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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-27
(45)【発行日】2022-05-11
(54)【発明の名称】管理システム
(51)【国際特許分類】
   H04M 11/04 20060101AFI20220428BHJP
   G08B 21/02 20060101ALI20220428BHJP
   G08B 25/04 20060101ALI20220428BHJP
   H04Q 9/00 20060101ALI20220428BHJP
【FI】
H04M11/04
G08B21/02
G08B25/04 K
H04Q9/00 311J
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018076750
(22)【出願日】2018-04-12
(65)【公開番号】P2019186783
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-01-21
(73)【特許権者】
【識別番号】518127967
【氏名又は名称】株式会社MTL
(74)【代理人】
【識別番号】100149320
【弁理士】
【氏名又は名称】井川 浩文
(74)【代理人】
【識別番号】110001324
【氏名又は名称】特許業務法人SANSUI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神鳥 雅吉
【審査官】西巻 正臣
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/002219(WO,A1)
【文献】特開2008-027429(JP,A)
【文献】特開2013-220236(JP,A)
【文献】特開2017-038839(JP,A)
【文献】特開2017-162465(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B19/00-31/00
H03J9/00-9/06
H04M3/00
3/16-3/20
3/38-3/58
7/00-7/16
11/00-11/10
H04Q9/00-9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管理対象者が携行することにより、該管理対象者の動静および管理対象者が所在する周辺環境を計測し、該管理対象者の健康面およびその他の情報を管理するための管理システムであって、
第1通信手段を有し、管理対象者の着衣のポケットまたは着衣の内側に保管して管理対象者の身体に近い位置に携行される第1携帯端末と、第2通信手段を有し、ヘルメットその他の外装品に装着して外部に露出した状態とされる第2携帯端末とを備え、両携帯端末が相互に送受信可能に構成されたものであり、
前記第1携帯端末は、基礎的情報取得部および処理部を備え、前記第2携帯端末は、環境情報取得部を備え、
前記基礎的情報取得部は、位置情報取得手段と、気圧情報取得手段と、速度・加速度情報取得手段とを備えるものであり、
前記環境情報取得部は、温度取得手段と、湿度取得手段と、黒球温度取得手段とを備えるものであり、
前記処理部は、前記基礎的情報取得部および前記環境情報取得部によって取得された情報を処理するものであって、前記基礎的情報取得部によって取得される各情報に基づき、管理対象者の物理的変化を解析するとともに、前記環境情報取得部によって取得される各情報に基づき、管理対象者が所在する場所の気象的環境を解析するものである
ことを特徴とする管理システム。
【請求項2】
前記位置情報取得手段は、GPSおよび方位情報取得手段を備えるものである請求項1に記載の管理システム。
【請求項3】
前記環境情報取得部は、風速用温度取得手段および照度取得手段を備えるものである請求項1または2に記載の管理システム。
【請求項4】
血圧もしくは心拍数またはこれら双方を計測するウェアラブル端末をさらに備え、該ウェアラブル端末は、前記第1通信手段との間で送受信可能とするものである請求項1~3のいずれかに記載の管理システム。
【請求項5】
前記処理部によって処理されたデータを取得して管理するための管理サーバをさらに備え、前記第1通信手段との間で送受信可能とするものである請求項1~4のいずれかに記載の管理システム。
【請求項6】
前記管理サーバは、認証を受けた特定のクライアントサーバに対して取得データを配信可能としてなる請求項に記載の管理システム。
【請求項7】
