(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-27
(45)【発行日】2022-05-11
(54)【発明の名称】美白活性を有する新規ポリペプチド及びその使用
(51)【国際特許分類】
A61K 8/64 20060101AFI20220428BHJP
C07K 7/08 20060101ALI20220428BHJP
A61Q 19/02 20060101ALI20220428BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20220428BHJP
A61K 38/10 20060101ALI20220428BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220428BHJP
【FI】
A61K8/64
C07K7/08 ZNA
A61Q19/02
A61P17/00
A61K38/10
A61P43/00 111
(21)【出願番号】P 2020536042
(86)(22)【出願日】2020-01-23
(86)【国際出願番号】 KR2020001226
(87)【国際公開番号】W WO2020153819
(87)【国際公開日】2020-07-30
【審査請求日】2020-06-26
(31)【優先権主張番号】10-2019-0010176
(32)【優先日】2019-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520020199
【氏名又は名称】ネオミックス カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パク、ミン チョル
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジ ナ
(72)【発明者】
【氏名】カン、ス ジン
【審査官】▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-528577(JP,A)
【文献】国際公開第2018/021838(WO,A1)
【文献】韓国登録特許第10-1410904(KR,B1)
【文献】国際公開第2018/021839(WO,A1)
【文献】J Cosmet Dermatol.(2019 Feb, Epub 2018 Jun),Vol.18、No.1,p.251-257
【文献】Molecules(2019 May),Vol.24、No.10,p.1967
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
C07K 14/47
A61K 38/00
REGISTRY/CAPLUS/MEDLINE/KOSMET/BIOSIS(STN)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1、配列番号3、配列番号5及び配列番号7からなる群から選択されるいずれかのアミノ酸配列からなるポリペプチドを有効成分として含む皮膚美白用化粧料組成物。
【請求項2】
前記ポリペプチドは、メラニン生成抑制活性を有することを特徴とする請求項1記載の化粧料組成物。
【請求項3】
前記ポリペプチドは、チロシナーゼ(tyrosinase)抑制活性を有することを特徴とする請求項1記載の化粧料組成物。
【請求項4】
配列番号1、配列番号3、配列番号5及び配列番号7からなる群から選択されるいずれかのアミノ酸配列からなるポリペプチドを有効成分として含む色素沈着疾患の予防又は治療用薬学的組成物。
【請求項5】
前記色素沈着疾患は、遺伝性対側性色素異常症、網状肢端色素沈着症、肝斑、シミ、老人性色素斑、日光性色素斑、妊娠性褐色斑、メラニン皮膚症、そばかす、皮膚シミ、黒子、斑点、しみ、母斑、薬物による色素沈着、炎症後色素沈着及び皮膚炎から発生する過色素沈着からなる群から選択されることを特徴とする請求項4記載の組成物。
【請求項6】
皮膚美白用化粧料組成物を製造するための、配列番号1、配列番号3、配列番号5及び配列番号7からなる群から選択されるいずれかのアミノ酸配列からなるポリペプチドの使用。
【請求項7】
配列番号1、配列番号3、配列番号5及び配列番号7からなる群から選択されるいずれかのアミノ酸配列からなるポリペプチドを有効成分として含む組成物の有効量を、これを必要とする
動物(ヒトを除く)に投与することを含む皮膚美白方法。
【請求項8】
色素沈着疾患治療用製剤を製造するための、配列番号1、配列番号3、配列番号5及び配列番号7からなる群から選択されるいずれかのアミノ酸配列からなるポリペプチドの使用。
【請求項9】
前記色素沈着疾患は、遺伝性対側性色素異常症、網状肢端色素沈着症、肝斑、シミ、老人性色素斑、日光性色素斑、妊娠性褐色斑、メラニン皮膚症、そばかす、皮膚シミ、黒子、斑点、しみ、母斑、薬物による色素沈着、炎症後色素沈着及び皮膚炎から発生する過色素沈着からなる群から選択されることを特徴とする請求項8記載の使用。
【請求項10】
配列番号1、配列番号3、配列番号5及び配列番号7からなる群から選択されるいずれかのアミノ酸配列からなるポリペプチドを有効成分として含む組成物の有効量を、これを必要とする
動物(ヒトを除く)に投与することを含む色素沈着疾患の治療方法。
【請求項11】
前記色素沈着疾患は、遺伝性対側性色素異常症、網状肢端色素沈着症、肝斑、シミ、老人性色素斑、日光性色素斑、妊娠性褐色斑、メラニン皮膚症、そばかす、皮膚シミ、黒子、斑点、しみ、母斑、薬物による色素沈着、炎症後色素沈着及び皮膚炎から発生する過色素沈着からなる群から選択されることを特徴とする請求項10記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年1月25日に出願された韓国特許出願第10-2019-0010176号に基づく優先権主張し、前記明細書全体は参照により本出願に援用する。
【0002】
本発明は、美白活性を有する新規ポリペプチド及びその使用に関するもので、より詳細には、(本質的に)配列番号1、配列番号3、配列番号5及び配列番号7からなる群から選択されるいずれかのアミノ酸配列からなることを特徴とする単離されたポリペプチド、前記ポリペプチドを有効成分として含む皮膚美白用化粧料組成物又は色素沈着疾患の予防もしくは治療用薬学的組成物に対するものである。
【背景技術】
【0003】
製薬産業は、過去の天然物医薬品や化学的合成医薬品から、蛋白質又はペプチド医薬品の開発に変わりつつある傾向にある。蛋白質は生命体の機能及び構造において基本的物質であり、これは疾病とも直接的な関連性があり、治療剤の開発に重要な研究対象となっている。また、これらを利用した蛋白質又はペプチド医薬品は、合成医薬品に比べて副作用が少なく、薬効が速やかであり、医薬品の革新分野で評価されている。現在、主な製薬会社のパイプラインにおいて、バイオ医薬品の重要性がますます増加しているが、ペプチド(peptides)のような特定のバイオ医薬品が出市されるまでには主要な技術的問題が存在する。一例として、標的部位へのペプチド医薬品の低い伝達率、長鎖(long-chain)ペプチド合成等が商業化の障害となっている。一般的に、ペプチドは、約50個以下のアミノ酸で構成されているものを意味し、ペプチド医薬品で成功するためには、短い配列でありながら活性を示すものを発掘すること、つまり、全長(full length)蛋白質から優れた生理活性を有する最小単位(モチーフ)を選別することが鍵であると知られている。ペプチドの長さが長いと合成費用が多くかかり、製造が容易ではなく、人体への吸収上の問題があるものと知られている。
【0004】
一方、皮膚の主な色素としてメラニンは、健康と外貌に重要な影響を及ぼす。生成されたメラニンは角質形成細胞に移動して、過剰な紫外線を吸収して遮断する光保護作用を果たすことが知られている。反面、しかしながら、メラニンが過剰生産又は/及び蓄積されると、シミ、そばかす等の皮膚疾患を引き起こし、酷い場合には、皮膚癌を誘発することがあると報告されている。
【0005】
メラニンの生成及びこれによる色素沈着過程には、チロシナーゼ(tyrosinase)という酵素が作用し、後続する一連の酸化過程を通じて、メラニン(melanin)という重合体が過剰に作られて皮膚に蓄積される。前記チロシナーゼ(tyrosinase)は、アミノ酸の一種であるチロシン(tyrosine)を、メラニン重合体生成の中間産物であるドーパ(DOPA、3,4-dihydroxyphenylalanine)及び/又はドーパキノン(DOPA-quinone、pheomelanin)にする、皮膚の黒化(特に、色素過剰蓄積)過程で最も重要に作用する酵素である。前記のようにメラニン(melanin)の生成過程において、チロシナーゼ(tyrosinase)の作用は絶対的である。従って、この酵素蛋白質の発現を抑制したり、酵素の活性を抑制したりすることにより、メラニン(melanin)の生成を調節することができ、これらの効能を有する美白機能性素材の探索が行われているのが実情である(非特許文献1)。
【0006】
