(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-27
(45)【発行日】2022-05-11
(54)【発明の名称】燃料タンク
(51)【国際特許分類】
B60K 15/04 20060101AFI20220428BHJP
F02M 37/00 20060101ALI20220428BHJP
【FI】
B60K15/04 E
B60K15/04 F
F02M37/00 301Q
(21)【出願番号】P 2018009915
(22)【出願日】2018-01-24
【審査請求日】2020-12-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107238
【氏名又は名称】米山 尚志
(72)【発明者】
【氏名】菅原 宏樹
【審査官】結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】実開平6-32856(JP,U)
【文献】特開2012-144128(JP,A)
【文献】特開平6-262954(JP,A)
【文献】特開2000-301957(JP,A)
【文献】特開平8-72565(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 15/04,
F02M 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を貯留可能なタンク内空間を区画するタンク本体と、
前記タンク本体の外部に配置される一側の給油口と、前記タンク内空間に配置される他側のタンク内開口とを有し、前記タンク本体の外部と前記タンク内空間とを連通し、前記給油口と前記タンク内開口との間に給油路を区画する筒状のフィラーパイプと、
前記給油路に配置され、前記フィラーパイプに対して傾動自在に支持され、前記給油路を閉止する閉止位置と、前記閉止位置から前記タンク内開口側へ傾動して前記給油路を開放する開放位置との間を傾動可能なフラップと、
前記閉止位置の前記フラップよりも前記タンク内開口側に配置されて前記フィラーパイプに対して固定的に設けられ、前記フラップを回転自在に支持するフラップ支持部と、を備え、
前記フィラーパイプのうち、前記タンク内空間に配置され且つ前記閉止位置の前記フラップよりも前記タンク内開口側の領域には、前記閉止位置から前記開放位置へ傾動する前記フラップとの干渉を回避する開口状または切欠き状の干渉回避部が形成され
、
前記干渉回避部は、前記フィラーパイプのうち前記フラップ支持部が配置される領域の周方向の両側2箇所に形成される
ことを特徴とする燃料タンク。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料タンクであって、
前記開放位置は、少なくとも前記給油口から前記フィラーパイプに挿入される給油ノズルによって前記フラップが開方向へ最も大きく傾動した位置に設定される
ことを特徴とする燃料タンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料タンクに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、燃料タンクが記載されている。この燃料タンクでは、タンク本体からフィラーチューブが斜め上方に延びており、タンク本体の上部空間とフィラーチューブの給油口の近傍とがブリーザチューブで接続される。フィラーチューブの内面には、ノズルブラケットが固定され、ノズルブラケットの下端には、ガイドパイプの上端が固定される。ガイドパイプは、フィラーチューブの内部をタンク本体に向かって下向きに延びる。ノズルブラケットの下端の開口は、弾性を有する一枚の金属板で構成されたシャッター部材によって開閉される。シャッター部材は、給油ガンのノズルを給油口に挿入しない状態では、弾性によりノズルブラケットの下端の開口に着座して閉塞する。ガイドパイプの一部にはU字状の切欠き部が形成される。この切欠き部の形状は、シャッター部材が開閉するときの移動軌跡に沿っており、シャッター部材と干渉しない必要最小限の大きさになっている。ガイドパイプの切欠き部の先端(最もタンク本体側の部分)にはストッパ部が一体に設けられる。ストッパ部は、シャッター部材が給油ガンのノズルに押されて開放したとき、シャッター部材に当接して開放限界を規制する。