前記第1携帯端末または前記第2携帯端末の少なくともいずれか一方は、表示手段もしくは警報手段またはこれら双方を備えるものである請求項1~6のいずれかに記載の管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管理対象者の動静を管理するための管理システムであって、特に管理対象者の健康面を含む情報を管理することができる管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
管理対象者の動静を管理する場合には、いわゆるウェアラブル端末を管理対象者が装着し、心拍パターンなどを計測するとともに、計測された心拍パターンの状態に応じて生体情報を作成し、そのデータを管理サーバに送信するものがあった(特許文献1参照)。また、熱中症予防のための装置としては、WBGT(Wet-Bulb Globe Temperature(湿球黒球温度)の略称)に基づく指数を予測するものがあり(特許文献2参照)、予め近似予測式を作成したうえ、これに相対湿度および気温の実測値を代入することで、WBGTの近似値を算出するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-91076号公報
【文献】特開2010-266318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、前掲の特許文献1に開示される技術は、ウェアラブル端末が管理対象者の心拍パターンを測定するものであるが、心拍に異常がある場合にアラート処理を行うものであり、管理対象者の周辺環境に応じた予防的な情報提供を行うものではなかった。他方の特許文献2に開示される技術は、個別の計測装置であって管理対象者ごとに動静を管理するものではなかった。
【0005】
また、いずれの技術においても、個別に行動する個々の管理対象者に対して、その運動量や所在する周辺環境の細部まで計測するものではなかった。そのため、例えば、特定組織に所属する作業員を管理対象者とする場合、当該管理対象者がいかなる条件下で作業しているかを把握することができず、当該作業場所の位置や環境の変化、また作業員の姿勢の変化などについてデータ化することもできなかった。
【0006】
しかしながら、建設現場を例示すれば、当該建設作業に従事する作業員の所在する場所ごとに位置や環境が異なるものであり、例えば、高所で作業する者は姿勢の安定が重要である一方、閉塞された空間で作業する者は熱中症対策が重要となるが、これらの環境に応じたデータの収集等を行うことはできなかった。
【0007】
本発明は、上記諸点にかんがみてなされたものであって、その目的とするところは、管理対象者の動静と周辺環境にかかる情報を取得することにより、当該管理対象者の健康面およびその他の情報を管理するための管理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明は、管理対象者が携行することにより、該管理対象者の動静および管理対象者が所在する周辺環境を計測し、該管理対象者の健康面およびその他の情報を管理するための管理システムであって、基礎的情報取得部と、環境情報取得部と、前記各取得部によって取得された情報を処理する処理部とを備え、前記基礎的情報取得部は、位置情報取得手段と、気圧情報取得手段と、速度・加速度情報取得手段とを備えるものであり、前記環境情報取得部は、温度取得手段と、湿度取得手段と、黒球温度取得手段とを備えるものであり、処理部は、基礎的情報取得部によって取得される各情報に基づき、管理対象者の物理的変化を解析するとともに、環境情報取得部によって取得される各情報に基づき、管理対象者が所在する場所の気象的環境を解析するものであることを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、基礎的情報取得部は、位置情報取得部と気圧情報取得部とを備えていることから、管理対象者がどこの場所でどの程度の高さに所在するかを計測することができる。これにより、管理対象者が所在する場所の危険度を判定することができる。さらに、速度・加速度情報取得手段を備えることから、管理対象者の行動を把握し、または管理対象者の姿勢を判定することができる。すなわち、基礎的情報取得部が管理対象者の腰、胸または頭部のいずれに携行されているかは、通常活動時(例えば通常の歩行時)の動作パターンによって判断することができ、当該携行場所の変化に応じて管理対象者の姿勢を検出することができる。特に、異常な加速度を計測したような場合には、管理対象者が転倒したことを検知することも可能となる。
【0010】
