(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-27
(45)【発行日】2022-05-11
(54)【発明の名称】多層着色織布及び多層着色織布の製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/20 20060101AFI20220428BHJP
B05D 1/36 20060101ALI20220428BHJP
B05D 5/06 20060101ALI20220428BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20220428BHJP
B32B 27/12 20060101ALI20220428BHJP
D06P 1/44 20060101ALI20220428BHJP
D06P 5/00 20060101ALI20220428BHJP
【FI】
B32B27/20 A
B05D1/36 Z
B05D5/06 G
B05D7/00 G
B32B27/12
D06P1/44 E
D06P5/00 127
(21)【出願番号】P 2017194259
(22)【出願日】2017-10-04
【審査請求日】2020-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000175722
【氏名又は名称】サンコール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001597
【氏名又は名称】特許業務法人アローレインターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】服部 保則
(72)【発明者】
【氏名】小早川 浩也
【審査官】春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-234482(JP,A)
【文献】特開2001-055669(JP,A)
【文献】特開昭63-315681(JP,A)
【文献】特開平09-111678(JP,A)
【文献】特開2005-036384(JP,A)
【文献】特開2008-179737(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
B05D1/00-7/26
D06P1/00-7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
経糸及び緯糸を有する多層着色織布であって、
前記経糸及び前記緯糸の少なくとも一方は染料によって染色されており、
前記経糸及び前記緯糸のうち染料によって染色された糸の外表面には第1顔料によって着色された第1顔料塗膜が設けられ
、前記第1顔料塗膜の外表面には前記第1顔料とは異なる第2顔料によって着色された第2顔料塗膜が設けられていることを特徴とする多層着色織布。
【請求項2】
前記第1顔料
又は前記第2顔料は、平均粒径0.1μm~5μmの炭であることを特徴とする請求項
1に記載の多層着色織布。
【請求項3】
前
記炭は、過熱水蒸気で炭化された竹炭であることを特徴とする請求項
2に記載の多層着色織布。
【請求項4】
経糸及び緯糸をそれぞれ形成する経糸形成糸及び緯糸形成糸の少なくとも一方を染料によって染色する染色工程と、
前記染色工程後の前記経糸形成糸及び前記緯糸形成糸の外表面に第1顔料を含む第1塗料を塗布する第1顔料塗布工程と、
前記第1塗料を加熱乾燥させて第1顔料塗膜を形成する第1加熱乾燥工程と、
前記第1加熱乾燥工程後の前記経糸形成糸及び前記緯糸形成糸の外表面に第1顔料とは異なる第2顔料を含む第2塗料を塗布する第2顔料塗布工程と、
前記第2塗料を加熱乾燥させて第2顔料塗膜を形成する第2加熱乾燥工程と、
前記第
2加熱乾燥工程後の前記経糸形成糸及び前記緯糸形成糸を用いて織布を形成する織り工程とを含むことを特徴とする多層着色織布の製造方法。
【請求項5】
前記第1顔料
又は前記第2顔料は、過熱水蒸気で炭化された竹炭であることを特徴とする請求項
4に記載の多層着色織布の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、織布及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
