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特許7064692蓄電装置、管理装置、及び蓄電装置の状態判定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-27
(45)【発行日】2022-05-11
(54)【発明の名称】蓄電装置、管理装置、及び蓄電装置の状態判定方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/48 20060101AFI20220428BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20220428BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20220428BHJP
   B60L 50/16 20190101ALI20220428BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20220428BHJP
【FI】
H01M10/48 P
H01M10/48 301
H02J7/00 Q ZHV
B60L3/00 S
B60L50/16
B60K1/04 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2017185064
(22)【出願日】2017-09-26
(65)【公開番号】P2019061847
(43)【公開日】2019-04-18
【審査請求日】2020-07-31
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福島 敦史
(72)【発明者】
【氏名】水田 芳彦
【審査官】辻丸 詔
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-523395(JP,A)
【文献】特開2002-181907(JP,A)
【文献】特開2007-223386(JP,A)
【文献】特開2017-076481(JP,A)
【文献】特開2013-057542(JP,A)
【文献】特開2014-022282(JP,A)
【文献】特開2015-035299(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/42-10/48
H02J 7/00
B60L 3/00
B60L 50/16
B60K 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電素子を備えた蓄電装置であって、
蓄電装置の2つの部位の温度をそれぞれ測定する第1及び第2の測温部と、
前記第1及び第2の各測温部から取得した各温度の温度差に基づいて前記蓄電素子の安定状態を判定する管理装置と、を備え、
前記蓄電素子が複数個集積して組電池を構成し、前記第1及び第2の各測温部は、前記組電池のうちの異なる蓄電素子の温度を測定し、
前記第1の測温部は、前記組電池のうちの放熱しやすい蓄電素子の温度を測定し、
前記第2の測温部は、前記組電池のうちの放熱しにくい蓄電素子の温度を測定し、
前記管理装置は、前記第1及び第2の各測温部により放熱しやすい前記蓄電素子と放熱しにくい前記蓄電素子のみ温度を取得し、取得した2つの前記蓄電素子の温度差に基づいて、前記蓄電素子の安定状態を判定する、蓄電装置。
【請求項2】
請求項1に記載の蓄電装置であって、前記第1の測温部は前記組電池の端部に位置する前記蓄電素子の温度を測定し、前記第2の測温部は前記組電池の中央部に位置する前記蓄電素子の温度を測定する蓄電装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の蓄電装置であって、
前記管理装置は、前記温度差とタイマを併用して、前記蓄電素子の安定状態を判定する蓄電装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の蓄電装置であって、
前記管理装置は、前記蓄電素子が安定状態の場合、前記蓄電素子の劣化状態又は寿命を判定する蓄電装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の蓄電装置であって、クランキングにより始動される内燃機関を備えた車両に搭載されており、
前記管理装置は、前記内燃機関の前記クランキングを実行する信号を受けたことを条件に前記蓄電素子の安定状態を判定する蓄電装置。
【請求項6】
蓄電素子を備えた蓄電装置の状態を判定する方法であって、
蓄電装置の異なる2つの部位の温度をそれぞれ測定し、前記2つの部位の温度の温度差情報に基づいて前記蓄電素子の安定状態を判定し、
前記蓄電装置の異なる2つの部位として、複数個集積した前記蓄電素子のうち、放熱しやすい蓄電素子と放熱しにくい蓄電素子のみ温度を測定し、測定した2つの前記蓄電素子の温度差に基づいて、前記蓄電素子の安定状態を判定する、蓄電装置の状態判定方法。
【請求項7】
請求項6に記載の蓄電装置の状態判定方法であって、
前記温度差とタイマを併用して、前記蓄電素子の安定状態を判定する、蓄電装置の状態判定方法。
【請求項8】