給油ガンのノズルは、ストッパ部に当接して傾斜状態で停止したシャッター部材に案内されてガイドパイプに挿入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、燃料タンクには、タンク内の空間とフィラーチューブ(フィラーパイプ)の給油口の近傍とをブリーザチューブによって接続せず、シャッター部材(フラップ)が開閉する開口を給油ガンのノズル(以下、給油ノズルという。)の径よりも大きくして、この開口と給油ノズルとの間の隙間から給油時の燃料タンク内からの空気を外部へ排出可能にしている場合がある。この場合、フィラーパイプ内の開口が大きい分だけフィラーパイプ内での給油ノズルの先端の可動範囲が広いので、上記文献に記載の燃料タンクのようにフラップの上方への移動をガイドパイプのストッパ部によって規制すると、上方への移動が規制されたフラップに対して給油ノズルの先端が当接した状態で、給油ノズルの先端からフラップ側へ大きな荷重が入力する可能性があり、フラップが破損してしまう可能性がある。また、仮に、ガイドパイプのストッパ部を設けない場合であっても、フラップの解放時にフラップがフィラーパイプの内面に当接して上方へのフラップの移動が規制される可能性があり、上記同様に、フラップが破損してしまう可能性がある。
【0005】
そこで、本開示は、給油時のフラップの破損を防止することが可能な燃料タンクの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様の燃料タンクは、タンク本体と筒状のフィラーパイプとフラップとフラップ支持部とを備える。タンク本体は、燃料を貯留可能なタンク内空間を区画する。筒状のフィラーパイプは、タンク本体の外部に配置される一側の給油口と、タンク内空間に配置される他側のタンク内開口とを有し、タンク本体の外部とタンク内空間とを連通し、給油口とタンク内開口との間に給油路を区画する。フラップは、給油路に配置され、フィラーパイプに対して傾動自在に支持され、給油路を閉止する閉止位置と、閉止位置からタンク内開口側へ傾動して給油路を開放する開放位置との間を傾動可能である。フラップ支持部は、閉止位置のフラップよりもタンク内開口側に配置されてフィラーパイプに対して固定的に設けられ、フラップを回転自在に支持する。フィラーパイプのうち、タンク内空間に配置され且つ閉止位置のフラップよりもタンク内開口側の領域には、閉止位置から開放位置へ傾動するフラップとの干渉を回避する開口状または切欠き状の干渉回避部が形成される。干渉回避部は、フィラーパイプのうちフラップ支持部が配置される領域の周方向の両側2箇所に形成される。
【0007】
上記構成では、フィラーパイプには、閉止位置から開放位置へ傾動するフラップとの干渉を回避する干渉回避部が形成されるので、フラップは、例えば、干渉回避部を設けないでフィラーパイプに干渉(当接)する場合よりも、大きく開方向へ傾動可能である。このように、干渉回避部を設けた分だけフラップを大きく開方向へ傾動させることができるので、給油時に給油口から挿入した給油ノズルの先端が閉止位置のフラップに当接してフラップを開放位置側へ傾動させた際に、給油ノズルから開放位置のフラップへの荷重の入力を抑えることができ、フラップの破損を防止することができる。
【0008】
また、開口状または切欠き状の干渉回避部は、タンク内空間に配置されるので、フィラーパイプの給油路から干渉回避部を介してフィラーパイプの外部へ流出する燃料は、タンク内空間に貯留される。このように、フィラーパイプに干渉回避部を設けても、タンク本体の外部への燃料の流出を防止することができる。
【0010】
また、フラップ支持部は、閉止位置のフラップよりもタンク内開口側に配置される。このため、給油時に給油ノズルの先端が、閉止位置のフラップに到達する前にフラップ支持部と干渉することがないので、給油ノズルの挿入を円滑に行うことができる。
【0011】
また、給油ノズルの先端が、閉止位置のフラップに到達する前にフラップ支持部と干渉しないので、給油ノズルとの干渉によるフラップ支持部の破損を防止することができる。
【0012】
また、干渉回避部は、フィラーパイプのうちフラップ支持部が配置される領域の周方向の両側2箇所に形成される。このように、フィラーパイプのうち閉止位置のフラップよりもタンク内開口側にフラップ支持部を配置する領域が必要である場合であっても、当該領域の周方向の両側2箇所に干渉回避部を設けることによって、フラップを大きく開方向へ傾動させることができ、フラップの破損を防止することができる。
【0013】