上記構成の発明において、基礎的情報取得部がGPS(global positioning system)および方位情報取得手段を備える場合には、位置情報および速度等の情報とともに、移動中の管理対象者の進行方向を測定することができる。この種の測定値のデータは、例えば屋外の建設現場や工場内で作業する管理対象者の行動パターンや移動距離などを観察することに用いることができ、作業効率の向上のための現場環境または工場内環境の改善に利用することができる。
【0011】
また、上記各構成の発明において、環境情報取得部が風速用温度取得手段および照度取得手段を備える場合には、風速用温度取得手段による計測値により風速を算出することができることから、屋外作業現場における外部環境を解析することができる。特に、前記気圧情報に基づく高さとともに風速を測定することにより、高所作業における作業環境の適否を判断するための情報取得が可能となる。また、照度取得手段による照度を得ることにより、屋外作業の場合には、日照状況から天候および日没などの状態を把握し、屋内作業の場合には、照明機器の状態なども把握できる。
【0012】
上記各構成の発明にあっては、前記基礎的情報取得部および前記処理部によって構成される第1携帯端末と、前記環境情報取得部によって構成される第2携帯端末とが、それぞれ個別に独立して設けられ、該第1携帯端末には第1通信手段を備え、該第2携帯端末は第2通信手段を備え、両者間において送受信を可能として構成することができる。
【0013】
上記構成によれば、第1携帯端末は、例えば着衣のポケットに保管し、または首や腰から吊り下げて着衣の内側に保管することができ、他方の第2携帯端末は、例えばヘルメットなどの外装品に装着させるような使用方法とすることができる。第1携帯端末は、基礎的な管理対象者の情報であり、位置情報や速度・加速度情報を取得するためのものであるから、管理対象者の身体に近い位置において携行させる必要がある。他方、第2携帯端末は、気温・湿度の計測や風速および照度等を計測するものであることから、外部に露出した状態とすべきものである。そこで、両者を好適な状態で携行するために、両者を個別に設け、両者間においてデータの送受信ができるように構成するのである。この通信手段は、有線による送受信可能な通信手段でもよいが、無線による送受信のための通信手段としてよい。
【0014】
上記構成の発明においては、血圧もしくは心拍数またはこれら双方を計測するウェアラブル端末をさらに備える構成とし、ウェアラブル端末が、前記第1通信手段との間で送受信可能とする構成とすることができる。
【0015】
上記構成の場合には、例えば、ウェアラブル端末を手首等に装着することによって、管理対象者の血圧や心拍数を検出することができ、これを第1携帯端末に送信することにより、当該第1携帯端末が有する処理部によってデータ処理を行うことができる。
【0016】
しかも、上記第1携帯端末に通信手段を設ける構成にあっては、管理サーバをさらに備える構成とし、この管理サーバが、前記第1通信手段との間で送受信可能とすることにより、処理部によって処理されたデータを取得して管理するものとすることができる。
【0017】
この場合においては、管理サーバには管理対象者のデータが蓄積されるとともに、第1携帯端末が有する処理部による処理情報を取得することによって、管理対象者の健康状態などの諸情報をさらに処理させることも可能となる。
【0018】
このような管理サーバを備えるシステムにあっては、当該管理サーバは、認証を受けた特定のクライアントサーバに対して取得データを配信可能としてなるものとすることができる。この場合には、大人数の管理対象者のデータを一元管理しつつ、認証あるクライアントサーバに対してのみ特定の管理対象者に関するデータを配信可能とし、管理者による管理を可能にすることができる。
【0019】
そして、前記第1携帯端末または前記第2携帯端末の少なくともいずれか一方には、表示手段もしくは警報手段またはこれら双方を備える構成とすることにより、第1携帯端末によって処理された結果、または管理サーバから送信される情報に基づいて、管理対象者の健康状態などを表示し、または緊急性を要する場合には報知させることも可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、基礎的情報取得部によって管理対象者の動静を取得することができるとともに、環境情報取得部によって管理対象者の所在する場所の周辺環境の情報を取得することができ、これらによって取得される情報を処理部により処理することで、管理対象者の状態を検出することが可能となる。また、管理対象者の所在する場所の周辺環境を検出することにより、当該管理対象者の所在する場所の環境が健康面等における適否を判定することも可能となる。
【0021】