請求項6又は請求項7に記載の蓄電装置の状態判定方法であって、
前記蓄電素子が安定状態の場合、前記蓄電素子の劣化状態又は寿命を判定する、蓄電装置の状態判定方法。
【請求項9】
蓄電素子を管理する管理装置であって、
前記蓄電素子を備えた蓄電装置の異なる2つの部位の温度をそれぞれ測定する第1及び第2の測温部から取得した各温度の温度差に基づいて前記蓄電素子の安定状態を判定し、
前記蓄電装置の異なる2つの部位として、複数個集積した前記蓄電素子のうち放熱しやすい蓄電素子と放熱しにくい蓄電素子のみ前記第1及び第2の測温部により温度を測定し、前記第1及び第2の測温部から取得した2つの前記蓄電素子の温度差に基づいて、前記蓄電素子の安定状態を判定する、管理装置。
【請求項10】
請求項9に記載の管理装置であって、
前記温度差とタイマを併用して、前記蓄電素子の安定状態を判定する、管理装置。
【請求項11】
請求項9又は請求項10に記載の管理装置であって、
前記蓄電素子が安定状態の場合、前記蓄電素子の劣化状態又は寿命を判定する、管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示された技術は、蓄電装置の状態を判定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両には、車載電装品の電源や、車両の駆動源として使用される蓄電装置が搭載されている。蓄電装置は、一般に複数の蓄電素子を備えており、これらの蓄電素子の劣化状態等は、蓄電素子の内部抵抗を測定することで推定することができる。このため、蓄電装置には、電流・電圧を測定することで内部抵抗を算定する管理装置が設けられていることがある。
【0003】
蓄電素子の内部抵抗の測定値は蓄電素子の使用状況によって影響を受ける。例えば、大きな電流が流れているときには蓄電素子の温度が上昇し、蓄電素子の温度上昇に応じて内部抵抗の測定値も影響を受ける。通電が終了した直後では、蓄電素子内部の分極現象に起因して蓄電素子の端子電圧が正しい値からずれることが知られており、端子電圧のずれも内部抵抗の測定値の誤差要因となる。この分極現象は、大きな電流が流れなければ、時間の経過とともに消失して安定状態に至る。
【0004】
従来、蓄電装置が無電流状態になったことを検出すると、蓄電装置が無電流状態になったことを検出した時点からタイマによって経過時間をカウントし、所定の時間が経過したことをもって、蓄電素子が安定状態に至ったとみなして内部抵抗を測定し、内部抵抗に基づき蓄電素子の状態を推定するという技術が開発されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-149070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の技術によると、蓄電素子が安定状態に至ったか否かを、蓄電装置が無電流状態になったことを検出した時点以前の蓄電素子の使用状況とは無関係に経過時間のカウントに基づいて判断している。短時間しか蓄電素子に通電されなかった場合には、短時間で蓄電素子が安定状態に戻るにもかかわらず、予め定められた時間が経過するまで待たなければならない。
【0007】
本明細書に開示された技術は、タイマによる時間カウントに依拠しないで、蓄電素子が安定状態にあるか否かを判断可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
蓄電装置が2つの部位の温度をそれぞれ測定する第1及び第2の測温部を有し、管理装置が第1及び第2の測温部から取得した各温度の温度差に基づいて蓄電素子の状態を判定する。
【発明の効果】
【0009】
本構成では、タイマによる時間カウントに依拠しないで、蓄電素子の状態が安定したことを判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態1における車両の側面図
図2】蓄電装置の斜視図
図3】蓄電装置の分解斜視図
図4】蓄電装置の電気的構成を示すブロック図
図5】蓄電素子の温度の安定状態を判定する処理の流れを示すフローチャート
図6】実施形態2に係る蓄電装置の電気的構成を示すブロック図
図7】実施形態3に係る蓄電装置の電気的構成を示すブロック図
図8】実施形態4に係る蓄電装置の電気的構成を示すブロック図
図9】実施形態5に係る蓄電素子を示す一部切欠側面図
図10】蓄電装置のうち、異なる2つの電池の温度の経時変化を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施形態の概要>
本明細書で開示する蓄電装置は、蓄電装置の2つの部位の温度をそれぞれ測定する第1及び第2の測温部と、これらの第1及び第2の測温部から取得した各温度の温度差に基づいて蓄電素子の状態を判定する管理装置とを備える。
【0012】
蓄電装置の蓄電素子に電流が流れると、蓄電素子の内部において発熱が起こって内部温度が上昇する。電流が遮断されれば発熱は停止し、熱拡散と外部への放熱により、蓄電装置の全体は徐々に温度低下してゆく。この場合、蓄電装置の異なる部位では熱的な条件が様々に異なるから、温度が時間経過によりどのように変化するかは一様ではなく、場所によって温度差が大きいことがある。通電終了直後は場所による温度差が大きくても、時間の経過によってその温度差は縮小しつつ、最終的に全体が熱平衡に達する。
