(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-27
(45)【発行日】2022-05-11
(54)【発明の名称】短期作用抗脈管形成剤の時間調整投与によるASMASE/セラミド経路の活性化を介する腫瘍の化学療法応答の強化
(51)【国際特許分類】
A61K 31/517 20060101AFI20220428BHJP
A61K 31/4439 20060101ALI20220428BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20220428BHJP
A61K 31/404 20060101ALI20220428BHJP
A61K 31/4412 20060101ALI20220428BHJP
A61K 31/506 20060101ALI20220428BHJP
A61K 31/502 20060101ALI20220428BHJP
A61K 31/4709 20060101ALI20220428BHJP
A61K 31/5025 20060101ALI20220428BHJP
A61K 31/473 20060101ALI20220428BHJP
A61K 31/405 20060101ALI20220428BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220428BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20220428BHJP
C12Q 1/34 20060101ALI20220428BHJP
A61K 49/00 20060101ALI20220428BHJP
【FI】
A61K31/517 ZMD
A61K31/4439
A61K38/16
A61K31/404
A61K31/4412
A61K31/506
A61K31/502
A61K31/4709
A61K31/5025
A61K31/473
A61K31/405
A61P35/00
A61P35/04
C12Q1/34
A61K49/00
(21)【出願番号】P 2017525522
(86)(22)【出願日】2015-11-12
(86)【国際出願番号】 US2015060486
(87)【国際公開番号】W WO2016077652
(87)【国際公開日】2016-05-19
【審査請求日】2018-11-12
(32)【優先日】2014-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500213834
【氏名又は名称】メモリアル スローン ケタリング キャンサー センター
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100137626
【氏名又は名称】田代 玄
(72)【発明者】
【氏名】コレスニック リチャード
(72)【発明者】
【氏名】ハイモヴィッツ-フリードマン アドリアーナ
(72)【発明者】
【氏名】サラ エヴィス
(72)【発明者】
【氏名】フクス ジュヴィ
【審査官】伊藤 基章
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-072589(JP,A)
【文献】Hepato-gastroenterology,2012年,Vol.59,No.116,pp.960-964
【文献】医学のあゆみ,2006年,Vol.219,No.1,pp.17-22
【文献】PLOS ONE,2010年,Vol.5,No.8,e12310
【文献】J Mol Med,2009年,Vol.87,No.11,pp.1123-1132
【文献】Cell Death and Differentiation,2000年,Vol.7,No.9,pp.761-772
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00
A61K 39/00
A61K 45/00
A61K 49/00
C12Q 1/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形腫瘍を有する対象における、化学療法に対する腫瘍応答を強化するための、人間で約120時間未満の平均血漿半減期を有する抗脈管形成剤であって、前記抗脈管形成剤は、ASMase/セラミドシグナリング経路を活性化することができる少なくとも1つの化学療法剤に対する当該固形腫瘍の感受性増加をもたらす条件下で投与され、前記抗脈管形成剤は、前記少なくとも1つの化学療法剤の1~2時間前に投与され、それによって、(i)当該抗脈管形成剤の非存在下又は(ii)当該少なくとも1つの化学療法剤に対する当該腫瘍の感受性が増加していない時点で当該化学療法剤が使用されたときに観察される作用と比較して、当該腫瘍に対する当該少なくとも1つの化学療法剤の作用を強化し、前記抗脈管形成剤は、セジラニブ、アキシチニブ、アンギネクス、スニチニブ、ソラフェニブ、パゾパニブ、バタラニブ、カボザンチニブ、
ポナチニブ、レンバチニブ、及びSU6668から成る群から選択される1つ以上の薬剤を含む、前記抗脈管形成剤。
【請求項2】
当該抗脈管形成剤が減衰するために十分な期間が経過した後で、抗脈管形成剤の投与が反復される、請求項1に記載の抗脈管形成剤。
【請求項3】
当該抗脈管形成剤の減衰が、当該抗脈管形成剤の血清レベル、後続の抗脈管形成剤投与時にASMase活性が増加するASMaseの生物学的産出の回復、後続の抗脈管形成剤投与時にセラミドが増加するセラミドの生物学的産出の回復、及び後続の抗脈管形成剤投与時の灌流変化の1つ以上の測定によって査定される、請求項2に記載の抗脈管形成剤。
【請求項4】
当該化学療法剤が、タキサン、アルキル化剤、トポイソメラーゼ阻害剤、小胞体ストレス誘発剤、抗代謝薬、有糸分裂阻害剤及びそれらの組み合わせから成る群から選択される1つ以上の薬剤を含む、請求項1に記載の抗脈管形成剤。
【請求項5】
当該化学療法剤が、クロラムブシル、シクロホスファミド、イフォスファミド、メルファラン、ストレプトゾシン、カルムスチン、ロムスチン、ブスルファン、ダカルバジン、テモゾロミド、チオテパ、アルトレタミン、5-フルオロウラシル(5-FU)、6-メルカプトプリン(6-MP)、カペシタビン、シタラビン、フロキシウリジン、フルダラビン、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、メトトレキセート、ペメトレキシド、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、SN-38、ARC、NPC、カンポテシン、トポテカン、9-ニトロカンプトテシン、9-アミノカンプトテシン、ルビフェン、ギマテカン、ジフロモテカン、BN80927、DX-8951f、MAG-CPT、アムサクリン、エトポシド、エトポシドホスフェート、テニポシド、パクリタキセル、及びドセタキセルから成る群から選択される少なくとも1つの薬剤を含む、請求項1に記載の抗脈管形成剤。
【請求項6】
当該化学療法剤が、アクカチンIII、10-デアセチルタキソール、7-キシロシル-10-デアセチルタキソール、セファロマンニン、10-デアセチル-7-エピタキソール、7-エピタキソール、10-デアセチルバクカチンIII、10-デアセチルセファロマンニン、及びそれらの混合物から成る群から選択される少なくとも1つの薬剤を含む、請求項4に記載の抗脈管形成剤。
【請求項7】
当該化学療法剤が、シクロホスファミド、クロラムブシル、メルファラン、ベンダムスチン、ウラムスチン、エストラムスチン、カルムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチン、ストレプトゾトシン、ブスルファン、マンノスルファン、及びそれらの混合物から成る群から選択される少なくとも1つの薬剤を含む、請求項4に記載の抗脈管形成剤。
【請求項8】
当該化学療法剤が、SN-38、ARC、NPC、カンプトテシン、トポテカン、9-ニトロカンプトテシン、エキサテカン、ルルトテカン、ラメラリンD9-アミノカプトテシン、ルビフェン、ギマテカン、ジフロモテカン、BN80927、DX-8951f、MAG-CPT、及びそれらの混合物から成る群から選択される少なくとも1つの薬剤を含む、請求項4に記載の抗脈管形成剤。
【請求項9】
当該化学療法剤が、アムサクリン、エトポシド、エトポシドホスフェート、テニポシド、ダウノルビシン、ミトキサントロン、エリプチシン、アウリントリカルボン酸、ドキソルビシン及びHU-331、並びにそれらの混合物から成る群から選択される少なくとも1つの薬剤を含む、請求項4に記載の抗脈管形成剤。
