(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-27
(45)【発行日】2022-05-11
(54)【発明の名称】表示装置及び表示装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
G09F 9/30 20060101AFI20220428BHJP
H01L 27/32 20060101ALI20220428BHJP
H05B 33/22 20060101ALI20220428BHJP
H05B 33/12 20060101ALI20220428BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20220428BHJP
H05B 33/06 20060101ALI20220428BHJP
H01L 51/50 20060101ALN20220428BHJP
【FI】
G09F9/30 317
G09F9/30 308Z
G09F9/30 365
H01L27/32
H05B33/22 Z
H05B33/12 B
H05B33/10
H05B33/06
H05B33/14 A
(21)【出願番号】P 2017204545
(22)【出願日】2017-10-23
【審査請求日】2020-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】丸山 哲
【審査官】小野 博之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0141551(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0288007(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0174304(US,A1)
【文献】特開2014-232300(JP,A)
【文献】特開2017-111435(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 9/00-46
G02F 1/13-1/141
1/15-1/19
H01L 27/32
51/50
H05B 33/00-33/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する基板上に、複数の画素がマトリクス状に設けられた表示領域を有する表示装置であって、
前記基板は、
第1樹脂層と、
前記第1樹脂層上に設けられた第1無機絶縁層と、
前記第1無機絶縁層上に設けられた第2樹脂層と、
前記第2樹脂層上に設けられた第2無機絶縁層と、
前記第2無機絶縁層上に設けられた薄膜トランジスタと、
前記表示領域に隣接する端子と、
前記表示領域と前記端子との間に設けられた折曲領域と、
を有し、
前記第2樹脂層の膜厚は、前記第1樹脂層の膜厚よりも大きく、
平面視において、前記折曲領域と重畳するとともに、
前記第1無機絶縁層及び前記第2無機絶縁層が形成されていない領域が設けられたことを特徴とする、表示装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1樹脂層の膜厚は、前記第2樹脂層の膜厚の70%以下であることを特徴とする、表示装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記第1樹脂層と前記第1無機絶縁層との間、又は前記第1無機絶縁層と前記第2樹脂層との間に、第3無機絶縁層をさらに含むことを特徴とする、表示装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一において、
前記第1無機絶縁層又は前記第2無機絶縁層は、シリコン窒化物を含むことを特徴とする、表示装置。
【請求項5】
請求項3において、
前記第3無機絶縁層は、シリコン酸化物、又はアモルファスシリコンを含むことを特徴とする、表示装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一において、
前記薄膜トランジスタを覆う第3樹脂層、又は第4無機絶縁層と、
前記第3樹脂層、又は前記第4無機絶縁層上に設けられ、前記薄膜トランジスタと電気的に接続された画素電極と、
前記画素電極の端部を覆うと共に、前記画素電極の上面の一部を露出するバンクと、
前記露出された画素電極の上面の一部を覆う有機層と、
前記有機層及び前記バンクを覆う対向電極と、
前記対向電極を覆う、第5無機絶縁層を含む封止層と、をさらに有することを特徴とする、表示装置。
【請求項7】
請求項3又は5において、
前記折曲領域と平面的に重畳するとともに、前記