織布に着色する方法として、着色部材として作用する炭の微細粉末及びバインダーを含む塗料を織布に塗布した後、塗布した塗料を所定温度で加熱することで、織布の表面に炭によって形成されるプリント模様を設ける方法が提案されている(下記特許文献1参照)。
【0003】
前記特許文献1に記載の方法によって着色された織布は、所望形状のプリント模様を形成しつつ、炭が有する消臭作用等の効果を織布に与えることができるとされている。
【0004】
しかしながら、前記特許文献1に記載の着色方法は、未晒し(未着色)の糸によって形成された織布の表面に、炭の微細粉末をバインダーによって固着させて着色するものであり、経年使用に応じて着色部材となる炭の微細粉末が織布から剥離すると、織布を形成する糸の未晒し色(無色)が表面に露出することになり、見た目的に「くたびれ感」を与えることになる。
【0005】
また、織布に着色する他の方法として、織布を形成する経糸、緯糸及びパイル糸の何れかの糸を染料で着色し、残余の糸の何れかを顔料で着色する方法が提案されている(下記特許文献2参照)。
【0006】
前記特許文献2に記載の方法によって着色された織布においては、染料によって着色された糸の色は落ちにくいものの、顔料はバインダーによって対応する糸の表面に固着されるものである為、前記顔料は、前記特許文献1に記載の着色方法と同様に、経年使用によって、対応する糸の表面から剥離してしまう。
【0007】
前記特許文献2に記載の方法においても、顔料はバインダーによって、未晒し(未着色)の糸に固着されており、従って、経年使用に応じて顔料が糸の表面から剥離すると、未晒し(未着色)の糸が表面に露出することになり、見た目的に「くたびれ感」を与えることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平11-323747号公報
【文献】特開2016-030880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、斯かる従来技術に鑑みなされたものであり、従来の織布に生じていた経年使用による色彩的な「くたびれ感」を防止乃至は低減できる織布及びその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前記目的を達成するために、経糸及び緯糸を有する多層着色織布であって、前記経糸及び前記緯糸の少なくとも一方は染料によって染色されており、前記経糸及び前記緯糸のうち染料によって染色された糸の外表面には第1顔料によって着色された第1顔料塗膜が設けられ、前記第1顔料塗膜の外表面には前記第1顔料とは異なる第2顔料によって着色された第2顔料塗膜が設けられている多層着色織布を提供する。
【0011】
好ましくは、前記第1顔料又は前記第2顔料は、平均粒径0.1μm~5μmの炭とされる。
より好ましくは、前記炭は、過熱水蒸気で炭化された竹炭とされる。
【0012】
また、本発明は、前記目的を達成するために、経糸及び緯糸をそれぞれ形成する経糸形成糸及び緯糸形成糸の少なくとも一方を染料によって染色する染色工程と、前記染色工程後の前記経糸形成糸及び前記緯糸形成糸の外表面に第1顔料を含む第1塗料を塗布する第1顔料塗布工程と、前記第1塗料を加熱乾燥させて第1顔料塗膜を形成する第1加熱乾燥工程と、前記第1加熱乾燥工程後の前記経糸形成糸及び前記緯糸形成糸の外表面に第1顔料とは異なる第2顔料を含む第2塗料を塗布する第2顔料塗布工程と、前記第2塗料を加熱乾燥させて第2顔料塗膜を形成する第2加熱乾燥工程と、前記第2加熱乾燥工程後の前記経糸形成糸及び前記緯糸形成糸を用いて織布を形成する織り工程とを含む多層着色織布の製造方法を提供する。
【0013】
本発明に係る前記製造方法において、好ましくは、前記第1顔料又は前記第2顔料は、過熱水蒸気で炭化された竹炭とされ得る。
【発明の効果】
【0014】
また、本発明に係る多層着色織布によれば、経糸及び緯糸の少なくとも一方が染料によって染色されており、さらに、前記経糸及び前記緯糸のうち染料によって染色された糸の外表面には第1顔料によって着色された第1顔料塗膜が設けられ、前記第1顔料塗膜の外表面には前記第1顔料とは異なる第2顔料によって着色された第2顔料塗膜が設けられているので、経年使用に応じて前記第2顔料塗膜が剥離すると前記第1顔料塗膜が現出し、前記第1顔料塗膜が剥離すると、経糸及び緯糸の未晒し色では無く、染料によって染色された色が現出する。従って、従来の織布によっては生じていた経年使用による色彩的な「くたびれ感」を防止乃至は低減し、立体的な色彩の変化を現出させることができる。
【0015】
