IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社イノアック住環境の特許一覧

<>
  • 特許-保温チューブの製造方法 図1
  • 特許-保温チューブの製造方法 図2
  • 特許-保温チューブの製造方法 図3
  • 特許-保温チューブの製造方法 図4
  • 特許-保温チューブの製造方法 図5
  • 特許-保温チューブの製造方法 図6
  • 特許-保温チューブの製造方法 図7
  • 特許-保温チューブの製造方法 図8
  • 特許-保温チューブの製造方法 図9
  • 特許-保温チューブの製造方法 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-27
(45)【発行日】2022-05-11
(54)【発明の名称】保温チューブの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 53/38 20060101AFI20220428BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20220428BHJP
   B32B 1/08 20060101ALI20220428BHJP
   B29C 65/02 20060101ALI20220428BHJP
【FI】
B29C53/38
B32B5/18 101
B32B1/08 A
B29C65/02
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2017254483
(22)【出願日】2017-12-28
(65)【公開番号】P2019119096
(43)【公開日】2019-07-22
【審査請求日】2020-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】508321823
【氏名又は名称】株式会社イノアック住環境
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【弁理士】
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】榎本 晃司
(72)【発明者】
【氏名】鷲野 光弘
【審査官】池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-143527(JP,A)
【文献】特開平07-248094(JP,A)
【文献】特開平08-156088(JP,A)
【文献】特開平05-111961(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 53/38
B32B 5/18
B32B 1/08
B29C 65/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状の発泡シートの外面に長尺状の表皮シートが貼られると共に、前記表皮シートの一部が前記発泡シートの幅方向の一端からはみ出してなるはみ出し部が設けられ、前記発泡シートが前記幅方向で丸められかつ前記はみ出し部が外側に折り返されるようにして前記発泡シートの前記幅方向の端面同士が熱融着されて保温チューブが製造される製造方法であって、
前記表皮シートは、前記幅方向で前記発泡シートの中央より一端側の箇所と他端側の箇所とを含む複数箇所に分かれて間隔をあけて配置される保温チューブの製造方法。
【請求項2】
前記表皮シートは、前記発泡シートの前記幅方向の一端部と他端部とにそれぞれ貼り合わされる第1シートと第2シートに分かれて配置される請求項1に記載の保温チューブの製造方法。
【請求項3】
前記第1シートと前記第2シートを、前記発泡シートに前記発泡シートの幅方向の両端から所定の間隔をあけて貼り合わせる、請求項2に記載の保温チューブの製造方法。
【請求項4】
前記第2シートとして、丸められた前記発泡シートの熱融着部分に外側から前記はみ出し部を重ねたときに該はみ出し部にて前記第2シートの全体が覆われる幅のものを用いる、請求項2又は3に記載の保温チューブの製造方法。
【請求項5】
前記表皮シートは、前記発泡シートの前記幅方向の一端側部分と他端側部分とにそれぞれ貼り合わされる第1シートと第2シートに分かれて配置され、
前記第1シートと前記第2シートを一度に前記発泡シートに貼り合わせる、請求項1乃至4のうち何れか1の請求項に記載の保温チューブの製造方法。
【請求項6】
前記表皮シートは、前記発泡シートの前記幅方向の一端側部分と他端側部分とにそれぞれ貼り合わされる第1シートと第2シートに分かれて配置され、
前記第1シートと前記第2シートとして、片面が粘着面とされたものを用い
