebs et al., eds. (2012) Lewin’s Genes XI (11th ed., Jones & Bartlett Learning); Freshney (2010) Culture Of Animal Cells (6th ed., Wiley); Weir and Blackwell, eds., (1996) Handbook Of Experimental Immunology, Volumes I-IV (5th ed., Wiley-Blackwell); Borrebaeck, ed. (1995) Antibody Engineering (2nd ed., Oxford Univ. Press); Glover and Hames, eds., (1995) DNA Cloning: A Practical Approach, Volumes I and II (2nd ed., IRL Press); Rees et al., eds. (1993) Protein Engineering: A Practical Approach (1st ed., IRL Press); Mayer and Walker, eds. (1987) Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology (Academic Press, London); Nisonoff (1984) Introduction to Molecular Immunology (2nd ed., Sinauer Associates, Inc.);及びSteward (1984) Antibodies: Their Structure and Function (1st ed., Springer Netherlands)を参照されたい。
【0035】
本発明を更に容易に理解し得るように、初めに特定の用語を定義する。追加的な定義は本開示全体を通じて示される。特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての科学技術用語は、本発明が関係する技術分野の当業者が一般に理解するのと同じ意味を有する。例えば、The Dictionary of Cell and Molecular Biology(5th ed.J.M.Lackie ed.,2013)、Oxford Dictionary of Biochemistry and Molecular Biology(2d ed.R.Cammack et al.eds.,2008)、及びThe Concise Dictionary of Biomedicine and Molecular Biology,P-S.Juo,(2d ed. P-S. Juo, 2002)が、本明細書で用いられる一部の用語の一般的な定義を当業者に提供し得る。
【0036】
I.定義
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されるとき、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」は、文脈上特に明確に指示されない限り複数の指示対象を含む。用語「1つの(a)」又は「1つの(an)」、並びに用語「1つ以上」及び「少なくとも1つ」は、同義的に使用することができる。
【0037】
更に、「及び/又は」は、2つの指定される特徴又は構成要素の各々の、他方を伴う又は伴わない具体的な開示と解釈されるべきである。従って、用語「及び/又は」は、「A及び/又はB」などの語句で用いられるとき、A及びB、A又はB、A(単独)、及びB(単独)を含むことが意図される。同様に、用語「及び/又は」は、「A、B、及び/又はC」などの語句で用いられるとき、A、B、及びC;A、B、又はC;A又はB;A又はC;B又はC;A及びB;A及びC;B及びC;A(単独);B(単独);及びC(単独)を包含することが意図される。
【0038】
単位、接頭辞、及び記号は、それらの国際単位系(SI)で認められている形式で示される。数値範囲は、その範囲を定義する数を含む。特に指示されない限り、アミノ酸配列は左から右にアミノからカルボキシ方向に記載し、核酸配列は、左から右に5’から3’方向に記載する。本明細書に提供される見出しは、本明細書を全体として参照することによって有され得る本発明の種々の態様又は実施形態の限定ではない。従って、この直後に定義する用語は、本明細書を全体として参照することによって更に十全に定義される。
【0039】
実施形態が語句「含む」を用いて記載される場合には常に、「からなる」及び/又は「から本質的になる」によって記載される他の点で類似の実施形態が含まれる。
【0040】
アミノ酸は、本明細書において、その一般に知られている三文字記号によるか、或いはIUPAC-IUB生化学命名委員会(Biochemical Nomenclature Commission)が推奨する一文字記号により参照される。ヌクレオチドも同様に、その一般に認められている一文字コードによって参照される。
【0041】
「FcγRIIA」は、Fc受容体ガンマIIAを指す。ヒト及びカニクイザル(Macaca fasciculari)FcγRIIAの全長アミノ酸配列及び核酸配列は、本分野で公知である(例えば、図1を参照されたい)。用語「FcγRIIA」及び「CD32A」は、本開示を通して互換的に使用される。用語「FcγRIIIA」と「CD16A」、並びに「FcγRIIIB」と「CD16B」、並びに「FcγRI」と「CD64」がそれぞれ互換的に使用される様に、用語「FcγRIIB」及び「CD32B」もまた、本開示を通して互換的に使用される。
【0042】
用語「抗体」は、免疫グロブリン分子の可変領域内の少なくとも1つの抗原認識部位を介してタンパク質、ポリペプチド、ペプチド、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、又は前述の組み合わせなどの標的を認識し、それに特異的に結合する免疫グロブリン分子を指す。本明細書で使用されるとき、用語「抗体」は、その抗体が所望の生物学的活性を呈する限りにおいて、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、少なくとも2つのインタクトな抗体から作製された二重特異性抗体などの多重特異性抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、キメラ抗体、抗体の抗原決定部分を含む融合タンパク質、及び抗原認識部位を含む任意の他の修飾免疫グロブリン分子を包含する。抗体は、それぞれα、δ、ε、γ、及びμと称されるその重鎖定常ドメインのアイデンティティに基づき、5つの主要な免疫グロブリンクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgM、又はそのサブクラス(アイソタイプ)(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)のいずれかのものであり得る。異なる免疫グロブリンクラスは異なる周知のサブユニット構造及び三次元配置を有する。哺乳動物軽鎖には2つのクラス、ラムダ及びカッパが存在する。抗体は、ネイキッドであってもよく、又は毒素、放射性同位体等の他の分子にコンジュゲートしてもよい。
【0043】
用語「抗原結合断片」は、抗体の相補性決定可変領域を含む抗体の一部分を指す。完全長抗体の断片は、抗体の抗原結合断片であり得る。抗体断片の例としては、限定はされないが、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFv断片、線状抗体、一本鎖抗体(例えば、ScFv)、及び抗体断片で形成される多重特異性抗体が挙げられる。
【0044】
「モノクローナル抗体」(mAb)は、単一の抗原決定基又はエピトープの高度に特異的な認識及び結合に関与する均質な抗体集団を指す。これは、典型的には異なる抗原決定基に対する異なる抗体を含むポリクローナル抗体と対照的である。用語「モノクローナル」は、インタクトなモノクローナル抗体及び完全長モノクローナル抗体の両方、並びに抗体断片(Fab、Fab’、F(ab’)2、Fvなど)、一本鎖(scFv)変異体、抗体部分を含む融合タンパク質、及び抗原認識部位を含む任意の他の修飾免疫グロブリン分子に適用され得る。更に、「モノクローナル抗体」は、限定はされないが、ハイブリドーマ、ファージ選択、組換え発現、及びトランスジェニック動物を含めた、任意の方法で作製されたかかる抗体を指す。
【0045】
用語「ヒト化抗体」は、最小限の非ヒト(例えば、マウス)配列を含むように改変された非ヒト(例えば、マウス)免疫グロブリンに由来する抗体を指す。典型的には、ヒト化抗体は、所望の特異性、親和性、及び能力を有する非ヒト種(例えば、マウス、ラット、ウサギ、又はハムスター)の相補性決定領域(CDR)の残基によってCDRの残基が置き換えられているヒト免疫グロブリンである(Jones et al.,1986,Nature,321:522-525;Riechmann et al.,1988,Nature,332:323-327;Verhoeyen et al.,1988,Science,239:1534-1536)。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FW)残基が、所望の特異性、親和性、及び能力を有する非ヒト種由来の抗体の対応する残基で置き換えられる。
【0046】
ヒト化抗体は、抗体の特異性、親和性、及び/又は能力を洗練して最適化するため、Fvフレームワーク領域にあるか、及び/又は置き換えられた非ヒト残基内にある更なる残基の置換によって更に修飾することができる。一般に、ヒト化抗体は、非ヒト免疫グロブリンに対応するCDR領域の全て又は実質的に全てを含有する少なくとも1つ、典型的には2つ又は3つの可変ドメインの実質的に全てを含むことになり、一方、FR領域の全て又は実質的に全てはヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである。ヒト化抗体はまた、免疫グロブリン定常領域又はドメイン(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンのそれの少なくとも一部分も含み得る。ヒト化抗体の作製に用いられる方法の例が、米国特許第5,225,539号明細書及び同第5,639,641号明細書に記載される。
【0047】
用語「ヒト抗体」は、ヒトにより産生される抗体、又は当該技術分野において公知の任意の技法を用いて作製されるヒトにより産生される抗体に対応するアミノ酸配列を有する抗体を意味する。ヒト抗体のこの定義には、少なくとも1つのヒト重鎖及び/又は軽鎖ポリペプチドを含むインタクトな又は完全長の抗体、例えば、マウス軽鎖及びヒト重鎖ポリペプチドを含む抗体などが含まれる。
【0048】
用語「キメラ抗体」は、免疫グロブリン分子のアミノ酸配列が2つ以上の種に由来する抗体を指す。典型的には、軽鎖及び重鎖の両方の可変領域が、所望の特異性、親和性、及び能力を有する哺乳動物の1つの種(例えば、マウス、ラット、ウサギ等)に由来する抗体の可変領域に対応し、一方、定常領域が、その種における免疫応答の誘発が回避するために、別のもの(通常、ヒト)に由来する抗体の配列と同種である。
【0049】
「遮断」抗体又は「アンタゴニスト」抗体は、それが結合する抗原、例えば、FcγRIIAの生物活性を阻害又は低減するものである。特定の態様では、遮断抗体又はアンタゴニスト抗体は、抗原の生物活性を実質的に又は完全に阻害する。望ましくは、生物活性は、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%又はさらには100%低減される。
【0050】
用語「生殖系列化(germlining)」とは、抗体中の特定の位置のアミノ酸が、生殖系列におけるものに変異されて戻されることを意味する。
【0051】
「IgG1三重変異体」又は「IgG1-TM」抗体形式は、下部ヒンジ及びCH2ドメイン内に3つの単一アミノ酸置換、L234F/L235E/P331Sを含有するヒトIgG1アイソタイプである(Oganesyanら、Acta Crystallogr. D Biol. Crystallogr. 64:700~704、2008)。TMは、ヒトFcγRI、FcγRII、FcγRIII及びC1qとの結合の激しい減少を引き起こし、その結果、極めて低いエフェクター機能を有するヒトアイソタイプをもたらす。
【0052】
用語「YTE」又は「YTE変異体」とは、ヒトFcRnとの結合の増大をもたらすIgG1 Fcにおける変異を指し、変異を有する抗体の血清半減期を改善する。YTE変異体は、IgGlの重鎖中に導入される、3つの変異、M252Y/S254T/T256E(EU番号付けKabatら(1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest、米国公衆衛生局、国立衛生研究所、ワシントンD.C.)の組合せを含む。参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,658,921号を参照のこと。YTE変異体は、抗体の血清半減期を、同一抗体の野生型バージョンと比較しておよそ4倍増大するとわかっている(Dall’Acquaら、J. Biol. Chem. 281:23514~24(2006);Robbieら、Antimicrob. Agents Chemother. 57、6147~6153(2013))。参照によりその全文が本明細書に組み込まれる米国特許第7,083,784号も参照のこと。
【0053】
用語「抗体」又は「免疫グロブリン」は、本明細書において同義的に使用される。通常の抗体は、ジスルフィド結合によって相互接続された少なくとも2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖を含む。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書においてVHと略される)及び重鎖定常領域からなる。重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2及びCH3からなる。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書においてVLと略される)及び軽鎖定常領域(CL)からなる。軽鎖定常領域は、1つのドメイン、C1からなる。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。抗体の定常領域は、免疫グロブリンの、免疫系の種々の細胞(例えば、エフェクター細胞)及び古典的な補体系の第1の成分(C1q)を含む宿主組織又は因子との結合を媒介し得る。
【0054】
VH及びVL領域は、フレームワーク(FW)領域と呼ばれるより保存されている領域とともに散在している、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域にさらに分けることができる。各鎖中のCDRは、FW領域によって極接近して一緒に保持されており、その他の鎖に由来するCDRは、抗体の抗原結合部位の形成に関与する。各VH及びVLは、以下の順序:FW1、CDR1、FW2、CDR2、FW3、CDR3、FW4でアミノ末端からカルボキシ末端に配置された3つのCDR及び4つのFWからなる。
【0055】
CDRの決定には少なくとも2つの技法がある:(1)異種間配列多様性に基づく手法(Kabat et al.Sequences of Proteins of Immunological Interest,(5th ed.,Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda Md.,(1991)));及び(2)抗原抗体複合体の結晶学的研究に基づく手法(Al-lazikani et al.J.Molec.Biol.273:927-948(1997))。加えて、当該技術分野では、CDRの決定にこれらの2つの手法の組み合わせが用いられることもある。
【0056】
Kabatにあるとおりのアミノ酸位置付番は、重鎖可変ドメイン又は軽鎖可変ドメインに用いられる付番方式を指す(おおよそ軽鎖の残基1~107及び重鎖の残基1~113)。この付番方式を用いると、実際の線状アミノ酸配列は、可変ドメインのFW又はCDRの短縮、又はそれへの挿入に対応するより少ない又は追加的なアミノ酸を含み得る。例えば、重鎖可変ドメインは、H2の残基52の後に単一のアミノ酸挿入(Kabatによる残基52a)を含み、及び重鎖FW残基82の後に挿入された残基(例えば、Kabatによる残基82a、82b、及び82c等)を含み得る。
【0057】
【表1】
【0058】
残基のKabat付番は、所与の抗体について、相同性領域において抗体の配列を「標準」Kabat付番配列とアラインメントすることにより決定し得る。Chothiaは、その代わりに構造ループの位置を参照する(Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.196:901-917(1987))。Kabat付番規則を用いて付番したときのChothia CDR-H1ループの末端は、ループの長さに応じてH32~H34の間で異なる(これは、Kabat付番スキームがH35A及びH35Bに挿入を置くためである。35Aも35Bも存在しない場合、ループは32で終わり;35Aのみが存在する場合、ループは33で終わり;35A及び35Bの両方が存在する場合、ループは34で終わる)。AbM超可変領域は、Kabat CDRとChothia 構造ループとの妥協案に相当し、Oxford Molecular’s AbM抗体モデリングソフトウェアによって用いられている。表1を参照されたい。
【0059】
IMGT(ImMunoGeneTics)も、CDRを含めた免疫グロブリン可変領域の付番方式を提供する。例えば、Lefranc,M.P.et al.,Dev.Comp.Immunol.27:55-77(2003)を参照されたい。IMGT付番方式は、5,000を超える配列のアラインメント、構造データ、及び超可変ループの特徴付けに基づくものであり、あらゆる種の可変領域及びCDR領域の容易な比較を可能にする。IMGT付番スキームによれば、VH-CDR1は26~35位にあり、VH-CDR2は51~57位にあり、VH-CDR3は93~102位にあり、VL-CDR1は27~32位にあり、VL-CDR2は50~52位にあり、及びVL-CDR3は89~97位にある。
【0060】
本明細書全体を通じて用いられるとおり、記載されるVH CDR配列は古典的Kabat付番位置に対応し、即ち、Kabat VH-CDR1は31~35位にあり、VH-CDR2は50~65位にあり、及びVH-CDR3は95~102位にある。VL-CDR1、VL-CDR2及びVL-CDR3も古典的Kabat付番位置、即ち、24~34位、50~56位及び89~97位にそれぞれ対応する。
【0061】
「結合親和性」は、概して、分子(例えば、抗体)の単一の結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原)との間の非共有結合性相互作用の総和の強度を指す。特に指示がない限り、本明細書で使用されるとき、「結合親和性」は、結合対(例えば、抗体と抗原)のメンバー間の1:1相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。分子XのそのパートナーYに対する親和性は、概して解離定数(K)によって表すことができる。親和性は、本明細書に記載されるものを含め、当該技術分野において公知の一般的な方法によって計測することができる。低親和性抗体は、概して抗原に緩徐に結合し、容易に解離する傾向があり、一方、高親和性抗体は、概して抗原に速やかに結合し、結合したまま長く留まる傾向がある。
【0062】