【0013】
図10は、蓄電装置に所定時間通電した後に通電を停止し、蓄電装置を放置した場合における、蓄電装置の異なる部位にある2つの蓄電素子の温度の経時変化の例を示す。符号Pで示す曲線は、蓄電装置のうち比較的に放熱しにくい部位にある蓄電素子の温度変化を示す。符号Qで示す曲線は、比較的に放熱しやすい部位にある蓄電素子の温度変化を示す。
【0014】
蓄電装置へ通電すると、放熱しにくい部位の蓄電素子の温度は、放熱しやすい部位にある蓄電素子の温度に比べて、速く上昇する。すなわち、放熱しにくい部位と、放熱しやすい部位との間には温度差が生じる。その後、通電による発熱量と、放熱量とが釣り合うことにより、各部位の温度は、温度差を残した状態で平衡に向かう。蓄電装置への通電を停止(符号Rで示す時刻)すると、熱拡散と外部への放熱により、各部位の温度は徐々に低下しながら、温度差が小さくなっていき、最終的に全体の温度が等しくなる熱平衡に向かう。
【0015】
蓄電装置の2つの部位において第1及び第2の測温部により温度を測定し、第1及び第2の測温部の温度差が所定の範囲に到達したことに基づいて蓄電装置の蓄電素子の状態を判定することができる。
【0016】
長時間使用されていない蓄電装置が充放電を開始しても、第1及び第2の測温部の温度差が所定の範囲内に留まっているうちは、蓄電装置の蓄電素子が安定状態にあると判定することができる。短時間だけ蓄電素子に電流が流れて、蓄電装置内部の温度分布や蓄電素子内部の状態に大きな変化が生じていないときには、各測温部における温度差が大きくならないから、早期に安定状態であることを判定できる。
【0017】
第1及び第2の測温部の少なくとも一方を蓄電素子の温度を測定するように設ければ良く、他方は蓄電装置のうちの蓄電素子とは離れた部位の温度を測定してもよい。この構成によれば、蓄電素子の温度が、ここから離れた部位の温度、すなわち蓄電素子の環境温度に近くなると、両測温部の温度差が小さくなるから、両測温部の温度差に基づき蓄電素子の状態を判定することができる。
【0018】
本構成によれば、蓄電装置の2つの部位の温度差に基づいて、蓄電素子の状態を判定するので、蓄電装置が無電流になってからの時間を継続的にカウントするためのタイマを不要にすることができる。車両の駐車中には蓄電装置の管理装置が低消費電力状態に移行しなくてならない場合でも、継続的に動作させる必要があるタイマを使用しないため、消費電力を抑えることができる。
【0019】
蓄電装置が外気温の影響を受けやすい箇所に設置されていたり、車両のエンジンが蓄電装置の近くにある等、不規則なあるいは蓄電装置に対して不均一な熱的影響を受ける箇所に蓄電装置が設けられる場合には、従来のようにタイマで監視するだけでは誤判定する可能性がある。例えば、外気温の影響やエンジンの熱的影響によって蓄電装置が配置された場所の温度条件が不規則に変化する場合には、タイマのカウントによって蓄電素子が安定状態に達したと判定されたとしても、蓄電素子の温度が未だ高く安定状態に達しているとはいえないことがある。また、外気温やエンジンの熱的影響によって蓄電装置のうちの一部分が他に比べてより高温になった場合には、タイマのカウントによって蓄電素子が安定状態に達したとみなされても、実際には蓄電素子の全体が熱的に安定したとは言えない。
【0020】
本構成によれば、蓄電装置の2つの部位の温度差に基づいて蓄電素子の状態を判定するので、外部の不規則な熱的影響による誤判定が生じにくい。
【0021】
安定状態であるとの判定に応じて蓄電素子の内部抵抗を推定し、さらに蓄電素子の温度補正をする場合には、ばらつきが少ない温度に基づいた温度補正を行うことができるから、温度補正の精度を向上させることができる。以下に、詳細に説明する。蓄電素子の内部抵抗は温度依存性があるので、蓄電素子の内部抵抗を推定する場合には温度補正を行うことが一般に行われている。複数の蓄電素子の温度が安定せず、各蓄電素子の温度にばらつきがある場合には、どの温度で補正すればよいのかが分からないため、蓄電素子の内部抵抗を推定する際の精度が低下する虞がある。本構成によれば、蓄電素子の温度が安定したか否かを判定することができるので、蓄電素子の内部抵抗の温度補正の精度を向上させることが可能となり、蓄電素子の内部抵抗を精度よく推定できる。
【0022】
上記の蓄電装置では、前記蓄電素子を複数個集積させて組電池を構成した場合、前記第1及び第2の各測温部が前記組電池のうちの異なる蓄電素子の温度を測定することができる。
【0023】
本構成によれば、組電池全体の中での各蓄電素子の温度の偏りに基づいて蓄電素子の状態を判定できるから、特に組電池が同種・同一容量の蓄電素子を集積させて構成されている場合に、蓄電素子の状態をより正確に判定することができる。この場合、第1及び第2の測温部は、組電池の中央部に位置する蓄電素子と、組電池の端部に位置する蓄電素子とに設けることが好ましい。
【0024】
第1及び第2の各測温部は、同一の蓄電素子のうちの異なる部位に設けてもよい。同一の蓄電素子であっても、内部温度の偏りや、温度が時間経過によりどのように変化するかは蓄電素子の安定度と密接な関係があるから、同一の蓄電素子の異なる部位の温度差に基づいてその蓄電素子の状態を判定することができる。
