(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-27
(45)【発行日】2022-05-11
(54)【発明の名称】継ぎ手部材
(51)【国際特許分類】
E03C 1/12 20060101AFI20220428BHJP
E03C 1/298 20060101ALI20220428BHJP
【FI】
E03C1/12 E
E03C1/12 C
E03C1/298
(21)【出願番号】P 2018034180
(22)【出願日】2018-02-28
【審査請求日】2021-01-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000157212
【氏名又は名称】丸一株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松村 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】木村 裕史
【審査官】中村 百合子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-198978(JP,A)
【文献】特開2000-303531(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/22- 1/33
F16L 51/00-55/48
F16K 15/00-15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
横引き管に接続される継ぎ手部材であって、
壁面に形成された点検口と、
前記点検口を閉塞する蓋部と、
前記点検口より着脱可能に
前記継ぎ手部材内部に配置され、流体の逆流を防ぐ逆止め弁
と、
前記点検口から前記継ぎ手部材内部に挿入されるアダプターとを備え、
前記逆止め弁は排水流路を閉塞する止水部を有し、
前記継ぎ手部材が
前記横引き管に接続された際において、
前記点検口の向きを任意の方向とした場合であっても、
前記逆止め弁の下端に
前記止水部を配置可能であ
って、
前記アダプターは前記逆止め弁が取り付けられる固定部と、
前記止水部と当接する弁座とを有し、
前記弁座は前記固定部よりも前記止水部へ向けて突出することを特徴とする継ぎ手部材。
【請求項2】
前記継ぎ手部材は、
前記逆止め弁は
前記アダプターに固定される被固定部と、
前記被固定部の下流側端部から周方向外側に向けて形成された円環状の
前記止水部を有するアンブレラ弁であることを特徴とする請求項1に記載の継ぎ手部材。
【請求項3】
前記継ぎ手部材は、
前記逆止め弁は
前記アダプターに対し、任意の方向に回動させた状態で取り付け可能であることを特徴とする請求項1に記載の継ぎ手部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水配管に取り付けられて、下流側からの流体の逆流を防止する逆止め弁を備えた継ぎ手部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
排水配管に接続される継ぎ手部材としては、特許文献1のように、内部に逆止め弁を備え、下流側からの流体の逆流を防止する構造のものが知られている。尚、特許文献1に記載の継ぎ手部材は冷凍冷蔵庫や空調機器等の設備機器の使用に伴い生じるドレンを排出する排水配管に接続されるものであって、当該排水配管は略水平方向に配設される横引き管である。
上記逆止め弁は排水流路内において回動可能となるよう継ぎ手部材内で軸支された弁体を有している。上記弁体は無排水時において弁座に当接しており、排水流路を閉塞することで下流側からの臭気や排水等の流体、又は害虫の逆流を防いでいる。尚、下流側より流体の逆流が生じた際には、弁体に対し、弁座に押し付けられる方向に応力が加わることから、排水流路の閉塞が維持される。一方、上流側から排水が排出された際には、当該排水によって弁体が回動し、排水流路が一時的に開放されることによって下流側へと排水を排出する。即ち、上記逆止め弁は無排水時や下流側より流体の逆流が生じた際には弁体が排水流路を閉塞し、上流側より排水が生じた際には排水流路を開放するように回動する構造となっている。