しかし、従来知られている多くの素材の場合、皮膚美白効果が不十分であるか、又は皮膚に対する安全性の問題等が提起されてきた。例えば、アルブチン(arbutin)は、一部活性に対する問題が提起されたこともあったが、アルブチンもやはりヒドロキノン(hydroquinone)化合物系が有する細胞毒性に対する問題点を有しているものと知られている。そこで、安全で有意性のある効能を有する美白機能性素材の探索が継続的に求められているのが実情である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】Te-Sheng Chang, Natural Melanogenesis Inhibitors Acting Through the Down-Regulation of Tyrosinase Activity, Materials 2012, 5, 1661-1685.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
[発明の具体的な説明]
[技術的課題]
そこで、本発明者らは、新たな美白機能性素材を見出だすために努力した結果、従来AIMP1蛋白質に対して知られた機能とは別に、特異的に優れた美白機能性(特に、優秀なメラニン生成抑制及びチロシナーゼ抑制効果)を有する短い断片ポリペプチドを新規に見出して本発明を完成した。
【0009】
従って、本発明の目的は、配列番号1、配列番号3、配列番号5及び配列番号7からなる群から選択されるいずれかのアミノ酸配列を含むか、又は(本質的に)配列番号1、配列番号3、配列番号5及び配列番号7からなる群から選択されるいずれかのアミノ酸配列からなるポリペプチドを有効成分として含む皮膚美白用化粧料組成物を提供することである。
【0010】
本発明の他の目的は、配列番号1、配列番号3、配列番号5及び配列番号7からなる群から選択されるいずれかのアミノ酸配列を含むか、又は(本質的に)配列番号1、配列番号3、配列番号5及び配列番号7からなる群から選択されるいずれかのアミノ酸配列からなるポリペプチドを有効成分として含む色素沈着疾患の予防又は治療用薬学的組成物を提供することである。
【0011】
本発明のさらに他の目的は、皮膚美白用化粧料組成物を製造するための、配列番号1、配列番号3、配列番号5及び配列番号7からなる群から選択されるいずれかのアミノ酸配列からなるポリペプチドの使用を提供することである。
【0012】
本発明のさらに他の目的は、配列番号1、配列番号3、配列番号5及び配列番号7からなる群から選択されるいずれかのアミノ酸配列からなるポリペプチドを有効成分として含む組成物の有効量を、これを必要と個体に投与することを含む皮膚美白方法を提供することである。
【0013】
本発明のさらに他の目的は、色素沈着疾患治療用製剤を製造するための、配列番号1、配列番号3、配列番号5及び配列番号7からなる群から選択されるいずれかのアミノ酸配列からなるポリペプチドの使用を提供することである。
【0014】
本発明のさらに他の目的は、配列番号1、配列番号3、配列番号5及び配列番号7からなる群から選択されるいずれかのアミノ酸配列からなるポリペプチドを有効成分として含む組成物の有効量を、これを必要と個体に投与することを含む色素沈着疾患の治療方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
[技術的解決方法]
前記のような目的を達成するために、本発明は、配列番号1、配列番号3、配列番号5及び配列番号7からなる群から選択されるいずれかのアミノ酸配列を含むか、又は(本質的に)配列番号1、配列番号3、配列番号5及び配列番号7からなる群から選択されるいずれかのアミノ酸配列からなるポリペプチドを有効成分として含む皮膚美白用化粧料組成物を提供する。
【0016】
本発明の他の目的を達成するために、本発明は、配列番号1、配列番号3、配列番号5及び配列番号7からなる群から選択されるいずれかのアミノ酸配列を含むか、又は(本質的に)配列番号1、配列番号3、配列番号5及び配列番号7からなる群から選択されるいずれかのアミノ酸配列からなるポリペプチドを有効成分として含む色素沈着疾患の予防又は治療用薬学的組成物を提供する。
【0017】
本発明のさらに他の目的を達成するために、皮膚美白用化粧料組成物を製造するための、配列番号1、配列番号3、配列番号5及び配列番号7からなる群から選択されるいずれかのアミノ酸配列からなるポリペプチドの使用を提供する。
【0018】
本発明のさらに他の目的を達成するために、配列番号1、配列番号3、配列番号5及び配列番号7からなる群から選択されるいずれかのアミノ酸配列を含むか、又は(本質的に)配列番号1、配列番号3、配列番号5及び配列番号7からなる群から選択されるいずれかのアミノ酸配列からなるポリペプチドを有効成分として含む組成物の有効量を、これを必要とする個体に投与することを含む皮膚美白方法を提供する。
【0019】
本発明のさらに他の目的を達成するために、色素沈着疾患治療用製剤を製造するための、配列番号1、配列番号3、配列番号5及び配列番号7からなる群から選択されるいずれかのアミノ酸配列からなるポリペプチドの使用を提供する。
【0020】
本発明のさらに他の目的を達成するために、配列番号1、配列番号3、配列番号5及び配列番号7からなる群から選択されるいずれかのアミノ酸配列を含むか、又は(本質的に)配列番号1、配列番号3、配列番号5及び配列番号7からなる群から選択されるいずれかのアミノ酸配列からなるポリペプチドを有効成分として含む組成物の有効量を、これを必要とする個体に投与することを含む色素沈着疾患の治療方法を提供する。
【0021】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0022】
本発明において、用語「~を含む(comprising)」とは、「~を含有する」又は「~を特徴とする」と同じく使用され、組成物又は方法において、言及されていない追加的な要素、方法又は段階等を排除しない。用語「~からなる(consisting of)」とは、「~で構成される」と同じく使用され、別に記載されていない追加的な要素、段階又は成分等を除外することを意味する。用語「本質的に~からなる(essentially consisting of)」又は「~から本質的になる」とは、組成物又は方法の範囲において、記載された成分要素又は段階と共に、その基本的な特性に実質的に影響を及ぼさない成分、要素又は段階等を含むことを意味する。
【0023】
本明細書に使用された用語「ポリペプチド」又は「蛋白質」は、通常(従来)の意味によって使用されるもので、天然状態で一般的に発見されるように、アミノ酸(amino acid、aa)残基の重合体を意味する。ポリペプチドは、特定の長さに限定されないが、本発明の文脈では、一般的に全長(full length)タンパク質中の一部の断片を示し、翻訳後の修飾、例えばグリコシル化、アセチル化、リン酸化等及びその分野に公知された他の修飾(天然に発生する修飾及び非天然発生の修飾)を含むことができる。本発明のポリペプチド及び蛋白質は、任意の様々な公知の組換え及び/又は合成の技術を利用して製造することができ、その例示的な実施例は以下で改めて説明する。
【0024】
本明細書で使用されたアミノ酸の一文字(三文字)は、生化学の分野での標準略語規定に基づいて、下記のアミノ酸を意味する:
A(Ala):アラニン;C(Cys):システイン;D(Asp):アスパラギン酸;E(Glu):グルタミン酸;F(Phe):フェニルアラニン;G(Gly):グリシン;H(His):ヒスチジン;I(IIe):イソロイシン;K(Lys):リジン;L(Leu):ロイシン;M(Met):メチオニン;N(Asn):アスパラギン;O(Ply):ピロリシン;P(Pro):プロリン;Q(Gln):グルタミン;R(Arg):アルギニン;S(Ser):セリン;T(Thr):トレオニン;U(Sec):セレノシステイン;V(Val):バリン;W(Trp):トリプトファン;Y(Tyr):チロシン。
【0025】
また、本明細書のすべてのペプチドのアミノ酸配列は、生化学分野の標準規定に基づいて、アミノ末端(N-末端、amino terminal又はN-terminal)からカルボキシ末端(C-末端、carboxy terminal又はC-terminal)の方向に記載されている。
【0026】
従来では、AIMP1が、多機能tRNA合成酵素複合体(multi-tRNA synthetase complex)に結合して、多機能tRNA合成酵素の触媒活性(catalytic activity)を増進させる活性があることについて主に知られてきた。これらの従来知られた標準的な活性とは異なり、本発明は、AIMP1(aminoacyl tRNA synthetase complex interacting multifunctional protein 1)由来の特定のポリペプチドが、治療学的に関連する非標準的(non-canonical)な生物学的活性を保持するとの発見から由来する。
【0027】
すなわち、本発明者らは、AIMP1蛋白質から製作可能な多数の種類の断片ポリペプチドの中でも、配列番号1、配列番号3、配列番号5及び配列番号7からなる群から選択されるいずれかのアミノ酸配列からなる(又は本質的になる)断片ポリペプチドが、特異的に優れた美白効能を示すことを最初に究明した。特に、本発明の断片ポリペプチドは、メラニン生成抑制及び/又はチロシナーゼ抑制効能等の美白効能が、現在常用されている代表的な美白成分のアルブチンと比較しても同等乃至それ以上の水準に相当する。
【0028】
そこで、本発明は、配列番号1、配列番号3、配列番号5及び配列番号7からなる群から選択されるいずれかのアミノ酸配列からなることを特徴とする単離されたポリペプチドを提供する。
【0029】