【0025】
蓄電装置が、クランキングにより始動される内燃機関を備えた車両に搭載される場合、前記管理装置は、内燃機関のクランキングを実行する信号を受けたことを条件に蓄電素子の状態を判定することが好ましい。
【0026】
上記構成によれば、クランキング直前に蓄電素子の状態を判定することになるから、このクランク直前の時点で蓄電素子が安定状態にあると判定されたときには、引き続くクランキング時に流れる電流を利用して内部抵抗を推定することができる。このため、大電流で内部抵抗を推定することになるから、蓄電素子の内部抵抗を推定する際の精度を、向上させることができる。
【0027】
<実施形態1>
実施形態1について、図1図5を参照して説明する。複数の同一部材については、一の部材にのみ符号を付し、他の部材については符号を省略することがある。
1.蓄電装置10の説明
車両1は、図1に示すように、蓄電装置10を備えている。蓄電装置10は、図2に示すように、箱形の電池ケース31を有しており、電池ケース31内には、複数の電池11(蓄電素子)からなる組電池14や制御基板38が収容されている。以下の説明において、図2および図3を参照する場合、電池ケース31が設置面に対して傾きなく水平に置かれた時の電池ケース31の上下方向をY方向とし、電池ケース31の長辺方向に沿う方向をX方向とし、電池ケース31の奥行き方向をZ方向として説明する。
【0028】
電池ケース31は、図3に示すように、上方に開口するケース本体33と、複数の電池11を位置決めする位置決め部材34と、ケース本体33の上部に装着される中蓋35と、上蓋36とを備えて構成されている。ケース本体33内には、図3に示すように、各電池11が個別に収容される複数のセル室33AがX方向に並んで設けられている。
【0029】
位置決め部材34は、図3に示すように、複数のバスバー37が上面に配置されており、位置決め部材34がケース本体33内に配置された複数の電池11の上部に配置されることで、複数の電池11が、位置決めされると共に複数のバスバー37によって直列に接続される。
【0030】
中蓋35は、図2に示すように、平面視略矩形状をなしている。中蓋35のX方向両端部には、図示しないハーネス端子が接続される一対の端子部32P、32Nが設けられている。一対の端子部32P、32Nは、例えば鉛合金等の金属からなり、32Pが正極側端子部、32Nが負極側端子部である。
【0031】
中蓋35の上面には、収容部35Aが設けられている。制御基板38は、中蓋35の収容部35Aの内部に収容されており、中蓋35がケース本体33に装着されることで、電池11と制御基板38とが接続される。また、上蓋36は、中蓋35の上部に装着され、制御基板38を収容した収容部35Aの上面を閉じる。
【0032】
図4を参照して、蓄電装置10の電気的構成を説明する。蓄電装置10は、電池11と、測温部15(第1の測温部に相当)と、参照測温部13(第2の測温部に相当)と、管理装置16と、を有する。
【0033】
組電池14は、直列接続された同一容量の複数(本実施形態では4つ)の電池11から構成されている。複数の電池11は並列方向(矢線Aで示す方向)に並んでいる。
【0034】
電池11は例えば扁平な直方体形状をなしており、いわゆる角型電池とされる。電池11は金属製のケース12内に、図示しない蓄電要素が収容されている。電池11としては、例えば、正極にリン酸鉄系材料、負極にグラファイトを用いたリチウムイオン二次電池を用いることができるが、上記の構成に限定されない。
【0035】
電池11の電池電圧は約3.5V、組電池14の総電圧は約14Vであり、蓄電装置10の電圧階級は12Vである。蓄電装置10は車両駆動用の内燃機関であるエンジン2を始動するためのものとして例示してある。
【0036】
組電池14を構成する複数の電池11のうち、並列方向の一の端部(図4における上端部)に位置する電池11Aの外面には、参照測温部13が取り付けられている。組電池14を構成する複数の電池11のうち、並列方向の中央部に位置する電池11B(図4において、上端部から三番目であり且つ下端部から二番目)の外面には、測温部15が取り付けられている。参照測温部13、及び測温部15はサーミスタ、熱電対等、公知の測温部材を用いることができる。本実施形態ではサーミスタが用いられている。
【0037】
なお、組電池14の中央部とは、電池11の個数が奇数(2n-1個、nは自然数)である場合には、組電池14の双方の端部から数えてn番目の電池11をいい、電池11の個数が偶数(2n個、nは自然数)の場合には、組電池14の一方の端部から数えてn番目の電池11、及び、他方の端部から数えてn番目の電池11の少なくとも一方をいう。本実施形態においては、組電池14を構成する電池11の個数は4個(偶数)なので、図4において、組電池14の下端部から数えて二番目の電池11Bが、並列方向について中央部に位置するようになっている。
【0038】
参照測温部13が取り付けられた電池11Aは、組電池14の端部に位置しているので、熱が外部に放散されやすい。このため、蓄電装置10に通電した時に、組電池14を構成する電池11の中で最も温度変化(低温側の平衡温度と高温側の平衡温度との差)が小さいものの一つとなっている。