【請求項10】
当該腫瘍が、副腎、肛門、胆管、膀胱、骨、脳/CNS、乳房、子宮頸、結腸/直腸、子宮内膜、食道、眼、胆嚢、胃腸管、腎臓、心臓、頭及び頸、喉頭及び下咽頭、肝臓、肺臓、口腔中皮腫、鼻咽頭、神経芽腫、卵巣、膵臓、腹腔、下垂体、前立腺、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺、肉腫、皮膚、小腸、胃、軟組織肉腫、精巣、胸腺、甲状腺、副甲状腺、子宮、及び膣の腫瘍、並びにそれらの転移から成る群から選択される、請求項1に記載の抗脈管形成剤。
【請求項11】
悪性腫瘍を有する患者における、腫瘍内皮細胞におけるASMase/セラミドシグナリング経路を活性化することができる化学療法剤及び請求項1~10のいずれか1項に記載の抗脈管形成剤に対する腫瘍応答の予測又は前記化学療法剤及び抗脈管形成剤による治療のタイミング又は有効性のモニターのための方法であって、前記方法は、当該化学療法剤及び抗脈管形成剤を投与された当該患者からのサンプルのASMase発現レベル又は活性をアッセイする工程を含み、ここで、ベースラインと比較してASMaseレベル又は活性の増加が、当該化学療法剤及び抗脈管形成剤に対する腫瘍応答の指標であるか、又は当該化学療法剤及び抗脈管形成剤による治療の有効性又は適切なタイミングの確証であり、当該患者は、当該抗脈管形成剤を当該化学療法剤に対する当該腫瘍の感受性増加をもたらす条件下で投与されており、かつ、当該抗脈管形成剤を当該化学療法剤の1~2時間前に投与されている、前記方法。
【請求項12】
悪性固形腫瘍を有する患者における、ASMase/セラミドシグナリング経路を活性化することができる化学療法剤及び請求項1~10のいずれか1項に記載の抗脈管形成剤に対する腫瘍応答の予測又は前記化学療法剤及び抗脈管形成剤による治療のタイミング又は有効性のモニターのための方法であって、前記方法は、ダイナミックボクセル内非干渉性運動(IVIM)に基づく拡散強調磁気共鳴画像化(DW-MRI)により測定された、当該化学療法剤及び抗脈管形成剤を投与された当該患者の腫瘍の微小血管構造内の灌流変化に基づいて、当該化学療法剤及び抗脈管形成剤投与後の腫瘍の血管構造内の急激な灌流障害の程度を決定する工程を含み、ここでベースラインを超える灌流変化レベルの統計的に有意な増加が、当該化学療法剤及び抗脈管形成剤に対する腫瘍応答の指標であるか、又は当該化学療法剤及び抗脈管形成剤による治療の有効性若しくは適切なタイミングの確証であり、当該患者は、当該抗脈管形成剤を当該化学療法剤に対する当該腫瘍の感受性増加をもたらす条件下で投与されており、かつ、当該抗脈管形成剤を当該化学療法剤の1~2時間前に投与されている、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)本出願は、米国仮特許出願62/078,280(2014年11月11日出願:本仮特許出願の内容は参照によりその全体が本明細書に含まれる)の優先権を主張する。
(政府の補助)本研究は米国立衛生研究所によるグラントCA105125及びCA158367によって部分的に支援された。政府は本出願で権利を有しうる。
(技術分野)
本開示は、抗脈管形成剤を、本来の抗癌治療薬としてではなく患者を化学療法にいっそう感受性にする化学感作剤として用い、それによって化学療法剤の効果を高める癌治療法の分野に関する。本開示はまた、そのような併用療法の投薬量、タイミング及び有効性をモニターするためのバイオマーカーの開発に関する。
【背景技術】
【0002】
癌治療の主要なアプローチには、放射線療法、外科手術、化学療法、免疫療法及びホルモン療法が含まれる。化学療法剤は、それらの作用メカニズムに基づいて以下のいくつかの概括的なクラスに分類できる:タキサン、アルキル化剤、抗腫瘍抗生物質、トポイソメラーゼ阻害剤(例えばトポイソメラーゼII阻害剤)、小胞体ストレス誘発剤、抗代謝薬、及び有糸分裂阻害剤。
化学療法剤が多くの患者で実質的に治療的有益性を有しうる一方で、それらの有効性は多くのタイプの癌で制限される。さらにまた、化学療法耐性は依然として癌治療の主要な障害である。臨床成果の改善のために、化学療法感受性及び耐性を調節するメカニズムのより深い理解が必要である。さらにまた、化学療法の有効性を予測し投薬量及び投与レジメンを最適化するために用いることができるバイオマーカーの開発は、そのような臨床成果の改善に顕著に貢献しえよう。
脈管形成(既存の血管から新たな血管が形成されるプロセス)は、腫瘍発育及び転移の目印である。腫瘍形成中に癌細胞は急速に増殖するので、腫瘍は既存の血管系の支持能力を超えて拡大し、低酸素、栄養物枯渇及び代謝廃棄物の蓄積を生じる。腫瘍細胞は、これらの状態に脈管形成促進因子(例えば血管内皮増殖因子(VEGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)及び血小板由来内皮増殖因子(PDGF))をアップレギュレートすることによって順次適応していく。これらの因子は内皮細胞の活性化を引き起こし、新たな血管の成長を促進することができる。腫瘍は増殖のために血管供給を必要とするので、抗脈管形成薬による腫瘍増殖の阻害は長きにわたって治療のための研究及びアプローチの重要な標的とみなされ、いくつかの抗脈管形成剤(AAA)の開発に拍車がかかった。
【0003】
最初のFDA承認AAA(ベバシズマブ)は、循環VEGF Aを標的とするモノクローナル抗体であり、多数の癌タイプ(例えば転移性結腸直腸癌、非小細胞肺癌、腎癌及び再発性進行性神経膠芽腫を含む)の(単一療法としての)治療のために、又は前記のいくつかとともに別の癌の化学療法薬との併用のために承認された。
目覚ましい初期の期待にもかかわらず、抗脈管形成剤の通常的な化学療法薬への付加は限定的な成功しかもたらさなかった。実際、ベバシズマブは最初乳癌のために承認されたが、当該承認は有効性を欠くために最終的に撤回された。したがって、抗脈管形成性応答の詳細なメカニズム及び当該応答が生じなかった理由に関する更なる研究が、AAAを治療様式としてより効果的に役立たせるために必要である。加えて、AAAの投与及び有効性のモニターに適切であるとともに、併用療法の化学療法部分の改善された投薬量及び投与レジメンの決定に適切なバイオマーカーの開発及び立証が要請される。
【0004】
Raoら(Rao, S.S. et al, Radiotherapy and Oncology 111 (2014) 88-93(参照により本明細書に含まれる)2014年4月29日にオンラインで入手可)は、単回照射放射線療法(SDRT)のわずか前に投与された短期作用AAA、アキシチニブは急激な腫瘍内皮細胞アポトーシスを増加させ、SDRT投与単独と比較して腫瘍応答を高めることを報告している。特にRaoは、放射線感作は当該2つの様式の相対的な投与タイミングに左右され、最適な時間はマウスではアキシチニブがSDRTに1時間先行し、この特定の抗脈管形成剤がSDRTの2時間以上前に投与されるか又はSDRTの後の時点で投与されるときは顕著な累積作用を生じないことを報告している。前記著者らは、以前に報告された抗VEGF及び抗VEGFR2抗体を用いた酸スフィンゴミエリナーゼ駆動放射線感作の抗脈管形成抑制解除とSDRTとアキシチニブとの併用によって観察される放射線感作との間の一致を引き出した。
【0005】
しかしながら、本開示に記載する研究の前に前述の論文は化学療法については全く暗示しなかった。なぜならば、多様な化学療法剤が上記に概略したように非常に異なる作用メカニズムを有するからである。さらにまた、内皮細胞のASMase/セラミド経路によって相当な部分が媒介されることが知られているSDRT応答とは異なり、セラミド媒介内皮細胞アポトーシスは化学療法に関してこれまで報告されたことはなく又示唆もされなかった。(虚血再灌流障害に至る急激なセラミド媒介血管収縮もまたRT又は化学療法に関して以前に提唱されたことはない)。
デートリッヒら(Dietrich, J et al, Expert Opin Investig Drugs. Oct 2009; 18(10): 1549-1557 doi: 10.1517/13543780903183528)は、セジラニブ(短期作用抗脈管形成剤)の神経膠芽腫の治療における使用を概論している。前記著者らは、セジラニブの使用を神経膠芽腫の治療に概ね有望と査定しているが、抗脈管形成療法のためのバイオマーカーが存在しないことに気付いている。さらにまた、前記著者らは、抗脈管形成剤による治療に続く一過性の血管正常化現象に気付き、化学療法と照射が最も有効でありうる特異的な治療ウインドウ(血管正常化に対応する)が存在する可能性を提唱している。しかしながら、血管正常化は比較的ゆっくりと発達する事象であり(明らかになるには数日を要する)、したがって前記論文は、AAA投与に非常に近接して生じる第二の様式の治療ウインドウを指示してはいない。最後に、著者らは、(一過性の正常化段階の後で)病理学的な血管新生が再確立される理由はほとんど理解されていないが、それらが解明できたならば、投与された抗脈管形成剤の標的ではないまた別の脈管形成促進因子のアップレギュレーションによって急激に低下した抗脈管形成因子による治療の失敗の説明が提供されるかもしれないと論評している。