前記第1シートを前記発泡シートに貼り合わせる際に、前記第1シートの幅方向の一端寄り部分の粘着面に剥離材を貼り付けて前記第1シートのうち前記剥離材の非貼付部分を前記発泡シートに貼り合わせ、前記剥離材の貼付部分にて前記はみ出し部を形成する、請求項1乃至5のうち何れか1の請求項に記載の保温チューブの製造方法。
【請求項7】
丸められて前記熱融着された前記発泡シートにスリットを形成することを含む、請求項1乃至6のうち何れか1の請求項に記載の保温チューブの製造方法。
【請求項8】
記発泡シートの前記熱融着された部分の近傍であって、その熱融着部分に外側から前記はみ出し部を重ねたときに該はみ出し部に覆われる部分に、前記スリットを形成する、請求項7に記載の保温チューブの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡シートに表皮シートを貼り合わせ発泡シートの両端面を熱融着して筒状に成形する保温チューブの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示の保温チューブの製造方法では、発泡シートと該発泡シートより幅広の表皮シートとを一側縁を揃えて貼り合わせ、その後、発泡シートの幅方向の両端面を熱融着して筒状に成形する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平6-143527号公報(段落[0023]~[0026]、図5,6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の保温チューブでは、表皮シートの使用量が多く、製造コストが高くなるという問題があった。そこで、表皮シートを発泡シートより幅狭にして発泡シートの一側部にのみ貼り合わせると、保温チューブが反るという別の問題が発生する。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、表皮シートの使用量を少なくしつつ保温チューブの反りを抑制することが可能な保温チューブの製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた発明の第1態様は、長尺の発泡シートと該発泡シートより幅狭の表皮シートを準備することと、前記表皮シートが前記発泡シートの幅方向の一端からはみ出るように前記表皮シートを前記発泡シートの幅方向の一端部に貼り合わせ、そのはみ出した部分でヒレ部を形成することと、前記ヒレ部の形成後、前記発泡シートを丸めて幅方向の両端部の端面を突き合わせながら熱融着して筒状に成形することと、を含む保温チューブの製造方法において、前記発泡シートより幅狭であって前記表皮シートとは別の表皮シートを準備しておくことと、前記発泡シートの熱融着に先立って前記発泡シートの幅方向の中央より他端側の領域に前記別の表皮シートを貼り合わせることと、をさらに含む、保温チューブの製造方法である。
【0007】
発明の第2態様は、前記別の表皮シートを前記発泡シートの幅方向の他端部に貼り合わせる、第1態様に記載の保温チューブの製造方法である。
【0008】
発明の第3態様は、前記表皮シートと前記別の表皮シートを、前記発泡シートの幅方向の両端から所定の間隔をあけて貼り合わせる、第2態様に記載の保温チューブの製造方法である。
【0009】
発明の第4態様は、前記別の表皮シートを準備するにあたり、筒状に成形された前記発泡シートの熱融着部分に外側から前記ヒレ部を重ねたときに該ヒレ部にて前記別の表皮シートの全体が覆われる幅のものを準備する、第2態様又は第3態様に記載の保温チューブの製造方法である。
【0010】
発明の第5態様は、前記表皮シートと前記別の表皮シートを一度に前記発泡シートに貼り合わせる、第1態様から第4態様のうち何れか1の態様に記載の保温チューブの製造方法である。
【0011】
発明の第6態様は、前記表皮シートと前記別の表皮シートを準備するにあたり、片面が粘着面とされたものを準備し、前記表皮シートを前記発泡シートに貼り合わせる際に、前記表皮シートの幅方向の一端寄り部分の粘着面に剥離材を貼り付けて前記表皮シートのうち前記剥離材の非貼付部分を前記発泡シートに貼り合わせ、前記剥離材の貼付部分にて前記ヒレ部を形成する、第1態様から第5態様のうち何れか1の態様に記載の保温チューブの製造方法である。
【0012】
発明の第7態様は、筒状に成形された前記発泡シートにスリットを形成することを含む、第1態様から第6態様のうち何れか1の態様に記載の保温チューブの製造方法である。
【0013】
発明の第8態様は、筒状に成形された前記発泡シートの熱融着部分の近傍であって、その熱融着部分に外側から前記ヒレ部を重ねたときに該ヒレ部に覆われる部分に、前記スリットを形成する、第7態様に記載の保温チューブの製造方法である。