抗原に対する抗体の親和性又はアビディティは、当該技術分野において周知の任意の好適な方法、例えば、フローサイトメトリー、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、又はラジオイムノアッセイ(RIA)、又は反応速度(例えば、KINEXA(登録商標)又はBIACORE(商標)分析)を用いて実験的に決定することができる。直接結合アッセイ並びに競合的結合アッセイフォーマットは、容易に用いることができる。(例えば、Berzofsky et al.,“Antibody-Antigen Interactions,” In Fundamental Immunology, Paul, W. E., ed., Raven Press: New York, N.Y. (1984); Kuby, Immunology, W. H. Freeman and Company: New York, N.Y. (1992));及び本明細書に記載される方法を参照されたい。)特定の抗体抗原相互作用の親和性計測値は、異なる条件下(例えば、塩濃度、pH、温度)で計測した場合に異なり得る。従って、親和性及び他の抗原結合パラメータ(例えば、K又はKd、Kon、Koff)の計測は、抗体及び抗原の標準化した溶液、及び当該技術分野において公知のとおりの標準化した緩衝液で行われる。
【0063】
「効力」は、通常、特に指定されない限りnM又はpMのIC50値として表現される。IC50は、抗体分子の阻害濃度中央値である。機能アッセイでは、IC50は、生物学的反応をその最大値の50%低下させる濃度である。リガンド結合試験では、IC50は、受容体結合を最大特異的結合レベルの50%低下させる濃度である。IC50は、当該技術分野において公知の任意の手段によって計算することができる。
【0064】
参照抗体と比較したときの本発明の抗体又はポリペプチドの効力の改善倍数は、少なくとも約2倍、少なくとも約4倍、少なくとも約6倍、少なくとも約8倍、少なくとも約10倍、少なくとも約20倍、少なくとも約30倍、少なくとも約40倍、少なくとも約50倍、少なくとも約60倍、少なくとも約70倍、少なくとも約80倍、少なくとも約90倍、少なくとも約100倍、少なくとも約110倍、少なくとも約120倍、少なくとも約130倍、少なくとも約140倍、少なくとも約150倍、少なくとも約160倍、少なくとも約170倍、又は少なくとも約180倍又はそれを超えることができる。
【0065】
用語「阻害する」、「遮断する」及び「抑制する」は、同義的に使用され、活性の完全遮断を含む、生物活性の任意の統計的に有意な減少を指す。例えば、「阻害」は、生物活性の約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%の減少を指し得る。したがって、用語「阻害」又は「抑制」が、例えば、FcγRIIAシグナル伝達経路に対する効果を説明するために適用される場合には、この用語は、FcγRIIA結合分子の、FcγRIIA誘導性細胞活性化又はシグナル伝達を、未処置(対照)細胞に対して統計的に有意に減少させる能力を指す。FcγRIIAを発現する細胞は、天然に存在する細胞又は細胞株(例えば、マクロファージ、好中球、好酸球、血小板)であり得るか、又はFcγRIIAをコードする核酸を宿主細胞中に導入することによって組換えによって産生され得る。一実施形態では、FcγRIIA結合分子は、FcγRIIA発現細胞においてFcγRIIA媒介性細胞活性化又はシグナル伝達を、例えば、フローサイトメトリー、ウエスタンブロッティング、ELISA又は当業者に公知のその他のアッセイによって決定して、少なくとも10%又は少なくとも20%又は少なくとも30%又は少なくとも40%又は少なくとも50%又は少なくとも60%又は少なくとも70%又は少なくとも80%又は少なくとも90%又は約100%阻害し得る。
【0066】
「単離された」ポリペプチド、抗体、結合分子、ポリヌクレオチド、ベクター又は細胞とは、天然には見られない形態である。単離されたポリペプチド、抗体、結合分子、ポリヌクレオチド、ベクター又は細胞は、もはやそれらが天然に見られる形態ではない程度まで精製されているものを含む。いくつかの実施形態では、単離されているポリペプチド、抗体、結合分子、ポリヌクレオチド、ベクター又は細胞は、実質的に純粋である。本明細書において使用される場合には、用語「実質的に純粋な」とは、75%を超える、好ましくは、80%又は90%を超える、最も好ましくは、95%を超える純度を指す。
【0067】
「対象」又は「個体」又は「動物」又は「患者」又は「哺乳動物」とは、診断、予後又は療法が望まれる任意の対象、特に、哺乳動物対象を意味する。哺乳動物対象として、例えば、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、ウマ、ウシ、クマなどを含む、ヒト、飼育動物、家畜動物、スポーツ用動物及び動物園の動物が挙げられる。
【0068】
用語「医薬組成物」とは、有効成分の生物活性が効果的であることを可能にするような形態の、組成物が投与される対象にとって許容しがたく毒性であるさらなる成分を含有しない調製物を指す。このような組成物は、無菌である場合もあり、生理食塩水などの医薬上許容される担体を含み得る。適した医薬組成物は、バッファー、界面活性剤、安定化剤、防腐剤、バイオアベイラビリティを増強する吸収促進剤及び/又はその他の従来の可能化剤若しくは分散剤のうち1種以上を含み得る。
【0069】
本明細書において開示される結合分子の「有効量」とは、具体的に記された目的を実施するのに十分な量である。「有効量」は、経験的に、日常的な方法で、記された目的に関連して決定できる。
【0070】
本明細書において使用される、用語「標識」とは、「標識された」結合分子を作製するために結合分子に直接的又は間接的にコンジュゲートされる検出可能な化合物又は組成物を指す。標識は、それ自体で検出可能であり得る(例えば、放射性同位体標識又は蛍光標識)、又は例えば、酵素標識の場合には、検出可能である基質化合物又は組成物の化学的変化を触媒し得る。
【0071】
「治療すること」又は「治療」又は「治療するために」又は「軽減すること」又は「軽減するために」などの用語は、診断された病理的状態又は障害の症状を治癒する、減速する、和らげる、及び/又はその進行を停止する治療的手段を指す。したがって、治療を必要とするものとして、すでに障害を有するものが挙げられる。特定の実施形態では、患者が、疾患又は障害と関連する症状の完全な、部分的な又は一過性の軽減又は排除を示す場合には、対象は、本明細書において提供される方法に従って、炎症性、免疫媒介性又は自己免疫性疾患又は障害について成功裏に「治療される」。
【0072】
「予防する」又は「予防」とは、標的とされる病理的状態又は障害の発症を防止する及び/又は減速する予防的又は防止的(prophylactic or preventative)手段を指す。したがって、予防を必要とするものは、障害を有する傾向がある、又は障害に罹患しやすいものを含む。特定の実施形態では、炎症性、免疫媒介性又は自己免疫性疾患又は障害は、患者が、本発明の方法に供されていない患者よりも、例えば、疾患若しくは障害と関連する症状がより少ない、若しくはより重症ではない症状、又は疾患若しくは障害と関連する症状のより遅い発症を一過性に又は持続性に発症する場合、本明細書において提供される方法に従って成功裏に予防されている。
【0073】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」は、本明細書では、任意の長さのアミノ酸のポリマーを指して同義的に使用される。ポリマーは線状又は分枝状であってもよく、それは修飾アミノ酸を含んでもよく、且つ非アミノ酸がそれを分断していてもよい。これらの用語はまた、天然で又は介入によって修飾されている(例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、又は任意の他の操作又は修飾、例えば標識成分とのコンジュゲーションなど)アミノ酸ポリマーも包含する。また、この定義内には、例えば、アミノ酸の1つ以上の類似体(例えば、非天然アミノ酸等を含む)、並びに当該技術分野において公知の他の修飾を含有するポリペプチドも含まれる。特定の実施形態において、ポリペプチドは一本鎖又は会合鎖として存在し得る。
【0074】
「保存的アミノ酸置換」は、あるアミノ酸残基が、同様の側鎖を有する別のアミノ酸残基に置き換えられているものである。同様の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分枝側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を含め、当該技術分野において定義されている。例えば、フェニルアラニンのチロシンとの置換は保存的置換である。特定の実施形態において、本発明の結合分子のアミノ酸配列における保存的置換は、そのその結合分子が結合する抗原、即ちFcγRIIAへの結合分子の結合を無効にしない。抗原結合性を消失させないヌクレオチド及びアミノ酸保存的置換を同定する方法は当該技術分野において周知である。(例えば、Brummell et al., Biochem. 32: 1180-1 187 (1993); Kobayashi et al., Protein Eng. 12(10):879-884 (1999);及び Burks et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 94:.412-417 (1997))を参照されたい)。
【0075】
「ポリヌクレオチド」は、本明細書で使用されるとき、1つ以上の「核酸」、「核酸分子」、及び「核酸配列」を含むことができ、任意の長さのヌクレオチドの重合体を指し、且つDNA及びRNAが含まれる。ポリヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、修飾ヌクレオチド又は塩基、及び/又はこれらの類似体、又はDNA若しくはRNAポリメラーゼによって重合体に組み込むことのできる任意の基質であり得る。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチド及びその類似体など、修飾ヌクレオチドを含み得る。前述の説明は、RNA及びDNAを含め、本明細書において言及される全てのポリヌクレオチドに適用される。
【0076】
用語「ベクター」は、1つ以上の目的の遺伝子又は配列を宿主細胞に送達し、及び一部の実施形態では発現する能力を有する構築物を意味する。ベクターの例としては、限定はされないが、ウイルスベクター、ネイキッドDNA又はRNA発現ベクター、プラスミド、コスミド又はファージベクター、カチオン性縮合剤に会合したDNA又はRNA発現ベクター、リポソームに封入されたDNA又はRNA発現ベクター、及びプロデューサー細胞などの特定の真核細胞が挙げられる。
【0077】
2つ以上の核酸又はポリペプチドに関連して、用語「同一の」又はパーセント「同一性」は、最大の一致となるように比較及びアラインメント(必要に応じてギャップを導入して)したとき、いかなる保存的アミノ酸置換も配列同一性の一部として考慮することなく、同じであるか、又は特定の割合の同じであるヌクレオチド又はアミノ酸残基を有する2つ以上の配列又は部分配列を指す。パーセント同一性は配列比較ソフトウェア又はアルゴリズムを用いるか、又は目視検査によって計測することができる。アミノ酸配列又はヌクレオチド配列のアラインメントを達成するために用い得る様々なアルゴリズム及びソフトウェアが当該技術分野において公知である。
【0078】
配列アラインメントアルゴリズムの1つのかかる非限定的な例は、Karlin et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.,90:5873-5877(1993)によって修正され、且つNBLAST及びXBLASTプログラム(Altschul et al.,Nucleic Acids Res.25:3389-3402(1991)))に組み込まれた、Karlin et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.,87:2264-2268(1990)に記載されるアルゴリズムである。特定の実施形態では、Altschul et al.,Nucleic Acids Res.25:3389-3402(1997)において記載されるとおり、ギャップ付きBLASTを用いることができる。BLAST-2、WU-BLAST-2(Altschul et al.,Methods in Enzymolology,266:460-480(1996))、ALIGN、ALIGN-2(Genentech、South San Francisco,カリフォルニア)又はMegalign(DNASTAR)が、配列のアラインメントに用いることのできる更なる公的に利用可能なソフトウェアプログラムである。特定の実施形態において、2つのヌクレオチド配列間の同一性パーセントは、GCGソフトウェアパッケージのGAPプログラムを用いて(例えば、NWSgapdna.CMP行列及びギャップ加重40、50、60、70、又は90及び長さ加重1、2、3、4、5、又は6を使用して)決定される。特定の代替的実施形態において、Needleman and Wunsch(J.Mol.Biol.(48):444-453(1970))のアルゴリズムを組み込むGCGソフトウェアパッケージのGAPプログラムを用いて2つのアミノ酸配列間の同一性パーセントを(例えば、BLOSUM 62行列又はPAM250行列のいずれか、及びギャップ加重16、14、12、10、8、6、又は4及び長さ加重1、2、3、4、5を使用して)決定することができる。或いは、特定の実施形態において、ヌクレオチド又はアミノ酸配列間の同一性パーセントは、Myers and Miller(CABIOS 4:11-17(1989))のアルゴリズムを用いて決定される。例えば、同一性パーセントは、ALIGNプログラム(バージョン2.0)を用いて、及び残基テーブルのPAM120、12のギャップ長ペナルティ及び4のギャップペナルティを使用して決定することができる。当業者は、特定のアラインメントソフトウェアによる最大限のアラインメントに適切なパラメータを決定することができる。特定の実施形態において、アラインメントソフトウェアのデフォルトパラメータが使用される。
【0079】
特定の実施形態において、第1のアミノ酸配列の第2の配列アミノ酸に対するパーセンテージ同一性「X」は、100×(Y/Z)(式中、Yは、第1及び第2の配列のアラインメント(目視検査によるか、又は特定の配列アラインメントプログラムによってアラインメントしたとき)において同一のマッチとしてスコア化されるアミノ酸残基の数であり、Zは、第2の配列の残基の総数である)として計算される。第1の配列の長さが第2の配列より長い場合、第1の配列の第2の配列に対するパーセント同一性は第2の配列の第1の配列に対するパーセント同一性より高くなる。
【0080】
II. FcγRIIA結合分子
本発明は、FcγRIIAと特異的に結合するFcγRIIA結合分子、すなわち、抗FcγRIIA抗体及びその抗原結合断片を提供する。用語「FcγRIIA結合分子」又は「FcγRIIAと結合する結合分子」又は「抗FcγRIIA」とは、十分な親和性でFcγRIIAと結合可能であり、その結果、結合分子が、FcγRIIAを標的とすることにおいて治療剤又は診断試薬として有用である結合分子を指す。「FcγRIIAと特異的に結合する」結合分子は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)、BIACORE(登録商標)(分析物として組換えFcγRIIA及びリガンドとして結合分子を使用して、又はその逆)、KINEXA(登録商標)又は当技術分野で公知のその他の結合アッセイによって測定して、結合分子のFcγRIIAに対する結合の約10%未満の程度で、非関連の非FcγRIIAタンパク質と結合する。特定の実施形態では、FcγRIIAと結合する結合分子は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦10pM、≦1pM又は≦0.1pMの解離定数(K)を有する。
【0081】
本開示の例示的結合分子として、マウスモノクローナル抗体IV.3(Looney RJら、J. Immunol. 136(5):1641(1986))の変異体(これらの抗体のヒト化、最適化、生殖系列化及び/又はその他のバージョンを含む)、抗FcγRIIA TM抗体及び血清半減期が最適化された抗FcγRIIA YTE抗体(例えば、K44VHa-N56Q、K44VHa6-N56Q又はK2Ha-N56Q)が挙げられる。本開示の例示的抗体として、クローン32LO0350、32LO0351、32LO0352、32LO0354、32LO0355及び32LO0356が挙げられる。「クローン32LO0352」及び「MEDI9600」とは、同一分子を指し、この用語は、本明細書において同義的に使用される。本発明はまた、本明細書において示されるFcγRIIA結合分子と実質的に相同である変異体及び等価物も包含する。これらは、例えば、保存的アミノ酸置換を含有し得る。
【0082】
特定の態様では、本開示は、クローン32LO0350、32LO0351、32LO0352、32LO0354、32LO0355又は32LO0356のうちいずれか1種の重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含む結合分子と同一のFcγRIIAエピトープと特異的に結合し得るFcγRIIA結合分子を提供する。用語「エピトープ」とは、本発明の結合分子と結合可能な標的タンパク質決定基を指す。エピトープは、通常、アミノ酸又は糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面集団からなり、通常、特定の三次元構造特徴並びに特定の電荷特徴を有する。コンホメーションエピトープ及び非コンホメーションエピトープは、変性溶媒の存在下で前者との結合は失われるが、後者との結合は失われない点で区別される。このような結合分子は、標準的なFcγRIIA結合又は活性アッセイにおいて、クローン32LO0350、32LO0351、32LO0352、32LO0354、32LO0355又は32LO0356などの結合分子と交差競合する(例えば、統計的に有意な方法でその結合を競合阻害する)その能力に基づいて同定され得る。
【0083】
したがって、一実施形態では、本発明は、FcγRIIAとの結合について、クローン32LO0350、32LO0351、32LO0352、32LO0354、32LO0355又は32LO0356のうち1種などの本発明の別のFcγRIIA結合分子と競合するFcγRIIA結合分子を提供する。例えば、クローン32LO0350、32LO0351、32LO0352、32LO0354、32LO0355又は32LO0356の結合を阻害する結合分子の能力は、試験結合分子が、FcγRIIAとの結合についてクローン32LO0350、32LO0351、32LO0352、32LO0354、32LO0355又は32LO0356と競合し得ること、このような結合分子は、非限定的な理論に従って、FcγRIIA上の、競合するFcγRIIA結合分子と同一又は関連(例えば、構造的に同様の又は空間的に近位の)エピトープと結合し得ることを実証する。一実施形態では、抗FcγRIIA抗体又はその抗原結合断片は、FcγRIIA上の、クローン32LO0350、32LO0351、32LO0352、32LO0354、32LO0355又は32LO0356のいずれかと同一のエピトープと結合する。用語「競合する」は、結合分子が、FcγRIIAとの結合について、32LO0350、32LO0351、32LO0352、32LO0354、32LO0355又は32LO0356のうちいずれか1種と一方向性に競合することを示す。用語「交差競合」とは、結合分子が、FcγRIIAとの結合について、32LO0350、32LO0351、32LO0352、32LO0354、32LO0355又は32LO0356のうちいずれか1種と二方向性に競合することを示す。