又、継ぎ手部材は上部に点検口及び当該点検口を閉塞する蓋部を有しており、当該蓋部を取り外すことにより点検口から逆止め弁の着脱や継ぎ手部材内部の清掃等を行うことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記継ぎ手部材は、重力を利用して弁体の開閉を行うため、逆止め弁の上下方向を変更することができず、施工環境によっては点検口より逆止め弁の着脱や清掃等を行うことが困難となる場合があった。例えば、継ぎ手部材が空調機器から連続する排水配管に接続されている場合、継ぎ手部材は天井裏に配置される。この時、作業者は天井に形成された点検用の蓋を取り外し、下方から継ぎ手部材の点検を行うが、下方から継ぎ手部材の上部に配置された蓋部を取り外し、逆止め弁の着脱や清掃を行うことは困難であった。又、継ぎ手部材が冷凍冷蔵庫から連続する排水配管に接続されている場合、点検口の上方には冷凍冷蔵庫等の設備機器が配置されていることがあり、やはり継ぎ手部材の上部に配置された蓋部を取り外すことは困難であった。
【0005】
本発明は上記問題に鑑み発明されたものであって、点検口より容易に逆止め弁の着脱や清掃等を行うことが可能となる継ぎ手部材の提供を課題とする。
【0006】
請求項1に記載の本発明は、横引き管に接続される継ぎ手部材であって、
壁面に形成された点検口と、
前記点検口を閉塞する蓋部と、
前記点検口より着脱可能に前記継ぎ手部材内部に配置され、流体の逆流を防ぐ逆止め弁と、
前記点検口から前記継ぎ手部材内部に挿入されるアダプターとを備え、
前記逆止め弁は排水流路を閉塞する止水部を有し、前記継ぎ手部材が前記横引き管に接続された際において、前記点検口の向きを任意の方向とした場合であっても、前記逆止め弁の下端に前記止水部を配置可能であって、
前記アダプターは前記逆止め弁が取り付けられる固定部と、
前記止水部と当接する弁座とを有し、
前記弁座は前記固定部よりも前記止水部へ向けて突出することを特徴とする継ぎ手部材である。
【0007】
請求項2に記載の本発明は、前記継ぎ手部材は、
前記逆止め弁は前記アダプターに固定される被固定部と、
前記被固定部の下流側端部から周方向外側に向けて形成された円環状の前記止水部を有するアンブレラ弁であることを特徴とする請求項1に記載の継ぎ手部材である。
【0008】
請求項3に記載の本発明は、前記継ぎ手部材は、
前記逆止め弁は前記アダプターに対し、任意の方向に回動させた状態で取り付け可能であることを特徴とする請求項1に記載の継ぎ手部材である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の継ぎ手部材は点検口の向きを任意の方向とした場合であっても、逆止め弁の下端に止水部を配置可能であるため、点検口の向きに関わらず、逆止め弁の機能を奏することが可能となる。従って、施工状況に合わせて点検口を下方や側面等に向けることが可能であり、メンテナンスや清掃性が向上する。又、逆止め弁の下端に止水部を配置可能であることから、排水終了時に逆止め弁の上流側に水残りが生じることを防ぐことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図4】(a)上流からの流体発生時における動作を示す断面図(b)下流側からの流体逆流時における動作を示す断面図である。
【
図5】点検口を下向きにした場合を示す断面図である。
【
図6】第二実施形態の継ぎ手部材を示す断面図である。
【
図8】(a)上流からの流体発生時における動作を示す断面図(b)下流側からの流体逆流時における動作を示す断面図である。
【
図9】点検口を下向きにした場合を示す断面図である。
【
図10】継ぎ手部材の施工状態を示す参考図である。
【
図11】継ぎ手部材の施工状態を示す参考図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の継ぎ手部材を、図面を参照しつつ説明する。尚、以下に記載する説明は実施形態の理解を容易にするものであって、これによって本発明が制限して理解されるものではない。