【発明の効果】
【0014】
発明の第1態様
態様によれば、表皮シートと別の表皮シートの2枚の表皮シートで、筒状に成形された発泡シートの周方向の一部を覆って表皮シートの使用量を少なくすることができる。また、表皮シートと別の表皮シートは、発泡シートの幅方向の一端部と他端寄り部分にそれぞれ貼り合わされる。従って、筒状に成形された発泡シートにおいて、融着面を挟んで一方側の部分と他方側の部分との熱収縮の差を小さくすることが可能となり、保温チューブの反りを抑制することが可能となる。
【0015】
発明の第2態様
態様によれば、表皮シートと別の表皮シートの両方が発泡シートの融着面の近傍に配置されるので、融着面を隠すように表皮シートのヒレ部を筒状に成形された発泡シートに巻き付けたときに、ヒレ部を別の表皮シートに接着することができ、発泡シートに直に接着する場合と比較して、ヒレ部の接着性の向上が図られる。
【0016】
発明の第3態様
態様によれば、表皮シートと別の表皮シートが熱融着の妨げとなったり、表皮シートおよび別の表皮シート自体が熱により溶融することが抑制される。
【0017】
発明の第4態様
態様によれば、発泡シートの融着面を隠すようにヒレ部を発泡シートに巻き付けたときに、そのヒレ部によって別の表皮シートを隠して、保温チューブの見栄えを良くすることが可能となる。
【0018】
発明の第5態様
態様によれば、表皮シートと別の表皮シートを別々の工程で貼り合わせる場合と比較して、製造工程を少なくすることができる。
【0019】
発明の第6態様
態様によれば、剥離材を外してからヒレ部を別の表皮シートに接着させることで、ヒレ部を発泡シートに巻き付けることが可能となる。
【0020】
発明の第7態様
態様に係る保温チューブによれば、スリットにパイプを通して、パイプを外側から覆うことができる。
【0021】
発明の第8態様
態様に係る保温チューブによれば、スリットをヒレ部で覆うことができるので、見栄えを良くすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係る保温チューブの(A)斜視図、(B)断面図
図2】(A)スリットが形成された保温チューブの断面図、(B)パイプに巻きつけられ保温チューブの断面図、(C)ヒレ部でスリットが閉じられた保温チューブの断面図
図3】(A)貼合工程を示す側面図、(B)成形工程を示す側面図
図4】貼合装置の斜視図
図5】第1表皮シートの折り返しを説明するための(A)平面図、(B)断面図
図6】成形装置の平面図
図7】保温チューブの別の例を示す(A)斜視図、(B)断面図
図8】(A)保温チューブの曲りの測定方法を説明するための図、(B)確認実験の結果を示すテーブル
図9】他の実施形態に係る保温チューブの製造工程を示す側面図
図10】他の実施形態に係る保温チューブの製造工程を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1(A)及び図1(B)に示されるように、本実施形態に係る保温チューブ10は、合成樹脂の発泡体等で構成された管体11と、管体11の外周面に管体11の長手方向に沿って貼り合わされた第1表皮シート12及び第2表皮シート13を備えている。第1表皮シート12及び第2表皮シート13は、管体11の外周の長さより幅狭に形成されている。そして、管体11の外周面の一部が第1表皮シート12及び第2表皮シート13に覆われ、残りの部分が露出する。なお、管体11は、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等)、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエチレン酢酸ビニル共重合体樹脂等の熱可塑性樹脂の発泡体、ポリウレタン系樹脂等の熱硬化性樹脂の発泡体等で構成され、第1表皮シート12及び第2表皮シート13は、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等の熱可塑性樹脂、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー等の熱可塑性エラストマー等で構成されている。
【0024】
第1表皮シート12は、幅方向の片側部分のみが管体11に貼り合わされている。一方、第2表皮シート13は、幅方向の全体が管体11に貼り合わされている。そして、第1表皮シート12のうち管体11に貼り合わされていない部分によってヒレ部15が形成されている。なお、ヒレ部15は折り返されている。
【0025】