本発明において、用語「単離された(isolated)」とは、天然の状態からヒトによって変更されたこと、つまり、天然環境から変化及び/又は除去されたことを意味する。例えば、有機体に本態的に存在するポリヌクレオチド又はポリペプチドは、単離されたものではないが、天然状態の共存物質から一旦分離された同じポリヌクレオチド又はポリペプチドは、「単離された」ものである。さらに、形質転換(transformation)、遺伝的操作又は他の全ての組換え方法によって有機体内に導入されたポリヌクレオチド又はポリペプチドは、有機体に存在するとしても、「単離された」ものである。
【0030】
本発明で提供するポリペプチドは、前述した配列番号1、配列番号3、配列番号5及び配列番号7からなる群から選択されるいずれかのアミノ酸配列からなることを特徴とする単離されたポリペプチドの機能的同等物を含む意味である。「機能的同等物」とは、前記本発明のポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上の配列相同性を有するポリペプチドを意味する。例えば、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%の配列相同性を有するポリペプチドを含むもので、本発明のポリペプチドと実質的に同質の生理活性を示すポリペプチドを意味する。ここで、用語「実質的に同質の生理活性」とは、特定性質の全体又は殆ど同じ程度の性質を示す状態を意味する。具体的には、本願で「実質的に同質の生理活性」とは、メラニン生成抑制及び/又はチロシナーゼ阻害効果をはじめ、皮膚美白、色素沈着防止(予防)、色素沈着抑制(改善、治療)活性を意味する。
【0031】
前記機能的同等物は、本発明のポリペプチドのアミノ酸配列中の一部が付加、置換又は欠失の結果として生成されたものでもある。前記アミノ酸の置換は、好ましくは保存的置換である。天然に存在するアミノ酸の保存的置換の例は、次の通りである:脂肪族アミノ酸(Gly、Ala、Pro)、疎水性アミノ酸(Ile、Leu、Val)、芳香族アミノ酸(Phe、Tyr、Trp)、酸性アミノ酸(Asp、Glu)、塩基性アミノ酸(His、Lys、Arg、Gln、Asn)、及び硫黄含有アミノ酸(Cys、Met)。また、前記機能的同等物には、本発明のポリペプチドのアミノ酸配列において、アミノ酸の一部が欠失された変形体も含まれる。前記アミノ酸の欠失又は置換は、好ましくは、本発明のポリペプチドの生理活性に直接的に関連していない領域に位置している。従って、前記本発明のポリペプチドのアミノ酸配列の両末端又は配列内にいくつかのアミノ酸が付加された変形体も含まれる。
【0032】
一実施態様において、前記機能的同等物は、本質的に配列番号1、配列番号3、配列番号5及び配列番号7からなる群から選択されるいずれかのアミノ酸配列からなることを特徴とする単離されたポリペプチドでもある。
【0033】
また、本発明の機能的同等物の範囲には、本発明による蛋白質の基本骨格及びその生理活性を維持しながら、蛋白質の一部化学構造が変形されたポリペプチド誘導体も含まれる。例えば、本発明のポリペプチドの安定性、貯蔵性、揮発性又は溶解度等を変更させるための構造変更がこれに含まれる。
【0034】
本明細書で配列相同性及び同一性は、本発明のポリペプチドのアミノ酸配列と候補配列を整列してギャップ(gap)を導入した後、本発明のポリペプチドのアミノ酸配列に対する候補配列のアミノ酸残基の百分率で定義される。必要な場合、最大百分率配列同一性を収得するために、配列同一性の部分として保存的置換は考慮しない。また、本発明のポリペプチドのアミノ酸配列のN-末端、C-末端又は内部伸長、欠損又は挿入は、配列同一性又は相同性に影響を与える配列として解釈されないことがある。また、前記配列同一性は二つの蛋白質又はポリペプチドのアミノ酸配列の類似した部分を比較するために使用される一般的な標準的方法によって決定することができる。BLAST又はこのようなコンピュータプログラムは、二つの蛋白質又はポリペプチドを、それぞれのアミノ酸が最適にマッチングされるように配置する。前記プログラムは、デフォルトオープニングペナルティ(default opening penalty)及びデフォルトギャップペナルティ(default gap penalty)を提供し、コンピュータプログラムと一緒に連携して使用することができるPAM250(標準スコアリング・マトリックス;Dayhoff et al., in Atlas of Protein Sequence and Structure, vol 5, supp 3, 1978)のようなスコアリングマトリックスを提供する。たとえば、百分率同一性は、以下のように計算することができる。一致する配列(identical matches)の合計数に100を乗じた後、対応するスパン(matched span)内のより長い配列の長さと、二つの配列を整列するために、より長い配列内に導入されたギャップ(gaps)の数の合計で分ける。
【0035】
本願発明のポリペプチドは、当業界に公知された利用可能な技術を利用して製造することができる。
【0036】
一例として、任意の様々な蛋白質分解酵素を利用して製造することができる。例示的なプロテアーゼ(蛋白質分解酵素)としては、例えば、アクロモペプチダーゼ(achromopeptidase)、アミノペプチダーゼ(aminopeptidase)、アンクロド(ancrod)、アンギオテンシン変換酵素(angiotensin converting enzyme)、ブロメライン(bromelain)、カルパイン(calpain)、カルパインI(calpain I)、カルパインII(calpain II)、カルボキシペプチダーゼA(carboxypeptidase A)、カルボキシペプチダーゼB(carboxypeptidase B)、カルボキシペプチダーゼG(carboxypeptidase G)、カルボキシペプチダーゼP(carboxypeptidase P)、カルボキシペプチダーゼW(carboxypeptidase W)、カルボキシペプチダーゼY(carboxypeptidase Y)、カスパーゼ1(caspase 1)、カスパーゼ2(caspase 2)、カスパーゼ3(caspase 3)、カスパーゼ4(caspase 4)、カスパーゼ5(caspase 5)、カスパーゼ6(caspase 6)、カスパーゼ7(caspase 7)、カスパーゼ8(caspase 8)、カスパーゼ9(caspase 9)、カスパーゼ10(caspase 10)、カスパーゼ11(caspase 11)、カスパーゼ12(caspase 12)、カスパーゼ13(caspase 13)、カテプシンB(cathepsin B)、カテプシンC(cathepsin C)、カテプシンD(cathepsin D)、カテプシンE(cathepsin E)、カテプシンG(cathepsin G)、カテプシンH(cathepsin H)、カテプシンL(cathepsin L)、キモパパイン(chymopapain)、キマーゼ(chymase)、キモトリプシン(chymotrypsin)、クロストリパイン(clostripain)、コラーゲナーゼ(collagenase)、補体C1r(complement C1r)、補体C1s(complement C1s)、補因子D(complement factor D)、補因子I(complement factor I)、ククミシン(cucumisin)、ジペプチジルペプチダーゼIV(dipeptidyl peptidase IV)、白血球エラスターゼ(elastase、leukocyte)、膵臓エラスターゼ(elastase、pancreatic)、エンドプロテイナーゼArg-C(endoproteinase Arg-C)、エンドプロテイナーゼAsp-N(endoproteinase Asp-N)、エンドプロテイナーゼGlu-C(endoproteinase Glu-C)、エンドプロテイナーゼLys-C(endoproteinase Lys-C)、エンテロキナーゼ(enterokinase)、Xa因子(factor Xa)、フィシン(ficin)、ヒューリン(furin)、グランザイムA(granzyme A)、グランザイムB(granzyme B)、HIVプロテアーゼ(HIV Protease)、IGase、カリクレイン組織(kallikrein tissue)、全身性ロイシンアミノペプチダーゼ(leucine aminopeptidase, general)、細胞基質性ロイシンアミノペプチダーゼ(leucine aminopeptidase, cytosol)、ミクロソームロイシンアミノペプチダーゼ(leucine aminopeptidase, microsomal)、マトリックスメタロプロテアーゼ(matrix metalloprotease)、メチオニンアミノペプチダーゼ(methionine aminopeptidase)、ニュートラゼ(neutrase)、パパイン(papain)、ペプシン(pepsin)、プラスミン(plasmin)、プロリダーゼ(prolidase)、プロナーゼE(pronase E)、前立腺特異的抗原(prostate specific antigen)、Streptomyces griseus由来の好アルカリ性プロテアーゼ(protease alkalophilic from Streptomyces griseus)、Aspergillus由来のプロテアーゼ(protease from Aspergillus)、Aspergillus saitoi由来のプロテアーゼ(protease from Aspergillus saitoi)、Aspergillus sojae由来のロテアーゼ(protease from Aspergillus sojae)、B. licheniformisプロテアーゼ(protease B. licheniformis, alkaline or alcalase)、Bacillus polymyxa由来のプロテアーゼ(protease from Bacillus polymyxa)、Bacillus sp.