(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-27
(45)【発行日】2022-05-11
(54)【発明の名称】腸溶層破損防止用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 47/10 20060101AFI20220428BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20220428BHJP
A61K 9/30 20060101ALI20220428BHJP
A61K 31/4439 20060101ALI20220428BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20220428BHJP
【FI】
A61K47/10
A61K47/26
A61K9/30
A61K31/4439
A61P1/04
(21)【出願番号】P 2017012594
(22)【出願日】2017-01-27
【審査請求日】2020-01-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000228590
【氏名又は名称】日本ケミファ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124822
【氏名又は名称】千草 新一
(74)【代理人】
【識別番号】100146259
【氏名又は名称】橋本 諭志
(72)【発明者】
【氏名】林 和矢
(72)【発明者】
【氏名】柳本 剛
(72)【発明者】
【氏名】増田 年紀
(72)【発明者】
【氏名】横江 翼
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 英治
【審査官】渡邉 潤也
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第1660093(CN,A)
【文献】特表2010-540596(JP,A)
【文献】特開2000-281564(JP,A)
【文献】国際公開第2008/140459(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/136380(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0160046(US,A1)
【文献】国際公開第2004/071374(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 47/00
A61K 9/00
A61K 31/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物層、溶出制御層及び腸溶層を含む多層構造を有する腸溶性顆粒において、腸溶層及び/又は腸溶層より外側にある層をD-マンニトール及びポリエチレングリコールを含む腸溶層の破損防止用組成物で被覆することを特徴とする腸溶性顆粒。
【請求項2】
D-マンニトール及びポリエチレングリコールの比が、10:1~1:1である請求項1記載の腸溶性顆粒。
【請求項3】
ポリエチレングリコールが、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール4000、ポリエチレングリコール6000から選択される1種又は2種以上である請求項1又は2記載の腸溶性顆粒。
【請求項4】
腸溶性顆粒に含まれる主薬成分が、プロトンポンプ阻害薬である請求項1~3のいずれか1項記載の腸溶性顆粒。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項記載の腸溶性顆粒を含有する固形製剤。
【請求項6】
錠剤である請求項5記載の固形製剤。
【請求項7】
口腔内崩壊錠である請求項5記載の固形製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な被覆用組成物、本組成物で被覆することにより腸溶層の破損が防止された腸溶性顆粒及びこれを含有する腸溶性製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
腸溶性製剤は、胃の中で分解する薬剤や胃障害を起こす薬剤あるいは腸へ薬物を移行させたい場合等に、胃では溶出せず腸に移行して初めて溶出するよう工夫された製剤である。技術的には、酸性の胃液では溶解せずアルカリ性の腸液中で溶解する被膜を施したり、カプセルそのものを腸溶性にした内用固形製剤で、細粒剤、顆粒剤、丸剤、錠剤、カプセル剤、マイクロカプセル化したものが報告されている。
【0003】