領域に前記第3無機絶縁層が形成されていな
いことを特徴とする、表示装置。
【請求項8】
請求項6において、
前記折曲領域と平面的に重畳するとともに、前記第4無機絶縁層又は前記第5無機絶縁層が形成されていない領域が設けられたことを特徴とする、表示装置。
【請求項9】
請求項1において、
前記第1樹脂層の膜厚は、前記第2樹脂層の膜厚の40%乃至60%であることを特徴とする、表示装置。
【請求項10】
支持基板上に、第1樹脂層と、前記第1樹脂層上に第1無機絶縁層と、前記第1無機絶縁層上に第2樹脂層と、前記第2樹脂層上に第2無機絶縁層と、を有する基板を形成する工程と、
前記基板上に、薄膜トランジスタと、前記薄膜トランジスタを覆う第3樹脂層、又は第4無機絶縁層と、前記第3樹脂層、又は
前記第
4無機絶縁層上に設けられ、前記薄膜トランジスタと電気的に接続された画素電極と、前記画素電極の端部を覆うと共に、前記画素電極の上面の一部を露出するバンクと、前記露出された画素電極の上面の一部を覆う有機層と、前記有機層及び前記バンクを覆う対向電極と、を有する機能層を含む表示領域を形成する工程と、
前記表示領域に隣接する端子を形成する工程と、
前記対向電極を覆う、第5無機絶縁層を含む封止層を形成する工程と、
前記基板から、前記支持基板を剥離する工程と、を有し、
前記第2樹脂層は、前記第1樹脂層よりも厚い膜厚で形成され、
前記表示領域と前記端子との間に折曲領域が形成され、
平面視において、前記折曲領域と重畳するとともに、
前記第1無機絶縁層及び前記第2無機絶縁層が形成されていない領域が形成されることを特徴とする、表示装置の製造方法。
【請求項11】
請求項
10において、
前記第1樹脂層の膜厚は、前記第2樹脂層の膜厚の70%以下であることを特徴とする、表示装置の製造方法。
【請求項12】
請求項
10又は
11において、
前記第1樹脂層を形成した後、前記第1無機絶縁層を形成するまでの間に、第1熱処理を行う工程を含み、
前記第2樹脂層を形成した後、第2熱処理を行う工程を含み、
前記第2熱処理時の最高温度は、前記第1熱処理時の最高温度よりも低いことを特徴とする、表示装置の製造方法。
【請求項13】
請求項
10乃至
12のいずれか一において、
前記第1樹脂層と前記第1無機絶縁層との間、又は前記第1無機絶縁層と前記第2樹脂層との間に、第3無機絶縁層を形成する工程をさらに含むことを特徴とする、表示装置の製造方法。
【請求項14】
請求項
10乃至
12のいずれか一において、
前記第1無機絶縁層又は前記第2無機絶縁層は、シリコン窒化物を含むことを特徴とする、表示装置の製造方法。
【請求項15】
請求項
13において、
前記第3無機絶縁層は、シリコン酸化物、又はアモルファスシリコンを含むことを特徴とする、表示装置の製造方法。
【請求項16】
請求項
15において、
前記折曲領域に重畳する領域において、前記第2樹脂層、前記第1無機絶縁層、及び前記第3無機絶縁層を除去する工程をさらに含むことを特徴とする、表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置、及び表示装置の製造方法に関する。本発明の一実施形態は、可撓性基板を用いて形成されたフレキシブル表示装置、及びフレキシブル表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置の一例に、液晶表示装置や有機エレクトロルミネッセンス(Electroluminescence:EL)表示装置等がある。これらの表示装置は、基板上に形成された複数の画素の各々に、表示素子として液晶素子や有機発光素子(以下、発光素子)を有している。液晶素子や発光素子は、一対の電極間に液晶性を示す化合物を含む層(以下、液晶層)、あるいは電界発光性を示す有機化合物を含む層(以下、電界発光層、あるいはEL層)を有しており、一対の電極間に電圧を印加、あるいは電流を流すことにより駆動される。
【0003】
前述の表示装置において、基板として可撓性を有する基板を用いることで、表示装置全体に可撓性を付与することができる。これにより、一部又は全体が湾曲した形状を有する表示装置や、ユーザが自由に変形可能な表示装置が提供される。また、通常の形態の表示装置においても、表示領域の周囲の領域(以下、「周辺領域」、または「額縁領域」ともいう)を表示領域の裏側方向に位置するように基板を折り曲げることで、狭額縁化を図る表示装置が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明に係る実施形態の一つは、信頼性の高い表示装置を提供することを目的の一つとする。例えば、本発明に係る実施形態の一つは、可撓性を有する基板を湾曲、あるいは折り曲げても高い信頼性を維持することが可能な表示装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の表示装置の一実施形態は、可撓性を有する基板上に、複数の画素がマトリクス状に設けられた表示領域を有する表示装置であって、基板は、第1樹脂層と、第1樹脂層上に設けられた第1無機絶縁層と、第1無機絶縁層上に設けられた第2樹脂層と、を有し、第2樹脂層の膜厚は、第1樹脂層の膜厚よりも大きいことを特徴とする。
