(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-27
(45)【発行日】2022-05-11
(54)【発明の名称】車両用蓄電装置
(51)【国際特許分類】
H01M 10/04 20060101AFI20220428BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20220428BHJP
H01M 10/615 20140101ALI20220428BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20220428BHJP
H01M 10/647 20140101ALI20220428BHJP
H01M 10/654 20140101ALI20220428BHJP
H01M 10/6552 20140101ALI20220428BHJP
H01M 10/6555 20140101ALI20220428BHJP
H01M 10/6563 20140101ALI20220428BHJP
H01M 10/6571 20140101ALI20220428BHJP
H01M 10/658 20140101ALI20220428BHJP
H01M 50/204 20210101ALI20220428BHJP
H01M 50/249 20210101ALI20220428BHJP
【FI】
H01M10/04 W
H01M10/613
H01M10/615
H01M10/625
H01M10/647
H01M10/654
H01M10/6552
H01M10/6555
H01M10/6563
H01M10/6571
H01M10/658
H01M50/204 401H
H01M50/249
(21)【出願番号】P 2018141486
(22)【出願日】2018-07-27
【審査請求日】2021-02-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089004
【氏名又は名称】岡村 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】花岡 輝彦
(72)【発明者】
【氏名】増田 渉
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 敏貴
(72)【発明者】
【氏名】大路 潔
【審査官】藤原 敬士
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-143281(JP,A)
【文献】国際公開第2012/020614(WO,A1)
【文献】特開2013-101773(JP,A)
【文献】特開2019-192380(JP,A)
【文献】特開2019-192381(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04
H01M 10/60 - 10/667
H01M 50/20 - 50/298
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直方体形状のケース内に、電力を蓄える蓄電体と、前記蓄電体の外周を覆う断熱部材と、前記蓄電体を温めるためのシート状のヒータと、前記蓄電体の熱を前記ケースに移動させるためのシート状のヒートパイプを備えた複数の蓄電池を有する車両用蓄電装置において、
前記蓄電池の前記蓄電体は、複数の扁平状の巻回体の平面部同士を対向状に近接させて構成され、
前記巻回体は、正極箔と負極箔がセパレータを介して水平軸心周りに扁平状に巻回されて外周を絶縁部材に覆われ、且つ1対の前記平面部には前記巻回体を平面部側から見て一致しない位置で当接するように前記ヒータが配設され、
前記ヒートパイプは、前記ヒータに当接しない位置で前記対向状に近接させた平面部に当接する吸熱部と、前記吸熱部から前記断熱部材の外側に延びて前記ケースの内壁に当接する放熱部を備えたことを特徴とする車両用蓄電装置。
【請求項2】
前記蓄電体を構成する全ての前記巻回体の1対の前記平面部に、前記吸熱部が夫々当接することを特徴とする請求項1に記載の車両用蓄電装置。
【請求項3】
複数の前記蓄電池を所定の間隔を空けて整列させて前記蓄電池の間に形成された冷却風通路を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載する車両用蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、エンジンと電動モータによって駆動輪を駆動して走行するハイブリッド車両が広く利用されている。ハイブリッド車両は、エンジンと電動モータを車両の限られたスペースに搭載し、主としてエンジンで走行する。それ故、電動モータを駆動する場面は限られており、電動モータを駆動して走行するための電力を蓄える蓄電装置は小型で蓄電容量が小さいものが採用されている。