この様な目的で使用される腸溶性製剤は、その有用性から種々の薬剤に適用されているが、一方、幾つかの問題点を有している。例えば、腸溶性被膜で被覆された腸溶性顆粒の製造において、打錠時に腸溶層が破損し、その結果、内容成分が顆粒あるいはこの顆粒を含有する製剤中から染み出してしまい、内容成分の減少、製剤化における打錠障害等の問題が挙げられる。そのため、打錠時に高い打錠圧をかけられないことから、得られた錠剤の硬度は充分なものではなく、錠剤運搬時の錠剤の破損などの問題が懸念される。また、胃の中で分解する薬剤においては、腸溶性被膜が破損すれば、服用時に主薬が胃液で分解し、充分な薬効を発現しないことも懸念される。
従って、このような腸溶製剤の製造時における腸溶層の破損が抑制された腸溶性顆粒及び安定な腸溶製剤の開発が望まれている。
【0004】
これらに関連する先行技術として、例えば特許文献1には、ベンズイミダゾールの組成物であって、複数の圧縮ユニットを含む急速に口腔内又は口腔外で崩壊し得る前記ユニットの各々が、(i)ベンズイミダゾールを含む基体、(ii)基体上に層化された腸溶性コーティング;(iii)前記腸溶性コーティング上の全体に実質的に層化され、圧力吸収体を含む外塗、を含む組成物が開示されている。また、圧力吸収体として微結晶セルロース、多糖、デンプン等が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、腸溶性製剤における打錠時の腸溶層の破損防止用の被覆用組成物、本被覆用組成物で被覆された腸溶性顆粒及び本顆粒を含有する腸溶性製剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、腸溶性顆粒における腸溶層の破損抑制技術について種々検討を行った結果、D-マンニトール及びポリエチレングリコールを含む被覆用組成物で腸溶層及び/又は腸溶層の外側にあるいずれかの層を被覆することにより、腸溶層の破損が防止されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、D-マンニトール及びポリエチレングリコールを含む被覆用組成物を提供するものである。
また本発明は、D-マンニトール及びポリエチレングリコールを含む腸溶性顆粒被覆用組成物を提供するものである。
また本発明は、D-マンニトール及びポリエチレングリコールを含む被覆用組成物で被覆された腸溶性顆粒を提供するものである。
また本発明は、D-マンニトール及びポリエチレングリコールを含む被覆用組成物で被覆された腸溶性顆粒を含有する腸溶性製剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の被覆用組成物で被覆された腸溶性顆粒は腸溶層の破損による主薬成分の含量低下や打錠障害などが改善されるため、腸溶性製剤の製造に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明について更に詳細に説明する。
本発明で用いられるD-マンニトールは、一般公知の市販のD-マンニトールを用いることができる。
【0011】
本発明で用いられるポリエチレングリコールとしては、ポリエチレングリコール200、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール600、ポリエチレングリコール1000、ポリエチレングリコール1500、ポリエチレングリコール2000、ポリエチレングリコール4000、ポリエチレングリコール6000、ポリエチレングリコール11000又はポリエチレングリコール20000等が挙げられ、好ましくはポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール1000、ポリエチレングリコール1500、ポリエチレングリコール2000、ポリエチレングリコール4000、ポリエチレングリコール6000が挙げられ、より好ましくはポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール4000、ポリエチレングリコール6000が挙げられる。
【0012】
本発明で用いるD-マンニトールとポリエチレングリコールの配合比は、質量比で10:1~1:1の範囲で配合することができるが、好ましくは9:1~6:4、より好ましくは8:2~6:4、さらに好ましくは8:2~7:3の範囲である。
【0013】
本発明の腸溶性顆粒及び固形製剤には、必要により結合剤、崩壊剤、賦形剤、コーティング基剤、界面活性剤等の製剤化における助剤、矯味剤、着色剤、香料等を適宜組み合わせて必要量配合することができる。
【0014】