前述で例示したように、抗脈管形成薬はこれまで不首尾であり、抗脈管形成薬の臨床成果への貢献を高める方法を見出すことは喫緊の要請である。さらにまた、一般的癌療法でも臨床成果の改善に広範囲の要求が存在する。
【発明の概要】
【0006】
以下の工程を含む、化学療法に対する腫瘍応答を強化する方法が開示される:(a)固形腫瘍に罹患する対象に短期作用抗脈管形成剤(AAA)を投与し、それによって少なくとも1つの化学療法剤に対する前記腫瘍のある時間間隔での感受性増加を引き起こす工程;(b)ASMase/セラミドシグナリング経路を活性化する特性を有する前記少なくとも1つの化学療法剤を前記間隔内の時点で前記対象に投与し、それによって当該少なくとも1つの化学療法剤の前記腫瘍に対する作用を強化する工程。強化は、(i)抗脈管形成剤の非存在下、又は(ii)感受性が増加する当該間隔(化学感作間隔)外の時点で用いられる化学療法剤と比較することによって査定できる。
【0007】
いくつかの実施態様では、前述の間隔は、複数の対象のある集団について又は特定のある対象について予め決定されている。いくつかの実施態様では、間隔は、IVIM DW-MRIを用いることによって、又は直接的若しくは間接的ASMase活性測定(例えばその代用物質の測定による)によって決定されてあり、AAA投与後の急激な増加の間隔が決定される(ここで急激なASMase活性増加の間隔は化学療法に対する対象の感受性増加の間隔である)。
【0008】
いくつかの実施態様では、抗脈管形成剤の量は、前記間隔の間に対象でASMase活性の実質的増加を引き起こすために有効である。いくつかの実施態様では、ASMase活性は、ダイナミックボクセル内非干渉性運動(IVIM)に基づく拡散強調磁気共鳴画像化(DW-MRI)によって査定される。いくつかの実施態様では、ASMase活性は、ASMase活性を測定するか、又は代用物質(例えば1つ以上のアポトーシス促進セラミド)を測定することによってASMase活性を推定することにより査定される。適切なアポトーシス促進セラミドにはC16:0セラミド及びC18:0セラミドが含まれる。
【0009】
いくつかの実施態様では、投与される抗脈管形成剤の量は最大のASMase活性増加を引き起こす量であるが、ただし当該量がAAAの最大耐性用量を超えないことを条件とする。
いくつかの実施態様では、AAA及び前記少なくとも1つの化学療法剤の第一の投与に続いて、対象はある時間間隔の経過後にAAAの第二の用量が投与され、前記時間間隔は、第一の投与に由来するAAAが、ASMaseへの前記対象の応答が第二のAAA投与に対してリセットされるために(ASMase活性の再確立)十分な程度に減衰するために少なくとも十分である。AAAの第二の投与の後に、ある時間間隔内で前記少なくとも1つの化学療法剤の第二の投与が続き、前記間隔は、AAAの第二の投与により生じた前記腫瘍の感受性増加の間隔である。AAA及び化学療法剤のいずれの後続投与も前記第二の投与方法にしたがうであろう。
【0010】
いくつかの実施態様では、腫瘍は以下から成る群から選択される:副腎(例えば副腎皮質癌)、肛門、胆管、膀胱、骨(例えばユーイング肉腫、骨肉腫、悪性線維性組織細胞腫)、脳/CNS(例えば星状細胞腫、神経膠腫、神経膠芽腫)、小児腫瘍(例えば非定型的類奇形腫/類横紋筋腫瘍、胚細胞腫瘍、胎生期腫瘍、上衣腫)、乳房(乳管内癌腫を含むがただし前記に限定されない)、子宮頸、結腸/直腸、子宮内膜、食道、眼(例えばメラノーマ、網膜芽細胞腫)、胆嚢、胃腸管、腎(例えば腎細胞、ウィルムス腫瘍)、心臓、頭及び頸、喉頭及び下咽頭、肝、肺、口腔(例えば口唇、口、唾液腺)中皮腫、鼻咽頭、神経芽腫、卵巣、膵、腹腔、下垂体、前立腺、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺、肉腫(例えばカポジ肉腫)、皮膚(例えば扁平上皮細胞癌、基底細胞癌、メラノーマ)、小腸、胃、軟組織肉腫(例えば線維肉腫)、横紋筋肉腫、精巣、胸腺、甲状腺、副甲状腺、子宮(内膜、卵管を含むがただし前記に限定されない)及び膣の腫瘍、並びに前記の転移。いくつかの実施態様では、腫瘍は、乳房、肺、胃腸管、皮膚及び軟組織の腫瘍から成る群から選択される。いくつかのさらに別の実施態様では、腫瘍は乳房、肺、胃腸管及び前立腺の腫瘍から成る群から選択される。
【0011】
いくつかの実施態様では、短期作用AAAは、セジラニブ、アキシチニブ、アンギネクス、スニチニブ、ソラフェニブ、パゾパニブ、バタラニブ、カボザンチニブ、ポナチニブ、レンバチニブ、SU6668から成る群から選択される少なくとも1つのAAAである。セツキシマブは短期作用AAAとはみなされない。
いくつかの実施態様では、化学療法剤の適切なクラスには、タキサン、DNAアルキル化剤、トポイソメラーゼ阻害剤、小胞体ストレス誘発剤、抗腫瘍抗生物質及び抗代謝薬が含まれるが、ただしこれらに限定されない。
【0012】
いくつかの実施態様では、化学療法剤は以下から成る群から選択される:クロラムブシル、シクロホスファミド、イフォスファミド、メルファラン、ストレプトゾシン、カルムスチン、ロムスチン、ベンダムスチン、ウラムスチン、エストラムスチン、カルムスチン、ニムスチン、ラニムスチン、マンノスルファン、ブスルファン、ダカルバジン、テモゾロミド、チオテパ、アルトレタミン、5-フルオロウラシル(5-FU)、6-メルカプトプリン(6-MP)、カペシタビン、シタラビン、フロキシウリジン、フルダラビン、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、メトトレキセート、ペメトレキシド、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、SN-38、ARC、NPC、カンポテシン、トポテカン、9-ニトロカンプトテシン、9-アミノカンプトテシン、ルビフェン、ギマテカン、ジフロモテカン、BN80927、DX-8951f、MAG-CPT、アムサクリン、エトポシド、エトポシドホスフェート、テニポシド、ドキソルビシン、パクリタキセル、ドセタキセル、ゲムシタビン、アクカチンIII、10-デアセチルタキソール、7-キシロシル-10-デアセチルタキソール、セファロマンニン、10-デアセチル-7-エピタキソール、7-エピタキソール、10-デアセチルバクカチンIII、10-デアセチルセファロマンニン、及び前記の混合物。
いくつかの実施態様では、化学療法剤は、ゲムシタビン、パクリタキセル、ドセタキセル及びエトポシド、並びに前記の混合物から成る群から選択される。
【0013】
いくつかの実施態様では、化学療法剤はタキサンである。
いくつかの実施態様では、化学療法剤は、アクカチンIII、10-デアセチルタキソール、7-キシロシル-10-デアセチルタキソール、セファロマンニン、10-デアセチル-7-エピタキソール、7-エピタキソール、10-デアセチルバクカチンIII、10-デアセチルセファロマンニン、及び前記の混合物から成る群から選択される。
いくつかの実施態様では、化学療法剤はDNAアルキル化剤である。さらに別の実施態様では、化学療法剤はナイトロジェンマスタード、ニトロソウレア及びアルキルスルホネートから成る群から選択される。
いくつかの実施態様では、化学療法剤は、シクロホスファミド、クロラムブシル、メルファラン、ベンダムスチン、ウラムスチン、エストラムスチン、カルムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチン、ストレプトゾトシン、ブスルファン、マンノスルファン、及び前記の混合物から成る群から選択される。
【0014】
いくつかの実施態様では、化学療法剤はトポイソメラーゼI阻害剤である。さらに別の実施態様では、化学療法剤は、SN-38、ARC、NPC、カンプトテシン、トポテカン、9-ニトロカンプトテシン、エキサテカン、ルルトテカン、ラメラリンD9-アミノカプトテシン、ルビフェン、ギマテカン、ジフロモテカン、BN80927、DX-8951f、MAG-CPT、及び前記の混合物から成る群から選択される。