【0003】
一方、走行中には二酸化炭素等を排出しない電気自動車(Electric Vehicle:EV)についても関心が高まっている。EVは、電動モータと、電動モータを駆動して走行するための電力を蓄える蓄電装置を搭載しており、1回の充電で走行可能な距離を長くするためにハイブリッド車両よりも大きい蓄電容量ものが採用されている。また、蓄電装置は、制動装置や操舵装置、前照灯やエアコン等の電装品を作動させる電力も供給する。
【0004】
ハイブリッド車両やEVの蓄電装置は、複数の蓄電池によって構成されている。蓄電池には、例えばアルミ合金製の直方体形状のケース内に正負の電極箔と電解液を密閉状に収容して構成された角型のリチウムイオン二次電池が使用されている。そして、直列に接続された複数の角型のリチウムイオン二次電池によって、電動モータを駆動するための高い出力電圧を有する蓄電装置が構成されている。EVの蓄電装置では、複数のリチウムイオン二次電池を並列に接続すると共に直列に接続して、大きい蓄電容量且つ高い出力電圧を実現している。
【0005】
蓄電装置を構成するリチウムイオン二次電池には、その優れた性能を発揮できる使用温度域があり、この使用温度域外での充放電は性能を発揮できないばかりでなく劣化を進行させる虞がある。そのため、蓄電池は、外気温度が低い場合にその影響を受け難くする必要があり、冷間時には使用温度域の下限温度よりも低温にならないように加温が必要である。また、蓄電池は、充放電時に発熱するので使用温度域の上限温度を超えないように冷却する必要がある。
【0006】
蓄電装置を温める技術として、例えば特許文献1のように、角型の蓄電池の集合体底部側に配設されたヒータによって温める技術が知られている。また、特許文献2のように、セパレータ介して正極箔と負極箔を交互に重ねて絶縁フィルムで密封したラミネート型の蓄電池の間に、シート状のヒータを配設する技術が知られている。一方、蓄電装置の冷却技術として、送風ファン等によって冷却風を蓄電池の周囲に流通させることにより蓄電池の表面からの放熱を促進させる技術が知られている。
【0007】
角型の蓄電池で構成された蓄電装置を温める場合、特許文献1のように、ヒータをケースに近接又は当接するように配設し、通電により発生するヒータのジュール熱をケースに伝えて蓄電池を温めるので、特許文献2のように電極箔の加温を効率的に行うことが困難である。具体的には、電極箔以外にケース等の熱容量があるため、ヒータの熱が正負の電極箔の加温以外にも使われる。
【0008】
また、ヒータの熱を逃がさないために、及び外気温度の影響を小さくするために、ヒータと共に蓄電池を断熱部材で覆うことが考えられるが、ヒータはケースの所定の面から温めるので、電極箔を均一に温めることが困難である。一方、蓄電池の冷却は、冷却風によって蓄電池のケースの表面からの放熱を促進するので、ヒータと共に蓄電池を断熱部材で覆うと放熱が妨げられて冷却できない。
【0009】
そのため、ケース内に、電力を蓄えるための蓄電体と、蓄電体の外周を覆う断熱部材と、蓄電体を温めるためのシート状のヒータと、蓄電体の熱をケースに移動させるためのシート状のヒートパイプを備えた角型の蓄電池を有する車両用蓄電装置を、本出願人は既に提案している(特願2018-81169号等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2008-103207号公報
【文献】特許第5609799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記のように、EVの蓄電装置には高い出力電圧と大きい蓄電容量が要求される。ハイブリッド車両の蓄電装置は、EVの蓄電装置と同程度の高い出力電圧が要求されるが、EVの蓄電装置よりも小さい蓄電容量である。現状、蓄電池の製造コストは安価ではないので、EVの蓄電装置に使用する蓄電池とハイブリッド車両の蓄電装置に使用する蓄電池をある程度共通化して製造コストの低減を図っている。
【0012】
例えば、セパレータを介して正極箔と負極箔を巻回した巻回体を形成し、角型の蓄電池の蓄電体を複数の巻回体で構成してケースに収容し、これら複数の巻回体の接続態様によってEV用の蓄電池とハイブリッド車両用の蓄電池とに作り分ける。複数の巻回体を並列接続すれば、蓄電容量が大きいEV用の蓄電池を形成できる。また、複数の巻回体を直列接続すれば、高い出力電圧のハイブリッド車両用の蓄電池を形成できる。
【0013】