これらの情報を管理サーバに送信し、これを管理サーバで一括管理することによって、個々の管理対象者ごとの情報を管理することができるとともに、管理対象者の行動を逐次把握することができることから、健康面その他の異変を検知しつつ、当該場所からの退避を促すなどの管理上の運用を行うことも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1の実施形態を示すブロック図である。
図2】処理部における処理フローを示す説明図である。
図3】処理部における処理フローを示す説明図である。
図4】本発明の第2の実施形態を示すブロック図である。
図5】管理サーバにおける処理フローを示す説明図である。
図6】本発明の第3の実施形態を示すブロック図である。
図7】本発明の第2または第3の実施形態の変形例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の第1の実施形態を示す図である。この図に示されるように、本実施形態は、第1携帯端末1と、第2携帯端末2とに分離して構成されたものであり、第1携帯端末1には、基礎的情報取得部3および処理部4を備えるものである。この第1携帯端末1には、その他に記憶部(記憶手段)11、表示部(表示手段)12、受信部(第1通信手段)13および入力部(入力手段)14を備えている。
【0024】
記憶部11は、基礎的情報取得部3によって取得される情報を記憶するとともに、処理部4によって処理されたデータを記憶するものであり、表示部12は、処理部4によって処理されたデータのうち、適宜情報を管理対象者が目視できるように表示させるものである。受信部13は、第2携帯端末2から送信されるデータの受信するためのものであり、入力部14は、簡易なデータ(例えば管理対象者の氏名等)を入力するためのものである。これらの各部は、必須ではなく、任意に選択して備えることができるものであり、また、他の機能を付加してもよい。例えば、図示のように警報部15を設けることにより、測定結果の状態に応じて管理対象者に警告音を報知するようにする構成とすることができる。なお、第1携帯端末1と第2携帯端末2とは、単一の装置として統合させてもよいが、ここでは両者を分離した携帯について例示しつつ説明する。
【0025】
第1携帯端末1に設けられている基礎的情報取得部3は、各種センサ31~34およびGPS(global positioning system)35によって構成されている。各種センサ31~34は、管理対象者(携行者)の動静を検知するためのものであり、3軸加速度センサ31は、管理対象者の前後左右方向への移動および上昇・下降方向への移動を検出するものである。加速度センサ31の入力値を継続的に検出することにより速度計算が可能であり、これにより速度センサとなり得ることから、この加速度センサ31によって、速度・加速度取得手段として機能させることができる。
【0026】
また、3軸加速度センサ31の検出値により、通常状態(例えば、通常歩行時)における第1携帯端末1の加速度を計測することができることから、当該通常状態における振動(加速度)の状態から保管場所(腰や胸など)を特定することも可能となる。
【0027】
ジャイロセンサ32により角速度を検出することができることから、管理対象者が前後または左右方向へ傾いた状態へ姿勢の変化を検出することができる。従って、このジャイロセンサ32の検出値に応じて、管理対象者の姿勢を推定することができるとともに、転倒したことを検知することも可能となる。ジャイロセンサ32は、前記3軸加速度センサ31とともに、速度・加速度取得手段として機能させることができる。
【0028】
方位センサ33は、第1携帯端末1の向きを検出するものであり、3軸加速度センサ31による検出値とともに、移動の際の進路方向を検知することができる。例えば、管理対象者が特定の場所へ移動する場合、どのような経路を通過しているかを検知することができる。この種のデータは、例えば、工事現場や工場内において、作業者が作業遂行のために移動する際の経路を解析することに利用でき、効率よく作業し得るための移動通路の確保などに役立たせることができる。特に、移動時に横向きで移動する場合や後ろ向きで移動しているような場合を検出することも可能となる。
【0029】
なお、GPS35を備える構成の場合には、特定の位置情報と方位情報とに基づき、特定の位置から特定の位置への移動を詳細に検出することができることとなり、管理対象者が頻繁に移動する目的地や通過する場所などを特定することも可能となり、特定エリアにおける装置類の設置場所の選定などに利用することが可能となる。従って、方位センサ33およびGPS35により位置情報取得手段として機能させることができる。
【0030】
気圧センサ34は、気圧の変化を検出するための気圧情報取得手段であり、管理対象者が上昇または下降する場合における高さを検出することが可能となる。特に、管理対象者が高所における作業に従事する者である場合には、当該作業場所の高さを計測することができ、当該高さにおける安全性や、危険な高さまで上昇していないか否かの確認に利用することができる。