由来のプロテアーゼ(protease from Bacillus sp)、Rhizopus sp.由来のプロテアーゼ(protease from Rhizopus sp)、プロテアーゼS(protease S)、プロテアソーム類(proteasomes)、Aspergillus oryzae由来のプロテイナーゼ(proteinase from Aspergillus oryzae)、プロテイナーゼ3(proteinase 3)、プロテイナーゼA(proteinase A)、プロテイナーゼK(proteinase K)、プロテインC(protein C)、ピログルタル酸アミノペプチダーゼ(pyroglutamate aminopeptidase)、レンニン(rennin)、ストレプトキナーゼ(streptokinase)、サブチリシン(subtilisin)、サーモリシン(thermolysin)、トロンビン(thrombin)、組織プラスミノーゲン活性因子(tissue plasminogen activator)、トリプシン(trypsin)、トリプターゼ(tryptase)及びウロキナーゼ(urokinase)等を挙げることができる。当業者であれば、製作しようとする断片の化学的特異性を考慮して、どのような蛋白質分解酵素が適切であるかを容易に決定可能である。
【0037】
また別の一例として、本願で開示するポリペプチドは、当業者に公知された任意の適切な手順、つまり、公知のポリペプチド合成方法(ex.遺伝工学的方法、化学合成)を利用して合成することができる。
【0038】
例えば、本発明に係るポリペプチドは、遺伝工学的方法による組換え技術により製造することができる。遺伝工学的方法によるペプチドの製作は、例えば、まず通常的な方法により、前記本発明のポリペプチド又はその機能的同等物を符号化する核酸(ポリヌクレオチド)を製作する。前記核酸は、適切なプライマーを用いてPCRで増幅して準備することができる。又は当業界に公知された標準方法により、例えば、自動DNA合成器を使用してDNA配列を合成することもできる。製作された核酸は、これに作動可能に連結されて(operatively linked)核酸の発現を調節する一つ以上の発現調節配列(expression control sequence;例:プロモーター、エンハンサー等)を含むベクターに挿入させて組換え発現ベクターを製作し、宿主細胞に形質転換させた後、前記細胞を、目的とするポリペプチドが発現されるのに適切な培地及び条件下で培養し、培養物から前記核酸から発現された実質的に純粋なポリペプチドが回収される。前記回収は、当業界に公知された方法を利用して行うことができる。これらに限定はされないが、例えば、例をあげれば抽出法、再結晶法、様々なクロマトグラフィー(ゲルろ過法、イオン交換、沈殿、吸着、逆相)、電気泳動、逆流分配法等、当業界に公知された方法で分離及び精製することができる。前記で“実質的に純粋なポリペプチド(substantially pure polypeptide)”とは、本発明に係るポリペプチドが、宿主細胞から由来した如何なる他のタンパク質も実質的に含まないことを意味する。
【0039】
また、例えば、本発明に係るポリペプチドは、当業界に公知された化学的合成方法により製造することができる。代表的な方法としては、これらに限定されるものではないが、液相又は固相合成、断片凝縮、F-MOC又はT-BOC化学法が含まれる。
【0040】
具体的な一例として、本発明のポリペプチドは、固相法を利用した直接的ペプチド合成によって製造することができる。固相ペプチド合成(SPPS)方法は、小さな多孔性のビーズ(beads)にリンカー(linkers)と称する機能性ユニット(functional units)を付着してペプチド鎖が続けられるように誘導することにより、合成を開始することができる。液相方法とは異なり、ペプチドはビーズと共有結合してTFA(trifluoroacetic acid)のような特定反応物により切断される前まで、濾過(filtration)過程によって脱落することを防止する。固相に付着されたペプチドのN-末端アミンとN-保護アミノ酸ユニット(N-protected amino acid unit)が結合する保護(protection)過程、脱保護(deprotection)過程、再び現れたアミングループ(amine group)と新たなアミノ酸が結合するカップリング(coupling)過程のサイクル(cycle、deprotection-wash-coupling-wash)が繰り返されながら合成がなされるようになる。前記SPPS方法は、マイクロ波(microwave)技術を併用して行うことができ、マイクロ波技術は、ペプチド合成の過程で熱を加えることにより、各サイクルのカップリングと脱保護に要求される時間を短縮させることができる。前記熱エネルギーは、伸長されるペプチド鎖が折りたたまれたり(folding)、集合体を形成したりすること(aggregation)を防止して化学的結合を促進させることができる。
【0041】
また、液相ペプチド合成法により、本発明のポリペプチドを製作することができ、その具体的な方法は、下記の文献を参照する:米国登録特許第5516891号。また、本発明のポリペプチドは、前記固相合成法と液相合成法を組み合わせる方法等の様々な方法で合成可能であり、本明細書に記述された手段にその製造方法が制限されない。
【0042】
蛋白質合成は、手動技法を利用して、又は自動化により遂行することができる。自動化された合成は、例えば、Applied Biosystems 431Aペプチド合成器等を利用して達成することができる。代案的に、様々な断片が別途で化学的に合成され、化学的方法を利用して組み合わされて目的分子を製造することができる。
【0043】
また、必要に応じて、本発明のポリペプチドは、リン酸化(phosphorylation)、硫酸化(sulfation)、アクリル化(acrylation)、糖化(glycosylation)、メチル化(methylation)、ファルネシル化(farnesylation)、アセチル化(acetylation)、アミド化(amidation)等の適切な置換基が付加されて修飾(modification)されてもよい。
【0044】
さらに、本発明は、前述した本発明のポリペプチドを符号化するポリヌクレオチドを提供する。
【0045】
用語「ポリヌクレオチド」、「核酸」は、単一鎖又は二重鎖の形態からなるデオキシリボヌクレオチド(DNA)又はリボヌクレオチド(RNA)を意味する。他の制限がない限り、天然に生成されるヌクレオチドと類似した方法で核酸に混成化される天然ヌクレオチドの公知のアナログも含まれる。
【0046】
好ましくは、本明細書で使用される用語「DNA」、「ポリヌクレオチド」及び「核酸」は、特定の種の全ゲノムDNAから単離されているDNA分子を指す。従って、ポリペプチドを符号化するDNA断片(部分、segment)とは、そのDNA断片を得ることができる種(species)の全ゲノムDNAから実質的に単離されるか、又は精製されている一つ以上のコーディング配列(coding sequence)からなるDNA断片を指す。用語「DNA断片」及び「ポリヌクレオチド」は、DNA断片及び前記断片のさらに小さい断片を含めて、さらに組換えベクター(例えば、プラスミド、コスミド、ファージミド、殺菌ウイルス、ウイルス等を含む。)を含む。
【0047】
当業者により認識されるように、ポリヌクレオチドは、単鎖(コード配列又はアンチセンス配列)でもあって、又は二本鎖でもあり、さらに、DNA分子(ゲノム、cDNA又は合成)又はRNA分子でもある。すなわち、前記ポリヌクレオチドは、前記ポリペプチドをコーティングするヌクレオチド配列だけでなく、その配列に相補的な(complementary)配列も含む。前記相補的な配列は、完全に相補的な配列だけでなく、実質的に相補的な配列も含む。追加のコーディング(coding)又は非コーディング(non-coding)配列が、本発明のポリヌクレオチド内に存在することができる。また、ポリヌクレオチドは、他の分子及び/又は支持材料に連結することができる。
【0048】
本発明で、前記ポリヌクレオチドは、前述した本発明のポリペプチドを符号化することができる限り、ポリヌクレオチドの塩基の組み合わせ(つまり、塩基配列)が特に制限されない。
【0049】
一実施態様で、本発明の配列番号1で表示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドは、例えば、配列番号2で表示される塩基配列を含む(又はからなる、もしくは本質的になる)ポリヌクレオチドによってコーディングされるものでもある。
【0050】
一実施態様で、本発明の配列番号3で表示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドは、例えば、配列番号4で表示される塩基配列を含む(又はからなる、もしくは本質的になる)、ポリヌクレオチドによってコーディングされるものでもある。
【0051】