【0084】
いくつかの実施形態では、FcγRIIA結合分子は、マウス抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組換え抗体、二重特異性抗体、多重特異性抗体又はそれらの任意の組合せである。いくつかの実施形態では、FcγRIIA結合分子は、Fab、Fab’、F(ab’)、Fd、Fv、scFv、ジスルフィド連結されたFv、V-NARドメイン、IgNar、細胞内抗体、IgGΔCH2、ミニボディ、F(ab’)、テトラボディ、トリアボディ、ダイアボディ、単一ドメイン抗体、DVD-Ig、Fcab、mAb、(scFv)又はscFv-Fcを含む。
【0085】
本明細書において提供されるFcγRIIA結合分子は、VH及びVLに加えて、重鎖定常領域又はその断片を含み得る。特定の態様では、重鎖定常領域は、ヒト重鎖定常領域、例えば、ヒトIgG定常領域、例えば、ヒトIgG1定常領域である。
【0086】
特定の実施形態では、本発明の結合分子は、結合分子の機能的及び/又は薬物動態特性を変更するためにFc領域中に1つ以上の変更がなされている変更されたFc領域を含むように製造される。このような変更は、エフェクター機能の変更、免疫原性の低減及び/又は血清半減期の増大をもたらし得る。Fc領域は、Fc受容体、補体タンパク質Clq並びにプロテインA及びGなどのその他の分子を含むいくつかのリガンドと相互作用する。これらの相互作用は、種々のエフェクター機能並びに抗体依存性細胞媒介性細胞毒性(ADCC)及び補体依存性細胞毒性(CDC)を含む下流シグナル伝達事象にとって必須である。したがって、特定の実施形態では、本発明のFcγRIIA結合分子は、Fc領域中に修飾を含まないFcγRIIA結合分子と比較して、エフェクター機能の促進に関与するFcリガンドに対する親和性が低減している、又は除去されている。特定の実施形態では、FcγRIIA結合分子は、ADCC活性を有さない、及び/又はCDC活性を有さない。特定の態様では、FcγRIIA結合分子は、Fc受容体及び/又は補体因子と結合しない。特定の態様では、FcγRIIA結合分子は、エフェクター機能を有さない。所望のエフェクター機能を最適化するために特定の定常ドメインを選択することは、当技術分野における通常の技術の範囲内である。いくつかの実施形態では、結合分子は、IgG1サブタイプのものであり、任意選択で、定義のセクションにおいて上記で開示されるTM形式(L234F/L235E/P331S)を含む。
【0087】
特定の態様では、重鎖定常領域又はその断片は、野生型IgG定常ドメインに対して1つ以上のアミノ酸置換を含む場合があり、修飾されたIgGは、野生型IgG定常ドメインを有するIgGの半減期と比較して増大した半減期を有する。例えば、IgG定常ドメインは、251~257、285~290、308~314、385~389及び428~436位のアミノ酸残基のうち1つ以上のアミノ酸置換を含有する場合があり、アミノ酸位置番号付けは、Kabatに示されるEUインデックスに従う。特定の態様では、IgG定常ドメインは、Kabat位置252のアミノ酸のチロシン(Y)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)若しくはトレオニン(T)での置換、Kabat位置254のアミノ酸の、トレオニン(T)での置換、Kabat位置256のアミノ酸のセリン(S)、アルギニン(R)、グルタミン(Q)、グルタミン酸(E)、アスパラギン酸(D)又はトレオニン(T)での置換、Kabat位置257のアミノ酸のロイシン(L)での置換、Kabat位置309のアミノ酸のプロリン(P)での置換、Kabat位置311のアミノ酸のセリン(S)での置換、Kabat位置428のアミノ酸のトレオニン(T)、ロイシン(L)、フェニルアラニン(F)又はセリン(S)での置換、Kabat位置433のアミノ酸のアルギニン(R)、セリン(S)、イソロイシン(I)、プロリン(P)若しくはグルタミン(Q)での置換又はKabat位置434のアミノ酸のトリプトファン(W)、メチオニン(M)、セリン(S)、ヒスチジン(H)、フェニルアラニン(F)若しくはチロシンでの置換のうち1つ以上を含み得る。より詳しくは、IgG定常ドメインは、Kabat位置252のアミノ酸のチロシン(Y)での置換、Kabat位置254のアミノ酸のトレオニン(T)での置換及びKabat位置256のアミノ酸のグルタミン酸(E)での置換などを含む、野生型ヒトIgG定常ドメインに対するアミノ酸置換を含有し得る。いくつかの実施形態では、結合分子は、IgG1サブタイプのものであり、任意選択で、定義のセクションにおいて上記で開示される三重変異体YTEを含む。
【0088】
本明細書において提供されるFcγRIIA結合分子は、軽鎖定常領域又はその断片を含み得る。特定の態様では、軽鎖定常領域は、カッパ定常領域又はラムダ定常領域、例えばヒトカッパ定常領域又はヒトラムダ定常領域である。
【0089】
本明細書において提供されるFcγRIIA結合分子は、有益な特性を有し得る。例えば、結合分子は、種々のFcγRIIA媒介性活性、例えば、形質細胞様樹状細胞(DC)における免疫複合体誘導性I型インターフェロン発現、DCにおける免疫複合体誘導性サイトカイン/ケモカイン発現、免疫複合体誘導性血小板活性化、免疫複合体誘導性抗原提示、免疫複合体誘導性好中球細胞外トラップ(NET)形成及び好中球活性化における脱顆粒を阻害、抑制又は遮断し得る。
【0090】
特定の態様では、本明細書において提供される結合分子は、FcγRIIAと、Biacore(商標)アッセイによって、又は結合平衡除外法(Kinetic Exclusion Assay)(KinExA)3000プラットフォームで測定して約100nM~約0.1nMの解離定数(K)を特徴とする結合親和性で結合し得る。
【0091】
特定の態様では、抗FcγRIIA抗体又はその抗原結合断片は、FcγRIIA、例えば、ヒトFcγRIIA又はカニクイザルFcγRIIA又はその抗原性断片と、例えば、Biacore(商標)又はKinExA(登録商標)によって測定して10-6M未満の、10-7M未満の、10-8M未満の、10-9M未満の、10-10M未満の、10-11M未満の、10-12M未満の、10-13M未満の、10-14M未満の又は10-15M未満の解離定数又はKで特異的に結合し得る。特定の態様では、ヒト化抗FcγRIIA抗体MEDI9600は、BIAcoreアッセイによって測定して、ヒトFcγRIIA(131R)との約0.15nMのKで、ヒトFcγRIIA(131H)と約0.13nMのKで、カニクイザルFcγRIIAと約31.3nMのKで結合し得る。
【0092】
別の実施形態では、本発明のFcγRIIA結合分子は、FcγRIIA又はその抗原性断片と、1×10-3-1未満の、又は2×10-3-1未満のKoffで結合する。その他の実施形態では、FcγRIIA結合分子は、FcγRIIA又はその抗原性断片と、Biacore(商標)又はKinExA(登録商標)によって測定して10-3-1未満の、5×10-3-1未満の、10-4-1未満の、5×10-4-1未満の、10-5-1未満の、5×10-5-1未満の、10-6-1未満の、5×10-6-1未満の、5×10-7-1未満の、10-8-1未満の、5×10-8-1未満の、10-9-1未満の、5×10-9-1未満の、又は10-10-1未満のKoffで結合する。特定の態様では、ヒト化抗FcγRIIA抗体MEDI9600は、BIAcoreアッセイによって測定して、ヒトFcγRIIA(131R)と約7.35x10-4-1のKoffで、ヒトFcγRIIA(131H)と約3.37x10-4-1のKoffで、カニクイザルFcγRIIAと約9.04x10-2-1のKoffで結合し得る。
【0093】
別の実施形態では、本発明のFcγRIIA結合分子は、FcγRIIA又はその抗原性断片と例えば、Biacore(商標)又はKinExA(登録商標)によって測定して、少なくとも10-1-1、少なくとも5×10-1-1、少なくとも10-1-1、少なくとも5×10-1-1、少なくとも10-1-1、少なくとも5×10-1-1、少なくとも10-1-1又は少なくとも10-1-1の会合速度定数又はKon速度で結合する。特定の態様では、ヒト化抗FcγRIIA抗体MEDI9600は、BIAcoreアッセイによって測定して、ヒトFcγRIIA(131R)と約4.98x10-1-1のKonで、ヒトFcγRIIA(131H)と約2.60x10-1-1のKonで、カニクイザルFcγRIIAと約2.88x10-1-1のKonで結合し得る。
【0094】
VH及び/又はVLアミノ酸配列又はその部分、例えばCDR配列は、本明細書において示される配列に対して、例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%類似し、及び/又は本明細書において示される配列、例えば、クローン32LO0350、32LO0351、32LO0352、32LO0354、32LO0355又は32LO0356のいずれかに由来する配列に対して0、1、2、3、4、5つ又はそれ以上の置換、例えば、保存的置換を含み得る。VH領域又はVL領域に対して特定のパーセント類似性を有するVH及びVL領域を有する、又は1つ以上の置換、例えば、保存的置換を有するFcγRIIA結合分子は、本明細書において記載されるVH及び/又はVL領域をコードする核酸分子の変異誘発(例えば、部位指定又はPCR媒介変異誘発)と、それに続く、コードされる変更された結合分子のFcγRIIAとの結合についての試験及び任意選択で、本明細書において記載される機能アッセイを使用する保持される機能についての試験によって得ることができる。
【0095】
本開示は、異種薬剤にコンジュゲートされているFcγRIIA結合分子をさらに提供する。特定の態様では、薬剤は、抗菌剤、治療剤、プロドラッグ、ペプチド、タンパク質、酵素、脂質、生物応答修飾物質、医薬剤、リンホカイン、異種抗体又はその断片、検出可能な標識、ポリエチレングリコール(PEG)又は任意の前記薬剤のうち2種以上の組合せであり得る。ヘテロコンジュゲート抗FcγRIIA抗体は、本明細書において別の場所でより詳細に論じられる。
【0096】
用語「結合分子」は、抗体及びその抗原結合断片を含む。特定の実施形態では、FcγRIIA結合分子は、抗体ではないポリペプチドである。高親和性でタンパク質標的と結合する非抗体ポリペプチドを同定し、製造する種々の方法は、当技術分野で公知である。例えば、Skerra、Curr. Opin. Biotechnol. 18:295~304(2007)、Hosseら、Protein Science 15:14~27(2006)、Gillら、Curr. Opin. Biotechnol. 17:653~658(2006)、Nygren、FEBS J. 275:2668~76(2008)及びSkerra、FEBS J. 275:2677~83(2008)を参照のこと。特定の実施形態では、FcγRIIA結合ポリペプチドを同定及び/又は製造するために、ファージディスプレイ技術を使用することができる。特定の実施形態では、ポリペプチドは、プロテインA、リポカリン、フィブロネクチンドメイン、アンキリンコンセンサス反復ドメイン及びチオレドキシンからなる群から選択される種類のタンパク質スキャフォールドを含む。
【0097】
III. FcγRIIA結合分子の調製
モノクローナル抗FcγRIIA抗体は、Kohler and Milstein,Nature 256:495(1975)によって記載されるものなどのハイブリドーマ法を用いて調製することができる。ハイブリドーマ法を使用して、マウス、ハムスター、又は他の適切な宿主動物を免疫し、免疫抗原に特異的に結合し得る抗体のリンパ球による産生を誘発する。リンパ球はまた、インビトロで免疫することもできる。免疫後、リンパ球を単離し、例えばポリエチレングリコール(PEG)を使用して好適な骨髄腫細胞株と融合することによりハイブリドーマ細胞を形成し、次にそこから未融合のリンパ球及び骨髄腫細胞を選択によって除くことができる。免疫沈降、免疫ブロット法によるか、又はインビトロ結合アッセイ(例えば、RIA若しくはELISA)によって決定される、選択された抗原を特異的に対象とするモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを、次に標準方法を用いたインビトロ培養か(Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,Academic Press,1986)、或いは動物の腹水腫瘍としてインビボで増殖させることができる。次に、モノクローナル抗体を培養培地又は腹水から精製することができる。
【0098】
FcγRIIA結合分子はまた、例えば米国特許第4,816,567号明細書に記載されるとおり組換えDNA方法を用いて作製することもできる。幾つかの場合、成熟B細胞又はハイブリドーマ細胞から、その抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子を特異的に増幅するオリゴヌクレオチドプライマーを使用したRT-PCRによるなどして、モノクローナル抗体をコードするポリヌクレオチドを単離し、従来の手順を用いてその配列を決定する。次に、重鎖及び軽鎖又はその抗原結合断片をコードする単離ポリヌクレオチドを好適な発現ベクターにクローニングし、本来免疫グロブリンタンパク質を産生しない大腸菌(E.coli)細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、又は骨髄腫細胞などの宿主細胞にその発現ベクターをトランスフェクトすると、宿主細胞によって結合分子が生成される。また、McCafferty et al. (Nature, 348:552-554 (1990)); Clackson et al. (Nature, 352:624-628 (1991));及びMarks et al. (J. Mol. Biol., 222:581-597 (1991))に記載されるとおり、所望の種のCDRを発現するファージディスプレイライブラリから、組換えFcγRIIA結合分子を単離することもできる。FcγRIIA結合分子をコードするヌクレオチド配列を含む核酸の生産及び発現は、次のセクションにおいてより詳細に論じられる。
【0099】
結合分子をコードするポリヌクレオチドは、組換えDNA技術を用いた何らかの種々の方法で更に修飾することができ、それにより代替的な結合分子を作製し得る。一部の実施形態では、例えばマウスモノクローナル抗体の軽鎖及び重鎖の定常ドメインが、(1)例えばヒト抗体のそれらの領域に置換されてキメラ抗体が作製されるか、又は(2)非免疫グロブリンポリペプチドに置換されて融合抗体が作製され得る。一部の実施形態では、定常領域がトランケートされるか、又は除去されて、モノクローナル抗体の所望の抗体断片が作製される。可変領域の部位特異的又は高密度突然変異誘発を用いてモノクローナル抗体の特異性、親和性等を最適化することができる。
【0100】
特定の実施形態において、FcγRIIA結合分子はヒト抗体又はその抗原結合断片である。ヒト抗体は、当該技術分野において公知の様々な技法を用いて直接調製することができる。インビトロで免疫されるか、又は標的抗原に対する抗体を産生する免疫された個体から単離された不死化ヒトBリンパ球を作製することができる。例えば、Cole et al.,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,p.77(1985);Boemer et al.,J.Immunol.147(1):86-95(1991);及び米国特許第5,750,373号明細書を参照されたい。
【0101】
例えば、Vaughan et al.(Nat. Biotechnol., 14:309-314 (1996)), Sheets et al. (Proc. Nat’l. Acad. Sci. U.S.A. 95:6157-6162 (1998)), Hoogenboom et al. (J. Mol. Biol. 227:381 (1991)),及びMarks et al. (J. Mol. Biol. 222:581 (1991))に記載されるとおり、FcγRIIA結合分子はファージライブラリから選択することもでき、ここで、そのファージライブラリはヒト抗体を発現する)。抗体ファージライブラリを作製及び使用する技術は、米国特許第5,969,108号明細書、同第6,172,197号明細書、同第5,885,793号明細書、同第6,521,404号明細書;同第6,544,731号明細書;同第6,555,313号明細書;同第6,582,915号明細書;同第6,593,081号明細書;同第6,300,064号明細書;同第6,653,068号明細書;同第6,706,484号明細書;及び同第7,264,963号明細書;及びRothe et al.,J. Mol. Biol. 375:1182-1200 (2007)にも記載されている。
【0102】
親和性成熟戦略及びチェインシャッフリング戦略が当該技術分野において公知であり、高親和性ヒト抗体又はその抗原結合断片の作製に用いることができる。Marks et al.,BioTechnology 10:779-783(1992)(Marks et al., Bio/Technology 10:779-783 (1992)を参照されたい)。
【0103】
一部の実施形態において、FcγRIIA結合分子はヒト化抗体又はその抗原結合分子であってもよい。非ヒト又はヒト抗体の改変、ヒト化又はリサーフェシング方法も用いることができ、当該技術分野において周知である。ヒト化抗体、リサーフェシング抗体、又は同様の改変抗体は、非ヒト、例えば、マウス、ラット、ウサギ、非ヒト霊長類又は他の哺乳動物である供給源由来の1つ以上のアミノ酸残基を有し得る。これらの非ヒトアミノ酸残基は、しばしば「インポート」残基と称される残基によって置き換えられ、インポート残基は、典型的には既知のヒト配列の「インポート」可変、定常又は他のドメインから取られる。かかるインポートされた配列を用いて、免疫原性を低減し、又は結合性、親和性、on速度、off速度、アビディティ、特異性、半減期、若しくは当該技術分野において公知のとおりの任意の他の好適な特性を低減し、増強し、若しくは変更することができる。一般に、CDR残基が、FcγRIIA結合への影響について、直接的且つ最も実質的に関与する。従って、非ヒト又はヒトCDR配列の一部又は全てを維持する一方で、可変領域及び定常領域の非ヒト配列はヒト又は他のアミノ酸に置き換えることができる。
【0104】
抗体はまた、任意選択で、FcγRIIA結合分子に対する高親和性及び他の有利な生物学的特性を保持しつつ改変されたヒト化抗体、リサーフェシング抗体、改変抗体又はヒト抗体であってもよい。この目標を達成するため、任意選択で、ヒト化(又はヒト)又は改変抗FcγRIIA結合分子及びリサーフェシング抗体を、親配列、改変配列、及びヒト化配列の三次元モデルを使用して、親配列及び様々な概念的ヒト化産物及び改変産物を分析することによって調製することができる。三次元免疫グロブリンモデルは一般に利用可能であり、当業者は熟知している。選択した候補免疫グロブリン配列の推定上の三次元立体構造を図解及び表示するコンピュータプログラムが利用可能である。これらの表示を調べることにより、候補結合分子配列の機能における残基の見込まれる役割の分析、即ち、候補結合分子がFcγRIIAなどのその標的に結合する能力に影響を及ぼす残基の分析が可能になる。このようにして、コンセンサス配列及びインポート配列からフレームワーク(FW)残基を選択して組み合わせることにより、標的抗原に対する親和性の増加など、所望の結合分子特性を実現することができる。
【0105】