【0031】
これらのセンサ類31~35は例示的に示したものであり、これらのセンサの一部を備えない構成としてもよく、これら以外にも管理対象者の行動が特殊な場合には他のセンサを備える構成としてもよい。
【0032】
他方、第2携帯端末2は、専ら環境情報取得部20として機能するものであり、環境情報取得部20は、管理対象者の所在する周辺環境のデータを取得するものであって、主として温度センサ(温度取得手段)21、湿度センサ(湿度取得手段)22および黒球温度センサ(黒球温度取得手段)23を備える。この種のデータを得ることにより、WBGTの近似値を演算することができることから、熱中症対策に利用するものである。従って、管理対象者の周辺温度等の変化に応じて熱中症の可能性の可否を判定することができるものとしている。
【0033】
また、この第2携帯端末2には、風速用温度センサ(風速用温度取得手段)24および照度センサ(照度取得手段)25を備える構成としている。風速用温度センサ24は、例えば、携行位置における4方向の温度を計測するものであり、風の影響により変化する温度変化により風速を予測するものであり、例えば強風(風速15m以上)を検出する場合は、退避すべきと判断することができる。また、高所における作業に従事する管理対象者の場合は、その足場の状況等に応じて、風速に応じて作業の中断等を判断するためのデータとして用いることも可能となる。
【0034】
照度センサ25は、周辺環境下の明るさを検出するものであり、第1携帯端末1および第2携帯端末2のいずれにも時計機能を有していない場合は、日中および夜間の区別を判断するために利用することができ、いずれか一方に時計機能を有する場合は、日中における照度に応じて、天候を予測することができる。また、GPS35による情報に基づき室内であることが検出される場合には、室内照明の状態を得ることも可能となる。
【0035】
これらのセンサ類21~25は、専ら管理対象者の所在する周辺環境を検出するためのものであることから、管理対象者は、第2携帯端末2を外部に装着する。例えばヘルメットや帽子などに装着することとなる。ヘルメットや帽子等を使用しない管理対象者は上腕等に装着してもよい。
【0036】
なお、第2携帯端末2には、送信部(第2通信手段)26が設けられ、第1携帯端末1に対してデータ送信を可能としている。これらの情報取得部1,2を個別に設ける場合には、この種のデータの送受信を行うものであるが、両者を単一の装置に実装する場合には、受信部13および送信部26を省略することができる。また、第1通信手段13および第2通信手段26を双方向の送受信が可能なものとすれば、第1携帯端末1に設置される要素(例えば、表示部12や警報部15など)を第2携帯端末に設ける構成としてもよい。
【0037】
ここで、処理部4によるデータの処理方法について説明する。図2は、基礎的情報を取得した場合の処理フローを示すものである。この図に示されるように、管理対象者の管理処理は、第1に初期値設定(S101)から開始される。初期値設定とは、管理対象者の行動について、初期の一定期間だけ単に計測するものであり、基本的には第1携帯端末の保管場所(携行位置)を特定するためのものである。例えば、管理対象者の腰部や胸部または頭部などのいずれの場所に設置(保管)されているかを、その加速度の変化等によって検出するのである。初期値の設定期間は概ね数分間である。
【0038】
初期値設定が完了した後は、現実の基礎的情報を検出するための測定が開始される(S102)。計測が開始されると、センサ類の測定値が入力され(S103)、センサの種類に応じて、適宜処理されることとなる。
【0039】
管理対象者の移動に関する情報は、位置情報による現在地特定(S104)により、出発位置および移動中の現在地が特定され、さらに加速度による移動状態の演算(S105)によって、歩行、走行または車両等による移動などが判断され得る。また、方位情報による移動方向の演算(S106)により、前進、後退または横向き移動なども検出される。これらは、管理対象者の通常の移動情報であるから、その算出結果は特定の出力装置によって出力される(S107)。本実施形態(図1)にあっては、出力データは、すべて記憶部に記憶されることによるものとしている。
【0040】
他方、気圧による高度が演算される(S108)場合には、当該高度が安全か否かを判断する。この安全値は予め設定することにより、特定の高度以上に上昇(または特定の深さ以上に下降)する場合は、警報部を作動させる(S110)ことができる。これらの情報については、前記と同様に出力(S107)として記憶部に記憶させることができる。なお、警報は、管理対象者が自主的に退避する場合は、それを停止するものとすることができるほか、管理対象者が自ら停止させるものとしてもよい。