いくつかの実施態様では、化学療法剤はトポイソメラーゼII阻害剤である。さらに別の実施態様では、化学療法剤は、アムサクリン、エトポシド、エトポシドホスフェート、テニポシド、ダウノルビシン、ミトキサントロン、アムサクリン、エリプチシン、アウリントリカルボン酸、ドキソルビシン及びHU-331、並びに前記の組み合わせから成る群から選択される。
【0015】
いくつかの実施態様では、化学療法剤は抗代謝薬である。さらに別の実施態様では、化学療法剤は、5-フルオロウラシル(5-FU)、6-メルカプトプリン(6-MP)、カペシタビン、シタラビン、フロキシウリジン、フルダラビン、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、メトトレキセート、ペメトレキシド、及び前記の混合物から成る群から選択される。
いくつかの実施態様では、腫瘍は以下から成る群から選択される:副腎、肛門、胆管、膀胱、骨、脳/CNS、乳房、子宮頸、結腸/直腸、子宮内膜、食道、眼、胆嚢、胃腸管、腎、心臓、頭及び頸、喉頭及び下咽頭、肝、肺、口腔中皮腫、鼻咽頭、神経芽腫、卵巣、膵、腹腔、下垂体、前立腺、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺、肉腫、皮膚、小腸、胃、軟組織肉腫、横紋筋肉腫、精巣、胸腺、甲状腺、副甲状腺、子宮及び膣の腫瘍、並びに前記の転移。さらに別の実施態様では、腫瘍は、乳房、肺、胃腸管及び前立腺の腫瘍から成る群から選択される。
【0016】
いくつかの実施態様では、AAAは、約120時間未満、約110時間未満、約100時間未満、約90時間未満、約80時間未満、約70時間未満、約60時間未満、約50時間未満、約40時間未満、約35時間未満、約30時間未満、約25時間未満、約20時間未満、約18時間未満、約15時間未満、約12時間未満、約10時間未満、又は約8時間未満の半減期を有する。いくつかの実施態様では、AAAは、当該AAAの半減期とほぼ同じである減衰寿命を有する。
いくつかの実施態様では、AAAは、当該AAAの最大耐性用量、当該AAAの耐性用量の約90%、当該AAAの耐性用量の約80%、当該AAAの耐性用量の約70%、当該AAAの耐性用量の約60%、当該AAAの耐性用量の約50%、当該AAAの耐性用量の約40%、当該AAAの耐性用量の約30%、当該AAAの耐性用量の約20%、又は当該AAAの耐性用量の約10%で投与される。
いくつかの実施態様では、AAAは、1日の投与ために承認された用量、1日の投与のために承認された用量の約2倍、1日の投与のために承認された用量の約3倍、1日の投与のために承認された用量の約4倍、1日の投与のために承認された用量の約5倍、1日の投与のために承認された用量の約6倍、1日の投与のために承認された用量の約7倍、1日の投与のために承認された用量の約8倍、1日の投与のために承認された用量の約9倍、又は1日の投与のために承認された用量の約10倍で投与される。
【0017】
いくつかの実施態様では、化学療法剤は、AAAの投与後、約0.5から5時間、約0.5から4時間、約0.5から3時間、約0.5から2時間、約0.5から1.5時間、約0.5から1時間、1から5時間、約1から4時間、約1から3時間、約1から2時間、約1から1.5時間、1.5から5時間、約1.5から4時間、約1.5から3時間、約1.5から2時間、2から5時間、約2から4時間、約2から3時間、約3から5時間、約3から4時間、又は約4から5時間で投与される。
さらに別の実施態様では、化学療法剤は、AAAの投与後約2時間を超えないで若しくは約1.5時間を超えないで若しくは約1時間を超えないで投与されるか、又は化学療法剤の投与はAAAの投与後30分以内に開始される。
【0018】
さらにまた、化学療法剤に対する患者(悪性固形腫瘍を罹患する)の腫瘍応答を予測するか、又は治療の有効性若しくはタイミングをモニターする方法が提供され、前記方法は、拡散強調磁気共鳴画像化(DW-MRI)を、より具体的な実施態様ではダイナミックボクセル内非干渉性運動(IVIM)に基づく拡散強調磁気共鳴画像化(DW-MRI)を化学療法剤の投与後まもなく用いて、化学療法剤投与後の腫瘍の血管構造内の急激な灌流変化の程度を決定する工程を含み、ここでベースラインを超える変化量の増加は、前記化学療法剤に対する腫瘍の応答を示すか、又は治療のタイミング及び/又は有効性が適切であることを示す。
【0019】
本開示の他の特徴は以下を目的とする:
a.以下の工程を含む、化学療法剤に対する悪性腫瘍罹患患者の腫瘍応答の予測又は治療のタイミング及び/又は有効性のモニターのための方法:
患者に化学療法剤を投与した後で当該患者のASMaseレベル又は活性を測定する工程(ここで、ベースラインと比較して前記レベル又は活性の増加は、当該化学療法剤に対する腫瘍応答を示すか、又は治療の有効性及び/又は適切なタイミングの確証である(逆に言えば、そのような低下がなければそのような予測は存在しない));
b.以下の工程を含む、悪性固形腫瘍に罹患する患者の化学療法剤に対する腫瘍応答を予測するか又は治療のタイミングをモニターするための方法:
拡散強調磁気共鳴画像化(DW-MRI)及び好ましくはダイナミックボクセル内非干渉性運動(IVIM)に基づくDW-MRIを用いて化学療法剤投与後の灌流変化を測定し、化学療法剤投与後の腫瘍血管構造内の急激な灌流障害の程度を決定する工程(ここでベースラインを超える前記変化のレベルの増加は、前記化学療法剤に対する腫瘍応答又は治療の有効性若しくは適切なタイミングを示す(逆に言えば、そのような灌流変化がなければそのような指標は存在しない))。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1A-B】
図1A及び1Bはそれぞれ、化学療法剤パクリタキセル(100nM)の内皮細胞処理後の時間に対するBAECのASMase活性(nmol/mg/hr)及びセラミドレベル(pmol/10
6細胞)の図表である。
【
図1C】
図1Cは一連の顕微鏡写真であり、30μg/mLのナイスタチン(30分の前処理)の非存在下(上パネル)又は存在下(下パネル)でパクリタキセル(100nM)に暴露したBAEC単層の経時的なCRMの形成を示す。BAECは、CRMの形質膜への局在を明らかにするために抗セラミド抗体及びDAPI(核を染色し核は小球体のように見える)で共染色した(抗セラミド抗体は細胞核間の灰色領域によって示されるように細胞膜と結合し(
図1Cの上段右の3つのパネルでひときわ目立つ)、一方で細胞核はほの暗く別個の小球のように見える)。
【
図1D-F】
図1D及び1Eはそれぞれ、化学療法剤エトポシド(50μM)のウシ内皮細胞処理後の時間に対するBAECのASMase活性(nmol/mg/hr)及びセラミドレベル(pmol/10
6細胞)の図表である。
図1Fは、50μMのエトポシドで処理したHCAECの経時的(分)なセラミドレベル(pmol/10
6細胞)を示す棒グラフである。
【
図2A-B】
図2A及び2Bは、パクリタキセル(100nM)(
図2A)又はエトポシド(50μM)(
図2B)で処理したBAECの時間に対するアポトーシスの発生(%アポトーシス)の図表である。
【
図2C】
図2Cは、BAECでシスプラチンの用量を増加させたときのアポトーシスの発生(%アポトーシス)を示す棒グラフである。
【
図3】
図3は、エトポシド(50μM)の処理前にbFGF(2ng/mL)、VEGF(2ng/mL)又はナイスタチン(30μg/mL)と前インキュベーションを実施したBAECのアポトーシスの発生(%アポトーシス)を示す棒グラフである。%アポトーシスは、エトポシド処理8時間後に評価して決定した。
【
図4A-B】
図4Aは、コントロール(左パネル)又はパクリタキセルの単回投与(25mg/kg腹腔内、右パネル)暴露後4時間の担癌マウスから入手し、内皮表面マーカーMECA-32及びTUNELのために染色した典型的な5μmの組織学的腫瘍切片のパネルである。
図4Bは、パクリタキセルの単回投与後の内皮細胞アポトーシスの定量を示す棒グラフである。
【
図4C-D】
図4Cは、無処理コントロール(左パネル)から又はゲムシタビンの単回投与(240mg/kg腹腔内、右パネル)暴露後4時間で入手し、内皮表面マーカーMECA-32及びTUNELのために染色した組織学的MCA/129線維肉腫切片のパネルである。
図4Dは、
図4Cのように処理してから4時間後のMCA/129腫瘍の内皮細胞アポトーシスの定量である。
【
図5A-B】
図5A及び5Bは腫瘍体積対腫瘍移植後日数の図表である。
図5Aは、HCT116腫瘍(50-70mm
3)を有し、さらにパクリタキセル(15/20/25mg/kg腹腔内)で2週間毎に3回処理されたSCID
asmase+/+又はSCID
asmase-/-マウスの経時的腫瘍体積を示す。矢印はパクリタキセル処理日を示す。データ(平均±SD)は各グループにつき5匹のマウスの照合である。