一実施態様で、本発明の配列番号5で表示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドは、例えば、配列番号6で表示される塩基配列を含む(又はからなる、もしくは本質的になる)ポリヌクレオチドによってコーディングされるものでもある。
【0052】
一実施態様で、本発明の配列番号7で表示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドは、例えば、配列番号8で表示される塩基配列を含む(又はからなる、もしくは本質的になる)ポリヌクレオチドによってコーディングされるものでもある。
【0053】
また、本発明は、前記ポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。
【0054】
用語「ベクター(vector)」とは、宿主細胞から目的遺伝子を発現させるための手段を意味する。本発明のベクターは、通常のクローニングベクター又は発現ベクターでもあり、発現ベクターは、プロモーター、オペレーター、開始コドン、終結コドン、ポリアデニル化シグナル及びエンハンサー(促進遺伝子)のような発現調節配列以外にも、膜標的化又は分泌のためのシグナル配列又はリーダー配列を含めて、目的によって多様に製造することができる。本発明による前記ポリヌクレオチド配列は、発現調節配列に作動可能に連結することができ、前記作動可能に連結された遺伝子配列と発現調節配列は、選択マーカー及び複製開始点(replication origin)を共に含めている一つの発現ベクター内に含まれることができる。「作動可能に連結(operably linked)される」とは、適切な分子が発現調節配列に結合されるときに遺伝子発現を可能にする方法で連結されたことを意味する。「発現調節配列(expression control sequence)」とは、特定の宿主細胞で作動可能に連結されたポリヌクレオチド配列の発現(特に、転写及び/又は翻訳)を調節するDNA配列を意味する。そのような調節配列は、転写を実施するためのプロモーター、転写を調節するための任意のオペレーター配列、適切なmRNAリボソーム結合部位をコーディングする配列、並びに転写及び翻訳の終結を調節する配列を含む。また、前記ベクターは、ベクターを含有する宿主細胞を選択するための選択マーカーを含めて、複製可能なベクターである場合、複製開始点を含む。
【0055】
これらに限定はされないが、使用可能なベクターには、例えば、プラスミドベクター、コスミドベクター、バクテリオファージベクター、並びにアデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター及びアデノ関連ウイルスベクターのようなウイルスベクターを含む。組換えベクターに使用できるベクターは、当業界でしばしば使用されるプラスミド(例えば、pSC101、pGV1106、pACYC177、ColE1、pKT230、pME290、pBR322、pUC8/9、pUC6、pBD9、pHC79、pIJ61、pLAFR1、pHV14、pGEXシリーズ、pETシリーズ及びpUC19等)、ファージ(例えば、λgt4λB、λ-Charon、λΔz1及びM13等)又はウイルス(例えば、CMV、SV40等)を操作して製作することができる。
【0056】
一実施態様で、前記組換えベクターは、原核細胞又は真核細胞を宿主にして構築することができる。例えば、使用されるベクターが発現ベクターであり、原核細胞を宿主とする場合には、転写を進行させることができる強力なプロモーター(例えば、pLλプロモーター、trpプロモーター、lacプロモーター、tacプロモーター、T7プロモーター等)、翻訳の開始のためのリボソーム結合部位及び転写/翻訳終結配列を含むのが一般的である。真核細胞を宿主とする場合には、ベクターに含まれる真核細胞で作動する複製開始点はf1複製開始点、SV40複製開始点、pMB1複製開始点、アデノ複製開始点、AAV複製開始点、CMV複製開始点及びBBV複製開始点等を含むが、これに限定されるものではない。また、哺乳動物細胞のゲノムから由来したプロモーター(例えば、メタロチオネインプロモーター)又は哺乳動物ウイルスから由来したプロモーター(例えば、アデノウイルス後期プロモーター、ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター、SV40プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター及びHSVのtkプロモーター)を利用することができ、転写終結配列としてポリアデニル化配列を一般的に有する。
【0057】
従って、本発明はさらに前記ベクターで形質転換された形質転換体を提供する。
【0058】
前記ベクターで形質転換することは、当業者に公知された形質転換技術によって行うことができる。例えば、これに限定はされないが、一過性形質感染(transient transfection)、微細注射(microinjection)、形質導入(transduction)、細胞融合(例えば、PEG-媒介融合法(PEG-mediated fusion))、微細射出法(microprojectile bombardment)、電気衝撃遺伝子伝達法(electroporation)、リン酸カルシウム(CaPO4)沈殿、塩化カルシウム(CaCl2)沈殿、リボソーム媒介された形質感染(liposome-mediated transfection)、DEAEデキストラン媒介された形質感染(DEAE Dextran-mediated transfection)、ポリブレン媒介された形質感染(polybrene-mediated transfection)、電気穿孔法(electroporation)、遺伝子銃(gene gun)及び細胞内にDNAを流入させるための他の公知の方法によって標的細胞内に導入することができる。
【0059】
前記用語「形質転換体」とは、「宿主細胞」等と互換性を有して使用することができ、任意の手段(例:電気衝撃法、カルシウムホスファターゼ沈殿法、微細注入法、形質転換法、ウイルス感染等)によって細胞内に導入された異種性DNAを含む原核又は真核細胞を意味する。
【0060】
本発明で、前記形質転換体は、クローニングの分野で通常的に使用される全ての種類の単細胞有機体、例えば各種バクテリア(例えば、Clostridia属、大腸菌等)等の原核細胞微生物、酵母等の下等真核細胞微生物、及び、昆虫細胞、植物細胞、哺乳動物等を含む高等真核生物由来の細胞を宿主細胞として使用することができ、これらに限定はされない。宿主細胞によって、蛋白質の発現量と修飾等が異なるので、当業者が目的とすることに最も適切な宿主細胞を選択して使用することができる。一例として、本発明で形質転換体として用いられる微生物としては、大腸菌(Escherichia coli)、枯草菌(Bacillus subtilis)、ストレプトマイセス属(Streptomyces spp.)、シュードモナス属(Pseudomonas spp.)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、スタフィロコッカス属(Staphylococcus spp.)、アグロバクテリウム・ツメファシエンス等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0061】
本発明は、配列番号1、配列番号3、配列番号5及び配列番号7からなる群から選択されるいずれかのアミノ酸配列からなる(又はから本質的になる)ポリペプチドを有効成分として含む皮膚美白用化粧料組成物を提供する。
【0062】
本発明に係るポリペプチドは、メラニン生成抑制及び/又はチロシナーゼ抑制効果が優れ、細胞毒性が極めて低い。従って、本願発明は、前記本発明によるポリペプチドを有効成分として含む美白用化粧料組成物を提供する。
【0063】
本発明で、「美白効果」とは、メラニン色素の合成を阻害することにより、肌のトーンを明るくするだけでなく、紫外線、ホルモン又は遺伝等のさまざまな原因による皮膚の過色素沈着(シミ又はそばかす等)を改善することを意味する。
【0064】
本発明の化粧料組成物は、当業界で通常的に製造されるいかなる剤形でも製造することができ、本発明に係るポリペプチド以外にも、皮膚科学的に許容可能な媒質又は基剤を含有することにより、皮膚科学分野で通常的に使用される局所適用又は全身適用できる補助剤の形態で製造することができる。
【0065】
また、本発明の化粧料組成物は、本発明に係るポリペプチドの他に追加して、脂肪物質、有機溶媒、溶解剤、濃縮剤及びゲル化剤、軟化剤、抗酸化剤、懸濁化剤、安定化剤、発泡剤(foaming agent)、芳香剤、界面活性剤、水、イオン型又は非イオン型乳化剤、充填剤、金属イオン封鎖剤及びキレート化剤、保存剤、ビタミン、封鎖剤、湿潤化剤、エッセンシャルオイル、染料、顔料、親水性又は親油性活性剤、脂質小嚢又は化粧品に通常的に使用される任意の他の成分等、化粧品学又は皮膚科学分野で通常的に使用される補助剤を含有することができる。そして、前記の成分は、皮膚科学分野で一般的に使用される量で導入することができる。
【0066】
適切な化粧料組成物の剤形には、例えば、溶液、ゲル、固体又は無水生地生成物、水相に油相を分散させて得たエマルジョン、懸濁液、マイクロエマルジョン、マイクロカプセル、微細顆粒球又はイオン型(リポソーム)、非イオン型の小胞分散剤の形態、クリーム、スキン、ローション、パウダー、軟膏、スプレー又はコンシルスティック(conceal stick)の形態で提供することができる。また、泡沫(foam)の形態、又は圧縮された推進剤をさらに含有したエアゾール組成物の形態でも製造することができる。