【0041】
また、角速度による姿勢を演算する(S111)ことにより、管理対象者の姿勢を演算し、その演算の結果、管理対象者が転倒したと判断される場合には、警報を作動させる(S113)ことにより、管理対象者の周辺に報知させることができる。なお、転倒の原因が熱中症等による意識を喪失した場合以外である場合も想定できるため、この警報は管理対象者が自ら停止させるものとすることができる。
【0042】
環境情報が取得される場合の処理は、図3に示すように、初期値設定(S201)および計測開始(S202)の後に、第2携帯端末におけるセンサ類の計測値が入力され(S203)、処理部による処理が開始される。
【0043】
照度による日射状態が演算(S204)されると、その情報が出力(記憶部に記憶)され(S205)、温度等の計測値が入力されるとWBGTが演算される(S206)。WBGTの演算結果に応じ、熱中症等の可能性を有する数値に達するか否かによって、退避すべきか否かが判断される(S207)。熱中症等のおそれがある場合には、警報部を作動させ(S208)、その情報を出力する(S208)。熱中症等のおそれのない数値である場合も、その演算結果は出力されるものとしている(S205)。
【0044】
また、風速用温度による風速が演算されると(S209)、その演算値による風速に応じて、退避すべきか否かが判断される(S210)。このときの閾値は、予め設定された風速に基づくものとし、高所における作業者の場合と、平地における作業者の場合で閾値設定を変更させることも可能としている。風速が測定された結果、退避すべき場合には、警報部を作動させ(S211)、その情報が出力される(S205)。また、退避すべきでない場合においても、その演算結果は、適宜出力される(S205)ものとしている。
【0045】
上記のような処理部による処理により、基礎的情報の取得においても管理対象者が転倒等の異常な状態を検出した場合には、警報部を作動させ、管理対象者本人への報知とともに、周辺にも報知させることができるようにしている。転倒等には、熱中症等による転倒のほか、交通事故等による異常な加速度および角速度を検出した場合などが含まれる。
【0046】
また、環境情報を付加的に取得することにより、熱中症等の未然防止を可能にしている。すなわち、管理対象者自身では算出できない(判断できない)WBGTによる熱中症のおそれがある環境であることを、熱中症となる前に報知されることから、当該環境下から退避することにより未然に防止することが可能となるのである。これは、強風環境下における場合も同様である。
【0047】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図2は、第2の実施形態を示すものである。この図に示されているように、本実施形態は、第1携帯端末1は、管理サーバ4とインターネット回線等を介して接続されるものである。管理サーバ4には、送受信部41が設けられ、外部との送受信を可能としている。また、記憶部42を備えており、受信した情報を記憶部42に記憶させることができる。さらに、演算部43が設けられており、この演算部43は、記憶部42に記憶される情報を読み出し、演算処理するものであり、処理後のデータは再び記憶部42によって記憶できるものとなっている。
【0048】
また、管理サーバ4には、入出力部44が設けられ、接続される入出力装置(モニタ、処理装置およびキーボードを有するPCなど)5による入力および出力が可能となっている。この入出力装置5によって、入力指示を行うことにより、管理サーバ6によって管理される情報を出力させることができるようになっている。具体的には、管理対象者ごとの動静を時系列で出力させることができるものであり、管理対象エリアを特定範囲とする場合には、当該管理対象エリアへの入退状態を出力させることも可能となる。例えば、作業現場を管理対象エリアと仮定すると、管理対象者が当該作業現場に入場した時刻と退場した時刻を出力することにより、勤怠管理を可能にすることができる。また、特定の管理対象者が、作業現場において体調不良(熱中症等)となった場合は、当該管理対象者における基礎的情報および環境情報を時系列で出力することにより、当該体調不良の原因の探求に利用することも可能となる。
【0049】