図5Bは、HCT116腫瘍(50-70mm
3)を有し、さらに抗セラミド抗体又はアイソタイプコントロール抗体の存在下にエトポシド(35/35/50mg/kg腹腔内)で2週間毎に処理されたSCID
asmase+/+マウスの経時的腫瘍体積を示す。矢印はエトポシド処理日を示す。データ(平均±SD)は各グループにつき5匹のマウスの照合である。
【
図6A-B】
図6A、6Bは、SCID
asmase+/+マウスのHCT116腫瘍体積(mm
3)対腫瘍移植後日数の図表である。
図6Aは、パクリタキセル処理1時間前にDC101(各マウスに1.6mg、静脈内)で処理したSCID
asmase+/+マウスのHCT116腫瘍の抗脈管形成剤化学感作を示す。
図6Bは、HCT116腫瘍の応答におけるパクリタキセル対DC101のタイミングの効果を示す。DC101(800μg/25gmマウス、静脈内)は、パクリタキセル処理前に提供された。
【
図6C-D】
図6Cは、SCID
asmase+/+マウスのHCT116腫瘍体積(mm
3)対腫瘍移植後日数の図表である。
図6Cは、HCT116腫瘍の応答におけるパクリタキセル対DC101のタイミングの効果を示す。DC101(800μg/25gmマウス、静脈内)は、パクリタキセル処理前又は処理後に提供された。
図6Dは、sv129/Bl6
asmase+/+マウスに移植したMCA/129腫瘍に対しゲムシタビン(240mg/kg、腹腔内)と併用してDC101(1.6mg/25gマウス、腹腔内)を投与した後の内皮細胞のアポトーシスのパーセントを示す棒グラフである。
【
図6E-F】
図6Eは、MCA/129腫瘍の応答におけるゲムシタビン対DC101のタイミングの効果を示す。実験は、
図6Dのように、ゲムシタビン(240mg/kg、腹腔内)の各投与の1時間前又は直前のタイミングで実施された。データ(平均±SEM)は各グループにつき5匹のマウスの照合である。
図6Fは、種々の用量のシスプラチンで処理したマウスのHCT116腫瘍体積対腫瘍移植後日数の図表である。
【
図7A-B】
図7Aは、MSKCCの前向き第二相試験でベバシズマブ、ゲムシタビン、及びドセタキセルで処置された転移性肉腫を有する患者の人工統計学的属性を含む。
図7Bは、1時間間隔のベバシズマブコホートにおける患者#8のベースライン(左)、3カ月(中央)及び6カ月(右)の腹壁転移の典型的なCT画像を示す。
【
図7C-D】
図7C及び7Dは、ゲムシタビン直前(
図7C)又は1時間前(
図7D)にベバシズマブで処置された各患者における容積測定の変化を基準にした最良の腫瘍応答を示すウォーターフォールプロットである。
【
図7E-F】
図7E及び7Fは、
図7C及び7Dのようにベバシズマブ及びゲムシタビンを用い2サイクル処置した後の同じ患者における
図7C及び7Dと同じタイプの図表である。
【
図8】
図8は、照射後24時間で27GyIRにより処理したMCA129線維肉腫腫瘍の同種移植における血清セラミド(C16:0及びC18:0)レベルの倍差を示すグラフである。
【
図9A-B】
図9は、患者のSDRT誘発微細血管変化を示す図表である。
図9Aは、微細循環における移動血液の割合(f)及び血液速度(D
*)を表すIVIM DW-MRIによって得られた2つの値を示す。双指数関数減衰拡散曲線からf及びD
*を計算する模式図が示されている。
図9Bは、各患者コホートの全ての患者のベースライン、プレ-SDRT D
*及びf値を示すドットプロットである。各点は、一人の患者の照射前の値の分数としてf及びD
*値として表された値を有する当該一人の患者を表す。16までのD
*及びfの反復測定を用いて、プレ-及びポスト-SDRT値を決定した。9Gy及び24Gyコホートの平均及び標準偏差が示される。
【
図9C-E】
図9は、患者のSDRT誘発微細血管変化を示す図表である。
図9B及び9Dは、各患者コホートの全ての患者のベースライン、プレ-SDRT D
*及びf値を示すドットプロットである。
図9C及び9Eは、RT後のf及びD
*の倍差を示すドットプロットである。各点は、一人の患者の照射前の値の分数としてf及びD
*値として表された値を有する当該一人の患者を表す。16までのD
*及びfの反復測定を用いて、プレ-及びポスト-SDRT値を決定した。9Gy及び24Gyコホートの平均及び標準偏差が示される。
図D及びFではウエルチの修正とともに両側独立t検定を用いた。
【
図10A-B】
図10は、SDRTを与えられた患者で血清ASMase活性は用量依存態様で変化することを示す。
図10Aは、9又は24Gy後24時間のASMase活性の標準化倍差を示すグラフである。各患者について3つのデータ点が示される:0(RT前)、RT後1時間及び2時間。誤差バーは、各サンプルのASMase測定の3つのテクニカルレプリケートの標準誤差を表す。
図10Bは、2つの患者コホートにおける血清ASMase活性の平均倍差を示す棒グラフである。Bでは両側独立t検定。
*P<0.05。
【
図10C】
図10は、SDRTを与えられた患者で血清ASMase活性は用量依存態様で変化することを示す。
図10Cは、各コホートの患者の年齢、性別及び腫瘍タイプを示す。
【
図11A】
図11Aは、長期作用抗脈管形成薬(例えばDC101)は後続の抗脈管形成剤のASMase媒介化学療法化学感作に対し腫瘍を抵抗性にすることを示す、MCA/129線維肉腫腫瘍体積対腫瘍移植後日数の図表である。データ(平均±SEM)は5マウス/グループの照合である。
【
図11B】
図11BはMCA/129線維肉腫腫瘍体積対腫瘍移植後日数の一連の図表であり、ここで、データは
図11Aで照合した個々の腫瘍応答プロフィールを示す。
【
図12A】
図12Aは、腫瘍プロフィール(腫瘍移植後の経日的腫瘍体積)を示す一連のグラフである。
【
図12B-D】完全応答(IR後30日で触診可能な腫瘍なしと定義される)は
図12Bにまとめられている。
図12Cは、照射線量とIR後24時間のASMase活性の変化との間の関係を示す棒グラフである。
図12Dは、IR後24時間のASMase活性の変化と腫瘍制御との間の相関性を示す。マウスの数は12B及び12Cでは括弧内に表示されている。
*P<0.05、
**P<0.01、
***P<0.001。12Cでは両側独立t検定を用いた。12Dではピアソンの相関係数を用いた。
【
図13A-B】
図13は、ASMase活性の変化はSDRTに対する腫瘍応答を予測することを示す。
図13Aは、誘発された活性によってランク付けしたIR後24時間のASMase活性の変化を示す(IRは各マウス(総数19匹)に27Gy)。3回の血清測定の平均(±SE)が示されている。
図13Bは、誘発ASMase活性と最終的腫瘍応答との間の関係を示す棒グラフである。
図13Bでは両側独立t検定を用いた。
*P<0.05、
**P<0.01、
***P<0.001。
【
図14A-B】
図14Aは、ゲムシタビンは線維肉腫腫瘍の血管内灌流を急速に減少させること、及びゲムシタビンは用量依存態様でASMaseを活性化することを示す。
図14Aは線維肉腫腫瘍における経日的血管分布(Fp)を示すグラフである。
図14Bは線維肉腫腫瘍の経時的拡散を示すグラフである。
【
図14C-D】
図14Cは、培養ウシ大動脈内皮細胞を100nMゲムシタビンで処理した後の経時的なASMase活性を示すグラフである。
図14Dは、ゲムシタビンの用量を増加させながらウシ大動脈内皮細胞を処理した後のASMase活性を示すグラフである(処理後5分で測定を実施)。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本開示は以下の発見に基づく:
ASMase/セラミド経路は、化学療法剤の別個のクラス(例えばタキサン、トポイソメラーゼ阻害剤、及びヌクレオシドアナローグ代謝阻害剤)に属する化学療法剤によって内皮細胞内で活性化される。パクリタキセル、エトポシド及びゲムシタビンは、培養ウシ大動脈内皮細胞(BAEC)及びヒト冠状動脈内皮細胞(HCAEC)でASMaseシグナリング及びセラミド生成を活性化することが示された。ASMase/セラミド経路の活性化は、セラミド富裕ミクロドメイン(CRM)の形成をもたらす。シスプラチンはBAECでアポトーシスを引き出すことはできないが、ヒト細胞ではアポトーシスを誘発し、ASMaseを増加させることが知られている(Lacour et al. Cancer Res. 15; 64(10):3593-8 2004;Maurmann et al. Apoptosis, 20:7, 960-974 2015)。これに拠れば、シスプラチン療法もまた本開示の化学感作を利用できると期待される。