詳細には、第1表皮シート12及び第2表皮シート13の片面は、粘着面として形成されている。第1表皮シート12の粘着面には、第1表皮シート12の幅方向の片側に第1表皮シート12から飛び出るように剥離材14(例えば、剥離紙や剥離フィルム等)が貼り付けられていて、第1表皮シート12は、剥離材14の非貼付部分にて管体11に貼り合わされている。そして、第1表皮シート12のうち剥離材14の貼付部分が、上述のヒレ部15を形成する。一方、第2表皮シート13は、幅方向全体で管体11に貼り合わされている。なお、剥離材14は、その剥離を容易にするために、第1表皮シート12の幅方向の側縁から若干はみ出ている。
【0026】
後に詳述するが、管体11は、図4に示される発泡シート20を筒状に丸めて、発泡シート20の幅方向の両端部の端面同士を熱融着してなる。図1(A)及び図1(B)には、発泡シート20の接合面20Mが2点鎖線で示されている。
【0027】
図1(B)に示されるように、第1表皮シート12は、接合面20Mの近傍に配置されている。詳細には、第1表皮シート12は、管体11の周方向で接合面20Mから所定の間隔(例えば、2mm)以上離れた部位に貼り合わされている。
【0028】
第2表皮シート13は、管体11の周方向で接合面20Mから180度ずれた位置を基準にして第1表皮シート12とは反対側に配置されている。即ち、接合面20Mを含み且つ管体11の中心軸11Jを通る分割面S1で管体11が2分割された場合に、一方の分割体に第1表皮シート12が備えられ、他方の分割体に第2表皮シート13が備えられる。本実施形態の例では、第2表皮シート13は、管体11の周方向で接合面20Mを挟んで突き合わされた1対の突き合わせ部21,21の他方の分割体側に貼り合わされている。第2表皮シート13は、管体11の周方向で接合面20Mから所定の間隔(例えば、2mm)以上離れた部位に貼り合わされている。なお、各表皮シート12,13と接合面20Mとの間隔は、同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0029】
図2(C)に示されるように、保温チューブ10は、流体が流れるパイプ30に巻き付けて使用される。保温チューブ10をパイプ30に巻き付けるには、まず、図2(A)に示されるように、管体11の周方向の1箇所にスリット31を形成して、管体11を断面C字状にする。スリット31は、管体11のうち第1表皮シート12の貼付部分と第2表皮シート13貼付部分に挟まれた部位に形成され、好ましくは、図2(A)の例のように、接合面20Mに沿って形成される。なお、保温チューブ10は、管体11に予めスリット31が形成されたスリット入りタイプのものであってもよい。
【0030】
管体11にスリット31が形成されたら、図2(B)に示されるように、管体11のスリット31にパイプ30を通して、パイプ30の外側を管体11で覆う。次いで、図2(C)に示されるように、第1表皮シート12のヒレ部15から剥離材14を剥がし、スリット31を塞ぐようにヒレ部15を管体11に巻き付ける。すると、ヒレ部15において剥離材14に覆われていた粘着面が、管体11と第2表皮シート13に接着する。以上により、保温チューブ10がパイプ30に巻き付けられる。
【0031】
このように、保温チューブ10では、接合面20Mを挟んで突き合わされた1対の突き合わせ部21,21に第1表皮シート12と第2表皮シート13が貼り合わされているので、スリット31を隠すようにヒレ部15を管体11に巻き付けたときに、ヒレ部15を第2表皮シート13に接着することができる。これにより、ヒレ部15を発泡シート20に直に接着する場合に比べて、ヒレ部15の接着性の向上が図られる。また、ヒレ部15でスリット31を覆うので、保温チューブ10の見栄えをよくすることが可能となる。しかも、第1表皮シート12と第2表皮シート13が保温チューブ10の周方向の1箇所に集められるので、保温チューブ10の反りを避けつつ保温チューブ10を曲げることが容易になる。また、第1表皮シート12と第2表皮シート13が保温チューブ10の周方向の1箇所に集められることにより、保温チューブ10の見栄えを良くすることもできる。特に、図2(C)に示されるように、第2表皮シート13の幅が、管体11に巻き付けられたヒレ部15にて第2表皮シート13の全体が覆われる大きさになっていると、第2表皮シート13が第1表皮シート12からはみ出ることがなくなり、保温チューブ10の見栄えを一層良くすることができる。
【0032】
図3(A)及び図3(B)には、保温チューブ10の製造工程が示されている。図3(A)には、発泡シート20(例えば、厚み5~20mm、幅120~300mm)に、第1表皮シート12(例えば、厚み0.05~0.5mm、幅40~60mm)と第2表皮シート13(例えば、厚み0.05~0.5mm、幅10~30mm)を貼り合わせる貼合工程が示され、図3(B)には、発泡シート20を筒状に成形する成形工程が示されている。