【0007】
本発明の表示装置の製造方法の一実施形態は、支持基板上に、第1樹脂層と、第1樹脂層上に設けられた第1無機絶縁層と、第1無機絶縁層上に設けられた第2樹脂層と、を有する基板を形成する工程と、基板上に、薄膜トランジスタと、薄膜トランジスタを覆う第3樹脂層、又は第3無機絶縁層と、第3樹脂層、又は第3無機絶縁層上に設けられ、薄膜トランジスタと電気的に接続された画素電極と、画素電極の端部を覆うと共に、画素電極の上面の一部を露出するバンクと、露出された画素電極の上面の一部を覆う有機層と、有機層及びバンクを覆う対向電極と、を有する機能層を形成する工程と、対向電極を覆う、第4無機絶縁層を含む封止層を形成する工程と、基板から、支持基板を剥離する工程と、を有し、第2樹脂層は、第1樹脂層よりも厚い膜厚で形成されることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の表示装置の一実施形態を示す上面模式図である。
【
図2】本発明の表示装置の一実施形態を示す平面図である。
【
図3】本発明の表示装置の一実施形態を示す平面図である。
【
図4】本発明の表示装置の一実施形態を示す断面図である。
【
図5】本発明の表示装置の一実施形態を示す断面図である。
【
図6A】本発明の表示装置の一実施形態を示す断面図である。
【
図6B】本発明の表示装置の一実施形態に対する比較例を示す断面図である。
【
図7】本発明の表示装置、及び製造方法の一実施形態を示す断面図である。
【
図8】本発明の表示装置、及び製造方法の一実施形態を示す断面図である。
【
図9】本発明の表示装置、及び製造方法の他の一実施形態を示す断面図である。
【
図10A】本発明の表示装置、及び製造方法の他の一実施形態を示す断面図である。
【
図10B】本発明の表示装置、及び製造方法の他の一実施形態を示す断面図である。
【
図10C】本発明の表示装置、及び製造方法の他の一実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の各実施形態において、図面等を参照しつつ説明する。但し、本発明は、その技術的思想の要旨を逸脱しない範囲において様々な態様で実施することができ、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0010】
図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、図示の形状そのものが本発明の解釈を限定するものではない。また、図面において、明細書中で既出の図に関して説明したものと同様の機能を備えた要素には、別図であっても同一の符号を付して、重複する説明を省略する場合がある。
【0011】
ある一つの膜を加工して複数の構造体を形成した場合、各々の構造体は異なる機能、役割を有する場合があり、また各々の構造体はそれが形成される下地が異なる場合がある。しかしながらこれら複数の構造体は、同一の工程で同一層として形成された膜に由来するものであり、同一の材料を有する。従って、これら複数の膜は同一層に存在しているものと定義する。
【0012】
ある構造体の上に他の構造体を配置する態様を表現するにあたり、単に「上に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある構造体に接して、直上に他の構造体を配置する場合と、ある構造体の上方に、さらに別の構造体を介して他の構造体を配置する場合との両方を含むものとする。
【0013】
「ある構造体が他の構造体から露出する」という表現は、ある構造体の一部が他の構造体によって覆われていない領域を意味する。ただしこの他の構造体によって覆われていない部分が、さらに別の構造体によって覆われている場合も含む。
【0014】
<実施形態1>
本発明の一実施形態である表示装置の構造につき以下に説明する。
【0015】
図1に表示装置100の上面模式図を示す。表示装置100は基板101を有し、その一表面上に、所望の形状にパターニングされた種々の導電層、半導体層、絶縁層を有する。これらの導電層、半導体層、絶縁層により、複数の画素103が形成される。また、複数の画素103を駆動するための駆動回路(ゲート駆動回路104、ソース駆動回路105)は、前述の導電層、半導体層、絶縁層を用いて複数の画素103と同時に基板101上に形成されても良いし、ICを基板101の一表面上に実装しても良い。複数の画素103は例えばマトリクス状に配置され、これらの集合によって表示領域102が形成される。