抗FcγRIIA抗体又はその抗原結合断片のヒト化、リサーフェシング又は改変は、限定はされないが、Jones et al.,Nature 321:522(1986);Riechmann et al.,Nature 332:323(1988);Verhoeyen et al.,Science 239:1534(1988);Sims et al.,J.Immunol.151:2296(1993);Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.196:901(1987);Carter et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A 89:4285(1992);Presta et al.,J.Immunol.151:2623(1993);米国特許第5,639,641号明細書、同第5,723,323号明細書;同第5,976,862号明細書;同第5,824,514号明細書;同第5,817,483号明細書;同第5,814,476号明細書;同第5,763,192号明細書;同第5,723,323号明細書;同第5,766,886号明細書;同第5,714,352号明細書;同第6,204,023号明細書;同第6,180,370号明細書;同第5,693,762号明細書;同第5,530,101号明細書;同第5,585,089号明細書;同第5,225,539号明細書;同第4,816,567号明細書;同第7,557,189号明細書;同第7,538,195号明細書;及び同第7,342,110号明細書;PCT/米国特許出願第98/16280号明細書;PCT/米国特許出願第96/18978号明細書;PCT/米国特許出願第91/09630号明細書;PCT/米国特許出願91/05939号明細書;PCT/米国特許出願94/01234号明細書;PCT/英国特許出願第89/01334号明細書;PCT/英国特許出願第91/01134号明細書;PCT/英国特許出願92/01755号明細書;国際公開第90/14443号パンフレット;国際公開第90/14424号パンフレット;国際公開第90/14430号パンフレット;及び欧州特許第229246号明細書に記載されるものなど、任意の公知の方法を用いて実施することができる。
【0106】
抗FcγRIIA2ヒト化抗体及びその抗原結合断片はまた、免疫時に内因性免疫グロブリンを産生することなくヒト抗体の完全レパートリーを産生する能力を有するヒト免疫グロブリン遺伝子座を含有するトランスジェニックマウスでも作製することができる。この手法は、米国特許第5,545,807号明細書;同第5,545,806号明細書;同第5,569,825号明細書;同第5,625,126号明細書;同第5,633,425号明細書;及び同第5,661,016号明細書に記載されている。
【0107】
特定の実施形態において、抗FcγRIIA抗体断片が提供される。抗体断片の作製について様々な技法が公知である。従来、これらの断片は、インタクトな抗体のタンパク質分解による消化によって得られている。例えば、Morimoto et al.,J.Biochem.Biophys.Meth.24:107-117(1993);Brennan et al.,Science 229:81-83(1985)を参照されたい。特定の実施形態において、抗FcγRIIA抗体断片は組換えで作製される。Fab、Fv、及びscFv抗体断片は、いずれも大腸菌(E.coli)又は他の宿主細胞で発現させて、そこから分泌させることができ、このようにしてこれらの断片を大量に作製することが可能である。かかる抗FcγRIIA抗体断片はまた、上記で考察した抗体ファージライブラリから単離することもできる。抗FcγRIIA抗体断片はまた、米国特許第5,641,870号明細書に記載されるとおりの線状抗体であってもよい。抗体断片の他の作製技法が当業者に明らかであろう。
【0108】
本発明によれば、FcγRIIAに特異的な一本鎖抗体の作製技法を適合させることができる(例えば、米国特許第4,946,778号明細書を参照されたい)。加えて、FcγRIIAに対して所望の特異性を有するモノクローナルFab断片の迅速且つ有効な同定を可能にするFab発現ライブラリの構築方法を適合させることができる(例えば、Huse et al.,Science 246:1275-1281(1989)を参照されたい)。抗体断片は、限定はされないが、(a)抗体分子のペプシン消化によって作製されるF(ab’)2断片;(b)F(ab’)2断片のジスルフィド架橋の還元によって生成されるFab断片;(c)抗体分子をパパイン及び還元剤で処理することによって生成されるFab断片;及び(d)Fv断片を含め、当該技術分野で公知の技法によって作製することができる。
【0109】
幾つかの態様では、FcγRIIA結合分子は、エフェクター機能を低減又は排除するために改変され得る。これは、例えばIgG1のFcドメインにおけるトリプル変異(TM)であるL234F/L235E/P331Sによって達成され得る。エフェクター機能を低減する他の変異は本分野で公知である。例えば、Armour et al., Eur. J. Immunol. 29:2613-2624, 1999; Shields et al., J. Biol. Chem. 276:6591-6604, 2001を参照されたい。
【0110】
特定の態様において、FcγRIIA結合分子は、その血清半減期が増加するように修飾することができる。これは、例えば、適切な領域の突然変異によって結合分子にサルベージ受容体結合エピトープを組み込むことによるか、又は後に結合分子にいずれかの末端若しくは中央で(例えば、DNA又はペプチド合成によって)融合するペプチドタグにそのエピトープを組み込むことによるか、又はYTE突然変異によって達成し得る。抗体又はその抗原結合断片の血清半減期を増加させる他の方法、例えば、PEGなどの異種分子とのコンジュゲーションが、当該技術分野において公知である。
【0111】
ヘテロコンジュゲートFcγRIIA抗体及びその抗原結合断片も、本発明の範囲内にある。ヘテロコンジュゲート抗体は、2つの共有結合によって接合された抗体から構成される。このような抗体は、例えば、免疫細胞を不要の細胞に標的化させるために提案されている(例えば、米国特許第4,676,980号を参照のこと)。ヘテロコンジュゲート抗FcγRIIA抗体及びその抗原結合断片は、架橋剤を含むものを含む、合成タンパク質化学における公知の方法を使用してin vitroで調製できるということは考慮される。例えば、チオエーテル結合を形成することによってジスルフィド交換反応を使用して免疫毒素を構築できる。この目的のための適した試薬の例として、イミノチオレート及びメチル-4-メルカプトブチルイミデートが挙げられる。
【0112】
FcγRIIA結合分子は、通常は、タンパク質の一部ではないさらなる化学的部分を含有するように修飾できる。このような部分は、結合分子の特徴、例えば、溶解度、生物学的半減期又は吸収を改善し得る。部分はまた、結合分子の任意の望ましくない副作用を低減又は排除し得る。それらの部分の概要は、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第20版、Mack Publishing Co.、Easton、PA(2000)に見出すことができる。
【0113】
特定の態様では、本開示は、本発明のFcγRIIA結合分子を含み、任意選択で、1種以上の担体、希釈剤、賦形剤又はその他の添加物をさらに含む組成物、例えば、医薬組成物を提供する。
【0114】
IV. FcγRIIA結合分子をコードするポリヌクレオチド、その調製及び発現
本開示は、FcγRIIA結合分子、例えば、FcγRIIAと特異的に結合するポリペプチドをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドを提供する。例えば、本発明は、抗FcγRIIA抗体をコードする、又はこのような抗体の抗原結合断片をコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドを提供する。本発明のポリヌクレオチドは、RNAの形態又はDNAの形態であり得る。DNAは、cDNA、ゲノムDNA及び合成DNAを含み、二本鎖である場合も一本鎖である場合もあり、一本鎖の場合には、コーディング鎖である場合も非コーディング(アンチセンス)鎖である場合もある。
【0115】
特定の実施形態では、ポリヌクレオチドは、単離できる。特定の実施形態では、ポリヌクレオチドは、実質的に純粋であり得る。特定の実施形態では、ポリヌクレオチドは、cDNAであり得るか、又はcDNAに由来する。特定の実施形態では、ポリヌクレオチドは、組換えによって製造できる。特定の実施形態では、ポリヌクレオチドは、例えば、宿主細胞からのポリペプチドの発現、及び任意選択で、分泌を補助するポリヌクレオチド(例えば、プロモーター又はその他の調節配列、細胞からのポリペプチドの輸送を制御するための分泌配列として機能するリーダー配列)に同一リーディングフレームで融合された成熟ポリペプチドのコード配列を含み得る。リーダー配列を有するポリペプチドは、プレタンパク質であり、宿主細胞によって切断されてポリペプチドの成熟形態を形成するリーダー配列を有し得る。ポリヌクレオチドはまた、成熟タンパク質及びさらなる5’アミノ酸残基であるFcγRIIA結合プロタンパク質をコードし得る。
【0116】
本開示は、本明細書において示されるアミノ酸配列に対して85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%の類似性を有し、及び/又は本明細書において示されるアミノ酸配列、例えば、クローン32LO0350、32LO0351、32LO0352、32LO0354、32LO0355若しくは32LO0356のうちいずれかに由来する配列に対して0、1、2、3、4、5つ若しくはそれ以上のアミノ酸置換、例えば、保存的置換を含む、VH及び/又はVLドメインに由来するアミノ酸配列を含むFcγRIIA結合分子をコードする核酸を含む単離されたポリヌクレオチドを提供する。
【0117】
特定の実施形態では、FcγRIIA結合分子のコード配列を含むポリヌクレオチドは、例えば、コードされるポリペプチドの精製を可能にするマーカー配列と同一リーディングフレームで融合される。例えば、マーカー配列は、細菌宿主の場合には、マーカーに融合された成熟ポリペプチドの精製を提供するように、pQE-9ベクターによって供給されるヘキサヒスチジンタグであり得るか、又は哺乳動物宿主(例えば、COS-7細胞)が使用される場合には、マーカー配列は、インフルエンザ血球凝集素タンパク質由来の血球凝集素(HA)タグであり得る。
【0118】
ポリヌクレオチド変異体も提供される。ポリヌクレオチド変異体は、コーディング領域、非コード領域又は両方において変更を含有し得る。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチド変異体は、サイレント置換、付加又は欠失をもたらすが、コードされるポリペプチドの特性又は活性を変更しない変更を含有する。いくつかの実施形態では、遺伝暗号の縮重によるサイレント置換によってポリヌクレオチド変異体が製造される。ポリヌクレオチド変異体は、種々の理由のために、例えば、特定の宿主のためにコドン発現を最適化する(ヒトmRNA中のコドンを大腸菌(E. coli)などの細菌宿主によって好まれるものに変更する)ために製造され得る。
【0119】
本発明は、上記のポリヌクレオチドを含むベクターを含む。適したベクターは、本明細書において別の場所に記載されており、当業者に公知である。いくつかの実施形態では、VHドメイン又はその部分をコードする核酸を含むポリヌクレオチド及びVLドメイン又はその部分をコードする核酸を含むポリヌクレオチドは、単一ベクター中にある場合も、別個のベクター上にある場合もあり得る。したがって、本開示は、上記のポリヌクレオチドを含む1つ以上のベクターを提供する。
【0120】
特定の態様では、本開示は、上記のようなポリヌクレオチド又はベクターを含み、任意選択で、1種以上の担体、希釈剤、賦形剤又はその他の添加物をさらに含む組成物、例えば、医薬組成物を提供する。
【0121】
本開示は、本発明のポリヌクレオチド又はベクターを含む宿主細胞をさらに提供し、ここで、宿主細胞は、いくつかの場合では、FcγRIIAと特異的に結合する結合分子を発現し得る。このような宿主細胞は、FcγRIIA結合分子を作製する方法において利用でき、方法は、(a)宿主細胞を培養すること及び(b)宿主細胞から、又は結合分子が宿主細胞によって分泌される場合には培養培地から結合分子を単離することを含む。
【0122】
一部の実施形態において、FcγRIIA結合分子をコードする核酸配列は、オリゴヌクレオチド合成機を使用した化学合成によって構築することができる。かかるオリゴヌクレオチドは、所望のポリペプチドのアミノ酸配列、及び目的の組換えポリペプチドが産生される宿主細胞において有利なコドンの選択に基づき設計することができる。標準方法を適用して、目的の単離ポリペプチドをコードする単離ポリヌクレオチド配列を合成することができる。例えば、完全なアミノ酸配列を使用して逆翻訳遺伝子を構築することができる。更に、特定の単離ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含有するヌクレオチドオリゴマーを合成することができる。例えば、所望のポリペプチドの一部分をコードする幾つかの小さいオリゴヌクレオチドを合成し、次にライゲートすることができる。個々のオリゴヌクレオチドは、典型的には相補的アセンブリのための5’又は3’オーバーハングを含有する。
【0123】
アセンブル後(合成、部位特異的突然変異誘発又は別の方法による)、結合分子をコードするポリヌクレオチド配列は発現ベクターに挿入され、所望の宿主における結合分子の発現に適切な発現制御配列に作動可能に連結され得る。適切なアセンブリは、例えば、ヌクレオチドシーケンシング、制限マッピング、及び/又は好適な宿主における生物学的に活性なポリペプチドの発現によって確認することができる。宿主におけるトランスフェクトした遺伝子の高い発現レベルを達成するために、その遺伝子を、選択の発現宿主で機能する転写及び翻訳発現制御配列に作動可能に連結するか又はそれに会合させ得る。
【0124】
特定の実施形態では、組換え発現ベクターを使用して、FcγRIIA結合分子をコードするDNAを増幅し、発現させる。組換え発現ベクターは、哺乳類、微生物、ウイルス又は昆虫遺伝子に由来する好適な転写又は翻訳調節エレメントに作動可能に連結された、FcγRIIA結合分子のポリペプチド鎖をコードする合成又はcDNA由来のDNA断片を有する複製可能なDNAコンストラクトである。転写単位は、概して、以下で更に詳細に記載するとおり、(1)遺伝子発現において調節的役割を有する1つ又は複数の遺伝エレメント、例えば転写プロモーター又はエンハンサーと、(2)mRNAに転写され且つタンパク質に翻訳される構造又はコード配列と、(3)適切な転写及び翻訳開始及び終結配列との集合を含む。かかる調節エレメントは、転写を制御するためオペレーター配列を含み得る。一般に複製起点によって付与される宿主における複製能、及び形質転換体の認識を促進する選択遺伝子が、更に組み込まれ得る。DNA領域は、それらが機能上互いに関係しているとき、作動可能に連結している。例えば、シグナルペプチド(分泌リーダー)のDNAは、それがポリペプチドの分泌に関与する前駆体として発現する場合、そのポリペプチドのDNAに作動可能に連結している。プロモーターは、それが配列の転写を制御する場合、コード配列に作動可能に連結しているか、又はリボソーム結合部位は、それが翻訳を可能にするような位置にある場合、コード配列に作動可能に連結している。酵母発現系での使用が意図される構造エレメントは、宿主細胞による翻訳タンパク質の細胞外分泌を可能にするリーダー配列を含む。或いは、組換えタンパク質がリーダー配列又は輸送配列なしに発現する場合、このタンパク質はN末端メチオニン残基を含み得る。この残基は、任意選択で、後に発現した組換えタンパク質から切断されて、最終産物を提供し得る。
【0125】
発現制御配列及び発現ベクターの選択は、宿主の選択に依存することになる。幅広い種類の発現宿主/ベクターの組み合わせを用いることができる。真核生物宿主に有用な発現ベクターとしては、例えば、SV40、ウシパピローマウイルス、アデノウイルス及びサイトメガロウイルス由来の発現制御配列を含むベクターが挙げられる。細菌宿主に有用な発現ベクターとしては、pCR 1、pBR322、pMB9及びそれらの誘導体を含めた大腸菌(E.coli)由来のプラスミドなどの公知の細菌プラスミド、M13及び繊維状一本鎖DNAファージなどのより広い宿主域のプラスミドが挙げられる。
【0126】
FcγRIIA結合分子の発現に好適な宿主細胞には、適切なプロモーターの制御下にある原核生物、酵母、昆虫又は高等真核生物細胞が含まれる。原核生物には、グラム陰性又はグラム陽性生物、例えば大腸菌(E.coli)又は桿菌が含まれる。高等真核生物細胞には、以下で記載するとおりの哺乳類起源の樹立細胞株が含まれる。無細胞翻訳系も用いられ得る。抗体作製を含めたタンパク質作製方法に関する更なる情報については、例えば、米国特許出願公開第2008/0187954号明細書、米国特許第6,413,746号明細書、及び同第6,660,501号明細書、並びに国際特許公開国際公開第04009823号パンフレットにおいて見出され得る。
【0127】
種々の哺乳類又は昆虫細胞培養系が、組換えFcγRIIA結合分子の発現に有利に用いることができる。哺乳類細胞における組換えタンパク質の発現を実施してもよく、なぜならかかるタンパク質は概して正しく折り畳まれ、適切に修飾され、且つ完全に機能性であるためである。好適な哺乳類宿主細胞株の例としては、HEK-293及びHEK-293T、Gluzman(Cell 23:175,(1981)によって記載されるサル腎細胞のCOS-7株、及び他の細胞株、例えば、L細胞、C127、3T3、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)、HeLa及びBHK細胞株が挙げられる。哺乳類発現ベクターは、非転写エレメント、例えば、複製起点、発現させる遺伝子に連結した好適なプロモーター及びエンハンサー、及び他の5’又は3’フランキング非転写配列、及び5’又は3’非翻訳配列、例えば、必須リボソーム結合部位、ポリアデニル化部位、スプライス供与・受容部位、及び転写終結配列などを含み得る。昆虫細胞における異種タンパク質産生用のバキュロウイルス系が、Luckow and Summers(BioTechnology 6:47(1988))によってレビューされている。
【0128】
形質転換宿主によって産生されるFcγRIIA結合分子は、任意の好適な方法によって精製することができる。かかる標準方法には、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、アフィニティー及びサイズ排除カラムクロマトグラフィー)、遠心、溶解度差、又は任意の他の標準的なタンパク質精製技法によるものが含まれる。ヘキサヒスチジン、マルトース結合ドメイン、インフルエンザコート配列及びグルタチオン-S-トランスフェラーゼなどのアフィニティータグをタンパク質に付加すると、適切なアフィニティーカラムに通過させることによる容易な精製が可能となり得る。単離されたタンパク質はまた、タンパク質分解、核磁気共鳴及びX線結晶学などの技法を用いて物理的に特徴付けることもできる。
【0129】
例えば、組換えタンパク質を培養培地中に分泌する系からの上清を、初めに市販のタンパク質濃縮フィルタ、例えばAmicon又はMillipore Pellicon限外ろ過ユニットを使用して濃縮し得る。この濃縮ステップ後、濃縮物を好適な精製マトリックスに適用し得る。或いは、陰イオン交換樹脂、例えば、ペンダントジエチルアミノエチル(DEAE)基を有するマトリックス又は基質を用いてもよい。マトリックスは、アクリルアミド、アガロース、デキストラン、セルロース又はタンパク質精製において一般的に用いられる他のタイプであってもよい。或いは、陽イオン交換ステップが用いられてもよい。好適な陽イオン交換体としては、スルホプロピル基又はカルボキシメチル基を含む種々の不溶性マトリックスが挙げられる。最後に、疎水性RP-HPLC媒体、例えばペンダントメチル基又は他の脂肪族基を有するシリカゲルを用いる1つ以上の逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)ステップを用いて、FcγRIIA結合分子を更に精製することができる。均一な組換えタンパク質を提供するため、前述の精製ステップの一部又は全てを様々に組み合わせて用いることもできる。