本発明の第2の態様は、上記第1の態様の燃料タンクであって、開放位置は、少なくとも給油口からフィラーパイプに挿入される給油ノズルによってフラップが開方向へ最も大きく傾動した位置に設定される。
【0014】
上記構成では、開放位置は、少なくとも給油ノズルによってフラップが開方向へ最も大きく傾動した位置に設定されるので、フラップは、給油ノズルによって開方向へ最も大きく傾動した状態でフィラーパイプに干渉しない。このため、給油時に、開放位置のフラップに対する給油ノズルからの荷重の入力を確実に抑えることができ、フラップの破損を防止することができる。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、給油時のフラップの破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態の燃料タンクの外観斜視図である。
【
図3】フラップが開移動した状態のフィラーパイプをタンク内側(
図2の矢印III方向)から視た図である。
【
図4】フラップが組付けられたインレットの外観斜視図である。
【
図7】給油ノズルの挿入直後の状態を示す断面図である。
【
図8】給油ノズルの挿入途中の状態を示す断面図である。
【
図9】給油ノズルの挿入完了時の状態を示す断面図である。
【
図10】給油時の給油ノズルの状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態に係る燃料タンク1について、図面を参照して説明する。本実施形態に係る燃料タンク1を搭載する車両は、例えばトラックのような商用車であり、車両下部の車体フレーム(図示省略)に、燃料タンク1が露出した状態で固定的に支持される。なお、図中の矢印UPは上方を示している。
【0018】
図1及び
図2に示すように、燃料タンク1は、液体燃料が貯留される燃料貯留空間(タンク内空間)11を内側に区画するタンク本体10と、タンク本体10の上部に固定されて燃料貯留空間11への給油路21を区画する金属製の円管状のフィラーパイプ20と、フィラーパイプ20内に配置されてフィラーパイプ20に固定されるインレット30と、インレット30の内部に配置されてインレット30に固定されるフラップ支持部材(フラップ支持部)40と、フラップ支持部材40に傾動自在に支持されるフラップ50と、フラップ50を付勢するコイルばね60とを備える。
【0019】
タンク本体10は、強度上の理由等から金属板材によって矩形箱体状に形成されている。タンク本体10の上部には、フィラーパイプ20を挿通可能なタンク開口12が形成されている。
【0020】
図1~
図3に示すように、フィラーパイプ20は、上端(一側)の給油口23が斜め上方を向いてタンク本体10の外部(燃料貯留空間11の外部)へ開口し、下端(他側)のタンク内開口24がタンク本体10の内部に開口する(燃料貯留空間11に配置されて開口する)状態で、タンク本体10のタンク開口12を挿通し、タンク開口12の内周縁に溶接によって固着される。係る溶接によりフィラーパイプ20の外周面とタンク本体10のタンク開口12の内周縁との間が密閉され、フィラーパイプ20は、タンク本体10内の燃料貯留空間11とタンク本体10の外部とを連通する。すなわち、フィラーパイプ20は、タンク本体10の内部(燃料貯留空間11)に配置されるタンク内領域25と、タンク本体10の外部に配置されるタンク外領域26とを有する。フィラーパイプ20の給油口23には、給油口23を密閉する給油キャップ28が着脱可能に取り付けられる。
【0021】
フィラーパイプ20のタンク内領域25のタンク内開口24側の端部の上側の領域には、後述するインレット30の支持部材固定部35と近接又は接触する支持部材配置領域27が設けられ、支持部材配置領域27の周方向の両側に1対の切欠部(干渉回避部)22が形成される。支持部材配置領域27は、フィラーパイプ20の内側にインレット30を固定した状態で、支持部材配置領域27の径方向の内側近傍にインレット30の支持部材固定部35が配置される領域である。後述するように、インレット30の支持部材固定部35には、フラップ支持部材40が固定される。すなわち、フィラーパイプ20の支持部材配置領域27は、フィラーパイプ20のうち、その径方向の内側(本実施形態では、下方)近傍にフラップ支持部材40が配置される領域であり、その周方向の両側に1対の切欠部22が配置される。1対の切欠部22は、フィラーパイプ20のタンク内領域25のうち、フィラーパイプ20のタンク内領域25のタンク内開口24側の端縁から給油口23側へ向かって切り欠かれた部分であって、支持部材配置領域27の両側に略対称的に設けられる。