本発明で用いることができる結合剤としては、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、寒天、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、部分けん化ポリビニルアルコール、プルラン、部分α化デンプン、デキストリン、キタンサンガム、アラビアゴム末等が挙げられる。好ましくは、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、ポリビニルピロリドンである。これらは単独であってもよいし、2種以上の混合物であってもよい。
【0015】
本発明で用いることができる崩壊剤としては、例えば、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース(カルメロース)、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスポビドン、ヒドロキシプロピルスターチ、デンプン、部分α化デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、クエン酸カルシウム、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム等が挙げられ、好ましくはクロスカルメロースナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスポビドンであり、さらに好ましくはクロスポビドンである。さらに本発明に用いられるクロスポビドンとしては、ポリプラスドン(登録商標)XL、 ポリプラスドン(登録商標)XL-10、ポリプラスドン(登録商標)INF-10(以上、Ashland社製)、コリドン(登録商標)CL、コリドン(登録商標)CL-F、コリドン(登録商標)CL-SF、コリドン(登録商標)CL-M等が挙げられ、好ましくはコリドンCL、コリドンCL-F、コリドンCL-SF、コリドンCL-M(以上、BASFジャパン社製)であり、特に好ましくはコリドンCL-Fである。用いられる崩壊剤の配合量は、核粒子中5~30質量%が好ましく、さらに好ましくは5~15質量%である。また、口腔内崩壊錠に配合する場合には、後末中1~10質量%が好ましく、さらに好ましくは2~6質量%である。
【0016】
本発明で用いることができる賦形剤は、例えば結晶セルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース等)等のセルロース類、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、部分α化デンプン、ヒドロキシプロピルスターチなどのデンプン類、ブドウ糖、乳糖、白糖、精製白糖、粉糖、トレハロース、デキストラン、デキストリンなどの糖類、(D-マンニトール、キシリトール、ソルビトール、エリスリトールなどの糖アルコール類、グリセリン脂肪酸エステル、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ヒドロタルサイト、無水リン酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、リン酸水素カルシウム水和物、炭酸水素ナトリウムなどの無機塩が挙げられる。該賦形剤は、固形製剤中10~70質量%配合することができる。
【0017】
本発明に用いることができるコーティング基剤としては、メタクリル酸コポリマーL、S(例えば、Eudragit(登録商標) L100、Eudragit(登録商標) S100、Evonik社製)、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE(例えば、Eudragit(登録商標) E100、Eudragit(登録商標) EPO、Evonik社製)、メタクリル酸コポリマーLD(例えば、Eudragit(登録商標) L100-55、Eudragit(登録商標)L30D-55、Evonik社製)、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー(例えば、Eudragit(登録商標) NE30D、Evonik社製)、アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS(例えば、Eudragit(登録商標) RL100/RLPO/RL30D、Eudragit(登録商標) RS100/RSPO/RS30D、Evonik社製)などのメタクリル酸誘導体を含むポリマーが挙げられ、好ましくはメタクリル酸コポリマーL、S、メタクリル酸コポリマーLDが挙げられる。これらのコーティング基剤は1種又は2種以上を配合して用いることができる。該アクリルポリマーの含有量は、被覆層中のポリマー固形分重量に対し、約1~約50重量%、好ましくは約5~約40重量%、より好ましくは約10~約30重量%である。