【0016】
ゲート駆動回路104やソース駆動回路105は、表示領域102の外側の周辺領域に配置される。表示領域102、ゲート駆動回路104、及びソース駆動回路105からは、パターニングされた導電層で形成される種々の配線(図示せず)が基板101の一辺へ延び、それぞれの配線は基板101の端部付近に配置された端子106の一に接続される。これらの端子は、フレキシブルプリント回路基板(Flexible Printed Circuit:FPC)107と接続される。前述の駆動回路をICによって設ける場合には、基板101上ではなくFPC107上に実装しても良い。
【0017】
表示装置の外部のコントローラ(図示せず)から、FPC107を介して映像信号や各種制御信号が供給され、映像信号はソース駆動回路105によって処理されて複数の画素103に入力される。各種制御信号は、ゲート駆動回路104、及びソース駆動回路105に入力される。
【0018】
映像信号や各種制御信号の他、ゲート駆動回路104、ソース駆動回路105、及び複数の画素103を駆動するための電力が表示装置100に供給される。複数の画素103はそれぞれ、後述する発光素子を有する。表示装置100に供給された電力の一部は、複数の画素103のそれぞれの発光素子に供給されて発光素子を発光させる。
【0019】
基板101として可撓性を有する基板を用いることで、
図2乃至
図4に示すように表示装置100に可撓性を付与することができる。例えば
図2に示すように、表示領域102全体に亘って湾曲可能領域200が設けられ、表示面を曲面形状としたデザイン性の高い電子機器や、表示領域をロール状に収納できる電子機器等への適用が可能となる。また、
図3及び
図4に示すように、基板101を表示領域102とFPC107との間に設けられた折曲領域300にて矢印301の方向に折り曲げ、ソース駆動回路105やFPC107を表示領域102の裏面側に重畳するようにすることで、表示装置100の狭額縁化を実現することができる。
図3におけるA-A’断面を
図4に示しており、基板101は矢印301で示すように折り曲げられる。ソース駆動回路105及びFPC107は、表示領域102の裏面側に重畳するように配置され、幅302で示されるように狭額縁化されている。また、折り曲げた箇所の内側には、基板101の断面形状を保持するためのスペーサ303が設けられても良い。
【0020】
図5に、本発明の一実施形態における表示装置100の断面構成を示す。前述の通り、基板101は可撓性を有し、第1樹脂層501、第1無機絶縁層502、第2無機絶縁層503、第2樹脂層504を含む積層構造を有する。基板101上に、前述したように、導電層、半導体層、絶縁層を用いて形成された複数の画素や、ゲート駆動回路を含む機能層505が形成され、機能層505上に、封止層506が形成されている。
【0021】
第1樹脂層501及び第2樹脂層504は、例えばアクリル、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等から選ばれた材料を含む層として構成される。第1無機絶縁層502は、第1樹脂層501及び第2樹脂層504を通って機能層505に水分その他の汚染物質が侵入するのを防ぐためのバリア膜としての機能をその一として有し、シリコン窒化物、シリコン酸化物、又はシリコン酸窒化物から選ばれた材料を含む層として構成される。第2無機絶縁層503は、第1無機絶縁層502と第2樹脂層504との界面での密着性を向上する機能をその一として有し、双方の材料と密着性が良いアモルファスシリコンを含む層として構成される。樹脂層と無機絶縁層とは、各々の材料の違いやその形成工程に起因して、膜内に残留する応力が異なる。その結果として、両者の界面での密着性が悪化する。この密着性の悪化は、無機絶縁層が形成された表面上に樹脂層を形成する場合に特に顕著なため、
図5の例では、第2無機絶縁層503は、第1無機絶縁層502と第2樹脂層504との間に設けられているが、第1樹脂層501と第1無機絶縁層502との間に、同じ目的で設けられても良いし、省略されても良い。
【0022】
基板101の膜厚としては、
図2乃至
図4で示すように湾曲させ、または折り曲げたような形態を取り得るだけの可撓性と、曲げによって破断を生じない程度の強度を両立する厚さとすることが好ましく、前述した積層構造を含み、例えば100μm以下、好ましくは50μm以下とすることができる。さらに好ましくは、10μm乃至30μm程度とすることができる。