【0022】
図2~
図4に示すように、インレット30は、フィラーパイプ20の全長よりも短い円筒状の金属製の部材であって、フィラーパイプ20の内側下部に配置され、インレット30の外周面がフィラーパイプ20の内周面に近接又は接触した状態で、フィラーパイプ20に溶接によって固着される。インレット30の上端部(給油口23側の端部)の内周縁の略全域には、径方向の内側へ突出するドーナツ板状のインレット端面部31がバーリング加工等によって一体形成されている。インレット30の内周面はノズル挿入空間32を区画し、インレット端面部31の内周縁はノズル挿入開口33を区画する。インレット30の下端縁(他端側の端縁)は、フィラーパイプ20の下端縁と略一致するように配置され、タンク内開口24の内側で燃料貯留空間11へ開口する。ノズル挿入開口33は、給油ノズル80(
図7参照)の径よりも大径に形成される。給油時にフィラーパイプ20の給油口23から挿入された給油ノズル80は、ノズル挿入開口33からノズル挿入空間32へ進入する。このように、インレット30は、ノズル挿入開口33から給油ノズル80が挿入されるノズル挿入空間32を内側に区画する。給油ノズル80をノズル挿入開口33に挿入した状態で、給油ノズル80の外周面81とインレット端面部31の内周縁との間には、給油時に燃料貯留空間11側からタンク本体10の外部への空気の流出を許容する間隙(エア抜き用の通気路)が設けられる。
【0023】
インレット30の他側(タンク内開口24側)の端部には、インレット30の周壁の一部(本実施形態では上部)を平板状に形成した支持部材固定部35が設けられ、支持部材固定部35の周方向の両側に1対の切欠部34が形成される。インレット30をフィラーパイプ20の内側に固定した状態で、支持部材固定部35は、フィラーパイプ20の支持部材配置領域27に径方向内側から近接又は接触する。1対の切欠部34は、インレット30の他側の端部を、インレット30の他側の端縁から一側へ向かって切り欠いた部分であって、支持部材固定部35の両側に略対称的に設けられる。1対の切欠部34は、フィラーパイプ20の1対の切欠部22と略同じ形状で形成され、インレット30をフィラーパイプ20の内側に固定した状態で、フィラーパイプ20の1対の切欠部22と径方向に重なる位置(互いに連通する位置)に配置される。
【0024】
図4に示すように、インレット30のノズル挿入空間32には、金属製のフラップ支持部材40が配置される。フラップ支持部材40は、矩形平板状の支持基板部41と、支持基板部41の両端縁から曲折して相対向する2つの起立板部42とを一体的に有する板状部材である。支持基板部41からの起立板部42の突出高さは、一端側が高く、他端側が低く設定されている。各起立板部42のうち突出高さが高い一端側の部分には、軸挿通孔43がそれぞれ形成されている。
【0025】
フラップ支持部材40は、インレット30の支持部材固定部35の内面に支持基板部41が面接触した状態でインレット30に溶接によって固定される。すなわち、インレット30をフィラーパイプ20に固定した状態では、フラップ支持部材40は、インレット30のノズル挿入開口33よりもタンク内開口24側に配置され、インレット30を介してフィラーパイプ20に対して固定される。フラップ支持部材40は、その一端側が給油口23側に、他端側がタンク内開口24側に配置された状態でインレット30に固定され、2つの起立板部42は、インレット30の管径方向に離間する。フラップ支持部材40の一端側(各起立板部42の一端側、及び支持基板部41のうち一端側の起立板部42を連結する領域)は、後述する回転軸51を介してフラップ50を回転自在に支持するための軸支部44を構成し、上記軸挿通孔43は、軸支部44の2つの起立板部42(軸支持板部45)にそれぞれ形成される。また、フラップ支持部材40の他端側(各起立板部42の他端側、及び支持基板部41のうち他端側の起立板部42を連結する領域)は、軸支部44からノズル挿入開口33の反対側(タンク内開口24側)へ延びて軸支部44を補強する補強部46を構成する。本実施形態の支持基板部41は、軸支部44で1箇所以上、補強部46で1箇所以上の計2箇所以上で、インレット30にスポット溶接される。
【0026】
図2~