【0022】
1.パクリタキセル、エトポシド及びゲムシタビンはまた、内皮のアポトーシスによって明らかなようにin vitro及びin vivoの両方で内皮の機能不全の引き金となる。シスプラチンもまたヒト内皮細胞でアポトーシスを誘発する。
2.内皮のアポトーシスは、ASMase活性及びセラミド生成を妨げる脈管形成促進因子(例えばVEGF、bFGF及びナイスタチン)で細胞をプレ-インキュベートすることによって阻害される。
【0023】
3.ASMaseシグナリングは、in vivoでの化学療法誘発アポトーシス応答のために必要である。さらにまた、ASMase/セラミド経路は、ASMase/セラミドシグナリングを活性化させる能力を有する化学療法剤によって引き起こされる腫瘍増殖遅延を媒介する。
4.野生型asmase
+/+マウスに移植されたヒトHCT-116結腸癌及びMCA/129ネズミ肉腫異種移植片は、化学療法剤のパクリタキセル又はエトポシドによる処理後に腫瘍細胞アポトーシスではなく内皮アポトーシスを経る。加えて、化学療法による処置は、野生型asmase
+/+マウスで顕著な腫瘍増殖遅延をもたらす。逆のことが、異種移植片がasmase
-/-マウスに移植されるときに観察される。ASMaseシグナリング欠損マウスで発生する腫瘍は内皮細胞アポトーシスの欠如を示し、さらにパクリタキセル又はエトポシドで処理したとき顕著な腫瘍応答を示さない。最後に、化学療法剤の投与1時間前の抗セラミドIgMの静脈内注射は、これらのモデルで腫瘍増殖に対する化学療法の効果を喪失又は減弱させる。総合すれば、これらの結果は、ASMaseシグナリング及びセラミド形成は化学療法誘発内皮細胞アポトーシス及び最適な腫瘍応答ために必要であることを示している。
【0024】
5.抗VEGFR2抗体(VEGFによって阻害されたASMaseの抑制を解除する)は、HCT116腫瘍及びMCA/129線維肉腫でパクリタキセル又はゲムシタビンと組み合わせて用いられるとき相乗的腫瘍応答を示すが、ただし化学療法処理の1-2時間前に投与されたときだけであり、化学療法処理の直前に投与されたときには相乗的応答はない。しかしながら、HCT-116及びMCA/129異種移植片がasmase
-/-マウス宿主(損傷耐性微細血管構造を腫瘍に提供する)に移植されるときには、抗脈管形成剤と化学療法との相乗効果は完全に失われる。総合すれば、これらの観察は、これまで報告されなかった化学療法によって誘発される腫瘍微細血管応答メカニズムが存在することを示す(前記メカニズムは、腫瘍細胞への化学療法の強い影響と相乗的に働き、最適な腫瘍応答のために必要である)。
6.抗脈管形成剤化学感作は、抗脈管形成剤デリバリーの厳密なタイミング及びASMase/セラミド経路の活性を条件とする。化学感作は、抗脈管形成剤がAAAの投与に続いて急激に増加するASMase活性のウインドウ(化学感作ウインドウ)内でデリバーされる場合にのみ生じる。本明細書に記載する実験系では、このウインドウは化学療法に先行する1-2時間の持続時間を有することが観察されたが、化学療法に先行する前記以外の時間又は化学療法後には観察されなかった。したがって、抗脈管形成剤の投与後の化学感作間隔又はウインドウ(その間に化学療法による処置が生じなければならない)が存在する。
【0025】
7.AAAと化学療法とのシンクロナイズされたタイミング(ここではAAAは、化学療法が化学感作ウインドウ内で投与されるように(又は少なくともその投与が開始されるように)化学療法の投与前にデリバーされる)は、化学療法に対する腫瘍応答を顕著に改善する。総合すれば、本明細書に提示する試験の臨床成果は、ASMaseシグナリングは治療効果を保証できるという原理の実証試験を表す。これらの結果はまた、ASMaseシグナリングは、腫瘍応答の予測のために、さらにAAAのタイミング及び投薬量、化学療法薬の(AAA投与に対する)最適タイミング及び化学療法薬の投薬量の調整のための任意の事象でバイオマーカーとして確立できるということを支持する。
8.長期作用抗脈管形成剤(薬)は、その後に続く抗脈管形成剤のASMase媒介腫瘍化学感作に対し腫瘍を抵抗性にし、この場合、対象に存在する長期作用抗脈管形成剤の量が増加するにつれて阻害の強度は強くなる。したがって、これらの実験は、短期作用抗脈管形成薬が、長期作用抗脈管形成薬(例えばベバシズマブ又はDC101)と比較してASMase/セラミド経路系化学感作のために好ましいという提案を支持する。
【0026】
9.フェースIIヒト臨床試験データは、転移性肉腫のために処置された患者で化学療法剤ゲムシタビン(3週間サイクルの0日目)の投与1時間前のベバシズマブデリバリーとその後に続く8日目のドセタキセルの投与は腫瘍応答を顕著に改善することを示している。
10.単回照射放射線療法(SDRT)は、asmase
+/+マウスに移植されたMCA/129ネズミ肉腫及びB16メラノーマで20Gy SDRTに続いて微小血管の血管収縮を誘発する。反対に、asmaseがゼロの動物に移植されたMCA/129ネズミ肉腫及びB16メラノーマは、厳密に同じ処置の後で灌流障害を示さない。これらの発見は、ASMase活性と血管機能不全との間の因果関係を提唱する。
11.骨転移を有する15人の患者を含む臨床試験は、SDRTは、24Gy SDRTの後で灌流の減少又は虚血再灌流障害(微小血管の血管収縮に起因する)を誘発することを示した。これらの結果は、灌流の変化を有効な治療のバイオマーカーとして用いることができることを提唱する。さらにまた、バイオマーカーとしてそのような灌流変化の進展を用いてSDRTの段階的に縮小した線量を用いることができる。
【0027】
12.ASMase活性は、24Gyを用いて処置された患者で微小血管の血管収縮のために灌流変化と同じ傾向をたどる。18人の患者の血清中ASMaseレベルは24Gy SDRT後に増加し、臨床的成功の血清バイオマーカーとして機能しうることを示唆する。これらの結果は前臨床の動物モデルでの所見と一致する(前記所見は灌流変化がASMase活性に依存することを明示した)。照射ではなく化学療法が第二の治療様式として用いられる場合、灌流変化として明白な同様な微小血管の血管収縮(おそらく幾分より緩徐なペースで生じる)が観察されるであろうということが期待される。
13.ASMase血清活性の増加の強さは、MCA/129線維肉腫のSDRT後の完全応答における用量依存性確率と直接的相関関係を示す。これらの発見は、ASMaseレベル及び/又は活性はヒトの癌の操作で血清バイオマーカーとして機能しうることを示す。
【0028】
14.微小血管の血管収縮は、線維肉腫の動物モデルでASMaseシグナリングを活性化させる化学療法剤の投与後すぐに生じ、さらにゲムシタビンは用量依存態様でASMaseを活性化させる。他のASMase活性化化学療法剤も定量的に前記性能を示すであろうということは期待される。
15.イオン化照射はASMaseの形質膜への移行をもたらし、セラミド及びセラミド富裕プラットフォームの生成をもたらす。VEGFはVEGFR2受容体シグナリングを介してASMase活性化を阻害し、一方、抗脈管形成剤は照射前1-2時間で投与されるならばASMase活性化抑制を解除することができる。ASMaseの血液中への分泌は上流のASMase活性化のバイオマーカーとして役立ちうる。セラミド富裕プラットフォームは下流の内皮細胞機能不全(腫瘍の微小血管灌流の減少を含む)をもたらし、前記はIVIM DW-MRI及びおそらく他の画像化様式でも観察することができる。
16.本明細書で示すように、SDRT線量の増加は観察される血清ASMase活性の増加と正比例し、前記は順をおってSDRT誘発完全腫瘍応答パーセントと直接的相関性を示した(
図12)。同様に、ゲムシタビン用量の増加はASMase活性を比例的に増加させた(
図14D)。これらの観察は、ASMaseを阻害することが知られている因子(例えば脈管形成性増殖因子(例えばVEGFシグナリング))を治療標的とすることは、ASMase活性の増加をもたらし、前記活性増加は順をおってSDRT又は化学療法に対する応答強化をもたらすことを示唆する。したがって、SDRT又は化学療法に続いて、急激なASMase活性化の時間ウインドウ内でデリバーされる抗脈管形成剤の使用は、ASMase活性化の強さに比例して腫瘍応答を高めるであろう。したがって、実現可能でかつ安全な抗脈管形成剤の最高投薬量を用いて、ASMase活性化を、さらに拘束的ASMase活性化時間ウインドウ内でデリバーされるならば結果的にSDRT若しくは化学療法応答増加を最大にすることが所望されるであろう。SDRT及び化学療法はしばしばそれらの最大耐性用量で又は当該用量近くで投与されて抗腫瘍効果が最大にされるが、腫瘍応答照射又は抗脈管形成剤の最大投薬量による化学感作は本明細書に開示する併用療法の有益な効果を高めると期待され、さらに照射又は化学療法の用量の段階的縮小すら可能にしうる(前記段階的縮小は、抗脈管形成療法と適切に時間調整された組み合わせで用いたときに局所的及び/又は全身的な腫瘍治癒の達成に必要な照射又は抗癌剤用量に対して定量される)。