【0018】
本発明に用いることができる界面活性剤としては、ビス-(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム(ドクセートナトリウム)、臭化アルキルトリメチルアンモニウム(例えば臭化セチルトリメチルアンモニウム(セトリミド))のような陽イオン剤、特にポリオキシエチレンソルビタン(例えばツウィーン(TweenTM20、40、60、80または85)のような非イオン性剤、および他のソルビタン(例えば、スパンSpanTM20、40、60、80また85)が挙げられる。
【0019】
本発明で用いることができる矯味剤としては、糖アルコール、アスパルテーム、ステビア、サッカリンナトリウム、グリチルリチン二カリウム、ソーマチン、アセスルファムカリウム、スクラロース等が挙げられる。これらは単独であってもよいし、2種以上の混合物であってもよい。
【0020】
本発明で用いることができる着色剤としては、食用青色1号、食用青色2号、食用黄色4号、食用黄色5号、食用赤色2号、食用赤色3号、食用赤色102号、食用青色1号アルミニウムレーキ、食用青色2号アルミニウムレーキ、食用黄色4号アルミニウムレーキ、食用黄色5号アルミニウムレーキ、食用赤色2号アルミニウムレーキ、食用赤色3号アルミニウムレーキ、食用赤色102号アルミニウムレーキ、三二酸化鉄(赤色)、酸化チタン、黄色三二酸化鉄、オレンジエッセンス、カラメル、タルク、緑茶末等が挙げられる。これらは単独であってもよいし、2種以上の混合物であってもよい。
【0021】
本発明で用いることができる香料としては、ミント、レモン香料、オレンジコートン、パイナップルフレーバー、l-メントール、ブラックティーミクロン等が挙げられる。これらは単独であってもよいし、2種以上の混合物であってもよい。
【0022】
本発明において、薬物層に配合される成分は特には制限されないが、好ましくは胃において分解あるいは胃に障害・負担を与えるなど、腸で製剤が崩壊し放出されることが好ましい成分が挙げられ、例えばプロトンポンプ阻害薬(オメプラゾール、ランソプラゾール等)、鎮痛薬(アスピリン等)、サラゾスルファピリジン等の医薬品、魚油、ニンニク、乳酸菌、ビフィズス菌などの健康食品等に供する成分が挙げられる。
【0023】
本発明の被覆用組成物は、例えばD-マンニトール及びポリエチレングリコールを溶媒に添加し、必要に応じて溶媒を除去する方法等によって製造することができる。製造において使用される溶媒としては、水あるいはメチルアルコール、エチルアルコール等のアルコール類媒あるいはこれらの混合液などが挙げられる。
【0024】
本発明における多層構造を有する腸溶性顆粒は、例えば結晶セルロース又は乳糖を含有する核に、(1)主薬成分を含む薬物層、(2)腸溶層及び(3)本発明被覆用組成物により被覆された層(腸溶層破損防止層)で被覆することにより製造することがでる。また、本発明でいう多層構造とは、少なくとも上記(1)~(3)の3層以上の層からなる腸溶性顆粒を意味するが、必要に応じてさらに異なる薬物を含む薬物層、溶出制御層や各層の間を遮断するバリア層で被覆することがきる。この時、本発明の腸溶層破損防止層は薬物層より外側に位置する方が好ましい。製造は一般公知の方法により行うことができるが、例えば転動流動層造粒、流動造粒等の流動造粒法、遠心転動造粒法等の転動造粒法、撹拌造粒法等により製造することができる。腸溶層破損防止層の被膜の膜厚については特には制限されないが、薄すぎると本発明の効果を十分に発揮できず、また必要以上に厚みがあると、顆粒の粒子径が大きくなり、錠剤硬度の低下や口腔内で崩壊させたときにざらつきとして不快感が出る可能性があることから、好適な膜厚としては10~100μm、好ましくは20~80μm、より好ましくは30~50μmである。
【0025】
本発明の腸溶性顆粒は腸溶製剤に含有させて用いることができ、特に固形製剤が好ましく、例えば錠剤、顆粒剤、細粒剤、カプセル剤等の固形製剤、懸濁化剤などの液剤が挙げられる。取り扱いの容易さ等の点からは、錠剤が好ましい。またこれらの固形製剤は、必要に応じてコーティングを施すことができる。
【0026】
本発明の口腔内崩壊錠は、一般公知の方法、例えば本発明の腸溶性顆粒および添加剤(賦形剤、崩壊剤等)を溶媒の存在又は非存在下混合し、成形し、必要に応じて乾燥することにより製造することができる。混合は、V型混合機、万能練合機、流動層造粒機、タンブラー混合機等の装置を用いて行うことができる。
本発明の固形製剤が錠剤、口腔内崩壊錠における成形は、例えばロータリー式打錠機等を用いて打錠することにより行うことができる。