図6に示すように、ノズル挿入空間32には、ノズル挿入開口33を開閉するフラップ50が配置される。フラップ50は、略円形状の外周を有する板状部材であり、フラップ50の周縁部には、フラップ支持部材40の2つの軸支持板部45の間に挿入される2つの平板状の軸連結板部52が一体形成されている。各軸連結板部52には、各軸支持板部45の軸挿通孔43と連通する軸挿通孔53(
図6参照)が形成され、これらの軸挿通孔43,53を回転軸51が挿通する。軸支持板部45と軸連結板部52と回転軸51とによってヒンジ機構56が構成され、フラップ50は、回転軸51を中心として回転自在にフラップ支持部材40に支持される。すなわち、フラップ50は、フラップ支持部材40及びインレット30を介してフィラーパイプ20に対して傾動自在に支持される。フラップ50の閉止位置は、フラップ50の外面(インレット30のノズル挿入開口33を閉止した状態における給油口23側の表面)54がインレット端面部31の略全周域に他側(タンク内開口24側)から当接することによって規定される。閉止位置のフラップ50は、インレット30のノズル挿入開口33を閉止することによってフィラーパイプ20の給油路21を閉止する。フラップ50の開放位置は、フラップ50が閉止位置から他側(タンク内開口24側)へ90度以上傾動してインレット30のノズル挿入開口33を開放する位置であって、フラップ50の内面(インレット30のノズル挿入開口33を閉止した状態におけるタンク内開口24側の表面)55がフラップ支持部材40の起立板部42の他端側に当接することによって規定される(
図10参照)。開放位置のフラップ50は、インレット30のノズル挿入開口33を開放することによってフィラーパイプ20の給油路21を開放する。フラップ50の軸方向の移動(回転軸51に沿った移動)は、軸連結板部52が軸支持板部45に当接することによって規制される。
【0027】
フィラーパイプ20及びインレット30に設けられる1対の切欠部22,34は、閉止位置から開放位置へのフラップ50の傾動をフィラーパイプ20及びインレット30が阻害しないように、閉止位置から開放位置へ傾動するフラップ50とフィラーパイプ20及びインレット30との干渉を回避可能な位置に設けられる。開放位置のフラップ50の一部の領域は、フィラーパイプ20及びインレット30の1対の切欠部22,34を挿通してフィラーパイプ20の外部に突出する(
図3参照)。なお、開放位置のフラップ50の一部の領域が、フィラーパイプ20及びインレット30の1対の切欠部22,34からフィラーパイプ20の外部へ突出しなくてもよい。
【0028】
2つの軸連結板部52の間にはコイルばね(付勢部材)60が配置され、コイルばね60の内径部を回転軸51が挿通する。コイルばね60の一端部61と他端部62とは、フラップ支持部材40の支持基板部41とフラップ50の内面55とにそれぞれ当接し、フラップ50は、コイルばね60によってノズル挿入開口33を閉止する方向(閉止位置)へ付勢される。
【0029】
インレット端面部31のうちフラップ支持部材40と対向する上側の領域は、インレット30の内周面に対するインレット端面部31の突出高さが他の領域よりも高く設定されてフラップ支持部材40のノズル挿入開口33側を覆う鍔部36を構成し、ノズル挿入開口33は、相対向する短径側の周縁部分のうち上側を鍔部36が区画する略楕円形状に設定される(
図3参照)。給油ノズル80がノズル挿入開口33を挿通した状態で、給油ノズル80の外周面81とノズル挿入開口33の長径方向のインレット端面部31の内周縁との間には、給油ノズル80の外周面81とノズル挿入開口33の短径方向のインレット端面部31の内周縁との間の間隙よりも径方向に広い間隙が発生する。
【0030】
燃料タンク1に対して給油を行う場合、作業者は、給油キャップ28を給油口23から取外し、開口した給油口23から給油ノズル80を挿入する。給油ノズル80の先端が閉止位置のフラップ50の外面54に当接し、フラップ50をタンク内開口24側へ押圧することにより(
図7参照)、閉止位置のフラップ50は、コイルばね60の付勢力に抗して開方向へ傾動して、インレット30のノズル挿入開口33への給油ノズル80の挿入及びノズル挿入空間32への給油ノズル80の進入を許容する(
図8参照)。給油ノズル80を十分に挿入した後(
図9参照)、作業者が給油ノズル80から手を離すなどして給油ノズル80の基端側が下がると、給油ノズル80の先端側が持ち上がり、給油ノズル80によってフラップ50が最大開口位置である開放位置へ向かって傾動する。開放位置へ向かうフラップ50は、インレット30及びフィラーパイプ20に当接することなく開放位置に到達し、フラップ50の外周縁部の一部の領域が1対の切欠部22,34を挿通してフィラーパイプ20の外部に突出する。給油ノズル80によってフラップ50が開放位置まで持ち上げられた状態で給油を行い(