前述の記載に基づいて、発明者らは、これらの観察を利用する改変治療を考案し、さらに治療成果を査定及び予測するため、並びに治療有効性及び抗脈管形成剤と化学療法剤の投与の相対的タイミングをモニターするためのバイオマーカーを開発した。
【0029】
定義
本明細書で用いられるように、以下の用語及び略語は、文脈が明らかにそうではないことを示さないかぎり下記でそれら用語及び略語に割り当てられる意味を有するであろう。
“AAA”は“抗脈管形成剤”を意味し前記と互換的に用いられる。
“CRM”は“セラミド富裕マクロドメイン”を意味する。
投与AAAに関して“減衰”は、当該薬剤がもはや実質的な活性を示すことができない、患者の体内における又は身体からのそのような薬剤の不活化、結合又は除去を意味する。
“対象”は患者(人間又は脊椎動物)又は実験動物(例えばマウス又は他のげっ歯類)を意味する。
“相乗効果”、“相乗作用”又は“相乗的な腫瘍応答”は、本明細書に記載したように投与された2つ以上の活性薬剤が、当該薬剤が単独で投与されたら生じるであろうと思われる各薬剤の効果の合計よりも高いことを意味する。特にタイミングに関連して、“相乗効果”とは2つ以上の活性薬剤の治療効果であり、この場合、適切に時間調整された投与の効果が不適切に時間調整された(この場合は二番目に投与される治療薬剤が第一の薬剤によって生じる化学感作ウインドウの外側で投与される)投与の効果より強くなるように、二番目に投与される薬剤は第一の薬剤の投与によって生じる化学感作間隔内で投与される(又はその投与は少なくとも当該間隔内で開始する)。
【0030】
“感受性増加の時間間隔”又は“化学感作間隔”は、化学療法に対する腫瘍応答が増加するか又はASMase活性/セラミドシグナリングが急激に増加する、AAA投与後の時間を指す。
特にASMase活性の増加、灌流変化、セラミドレベル又は他の測定若しくは派生パラメータの増加に関連する“実質的な”は、急激で明瞭に認められる増加又は他の変化を意味するであろう。例えば、統計的有意差に達する変化は実質的とみなされよう。化学療法剤に対する応答における統計的に有意なASMase活性の増加は、
図14Cのものと性質的に類似しうる。さらにまた、化学療法後に統計的に有意な増加をたどるセラミドレベル(C16:0、C18:0)は、
図8のそれと性質的に類似する態様で増加するであろう。
ASMase又はセラミド又は任意の他の測定パラメータの“生物学的産出の回復”は、第一に投与されたAAAの減衰後の第二のAAAの投与時に、ASMase(又は他のパラメータ)活性の増加を経る宿主内皮の能力の再確立を指す。
【0031】
短期作用抗脈管形成剤(AAA)
本方法での使用に適切な抗脈管形成剤(AAA)は、長期作用AAA(例えばベバシズマブ(患者の体内で約3週間の活性半減期を有する)及びDC101)と比較して短い平均減衰寿命を有する短期作用AAAである。本明細書で用いられるように、減衰した抗脈管形成剤は、患者のASMaseを後続のAAA治療に抵抗性にするために十分なレベルではもはや利用可能ではないであろう。換言すれば、AAAの減衰は、AAAの新たな投与に対しASMaseの感受性をリセットするために十分でなければならない。AAAの減衰寿命は、前記薬剤の血清レベル、ASMaseの生物学的産出の回復、セラミドの生物学的産出の回復又は灌流変化の1つ以上の測定によって査定される。
本発明の使用で適切な短期作用AAAは、時間で測定して(約120時間まで)かなり短い平均減衰寿命を有する。適切なAAAには以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):セジラニブ(平均血漿半減期は約22から27時間でピーク血漿濃度は投与後2-8時間)、アキシチニブ(2.5から6時間の平均半減期)、アンギネクス(約50分の半減期)、スニチニブ(40-60時間の平均半減期)、ソラフェニブ(約25-48時間の平均半減期)、パゾパニブ(約30時間の平均半減期)、バタラニブ(4.7時間の平均半減期)、カボザンチニブ(55時間の平均半減期)、ポナチニブ(24時間の平均半減期)、レバンチニブ(28時間の平均半減期)、及びSU6668(3.6時間の平均半減期)。半減期は減衰寿命の指標であるが、ただし減衰(第一の投与から残存する残留量が後続のAAA投与時にASMase活性を排除するには十分ではないもの)はまた投与用量にも左右される。
【0032】
本発明のある種の実施態様では、AAAは、約120時間未満、約110時間未満、約100時間未満、約90時間未満、約80時間未満、約70時間未満、約60時間未満、約50時間未満、約40時間未満、約35時間未満、約30時間未満、約25時間未満、約20時間未満、約18時間未満、約15時間未満、約12時間未満、約10時間未満、約8時間未満の減衰寿命を有する。
本発明のさらに別の実施態様では、AAAは、約1から3時間、約1から5時間、約1から7時間、約1から10時間、約1から15時間、約1から20時間、約1から25時間、約1から30時間、約1から40時間、約1から50時間、約1から60時間、約1から70時間、約1から80時間、約1から90時間、約1から100時間、約2から3時間、約2から5時間、約2から7時間、約2から10時間、約2から15時間、約2から20時間、約2から25時間、約3から5時間、約3から7時間、約3から10時間、約3から15時間、約3から20時間、約3から25時間、約3から30時間、約5から7時間、約5から10時間、約5から12時間、約5から15時間、約5から20時間、約5から25時間、約5から30時間、約5から40時間、約5から50時間、約5から60時間、約5から70時間、約5から80時間、約5から90時間、約5から100時間、約7から10時間、約7から12時間、約7から15時間、約7から20時間、約7から25時間、約7から30時間、約7から35時間、約7から40時間、約10から12時間、約10から15時間、約10から20時間、約10から25時間、約10から30時間、約10から40時間、約10から50時間、約10から60時間、約10から70時間、約10から80時間、約10から90時間、約10から100時間、約20から25時間、約20から30時間、約20から40時間、約20から50時間、約20から60時間、約20から70時間、約20から80時間、約20から90時間、又は約20から100時間の減衰寿命を有する。
【0033】
本開示の重要な特徴は、AAAが化学療法に対して患者を感作して後続のAAAの用量が投与される前に徐々に消滅するように、時間を調節してAAA投与と化学療法を組み合わせた使用には短期作用AAAが有益であろうということである。例えばベバシズマブ又はDC101の事例がそうであるように先行用量が消滅していない場合、患者のASMaseシグナリングは抵抗性になり、もはやAAAの新しい用量に応答しない。
本開示の別の重要な特徴は、ASMase活性化がヒト患者を含む対象の生存と相関関係を有するという本発明者らの提示に基づいて、短期作用AAAの最適投与量は、毎日の投与のために設計された従来の承認用量よりも数倍高いことが予想されること、及びAAAの最大耐性用量と同じように高い可能性があるということである。前記の量はもちろん最適化の対象であり、前記は最大ASMase活性化を達成するために本明細書に提供する技術を用いて達成することができる(いずれの用量制限毒性にも付される)。
【0034】
化学療法剤
本方法の使用及び下記に記載の使用に適切な化学療法剤には、患者で(例えば内皮細胞で)ASMase/セラミドシグナリングを活性化する特性を有する薬剤が含まれる。下記に示すように、化学療法剤のいくつか(全てというわけではない)のクラスの代表的なものはこの特性を有する。いずれかの事象では、この特性を確認する手順が本明細書に記載される。例えば以下の「材料と方法」及び実施例1を参照されたい。
ある種の実施態様では、適切な化学療法剤にはタキサン、トポイソメラーゼ阻害剤及び抗代謝薬(例えばそのようなものとして作用するヌクレオシドアナローグ(例えばゲムシタビン))が含まれるが、ただし前記に限定されない。ASMase活性化特性を有することを条件として他のクラスの化学療法剤も含まれうる。考えられる非限定的な例には、アルキル化剤、抗代謝薬、抗腫瘍抗生物質、有糸分裂阻害剤、及びASMase/セラミドシグナリングを活性化することができる他の化学療法剤が含まれる。