【0033】
図3(A)及び図4に示されるように、貼合工程では、貼合装置40が用いられる。貼合装置40は、発泡シート20を長手方向に送る送給ローラ41と、発泡シート20に第1表皮シート12と第2表皮シート13を貼り付けるための1対の圧着ローラ42,42と、を備えている。1対の圧着ローラ42,42は、発泡シート20を厚み方向に挟むように配置され、互に逆方向に回転する。なお、本実施形態では、発泡シート20が略水平に配置され、第1表皮シート12と第2表皮シート13が発泡シート20の上面に貼り合わされる。
【0034】
図4に示されるように、第1表皮シート12は、ガイドローラ43によって上側の圧着ローラ42の上流側に案内され、粘着面を発泡シート20側に向けた状態で発泡シート20の幅方向の一端部に重ねられる。そして、1対の圧着ローラ42,42によって第1表皮シート12が発泡シート20の一端部に圧着される。ここで、第1表皮シート12の幅方向の一端寄り部分の粘着面には、図3(A)に示されるガイドローラ44によって圧着ローラ42の上流側に案内されてきた剥離材14が貼り付けられ、第1表皮シート12は、剥離材14の貼付部分が発泡シート20の幅方向の一端からはみ出るように配置される。このとき、剥離材14の貼付部分によりヒレ部15が形成される。
【0035】
また、図4に示されるように、第2表皮シート13は、上述のガイドローラ43によって上側の圧着ローラ42の上流側に案内され、粘着面を発泡シート20側に向けた状態で発泡シート20の幅方向の他端部に重ねられる。このとき、第2表皮シート12は、発泡シート20の幅方向の他端縁から所定の間隔をあけて配置される。そして、1対の圧着ローラ42,42によって第2表皮シート13が発泡シート20の他端部に圧着される。
【0036】
図5(A)及び図5(B)に示されるように、第1表皮シート12と第2表皮シート13が発泡シート20に貼り合わされると、次いで、第1表皮シート12のヒレ部15が、折返ガイド45によって折り返される。ここで、第1表皮シート12が折り返される前の段階で、発泡シート20の幅方向の一端縁には、剥離材14の側縁部が重なっていて、第1表皮シート12が折り返されると、第1表皮シート12は、発泡シート20の幅方向の一端縁から所定の間隔をあけて配置される。
【0037】
図3(A)に示されるように、第1表皮シート12が折り返されると、ヒレ部15が押えローラ46によって上側から押えられる。そして、発泡シート20が巻取ローラ47によって巻き取られる。
【0038】
図3(B)に示されるように、成形工程では、成形装置50が用いられる。成形装置50は、折曲ガイド51と、予熱ヒータ52と、成形ダイス53と、融着用ヒータ54と、を備えている。折曲ガイド51は、成形前の発泡シート20の幅方向の両端部を持ち上げてU字状に折り曲げる。予熱ヒータ52は、成形前の発泡シート20に上方から熱風を吹き付ける。成形ダイス53は、発泡シート20を筒状に成形するダイスであって、保温チューブ10の外径にほぼ等しい成形孔53Aを発泡シート20の送り方向に貫通して備えている。融着用ヒータ54は、成形ダイス53の上流側で成形孔53Aの近傍にヒータの先端が臨むように配置されている。
【0039】
成形工程では、第1表皮シート12と第2表皮シート13が貼り合わされた発泡シート20が、各表皮シート12,13を下方に向けた状態で、成形ダイス53へと送られる。発泡シート20は、成形ダイス53へ到達する前に、折曲ガイド51によってU字溝状に成形され、その溝の内面が予熱ヒータ52によって加熱される。U字溝状に成形された発泡シート20は、図示しないガイドによって幅方向の両端部の端面を突き合わせるように丸められながら、成形ダイス53の成形孔53Aに突入する。このとき、発泡シート20の幅方向の両端部の端面は、融着用ヒータ54によって加熱され、溶融状態となる。発泡シート20が成形孔53Aを通過すると、発泡シート20の溶融状態の両端部の端面同士が熱融着され、発泡シート20が筒状に成形されて図1で示した管体11が完成する。以上により、保温チューブ10が完成する。なお、上述のスリット入りタイプの保温チューブ10は、筒状に成形された発泡シート20の熱融着部分の近傍(詳細には、その熱融着部分に外側からヒレ部15が重ねられたときにヒレ部15に覆われる部分)に、さらにスリット31が形成されることで完成する。
【0040】
図7に示される保温チューブ10Vは、保温チューブ10と同様にして製造される。保温チューブ10Vは、第2表皮シート13の配置のみが保温チューブ10と異なっており、その他の構成については、保温チューブ10と同じである。