【0130】
細菌培養で産生された組換えFcγRIIA結合分子は、例えば、細胞ペレットからの初期抽出と、続く1つ以上の濃縮、塩析、水性イオン交換又はサイズ排除クロマトグラフィーステップによって単離することができる。最終精製ステップには、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いることができる。組換えタンパク質の発現に用いられる微生物細胞は、凍結融解サイクル処理、音波処理、機械的破壊、又は細胞溶解剤の使用を含めた、任意の好都合な方法によって破壊することができる。
【0131】
抗体及び他のタンパク質を精製するための当該技術分野において公知の方法としてはまた、例えば、米国特許出願公開第2008/0312425号明細書、同第2008/0177048号明細書、及び同第2009/0187005号明細書に記載されるものも挙げられる。
【0132】
V. FcγRIIA結合分子を使用する処理方法
不適切なFcγRIIA活性化と関連する疾患又は障害、例えば、免疫複合体沈着、免疫複合体媒介性ネトーシス、ANCA誘導性FcγRIIA活性化及び抗血小板抗体誘発性FcγRIIA活性化を特徴とする疾患又は障害を有する患者を処置するためにFcγRIIA結合分子を使用する方法が提供される。以下の考察は、FcγRIIAと特異的に結合可能であり、FcγRIIA活性をアンタゴナイズするFcγRIIA結合分子を用いる、種々の疾患及び障害の診断法及び治療方法を指す。
【0133】
一実施形態では、治療又は予防は、対象若しくは患者へのFcγRIIA結合分子若しくはFcγRIIA結合分子を含む組成物の適用若しくは投与、又は対象若しくは患者に由来する単離組織若しくは細胞株へのFcγRIIA結合分子の適用若しくは投与を含み、対象若しくは患者は、疾患、疾患の症状又は疾患の素因を有する。組成物は、好ましくは、医薬組成物である。
【0134】
本明細書において提供されるFcγRIIA結合分子は、特定の炎症性、免疫媒介性又は自己免疫性疾患又は障害の治療又は予防にとって有用である。炎症性、免疫媒介性又は自己免疫性疾患又は障害の例として、それだけには限らないが、血管炎、例えば、抗好中球細胞質抗体(ANCA)、ANCA関連血管炎(AAV)又は巨大細胞動脈炎(GCA)血管炎、シェーグレン症候群、炎症性腸疾患(IBD)、尋常性天疱瘡、ループス腎炎、乾癬、甲状腺炎、I型糖尿病、免疫性血小板減少症(ITP)、強直性脊椎炎、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ、クローン病、重症筋無力症、視神経脊髄炎(NMO)、全身性硬化症、インスリン依存性糖尿病(IDDM)、強直性脊椎炎(akylosing spondylitis)、アトピー性皮膚炎、ブドウ膜炎、移植片対宿主病(GVHD)、多発性筋炎、皮膚筋炎、膜性腎症、溶血性貧血、混合結合組織疾患、強皮症(sclerodema)、敗血症、血栓症、急性腎傷害、急性肺傷害、慢性閉塞性肺疾患、糸球体腎炎、中毒性肝傷害、卒中、アテローム発生、IgG媒介性過敏反応、抗薬物免疫複合体媒介性有害作用及びその他の自己抗体又は免疫複合体媒介性障害が挙げられる。
【0135】
FcγRIIA結合分子の投与に対する臨床応答は、磁気共鳴画像法(MRI)、x線画像法、コンピュータ断層撮影(CT)スキャン、フローサイトメトリー又は蛍光励起セルソーター(FACS)解析、組織学、肉眼所見及びそれだけには限らないが、ELISA、ELISPOT、RIA、クロマトグラフィーなどによって検出可能な変化を含む血液化学などのスクリーニング技術を使用して評価できる。さらに、FcγRIIA結合分子を用いる療法を受けている対象は、疾患又は障害と関連する症状の改善を経験し得る。
【0136】
FcγRIIA結合分子を調製し、それを必要とする対象に投与する方法は、当業者に周知であるが、又は当業者によって容易に決定され得る。FcγRIIA結合分子の投与経路は、例えば、経口、非経口、吸入によって、又は局所であり得る。用語「非経口」は、本明細書において、例えば、静脈内、動脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、直腸及び経膣投与を含む。経口剤形として、例えば、カプセル剤、錠剤、水性懸濁液及び溶液が挙げられる。鼻腔エアゾール又は吸入剤形は、ベンジルアルコール又はその他の適した保存料、バイオアベイラビリティを増強するための吸収促進剤及び/又はその他の従来の可溶化剤若しくは分散剤を用いて、例えば、生理食塩水中の溶液として調製できる。
【0137】
通常、適した医薬組成物は、バッファー、任意選択で、界面活性剤、任意選択で、安定剤などを含み得る。医薬上許容される担体又は希釈剤の形態及び特徴は、組み合わされるべき有効成分の量、投与経路及び周知の変数によって左右され得る。本発明のFcγRIIA結合分子、例えば、抗FcγRIIA抗体又はその抗原結合断片、変異体又は誘導体のうち1種以上の種を含むカクテルも使用できる。その他の方法では、FcγRIIA結合分子を、有害な細胞集団の部位に直接送達し、それによって治療剤に対する罹患組織の曝露を増大できる。一実施形態では、投与は、気道に直接的に、例えば、吸入又は鼻腔内(経鼻)投与によってである。
【0138】
本明細書において論じられるように、FcγRIIA結合分子は、FcγRIIA媒介性疾患、例えば、炎症性、免疫媒介性又は自己免疫性疾患又は障害のin vivo治療のために治療上有効量で投与できる。この関連で、開示された結合分子は、活性薬剤の投与を容易にし、安定性を促すように製剤化できるということは認められよう。本発明に従う医薬組成物は、医薬上許容される、非毒性、滅菌担体、例えば、生理食塩水、非毒性バッファー、保存料などを含み得る。本出願の目的上、FcγRIIA結合分子の「治療上有効量」とは、利益を達成するのに、例えば、疾患若しくは状態の症状を緩和させるのに、又は物質若しくは細胞を検出するのに十分な量を意味する。本明細書において開示される治療方法において使用するための適した製剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第20版、Mack Publishing Co.、Easton、PA(2000)に記載されている。
【0139】
組成物は、単回用量、複数回用量として、又は確立された期間にわたって注入において投与できる。投与計画はまた、最適な所望の応答(例えば、治療的又は予防的応答)を提供するように調整できる。剤形を製造するために担体材料と組み合わせることができるFcγRIIA結合分子の量は、投与の手段、標的部位、患者の生理学的状態(すなわち、疾患の重症度、病歴及び療法を受けている個体の年齢、身長、体重、健康状態及び体調)、治療が予防的であるか、治療的であるか、投与されるその他の医薬及び患者がヒトであるか、動物であるかを含む多数の異なる因子に応じて変わるだろう。通常、患者はヒトであるが、トランスジェニック哺乳動物を含む非ヒト哺乳動物も治療できる。投与されるべきFcγRIIA結合分子の量は、当業者ならば決定できる。安全性及び有効性を最適化するために、治療投与量を、当業者に公知の日常的な方法を使用して用量設定できる。
【0140】
本開示はまた、炎症性、免疫媒介性又は自己免疫性疾患又は障害、例えば、ANCA又はGCA血管炎などの血管炎、免疫性血小板減少症、全身性エリテマトーデス、ループス腎炎、シェーグレン症候群、関節リウマチ、クローン病、重症筋無力症、GVHD、ADA媒介性有害作用、ネトーシス並びに敗血症、血栓症、急性腎傷害、急性肺傷害、慢性閉塞性肺疾患、糸球体腎炎、中毒性肝傷害、卒中、アテローム発生、I型糖尿病及びIgG媒介性過敏反応を含むネトーシス関連障害を治療又は予防するための、本明細書において記載されるFcγRIIA結合分子の使用を提供する。
【0141】
本開示はまた、炎症性、免疫媒介性又は自己免疫性疾患又は障害、例えば、ANCA又はGCA血管炎などの血管炎、免疫性血小板減少症、全身性エリテマトーデス、ループス腎炎、シェーグレン症候群、関節リウマチ、クローン病、重症筋無力症、GVHD、ADA媒介性有害作用、ネトーシス並びに敗血症、血栓症、急性腎傷害、急性肺傷害、慢性閉塞性肺疾患、糸球体腎炎、中毒性肝傷害、卒中、アテローム発生、I型糖尿病及びIgG媒介性過敏反応を含むネトーシス関連障害を治療又は予防するための医薬の製造における、本明細書において記載されるFcγRIIA結合分子の使用を提供する。
【0142】
VI.アッセイ及び診断
本発明のFcγRIIA結合分子は、FcγRIIA媒介性疾患、例えば、特定の炎症性、免疫媒介性又は自己免疫性疾患若しくは障害の診断に、及び/又は臨床試験手順の一部として、例えば、所与の治療計画の有効性を調べるためにタンパク質レベルを診断モニタリングするために使用できる。このような方法は、通常、発現レベルFcγRIIAをアッセイするために本明細書において記載されるFcγRIIA結合分子を使用することを含む。「FcγRIIAの発現レベルをアッセイする」とは、第1の生物学的サンプル中のFcγRIIAのレベルを直接的に(例えば、絶対タンパク質レベルを決定又は推定することによって)又は間接的に(例えば、第2の生物学的サンプル中の疾患関連ポリペプチドレベルに対して比較することによって)、質的又は量的に測定又は推定することを意味することを意図とする。第1の生物学的サンプル中のFcγRIIA発現レベルは、測定又は推定し、標準FcγRIIAレベルに対して比較でき、標準は、障害を有さない個体から得られた第2の生物学的サンプルからとられ、又は障害を有さない個体の集団から得られたレベルの平均をとることによって決定される。いくつかの態様では、標準サンプルと比較した試験サンプルのタンパク質レベルの増大は、本発明のFcγRIIA結合分子によって治療可能な疾患又は障害を示す。当技術分野では理解されるであろうが、ひとたび「標準」FcγRIIAレベルが知られると、比較のための標準として反復して使用できる。
【0143】
「生物学的サンプル」は、潜在的にFcγRIIAを発現する個体、細胞株、組織培養物又は細胞のその他の供給源から得た任意の生物学的サンプルを意図する。哺乳動物から組織生体検体及び体液を得る方法は、当技術分野で公知である。
【0144】
本発明のFcγRIIA結合分子を使用し、当業者に公知の伝統的な免疫組織学的方法を使用して生物学的サンプル中のFcγRIIAタンパク質レベルをアッセイできる(例えば、Jalkanenら、J. Cell. Biol. 101:976~985(1985);Jalkanenら、J. Cell Biol. 105:3087~3096(1987))。使用できるイムノアッセイとして、それだけには限らないが、いくつか例を挙げるとウエスタンブロット、ラジオイムノアッセイ、ELISA(酵素結合免疫吸着検定法)、ELISPOT、「サンドイッチ」イムノアッセイ、免疫沈降アッセイ、沈降反応、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散アッセイ、凝集アッセイ、補体固定アッセイ、免疫放射線測定法、蛍光イムノアッセイ、プロテインAイムノアッセイ及び免疫電子顕微鏡などの技術を使用する競合及び非競合アッセイシステムが挙げられる。このようなアッセイは日常的なものであり、当技術分野で周知である。当業者ならば、日常的な実験を用いることによって各決定の作動する最適なアッセイ条件を決定できるであろう。
【0145】
FcγRIIAの検出を、結合分子を検出可能な物質又は標識にカップリングすることによって容易することができる。検出可能な物質の例として、種々の酵素、補欠分子族、蛍光材料、発光物質、生物発光物質及び放射性物質が挙げられる。適した酵素の例として、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ又はアセチルコリンエステラーゼが挙げられ、適した補欠分子族複合体の例として、ストレプトアビジン/ビオチン及びアビジン/ビオチンが挙げられ、適した蛍光材料の例として、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシル又はフィコエリトリンが挙げられる。発光物質の一例として、ルミノールがある。生物発光物質の例として、ルシフェラーゼ、ルシフェリン及びエクオリンが挙げられる。適した放射性物質の例として、125I、131I、35S又はHが挙げられる。
【0146】
in situ検出は、患者から組織学的試料、例えば、血液サンプルを回収すること、及び生物学的サンプル上に標識されたFcγRIIA結合分子を重ね合わせることによって、それに標識されたFcγRIIA結合分子を適用することによって遂行できる。このような手順の使用によって、FcγRIIAの存在だけでなく、検査した組織におけるその分布も決定することが可能である。当業者ならば、本発明を使用して、さまざまな組織学的方法(染色手順など)のいずれも、このようなin situ検出を達成するように修飾できることを容易に理解するであろう。
【0147】
単離されたFcγRIIA結合分子の結合特徴を決定するのに適した方法及び試薬は、当技術分野で公知である、及び/又は市販されている。このような動態解析のために設計された機器及びソフトウェアが市販されている(例えば、BIAcore(登録商標)、BIAevaluation(登録商標)ソフトウェア、GE Healthcare、KINEXA(登録商標)ソフトウェア、Sapidyne Instruments)。
【0148】
VII. FcγRIIA結合分子を含むキット
本開示は、本明細書において記載された方法を実施するために使用できる、FcγRIIA結合分子を含むキットをさらに提供する。特定の実施形態では、キットは、1つ以上の容器中に少なくとも1種の精製されたFcγRIIA結合分子を含む。いくつかの実施形態では、キットは、アッセイを実施するためのすべての制御、指示並びに結果の解析及び提示のための任意の必要なソフトウェアを含む、検出アッセイを実施するのに必要な及び/又は十分な成分のすべてを含有する。当業者ならば、開示されたFcγRIIA結合分子は、当技術分野で周知である確立されたキット形式のうちの1種に容易に組み込むことができるということを容易に認識するであろう。
【0149】
本開示において引用された参考文献のすべては、参照によりその全文が本明細書に組み込まれる。さらに、本明細書において引用又は言及された任意の製品の任意の製造業者の説明書又はカタログは、参照により組み込まれる。参照により本明細書内に組み込まれた文書又はそれにおける任意の教示は、本発明の実施において使用できる。参照により本明細書内に組み込まれた文書は、先行技術であると認められない。
【0150】
本発明を以下の非限定的な例においてさらに説明する。
【実施例
【0151】
本開示の実施形態は、本開示の特定の抗体の調製及び本開示の抗体を使用する方法を詳細に説明する以下の非限定的な例を参照することによってさらに定義できる。本開示の範囲から逸脱することなく、材料及び方法の両方に対する多数の改変を行うことができるということは当業者には明らかであろう。
【0152】
[実施例1]
抗FcγRIIAマウスモノクローナル抗体のヒト化及び最適化
ヒト及びカニクイザル由来のFcγRIIA及びFcγRIIBのクローニング、発現、精製
ヒト由来のCD32A、CD32Bの細胞外ドメインをコードするcDNA分子を、参照としてデータベース配列を使用するプライマー伸長PCRクローニングを用いて合成した(表2を参照のこと)。配列を、C末端で6xHis_Flagタグ(HHHHHHDYKDDDDK)(配列番号18)に融合されたpEBNA哺乳動物発現ベクター(Thermo Fisher、カタログ番号A10898)中にクローニングした。タンパク質をFreeStyle 293F細胞(Thermo Fisherカタログ番号R790-07)において発現させた。上清中の発現されたタンパク質を、Ni-NTAアフィニティークロマトグラフィー(Histrap HPカラム(GE Healthcare、カタログ番号17-5248-02))と、それに続くサイズ排除クロマトグラフィー(Superdex 200カラム(GE Healthcare、カタログ番号17-1069-01))を使用して精製した。
【0153】
【表2】
【0154】
カニクイザル(カニクイザル(Macaca fascicularis))におけるFcγRIIAコンセンサス配列
カニクイザルFcγRIIA中にはヒトFcγRIIA(UniProt P12318)に対して非相同である36個のアミノ酸があり、その結果、88%の配列同一性(aa1~317)となる。表3は、非相同アミノ酸を示す。
【0155】
【表3】
【0156】
マイナーカニクイザル対立遺伝子がヒトに対応する変動は、太字で示されている。
【0157】
>20%のマイナー対立遺伝子頻度(MAF)を有する、カニクイザル集団の中のさらなる7つのコーディング多型を同定した。表4は、一塩基多型変動を示す。
【0158】
【表4】
【0159】
ヒトFcγIIAに対するコンセンサスカニクイザル配列及びアラインメントが、図1A~1Cに示されている。
【0160】
カニクイザルCD32Aタンパク質
IV3のエピトープの周囲の多型に基づいて、3つのバージョンのカニクイザル(cynomologus)CD32Aを作製した(Ramslandら、J. Immunol. 187:3208~3217(2011))。これらのタンパク質を、GeneArtによってHEK細胞において発現させ、C末端6xhisタグを利用してNi-NTAアフィニティークロマトグラフィーによって精製した。
【0161】
【化1】
【0162】
タンパク質修飾
本明細書において使用したIgG及び修飾されたタンパク質は、EZ link Sulfo-NHS-LC-ビオチン(Thermo/Pierce、カタログ番号21335)を使用して遊離アミンを介してビオチン化した。ビオチン試薬を無水ジメチルホルムアミドに溶解し、PBSベースのタンパク質溶液を、D-PBS(ダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水)中、1MのNaHCOを用いてpH約8に調整した。本明細書において使用したCD32タンパク質は、EZ linkビオチン-BMCC(Perbio/Pierce、製品番号21900)を使用して遊離システインを介してビオチン化した。ビオチン試薬を無水ジメチルホルムアミドに溶解し、D-PBSタンパク質溶液と3:1で混合した。すべての場合においてMALDI-TOF質量分析によって標識組込みを評価し、未反応試薬をD-PBS平衡化ディスポーザブルSephadex G25カラムを使用するバッファー交換によって取り除いた。ビオチン化のために、アミノ酸配列から算出された吸光係数を使用して最終タンパク質濃度を280nM吸光度によって決定した。
【0163】
IgG分子のクローニング及び発現