【0039】
測温部15が取り付けられた電池11Bは、組電池14の中央部に位置しているので、通電時に発生した熱が放散されにくい。このため、蓄電装置10に通電した時に、組電池14を構成する電池11の中で最も温度変化(低温側の平衡温度と高温側の平衡温度との差)が大きいものの一つとなっている。
【0040】
蓄電装置10は、組電池14を管理する管理装置16を備える。管理装置16は、中央処理装置であるCPU17(コンピュータの一例)と、メモリ18と、通信部19と、を備える。
【0041】
上記した参照測温部13、及び測温部15は、信号線20によって、管理装置16に電気的に接続されている。参照測温部13によって測定された電池11Aの温度である参照温度と、測温部15によって測定された電池11Bの温度である測定温度は、管理装置16に取り込まれる。
【0042】
メモリ18は、例えば、フラッシュメモリやEEPROM等の不揮発性メモリである。メモリ18には、電池11を管理するためのプログラムや、プログラムの実行に必要なデータが記憶されている。また、メモリ18には、参照温度と測定温度との間の温度差を算出し、参照温度と測定温度との間の温度差が所定の基準値よりも小さいかどうかを判断するプログラムや、上記の基準値が記憶されている。
【0043】
CPU17は、参照測温部13から参照温度を取得するとともに測温部15から測定温度を取得し、両温度の温度差を算出する。
【0044】
蓄電装置10は、電源ライン22、グランドライン23を介して、セルモータ25、及び充電装置26と接続されている。セルモータ25、及び充電装置26は、車両ECU27(Electronic Control Unit)によって制御される。車両ECU27は、通信線28を介して管理装置16の通信部19と接続され、両者の間で通信可能である。
【0045】
セルモータ25は、イグニッションスイッチ24がオンされてクランキングを実行させるための信号が車両ECU27に与えられると、車両ECU27からの信号によって通電され、内燃機関であるエンジン2を始動させるためにクランキングを行う。
【0046】
充電装置26は組電池14を充電する。本実施形態では、充電装置26は車両のエンジン2によって駆動される発電機を含む。充電装置26は、車両1の外部に配された外部電源から電力の供給を受けてもよい。
【0047】
管理装置16は、測温部15の出力と、参照測温部13の出力とに基づいて、以下に説明するように、電池11の状態を判定する。
【0048】
2.電池11の状態を判定する処理
図5は、管理装置16が電池11の状態を判定する処理のフローチャートである。イグニッションスイッチ24がオンされると、その信号を受けて車両ECU27は、セルモータ25を駆動することに先立ち、図5の処理を実行する。
【0049】
CPU17は参照測温部13から参照温度T2を取得し(S10)、測温部15から測定温度T1を取得する(S20)。CPU17は測定温度T1と参照温度T2との温度差ΔT(=|T2-T1|)を計算し、この温度差ΔTを予めメモリ18に記憶されていた基準値Trefと比較する(S30)。
【0050】
温度差ΔTが基準値Tref以下の場合は、CPU17は各電池11間で温度の偏りがない安定状態に至っていると判定し、安定状態フラグを設定(S40)して処理を終える。基準値Trefを越えているときは、同フラグを立てることなく処理を終える。その後、CPU17は直ちにセルモータ25によってクランキングを実行させてエンジン2を始動させる。
【0051】
CPU17は、安定状態フラグが立てられている場合には、その後のクランキング時に流れる電流と、電池11の端子電圧を取得し、電池11の端子電圧に基づき電池11の内部抵抗を算定する。CPU17は、安定状態フラグが立てられた時点での電池11の温度T1,T2を取得済みであり、電池11の温度T1,T2の温度差ΔTは比較的小さい(ΔT≦Tref)から、電池11の温度T1又はT2を利用して、算定した内部抵抗を所定の標準温度における内部抵抗に換算(温度補正)して、標準温度における内部抵抗を算出する。この標準温度における内部抵抗は、電池11の劣化状態等を反映しているから、その標準温度における内部抵抗の情報を加味してCPU17は電池11ないし組電池14の劣化状態を判定し又は寿命の判定を行う。
【0052】
本構成によれば、管理装置16は、測定温度T1と参照温度T2との温度差ΔTに基づいて電池11の状態を判定するので、無電流状態になったことを検出して起動されるタイマによって所定時間が経過することを計測することなく、状態判定が可能である。
【0053】
従って、継続的にタイマを起動しておく必要がなく、必要なときに各温度T1,T2を取得すればよいから、蓄電装置10のシステムをオフにしたり、間欠的にあるいは何らかのイベントが生じたときに各温度T1,T2を取得したりする低消費電力状態にしておくこともできる。
【0054】
本実施形態では、複数個の電池11を集積させて組電池14を構成しており、参照測温部13は組電池14を構成する電池11Aの温度を測定し、測温部15は電池11Aとは異なる電池11Bの温度を測定する。