【0067】
本発明の化粧料組成物を添加することができる製品には、これに限定されるものではないが、スキンローション、エッセンス、栄養エッセンス、パック、石鹸、シャンプー、クレンジングフォーム、クレンジングローション、クレンジングクリーム、ボディローション、ボディクレンザー、トリートメント、美容液、乳液、プレスパウダー、ルースパウダー、アイシャドー等の剤形を含む。
【0068】
前記本発明の化粧料組成物に含有される本発明のポリペプチドの含量は、これらに限定はされないが、化粧料組成物の総重量に対して、0.00001乃至10重量%、好ましくは0.0001乃至1重量%の範囲で含有することができ、これは目的とする美白の効果、塗布の程度、剤形の種類、化粧料組成物内のポリペプチドの安定性等の要因を考慮して、通常の技術者が適切に決定することができる。
【0069】
また、本発明は、配列番号1、配列番号3、配列番号5及び配列番号7からなる群から選択されるいずれかのアミノ酸配列からなる(又はから本質的になる)ポリペプチドを有効成分として含む色素沈着疾患の予防又は治療用薬学的組成物を提供する。
【0070】
上述した通り、本発明に係るポリペプチドは、細胞毒性がなく、メラニン生成抑制効果が優れているので、これを有効成分として含む美白用薬学的組成物を提供する。従って、本発明に係る薬学的組成物は、過度なメラニン色素沈着の病理状態、例えば老化/光老化、妊娠等、急激なホルモンの変化、傷、炎症、火傷等による皮膚損傷と再生等を原因とした色素沈着、シミ、そばかす、黒子、斑点、母斑、染み、老人性黒子、メラニン皮膚症等を改善して緩和するために使用することができ、これは以下でより詳細に説明される。
【0071】
本発明において、用語「色素沈着疾患」は、メラニンの過剰生産又は/及びその(過剰)蓄積に起因した色素性疾患を意味するものでもある。前記(過剰な)色素沈着疾患は、皮膚以外にもメラニンメカニズムと関連して病態が進行しているすべての患部及び症状を全て含む。これらに限定はされないが、一実施態様で、前記色素沈着症は皮膚の色素沈着疾患でもある。
【0072】
前記色素沈着疾患は、メラニンの過剰蓄積に起因したもので、当業界に知られているものであれば、その種類は特に制限されないが、例えば、遺伝性対測性色素異常症、網状肢端色素沈着症、肝斑、シミ、そばかす、黒子(例えば、黒色点、茶色点)、母斑、薬物(例えば、ミノサイクリン、ブレオマイシン、ブスルファン又はジドブジンから選択される薬物)による色素沈着、炎症後色素沈着、皮膚炎で発生する過色素沈着、老人性色素斑(老人性斑点)、日光性色素斑、妊娠性褐色斑(gravidic chloasma)、シミ、肌のくすみ、メラニン皮膚症、表皮メラニン細胞性病変(Epidermal melanocytic lesion)、ミルクコーヒー班点(Cafe's au lait macules)、真皮メラニン細胞性病変(Dermal melanocytic lesions)、蒙古斑(Mongolian spot)、黒子(Lentigines)、黒色腫(melanoma)、悪性黒子黒色腫(Lentigo maligna melanoma)、表在拡張性黒色腫(Superficial spreading melanoma)、先端黒子性黒色腫(Acral lentiginous melanoma)、結節性黒色腫(Nodular melanoma)、色素性基底細胞癌(pigment basal cell carcinoma)、色素性皮膚繊維腫(dermatofibromas)、色素性皮膚嚢症(dermoidcyst)、色素性ケロイド(keloid)及び色素性角質胞腫(keratoacanthomas)等を含む。
【0073】
前記母斑は、具体的には扁平母斑、色素性母斑、ベッカー母斑(Becker's Nevus)、班紋状母斑(Nevus Spilus)、オオタ母斑(Nevus of Ota)、後天性両側性オオタ母斑様斑(Acquired bilateral nevus of Ota-like macules)、イトー母斑(nevus of Ito)、青色母斑(Blue nevus)、メラニン細胞性母斑(Melanocytic nevus)、境界母斑(Junctional nevus)、複合母斑(Compound nevus)、真皮内母斑(Intradermal nevus)、雲輪母斑(Halo nevus)、先天性メラニン細胞性母斑(Congenital nevocytic nevus)、スピッツ母斑(Spitz nevus)及び異型性母斑(Dysplastic nevus)等を含む。
【0074】
好ましくは、本発明の前記メラニン過剰蓄積に起因した皮膚色素性疾患は、遺伝性対側性色素異常症、網状肢端色素沈着症、肝斑、シミ、老人性色素斑、日光性色素斑、妊娠性褐色斑(gravidic chloasma)、メラニン皮膚症、そばかす、皮膚シミ、ドット、班点、シミ、母斑、薬物(例えば、ミノサイクリン、ブレオマイシン、ブスルファン又はジドブジンから選択される薬物)による色素沈着、炎症後色素沈着及び皮膚炎から発生する過色素沈着等でもある。
【0075】
本発明に係る前記薬学的組成物には、直接的に本発明のポリペプチドが、それ自体として含まれている形態で提供されるだけでなく、前記組成物を細胞に投与した際に、本発明のポリペプチドの存在及びその作用が担保される間接的な形態で組成物内に含まれて提供されるものを全て含む。これらの間接的な形態として、本発明は前記本発明のポリペプチドを符号化するポリヌクレオチド(例えば、配列番号2、配列番号4、配列番号6及び配列番号8からなる群から選択されるいずれかのポリヌクレオチド)を含む組換え発現ベクターを有効成分として含む色素沈着疾患の予防又は治療用薬学的組成物を提供することができる。プラスミド発現ベクターを利用した遺伝子(核酸、ポリヌクレオチド)の伝達方法は、哺乳動物細胞に直接的にプラスミドDNAを伝達する方法であって、FDAから承認を受けたヒトに使用できる方法である(Nabel, E. G., et al., Science, 249: 1285-1288, 1990)。本発明で使用できるプラスミド発現ベクターには、当業界に公知された哺乳動物の発現プラスミドを使用することができる。例えば、これに限定はされないがpRK5(欧州特許第307,247号)、pSV16B(国際特許公開第91/08291号)及びpVL1392(PharMingen)等が代表的であるが、これに制限されない。
【0076】
本発明に係るポリペプチドは、それ自体又は薬学的に許容可能な塩の形態で使用することができる。本発明で“薬学的に許容可能な”とは、生理学的に許容され、ヒトに投与される時、活性成分の作用を阻害せず、通常的に胃腸障害、めまいのようなアレルギー反応又は類似した反応を起こさない非毒性の組成物を意味する。前記塩としては、薬学的に許容可能な遊離酸(free acid)によって形成された酸付加塩が好ましく、遊離酸としては、有機酸と無機酸を使用することができる。前記有機酸は、これらに限定されるものではないが、クエン酸、酢酸、乳酸、酒石酸、マレイン酸、フマル酸、ギ酸、プロピオン酸、シュウ酸、トリフルオロ酢酸、安息香酸、グルコン酸、メタスルホン酸、グリコール酸、コハク酸、4-トルエンスルホン酸、グルタミン酸及びアスパラギン酸を含む。また、前記無機酸は、これらに限定されるものではないが、塩酸、臭素酸、硫酸及びリン酸を含む。
【0077】
本発明に係るポリペプチドを有効成分として含む薬学的組成物は、メラニン生合成抑制又は/及び美白の効果のために薬学的に許容される担体と一緒に、当業界に公知された方法で投与経路に応じて多様に製剤化することができる。前記担体には、全ての種類の溶媒、分散媒質、水中油又は油中水エマルジョン、水性組成物、リポソーム、マイクロビーズ及びマイクロソームが含まれる。
【0078】
薬学的に許容される担体には、例えば、経口投与用担体又は非経口投与用担体をさらに含むことができる。経口投与用担体はラクトース、デンプン、セルロース誘導体、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸等を含むことができる。また、非経口投与用担体は、水、適切な油、食塩水、水性グルコース及びグリコール等を含むことができ、安定化剤及び保存剤をさらに含むことができる。適切な安定化剤としては、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、又はアスコルビン酸のような抗酸化剤がある。適切な保存剤には、塩化ベンザルコニウム、メチル又はプロピルパラベン及びクロロブタノールがある。本発明の薬学的組成物は、前記成分の他に潤滑剤、湿潤剤、甘味料、香味剤、乳化剤、懸濁剤等をさらに含むことができる。その他の薬学的に許容される担体及び製剤は、当業界に公知されていることを参考にすることができる。
【0079】
本発明の組成物の総有効量は、単回投与(single dose)で患者に投与することができ、複数回投与(multiple dose)で長期間投与される分割治療方法(fractionated treatment protocol)により投与することができる。本発明の薬学的組成物は、疾患の程度によって、有効成分の含量を異にすることができる。これらに限定はされないが、好ましくは本発明の薬学的組成物の好ましい全体容量は1日当たり患者の体重1kg当たり約0.001μg乃至1000mg、最も好ましくは0.01μg乃至500mgでもある。しかし、前記薬学的組成物の容量は、製剤化の方法、投与経路及び治療回数だけでなく、患者の年齢、体重、健康状態、性別、疾患の重症度、食餌及び排泄率等、さまざまな要因を考慮して患者に対する有効投与量が決定されるので、このような点を考慮すると、当分野の通常的な知識を有する者であれば、本発明の組成物の適切な有効投与量を決定することができる。本発明に係る薬学的組成物は、本発明の効果を示す限り、その剤形、投与経路及び投与方法に特に制限されない。