可変ドメインを、本質的にPersicら(Gene 187(1):9~18(1997))によって記載されるように、以下の改変を用いて全免疫グロブリンG1(IgG)抗体形式に変換した。OriP断片を、発現ベクター中に含めて、CHO一過性細胞との使用を容易にし、エピソーム複製を可能にした。重鎖可変(V)ドメインを、ヒト重鎖定常ドメイン及び調節エレメントを含有するベクター中にクローニングして、発現させて、哺乳動物細胞において全IgG重鎖を発現させた。重鎖定常ドメインは、全長抗体のFc部分を介したCD32Aの係合を避けるために、Fcエフェクター機能を有意に低減すると示された3つの変異を含有していた(Oganesyanら、Acta Crystallographica SectionD: Biological Crystallography 64(6):700(2008))。同様に、ヒト軽鎖(カッパ)定常ドメイン及び調節エレメントの発現のために軽鎖可変(V)ドメインを、ベクター中にクローニングして、哺乳動物細胞において全IgG軽鎖を発現させた。IgGを得るために、重鎖及び軽鎖IgG発現ベクターを、CHO一過性哺乳動物細胞中にトランスフェクトした(Daramolaら、Biotechnol Prog. 30(1):132~41(2014))。IgGは発現され、培地中に分泌された。収集物を精製に先立って濾過し、次いで、プロテインAクロマトグラフィーを使用してIgGを精製した。培養上清を、適当な大きさのCeramic Protein A(BioSepra)のカラム上にロードし、50mM Tris-HCl pH8.0、250mM NaClを用いて洗浄した。結合しているIgGを、0.1M クエン酸ナトリウム(pH3.0)を使用してカラムから溶出し、Tris-HC1(pH9.0)の添加によって中和した。溶出された材料を、Nap10カラム(Amershamカタログ番号17-0854-02)を使用してPBSにバッファー交換し、IgGの濃度を、IgGのアミノ酸配列に基づいて吸光係数を使用して分光光度測定によって決定した(Machら、Anal. Biochem. 200(1):74~80(1992))。精製されたIgGを、SEC-HPLCを使用して、及びSDS-PAGEによって凝集及び分解純度について解析した。
【0164】
IV.3 Abのヒト化
マウスモノクローナル抗体IV.3は、1986年に最初に記載された(Looney RJ.ら、J. Immunol. 136(5):1641)。ハイブリドーマ細胞株は、ATCCから入手し、IV.3の重鎖可変(V)及び軽鎖可変(V)セグメントを配列決定した(配列番号5及び配列番号8)。
【0165】
マウスmAb IV.3の可変ドメインのヒト化は、IV.3の重鎖及び軽鎖相補性決定領域(CDR)を、選択したヒト生殖系列フレームワーク(FW)にグラフトすることによって実施した。IV.3のVH及びVLドメインのアミノ酸配列を、IMGTデータベース中の公知のヒト生殖系列配列に対してアラインし(Lefranc, M.P.ら、Nucl. Acids Res. 37(データベース号(Database issue)):D1006-D1012(2009))、重大な残基(バーニアゾーン(Vernier zone)、カノニカルクラス残基及びVH/VL界面残基)、免疫原性(生殖系列頻度)、安定性及び発現を対応させることを含む配列類似性によって適当なヒト生殖系列を同定した(IV.3抗体のVドメインについては、選択されるヒト生殖系列は、IGHV1-3*01/IGHJ4とした。Vドメインについては、IGKV2-28*01/IGKJ2であった。
【0166】
同等の選択されたヒトFWと置き換えられた1つ以上のマウスFW領域を用いて、一連のキメラ重鎖可変及び軽鎖を設計した。すべてのCDR及びFW領域は、Kabatによって定義されたとおりとした。完全にマウス及びキメラIV.3可変領域を、CHO発現のためにコドン最適化し、GeneArt(登録商標)Gne Synthesis(Life Technologies)によって合成した。続いて、これらを、上記のように全免疫グロブリンG1(IgG)抗体として発現させて、部分的及び全体的にヒト化されたIV.3変異体のパネルを作製した。抗体を、実施例11に記載されるようにエピトープ競合アッセイにおいて特性決定した。簡潔には、均一性時間分解蛍光法(homogenous time-resolved fluorescence)(HTRF(登録商標)、Cisbio International)を使用して、IV.3 IgGの結合を検出して(Stemcell Technologies、カタログ番号01470)、ヒトCD32A 131Hをビオチン化した。IV.3及びCD32Aの間の蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を、それぞれ、DyLight 649がコンジュゲートした抗マウス抗体及びストレプトアビジンテルビウムクリプテート(Cisbio International、製品番号610SATLB)を使用して検出した。シグナルは、CD32A結合についてIV.3と競合するサンプルIgGの添加によって破壊される。IV.3のV及びV鎖両方の完全ヒト化は、このアッセイにおける効力の10倍喪失を伴った。標準分子生物学技術を使用して、ヒト軽鎖生殖系列フレームワーク中にマウス残基を導入し、これによって、マウスIgG(変異Y36F)の5倍内に効力を回復させた。得られたデータは、図2に例示されている。続いて、VL CDR1(N28L)中の潜在的な脱アミノ化部位を除去して、製造の間の化学的修飾のリスクを低減した。親V及びV鎖(IV.3)、最終ヒト化V及びV鎖(CamIV3)及び選択されたヒト生殖系列配列のアラインメントは、図3に示されている。
【0167】
CamIV3 Abの最適化
標準分子生物学技術を使用して、CamIV.3のVH CDR2及びVL CDR1の選択位置で単一アミノ酸置換を行った。実施例11に記載されるように、変異体を、IgGとして直接発現させ、IV.3エピトープ競合アッセイにおいて上清を定量化し、スクリーニングした。VH CDR2及びVL CDR1において有益な個々の変異を組み合わせ、IgGを発現させ、スクリーニングした。6種の最適化されたCamIV.3変異体をさらなる解析のために選択した、32LO0350、32LO0351、32LO0352、32LO0354、32LO0355及び32LO0356。NIP228 IgG1TMを陰性対照として使用した。IV.3エピトープ競合アッセイにおけるこれらの変異体の活性は、図4に示されている。表5に示されるように、最適化された変異体は、CamIV3と、HCDR2及びLCDR2配列においてのみ異なっていた。
【0168】
【表5】
【0169】
IV.3からのアミノ酸相違は、太字である。
【0170】
IV.3、CamIV3、32LO0350、32LO0351、32LO0352(MEDI9600)、32LO0354、32LO0355及び32LO0356に共通するCDR配列は、表6に示されている(図3も参照のこと)。
【0171】
【表6】
【0172】
クローン32LO0350、32LO0351、32LO0352、32LO0354、32LO0355及び32LO0356のVH及びVLドメインのアミノ酸配列は、表7に示されている。
【0173】
【表7】
【0174】
ヒト及びカニクイザルCD32Aに対するIV.3及び32LO0352の親和性
IV.3及び32LO0352に対する親和性を、Biacore(商標)解析によって測定した。簡潔には、ヒトIgGl-TM(キメラIV.3又は32LO0352)をCl-プロテインGチップ上に捕捉した。ヒトCD32A_131 Arg、ヒトCD32A_131H又はカニクイザルCD32A(バージョン3)の段階希釈(log2刻みで25nM~0.3906nM)を分析物として使用した。データは、1:1ラングミュア解離モデルにフィッティングされ、表8に示されている(2回の独立実験から得た平均データ)。
【0175】
【表8】
【0176】
[実施例2]
ヒトFcγRIIA(CD32A)結合に対して特異的な最適化されたIV.3 Ab
ヒト化され、最適化されたIV.3 Abの特異性を調べるために、抗体の、組換えFcγRI、FcγRIIA-131H/Hアロタイプ、FcγRIIB、FcγRIII-158Fアロタイプ又はFcγRIII-158Vアロタイプとの結合をELISAによって評価した。R347 Tm AbをヒトIgG1アイソタイプ対照として使用し、抗体H2B6-Tm、3G8、16-115を、それぞれ、FcγRIIB、FcγRIII、FcγRIIA及びFcγRIの陽性対照として使用した。これら4種のヒト化され、最適化されたIV.3クローン、32LO0350、32LO0352、32LO0354及び32LO0355は、結合特異性を示したが(図5A)、その他のFcγRに対しては示さなかった(図5B~5E)。これらのデータは、ヒト化され、最適化された抗体変異体が、FcγRIIAに対するその特異性を保持することを実証する。重要なことに、これらの抗体は、FcγRIIA及びFcγRIIBの細胞外ドメインにおける類似性にもかかわらず、このアッセイでは、FcγRIIAと結合するが、FcγRIIBとは結合しない。
【0177】
[実施例3]
静脈内免疫グロブリンとのMEDI9600(32LO0352)結合競合
MEDI9600が、競合又は非競合作用様式を有すか否かを決定するために、IgGを用いて結合競合アッセイを実施した。全血中の循環免疫グロブリンの生理学的濃度を模倣する静脈内免疫グロブリン(IVIG)の存在下及び非存在下での、MEDI9600の、FcγRIIAを発現するヒト好中球との結合を、フローサイトメトリーによって評価した。図6に示されるように、MEDI9600は、ヒトFcγRIIA発現性好中球と用量依存性に結合した。好中球表面でのヒトFcγRIIAとのMEDI9600結合のEC50値は、0.03nMであった(図6)。10mg/mLのIVIGの存在下で、好中球表面でのヒトFcγRIIAとのMEDI9600結合のEC50値は、3.34nMに増大し(図6)、MEDI9600が、FcγRIIAとの結合について免疫グロブリンと競合することを示唆した。ヒトIgG1アイソタイプR347-TM対照を用いた場合には、結合は観察されなかった(図6)。これらのデータは、MEDI9600が、リガンド遮断抗体であることを示す。
【0178】
[実施例4]
最適化されたIV.3 Abは、全血アッセイにおいてヒト及びカニクイザルFcγRIIAを内部移行させる
マウスIV.3 Abは、FcγRIIAを内部移行させ、その後、リソソームにおいて受容体を分解するとわかっている13。結果として、抗体結合の際の細胞の表面からのFcγRIIAの除去を、受容体内部移行の尺度として使用できる。本発明者らは、この作用様式を検証し、全血内部移行アッセイにおいて抗FcγRIIA抗体変異体の効力を評価した。このアッセイ形式を使用して、生理学的条件下で見られる競合免疫グロブリンの細胞組成及びレベルを模倣した。FcγRIIAの2種の共通ヒト多型変異体、131H及び131Rが、IgGサブクラスと異なって結合することが、これまでにわかっている14。結果として、抗体の、131H及び131Rについてホモ接合性のドナーから得たFcγRIIAを内部移行させる能力も評価した。薬理学及び毒性学評価を容易にするために、カニクイザルから得た全血において、抗体の、単球からFcγRIIを内部移行させる能力も評価した。
【0179】
キメラ及び最適化された抗体は、ヒト131H/Hドナー(図7A)及びヒト131R/Rドナー(図7B)由来の単球の表面からFcγRIIAを内部移行させた。最適化されたIV.3 Abは、131H/H及び131R/Rドナーの両方について親IV.3キメラAbと比較して2~5倍改善された効力を示した。最適化された抗体のEC50は、131H/HドナーについてのキメラIV.3抗体の0.19nMと比較して0.04nM~0.09nM及び131R/RドナーについてのキメラIV.3抗体の0.20nMと比較して0.04nM~0.06nMの範囲であった(図7A、7B)。最適化された抗体はまた、カニクイザルの単球の表面でFcγRIIAを内部移行させた(図7C)。最適化された抗体の効力は、キメラIV.3 Abよりも最大7倍大きかった。まとめると、これらのデータは、IV.3抗体の最適化された変異体中の重鎖及び軽鎖のFab領域に導入された変化が有益であることを実証する。FcγRIIA結合特異性は保持されており、マウス残基は除去されており、鍵となる変化を加えたことで、生理学的に関連するアッセイにおいて、抗体の親バージョンを越えて、上記の抗体の効力が増強された。
【0180】
さらなる実験では、MEDI9600媒介性受容体内部移行が、共焦点顕微鏡によって確認された。時間0で、CD14(陰性対照として)及びFcγRIIAは両方とも、細胞表面染色を示した。しかし、37℃での1時間のインキュベーション後、ほぼ完全なFcγRIIA内部移行が、MEDI9600の結合によって刺激され、一方でCD14は、細胞表面上のままであった(図7D)。
【0181】
[実施例5]
最適化されたIV.3 Abは、ヒト及びカニクイザルPBMCからのRNP-IC誘導性IFNα発現を遮断した
本発明者らは、抗FcγRIIA抗体の、リボヌクレオタンパク質-免疫複合体(RNP-IC)媒介性I型インターフェロンアルファ(IFNα)産生を阻害する能力を評価した。抗体の活性を、131H/H又は131R/Rハプロタイプのいずれかを有する健常ドナーから得た細胞を用いて、及びカニクイザルから得た細胞を用いて調べた。最適化されたIV.3 Abは、131H/H及び131R/Rドナーから得た細胞を使用して親IV.3抗体と比較して、RNP-IC誘導性I型IFNαアッセイにおいて最大約2倍の増大を示した(図8A、8B)。最適化された抗体の効力は、131H/Hドナーを用いて、ヒト化CamIV.3抗体よりも約3~8倍大きく(図8A)、131R/RについてはCamIV.3よりも約5~12倍大きかった(図8B)。カニクイザル細胞を使用するRNP-IC誘導性IFNαアッセイにおいて、IV.3の4種の最適化された抗体のうち3種も、親バージョン及びヒト化されたバージョンよりも大きな効力を示した(図8C)。
【0182】
これらの最適化されたヒト抗FcγRIIA抗体の、I型IFNの免疫複合体媒介性誘導を遮断する効力の増大は、全血内部移行アッセイにおける抗体媒介性FcγRIIA取り込みの改善と一致する。IFNαは、SLEの病態形成において重要な役割を果たすと思われるので、これらのデータは、SLEの治療のための、これらのヒト化され、最適化された抗FcγRIIA抗体の使用を支持する。
【0183】
[実施例6]
最適化されたIV.3 Ab、クローン32LO0352(MEDI9600)は、抗好中球細胞質抗体(ANCA)誘導性好中球活性化を特異的に遮断する
好中球活性化のマーカーは、活性酸素種の放出であり、これは、フェリ-チトクロームC還元アッセイにおいて、又はフローサイトメトリーベースのDH123アッセイによって測定できる15。最適化されたIV.3 Abクローン32LO0352(MEDI9600)の、ANCA誘導性好中球活性化を阻害する能力を、フェリ-チトクロームC還元アッセイにおいて最初に調べた。MEDI9600は、活性酸素種のANCA-(抗PR3 Ab及び抗MPO Abの両方)誘導性好中球産生を特異的に遮断した(図9A、9B)。MEDI9600が、好中球活性化に非特異的に影響を及ぼすか否かを決定するために、好中球を、FcγRIIA抗体の存在下及び非存在下でPMAを用いて処置した。PMAは、活性酸素種を誘導したが、MEDI9600を用いるFcγRIIAの阻害は、PMA誘導性好中球活性化に対して効果がなかった(図9C)。これらのデータは、MEDI9600が、好中球活性化の抗体媒介性誘導を特異的に遮断するが、好中球活性化のその他の機序は、この処置によって妨害されない場合があることを実証する。
【0184】
MEDI9600の、ANCA誘導性好中球活性化を遮断する能力をまた、より高感度のフローサイトメトリーベースのDHR123アッセイによって評価した。このアッセイ形式を使用して、MEDI9600は、やはり、抗MPO及び抗PR3 Ab誘導性好中球活性化を用量依存的に阻害したが、アイソタイプ対照抗体は、効果を有さなかった(図9D、9E)。これまでの実験は両方とも、市販の抗MPO及び抗PR3 Abを刺激として使用した。最適化されたIV.3 Abの、ANCA誘導性好中球活性化を阻害する能力を検証するために、PR3又はMPOのいずれかに対する自己抗体を用いてAAV患者の血清からIgGを精製し、好中球に対する刺激として使用した。フローサイトメトリーベースのDHR123アッセイを使用して、MEDI9600は、AAV患者のIgGによって誘発された好中球活性化を有意に遮断した(図9F、9G)。
【0185】
まとめると、これらのデータは、MEDI9600抗FcγRIIA Abは、抗好中球細胞質抗体(ANCA)誘導性好中球活性化を特異的に遮断できることを示し、ANCA関連血管炎の治療のための、ヒト化され、最適化されたMEDI9600抗FcγRIIA抗体の使用を支持する。
【0186】
[実施例7]
最適化されたIV.3 Ab(MEDI9600)は、抗血小板抗体誘導性血小板減少症からマウスを保護する
トランスジェニックヒトFcγRIIAマウス活性化FcγR欠損マウスを使用して、最適化されたIV.3 Ab(MEDI9600)の、抗血小板抗体誘導性血小板減少症を遮断する有効性を調べた。抗血小板抗体を用いる、FcγRIIAトランスジェニックマウスの処置は、血小板の迅速な枯渇を引き起こした(図10A)。最適化されたIV.3 Ab(MEDI9600)を用いる予防的投薬は、このモデルにおいて血小板クリアランスを有意に遮断した(図10B、10C)。重要なことに、MEDI9600を用いる血小板枯渇の阻害は、血小板上のFcγRIIAの内部移行と関連していた。
【0187】
まとめると、これらのデータは、ヒト化抗FcγRIIA抗体、MEDI9600が、抗血小板抗体誘導性血小板減少症をin vivoで阻害することを示し、免疫性血小板減少症の治療のためのこの抗体の使用を支持する。
【0188】
[実施例8]
MEDI9600によるFcγRIIAの遮断は、好中球機能に対して有害作用を有さない
好中球は、感染及び組織傷害を感知し、白血球を補充し、感染を取り除き、適応免疫システムを関与させ、修復を促すように働く急性炎症応答を開始することによって宿主防御において重大な役割を果たす。好中球は、侵襲に対する曝露の際、病原体及び損傷を受けた宿主細胞に由来する化学的シグナルに従って、血管を通って組織傷害部位に迅速に遊走する。好中球は、パターン認識受容体、補体レセプター及び免疫グロブリン受容体との相互作用によって病原体を直接的に関与させ、これが、病原体を死滅させる毒性物質の放出及び/又は食作用による病原体のクリアランスをもたらす。好中球機能は、宿主防御において重要であるので、本発明者らは、種々の好中球機能に対する、MEDI9600を用いるFcγRIIA遮断の影響を評価した。
【0189】
第1に、本発明者らは、FcγRIIAの遮断が、toll様受容体2(TLR2)アゴニスト及び細菌リポタンパク質のアシル化アミノ末端の模倣物である、合成トリアシル化リポタンパク質Pam3Sk4の存在下で、好中球活性化に影響を及ぼすか否かを調べた。抗TLR2 Abは、Pam3Sk4誘導性好中球活性化を阻害したが、MEDI9600抗FcγRIIA抗体及びアイソタイプ対照IgG抗体は、TLR2媒介性好中球活性化に対して効果がなかった(図11A)。
【0190】
次いで、本発明者らは、FcγRIIAの遮断が、IL-8誘導性好中球遊走に影響を及ぼすか否かを調べた。IL-8誘導性好中球遊走は、MEDI9600又は対照抗体によって影響を受けなかった(図11B)。
【0191】
最後に、本発明者らは、MEDI9600が、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)の抗Psl mAb媒介性オプソニン作用性死滅(OPK)に影響を及ぼすか否かを調べた。抗Psl mAbは、これまでに、好中球の存在下で緑膿菌(P.aeruginosa)の強力な補体依存性死滅を媒介するとわかった16。このアッセイにおいて発光緑膿菌(P.aeruginosa)株を使用して、細菌死滅を評価した。発光のレベルは、生存細菌の頻度と相関する。好中球を、MEDI9600、抗FcγRIIB Ab又は抗FcγRIII Abとともにプレインキュベートし、次いで、それらを発光細菌とともに2時間インキュベートした。MEDI9600は、好中球の、抗Psl mAb Ps10096の存在下で緑膿菌(P.aeruginosa)を死滅させる能力に対して最小効果しか有していなかったが、FcγRIIIの遮断は、OPK活性を明確に阻害した(図11C)。これらのデータは、細菌の臨床的に抵抗性の株の抗体媒介性食作用は、FcγIIAとはほとんど独立していることを示し、この受容体の遮断は、好中球による細菌の食作用に有害な影響を及ぼさないと予測される。
【0192】