【0055】
組電池14内の異なる位置に配された電池11の熱的な条件はそれぞれ異なる。このため、組電池14に通電されると異なる電池11間で温度差が生じる場合がある。本構成によれば、組電池14全体の中での電池11A,11B間の温度差に基づいて電池11の状態を判定できるから、特に組電池14が同種・同一容量の電池11を集積させて構成されている場合に、電池11の状態をより正確に判定することができる。
【0056】
本実施形態においては、参照測温部13は組電池14の端部に位置する電池11Aの温度を測定し、測温部15は組電池の中央部に位置する電池11Bの温度を測定する。上記したように、電池11Aは、蓄電装置10に通電した時に、組電池14を構成する電池11の中で最も高温になりやすい。一方、電池11Bは、蓄電装置10に通電した時に、組電池14を構成する電池11の中で最も高温になりにくい。このため、電池11Aと電池11Bとの間の温度差は、組電池14を構成する4個の電池11間の各種の温度差のうち最も大きいものと考えられる。
【0057】
従って、他の電池11間の温度差を利用するより、正確に組電池14の状態を判断することができる。
【0058】
電池11Aの参照温度T2と電池11Bの測定温度T1との温度差ΔTが基準値Tref以下になったと判定された場合には、組電池14を構成する電池11の温度の偏りが小さくなっていることを意味する。このため、管理装置16が取得した電池11Aの参照温度T2又は電池11Bの測定温度T1を用いることにより、電池11の内部抵抗の温度補正を精度よく行うことができる。
【0059】
測定温度T1と参照温度T2との温度差ΔTの閾値となる所定の基準値Trefは、組電池14に含まれる電池11の個数、電池11の配列の仕方、電池11の構造、組電池14を冷却するための装置の有無等に応じて、適切な値が設定される。基準値Tref(閾値)は、予め実験を行うことにより設定することができる。本実施形態のように、組電池14のうち、並列方向の端部に参照測温部13が配され、中央位置に測温部15が配される構成においては、基準値Trefとしては、1℃以下が好ましく、0.5℃以下が更に好ましい。
【0060】
蓄電装置10は、クランキングにより始動されるエンジン2が搭載された車両1に搭載されており、管理装置16は、エンジン2のクランキングを実行する信号を受けたことを条件に、電池11の状態を判定する。これにより、管理装置16は、クランキング直前に電池11の状態を判定することになる。クランキング直前の時点で電池11が安定状態にあると判定された場合には、クランキング時に流れる電流を利用して内部抵抗を推定することが好ましい。
【0061】
エンジン2のクランキング時には、比較的に大きな電流が蓄電装置10に流れるので、電池11の内部抵抗を算出する際の精度を、向上させることができる。
【0062】
電池11の状態が安定であると判定された場合には、車両1が走行中であっても、電池11の内部抵抗を精度よく推定することができる。
【0063】
<変形例>
次に、本実施形態の変形例を説明する。イグニッションスイッチ24は、アクセサリー位置、オン位置、スタート位置を有する。イグニッションスイッチ24がアクセサリー位置にセットされると、ラジオ、オーディオ機器等の車載の付属機器の電源がオンされる。イグニッションスイッチ24がオン位置にセットされると、エンジン2の点火系機器の電源がオンされる。イグニッションスイッチ24がスタート位置にセットされると、クランキングを実行させる信号が送信される。
【0064】
イグニッションスイッチ24がアクセサリー位置、又はオン位置にセットされると、車両ECU27は、管理装置16のCPU17に、電池11の状態を判定する処理を実行することを命令する。電池11の状態を判定する処理及び、その後の処理は前述した実施形態1と同様なので、重複する説明を省略する。
【0065】
このように、乗員がエンジン2を始動させず、イグニッションスイッチ24をアクセサリー位置又はオン位置にセットしてラジオ、オーディオ機器等を使用する状態において、電池11の状態を判定してもよい。
【0066】
<実施形態2>
実施形態2について図6を参照して説明する。本実施形態に係る蓄電装置40においては、組電池14に対して矢線Bで示す方向に沿って、冷風が吹き付けられるようになっている。冷風は、車両1のエアコンディショナで生成された冷気から分流されたものであってもよく、専用の冷却装置からの冷風であってもよい。また、車両1の外部から導入した外気を用いてもよい。
【0067】
図6における最上部に配された電池11Aは、冷風により最も冷却されやすいものとなっている。このため、蓄電装置40に通電した場合に、組電池14を構成する電池11の中で最も温度変化(温度が低下する速度)が小さい。この電池11Aの外面に参照測温部13が配されている。
【0068】
図6における最下部に配された電池11Cは、冷風の最も風下側に位置しているので、最も冷却効率が低い。このため、蓄電装置40に通電した場合に、組電池14を構成する電池11の中で最も温度変化(温度が低下する速度)が大きい。この電池11Cの外面に測温部15が配されている。
【0069】