このような複数の巻回体で構成された蓄電体を有する角型の蓄電池においても、蓄電体を加温及び冷却により適切な温度に調整する必要がある。しかし、近接する巻回体との間に絶縁のための部材が配設されるので巻回体間で伝熱し難く、蓄電体の全ての巻回体を均一に加温、冷却することができなかった。
【0014】
本発明の目的は、複数の巻回体で構成された蓄電体の加温と冷却を均一に行うことができる蓄電池を備えた車両用蓄電装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1の発明は、直方体形状のケース内に、電力を蓄える蓄電体と、前記蓄電体の外周を覆う断熱部材と、前記蓄電体を温めるためのシート状のヒータと、前記蓄電体の熱を前記ケースに移動させるためのシート状のヒートパイプを備えた複数の蓄電池を有する車両用蓄電装置において、前記蓄電池の前記蓄電体は、複数の扁平状の巻回体の平面部同士を対向状に近接させて構成され、前記巻回体は、正極箔と負極箔がセパレータを介して水平軸心周りに扁平状に巻回されて外周を絶縁部材に覆われ、且つ1対の前記平面部には前記巻回体を平面部側から見て一致しない位置で当接するように前記ヒータが配設され、前記ヒートパイプは、前記ヒータに当接しない位置で前記対向状に近接させた平面部に当接する吸熱部と、前記吸熱部から前記断熱部材の外側に延びて前記ケースの内壁に当接する放熱部を備えたことを特徴としている。
【0016】
上記構成によれば、蓄電池はケース内に蓄電体を構成する複数の扁平状の巻回体を有し、蓄電体の外周を覆う断熱部材によって外側の温度の影響が低減される。巻回体の1対の平面部には、平面部側から見て一致しない位置でヒータが夫々当接するように配設され、巻回体を1対の平面部から温める。また、巻回体が対向状に近接する平面部にはヒータに当接しないように配設されたヒートパイプの吸熱部が当接し、近接する2つの巻回体の熱を吸熱部が吸熱して断熱部材の外側でケースの内壁に当接する放熱部に移動させてケースに伝熱させる。従って、蓄電体の各巻回体は1対の平面部から温められ、近接する巻回体と対向する平面部から吸熱されるので、車両用蓄電装置を構成する蓄電池の蓄電体の加温と冷却を均一に行うことができる。
【0017】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記蓄電体を構成する全ての前記巻回体の1対の前記平面部に、前記吸熱部が夫々当接することを特徴としている。
上記構成によれば、蓄電体を構成する全ての巻回体は、その1対の平面部にヒートパイプの吸熱部が夫々当接し、1対の平面部から吸熱されるので、車両用蓄電装置を構成する蓄電池の蓄電体の一層均一な冷却を行うことができる。
【0018】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、複数の前記蓄電池を所定の間隔を空けて整列させて前記蓄電池同士の間に形成された冷却風通路を有することを特徴としている。
上記構成によれば、ヒートパイプがケースに移動させた蓄電体の熱の外部への放熱を、冷却風通路に面したケースの側面部から冷却風通路を流通する冷却風によって促進させることができるので、車両用蓄電装置の放熱を促進させて冷却することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の車両用蓄電装置によれば、車両用蓄電装置を構成する蓄電池の蓄電体の加温と冷却を均一に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施例に係る車両の構成を説明するブロック図である。
【
図2】本発明の実施例に係る蓄電装置の要部斜視図である。
【
図3】本発明の実施例に係る蓄電モジュールの要部分解斜視図である。
【
図5】本発明の実施例に係る蓄電池の要部分解斜視図である。
【
図6】
図5の蓄電体を水平軸心方向から見た側面図である。
【
図7】巻回体を水平軸心方向から見た側面図である。
【
図10】ヒートパイプの他の例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態について実施例に基づいて説明する。
【実施例】
【0022】
EVの駆動用の電力を供給する大容量の車両用蓄電装置の例について説明する。
EVは、
図1に示すように、車両側負荷1として車両駆動用の電動モータ2、制動装置3、車速センサ4、温度センサ5等を含む各種センサ、冷却ファン6、これらに供給する直流電力の電圧を調整するDCDCコンバータ7等を備えている。そして、車両側負荷1に供給する車両駆動用の電力を蓄える蓄電装置10(車両用蓄電装置)と、車両側負荷1及び蓄電装置10を制御する制御部(ECU8)を備えている。
【0023】