なお、本実施形態においても、第1携帯端末1および第2携帯端末2は、第1の実施形態と同様に、基礎的情報および環境情報を取得するものであり、処理部4による処理結果に基づいて警報部15を作動するものとすることができる。本実施形態では、警報部15が作動する場合に、管理サーバ4においても報知させるものとすることができる。この場合の報知には、入出力装置5に出力(表示等)させることによることができるものである。また、図示は、第1携帯端末1と管理サーバ4とが、インターネット回線に接続された状態を例示していることから、第1の実施形態における第1携帯端末の受信部13は、ここでは送受信部13としている。さらに、図示は省略するが、インターネット回線との接続には、アクセスポイントとの間で無線接続するような形態であってもよい。
【0050】
本実施形態の管理サーバ4が上記の構成とする場合において、管理サーバ4における処理方法を説明する。図5は、管理サーバにおける処理フローを示している。管理サーバは、インターネット回線を介して第1携帯端末と常に接続可能な状態となっていることから、管理処理は、管理対象者が携行する第1携帯端末の電源をONとする操作(S301)によって開始される。管理サーバに接続された管理対象者の携帯端末の情報から、管理対象者情報が入力され(S302)、この情報は記憶部に一時的に記憶される(S303)。さらに、当該管理対象者の情報から管理対象者を検索し(S304)、管理サーバに登録(記憶部に記憶)されている管理対象者か否かが判断される(S305)。管理対象者の登録は、ID等によって管理されるものであり、登録IDと一致するものの有無によって判断される。
【0051】
このとき、管理対象者情報が、管理サーバに登録されていない場合は、エラーメッセージが出力され(S306)、その時点で管理が終了する。管理サーバに登録されていない状態とは、例えば、本実施形態のシステムを使用する特定企業等に就職したが、就業期間前の状態であるか、または退職後である場合などが想定される。または、同種の携帯端末を所持する者であるが、他の管理サーバによって管理されるものである場合などが想定される。いずれの場合であっても、当該管理サーバによる管理は不要なものとして管理処理を終了させることとしている。
【0052】
管理対象者の情報が管理サーバに登録されている場合は、管理対象者を特定し(S307)、当該管理対象者ごとに携行されている携帯端末の情報が取得される(S308)。取得された情報は、全て管理対象者と関連付けた状態で記憶される(S309)。
【0053】
このように取得・記憶された情報から、当該管理対象者の基礎的情報のみを読み出し(S310)、管理対象者の基礎的状態が演算される(S311)。具体的には、管理サーバに予め記憶されているマップ(管理エリア等)の情報と、管理対象者の位置情報とを比較するものである。その演算結果により、管理対象者が管理エリア内に所在するか否かにより、管理環境下にあるか否かが判断される(S312)。管理環境下にない場合は、送信情報を取得(S308)および記憶(S309)されるが、管理サーバによる管理は行われないが、管理環境下に所在する(または入場する)場合には、管理サーバによる管理が開始されることとなる(S313)。
【0054】
ここで、管理サーバにおいては、多種多様な管理を実現することが可能であるが、ここでは、管理対象者の健康面を記録することに特化した管理についてのみ説明する。すなわち、管理が開始されると、携帯端末から送信される情報中において、基礎的情報および環境情報のいずれかの数値が設定範囲を逸脱するもの(異常な数値)が存在するか否かが判断される(S314)。異常な数値が存在しない場合は、管理対象者が健全であり、周辺環境も良好であるものとして処理し、管理者の携帯端末がOFFになるまで繰り返し数値の確認が行われる(S315)。
【0055】
これに対し、基礎的情報または環境情報のいずれかに異常な数値が存在する場合には、第1に、警報部が作動したか否かを確認し(S316)、警報部が作動していない場合は、管理対象者に対する直接的な健康被害等が生じなかったものとし、異常数値の有無の判断(S314)を繰り返す。他方、警報部が作動した状況である場合には、警報状態であることを出力し(S317)、この警報部の作動が停止するまで(S318)、警報状態であることの出力を継続する。警報部の作動が停止した場合は、再び異常数値の有無の判断(S314)を繰り返すこととなる。
【0056】
ここで、基礎的情報における異常数値は、例えば、急激に変化する角速度や、急激な下降方向への加速と急激に下降する高度(気圧)の数値などがあり、これらの場合は、転倒や落下の可能性があるものとして警報部の作動を確認するものとなっている。警報部が作動しない場合とは、低い段差における飛び降りや、エレベータ等による降下などがあり得る。また、環境情報における異常数値には、WBGTの異常値や、風速用温度の異常値などがある。このような場合には、熱中症や転落の可能性があるものとして処理されるものである。これらについて警報部が作動しない場合とは、WBGTが設定範囲を逸脱するが所定の風量が計測される場合や、風速が高いが平地に所在する場合などがある。