上記以外の構成については、実施形態1と略同様なので、同一部材については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0070】
本実施形態においては、電池11Aと電池11Cとの温度差は、組電池14を構成する電池11間の温度差のうちで最も大きいものとなる。本実施形態では、電池11Aと電池11Cとの温度差に基づいて電池11の状態を判定するので、電池11Aと電池11Cとの温度差が所定の基準値以下になったことを検出したときは、組電池14を構成する他の各電池11間の全ての温度差は所定の基準値よりも小さいことを意味する。従って、検出誤差や比較誤差等を考慮して基準値を比較的大きくとっても、各電池11の状態を正確に判断することができる。
【0071】
<実施形態3>
本実施形態に係る蓄電装置50においては、図7に示すように、参照測温部13は管理装置16に配されている。詳細には、管理装置16は蓄電装置50の電池ケース31内部に設けられており、管理装置16を構成する制御基板38上に参照測温部13が配されている。CPU17は、参照測温部13によって測定された管理装置16内部の温度T2を参照温度として取得する。
【0072】
上記以外の構成については、実施形態1と略同様なので、同一部材については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0073】
管理装置16が蓄電装置50の電池ケース31内部に設けられている場合、管理装置16の温度環境は、組電池14の温度環境と略同一になる。組電池14が充放電によって温度が上昇しても、充放電が終了して組電池14の温度が低下すると、管理装置16の内部温度に近くなる。この結果、組電池14のうちの電池11に設けられた測温部15の温度は、管理装置16の内部温度を測定している参照測温部13の温度に近くなり、結局、測温部15と参照測温部13との温度差が小さくなるから、この温度差が基準値Tref以下になったときに組電池14が安定状態にあると判断される。
【0074】
この構成によると、例えば蓄電装置50の外部の環境温度が高いときには、組電池14や管理装置16の内部温度も同様に高くなり、両測温部13,15の温度差ΔTは環境温度の影響を排除した値になるから、電池11の状態判定の精度を高めることができる。
【0075】
<実施形態4>
実施形態4について、図8を参照して説明する。本実施形態に係る車両1は蓄電装置60を搭載した電気自動車であって、蓄電装置60からの電力によって駆動されるモータによって走行する。車両1にはエンジン2及びセルモータ25は搭載されていない。イグニッションスイッチ24に代わってパワースイッチ61が配されている。充電装置26は、車両1の外部に設けられた外部電源から電力の供給を受けて、蓄電装置60を充電する。
【0076】
パワースイッチ61のオン操作により車両1のシステムが起動されると、車両ECU27は、管理装置16のCPU17に電池11の状態を判定する処理を実行することを命令する。
【0077】
上記以外の構成については、実施形態1と略同様なので、同一部材については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0078】
車両1のシステムがオンされると、実施形態1と同様に管理装置16は、測温部15から電池11Bの温度T1を取得し、参照測温部13から電池11Aの温度T2を取得する。管理装置16は、測温部15から取得した測定温度T1と、参照測温部13から取得した参照温度T2と、の温度差ΔTから、蓄電装置60の電池11の状態を判定する。その後、実施形態1と同様に、蓄電装置60が安定状態にあると判断されたときには、電池11の内部抵抗を推定し、電池11の温度補正を行う。
【0079】
<変形例>
上記実施形態4では、電気自動車のパワースイッチ61がオンされたときに蓄電装置60の状態を判定する構成としたが、以下に述べる実施形態4の変形例では蓄電装置60が充電される直前に、電池11の状態を判定するようにしている。
【0080】
充電装置26に外部電源が接続されると、車両ECU27は、蓄電装置60の充電が可能な状態になったと判断し、管理装置16に、蓄電装置60の電池11の状態を判定する処理を実行することを命令する。これにより、実施形態4と同様に、温度T1、T2を取得して温度差ΔTを計算し、ΔTを予めメモリ18に記憶されていた基準値Trefと比較する。温度差ΔTが基準値Tref以下である場合には、安定状態フラグを設定して処理を終え、基準値Trefを越えているときは、同フラグを立てることなく処理を終える。その後、CPU17は充電装置26によって蓄電装置60を充電させる。
【0081】
本実施形態によれば、管理装置16は、蓄電装置60を充電する直前に電池11の状態を判定することになる。この充電直前の時点で電池11が安定状態にあると判定された場合には、充電時に流れる電流を利用して内部抵抗を推定することができる。蓄電装置60の充電時には、比較的に大きな電流が蓄電装置60に流れるので、電池11の内部抵抗を推定する際の精度を向上させることができる。
【0082】
<実施形態5>