まとめると、これらのデータは、FcγRIIA遮断は、走化性、病原体関連分子パターンによって誘導される活性化及び食作用などの正常な好中球機能に有害な影響を及ぼさないことを示す。
【0193】
[実施例9]
MEDI9600は、全血中の細胞からのタンパク質誘導に対して影響を有さない
サイトカインストームなどの抗体処置の有害作用は、全血のタンパク質プロファイルを調べることによって検出できる。MEDI9600の影響を評価するために、非刺激全血、及びMEDI9600、Ig-IC又はRNP-ICによって刺激された全血の遺伝子発現プロファイルを、5人の正常な健康なドナーにおいて評価した。Ig-IC又はRNP-ICは、タンパク質発現プロファイルに対して顕著な影響を有していたが、予期されたように、未処置及びMEDI9600刺激状態の間に発現に相違はなかった(図12)。これらのデータは、MEDI9600は、全血において細胞を活性化しないことを示し、良好な安全性プロファイルの指標である。
【0194】
[実施例10]
MEDI9600:カニクイザルにおける単回用量薬物動態及び探索的薬物動態研究
この研究の目的は、静脈内注射によって単回用量として与えられた場合の、カニクイザルにおけるMEDI9600の薬物動態/薬物動力学関係を特性決定することであった。この研究の結果は、ヒトへのMEDI9600の投与を支持する薬物動態/薬物動力学モデリングの情報を得るために使用した。
【0195】
薬物動態は、非線形であり、Cmax/用量、AUC(0~∞)/用量及び半減期の調査は、用量とともに増大するこれらの明確な傾向を示す(図13A)。非コンパートメント解析から得られた最終半減期は、カニクイザルにおいてヒトIgG1抗体について予期されたものよりも短く、1mg/kgを与えられた群のものは、1.08~1.2日でしかなく、100mg/kgを与えられた群のものは2.84~4.3日に増大した。しかし、用量とともに増大する半減期の傾向は、薬物動態曲線の調査とともに、抗体の標的によって媒介される排除と一致する薬物動態プロファイルを示す。標的によって媒介される排除からの干渉が少ない100mg/kgの最高用量については、ヒトIgG1抗体について予期されるように、0.024~0.052L/kgの分布の初期量は、血漿量と同様であった。薬物動態可変性は、低いと思われ、早期サンプルについては、およそ20%以下の変動値の係数であった。薬物動態は、最終フェーズに近づくと顕著により可変性になった。
【0196】
1、10又は100mg/kgで投与されたMEDI9600の単回用量は、単球及び顆粒球でのFcγRIIA蛍光強度の用量応答低減を誘導した(図13B、13C)。この低減は、完全に可逆性であり、完全回復は、1mg/kgを与えられた動物において最初に、続いて、10mg/kgを与えられた動物及び100mg/kgを与えられた動物において達成された。単球及び顆粒球でのFcγRIIA発現は、MEDI9600を用いる投薬に対して用量依存性抑制を示し、単球及び顆粒球について同様であった。抑制は、30分の時点までで観察され、投薬における迅速な抑制を示す。この抑制は、群1(1mg/kg)については部分的のみであったが、その最下点でのこれらの用量レベルによって達成される同様の抑制によって判断すれば、群2及び3について最大抑制を引き起こすと思われた。FcγRIIA発現レベルは、数日から数週間の用量依存性期間にかけてベースラインに戻った。この迅速な抑制及び遅い回復が、MEDI9600の薬物動態プロファイルを反映していることは、注目すべきことであった。特に、FcγRIIA発現のベースラインへの回復は、1,000ng/ml未満の濃度に対する薬物動態曝露の低減と対応しており、これは、群1については投薬後およそ7日で、群2については投薬後およそ14日で、群3については投薬後およそ49日で起こり、これは、薬物動態曝露及びFcγRIIA発現の形態での薬物動力学応答の間に強力な直接的な関係を示した。
【0197】
要約すると、雄のサルに、MEDI9600を、静脈内注射によって2mL/kgの用量容積を用いて1、10又は100mg/kgの用量レベルで1回与えた。MEDI9600の投与は、単球及び顆粒球でのFcγRIIA発現の用量依存性抑制と、それに続く、MEDI9600薬物動態曝露の期間と一致する、ベースラインレベルへの遅い回復をもたらし、これは、薬物動態曝露と薬物動力学反応の間の強力な関係を示す。
【0198】
さらに、研究の間に安全性エンドポイントも評価し、MEDI9600の投与は、D-二量体濃度に対して、又は質的飼料消費、体重、血液学、血液凝固及び臨床化学検査を含む臨床観察に対して効果がなかった。注射部位でのMEDI9600関連一過性紅斑及び浮腫は、有害ではないと考えた。
【0199】
[実施例11]
材料及び方法
カニクイザルFcγRIIAシーケンシング
ベトナム起源の単一動物に由来する入手可能なカニクイザルドラフトゲノム配列を使用してプライマーを設計した(Beijing Genome Institute、2011)。60個体(中国産20個体、ベトナム産20個体、モーリシャス産20個体)からなるProtein ScienceカニクイザルゲノムDNAバンクを利用して、FcγIIAをシーケンシングした。Qiagen HotStar Taq Master Mixを使用してPCR増幅を実施し、続いて、PCR産物を社内でシーケンシングした。SeqMan(Lasergene)及びCloneManagerソフトウェアを使用して、生配列アラインメント、コンセンサス転写物ビルド、SNP変異体同定及び、ヒトFcγIIA(CCDS 44264/UniProt P12318)に対する比較を完了した。
【0200】
48個体(中国産16個体、ベトナム産16個体、モーリシャス産16個体)から得た全エクソーム配列データを含有する内部カニクイザルゲノムブラウザを使用して、配列変動を確認した。この内部データベースに由来するマイナー対立遺伝子頻度は、表4に示されている。6個体から得た血液由来cDNAを使用してFcγIIAエキソン配置を確認した。
【0201】
Fcγ受容体結合アッセイ
組換えFcγRI、FcγRIIA-131H/Hアロタイプ、FcγRIIB、FcγRIII-158Fアロタイプ及びFcγRIII-158Vアロタイプは、MedImmuneで作製した。抗FcγRIII抗体(3G8)は、Abcam(マサチューセッツ州、ケンブリッジ)から購入した。抗FcγRI Ab(16-115)は、Antibodies-online(ジョージア州、アトランタ)から購入した。抗FcγRIIB Ab及びアイソタイプ対照R347-Tmは、MedImmuneで作製した。
【0202】
Costar 96ウェルマイクロプレート(Fisher Scientific、ペンシルバニア州)を、2μg/mlのFcγ受容体(FcγRI、FcγRIIA-131H/Hアロタイプ、FcγRIIB、FcγRIII-158Fアロタイプ又はFcγRIII-158Vアロタイプ)を用いて4℃で一晩コーティングした。プレートを、200μlの洗浄バッファー(0.1% Tween 20を含有するPBS)を用いて5回洗浄し、PBS中、5%ミルクを含有するブロッキングバッファーを用いて室温で1時間ブロッキングし、洗浄バッファーを用いてさらに5回洗浄した。試験抗体又は対照抗体(R347-Tm)の3倍段階希釈をウェルに2連で添加した。プレートを室温で2時間インキュベートし、洗浄バッファーを用いて5回洗浄した。ウェルに50μlのヤギ抗ヒトFc-HRP(Jackson ImmunoResearch Laboratories、ペンシルバニア州)を添加すること及び室温で1時間インキュベートすること、10回洗浄すること及び50μlのTMB基質(Pierce Biotechnology、マサチューセッツ州)を添加することによって、抗体の、FcγRとの結合を検出した。50μlの0.2M HSOを用いて呈色反応を停止させ、A405nmで分光光度計(Molecular Devices、カリフォルニア州)を使用して吸光度を測定した。
【0203】
エピトープ競合アッセイ
リード最適化の間のIgG改善を同定するために、抗体サンプルを、IV.3 IgG(Stemcell Technologies、01470)のビオチン化ヒトCD32a 131Hとの結合が測定される均一性時間分解蛍光法(HTRF(登録商標)、Cisbio International)を使用するエピトープ競合アッセイを使用して評価した。
【0204】
DyLight 649がコンジュゲートした抗マウス検出抗体ストレプトアビジンテルビウムクリプテート(Cisbio International、610SATLB)検出を使用して、IV.3とビオチン化ヒトCD32a 131Hの間のFRETシグナルを測定することによって、IV.3 IgGのビオチン化ヒトCD32a 131Hとの結合を評価した。本アッセイを使用して、IV.3 IgGとビオチン化ヒトCD32a 131Hの間の相互作用の阻害を測定することによって、粗IgGサンプルにおける改善を同定した。
【0205】
IV.3 IgGの8.0nM溶液を、PBS(Invitrogen 14190-185)、0.2% BSA(Sigma A9576)及び0.4M KF(BDH 103444T)からなるアッセイバッファーで調製する。アッセイプレート(384黒色、浅いウェル、Costar、3676)に、5μlを添加して、2.0nMの最終濃度を得る。40nMのDyLight649がコンジュゲートした抗マウス検出抗体の溶液を、アッセイバッファーで調製し、アッセイプレートに5μlを添加して、10nMの最終濃度を得る。5μlの各IgGサンプルを、MiniTrak(商標)(Perkin Elmer)を使用してアッセイプレートに移す。4nMのビオチン化ヒトCD32a 131H及び2.67nMのストレプトアビジンテルビウムクリプテートを含有する予め混合した溶液を、4xストックとして調製する。5μlをアッセイプレートに添加して、1nMのビオチン化ヒトCD32a 131H及び0.67nMのストレプトアビジンテルビウムクリプテートの最終濃度を得る。ビオチン化ヒトCD32a 131Hを省くことによって、各プレートについて非特異的結合ウェル(陰性対照)を規定した。アッセイプレートを室温で3時間インキュベートし、その後、EnVisionプレートリーダー(Perkin Elmer)を使用して620nM及び665nM発光波長で時間分解蛍光を読み取った。
【0206】
各サンプルの665/620nM比、続いて、デルタF%値を算出することによって、データを解析した。
【0207】
方程式1を使用して、665/620nM比を使用してサンプル干渉について補正した。
【0208】
方程式1:
【0209】
【数1】
【0210】
次いで、方程式2を使用して各サンプルのデルタF%を算出した。
【0211】
方程式2:
【0212】
【数2】
【0213】
方程式3を使用して、特異的結合%を算出した。
【0214】
【数3】
【0215】
改善を確認するために、粗又は精製IgGサンプルを、Greiner 384ウェルV底プレート(Greiner781280)を使用してアッセイバッファーでサンプルを段階希釈することによって同一アッセイで評価した。Bravo(商標)(Agilent)を使用して、2連でscFvの各希釈の5μlをアッセイプレート(384黒色、浅いウェル、Costar、3676)に移した。次いで、上記のようにアッセイ試薬を添加した。
【0216】
これまでに記載したように、665/620nM比、続いて、デルタF%値を算出することによってデータを解析した。方程式1に記載したように、665/620nM比を使用してサンプル干渉について補正した。方程式2を使用してデルタF%を算出した。方程式3を使用して、各状態について特異的結合%を算出した。
【0217】
4パラメータロジスティック方程式(方程式4)を使用する曲線フィッティングによって、GraphPad Prismソフトウェアを使用してIC50値を決定した。
【0218】
【数4】
【0219】
選択性及び交差反応性についてのHTRF結合アッセイ
リード抗体の選択性を、IgGのビオチン化ヒトCD32bとの結合が測定される均一性時間分解蛍光法(HTRF(登録商標)、Cisbio International)を使用して評価した。交差反応性を、IgGのカニクイザルCD32a及びCD32bとの結合が測定される均一性時間分解蛍光法を使用して評価した。
【0220】
精製IgGのビオチン化CD32との結合を、ストレプトアビジンテルビウムクリプテート(Cisbio International、610SATLB)及びXL665(Cisbio International、61HFCXLB)検出試薬とコンジュゲートされた抗ヒトFc抗体を使用して、IgGとビオチン化CD32の間のFRETシグナルを測定することによって評価した。
【0221】
PBS(Invitrogen 14190-185)、0.2% BSA(Sigma A9576)及び0.4M KF(BDH103444T)からなるアッセイバッファーを調製し、5μlをアッセイプレート(384黒色、浅いウェル、Costar、3676)に添加する。CD32を、4x作業ストック溶液としてアッセイバッファーで希釈する。ヒトCD32b、カニクイザルCD32a及びカニクイザルCD32bを、20nMで調製し、5μlをアッセイプレートに添加して、5nMの最終濃度を得る。Greiner384ウェルV底プレート(Greiner 781280)を使用して、2連でアッセイバッファーでIgGの段階希釈を調製し、ペプチドの各希釈の5μlを、Bravo(商標)(Agilent)を使用してアッセイプレートに移す。ストレプトアビジンテルビウムクリプテート及び抗ヒトFc IgG XL665を、アッセイバッファーでそれぞれ、0.67nM及び15nMに希釈し(最終濃度)、5μlのこの予め混合した溶液を、アッセイプレートに添加した。サンプルIgGを、5μlのアッセイバッファーと置き換えることによって、各プレートについて陰性対照を規定した。アッセイプレートを室温で3時間インキュベートし、その後、EnVisionプレートリーダー(Perkin Elmer)を使用して620nM及び665nM発光波長で時間分解蛍光を読み取った。
【0222】
これまでに記載されたように、665/620nM比、続いて、デルタF%値を算出することによって、データを解析した(方程式についてのエピトープ競合プロトコールを参照のこと)。方程式1に記載されるように、665/620nM比を使用して、サンプル干渉について補正した。方程式2を使用してデルタF%を算出した。方程式3を使用して、各状態の特異的結合%を算出した。
【0223】
Octet IgG定量
プロテインA Biosensors (ForteBio)をOctetRED384システム(ForteBio)とともに使用して、IgGサンプルを定量した。
【0224】
25μlのサンプルを、PBS、0.02 % Tween20、1mg/mlのBSA(0.1%)からなる25μlのアッセイバッファーと混合する。サンプル中のIgGの、プロテインAバイオセンサーとの結合の速度を、Bio-Layer Interferometry (BLI)によって測定する。公知濃度の対照IgGを使用し、500μg/mlの最高最終濃度から2つの希釈系列中1つの12点を調製してIgG標準曲線を作製する。Octetシステムソフトウェアは、公知濃度を有する標準から結合速度を算出して、標準曲線を作製する。結合速度は、標準濃度に正比例する。
【0225】
OctetRED384システムとともに提供されたデータ解析ソフトウェアパッケージを使用してデータを解析する。データをソフトウェアにアップロードし、初期傾斜及び用量応答4PL(デフォルト、重みなし)方程式を使用して解析を実施する。標準曲線との比較から未知濃度を算出する。
【0226】
IVIGを用いる結合競合アッセイ
ヒト好中球を、ブロッキングバッファー[10%ウシ胎児血清を補給したリン酸緩衝生理食塩水(PBS)]に再懸濁し、丸底96ウェル培養プレート(0.5x106個細胞/ウェル)に移した。細胞を、10mg/mLの静脈内免疫グロブリン(IVIG)の存在下又は非存在下で、漸増濃度の蛍光標識されたMEDI9600又はR347-Tm対照抗体(0.0003~66.67nMの範囲)とともに4℃で30分間インキュベートした。インキュベーション後、細胞を冷PBSで洗浄し、細胞が結合した抗体の平均蛍光強度(MFI)を、LSRII(BD;ニュージャージー州、フランクリンレイクス)を使用してフローサイトメトリーによって評価した。GraphPad Prism 6ソフトウェア中の非線形適合方程式を使用して、結合のEC50を算出した。
【0227】
全血内部移行アッセイ
共焦点顕微鏡によってヒト単球におけるMEDI9600媒介性FcγRIIA内部移行を実証するために、CPTチューブ中に収集した全血からヒト末梢血単核細胞(PBMC)を単離した。PBMCをまず、CD14-Alexa 488を用いて染色し、CD14陽性単球を選別した。次いで、細胞をMEDI9600-Alexa 647を用いて氷上で30分間染色し、1回洗浄し、共焦点顕微鏡のために室温でインキュベートした。Leica DMI6000 B倒立顕微鏡(Leica Microsystems)からなるLeica TCS SP5共焦点システムを使用して細胞イメージングを実施した。図説明文中に記された時点で画像を獲得し、LAS AFバージョン2.2.1 Leicaアプリケーションスーツソフトウェア(Leica Microsystems)を使用して解析した。
【0228】
抗FcγRIIA-Tm Ab媒介性受容体内部移行を、FACSベースのアッセイによって調べた。ヒト又はカニクイザル血液を、ヘパリンチューブ中に収集した。非標識抗FcγRIIA抗体又は対照抗体の3倍希釈系列を、50μlの全血に37℃で添加し2時間置いた。全血をFACSバッファー(PBS中、5%ウシ胎児血清)で洗浄し、Abカクテル(CD14-PE、CD20-Pacific Blue及びIV.3-Alexa 647)を用いて氷上で1時間染色した。洗浄後、細胞を、1mlのRBC溶解バッファー(Biolegend、カリフォルニア州)とともに室温で3分間インキュベートし、洗浄し、150μlのFACSバッファーに再懸濁した。ヒト又はカニクイザル単球上でのFcγRIIA表面発現を、FACS LSRIIフローサイトメーター(BD Bioscience、カリフォルニア州)で測定し、Flowjoソフトウェアを使用して解析を実施した。
【0229】
リボヌクレオタンパク質-免疫複合体(RNP-IC)誘導性I型IFNαアッセイ
RNP-IC誘導性IFNα発現に対するFcγRIIA遮断の影響を、ELISAによって調べた。簡潔には、100μlのヒト又はカニクイザルPBMC(5x10個細胞/ml)、組織培養フラスコ中で1時間インキュベートした。非接着細胞を収集し、この単球枯渇画分を、3倍希釈で300μg/ml~0.001μg/mlの抗FcγRIIA Ab又はそのアイソタイプ対照(R347-Tm Ab)とともに37℃のインキュベーター中で2時間インキュベートした。次いで、細胞を、100μlのRNP-IC(1μ/mlのRNP(Biomeda)/2%抗RNP抗体血清陽性SLE血清)を用いて16時間処置した。ヒトIFNα ELISAキット(PBL Assay Science、ニュージャージー州)を使用して、細胞培養上清中のIFNαの濃度を決定した。
【0230】
ヒト好中球の単離
正常なボランティアから得た末梢血を、ヘパリンを含有するバキュテナーチューブ中に採血し、血液をHBSSで1:1希釈した。好中球を、リンホプレップ(lymphoprep)密度勾配上で遠心分離によって分離した。RBC溶解バッファー(Biolegend、カリフォルニア州)によって赤血球を除去した。ヒト好中球濃縮キット(StemCell Technologies、カリフォルニア州)を使用して好中球をさらに濃縮した。
【0231】
フェリ-チトクロームC還元アッセイを使用するスーパーオキシド生成の検出