【0057】
いずれの状況にあっても、取得される情報が管理サーバにおいて記憶されていることにより、管理対象者ごとの作業環境等は逐次記録されることとなり、後日の状況確認を可能にするものである。なお、特に図示してはいないが、管理サーバでは、記憶されるマップと、管理環境下に所在する全ての管理対象者の位置情報とを比較することにより、当該管理環境下における管理対象者の配置状況を確認することも可能となる。このように確認される情報は、管理環境下における人員の集中と閑散の状況を検証することも可能となる。
【0058】
次に、第3の実施形態について説明する。図6は、本実施形態のブロック図である。この図に示されているように、本実施形態は、前述の第2の実施形態に加えて、管理対象者に装着可能なウェアラブル端末6を備える構成である。ウェアラブル端末6は、手首や腕などに装着するものを想定しており、このウェアラブル端末6には、専ら心拍センサ61および血圧センサ62を備えるものとしている。
【0059】
ウェアラブル端末6によって計測される心拍数や血圧は、第1の携帯端末1に送信され、この第1の携帯端末1の処理部4によって、管理対象者の健康状態を判断させることができるものである。従って、環境情報を取得する第2携帯端末2から送信される情報とともに処理することによって、熱中症のおそれがある場合の早期発見を可能とし、また、基礎的情報とともに処理することによって、肉体的負担の軽重を判断することを可能とするものである。なお、これら以外の要素について、ウェアラブル端末6によって計測できる肉体的数値を付加することにより、さらに異なる身体的変化を検出することも可能である。
【0060】
本発明の実施形態は以上のとおりであるが、これらの実施形態は本発明の一例を示すものであって、本発明が上記各実施形態に限定されるものではない。従って、本発明の趣旨の範囲内において他の要素を追加し、または実施形態に示した要素を変更することは可能である。例えば、管理対象者に携行させる携帯端末として、第1携帯端末1および第2携帯端末2に分離したものを例示したが、これを一体化した単一の装置によって、基礎的情報および環境情報を検出させるものであってもよい。
【0061】
また、基礎的情報や環境情報には、実施形態において示した情報以外のものを含めることができる。例えば、環境情報として特定のガスを検知するものとし、環境情報取得部にガスセンサを備えるものとすることができる。第2携帯端末2をヘルメット等に装着する場合において、当該第2携帯端末2の設置されている向き、または測定すべき方位等を変更するための駆動部と、その駆動部を操作するリモコン装置を第1携帯端末1に備える構成とすることも可能である。この場合、両端末1,2の受信部13および送信部26は、ともに送受信可能な送受信部を設けることとなる。
【0062】
さらに、管理サーバ6を備える構成の第2または第3の実施形態においては、図7に示すように、当該管理サーバ6に対しインターネット回線を介して複数のクライアントサーバ7,8,9が接続可能に構成することができる。この場合には、各クライアントサーバ7,8,9は、管理サーバ6に対して接続の認証を受けたものに限定され、当該クライアントサーバ7,8,9の要求に応じて、記憶データを送信可能に構築されるものである。
【0063】
このようなクライアントサーバ7,8,9の接続は、例えば、管理サーバ6には、複数の組織に所属する管理対象者の情報を一元的に管理するものとしておき、これらの情報に対して、特定の管理対象者を管理すべき管理者(または管理会社)が、個別にアクセスできるように構築することが想定される。また、管理対象者に対し、個別にクライアントサーバによる接続認証を与えることにより、管理対象者が自ら自身の情報を閲覧できるような使用方法なども想定し得る。管理サーバ6において勤怠管理がなされる場合には、自身において、勤怠状況を確認し得るシステム構築なども想定されるものである。
【符号の説明】
【0064】
1 第1携帯端末
2 第2携帯端末
3 基礎的情報取得部
4 管理サーバ
5 入出力装置(PC)
6 ウェアラブル端末
7,8,9 クライアントサーバ
11 記憶部
12 表示部
13 受信部(送受信部)
14 入力部
15 警報部
20 環境情報取得部
21 温度センサ
22 湿度センサ
23 黒球温度センサ
24 風速用温度センサ
25 照度センサ
26 送信部
31 3軸加速度センサ
32 ジャイロセンサ
33 方位センサ
34 気圧センサ
35 GPS
41 送受信部
42 記憶部
43 演算部
44 入出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7