【0023】
本実施形態においては、
図5に示す通り、第1樹脂層501の膜厚は、第2樹脂層504の膜厚に比べて薄い。例えば、第1樹脂層501の膜厚は、第2樹脂層504の膜厚の70%以下、好ましくは40%乃至60%程度とすることが好ましい。具体的には、第1樹脂層501の膜厚は、第2樹脂層504の膜厚の50%程度としている。
【0024】
図5に示した積層構造を形成する際には、支持基板等の一表面上に、第1樹脂層501を構成する材料を塗布法等によって成膜した後焼成し、続いて第1無機絶縁層502、第2無機絶縁層503をそれぞれCVD法等の気相成長法によって成膜し、さらに第2樹脂層504を構成する材料を塗布法等によって成膜した後焼成するといった工程が実施される。ここで、第2樹脂層504の焼成時には、第1樹脂層501も同時に加熱されるため、第1樹脂層501からもガス成分が脱離する。しかしながら第1樹脂層501上には、既に第1無機絶縁層502が形成されているから、脱離したガス成分は第1樹脂層501と第1無機絶縁層502との界面付近に滞留する。これにより、第1樹脂層501と第1無機絶縁層502との界面の剥離を生ずる場合がある。このガス成分の脱離は、第1樹脂層501の体積が大きければ大きいほど大量に生ずる。従って、本実施形態においては、第1樹脂層501の膜厚を薄くすることによって体積を縮小し、第1樹脂層501からのガス成分の脱離をできるだけ少なくするように構成する。
【0025】
また、第1樹脂層501及び第2樹脂層504は、それぞれ450℃乃至500℃程度で焼成されるが、第2樹脂層504の焼成温度の最大値が、第1樹脂層501の焼成温度の最大値を超えないように設定する。前述の通り、第2樹脂層504の焼成時には、第1樹脂層501も同時に加熱されるが、事前に第1樹脂層501を焼成した際の焼成温度の最大値に達しない限りは、第1樹脂層501からのガス成分の脱離は少ない。仮に、第2樹脂層504の焼成時、第1樹脂層501の焼成温度の最大値を超えると、第1樹脂層501にはその加熱履歴が無いため、新たなガス成分の脱離が生ずる。つまり、第2樹脂層504の焼成温度の最大値が、第1樹脂層501の焼成温度の最大値を超えないように設定することで、第2樹脂層504の焼成時における第1樹脂層501からのガス成分脱離を抑制することができる。
【0026】
具体例について以下に記す。支持基板上に、ポリイミドを塗布形成し、その後最高温度500℃にて焼成を行って、第1樹脂層501として7μm厚のポリイミド層を得る。次に、第1無機絶縁層502としてシリコン酸化膜をCVD法にて600nm厚で形成し、第2無機絶縁層503として、アモルファスシリコン膜をCVD法にて10nm厚で形成する。次に、ポリイミドを塗布形成し、その後最高温度480℃にて焼成を行って、第2樹脂層504として13μm厚のポリイミド層を得る。以上の工程で、
図6Aに示すように、可撓性を有する基板101が形成される。前述の工程によると、第2樹脂層504の焼成時、第1樹脂層501から脱離するガスに起因した、第1無機絶縁層502の剥離を生ずることなく、良好な積層構造が得られる。
【0027】
一方、比較例として、前述の条件に対し、
図6Bに示すように、第1樹脂層501、第2樹脂層504を、共に10μm厚のポリイミド層で形成したところ、第1樹脂層501と第1無機絶縁層502との間に剥離601を生じた。
【0028】
続いて、基板上に形成された機能層を含む表示装置100の詳細構造の例について説明する。
【0029】
図7は、
図1における表示装置100の、B-B’断面構造を模式的に表したものである。主に、画素を構成するNチャネル型の薄膜トランジスタ(以下、「TFT」ともいう。また、TFTがNチャネル型である場合「NchTFT」といい、Pチャネル型である場合には「PchTFT」ということもある)を含む表示領域、端子部、及び端子部を含む額縁領域を折り曲げるための折曲領域について示している。
【0030】
前述した通り、第1樹脂層501、第1無機絶縁層502、第2無機絶縁層503、第2樹脂層504を含む積層構造を有する基板101上に、アンダーコート層701としてシリコン酸化膜701a、シリコン窒化膜701b、シリコン酸化膜701cの三層積層構造を設けている。最下層のシリコン酸化膜701aは基板101との密着性向上のため、中層のシリコン窒化膜701bは、外部からの水分及び不純物のブロック膜として、最上層のシリコン酸化膜701cは、シリコン窒化膜701b中に含有する水素原子が後述する半導体層側に拡散しないようにするブロック膜として、それぞれ設けられるが、特にこの構造に限定するものではない。基板101上には、さらに積層があっても良いし、単層あるいは二層積層としても良い。
【0031】