【0041】
保温チューブ10Vでは、第2表皮シート13は、管体11の中心軸11Jを挟んで第1表皮シート12と反対側に配置されている。従って、保温チューブ10Vにおいても、接合面20Mを含み且つ管体11の中心軸11Jを通る分割面S1で管体11が2分割された場合に、一方の分割体に第1表皮シート12が備えられ、他方の分割体に第2表皮シート13が備えられる。なお、保温チューブ10Vの製造にあたって、第1表皮シート12は、発泡シート20の幅方向の一端部に貼り合わされ、第2表皮シート13は、発泡シート20の幅方向の中央よりも他端側の領域において発泡シート20の幅方向中央側の部分に貼り合わされる。
【0042】
本実施形態の保温チューブ10,10Vの製造方法では、第1表皮シート12と第2表皮シート13の2枚の表皮シートで、筒状に成形された発泡シート20の周方向の一部を覆って表皮シートの使用量を少なくすることができる。また、第1表皮シート12と第2表皮シート13は、発泡シート20の幅方向の一端部と他端寄り部分にそれぞれ貼り合わされる。従って、筒状に成形された発泡シート20において、融着面を挟んで一方側の部分と他方側の部分との熱収縮の差を小さくすることが可能となり、保温チューブ10,10Vの反りを抑制することが可能となる。
【0043】
また、本実施形態では、第1表皮シート12と第2表皮シート13が発泡シート20の幅方向の両端から所定の間隔をあけて貼り合わされるので、第1表皮シート12と第2表皮シート13が熱融着の妨げとなったり、表皮シートおよび別の表皮シート自体が熱により溶融することが抑制される。
【0044】
また、本実施形態では、第1表皮シート12と第2表皮シート13を一度に発泡シート20に貼り合わせるので、第1表皮シート12と第2表皮シート13を別々の工程で貼り合わせる場合と比較して、製造工程を少なくすることができる。
【0045】
また、本実施形態の保温チューブ10,10Vによれば、筒体11の外周面全体に表皮シートが貼り合された従来の保温チューブに比べて使用する表皮シートのサイズの種類を大幅に減らすことが可能となる。即ち、保温チューブ10,10Vを巻き付けるパイプ30に外径が異なる複数の種類がある場合に、発泡シート20の幅のみを変更して、各表皮シート12,13の幅を変更することなく保温チューブ10,10Vを製造することができる。また、発泡シート20の厚みに複数の種類がある場合にも、各表皮シート12,13の幅を変更することなく保温チューブ10,10Vを製造することができる。なお、従来の保温チューブでは、パイプ30の外径や発泡シートの厚みに応じて、表皮シートの幅を変える必要がある。
【0046】
[確認実験]
本実施形態に係る保温チューブ10,10Vの製造方法の効果を確認実験により確認した。この確認実験では、保温チューブ10,10Vを含む複数種類の保温チューブについて、図8(A)に示されるように、保温チューブの両端を水平な台の上に載置したときの浮き上がり量Xを測定し、その浮き上がり量Xを保温チューブの反り量とした。測定は、製造直後と製造から6時間後の2回行った。図8(B)には、各保温チューブの測定結果が示されている。同図において、実験例1は保温チューブ10であり、実験例2は保温チューブ10Vである。また、実験例3は、第1表皮シート12のみが発泡シート20に貼り合わされて製造された保温チューブである。各実験例において、発泡シート20として、厚み7mmのポリエチレン系樹脂発泡体のシートを用い、第1表皮シート12及び第2表皮シート13として、厚み0.1mmのポリ塩化ビニル系樹脂シートを用いた。
【0047】
図8(B)に示されるように、製造直後、製造から6時間後の何れにおいても、実験例1,2の反り量は、実験例3の反り量の半分以下になっている。このことから、第2表皮シート13が発泡シート20に貼り合わされることによって、製造後の管体11において1対の突き合わせ部21,21の間の熱収縮の差が小さくなり、保温チューブ10,10Vは反りが抑制されていることが分かる。
【0048】
なお、実験例2は、実験例1よりも反り量が小さくなっている。実験例2では、第2表皮シート13が管体11の中心軸11Jを挟んで第1表皮シート12と反対側に配置されることで(図7(B)参照)、第1表皮シート12に起因する保温チューブ10Vの反りが、第2表皮シート13に起因する保温チューブ10Vの反りによって打ち消される、と考えられる。
【0049】
[他の実施形態]
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0050】