【0012】
又、本発明における継ぎ手部材は、継ぎ手本体10の中心軸Cを中心として、点検口14の向きを任意の方向とした状態で固定することが可能であるが、発明の理解を容易にするため、
図1乃至
図4に示す第一実施形態の説明を行うにあたっては、
図1に示すように、点検口が上方を向いた状態を基準として上下左右を説明する。
【0013】
本実施形態の継ぎ手部材1は
図1に示すように、壁面に点検口14を有する継ぎ手本体10と、点検口14を閉塞する蓋部20と、蓋部20と連結されて継ぎ手本体10内に配置されるアダプター30と、アダプター30に取り付けられた逆止め弁50から成る。又、継ぎ手部材1はその上流側と下流側において、略水平方向に延設する円筒状の横引き管に対して接続されている。尚、
図1においては上流側及び下流側に接続された横引き管を二点鎖線で記載している。
【0014】
図1及び
図2に示すように、継ぎ手本体10は半透明の硬質樹脂から成る筒状のケーシングであって、その上流側端部及び下流側端部において、横引き管が接続される円筒状の流入口11と流出口12を有している。継ぎ手本体10の内部には後述するアダプター30及び逆止め弁50を収納する収納室13が形成されているとともに、当該収納室13の壁面には点検口14が開口されている。
流入口11と流出口12は中心軸Cが合致する円筒状であって、接着により接続される横引き管の外径とほぼ同径となる内径を有している。
点検口14は継ぎ手本体10の壁面に形成された円形の開口であって、その内周には内側に向けて凸部15が形成されている。凸部15は後述する蓋部20と係合する突起であって、等間隔に4箇所形成されている。又、点検口14は蓋部20及びアダプター30が挿入された際、凸部15の下方(収納室13側)では、アダプター30に取り付けられたパッキン40が点検口14の内周全周に亘って当接しており、蓋部20が取り付けられた状態において水密に閉塞されている。
収納室13は流入口11と流出口12の間であって、
図1及び
図2に示すように、点検口14が上方を向いて配置されている状態において、当該点検口14の直下となる位置に形成されている。又、収納室13は内部に当接面16とガイド部17を有している。
当接面16は収納室13の上流側端部であって、流入口11との境界に形成されており、蓋部20及びアダプター30の挿入方向に対して傾斜し、
図1に示すように、パッキン41を介してアダプター30と当接している。尚、当接面16は点検口14から対向する壁面(
図2における下方)に進むにつれて、流入口11から流出口12へ向かうようにして傾斜している。
ガイド部17は上記当接面16と対向する位置に形成された面である。
【0015】
蓋部20は上記点検口14の内径と略同径となる外径を有して円形の閉塞部材であって、点検口14の内周と対向する蓋部20の外周には、上記凸部15と係合する溝部21が形成されている。溝部21は螺旋状に形成されており、溝部21内に凸部15が配置された状態で蓋部20を時計回りに回動させると、溝部21内を凸部15が摺動するとともに、溝部21の所定位置に凸部15が配置された際に蓋部20を点検口14から抜脱不可能に固定する。又、蓋部20の収納室13側には係合部22が突設されている。係合部22は平面視円形であり、その端部において、全周に亘り外側に向けて突出するフランジ部分を有しており、アダプター30と回動可能に連結されている。尚、蓋部20は継ぎ手本体10に取り付けられた状態において、外側に把持部23が露出しており、使用者は当該把持部23によって手動で蓋部20を回動させることができる。
【0016】
アダプター30は上記蓋部20の係合部22に係合する爪部31と、逆止め弁50を固定する固定部36を有している。又、上流側端部には、上記当接面16と同一角度に傾斜する被当接面34と、取り付け時にガイド部17と当接する被ガイド部35を有している。尚、アダプター30は爪部31の外側においてパッキン40を、被当接面34にパッキン41をそれぞれ有している。