【0080】
本発明の組成物は、ヒトをはじめとする哺乳動物にどのような方法でも投与することができる。投与経路としては、これらに限定はされないが、経口的又は非経口的に投与することができる。非経口的な投与方法としてはこれに限定はされないが、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、境膜内、心臓内、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、腸管、局所、舌下又は直腸内投与でもある。メラニンの生成が主に起こる部分は皮膚であるので、本発明に係る薬学的組成物は、経皮で投与するのが主な投与経路にもなれるが、これに限定されるものではない。
【0081】
本発明の薬学的組成物は、上述したような投与経路により経口投与用又は非経口投与用製剤として剤形化することができる。
【0082】
経口投与用製剤の場合に、本発明の組成物は、粉末、顆粒、錠剤、丸剤、糖衣錠剤、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、懸濁液等に、当業界に公知された方法を利用して、剤形化することができる。例えば、経口用製剤は、活性成分を固体賦形剤と配合し、これを粉砕して適切な補助剤を添加した後、顆粒の混合物に加工することにより、錠剤又は糖衣錠剤を得ることができる。適切な賦形剤の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、及びマルチトール等を含む糖類と、トウモロコシ澱粉、小麦澱粉、米澱粉及び馬鈴薯澱粉等を含む澱粉類、セルロース、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロース等を含むセルロース類、ゼラチン、ポリビニルピロリドンのような充填剤を含むことができる。また、場合によっては架橋結合ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸又はアルギン酸ナトリウム等を崩解剤に添加することができる。さらに、本発明の薬学的組成物は、抗凝集剤、潤滑剤、湿潤剤、香料、乳化剤及び防腐剤等をさらに含むことができる。
【0083】
非経口投与用製剤の場合には、注射剤、クリーム剤、ローション剤、外用軟膏剤、オイル剤、保湿剤、ゲル剤、エアゾール及び鼻腔吸入剤の形態で当業界に公知された方法で剤形化することができる。これらの剤形は全て製薬化学に一般的に公知された処方書に記載されている。
【0084】
一例に、これらに限定はされないが、本発明の薬学的組成物は、適切な非経口用担体と共に注射剤又は経皮投与剤(皮膚外用剤を含む)の形態で、当業界に公知された方法により剤形化することができる。このような場合、例えば、本発明の薬学的組成物を注射型製剤に製造してこれを30ゲージの細い注射針で皮膚を軽く刺す(prick)か又は、薬学的組成物を皮膚に直接塗布する方法で投与することができる。これらの剤形は、製薬化学に一般的に公知された処方書に記述されている。
【0085】
一実施態様では、本発明の薬学的組成物は、注射剤として製剤化されて提供される。前記注射剤の場合には、必ず滅菌しなければならず、バクテリア及び真菌のような微生物の汚染から保護されるべきである。注射剤の場合、適切な担体の例としては、これに限定はされないが、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール及び液体ポリエチレングリコール等)、これらの混合物及び/又は植物油を含む溶媒又は分散媒質でもある。より好ましくは、適切な担体にはハンクス液、リンゲル液、トリエタノールアミンが含有されたPBS(phosphate buffered saline)又は注射用滅菌水、10%エタノール、40%プロピレングリコール及び5%デキストロースのような等張溶液等を使用することができる。前記注射剤を微生物汚染から保護するためには、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール等の様々な抗菌剤及び抗真菌剤をさらに含むことができる。また、前記注射剤は殆どの場合、糖又は塩化ナトリウムのような等張化剤をさらに含むことができる。
【0086】
一実施態様で、本発明の薬学的組成物は経皮投与剤の形態で製剤化される。経皮投与剤の場合、軟膏剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、外用(液)剤、パスタ剤、リニメント剤、エアゾール剤等の形態が含まれる。前記「経皮投与」とは、薬学的組成物を局所的に皮膚に投与して薬学的組成物に含有された有効な量の活性成分が皮膚内に伝達されることを意味する。
【0087】
一例として、本発明の薬学的組成物は、皮膚外用剤(外用液剤)として製剤化されて提供することができる。本発明の皮膚外用剤は、有効成分として本発明のポリペプチドを含めて、薬学的に許容可能な担体を含むことができる。さらに、追加的に脂肪物質、有機溶媒、溶解剤、濃縮剤、ゲル化剤、軟化剤、抗酸化剤、懸濁化剤、安定化剤、発泡剤(foaming agent)、芳香剤、界面活性剤、水、イオン型又は非イオン型乳化剤、充填剤、金属イオン封鎖剤及びキレート剤、保存剤、ビタミン、封鎖剤、湿潤化剤、エッセンシャルオイル、染料、顔料、親水性又は親油性活性剤、脂質小胞又は皮膚用外用剤に通常的に使用される任意の他の成分等、皮膚科学分野で通常的に使用される補助剤を含有することができる。また、前記成分は皮膚科学分野で一般的に使用される量で導入することができる。
【0088】
前記皮膚外用剤の製剤形態には、これに限定はされないが、例えば、液状塗布剤、噴霧剤、ローション剤、ゲル剤、パスタ剤、軟膏剤、エアゾール、粉末剤、経皮吸収剤等がある。本発明の外用剤で薬学的に許容される担体には、その剤形によって異なるが、ワセリン、流動パラフィン、ゲル化炭化水素(プラスチベース)等の炭化水素類;中鎖脂肪酸トリグリセリド、豚脂、ハードファット、カカオ脂等の動植物性油;セタノール、ステアリルアルコール、ステアリン酸、パルミチン酸イソプロピル等の高級脂肪酸アルコール及び脂肪酸及びそのエステル類;ポリエチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、グリセロール、ゼラチン、白糖、糖アルコール等の水溶性基剤;グリセリン脂肪酸エステル、ステアリン酸ポリオキシル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等の乳化剤;アクリル酸エステル、アルギン酸ナトリウム等の粘着剤;液化石油ガス、二酸化炭素等の噴射剤;パラオキシ安息香酸エステル類等の防腐剤等を挙げることができる。また、これらの他にも安定剤、香料、着色剤、pH調整剤、希釈剤、界面活性剤、保存剤、抗酸化剤等を必要に応じて配合することができる。本発明の外用剤の使用は、通常の方法によりメラニン過沈着患部に塗布することが好ましい。
【0089】
また、本発明に係る外用剤は、通常的な絆創膏の創傷剥離カバー等のような固体支持体上に粘着されて使用される。このような形態の剤形は、例えば、穿孔されたプラスチックフィルム形態の非付着性傷の剥離カバーを有する絆創膏(Smith&Nephew Ltd);Johnson&Johnsonの薄いストリップ(strip)、パッチ(patch)、スポット(spot)、可塑性ストリップ形態のバンド-エイド(BAND-AID);Colgate-Palmolive Co.のキュリティキュアードアウチリス(Curity CURAD Ouchless)絆創膏;及びAmerican White Cross Laboratories Inc.のスティック-タイト(STIK-TITE)弾性ストリップを挙げることができる。本発明のポリペプチドは、このような形態の剤形に有効成分として適用することができる。
【0090】
また、本発明に係る薬学的組成物は、一つ以上の緩衝剤(例えば、食塩水又はPBS)、炭化水素(例えば、グルコース、マンノース、スクロース又はデキストラン)、抗酸化剤、静菌剤、キレート化剤(例えば、EDTA又はグルタチオン)、アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム)、懸濁剤、濃厚剤及び/又は保存剤を追加して含むことができる。
【0091】
また、本発明の薬学的組成物は、哺乳動物に投与された後、活性成分の迅速な、持続する、又は遅延された放出を提供することができるように、当業界に公知された方法を使用して製剤化することができる。
【0092】
また、本発明の薬学的組成物は、単独で投与するか又はメラニン生成抑制、チロシナーゼ抑制又は美白効果がある公知の化合物と併用して投与することができる。
【0093】
また、本発明は、美白用化粧料組成物を製造するための、配列番号1、配列番号3、配列番号5及び配列番号7からなる群から選択されるいずれかのアミノ酸配列からなるポリペプチドの使用を提供する。
【0094】