温度センサ5は、蓄電装置10の温度を検知する。冷却ファン6は、蓄電装置10を冷却するための冷却風を送風する。ECU8は、CPUと各種プログラムを記憶するメモリと入出力装置等を備えたコンピュータにより構成されている。このECU8は、各種センサから周期的に出力される信号を処理して、蓄電装置10、電動モータ2、制動装置3、冷却ファン6等に対して適切に作動させるための制御信号を出力する。ECU8は蓄電装置10の充電状態(SOC)を管理し、運転者に現在のSOCや走行可能距離等を報知する。蓄電装置10は、駐車時に外部電源からの供給電力により充電され、回生ブレーキによって車輪の回転力で電動モータ2を回転させて発電した電力によっても充電される。
【0024】
次に、蓄電装置10について説明する。
蓄電装置10は、
図2に示すようにEVの車室フロアパネルの下方空間に配設するための耐振性(剛性)と耐水性(防水性)を確保するために、支持パネル部材12とカバー部材13からなる蓄電装置ケース内に収容されている。図中の矢印Uは上方を示し、矢印Fは車両前方を示し、矢印Lは車両左方を示す。蓄電装置10から発生する熱は、図示外の冷却ファン6を作動させて蓄電装置ケース内に前側から支持パネル部材12に沿って流通するように導入されて後方に排出される冷却風によって、蓄電装置ケース外に排出される。温度センサ5は、蓄電装置10の温度を検知して温度データをECU8に出力し、ECU8は蓄電装置10の過度の温度上昇を防ぐために冷却ファン6の送風量を調整する。
【0025】
蓄電装置10は、複数(例えば16個)の蓄電モジュール11を複数のバスバー14によって直列に接続してEVの車両駆動用の電力を供給するように構成されている。尚、蓄電装置10を構成する蓄電モジュール11の数は、その蓄電装置10が搭載されるEVの仕様等に応じて適宜設定される。
【0026】
次に蓄電モジュール11について説明する。
図3に示すように、蓄電モジュール11は、複数(例えば6個)の蓄電池20を備えている。この複数の蓄電池20を所定の間隔(例えば10mmの間隔)を空けて水平方向に1列に整列させた状態を維持するように、1対の支持部材15と1対のエンドプレート16を連結して固定している。尚、蓄電モジュール11は必要な出力電圧等に応じた数の蓄電池20で構成することができる。
【0027】
1対の支持部材15には、蓄電池20同士の間に所定の間隔を維持して冷却風通路17を確保するための複数のスペーサ部材15aが装備されている。また、エンドプレート16と蓄電池20の間にも冷却風通路17が設けられている。複数の蓄電池20は複数のバスバー18によって直列に接続され、その両端部に蓄電モジュール11の正極端子11aと負極端子11bを備えている。
図4に示すように、蓄電モジュール11の蓄電池20と支持パネル部材12の間には、各冷却風通路17に冷却風を供給するための通路19を備えている。
【0028】
次に、
図5~
図8に基づいて蓄電池20について説明する。
蓄電池20は、直方体形状のケース22を有し、蓋部材である上面部22aに蓄電池20の正極端子23と負極端子24が配設されている。ケース22は、冷却風通路17に面する互いに平行な第1側面部22b及び第2側面部22cと、これら第1,第2側面部22b,22cに直交し且つ互いに平行な第3側面部22d及び第4側面部22eと、上面部22aに対向する底面部22fを有し、それらの内壁は絶縁処理されている。
【0029】
ケース22内には、蓄電体25と、蓄電体25の外周部を覆う断熱部材26と、シート状のヒートパイプ27と、シート状のヒータ28と、電解液(図示略)が収容され、蓋部材で密閉されている。蓄電体25は、複数の巻回体30を有し、以下では3つの巻回体30を有する蓄電体25について説明するが、3つ以上の巻回体30を有していてもよい。
【0030】
巻回体30は、多孔性のシート状のセパレータ(図示略)を介して正極箔30aと負極箔30bが水平軸心周りに扁平状に巻回され、その外周を絶縁部材31で覆われて構成され、1対の平面部30dを備えている。絶縁部材31は、合成樹脂材料(例えばポリプロピレンやポリエチレン)により可撓性を備えたシート状に形成され、巻回体30の平面部30dに当接するヒータ28を収容するための袋状の収容部(図示略)を備えている。
【0031】
蓄電体25は、3つの扁平状の巻回体30の平面部30d同士を対向状に近接させて、巻回体30を水平方向に1列に整列させて構成されている。各巻回体30の1対の平面部30dには、巻回体30を平面部30d側から見たときに、一部重なってもよいが一致しない位置でヒータ28が夫々当接する。ヒータ28の面積は平面部30dよりも小さく、平面部30dの半分程度である。近接した2つの巻回体30の間のヒータ28は、この2つの巻回体30が共用してヒータ28の数を少なくしている。蓄電体25を例えば上方から見たときに、交互にずらした位置でヒータ28が各巻回体30の1対の平面部30dに当接している。