また、アンダーコート層701形成時に、後にTFTを形成する箇所に合わせて遮光層(Light Shield層:LS層)702を形成しても良い。LS層702は、TFTのチャネル裏面からの光の侵入等によるTFT特性の変化を抑制したり、LS層702を導電層で形成して、所定の電位を与えることで、TFTにバックゲート効果を与えたりすることができる。ここでは、シリコン酸化膜701aを形成した後、駆動トランジスタ(DRT)が形成される箇所に合わせてLS層702を島状に形成し、その後、シリコン窒化膜701b、シリコン酸化膜701cを積層して、アンダーコート層701にLS層702を封入するように形成しているが、この限りではなく、基板101上にまずLS層702を形成し、その後にアンダーコート層701を形成しても良い。
【0032】
アンダーコート層701上に、TFT703が形成される。TFT703としてはポリシリコンTFTを例とし、ここではNchTFTのみ示しているが、PchTFTを同時に形成しても良い。NchTFTは、チャネル領域とソース・ドレイン領域との間に、低濃度不純物領域を設けた構造を取る。ゲート絶縁膜704としてはここではシリコン酸化膜を用い、ゲート電極705はMoW膜(第1配線層)としている。第1配線層は、TFT703のゲート電極705に加え、保持容量線を形成し、ポリシリコン706との間で、保持容量(Cs)707の形成にも用いられる。
【0033】
TFT703上に、層間絶縁膜708となるシリコン窒化膜又はシリコン酸化膜をそれぞれ積層し、その後パターニングを行って、ポリシリコン706等に達するコンタクトホールを形成する。同時に、折曲領域750に相当する箇所の層間絶縁膜708を除去する。さらに、層間絶縁膜708の除去によって、アンダーコート層701が露出するので、これもパターニングを行って除去する。アンダーコート層701を除去した後には、基板101を構成する第2樹脂層504が露出する。またこのとき、特に図示しないが、アンダーコート層701のエッチングを通じて、第2樹脂層504の表面が一部浸食されて膜減りを生ずる場合が有る。
【0034】
さらにソース・ドレイン電極及び引き回し配線となる導電層(第2配線層)709を形成する。ここでは、Ti、Al、Tiの三層積層構造を採用した。層間絶縁膜708、TFT703のゲート電極704と同層の導電層(第2配線層)で形成される電極、およびTFTのソース・ドレイン配線と同層の導電層で形成される電極とで、保持容量(Cs)707の一部が形成される。引き回し配線は、基板周縁の端部まで延在され、後にフレキシブルプリント基板や駆動ICを接続する端子106を形成する。端子106は、ゲート電極705を形成する第1配線層と同層で形成されてもよい。
【0035】
その後、TFT703及び引き回し配線を覆うように平坦化膜710を形成する。平坦化膜としては感光性アクリルやポリイミド等の有機材料が多く用いられる。CVD等により形成される無機絶縁材料に比べ、表面の平坦性に優れる。
【0036】
平坦化膜710は、画素コンタクト部、及び周辺領域770の一部では除去される。平坦化膜の除去により導電層709が露出した箇所は、一旦、透明導電膜711にて被覆される。透明導電膜711としては、例えば、ITO(Indium tin oxide)が用いられる。透明導電膜711上は一旦、シリコン窒化膜712で被覆され、画素コンタクト部を再び開口して、画素電極となる導電層713を形成する。ここでは、画素電極は反射電極として形成され、IZO、Ag、IZOの三層積層構造としている。画素部においては、透明導電膜711、シリコン窒化膜712、導電層713によって付加容量(Cad)714が形成される。一方、透明導電膜711は端子106の表面にも形成される。端子106上の透明導電膜は、以後の工程で配線露出部がダメージを負わないようにバリア膜として設けることを目的の一としている。
【0037】
ところで、画素電極(導電層713)のパターニング時、一部において透明導電膜711がエッチング環境にさらされるが、透明導電膜711形成から導電層713形成までの間に行われるアニール処理によって、透明導電膜711は導電層713のエッチングに対し十分な耐性を有する。
【0038】
画素電極形成後、バンク(リブ)715と呼ばれる、画素領域の隔壁となる絶縁層を形成する。バンク715としては平坦化膜710と同じく感光性アクリルやポリイミド等の有機材料が用いられる。バンク715は、画素電極表面を発光領域として露出するように開口され、その開口端はなだらかなテーパー形状となるのが好ましい。開口端が急峻な形状になっていると、後で形成される有機層のカバレッジ不良を生ずる。
【0039】