本発明に係る製造方法は、経糸及び緯糸をそれぞれ形成する経糸形成糸及び緯糸形成糸の少なくとも一方を染料によって染色する染色工程と、前記染色工程後の前記経糸形成糸及び前記緯糸形成糸の外表面に第1顔料を含む第1塗料を塗布する第1顔料塗布工程と、前記第1塗料を加熱乾燥させて第1顔料塗膜を形成する第1加熱乾燥工程と、前記第1加熱乾燥工程後の前記経糸形成糸及び前記緯糸形成糸の外表面に第1顔料とは異なる第2顔料を含む第2塗料を塗布する第2顔料塗布工程と、前記第2塗料を加熱乾燥させて第2顔料塗膜を形成する第2加熱乾燥工程と、前記第2加熱乾燥工程後の前記経糸形成糸及び前記緯糸形成糸を用いて織布を形成する織り工程とを含んでいるので、経糸及び緯糸の少なくとも一方が染料によって染色され且つ外表面に前記第1顔料によって着色された前記第1顔料塗膜が設けられ、前記第1顔料塗膜の外表面に前記第1顔料とは異なる第2顔料によって着色された第2顔料塗膜が設けられている多層着色織布を効率良く製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の一実施の形態に係る多層着色織布の模式平面図である。
【
図2】
図2は、
図1におけるII-II線に沿った模式断面図である。
【
図3】
図3は、
図1におけるIII-III線に沿った模式断面図である。
【
図4】
図4は、前記実施の形態の第1変形例に係る多層着色織布の模式断面図であり、
図2に対応した断面を示している。
【
図5】
図5は、
図4に示す多層着色織布の模式断面図であり、
図3に対応した断面を示している。
【
図6】
図6は、織布本体形成前に、染料による染色に加えて、外表面への第1顔料を含む第1顔料塗膜の固着を行った糸の模式断面図である。
【
図7】
図7は、
図6に示す糸を用いて織り処理を行った多層着色織布の模式断面図であり、
図2に対応した断面を示している。
【
図8】
図8は、
図7に示す多層着色織布の模式断面図であり、
図3に対応した断面を示している。
【
図9】
図9は、織布本体形成前に、染料による染色に加えて、外表面への第1顔料を含む第1顔料塗膜及び第2顔料を含む第2顔料塗膜の固着を行った糸の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る多層着色織布の一実施の形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
図1に、本実施の形態に係る多層着色織布1の模式平面図を示す。
また、
図2及び
図3に、それぞれ、
図1におけるII-II線及びIII-III線に沿った模式断面図を示す。
【0018】
図1~
図3に示すように、前記織布1は、経糸20及び緯糸30が一定の規則に従って交錯状に織られることで形成されている。
なお、本実施の形態に係る織布1は平織り構造を有しているが、当然ながら、本発明に係る織布は斯かる形態に限定されるものではなく、綾織り、朱子織り等、種々の構造(組織)を有し得る。
【0019】
前記織布1においては、前記経糸20及び前記緯糸30の少なくとも一方が染料によって染色されている。
本実施の形態においては、前記経糸20及び前記緯糸30の双方が染料によって染色されている。
【0020】
染料は、粒径がナノミクロンオーダーという非常に微細な物質であり、前記経糸20及び前記緯糸30を形成する繊維に浸透する。
【0021】
前記染料としては、例えば、スレン染料、インディゴ染料、レマゾール染料、反応染料、直接染料、ナフトール染料、蛍光染料等、種々の染料を用いることができる。
【0022】
図2及び
図3に示すように、前記織布1は、前記経糸20及び前記緯糸30によって形成される織布本体10の一方側表面及び他方側表面の少なくとも一方に設けられた第1顔料塗膜40を有している。
なお、本実施の形態においては、前記第1顔料塗膜40は、前記織布本体10の一方側表面にのみ設けられている。
【0023】
前記第1顔料塗膜40は、着色材料として作用する第1顔料及び前記第1顔料を織布本体に固着させるバインダーを有している。
【0024】
好ましくは、前記第1顔料は、平均粒径を0.1μm~5μmとすることができ、これにより、前記織布本体10への密着性及び擦過性を向上することができる。
より好ましくは、前記第1顔料は、平均粒径が3μmで、最大粒径が10μmとされ得る。
【0025】
前記第1顔料としては、例えば、黒色用着色材料として作用する炭、赤色用着色材料として作用する酸化鉄を用いることができる。