乾燥は、例えば真空乾燥、流動層乾燥など製剤一般の乾燥に用いられる何れの方法によってもよい。
【0027】
本発明の腸溶性顆粒及び腸溶製剤の製造は、例えば以下の工程により行うことができる。
(工程1:レイヤリング・分級工程)
結晶セルロースを転動流動層造粒機に入れ,薬物の懸濁液(精製水,薬物、ヒプロメロースおよびポリソルベート80)をスプレーしレイヤリングを行う。続いて乾燥を行った後、篩に通して分級を行う。
(工程2:中間層コーティング・分級工程)
第1工程で製造した分級品を転動流動層造粒機に入れ、中間層コーティング液(精製水、ヒドロキシプロピルセルロース、タルク、ステアリン酸マグネシウム)をスプレーし、中間層コーティングを行う。続いて乾燥を行った後、篩に通して分級を行う
(工程3:溶出制御層・分級工程)
第2工程で製造した分級品を転動流動層造粒機に入れ、コーティング液(精製水、アンモニオアルキルメタクリレートコポリマー、クエン酸トリエチル、ポリソルベート80およびモノステアリン酸グリセリン)をスプレーし、コーティングを行う。続いて乾燥を行った後、篩に通して分級を行う。
(工程4:腸溶性コーティング・分級工程)
第3工程で製造した分級品を転動流動層造粒機に入れ、腸溶性コーティング液(精製水、メタクリル酸コポリマーLD、ポリエチレングリコール、ポリソルベート80およびモノステアリン酸グリセリン)をスプレーし、腸溶性コーティングを行う。続いて乾燥を行った後、篩に通して分級を行う。
(工程5:破損防止層コーティング・分級工程)
第4工程で製造した分級品を転動流動層造粒機に入れ、破損防止層コーティング液(精製水、ポリエチレングリコールおよびD-マンニトール)をスプレーし、破損防止層コーティングを行う。続いて乾燥を行った後、篩に通して分級を行う。
(工程6:)
第5工程で製造した分級品をV型混合機に入れ、そこにD-マンニトール、結晶セルロース、クロスポビドン、ケイ酸アルミン酸マグネシウムおよびアスパルテームを入れ混合する。その後、ステアリン酸マグネシウムを入れ混合する。
(工程7:打錠工程)
第6工程で製造した混合顆粒をロータリー打錠機を用いて打錠する。
【実施例】
【0028】
以下に実施例、比較例および試験例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0029】
(実施例)
球形結晶セルロースを転動流動層造粒機(フロイント産業社製、SFC-MINI)に入れ、エソメプラゾールマグネシウム水和物、ヒプロメロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースおよびポリソルベート80を水に溶解・分散させた液を噴霧しながらコーティングした。得られた薬物層被覆粒子を乾燥後、ヒプロメロース、タルクおよびD-マンニトールを水に溶解・分散させた液を噴霧しながらコーティングした。得られた中間層被覆粒子を乾燥後、アンモニオアルキルメタクリレートコポリマー分散液(固形分30%)、クエン酸トリエチル、モノステアリン酸グリセリンおよびポリソルベート80を水に溶解・分散させた液を噴霧しながらコーティングした。得られた溶出制御層被覆粒子を乾燥後、メタクリル酸コポリマーLD分散液(固形分30%)、マクロゴール6000、モノステアリン酸グリセリン、ポリソルベート80および三二酸化鉄を水に溶解・分散させた液を噴霧しながらコーティングした。得られた腸溶層被覆粒子を乾燥、分級後、マクロゴール6000およびD-マンニトールを水に溶解させた液を噴霧しながらコーティングした。得られた破損防止層被覆粒子を乾燥、分級し、平均粒子径300μm、腸溶層破損防止層の膜厚が30μmの被覆微粒子を得た。
【0030】
【0031】
得られた顆粒にD-マンニトール・トウモロコシデンプン造粒品、クロスポビドン、アスパルテーム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムおよびステアリン酸マグネシウムを添加、混合し打錠用粉末を得た。ロータリー型打錠機(VELA5)にて打錠圧9kNで打錠し、直径10.0mmの錠剤を得た。
【0032】
【0033】
(比較例)
破損防止層であるマクロゴール6000およびD-マンニトールをコーティングしない代わりに、D-マンニトール・トウモロコシデンプン造粒品を増量した以外は実施例と同様の操作で錠剤を得た。
【0034】
(試験例)
実施例、比較例により得られた錠剤について、錠剤硬度および第一液による溶出性を確認した。
その結果を表3に示す。
【0035】
【表3】
以上の結果より、実施例の錠剤は、錠剤硬度が上昇することが判明した。さらに、打錠による腸溶性皮膜の破損を軽減できることが判明した。