爪部31は内向きに突出する爪部分を有し、上記係合部22と係合している状態において、蓋部20とアダプター30が相対回転可能となるように部材を連結する。
固定部36はアダプター30内周面から中心軸へ向けて延設された支承部によって収納室13の中心に形成された開口であり、逆止め弁50の被固定部52が挿通されている。
尚、後述するように、アダプター30は逆止め弁50が取り付けられた状態において、端部が逆止め弁50の止水部53と当接しており、無排水時及び下流側からの逆流発生時において排水流路が閉塞されている。尚、以降においてアダプター30が上記止水部53と水密に当接する箇所を弁座37として記載する。
【0017】
逆止め弁50はゴムやシリコン等の弾性材より成る断面視T字状のアンブレラ弁である弁体51から成り、中央に形成された棒状の被固定部52と、被固定部52の下流側端部から周方向外側に向けて形成された円環状の止水部53を有している。尚、止水部53は
図3に示すように、断面視において弧状を成し、止水部53の全周が弁座37と当接しており、被固定部52は固定部36に挿通されている。
上記逆止め弁50が固定部36に取り付けられている状態において、逆止め弁50の中心は継ぎ手部材1の中心軸Cと合致しており、止水部53は逆止め弁50自身の弾性によって弁座37に向けて均等に応力が加えられている。従って、止水部53は自身の弾性を付勢手段として、弁座37と全周に亘って均等に当接している。そして、逆止め弁50に対して上流側から応力が加わった際には、止水部53が下流側に向けて弾性変形することによって排水流路を開放する。一方、逆流が生じた際など下流側からの応力が加わった際には、止水部53には弁座37へ向けて押し付けられる方向に応力が加わり、排水流路の閉塞を維持する。又、被固定部52は一部が膨出して形成された抜け止め部521を有しているため、上流又は下流側からの流体の流れが生じた際において、逆止め弁50が固定部36より外れることは無い。
【0018】
以下に、本実施形態における継ぎ手部材1の施工について詳述する。
【0019】
まず、蓋部20の係合部22に対してアダプター30の爪部31を押し付け、蓋部20とアダプター30を係合させる。この時、爪部31は係合部22のフランジ部分を乗り越え、蓋部20とアダプター30は相対回転可能に接続される。
次に、アダプター30の固定部36に逆止め弁50の被固定部52を挿通し、取り付ける。この時、被固定部52は端部に向けて先細り形状となっており、容易に挿通することができる。又、逆止め弁50の止水部53は弁座37に対して全周に亘り当接する。
次に、上記蓋部20とアダプター30を点検口14から挿入し、溝部21内に凸部15が配置された状態で蓋部20を時計回りに回動させ、アダプター30と逆止め弁50を収納室13内に配置することで施工が完了する。この時、継ぎ手本体10に形成されたガイド部17とアダプター30に形成された被ガイド部35によって、アダプター30の傾斜角度や挿入方向が誘導される。又、当接面16と被当接面34がそれぞれ挿入方向に対して傾斜していることにより、上記挿入時には挿入方向に加えられた応力の一部が当接面16と被当接面34が互いに近接する方向の応力へと変換される。これによって、当接面16と被当接面34がパッキン41を介して圧接されて水密状態となる。尚、挿入時に変換された力は当接面16と被当接面34を離間させる方向にも働くが、ガイド部17によってアダプター30が当接面16より離間することが防止されているため、確実に水密状態を維持することが可能となる。
上記施工完了時において、逆止め弁50の下端に止水部53が配置された状態となる。又、逆止め弁50が配置された個所における排水流路の底部に止水部53が配置されている。
【0020】
上記継ぎ手部材1のメンテナンスを行う際には、蓋部20を反時計回りに回動させることで、点検口14より蓋部20とアダプター30と逆止め弁50を取り出すことが可能となる。
【0021】
以下に、本実施形態における継ぎ手部材1の動作について詳述する。
【0022】