【0032】
蓄電体25の3つの巻回体30の正極箔30aに連なる正極集電タブ33が第3側面部22d側に配設されて蓄電池20の正極端子23に接続され、3つの巻回体30の負極箔30bに連なる負極集電タブ34が第4側面部22e側に配設されて蓄電池20の負極端子24に接続されている。即ち、ケース22内に3つの巻回体30が並列接続された蓄電体25が収容され、EV用の大きい蓄電容量の蓄電池20が形成されている。尚、蓄電体25を構成する巻回体30が直列接続され、その直列接続の正極側端部の正極箔30aに正極集電タブ33を接続し、負極側端部の負極箔30bに負極集電タブ34を接続することにより、例えばハイブリッド車両用の高い出力電圧の蓄電池20を形成することができる。
【0033】
蓄電体25は、少なくともその外周部の過半領域をシート状の断熱部材26によって覆われている。断熱部材26は、例えばシリカエアロゲル系の中空構造体をその中空構造が外部に対して閉じるように且つ屈曲可能なシート状に形成したものである。この断熱部材26は、絶縁部材31よりも巻回体30とケース22の間の熱伝導を抑える効果が高く、電解液が浸潤せず絶縁性を有している。
【0034】
ヒートパイプ27は、蓄電体25の熱をケース22に移動させる。蓄電体25の近接した2つの巻回体30が対向する平面部30dには、ヒータ28に当接しないようにヒートパイプ27の吸熱部27aが当接する。この近接した2つの巻回体30の間の吸熱部27aは、2つの巻回体30から吸熱する。
【0035】
ヒートパイプ27は、蓄電体25を覆う断熱部材26の内側で平面部30dに当接する吸熱部27aから断熱部材26の外側に延びて、ケース22の内壁(第1側面部22bの内壁、第2側面部22cの内壁)に当接する放熱部27bを有する。ヒートパイプ27は容易に曲げることができ、図示を省略するがその内部には、作動液及び作動液の毛細管現象を生じさせるウィックが封入され、気化した作動液の通路が形成されている。ヒートパイプ27の表面は、電解液から保護するための絶縁性の保護膜で覆われている。
【0036】
吸熱部27aにおいて巻回体30から吸熱して気化した作動液は、吸熱部27aよりも気圧が低い放熱部27bに移動する。放熱部27bにおいて放熱して凝縮し液化した作動液は、毛細管現象によってウィックを伝って吸熱部27aに戻る。この作動液の循環により巻回体30の熱を断熱部材26の外側に移動させて、蓄電体25が冷却される。
【0037】
ヒートパイプ27を機能させるために、吸熱部27aの面積に対して十分大きい放熱面積を確保している。放熱部27bの面積は吸熱部27aの面積の10倍以上にすることが好ましい。放熱部27bをケース22の底面部22fにも当接させて放熱面積を一層大きくし、底面部22fの下側近傍を通る冷却風も利用して放熱を促進させてもよい。
【0038】
ヒートパイプ27は、上記の吸熱部27aと放熱部27bの面積比率を有するように様々な形態で構成可能である。例えば
図6~
図9に示すように、ヒートパイプ27は、3つの巻回体30の間の対向状に近接する平面部30dに夫々当接する2つの吸熱部27aから上方及び下方の断熱部材26の外側に延び、断熱部材26の外側の2つの放熱部27bに連なるように一体的に形成されている。
【0039】
また、
図10に示すように、2つの巻回体30の間の対向状に近接する平面部30dと、巻回体30と断熱部材26の間の平面部30dに当接する2つの吸熱部37aから断熱部材26の外側に水平方向に延び、断熱部材26の外側の放熱部37bに連なるように形成されたヒートパイプ37を2つ配設することもできる。各巻回体30が1対の平面部30dから吸熱されるので、一層均一に冷却することができる。尚、この2つのヒートパイプ37を一体的に形成してもよい。また、説明を省略するが、巻回体30の数に応じて適宜ヒートパイプを形成して蓄電体25の冷却を行うこともできる。
【0040】
蓄電体25がケース22に収容されてその側面部(第1側面部22b,第2側面部22c)を押圧する力及びその側面部からの反力の作用により、吸熱部27a(37a)は巻回体30の平面部30dに密着し、放熱部27b(37b)はケース22の第1側面部22b又は第2側面部22cの内壁に密着する。それ故、巻回体30の熱は、吸熱部27a(37a)が密着した平面部30dからスムーズに吸熱され、放熱部27b(37b)が密着した第1側面部22b、第2側面部22cにスムーズに放熱(伝熱)される。吸熱部27a(37a)は各巻回体30に密着するので、各巻回体30から均一に吸熱される。
【0041】