実施形態5について、図9を参照しつつ説明する。本実施形態の電池71は、ケース72の内部に蓄電要素74が収容されている。参照測温部73は、電池71のケース72の上壁の外面に取り付けられて電池71の外面の温度T2を測定する。
【0083】
測温部75は、電池71のケース72の内部に取り付けられている。測温部75は、ケース72の下壁よりもやや上方の位置に配されている。測温部75は、ケース72の内部の任意の部位に、必要に応じて配置することができる。測温部75は、電池71の内部の温度T1を測定する。測温部75は、蓄電要素74の温度を測定してもよいし、ケース72の内面の温度を測定してもよい。測温部75は、ケース72の内部に配された任意の部材の温度を測定することになる。
【0084】
1つの電池71であっても部位ごとに発熱量や放熱性は異なるので、通電直後においては、内部温度に偏りが生じたり、内部温度と外部温度との間に温度差が生じたりする。内部温度の偏りや、内部と外部との温度差は、通電終了後、時間が経過することにより温度差は縮小し、最終的に熱平衡に達する。
【0085】
電池71の内部温度の偏りや、電池71の温度が時間経過によりどのように変化するかは電池71の安定状態と密接な関係があるから、同一の電池71の異なる部位の温度を測定し、その温度差に基づいて電池71の状態を判定することができる。
【0086】
<他の実施形態>
本明細書に開示された技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではない。例えば次のような実施形態も本明細書に開示された技術の範囲に含まれる。
【0087】
(1)実施形態1~4では、1個の蓄電装置を構成する複数の蓄電素子のうち、異なる2個の蓄電素子に第1及び第2の測温部が配される構成としたが、これに限られず、1個の蓄電装置を構成する複数の蓄電素子のうち、異なる3個以上の蓄電素子のそれぞれに測温部を配し、測温部が配された3個以上の蓄電素子の中から選ばれた2個の蓄電素子の温度差に基づいて蓄電素子の状態を判定してもよい。2個の蓄電素子の温度差に基づくとは、前述した実施形態において示したように温度差ΔTと基準値Trefとの大小関係を判断するに限らず、例えば温度差ΔTに数学的処理を加えた値を算出し、その値に基づいて判断することを含む。
【0088】
(2)第1及び第2の測温部は、NTCサーミスタや、PTCサーミスタ、熱電対等でもよく、非接触タイプの温度センサであってもよよい。
【0089】
(3)実施形態1~5に係る蓄電素子は、角型であったが、これに限られず、円筒型、ラミネートフィルムを接合してなる袋形状でもよい。
【0090】
(4)実施形態1~3に係る蓄電装置10、40、60は動力源としてエンジン2が用いられる車両1に搭載される構成とし、実施形態4に係る蓄電装置50は動力源としてモータが用いられる車両1に搭載される構成としたが、これに限られず、本明細書に開示された技術は、動力源としてエンジンとモータが用いられる車両(例えば、HEV)、又はフォークリフト、電動工具、スマートフォン、PCなど、電池が使われる装置等において、電池の安定状態判定が必要なシステムに適用することができる。
【0091】
(5)実施形態1~5に係る蓄電装置は、4個の蓄電素子を備える構成としたが、これに限られず、1個の蓄電装置は、1個の蓄電素子を備える構成としてもよく、また、2個~3個又は5個以上の蓄電素子を備える構成としてもよい。
【0092】
(6)蓄電装置のうち、ハーネス端子が接続される端子部、制御基板、バスバーなど、蓄電素子の充放電によって温度が変化する2つの部位の温度を測定し、2つの部位の温度差に基づいて蓄電素子の状態を判定してもよい。
【0093】
(7)実施例2においては、組電池14の電池11に冷風を吹き付けることによって電池11を冷却したが、これに限られず、ペルチェ素子、水冷ジャケットなど、電池11に接触させて電池11を冷却する装置を用いてもよい。
【0094】
(8)実施形態1~5では、タイマで時間をカウントせずに蓄電素子の状態を判定する構成としたが、これに限られず、蓄電素子の状態を判定する際にタイマを併用してもよい。例えば、蓄電装置の2つの部位の温度差が、判定基準と同じか又はわずかに小さいと判断された場合には、所定の時間だけタイマによって限定的に時間をカウントし、所定の時間が経過した後に再度、蓄電装置の2つの部位の温度差に基づいて蓄電素子の状態を判定してもよい。
【0095】
(9)本明細書に開示された技術は、蓄電素子を備えた蓄電装置が有するコンピュータに、蓄電装置の2つの部位の温度の温度差情報に基づいて蓄電素子の状態を判定する処理を実行させる蓄電装置の状態判定プログラムに適用してもよい。
また、本明細書に開示された技術は、上記の状態判定プログラムを記憶した、コンピュータに読み取り可能な記憶媒体に適用してもよい。
【符号の説明】
【0096】
1: 車両
2:エンジン(内燃機関の一例)
10,40,50,60: 蓄電装置
11、71: 電池
11A: 電池
11B: 電池
11C: 電池
13: 参照測温部(第2の測温部の一例)
14: 組電池
15: 測温部(第1の測温部の一例)
16: 管理装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10