まず、継ぎ手部材1に対して上流側からの排水が無く、下流側からも流体等の逆流が生じていない場合において、逆止め弁50は自身の弾性により止水部53が弁座37に当接している。これにより、継ぎ手部材1内部の排水流路は止水部53によって閉塞されており、下流側からの臭気や排水、害虫等の逆流を防ぐことが可能となる。
設備機器等の使用により上流側より継ぎ手部材1に対して排水が流入すると、当該排水が上流側より逆止め弁50の止水部53に当接し、
図4(a)に示すように、排水の水圧によって止水部53が弁座37より離間されることで継ぎ手部材1内の排水流路が開放され、上記排水が下流側へと排出される。そして、上流側からの排水の流入が終了すると、逆止め弁50は自身の弾性力によって復元し、止水部53が再び全周に亘り弁座37に当接するとともに排水流路を閉塞する。この時、逆止め弁50の下端に止水部53を配置されており、止水部53は排水流路の底部に配置されていることから、排水終了時に逆止め弁50の上流に水残りが生じることはない。
一方、継ぎ手部材1の下流側より流体等の逆流が生じた場合、当該逆流した流体が逆止め弁50の止水部53と下流側より当接する。この時、
図4(b)に示すように、下流側より当接した流体等は止水部53を弁座37に向けて押し付けるように応力を加えることから、排水流路の閉塞が維持される。
【0023】
上記第一実施形態に係る本発明によれば、止水部53や弁座37及び逆止め弁50の止水部53が軸方向視円形で、その中心は継ぎ手部材1の中心軸Cと合致しているから、継ぎ手部材1を横引き管の中心軸に対して360度任意の方向に回転させても、逆止め弁50の下端に止水部53が形成される。このため、継ぎ手部材1は横引き管の中心軸に対して360度任意の方向に回転させた上で横引き管に接続させることができる。従って、例えば
図9に示すように、点検口14が下向きである場合であっても、逆止め弁50の上流側に水残りが生じることを防ぐことが可能となる。尚、点検口14の方向を側方に向けたとしても、逆止め弁50の上流側に水残りが生じることを防ぐことが可能となる。(図示省略)
【0024】
次に、
図6乃至
図9を用いて本発明の第二実施形態を説明する。
【0025】
又、第二実施形態に係る継ぎ手部材1は、継ぎ手本体10の中心軸Cを中心として、点検口14の向きを任意の方向にした状態で固定することが可能であるが、発明の理解を容易にするため、
図6乃至
図9を用いた説明を行うにあたっては、
図6に示すように、点検口が上方を向いた状態を基準として上下左右を説明する。
【0026】
本実施形態の継ぎ手部材1は
図6に示すように、壁面に点検口14を有する継ぎ手本体10と、点検口14を閉塞する蓋部20と、蓋部20と連結されて継ぎ手本体10内に配置されるアダプター30と、アダプター30に取り付けられた逆止め弁50から成る。又、継ぎ手部材1はその上流側と下流側において、略水平方向に延設する円筒状の横引き管に対して接続されている。尚、
図6においては上流側及び下流側に接続された横引き管を二点鎖線で記載している。
【0027】
継ぎ手本体10は半透明の硬質樹脂から成る筒状のケーシングであって、その上流側端部及び下流側端部において、横引き管が接続される円筒状の流入口11と流出口12を有しており、内部には後述するアダプター30及び逆止め弁50を収納する収納室13が形成されているとともに、当該収納室13の壁面には点検口14が開口されている。
流入口11と流出口12は中心軸Cが合致する円筒状であって、接着により接続される横引き管の外径とほぼ同径となる内径を有している。
点検口14は継ぎ手本体10の壁面に形成された円形の開口であって、その内周には内側に向けて凸部15が形成されている。凸部15は後述する蓋部20と係合する突起であって、等間隔に4箇所形成されている。又、点検口14は蓋部20及びアダプター30が挿入された際、凸部15の下方(収納室13側)では、アダプター30に取り付けられたパッキン40が点検口14の内周全周に亘って当接しており、蓋部20が取り付けられた状態において水密に閉塞されている。
収納室13は流入口11と流出口12の間であって、
図1及び
図2に示すように、点検口14が上方を向いて配置されている状態において、当該点検口14の直下となる位置に形成されている。又、収納室13は内部に当接面16とガイド部17を有している。