(1)上記実施形態では、第2表皮シート13全体が管体11の分割面S1に対して他方の分割体側に配置されていたが、第2表皮シート13が分割面S1をまたぐように配置されていてもよい。このような保温チューブ10Vを製造する場合には、貼合工程において、発泡シート20の幅方向の中央位置をまたぐように第2表皮シート13を発泡シート20に貼り合わせればよい。
【0051】
(2)上記実施形態において、保温チューブ10,10Vを製造するにあたり、図9に示されるように貼合工程と成形工程とが連続して行われてもよい。
【0052】
(3)上記実施形態では、第2表皮シート13が、1枚だけ貼り付けられていたが、管体11の他方の分割体に、周方向で複数枚貼り付けられていてもよい。この場合、複数の第2表皮シート13には、分割面S1をまたいで貼り付けられているものが含まれていてもよい。このような保温チューブ10,10Vを製造する場合には、貼合工程において、第2表皮シート13を、発泡シート20のうち幅方向の他端側部分における幅方向の複数位置に貼り合わせればよい。
【0053】
(4)上記実施形態では、第1表皮シート12と剥離材14の貼り合わせが、第1表皮シート12を発泡シート20に貼り合わせる時に行われていたが、それよりも前に行われていてもよい。この場合、例えば、第1表皮シート12の粘着面全体に剥離材14を貼り合わせたものを用意しておき、貼合工程における1対の圧着ローラ42,42の上流で、その剥離材14の幅方向の片側部分を第1表皮シート12から剥離することにより、第1表皮シート12の幅方向の他端側部分の粘着面を露出させて、第1表皮シート12を発泡シート20に貼り付けてもよい。
【0054】
(5)上記実施形態において、第1表皮シート12と第2表皮シート13とが、それぞれ発泡シート20に貼り合わされる部分の幅は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0055】
(6)上記実施形態では、第2表皮シート13の幅が、ヒレ部15によって全体がおおわれる大きさになっていたが、ヒレ部15によって一部のみが覆われる大きさになっていてもよい。
【0056】
(7)上記実施形態において、貼合工程で第1表皮シート12の片面の一部にのみ粘着剤等を塗布してもよい。この場合、剥離材14を用いずに、貼合工程で第1表皮シート12のうち発泡シート20と貼り合わせる部分のみに粘着剤等を塗布すればよい。なお、この場合には、保温チューブ10,10Vをパイプ30に巻き付ける際に、ヒレ部15に粘着剤等を塗布したり、両面テープ等で接着すればよい。また、ヒレ部15は、保温チューブ10,10Vをパイプ30に巻き付けたときに、第2表皮シート13に重なる幅となっていてもよいし、第2表皮シート13に重ならない幅となっていてもよい。
【0057】
(8)上記実施形態において、第1表皮シート12と第2表皮シート13との材質は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、第1表皮シート12と第2表皮シート13の厚みは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0058】
(9)上記実施形態では、第1表皮シート12と第2表皮シート13を発泡シート20に一度に貼り合わせていたが、第1表皮シート12と第2表皮シート13を発泡シート20に貼り合わせるタイミングをずらしてもよい。
【0059】
(10)上記実施形態では、保温チューブ10,10Vを製造する際に、ヒレ部15を折り返していたが、折り返さなくてもよい。この場合、例えば、成形ダイス53の成形孔53Aの内周面に開口して成形孔53Aの一端から他端まで延びると共にヒレ部15を受容する受容部を設ければよい。この受容部にヒレ部15を受容させることで、ヒレ部15を折り返さずに発泡シート20を筒状に成形することができる。このような受容部としては、溝、又は、成形ダイス53の外方に連通したスリット53S(図10参照)等が挙げられる。
【0060】
(11)上記実施形態では、剥離材14が、第1表皮シート12の幅方向の側縁からはみ出すように貼り付けられていたが、第1表皮シート12の長手方向の側縁からはみ出すように貼り付けられていてもよいし、第1表皮シート12からはみ出さないように貼り付けられてもよい。後者の場合においても、作業者がつまむことが可能なつまみ部を剥離材14に設けておけば、その剥離を容易にすることができる。
【符号の説明】
【0061】
10 保温チューブ
12 第1表皮シート
13 第2表皮シート
14 剥離材
15 ヒレ部
20 発泡シート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10