ここで、平坦化膜710とバンク715は、両者の間のシリコン窒化膜712に設けた開口716を通じて接触させている部位を有する。これは、バンク形成後の熱処理等を通じて、平坦化膜710から脱離する水分やガスを、バンク715を通じて引き抜くための開口部である。ここで脱離する水分やガスとは、前述した基板101の形成時に、第1樹脂層501や第2樹脂層504から脱離するものと同じ現象であり、開口716を通じて平坦化膜710からバンク715に引き抜くことで、平坦化膜710とシリコン窒化膜712との界面の剥離を抑制することができる。
【0040】
バンク715形成後、有機EL層を形成する有機層717を積層形成する。
図7では単層様に記載しているが、画素電極側から順に、正孔輸送層、発光層、電子輸送層を積層形成する。これらの層は、蒸着による形成であっても良いし、溶媒分散の上での塗布形成であっても良い。また、
図7に示すように、各画素に対して選択的に形成しても良いし、表示領域を覆う全面にベタ形成されても良い。ベタ形成の場合は、全画素において白色光を得て、カラーフィルタ(図示せず)によって所望の色波長部分を取り出す構成とすることができる。
【0041】
有機層717の形成後、対向電極718を形成する。ここでは、トップエミッション構造としているため、対向電極718は光透過性とする必要がある。なお、トップエミッション構造とは、基板101上に、有機層717を挟んで配置される対向電極718から光を出射する構造をいう。ここでは、対向電極718として、MgAg膜を、有機EL層からの出射光が透過する程度の薄膜として形成する。前述の有機層717の形成順序に従うと、画素電極側が陽極となり、対向電極側が陰極となる。対向電極718は、表示領域760上と、表示領域近傍に設けられた陰極コンタクト部780に亘って形成され、陰極コンタクト部780で下層の導電層709と接続され、最終的には端子106に引き出される。
【0042】
対向電極の形成後、封止層719を形成する。封止層719は、先に形成した有機層を、外部からの水分侵入を防止することを機能の一としており、封止層としてはガスバリア性の高いものが要求される。ここでは、封止層719として、シリコン窒化膜を含む積層構造として、シリコン窒化膜719a、有機樹脂719b、シリコン窒化膜719cの積層される構造を示す。なお、特に図示しないが、シリコン窒化膜719aと有機樹脂719bとの間には、基板101の積層工程において説明した通り、密着性向上を目的の一として、アモルファスシリコン層を設けても良い。
【0043】
以上の工程により、表示装置100が作製される。必要に応じて、
図8に示すように、封止層719上にカバーガラス800を設けても良い。カバーガラス800には、タッチセンサ等が形成されていても良い。この場合、表示装置100とカバーガラス800との空隙を埋めるために、樹脂等を用いた充填材810を介しても良い。
【0044】
基板101の折り曲げに伴い、特に無機絶縁層などは靱性に乏しいため、容易にクラックを生ずることから、折曲領域750においては無機絶縁層が除去されている。この領域の強度確保のため、折曲領域750を覆うように、導電層709上に樹脂コート820等を設けても良い。
【0045】
本実施形態に示す表示装置によれば、第2樹脂層の膜厚を、第1樹脂層の膜厚よりも大きくなるように基板101を構成することにより、第1樹脂層からのガス成分の脱離をできるだけ少なくする。また、第2樹脂層504の熱処理時の温度の最大値が、第1樹脂層501の熱処理時の温度の最大値を超えないように設定することにより、第2樹脂層504の焼成時における第1樹脂層501からのガス成分の脱離を抑制することができる。これにより、第1樹脂層501と、第1無機絶縁層502との界面において、剥離が生じることを抑制することができる。
【0046】
また、基板101として、第1樹脂層501と第2樹脂層504との間に第1無機絶縁層502が設けられている。第1無機絶縁層502を設けることにより、第1樹脂層501及び第2樹脂層504を通って機能層505に水分やその他の汚染物質が侵入することを抑制することができる。また、第1樹脂層501と第1無機絶縁層502との間、又は第1無機絶縁層502と第2樹脂層504との間に、第2無機絶縁層503を設けている。これにより、第1樹脂層501と第1無機絶縁層502との間、又は第1無機絶縁層502と第2樹脂層504との間の密着性を向上させることができる。
【0047】
<実施形態2>
本発明の他の一実施形態である表示装置の構造につき以下に説明する。
【0048】
図7においては、折曲領域750において、基板101よりも上層に設けられた無機絶縁層(アンダーコート層701、ゲート絶縁膜704、層間絶縁膜708)を除去する工程を設けていたが、第1樹脂層501と第2樹脂層504との間に設けられた第1無機絶縁層502、及び第2無機絶縁層503については折曲領域750に延在している。これを、