図10参照)、給油が終わると、作業者は、給油ノズル80をノズル挿入空間32及びフィラーパイプ20から引き抜き、給油キャップ28を取り付けて給油口23を密閉する。
【0031】
上記のように構成された燃料タンク1では、閉止位置から開放位置へ傾動するフラップ50との干渉を回避するための1対の切欠部22がフィラーパイプ20に形成されるので、1対の切欠部22を設けないでフラップ50がフィラーパイプ20に干渉(当接)する場合よりも、開方向へ大きくフラップ50を傾動させて、給油路21を開放することができる。このように、1対の切欠部22を設けた分だけフラップ50を大きく開方向へ傾動させることができるので、給油時に給油口23から挿入した給油ノズル80の先端が閉止位置のフラップ50に当接してフラップ50を開放位置側へ傾動させた際に、給油ノズル80から開放位置のフラップ50への荷重の入力を抑えることができ、フラップ50の破損を防止することができる。
【0032】
また、フィラーパイプ20の1対の切欠部22は、フィラーパイプ20のうち燃料貯留空間11内のタンク内領域25に配置されるので、フィラーパイプ20の給油路21から1対の切欠部22を介してフィラーパイプ20の外部へ流出する燃料は、タンク本体10内の燃料貯留空間11に貯留される。このように、フィラーパイプ20に1対の切欠部22を設けても、タンク本体10の外部への燃料の流出を防止することができる。
【0033】
また、フラップ支持部材40は、インレット30のノズル挿入開口33(閉止位置のフラップ50)よりもタンク内開口24側に配置されてフィラーパイプ20に対して固定される。このため、給油時に給油ノズル80の先端が、閉止位置のフラップ50に到達する前にフラップ支持部材40と干渉することがないので、給油ノズル80の挿入を円滑に行うことができる。
【0034】
また、給油ノズル80の先端が、閉止位置のフラップ50に到達する前にフラップ支持部材40と干渉しないので、給油ノズル80との干渉によるフラップ支持部材40の破損を防止することができる。
【0035】
また、フィラーパイプ20の1対の切欠部22は、フィラーパイプ20のうちその径方向の内側近傍にフラップ支持部材40が配置される領域(支持部材配置領域27)の周方向の両側に形成される。このように、フィラーパイプ20のうち閉止位置のフラップ50よりもタンク内開口24側にフラップ支持部材40を配置する領域が必要である場合であっても、当該領域の周方向の両側2箇所に切欠部22を設けることによって、フラップ50を大きく開方向へ傾動させることができ、フラップ50の破損を防止することができる。
【0036】
従って、本実施形態によれば、給油時のフラップ50の破損を防止することができる。
【0037】
また、作業者が給油ノズル80を引き抜いた際に、フラップ50は、コイルばね60の付勢力によって閉方向へ傾動してノズル挿入開口33を閉止する。このため、給油キャップ28を閉め忘れて車両を走行させた場合であっても、燃料タンク1からの燃料の流出をフラップ50によって抑制することができる。
【0038】
また、インレット30をフィラーパイプ20に装着(固定)するので、様々な燃料タンクの形状の異なるフィラーパイプ20に対して同じ給油口構造を適用することができ、部品の共通化を図ることができる。
【0039】
また、フラップ50を、フィラーパイプ20側のフラップ支持部材40に回転自在に支持するとともに、コイルばね60によって閉方向へ付勢するので、フラップを板バネ材によって形成してフィラーパイプ20側に固定する場合に比べて、省スペース化を図ることができる。
【0040】
また、フラップ支持部材40に補強部46を一体的に設けているので、給油ノズル80の挿入時や給油時に給油ノズル80からフラップ支持部材40に対して過大な荷重が意図せずに加えられた場合であっても、フラップ支持部材40の破損や離脱が発生し難く、フラップ50の開閉不能を防止することができる。
【0041】
また、ノズル挿入開口33へ向かって挿入された給油ノズル80の先端とフラップ支持部材40との干渉が鍔部36によって確実に阻止されるので、フラップ支持部材40の損傷を防止することができる。
【0042】