好ましくは、前記第1顔料として、過熱水蒸気によって炭化させた竹炭を用いることができ、これにより、前記第1顔料塗膜40の色合いを、色ムラを抑えた漆黒とすることができる。
【0026】
前記バインダーとしては、例えば、ニカワ、アクリル樹脂を用いることができる。
【0027】
斯かる構成を備えた前記織布1によれば、以下の効果を得ることができる。
前記経糸20及び前記緯糸30を染色する染料は、前記経糸20及び前記緯糸30を形成する繊維内に浸透した状態で前記経糸20及び前記緯糸30を着色している一方で、前記第1顔料は、前記織布本体10を形成する前記経糸20及び前記緯糸30の繊維内に浸透するものでは無く、バインダーによって前記織布本体10の表面上に固着されている。
【0028】
このような構成の前記織布1は、経年使用に応じて、前記織布本体10の表面上に存在する前記第1顔料塗膜40が前記織布本体10から剥がれ落ちて、前記第1顔料によって着色された色が落ち、前記織布本体10を形成する前記経糸20及び前記緯糸30が露出することになる。
【0029】
この際、本実施の形態に係る前記織布1においては、前述の通り、前記経糸20及び前記緯糸30が染料によって染色されている為、前記第1顔料塗膜40が剥離すると、前記経糸20及び前記緯糸30の未晒し色では無く、前記染料による色が現れることになる。
【0030】
即ち、本実施の形態に係る前記織布1においては、経年使用によって前記第1顔料塗膜40が剥がれると、前記第1顔料塗膜40中の第1顔料によって着色された色越しに、前記経糸20及び前記緯糸30の少なくとも一方を染色する染料による色が現出し始め、第1顔料の色から染料の色へと色彩が徐々に変化することになる。従って、従来の織布に生じていた、経年使用による色彩的な「くたびれ感」を防止乃至は低減して、経年使用に応じて立体的な色彩の変化を楽しむことができる。
【0031】
図4及び
図5に、本実施の形態の第1変形例に係る多層着色織布2の模式断面図であって、それぞれ、
図2及び
図3に対応した模式断面図を示す。
【0032】
図4及び
図5に示すように、前記第1変形例に係る織布2は、本実施の形態に係る織布1に比して、前記第1顔料塗膜40上に前記第1顔料とは異なる色を有する第2顔料によって着色された第2顔料塗膜50を有している。
【0033】
前記第1変形例に係る織布2によれば、本実施の形態に係る織布1よりも、経年使用に応じて現出する色の種類が増えることになり、より立体的な色彩の変化を楽しむことができる。
なお、当然ながら、前記第2顔料塗膜50の上に、さらに、一又は複数の顔料塗膜を形成することも可能である。
【0034】
ここで、本実施の形態に係る織布1の第1製造方法について説明する。
前記第1製造方法は、織布1の経糸20及び緯糸30をそれぞれ形成する経糸形成糸及び緯糸形成糸の少なくとも一方を染料によって染色する染色工程と、染色工程後の経糸形成糸及び緯糸形成糸を用いて織布本体10を形成する織り工程と、前記織布本体10の少なくとも一方側の表面に第1顔料を含む第1塗料を塗布する第1顔料塗布工程と、前記第1塗料を加熱乾燥させて第1顔料塗膜40を形成する第1加熱乾燥工程とを含んでいる。
【0035】
前記染色工程は、例えば、染色すべき経糸形成糸及び/又は緯糸形成糸を所望の染料内に浸漬させ、その後、乾燥処理するものとされる。
【0036】
前記織り工程は、経糸形成糸及び緯糸形成糸を用いて所望の織り構造(組織)を有する織布本体10を形成するものとされる。
【0037】
前記第1顔料塗布工程は、前記第1顔料、前記バインダー及び水等の溶液を有する前記第1塗料を前記織布本体10の表面に塗布するものとされる。
【0038】
前記第1塗料中の前記第1顔料の含有量は、例えば、10重量%とされ、前記第1顔料の含有量を増やすことによって当該第1顔料によって生成される色合いを濃くすることができ、前記第1顔料の含有量を減らすことによって当該第1顔料によって生成される色合いを薄くすることができる。
【0039】
前記バインダーの含有量は、前記第1顔料の種類や前記経糸形成糸及び前記緯糸形成糸の種類、外径等に応じて変更され、例えば、5重量%~20重量%とされる。
【0040】
前記第1加熱乾燥工程は、前記織布本体10の表面上に塗布された第1塗料中の水分を蒸発させて、前記第1顔料を前記織布本体10に固着させるものである。
例えば、前記第1加熱乾燥工程は、加熱温度50℃~120℃で1~5分間、行われるものとされるが、加熱温度や加熱時間は、前記第1塗料の成分や前記経糸形成糸及び前記緯糸形成糸の種類、外径等に応じて、適宜決定される。