当接面16は収納室13の上流側端部であって、流入口11との境界に形成されており、蓋部20及びアダプター30の挿入方向に対して傾斜し、
図1に示すように、パッキン41を介してアダプター30と当接している。尚、当接面16は点検口14から対向する壁面(
図2における下方)に進むにつれて、流入口11から流出口12へ向かうようにして傾斜している。
ガイド部17は上記当接面16と対向する位置に形成された面である。
【0028】
蓋部20は上記点検口14の内径と略同径となる外径を有する円形の閉塞部材であって、点検口14の内周と対向する蓋部20の外周には、上記凸部15と係合する溝部21が形成されている。溝部21は螺旋状に形成されており、溝部21内に凸部15が配置された状態で蓋部20を時計回りに回動させると、溝部21内を凸部15が摺動するとともに、溝部21の所定位置に凸部15が配置された際に蓋部20を点検口14から抜脱不可能に固定する。又、蓋部20の収納室13側には係合部22が突設されている。係合部22は平面視円形であり、その端部において、全周に亘り外側に向けて突出するフランジ部分を有しており、アダプター30と回動可能に連結されている。尚、蓋部20は継ぎ手本体10に取り付けられた状態において、外側に把持部23が露出しており、使用者は当該把持部23によって手動で蓋部20を回動させることができる。
【0029】
アダプター30は上記蓋部20の係合部22に係合する爪部31と、逆止め弁50を固定する固定部36を有している。又、上流側端部には、上記当接面16と同一角度に傾斜する被当接面34と、取り付け時にガイド部17と当接する被ガイド部35を有している。尚、アダプター30は爪部31の外側においてパッキン40を、被当接面34にパッキン41をそれぞれ有している。
爪部31は内向きに突出する爪部分を有し、上記係合部22と係合している状態において、蓋部20とアダプター30が相対回転可能となるように部材を連結する。
固定部36は被ガイド部35から下流側へ向けて延設された筒状部分であり、全周に亘り溝38が形成されているとともに、外周に円環状のパッキン39が嵌着されている。
【0030】
逆止め弁50は弁体51と、弁体51が取り付けられるケーシング55から成り、アダプター30に対して回動可能となるように連結されている。
弁体51はゴムやシリコン等の弾性材より成る板状であって、一端に形成された支持部541がケーシング55に保持されており、他端はケーシング55に対して離間可能となっている。尚、以降において支持部541と対向する側の端部を開閉端部542とする。又、弁体51は止水部53によってケーシング55の端部と当接している。尚、以降においてケーシング55が止水部53と当接する箇所を弁座37として記載する。
ケーシング55は上流側端部に内向きの鍔部57を有するとともに、下流側端部に弁座37を有する筒状であり、内部に排水流路が形成されているとともに、鍔部57が前記アダプター30の固定部36に形成された溝38に嵌合されている。この時、鍔部57は溝38内を摺動可能となっており、これによりケーシング55はアダプター30に対して抜脱不可能であるが回動可能となっている。尚、ケーシング55の回動軸は継ぎ手本体10の中心軸Cと合致している。又、ケーシング55は上流側の内径が固定部36の外径と略同一であり、アダプター30に逆止め弁50が取り付けられた状態において、固定部36外周に環着されたパッキン39がケーシング55とアダプター30によって挟持されている。従って、逆止め弁50はアダプター30に対して自由に回動可能であるとともに、どのような向きに配置されていてもパッキン39によってアダプター30と逆止め弁50との間は密閉された状態となる。
上記逆止め弁50は、止水部53が弁座37と当接することによって、無排水時において排水流路を閉塞している。そして、弁体51に対して上流側から応力が加わった際には、弁体51の支持部541と反対側の端部が下流側に向けて弁座37から離間される、又は下流側へ向けて弾性変形することによって排水流路を開放する。一方、逆流が生じた際など下流側から応力が加わった際には、止水部53は弁座37へ向けて押し付けられる方向に応力が加わり、排水流路の閉塞を維持する。