また、円筒状の給油ノズル80が挿入されるノズル挿入開口33を楕円形状としたので、給油時において、給油ノズル80とノズル挿入開口33との間にエア抜き用の通気路を、ノズル挿入開口33の長径方向に大きく確保することができる。
【0043】
なお、本実施形態では、フラップ50の開放位置を、フラップ50の内面55がフラップ支持部材40の起立板部42の他端側に当接する位置としたが、これに限定されるものではなく、給油ノズル80によってフラップ50が開方向へ最も大きく傾動した位置に設定してもよいし、或いはそれよりも更に開方向へ傾動した位置に設定してもよい。例えば、給油ノズル80をノズル挿入開口33に十分に挿入した後(
図9参照)、作業者が給油ノズル80から手を離すなどして給油ノズル80の基端側が下がった際に、フラップ50の開方向への傾動がフラップ支持部材40の起立板部42等によって規制される前に、給油ノズル80の上側の外周面がフラップ50以外の部分(インレット30の鍔部36等)に当接すると、当該部分によって給油ノズル80の先端側の上方への移動が規制される。この場合、フラップ50の開放位置を、フラップ50以外の部分に当接した状態の給油ノズル80によって持ち上げられたフラップ50の位置(給油ノズル80によってフラップ50が開方向へ最も大きく傾動した位置)に設定してもよいし、或いはそれよりも更に開方向へ傾動した位置に設定してもよい。この場合、給油時に、開放位置のフラップ50に対する給油ノズル80からの荷重の入力を確実に抑えることができ、フラップ50の破損を防止することができる。
【0044】
また、本実施形態では、フラップ50の開放位置を、フラップ50が閉止位置から他側へ90度以上傾動した位置としたが、これに限定されるものではない。
【0045】
また、本実施形態では、フィラーパイプ20内にインレット30を設け、インレット30を介してフラップ支持部材40をフィラーパイプ20に対して固定したが、インレット30を設けることなく、フラップ支持部材40をフィラーパイプ20に対して固定してもよい。或いは、フラップ支持部材40を設けることなく、フィラーパイプ20に対してフラップ50を取り付けてもよい。例えば、フィラーパイプ20に一体成形され、フィラーパイプ20の内周面から突出してフラップ50を回転自在に支持するフラップ支持部であってもよい。
【0046】
また、本実施形態では、フラップ50とフラップ支持部材40とをヒンジ機構56によって回転自在に連結したが、フラップ50はこれに限定されるものではない。例えば、フィラーパイプ20の内周面に対して固定される板バネ状のフラップであってもよい。
【0047】
また、本実施形態では、閉止位置から開放位置へのフラップ50の傾動を阻害しないようにフラップ50との干渉を回避するための干渉回避部として、フィラーパイプ20のタンク内領域25に、フィラーパイプ20のタンク内開口24側の端縁から給油口23側へ向かって切り欠かれた1対の切欠部22を設けたが、干渉回避部はこれに限定されるものではない。例えば、フィラーパイプ20のタンク内領域25のうち、閉止位置から開放位置へ傾動するフラップ50と干渉し得る位置に開口状の干渉回避部を設けてもよい。また、本実施形態では、フィラーパイプ20に1対の切欠部(干渉回避部)22を設けたが、1つの開口状または切欠き状の干渉回避部であってもよい。
【0048】
また、本実施形態では、フラップ支持部材40を、支持基板部41と2つの起立板部42とを一体的に有する板状部材としたが、フラップ支持部材40の形状は、これに限定されるものではなく、任意の形状にすることができる。
【0049】
また、フラップ50を閉止方向へ付勢する部材は、コイルばね60に限定されず、例えば、コイルばね60に代えて他の付勢部材(例えば板ばね等)を用いてもよい。或いは、付勢部材を設けなくてもよい。
【0050】
また、燃料タンク1のタンク本体10の形状は矩形箱体状に限定されず、任意の形状に設定可能である。
【0051】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施形態について説明したが、この実施形態による本発明の開示の一部をなす論述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0052】
1:燃料タンク
10:タンク本体
11:燃料貯留空間(タンク内空間)
20:フィラーパイプ
21:給油路
22:切欠部(干渉回避部)
23:給油口
24:タンク内開口
40:フラップ支持部材(フラップ支持部)
50:フラップ