また、本発明は、配列番号1、配列番号3、配列番号5及び配列番号7からなる群から選択されるいずれかのアミノ酸配列からなるポリペプチドを有効成分として含む組成物の有効量を、これを必要とする個体に投与することを含む美白方法を提供する。
【0095】
本発明は、色素沈着疾患治療用製剤を製造するための、配列番号1、配列番号3、配列番号5及び配列番号7からなる群から選択されるいずれかのアミノ酸配列からなるポリペプチドの使用を提供する。
【0096】
本発明は配列番号1、配列番号3、配列番号5及び配列番号7からなる群から選択されるいずれかのアミノ酸配列からなるポリペプチドを有効成分として含む組成物の有効量を、これを必要とする個体に投与することを含む色素沈着疾患の治療方法を提供する。
【0097】
本発明の前記「有効量」とは、個体に投与したとき、色素沈着疾患の改善、治療、予防、検出、診断、又は色素沈着疾患の抑制又は減少効果を示す量を意味し、前記「個体」とは、動物、好ましくは、哺乳動物、特にヒトを含む動物でもあって、動物から由来した細胞、組織、器官等でもある。前記個体とは、前記の効果が必要な患者(patient)でもある。
【0098】
本発明の前記「治療」とは、色素沈着疾患、又は色素沈着疾患の症状を改善させることを包括的に指称し、これは前記疾患を治癒したり、実質的に予防するか又は、状態を改善させることを含むことができ、前記疾患から始まった一つの症状又は殆どの症状を緩和させたり、癒したり、予防することを含むが、これに制限されるものではない。
【0099】
[発明の効果]
本願発明で開示されるポリペプチドは、優れたチロシナーゼ抑制活性及びメラニン生成抑制効果を示し、細胞毒性がないため、美白機能性成分として優れた潜在力を有する。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【
図1】
図1は、本発明のポリペプチドのメラニン抑制能を確認した結果を示す。
【
図2】
図2は、本発明のポリペプチドのチロシナーゼ抑制能を確認した結果を示す。
【
図3】
図3は、本発明のポリペプチドが、細胞毒性を示さないことを確認した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0101】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0102】
但し、下記の実施例は、本発明を例示するのみのもので、本発明の内容が下記実施例に限定されるものではない。
【0103】
実施例1:美白効能を有するポリペプチドの製作
本発明者らは、全長AIMP1蛋白質(配列番号9)から、それぞれ異なる位置で様々な長さの断片ポリペプチドを製作した。製作された多くの断片ポリペプチドから、配列の長さが短いながらも優れた機能性を示すポリペプチドを発掘しようとさまざまな実験を重ねた結果、本発明者らは、下記表1に図示された断片ポリペプチドが、短い配列でありながらも特異的にメラニン減少効果及びチロシナーゼ抑制効果が顕著で、優れた美白効果を示すことを新規に究明した。
【0104】
【0105】
前記本発明のポリペプチド(表1)の優れた美白効果は、他のAIMP1由来の断片ポリペプチド及び公知の美白成分を対照群として使用した実験を通じて証明され。これらの結果を下記実施例2を通じて代表的に示す。実験に使用されたポリペプチド10gは、GL Biochem社に依頼して純度95%以上で、F-Mocを利用した固相合成(solid phage synthesis)法で製作された。
【0106】
実施例2:本発明のポリペプチドの優れた美白効果確認
2-1.メラニン抑制能確認_Melanin Assay
B16F10細胞(6x104 cells/well)を6ウェルプレートに分柱して培養した。12時間後、培地をα-MSH(Sigma、0.5μM)及び試験物質を含む培地に交換した。ポリペプチドは、それぞれ10μMずつ処理された。また、対照群として、美白成分として広く知られたアルブチン(arbutin)10μMを使用した。24時間培養後、細胞を回収した。C-chip(disposable hemacytometer、INCYTO)を使用して細胞数を確認した。1N NaOHで細胞(1x105 cells)を1時間かけて70℃で溶解させた。4000rpmで5分間遠心分離した後、上澄み液を回収してメラニン含量を測定した。メラニンは、マイクロプレートリーダー(microplate reader)(Synergy 2、BioTek)を使用して、490nmでの吸光度を測定した。
【0107】
実験の結果、本発明のポリペプチドは、アルブチンと同等ないしそれ以上の水準でメラニン生成抑制能が著しいことを確認した。実験群(本発明)及び対照群ポリペプチドの中で特徴的に代表的な事例のポリペプチドに対する実験結果を
図1に代表的に示す。
【0108】
代表的に
図1に示した通り、本発明のポリペプチド(配列番号1に該当する断片を図面にPeptide S2と表示)は、アルブチンより優れたメラニン生成抑制効果を示した。反面、本発明のポリペプチドと隣接した位置の断片ポリペプチドである「LKEKAILQATLREEK(配列番号10、本明細書でPeptide S10と称する、配列番号9を基準に32aa-46aaに該当する)」の場合には、メラニン生成抑制能が全く示されなかった。
【0109】
2-2.チロシナーゼ阻害能確認_Tyrosinase Activity Assay
B16F10細胞(6x104 cells/well)を6ウェルプレートに分注して培養した。12時間後、培地をαMSH(Sigma、0.5μM)及びそれぞれの試験物質(本発明のポリペプチド又は対照群物質)を含む培地に交換した。ポリペプチドはそれぞれ10μMずつ処理された。また、対照群として美白成分で広く知られているアルブチン(arbutin)を10μM使用した。24時間培養後、細胞を収穫した。1%Triton X-100(Sigma)を含むPBS緩衝液(buffer)で細胞を溶解させた。12000 rpmで20分間遠心分離した後、上澄み液を収穫し、BCA assay kitでタンパク質濃度を測定した。チロシナーゼ活性を測定するために、50μgのタンパク質を5mM L-DOPAと共に37℃で培養した。マイクロプレートリーダー(microplate reader)を使用して、490nmで吸光度を測定した。吸光度は、1時間の間、10分毎に測定した。
【0110】
実験の結果、本発明のポリペプチドはアルブチンと同等ないしそれ以上の水準でチロシナーゼ抑制能が顕著であることを確認した。実験群(本発明)及び対照群ポリペプチドの中で特徴的に代表的な事例のポリペプチドに対する実験結果を
図2に代表的に示す。
【0111】
代表的に
図2示した通り、本発明のポリペプチド(図面で配列番号1に該当する断片をPeptide S2と表示)は、アルブチンと同等な水準のチロシナーゼ抑制効果を示した。一方、本発明のポリペプチドと隣接した位置の断片ポリペプチドである「LKEKAILQATLREEK(配列番号10、本明細書でPeptide S10と称する、配列番号9を基準に32aa-46aaに該当する)」の場合には、チロシナーゼ阻害程度が微々たるものであった。
【0112】
2-3.細胞毒性確認_Cytotoxicity Assay
細胞カウントキット-8(CCK-8)を利用して、製造社のプロトコルに従って測定した(Dojindo Laboratories、Japan)。CCK-8 assayは栄養不足状態(starved condition)で細胞毒性の測定に利用され、前記アッセイは、水溶性テトラゾリウム塩のWST-8(2-(2-methoxy-4-nitrophenyl)-3-(4-nitrophenyl)-5-(2,4-disulfophenyl)-2H-tetrazolium, monosodium salt)が、電子運搬体の存在下で脱水素酵素による還元によって水溶性ホルマザン染料に転換されることに基づく。
【0113】
無血清(serum starved)条件で、Vero細胞(4x103 cells/well)を96ウェルプレートで12時間成長させ、それぞれの試験物質(本発明のポリペプチド及び対照群物質)を処理した。ポリペプチドはそれぞれ10μMずつ処理された。細胞毒性評価時、対照群としてドキソルビシン(doxorubicin)の化合物を10μg/ml使用した。24時間後、細胞を洗浄してCCK-8 assay(Dojindo)を使用して細胞の成長程度を評価した。各ウェルにCCK-8溶液(10μl)を入れて2時間37℃で培養した。マルチプレートリーダー(multiplate reader)(Synergy2、Biotek)を利用して、450nmで吸光度を測定した。
【0114】
実験の結果、本発明のポリペプチドは、細胞毒性がないことを確認した。実験群(本発明)及び対照群ポリペプチドの中で特徴的に代表的な事例のポリペプチドに対する実験結果を
図3に代表的に図示した。
【産業上の利用可能性】
【0115】
以上述べた通り、本発明は、美白活性を有する新規ポリペプチド及びその使用に関するもので、より詳細には、(本質的に)配列番号1、配列番号3、配列番号5及び配列番号7からなる群から選択されるいずれかのアミノ酸配列からなることを特徴とする単離されたポリペプチド、前記ポリペプチドを有効成分として含む皮膚美白用化粧料組成物又は色素沈着疾患の予防又は治療用薬学的組成物に関するものである。
【0116】
本願発明で開示されるポリペプチドは、優れたチロシナーゼ抑制活性及び/又はメラニン生成抑制効果を示し、細胞毒性がないため美白機能性成分として優れた潜在力を有するので、産業上の利用可能性が高い。
【配列表】