【0031】
ここで、上記逆止め弁50は、その下端に弁体51の止水部53が配置された状態において、排水終了時に逆止め弁50の上流側に水残りが生じることを防ぐことが可能となる。又、弁体51は開閉端部542が最も大きく動作するとともに、最も軽い応力で作動するため、
図6に示すように、支持部541が最も高い位置に配置され、開閉端部542端部が最も低い位置に配置された状態において、逆止め弁50の排水性能は最も良いものとなる。従って、本実施形態における逆止め弁50は、弁体51の支持部541が最も高い位置に配置され、開閉端部542端部が最も低い位置に配置された状態において、下端に弁体51の止水部53が配置されているため、逆止め弁50の上流側に水残りが生じず、且つ最も排水性能に優れた好適な配置となるものである。
一方で、開閉端部542が上方に配置されると、自重によって弁体51が弁座37から離間してしまい、排水流路を閉塞することができなくなる恐れがある。即ち、本発明の逆止め弁50はその機能を発揮するための好適な配置を有するものである。
【0032】
以下に、本実施形態における継ぎ手部材1の施工について詳述する。
【0033】
まず、蓋部20の係合部22に対してアダプター30の爪部31を押し付け、蓋部20とアダプター30を係合させる。この時、爪部31は係合部22のフランジ部分を乗り越え、蓋部20とアダプター30は相対回転可能に接続される。
次に、アダプター30の固定部36に逆止め弁50の鍔部57を嵌合させる。この時、鍔部57は固定部36の溝38内を摺動可能であるため、逆止め弁50はアダプター30に対して自由に回動可能となる。
次に、逆止め弁50を回動させて、好適な配置となるようにその向きを調整する。上述の通り、本実施形態における逆止め弁50は、弁体51の支持部541が最も高い位置に配置され、開閉端部542端部が最も低い位置に配置された状態において、下端に弁体51の止水部53が配置されているため、逆止め弁50の上流側に水残りが生じず、且つ最も排水性能に優れた好適な配置となるものである。尚、アダプター30と逆止め弁50の間にはパッキン39が介在しているため、常に水密状態が保たれている。
次に、上記蓋部20とアダプター30、逆止め弁50を点検口14から挿入し、溝部21内に凸部15が配置された状態で蓋部20を時計回りに回動させ、アダプター30と逆止め弁50を収納室13内に配置することで施工が完了する。この時、継ぎ手本体10に形成されたガイド部17とアダプター30に形成された被ガイド部35によって、アダプター30の傾斜角度や挿入方向が誘導される。又、当接面16と被当接面34がそれぞれ挿入方向に対して傾斜していることにより、上記挿入時には挿入方向に加えられた応力の一部が当接面16と被当接面34が互いに近接する方向の応力へと変換される。これによって、当接面16と被当接面34がパッキン41を介して圧接されて水密状態となる。尚、挿入時に変換された力は当接面16と被当接面34を離間させる方向にも働くが、ガイド部17によってアダプター30が当接面16より離間することが防止されているため、確実に水密状態を維持することが可能となる。
【0034】
上記継ぎ手部材1のメンテナンスを行う際には、蓋部20を反時計回りに回動させることで、点検口14より蓋部20とアダプター30と逆止め弁50を取り出すことが可能となる。
【0035】
以下に、本実施形態における継ぎ手部材1の動作について詳述する。
【0036】
まず、継ぎ手部材1に対して上流側からの排水が無く、下流側からも流体等の逆流が生じていない場合において、逆止め弁50は自身の弾性及び自重により止水部53が弁座37に当接している。これにより、継ぎ手部材1内部の排水流路は止水部53によって閉塞されており、下流側からの臭気や排水、害虫等の逆流を防ぐことが可能となる。
設備機器等の使用により上流側より継ぎ手部材1に対して排水が流入すると、当該排水が上流側より逆止め弁50の止水部53に当接し、