図9に示すように、層間絶縁膜708及びアンダーコート層701の除去後、続けて第2樹脂層504、第2無機絶縁層503、第1無機絶縁層502を除去しても良い。これにより、折曲領域750において、無機絶縁層が延在しないような構成とすることができる。導電層709は第1樹脂層501に接するように設けられる。なお、本発明の一実施形態において、第1樹脂層501は、第2樹脂層504に比べてその膜厚が薄いため、第2樹脂層504を除去した後の折曲領域750は機械的強度が低くなっている。従って、
図8に示したような樹脂コート820を設けることは非常に有効である。
【0049】
本実施形態に示す表示装置の構成によれば、折曲領域750において、無機絶縁層が延在しない構成とすることにより、基板101を良好に折り曲げることができる。また、折曲領域750において、基板101を折り曲げた後、樹脂コート820を設けることにより、折曲領域750における機械的強度を向上させることができる。これにより、可撓性を有する基板101を湾曲、あるいは折り曲げても高い信頼性を維持することが可能な表示装置を提供することができる。
【0050】
<実施形態3>
基板101が可撓性を有する材質である場合、
図7乃至
図9に基づいて説明した工程を通じ、基板101がその平坦性を保つことが難しい。従ってこのような表示装置を形成する場合は、
図10Aに示すように、ガラス、石英等でなる支持基板1001上に、第1樹脂層501、第1無機絶縁層502、第2無機絶縁層503、及び第2樹脂層504を含む基板101を形成する。続いて、導電層、半導体層、絶縁層を用いて形成された複数の画素や、ゲート駆動回路を含む機能層505を形成し、その後、シリコン窒化膜719a、有機樹脂719b、シリコン窒化膜719cを含む封止層506を形成する。一連の工程を通じ、支持基板1001によって基板101上の平坦性が保たれるため、高精度なフォトリソグラフィを含む製造工程を正常に完了することができる。なお、基板101から封止層506の形成方法の詳細については、第1実施形態を参照すればよい。
【0051】
続いて、
図10Bに示すように、支持基板1001の、基板101が形成されていない面側からレーザー照射処理1002等を行う。このレーザー照射処理1002により、支持基板1001に接する基板101の第1樹脂層501の一部1003が変質し、密着性が低下する。この密着性の低下は、第1樹脂層501が熱によって一部アブレーションを生じたり、あるいはシュリンクを生じたりすることによってもたらされる。
【0052】
その後、
図10Cに示すように、支持基板1001と基板101との間に物理的に力を加えることによって、互いの界面で剥離する。支持基板1001から剥離された表示装置100は、この時点で基板101が有する可撓性によって、
図2乃至
図4に示したような形態をとることができる。
【0053】
本実施形態に示す表示装置の製造方法によれば、可撓性を有する基板101上の平坦性が保たれるため、高精度なフォトリソグラフィを行うことができる。これにより、半導体層、絶縁層、導電層を高精度に加工することができる。
【0054】
なお、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。例えば、前述の各実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除若しくは設計変更を行ったもの、又は、工程の追加、省略若しくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0055】
100:表示装置、101:基板、102:表示領域、103:画素、104:ゲート駆動回路、105:ソース駆動回路、106:端子、107:フレキシブルプリント回路基板(FPC)、200:湾曲可能領域、300:折曲領域、303:スペーサ、501:第1樹脂層、502:第1無機絶縁層、503:第2無機絶縁層、504:第2樹脂層、505:機能層、506:封止層、601:剥離、701:アンダーコート層、702:遮光層(LS層)、703:TFT、704:ゲート絶縁膜、705:ゲート電極、706:ポリシリコン、707:保持容量(Cs)、708:層間絶縁膜、709:導電層、710:平坦化膜、711:透明導電膜、712:シリコン窒化膜、713:導電層、714:付加容量(Cad)、715:バンク、716:開口、717:有機層、718:対向電極、719:封止層、750:折曲領域、760:表示領域、770:周辺領域、780:陰極コンタクト部、800:カバーガラス、810:充填材、820:樹脂コート、1001:支持基板