抗好中球細胞質抗体(ANCA)又は酢酸ミリスチン酸ホルボール(PMA)によって誘導された好中球スーパーオキシド生成を、フェリ-チトクロームC還元アッセイによって測定した。簡潔には、単離されたヒト好中球を、HBSS/20mM Hepes/Ca2+ Mg2+不含バッファーに4x10個細胞/mlで懸濁し、組換え2ng/mlのTNF-α(R&D Systems、ミネソタ州)を用いて15分間刺激した。FcγRIIA遮断の効果を評価するために、好中球を、10μg/mlのMED19600とともに室温で30分間プレインキュベートし、その後、それらを96ウェル組織培養プレートに添加した。96ウェル組織培養プレートを、100μlの、HBSS/20mM Hepes中0.5%ミルクを用いて室温で1時間前処置した。プレートを洗浄バッファー(HBSS/20mM Hepes/Ca2+、Mg2+不含バッファー)を用いて3回洗浄した。50マイクロリットルの2xチトクロームCバッファー(0.2mMチトクロームC、1mM MgCl、2mM CaCl)を各ウェルに、続いて、10μlの刺激(10μg/mlの抗PR3 Ab、30μg/mlの抗MPO Ab又は20nM PMAで)及び50μlの好中球を添加した。プレートを直ちに予め加温したプレートリーダー(37℃)中に入れ、OD(550nM及び490nM)を37℃で2時間、連続して測定した。
【0232】
フローサイトメトリー(DHR 123アッセイ)を使用するスーパーオキシド生成の検出
ANCAによって誘導された好中球スーパーオキシド生成を、フローサイトメトリーによって測定した。好中球(1x10個/ml)を、1μg/mlのジヒドロローダミン(dihydrohodamine)123(DHR)(Life Technologies、カリフォルニア州)を含むRPMI 1640バッファーに再懸濁した。一部の細胞を、10μg/mlのMED19600、抗FcγRIII Ab(Biolegend、カリフォルニア州)又はアイソタイプ対照Abとともに、室温で30分間プレインキュベートした。次いで、細胞を、30μg/mlの抗MPO Ab(Abcam、マサチューセッツ州)、10μg/mlの抗PR3 Ab(Abcam、マサチューセッツ州)又は健常なボランティア又はAAV患者の血清から精製された80μg/mlのIgG(Tissue Solutions、英国)とともに37℃で30分間インキュベートし、200gでペレットにし、氷冷HBSSに5x10個細胞/mlの密度で再懸濁した。平均蛍光強度(M.F.I)をLSRIIフローサイトメーター(BD Bioscience、カリフォルニア州)によって測定し、Flowjoソフトウェアを使用して解析を実施した。
【0233】
好中球遊走アッセイ
好中球遊走を、5μmフィルター(Neuro Probe、メリーランド州)を備えた96ウェルChemo TXシステムを使用して評価した。ヒトIL-8(R&D Systems、ミネソタ州)を、1% BSAを20nMの最終濃度まで含有するRPMI 1640で希釈し、下部チャンバー中に入れた。細胞を洗浄し、同一培地に懸濁した。ヒト好中球を、10μg/ml MED19600又はアイソタイプ対照抗体とともに37℃で30分間インキュベートし、その後、細胞を上部チャンバーに添加した。好中球を1時間遊走させた。下部チャンバーに遊走した細胞を、フローサイトメトリーによって数え上げた。遊走指数は、走化性物質に応じて遊走する細胞数対その非存在下で遊走する細胞数の比である。
【0234】
好中球活性化アッセイ
ヒト血液をEDTAチューブ中に収集し、血液の50μlのアリコートを、10μg/mlの抗TLR2 Ab、MEDI9600又はアイソタイプ対照Abとともに、37℃で2時間インキュベートした。50マイクロリットルのPam3CSK4(Invivogen、カリフォルニア州)を全血に100ng/mlの最終濃度に添加し、45分間インキュベートした。細胞を、FACSバッファー(PBS中、3% FBS)で2回洗浄し、CD11b-PE(Biolegend、カリフォルニア州)を用いて氷上で30分間染色し、FACSバッファーを用いて1回洗浄した。赤血球を、溶解/固定バッファー(BD Bioscience、カリフォルニア州)を用いて溶解した。好中球におけるCDllb発現を、フローサイトメトリーによって測定した。
【0235】
オプソニン作用性死滅(OPK)アッセイ
発光緑膿菌(P.aeruginosa)を、ベクターmini-CTX-lac-luxを使用してこれまでに記載されたように(DiGiandomenicoら、J. Exp. Med. 209:1273~1287(2012))構築した。緑膿菌(P.aeruginosa)株を、トリプチケースソイ寒天(TSA)の一晩プレート上、37℃で単一コロニーに増殖させ、続いて、単一コロニーを10 mLのLuria Bertani(LB)培養液中に播種し、650nMで0.4の光学密度(およそ5x10個コロニー形成単位[CFU]/mL)に増殖させた。14,000xgでの遠心分離によって1ミリリットルの細胞をペレットにし、続いて、OPKアッセイバッファーに懸濁し、1:200にさらに希釈した(およそ2.5x10個CFU/mL)。すべてのOPK成分の調製が完了するまで、細菌を氷上で維持した。
【0236】
ベビーウサギ血清(BRS)(CedarLane、カナダ、オンタリオ州、ホーンビー)を、OPKアッセイのための補体供給源として使用した。1ミリリットルの凍結乾燥BRSを氷冷蒸留水を用いて復元し、続いて、OPKアッセイバッファーで1:10希釈を調製した。希釈したBRSは、すべてのOPK構成成分の調製が完了するまで氷上で維持した。
【0237】
MEDI9600(抗FcγRIIA)、H2B(抗FcγRIIB)又は3G8(抗FcγRIII)Abを、白色平底96ウェルプレートに添加し(ウェルあたり12.5μl)、続いて、12.5μlの一次好中球調製物を添加した。FcγR mAb及び一次好中球の最終濃度は、それぞれ、2μg/ml及び2x10個細胞/mlとした。室温で20分のインキュベーション後、各ウェルに抗Psl抗体の希釈物、希釈した補体及び細菌を添加し、プレートを通気性のある密閉フィルムで覆った。抗Psl mAb抗体を欠くウェルは、アッセイ対照として働いた。プレートを、1分あたり250回転(rpm)で振盪しながら37℃で120分間インキュベートした。インキュベーション後、Perkin Elmer Envision Multi-Label Readerを使用して相対ルシフェラーゼ単位(RLU)を測定した。発光量は、培養物中に残る生存細菌の頻度と直接的に相関する。すべてのサンプルを2連で流した。以下の式を使用して、緑膿菌(P.aeruginosa)の死滅パーセントを算出した:
死滅%=100-([RLU実験ウェル/RLU対照ウェル]x100)
EC50値は、曲線フィッティング解析のために4パラメータロジスティック非線形回帰モデルを使用するGraphPad Prism(バージョン5)を用いて算出した。
【0238】
全血プロテオミクス評価
ヒト血液を、ヘパリンチューブ中に収集した。5ミリリットルの血液を、抗FcγRIIA Ab(30μg/ml)、RNP-IC(1μg/ml RNP/2%抗RNP抗体血清陽性SLE血清)又はIg-IC(100μg/mlビオチン化NMGC Ab-ストレプトアビジン、2:1mol:mol比)とともに37℃で16時間インキュベートした。血漿画分を1300gで10分間の遠心分離後に収集した。200種を超えるタンパク質分析物を、Rules-Based-Medicine Discovery MAP(テキサス州、オースティン)を使用して測定した。データは、すべてのFcγRIIA多型変異体を網羅する5個人のドナー:2人の131H/Hドナー、2人の131R/Rドナー及び1人の131H/Rドナーから作製した。
【0239】
受動免疫性血小板減少症動物モデル
抗血小板抗体誘導性血小板減少症に対する抗FcγRIIA Abの効果を、受動免疫性血小板減少症動物モデルにおいて測定した。野生型及びFcγRIIAトランスジェニックマウスは、The Jackson Laboratoryから入手した。ラット抗マウスCD41(GpIIa)IgG1 Ab及び対照ラットIgG1 Abは、BD Bioscienceから購入した。野生型及びトランスジェニックマウスに、0日目に2μgの抗CD41を用いて腹膜内注射した。一部のマウスを24時間前に、10mg/kgのMEDI9600により前処置した。血液を、後眼窩出血によって1日目、5日目、8日目及び12日目に収集し、Sysmex血液分析器を使用して血小板をカウントした。血小板FcγRIIA発現は、フローサイトメトリーによって決定した。
【0240】
MEDI9600:カニクイザルにおける単回用量薬物動態及び探索的薬動力学研究
雄のカニクイザルを、表9に示されるように、群に割り当て、MEDI9600を投与した。動物に、静脈内注射によって投薬した。
【0241】
【表9】
【0242】
酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)(非GLP)を使用するカニクイザル血清におけるMEDI9600定量的決定
この方法は、カニクイザル血清中のMEDI9600の濃度を測定するために間接ELISA形式を利用した。標準、対照及び試験サンプルを、マイクロタイタープレート上に固定されているヒツジ抗ヒトIgG(H+L)とともにインキュベートした。インキュベーション後、結合していない材料を洗浄除去し、ヤギ抗ヒトIgG-(H+L)-HRPコンジュゲートを使用してMEDI9600を検出し、テトラメチルベンジジン(TMB)基質溶液の添加によって可視化した。色の発色を停止し、450/650nMで色の強度を測定した。
【0243】
薬動力学-フローサイトメトリー
投薬前フェーズの12及び20日目に、投薬後およそ0.5時間、4時間、8時間及び24時間に、投薬フェーズの3、4、5及び8日目に1回、その後毎週(投薬フェーズの1日目に基づいて)、すべての動物から大腿静脈を介してフローサイトメトリーのために血液(およそ1mL)を収集した。動物は、臨床病理サンプリングとともにサンプルを収集するまで絶食させなかった。抗凝固剤は、クエン酸デキストロースとした。パラメータはパーセンテージ(総CD45+白血球のうち)及び絶対値(細胞/μL)として表した。FcγRIIA発現レベルは、蛍光強度で、並びに中央値及び/又は幾何平均蛍光強度値を使用して算出した可溶性蛍光分子等量(MESF)値で記載した。表10に示されるリンパ球サブセットを、フローサイトメトリーを使用して定量化した。
【0244】
【表10】
【0245】
統計解析
2群の間の相違の統計的有意性は、独立スチューデントt検定又はノンパラメトリックマンホイットニー検定を使用して解析した。p<0.05の場合にデータに統計的有意性があるものとした。
【0246】
参考文献
【0247】
特定の実施形態の前記の説明は、他のものが、当技術分野の技術内の知識を適用することによって、過度の実験を行うことなく、本発明の全体的な概念から逸脱することなく、種々の適用のためにこのような特定の実施形態を容易に改変及び/又は適応させることができる本発明の一般的な性質を十分に示す。したがって、本明細書において提示される教示及び指針に基づいて、このような適応及び改変は、開示される実施形態の均等物の意味及び範囲内にあることが意図される。本明細書の技術用語又は表現は、教示及び指針を鑑みて当業者によって解釈されるべきであるように、本明細書における表現又は技術用語は、説明目的であって、制限を目的するものではないということは理解されるべきである。本発明を以下の特許請求の範囲によってさらに説明する。
本発明は、例えば以下の実施形態を包含する:
[実施形態1]FcγRIIAと特異的に結合する単離された結合分子であって、
a.(i)配列番号19及び配列番号22、(ii)配列番号19及び配列番号23、(iii)配列番号19及び配列番号24、(iv)配列番号20及び配列番号25、(v)配列番号20及び配列番号23、並びに(vi)配列番号20及び配列番号26からなる群から選択されるアミノ酸配列をそれぞれ含む免疫グロブリン可変重鎖相補性決定領域2(VH-CDR2)及び免疫グロブリン可変軽鎖相補性決定領域1(VL-CDR1)、
b.配列番号29を含む免疫グロブリン可変重鎖相補性決定領域1(VH-CDR1)、
c.配列番号30又は配列番号45を含む免疫グロブリン可変重鎖相補性決定領域3(VH-CDR3)、
d.配列番号31を含む免疫グロブリン可変軽鎖相補性決定領域2(VL-CDR2)、並びに
e.配列番号32を含む免疫グロブリン可変軽鎖相補性決定領域3(VL-CDR3)を含む結合分子。
[実施形態2]配列番号19及び配列番号22を含む、実施形態1に記載の結合分子。
[実施形態3](i)配列番号33及び配列番号34、(ii)配列番号35及び配列番号36、(iii)配列番号37及び配列番号38、(iv)配列番号39及び配列番号40、(v)配列番号41及び配列番号42、並びに(vi)配列番号43及び配列番号44からなる群から選択されるアミノ酸配列をそれぞれ含む重鎖可変(VH)領域及び軽鎖可変(VL)領域を含む、実施形態1に記載の結合分子。
[実施形態4]配列番号33及び配列番号34のアミノ酸配列をそれぞれ含むVH領域及びVL領域を含む、実施形態3に記載の結合分子。
[実施形態5]実施形態1~4のいずれかに記載の結合分子と競合又は交差競合する、単離された結合分子。
[実施形態6]マウス抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組換え抗体、二重特異性抗体、多特異性抗体及びそれらの抗原結合断片から選択される、実施形態1~5のいずれかに記載の結合分子。
[実施形態7]Fv、Fab、F(ab’)2、Fab’、dsFv断片、一本鎖Fv(scFV)、sc(Fv)2、ジスルフィド連結(dsFv)、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ又は一本鎖抗体から選択される、実施形態1~6のいずれかに記載の結合分子。
[実施形態8]免疫グロブリン(Ig)重鎖定常領域を含む、実施形態1~7のいずれかに記載の結合分子。
[実施形態9]定常領域が、ヒトIgG定常領域である、実施形態8に記載の結合分子。
[実施形態10]定常領域が、Kabat位置234、235及び331にアミノ酸置換を含み、
a.Kabat位置234のアミノ酸が、フェニルアラニン(F)で置換され、
b.Kabat位置235のアミノ酸が、グルタミン酸(E)で置換され、
c.Kabat位置331のアミノ酸が、セリン(S)で置換されている、
実施形態9に記載の結合分子。
[実施形態11]定常領域が、野生型ヒトIgG定常領域に対して、251~257、285~290、308~314、385~389及び428~436位のアミノ酸残基の1つ以上の置換を含み、アミノ酸位置番号付けが、Kabatに示されるEUインデックスに従う、実施形態9又は10に記載の結合分子。
[実施形態12]定常領域が、Kabat位置252、254及び256にアミノ酸置換を含み、
a.Kabat位置252のアミノ酸は、チロシン(Y)で置換され、
b.Kabat位置254のアミノ酸は、トレオニン(T)で置換され、
c.Kabat位置256のアミノ酸は、グルタミン酸(E)で置換されている、
実施形態11に記載の結合分子。
[実施形態13]免疫グロブリン軽鎖定常領域を含む、実施形態1~12のいずれかに記載の結合分子。
[実施形態14]軽鎖定常領域が、ヒトカッパ定常領域である、実施形態13に記載の結合分子。
[実施形態15]BIAcoreアッセイによって測定して、約0.15nMの解離定数(K )を特徴とする親和性でヒトFcγRIIA 131Rと特異的に結合する、実施形態1~14のいずれかに記載の結合分子。
[実施形態16]BIAcoreアッセイによって測定して、約0.13nMの解離定数(K )を特徴とする親和性でヒトFcγRIIA 131Hと特異的に結合する、実施形態1~15のいずれかに記載の結合分子。
[実施形態17]FcγRI、FcγRIIB又はFcγRIIIと特異的に結合しない、実施形態1~16のいずれかに記載の結合分子。
[実施形態18]抗菌剤、治療剤、プロドラッグ、ペプチド、タンパク質、酵素、脂質、生物応答修飾物質、医薬剤、リンホカイン、異種抗体又はその断片、検出可能な標識、ポリエチレングリコール(PEG)、毒素及び任意の前記薬剤のうち2種以上の組合せからなる群から選択される薬剤にコンジュゲートされる、実施形態1~17のいずれかに記載の結合分子。
[実施形態19]実施形態1~18のいずれかに記載の結合分子及び担体を含む組成物。
[実施形態20]診断試薬である、実施形態19に記載の組成物。
[実施形態21]末梢血単核細胞(PBMC)においてリボヌクレオタンパク質-免疫複合体(RNP-IC)媒介性I型IFNαを阻害する方法であって、PBMCを、実施形態1から18のいずれかに記載の結合分子と接触させることを含む方法。
[実施形態22]抗好中球細胞質抗体(ANCA)誘導性好中球活性化を阻害する方法であって、好中球を、実施形態1から18のいずれかに記載の結合分子と接触させることを含む方法。
[実施形態23]対象において炎症性、免疫媒介性又は自己免疫性疾患又は障害を治療する方法であって、治療を必要とする対象に、有効量の実施形態1から18のいずれかに記載の結合分子又は実施形態19に記載の組成物を投与することを含む方法。
[実施形態24]対象において炎症性、免疫媒介性又は自己免疫性疾患又は障害を予防する方法であって、疾患又は障害に罹患しやすい対象に、有効量の実施形態1から18のいずれかに記載の結合分子又は実施形態19に記載の組成物を投与することを含む方法。
[実施形態25]第2の活性薬剤を投与することを含む、実施形態23又は実施形態24に記載の方法。
[実施形態26]疾患又は障害が、ANCA関連血管炎(AAV)、全身性エリテマトーデス(SLE)、ループス腎炎、膜性腎炎、巨大細胞動脈炎(GCA)血管炎、免疫性血小板減少症(ITP)、関節リウマチ、多発性筋炎、皮膚筋炎、天疱瘡、溶血性貧血、混合結合組織疾患、シェーグレン症候群、強皮症、自己抗体障害、免疫複合体媒介性障害、ADA媒介性有害作用、ネトーシス並びに敗血症、血栓症、急性腎傷害、急性肺傷害、慢性閉塞性肺疾患、糸球体腎炎、中毒性肝傷害、卒中、アテローム発生、I型糖尿病及びIgG媒介性過敏反応を含むネトーシス関連障害である、実施形態23から25のいずれかに記載の方法。
[実施形態27]サンプル中のFcγRIIAを検出する方法であって、(a)サンプルを、実施形態1から18のいずれかに記載の結合分子と接触させること、及び(b)結合分子の、FcγRIIAとの結合を検出し、それによって、サンプル中のFcγRIIAを検出することを含む方法。
[実施形態28]診断方法である、実施形態27に記載の方法。
[実施形態29]実施形態1から18のいずれかに記載の結合分子をコードするヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子。
[実施形態30]調節配列に作動可能に連結された、実施形態29に記載の核酸分子。
[実施形態31]実施形態29又は実施形態30に記載の核酸分子を含むベクター。
[実施形態32]実施形態29若しくは実施形態30に記載の核酸分子又は実施形態31に記載のベクターを用いて形質転換された宿主細胞。
[実施形態33]哺乳動物宿主細胞である、実施形態32に記載の宿主細胞。
[実施形態34]実施形態29若しくは実施形態30に記載の核酸分子、実施形態31に記載のベクター又は実施形態32若しくは実施形態33に記載の宿主細胞を含む組成物。
[実施形態35]FcγRIIAと特異的に結合する結合分子を作製する方法であって、実施形態32又は実施形態33に記載の宿主細胞を、結合分子を産生するのに適した条件下で培養することを含む方法。
[実施形態36]結合分子を単離することをさらに含む、実施形態35に記載の方法。
[実施形態37]実施形態1から18のいずれかに記載の結合分子又は実施形態29若しくは実施形態30に記載の核酸分子を含むキット。
図1-1】
図1-2】
図2
図3
図4
図5
図6
図7-1】
図7-2】
図8
図9-1】
図9-2】
図10
図11
図12
図13-1】
図13-2】
【配列表】
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