図8(a)に示すように、排水の水圧によって止水部53が弁座37より離間されることで継ぎ手部材1内の排水流路が開放され、上記排水が下流側へと排出される。この時、当該排水はまず開閉端部542に対して当接するため、弁体51は容易に弁座37より離間される。そして、上流側からの排水の流入が終了すると、逆止め弁50は自身の弾性力及び自重によって、止水部53が再び全周に亘り弁座37に当接するとともに排水流路を閉塞する。この時、止水部53は逆止め弁50の下端であり、排水流路の底部に配置されていることから、排水終了時に逆止め弁50の上流に水残りが生じることはない。
一方、継ぎ手部材1の下流側より流体等の逆流が生じた場合、当該逆流した流体が逆止め弁50の止水部53と下流側より当接する。この時、
図8(b)に示すように、下流側より当接した流体等は止水部53を弁座37に向けて押し付けるように応力を加えることから、排水流路の閉塞が維持される。
【0037】
上記第二実施形態に係る本発明によれば、逆止め弁50がアダプター30に対して回動可能となっていることから、継ぎ手部材1を横引き管の中心軸に対して360度任意の方向に回転させても、収納室13内部における逆止め弁50の向きを調整することによって、常に逆止め弁50の下端に止水部53の開閉端部542を配置することができる。これにより、常に逆止め弁50の上流側に水残りが生じることを防ぐことが可能となる。例えば、
図9に示すように、点検口14が下向きである場合であっても、逆止め弁50の向きを調整することによって、好適な配置とすることが可能となる。
【0038】
各実施形態に係る本発明の継ぎ手部材1が空調機器100から連続する横引き管に取り付けられた場合には、
図10に示すように、点検口14が下方に向くように取り付けを行うことにより、メンテナンスが容易となる。即ち、上記空調機器100から連続する横引き管に継ぎ手部材1が取り付けられている場合、作業者は階下の天井に設けられた点検用の蓋110を取り外し、下方から天井裏に配置された継ぎ手部材1のメンテナンスを行う。この時、継ぎ手部材1は点検口14が下方を向くように取り付けられていることにより、容易に蓋部20を取り外して内部の清掃等を行うことが可能となる。
又、
図11に示すように、継ぎ手部材1が冷凍冷蔵庫200から連続する排水配管に取り付けられた場合には、点検口14が側方を向くように取り付けを行うことにより、側方からのメンテナンスが容易となる。即ち、上記冷凍冷蔵庫200から連続する横引き管に継ぎ手部材1が取り付けられている場合、作業者は冷凍冷蔵庫200の下方より継ぎ手部材1のメンテナンスを行う。この時、継ぎ手部材1は点検口14が側方を向くように取り付けられていることにより、継ぎ手部材1の上方に配置された冷凍冷蔵庫に干渉することなく、内部の清掃等を行うことが可能となる。
尚、上記各実施形態における継ぎ手部材1は逆止め弁50のみによって逆流を防止しており、封水を使用していないことから、蓋部20の取り外しの際に使用者に排水がかかったり、周囲が排水によって汚れてしまったりすることはない。
【0039】
本発明の継ぎ手部材は以上であるが、本発明は上記各実施形態の形状に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の設計変更を加えても良い。
例えば、各実施形態における蓋部20とアダプター30を一体の部材として構成しても良い。
又、継ぎ手部材1が配置される配管も、上記空調機器や冷凍冷蔵庫から連続するものに限られるものではなく、その他の設備機器から連続する配管に接続されていても良い。
【符号の説明】
【0040】
1 継ぎ手部材
10 継ぎ手本体
11 流入口
12 流出口
13 収納室
14 点検口
15 凸部
16 当接面
17 ガイド部
20 蓋部
21 溝部
22 係合部
23 把持部
30 アダプター
31 爪部
34 被当接面
35 被ガイド部
36 固定部
37 弁座
38 溝
39 パッキン
40 パッキン
41 パッキン
50 逆止め弁
51 弁体
52 被固定部
521 抜け止め部
53 止水部
541 支持部
542 開閉端部
55 ケーシング
57 鍔部
100 空調機器
110 蓋
200 冷凍冷蔵庫