同様に、ヒータ28も平面部30dに密着するので、ヒータ28の熱は当接した巻回体30にスムーズに伝わる。ヒータ28は通電によりジュール熱が発生するように構成されている。そして所定の温度未満で蓄電池20の電力を使って加温するように、例えば
図5に示すように、各ヒータ28の電源線28aが所定の温度未満で通電するように切替わる温度スイッチ29を介して正極端子23に接続され、電源線28bが負極端子24に接続されている。尚、図示を省略するが、合成樹脂製の絶縁フィルムで挟んで密封したヒータ28を、対向状に近接する巻回体30の平面部30d同士で挟持させる、又は平面部30dと断熱部材26で挟持させることもできる。
【0042】
温度スイッチ29は、蓄電池20の温度として上面部22aの温度又はケース22内の温度を検知し、検知した温度が所定の温度未満の場合に通電する。これにより蓄電池20は、蓄電体25に蓄えられた電力によりヒータ28を作動させて所定の温度を維持する。所定の温度は例えば-20℃であり、蓄電池20の仕様(使用温度域の下限値)によって適宜設定される。
【0043】
ヒータ28の抵抗値は、ジュール熱及びヒータ28作動時の電力を供給する蓄電池20の自己発熱により、断熱部材26で覆われた蓄電体25が所定の温度を維持可能なように設定されている。蓄電池20の仕様によって放熱量等が異なるので、この抵抗値は蓄電池20の仕様等に応じて適宜設定する。これによりヒータ28の電力消費を最小限にしてSOCの低下を緩やかにしている。
【0044】
ECU8は、温度センサ5の温度データに基づいて、蓄電装置10がその所定の使用温度域内で性能を発揮できるように冷却ファン6による冷却を制御する。例えば温度センサ5が、使用温度域の上限温度(例えば60℃)以上の温度を検知又は検知温度の上昇度合いからその上限温度を超えることが予測される場合に、ECU8がその使用温度域の上限温度より低い温度を維持するように冷却ファン6の送風量を調整する。これにより各蓄電池20のケース22に移動させた熱を冷却風によって外部に排出して、使用温度域の上限温度を超えないように蓄電装置10を冷却する。
【0045】
次に、本発明の作用、効果について説明する。
蓄電池20はケース22内に蓄電体25を構成する複数(例えば3つ)の扁平状の巻回体30を有し、蓄電体25の外周を覆う断熱部材26によって外側の温度の影響が低減される。巻回体30の1対の平面部30dには、平面部30d側から見て一致しない位置にヒータ28が夫々当接するように配設され、巻回体を1対の平面部30dから温める。また、2つの巻回体30が対向状に近接する平面部30dにはヒータ28に当接しないように配設されたヒートパイプ27の吸熱部27aが当接し、近接する2つの巻回体30の熱を吸熱部27aが吸熱して断熱部材26の外側でケース22の第1、第2側面部22b,22cの内壁に当接した放熱部27bに移動させてケース22に伝熱させる。
【0046】
従って、蓄電体25の各巻回体30は1対の平面部30dから温められ、近接する巻回体30と対向する平面部30dから吸熱されるので、蓄電装置10を構成する蓄電池20の蓄電体25の加温と冷却を均一に行うことができる。
【0047】
また、蓄電体25を構成する全ての巻回体30について、その1対の平面部30dにヒータ28とヒートパイプ27の吸熱部27aが当接させて、蓄電装置10を構成する蓄電池20の蓄電体25を一層均一に冷却することができる。
【0048】
その上、複数の蓄電池20を所定の間隔を空けて整列させて蓄電池20同士の間に形成された冷却風通路17を有している。従って、ヒートパイプ27がケース22に移動させた蓄電体25の熱を、冷却風通路17に面したケース22の側面部(第1,第2側面部22b,22c)から冷却風通路17を流通する冷却風によって外部に放熱させることができるので、蓄電装置10の放熱を促進させて冷却することができる。
【0049】
蓄電体25は、巻回体30を上下方向に1列に整列させて構成されていてもよい。その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく上記実施形態に種々の変更を付加した形態で実施可能であり、本発明はその種の変更形態をも包含するものである。
【符号の説明】
【0050】
2 :電動モータ
5 :温度センサ
6 :冷却ファン
8 :ECU
10 :蓄電装置
11 :蓄電モジュール
12 :支持パネル部材
15 :支持部材
16 :エンドプレート
17 :冷却風通路
20 :蓄電池
22 :ケース
22b :第1側面部
22c :第2側面部
23 :正極端子
24 :負極端子
25 :蓄電体
26 :断熱部材
27、37 :ヒートパイプ
27a,37a :吸熱部
27b、37b :放熱部
28 :ヒータ
30 :巻回体
30d :平面部