【0041】
前記第1製造方法によれば、本実施の形態に係る織布1を効率良く製造することができる。
【0042】
次に、本実施の形態に係る織布1の第2製造方法について説明する。
前記第2製造方法は、前記織り工程と前記染色工程との順序が入れ替えられている点において、前記第1製造方法と相違している。
【0043】
即ち、前記第2製造方法は、織布の経糸20及び緯糸30をそれぞれ形成する経糸形成糸及び緯糸形成糸を用いて織布本体10を形成する織り工程と、前記織布本体10を染料によって染色する染色工程と、染料によって着色された前記織布本体10の少なくとも一方側の表面に第1顔料を含む第1塗料を塗布する第1顔料塗布工程と、前記第1塗料を加熱乾燥させて第1顔料塗膜40を形成する第1加熱乾燥工程とを含んでいる。
【0044】
前記第2製造方法においても、本実施の形態に係る織布1を効率良く製造することができる。
【0045】
なお、前記第1及び第2製造方法においては、前記織布本体10の一方側表面及び他方側表面の両側に第1顔料塗膜40を設ける場合には、前記第1顔料塗布工程は、前記織布本体10の一方側表面及び他方側表面の両面に前記第1塗料を塗布するように構成される。
【0046】
また、前記第1変形例に係る織布2は、前記第1及び第2製造方法における工程に加えて、前記第1加熱乾燥工程の後に、前記第1顔料塗膜40上に第1顔料とは異なる第2顔料を含む第2塗料を塗布する第2顔料塗布工程と、前記第2塗料を加熱乾燥させて第2顔料塗膜を形成する第2加熱乾燥工程とを含む製造方法によって、効率良く製造され得る。
【0047】
次に、本実施の形態の第2変形例に係る織布3を製造する第3製造方法について説明する。
前記第1及び第2製造方法は何れも、前記織布本体10を形成した後に、前記織布本体10の表面上に前記第1塗料を塗布するように構成されている。
【0048】
これに対し、前記第3製造方法は、織布本体10を形成する前に、前記経糸形成糸及び前記緯糸形成糸に対して、染料による染色に加えて第1顔料を含む第1顔料塗膜40の固着まで行うように構成されている。
【0049】
即ち、前記第3製造方法は、前記経糸形成糸及び前記緯糸形成糸の少なくとも一方を染料によって染色する染色工程と、前記染色工程後の前記経糸形成糸及び前記緯糸形成糸の外表面に第1顔料を含む第1塗料を塗布する第1顔料塗布工程と、前記第1塗料を加熱乾燥させて第1顔料塗膜40を形成する第1加熱乾燥工程とを備えている。
図6に、前記第1加熱乾燥工程後の前記経糸形成糸又は前記緯糸形成糸の模式断面図を示す。
【0050】
前記第3製造方法は、さらに、染料によって染色され且つ外表面に前記第1顔料塗膜40が固着された前記経糸形成糸及び/又は前記緯糸形成糸を用いて織り処理を行い織布3を形成する織り工程を備えている。
【0051】
図7及び
図8に前記第3製造方法によって製造した織布3の模式断面図であって、それぞれ、
図2及び
図3に対応した模式断面図を示す。
【0052】
前記第3製造方法によって製造された織布3においては、前記経糸20及び前記緯糸30の少なくとも一方が染料によって染色され、且つ、染料によって染色された糸の外表面には前記第1顔料塗膜40が設けられる。
【0053】
なお、
図7及び
図8に示される織布3においては、前記経糸20及び前記緯糸30の双方が染料によって染色され、さらに、前記経糸20及び前記緯糸30の双方が外表面に前記第1顔料塗膜40を有しており、これにより、前記織布3の一方側表面及び他方側表面の双方に前記第1顔料塗膜40が存在している。
【0054】
また、前記第3製造方法は、前記第1加熱乾燥工程の後で且つ前記織り工程の前に、前記第1顔料塗膜40が設けられた前記経糸形成糸及び/又は前記緯糸形成糸の外表面に前記第1顔料とは異なる第2顔料を含む第2塗料を塗布する第2顔料塗布工程と、前記第2塗料を加熱乾燥させて第2顔料塗膜50を形成する第2加熱乾燥工程とを備えることができる。
図9に、前記第2加熱乾燥工程後の前記経糸形成糸又は前記緯糸形成糸の模式断面図を示す。
【0055】
斯かる構成によれば、染料によって染色された経糸20及び/又は緯糸30の外表面に第1顔料塗膜40及び第2顔料塗膜50が積層された状態の織布を効率良く形成することができる。
【符号の説明】
【0056】
1~3 多層着色織布
10 織布本体
20 経糸
30 緯糸
40 第1顔料塗膜
50 第2顔料塗膜