ある種の実施態様では、適切な化学療法剤には白金含有化学療法剤が含まれる。本発明のさらに別の実施態様では、適切な化学療法剤にはシスプラチンが含まれる。
【0035】
さらにまた別の実施態様では、2つ以上の化学療法剤を投与できる。ある種の実施態様では、第一の化学療法剤はAAAの化学感作間隔内で投与でき、第二の化学療法剤はこのウインドウの後に投与できる。他の実施態様では、1つ以上の化学療法剤をAAAの化学感作間隔内で投与することができる。例えば、実施例21では、ゲムシタビン及びドセタキセルの両方が投与されるが、ただし一方のみ(ゲムシタビン)は、ASMase活性又はシグナリング増加間隔若しくはウインドウ中に投与される。しかしながら、第二の化学療法剤の共同投与又は即時連続投与が指示されるならば、そのような投与はASMaseシグナリング増加間隔中に有益に作用しうる。また別には、当該プロセスが、AAAの投与が当該患者の体内でAAAの実質的減衰後に(及びAAAが誘発する急激なASMase活性化に対する感受性がリセットされた後に)繰り返されるように反復されるならば、第二の(及び任意の後続の)AAA投与は新たなASMase増加ウインドウを生じる。続いて、化学療法剤を当該化学感作ウインドウ中に投与でき、さらに第二の化学療法剤が指示される場合にはそれを同じ化学感作ウインドウ内で実質的に同時に投与するか、又は交互サイクルでは連続する化学感作ウインドウ内で投与できるが、ただし化学療法剤の投与は、当該ウインドウ内にあるように常にAAAの投与に近接して後続する。
【0036】
したがって、本開示の発見に基づけば、多くの化学療法剤及びそれらの誘導体及び/又は機能的アナローグがASMase活性化特性を有すると期待され、前記にはタキサン、DNAアルキル化剤、トポイソメラーゼ阻害剤、小胞体ストレス誘発剤、抗腫瘍抗生物質、抗代謝薬などが含まれる。
いくつかの実施態様では、化学療法剤は以下から成る群から選択される:クロラムブシル、シクロホスファミド、イフォスファミド、メルファラン、ストレプトゾシン、カルムスチン、ロムスチン、ベンダムスチン、ウラムスチン、エストラムスチン、カルムスチン、ニムスチン、ラニムスチン、マンノスルファン、ブスルファン、ダカルバジン、テモゾロミド、チオテパ、アルトレタミン、5-フルオロウラシル(5-FU)、6-メルカプトプリン(6-MP)、カペシタビン、シタラビン、フロキシウリジン、フルダラビン、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、メトトレキセート、ペメトレキシド、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、SN-38、ARC、NPC、カンポテシン、トポテカン、9-ニトロカンプトテシン、9-アミノカンプトテシン、ルビフェン、ギマテカン、ジフロモテカン、BN80927、DX-8951f、MAG-CPT、アムサクリン、エトポシド、エトポシドホスフェート、テニポシド、ドキソルビシン、パクリタキセル、ドセタキセル、ゲムシタビン、アクカチンIII、10-デアセチルタキソール、7-キシロシル-10-デアセチルタキソール、セファロマンニン、10-デアセチル-7-エピタキソール、7-エピタキソール、10-デアセチルバクカチンIII、10-デアセチルセファロマンニン、及び前記の組み合わせ。
いくつかの実施態様では、化学療法剤は、ゲムシタビン、パクリタキセル、ドセタキセル及びエトポシド、並びに前記の組み合わせから成る群から選択される。
【0037】
具体的な実施態様では、本明細書に記載の方法を多様なタイプの固形腫瘍の治療に用いることができる。固形腫瘍の例には、以下の器官(皮膚、乳房、脳、子宮頸、精巣、心臓、肺臓、胃腸管、泌尿生殖管、肝臓、骨、神経系、生殖系及び副腎)の腫瘍が含まれるが、ただしこれらに限定されない。
癌治療に用いることができる本明細書に記載の方法によって治療できる悪性腫瘍には以下が含まれる(ただしこれらに限定されない):副腎腫瘍(例えば副腎皮質癌)、肛門、胆管、膀胱、骨腫瘍(例えばユーイング肉腫、骨肉腫、悪性線維性組織細胞腫)、脳/CNS腫瘍(例えば星状細胞腫、神経膠腫、神経膠芽腫)、小児腫瘍(例えば非定型的類奇形腫/類横紋筋腫瘍、胚細胞腫瘍、胎生期腫瘍、上衣腫)、乳房腫瘍(乳管内癌腫を含むがただし前記に限定されない)、子宮頸、結腸/直腸、子宮内膜、食道、眼(例えばメラノーマ、網膜芽細胞腫)、胆嚢、胃腸管、腎(例えば腎細胞、ウィルムス腫瘍)、心臓、頭及び頸、喉頭及び下咽頭、肝、肺、口腔(例えば口唇、口、唾液腺)中皮腫、鼻咽頭、神経芽腫、卵巣、膵、腹腔、下垂体、前立腺、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺、肉腫(例えばカポジ肉腫)、皮膚(例えば扁平上皮細胞癌、基底細胞癌、メラノーマ)、小腸、胃、軟組織肉腫(例えば線維肉腫)、横紋筋肉腫、精巣、胸腺、甲状腺、副甲状腺、子宮(内膜、卵管を含むがただし前記に限定されない)及び膣の腫瘍、並びに前記の転移。いくつかの実施態様では、腫瘍は、乳房、肺、胃腸管、皮膚及び軟組織の腫瘍から成る群から選択される。
【0038】
投薬量、相対的タイミング及び投与
AAA投薬量:
上記で考察したように、ある種の実施態様では、AAA用量は毎日の投与のために設計された従来の承認用量よりも数倍まで高くあってもよく、当該個々のAAAの最大耐性用量と同じように高い可能性がある。本発明のある種の実施態様では、AAAは、当該AAAの最大耐性用量で、当該AAAの耐性用量の約90%で、当該AAAの耐性用量の約80%で、当該AAAの耐性用量の約70%で、当該AAAの耐性用量の約60%で、当該AAAの耐性用量の約50%で、当該AAAの耐性用量の約40%で、当該AAAの耐性用量の約30%で、当該AAAの耐性用量の約20%で、当該AAAの耐性用量の約10%で投与される。本発明のさらに別の実施態様では、AAAは、毎日の投与のために承認された用量、毎日の投与のために承認された用量の約2倍、毎日の投与のために承認された用量の約3倍、毎日の投与のために承認された用量の約4倍、毎日の投与のために承認された用量の約5倍、毎日の投与のために承認された用量の約6倍、毎日の投与のために承認された用量の約7倍、毎日の投与のために承認された用量の約8倍、毎日の投与のために承認された用量の約9倍、又は毎日の投与のために承認された用量の約10倍で投与される。したがって、化学感作剤としてAAAの有効用量範囲は、従来承認された(或いはまだ承認されていない場合には治療のために意図される)AAAの有効用量範囲よりも広いであろう。
化学感作のために用いられるべき抗脈管形成剤の投薬量は、試験(例えば実施例21に記載した試験)を実施することによって確認できる。しかしながら、(例えばASMaseを直接的に又はスフィンゴミエリン若しくはセラミドを測定することによって)、ASMase活性の追加増加がAAA用量を徐々に増加させたときに観察されない場合には、実施例21に詳述するように追加の薬剤は一般的には投与されるべきではない。
【0039】
いくつかの短期作用AAAの承認投薬量は追加手引きとして下記に提供する。アキシチニブについて利用可能な臨床結果及び承認投薬量情報に基づけば、アキシチニブの投薬範囲は20mgを超えて最大ASMase活性化を誘発する用量までであろうが、最大耐性用量(MTD)より高くない用量が有効であろう。20mgは、転移性腎癌治療で用いられる従来の1日の用量である。もちろん、この範囲は、可能なかぎり高いASMase活性化を得るために調整及び最適化の対象である。例えば、前記は実施例21で概略するように実施できる。同様に、スニチニブの投薬量決定では、2.5mgからMTD mgまでの間の量の経口投与で開始して、前述の記載でまた別に概略したような増加或いは手順で段階的に増加される。
【0040】
表1:短期作用抗脈管形成剤の公表量
AAAについて指示された任意の適切な投与方法(経口又は非経口)も用いることができる。ある種の実施態様では、AAAは経口的に投与される。さらに別の実施態様では、AAAは非経口的に投与される。
【0041】
化学療法剤の投薬量:
本開示のある種の実施態様では、化学療法剤の量は用量制限毒性量より高くないであろう。例えば、下記に提供する化学療法剤は、以下の量で投与するように(それらのFDA付箋で)指示されている。
【0042】
実施例17に記載されるように、ASMase活性は、化学療法剤の投与に際して用量依存態様で生じる(
図14D)。さらにまた、ASMase活性は、生存と相関関係を有することが本発明者らによって示された。このことは、SDRTの線量のように、化学療法剤の用量も最大ASMase活性が達成される点まで増加させられるはずであることを示している(もちろんより先に最大耐性用量に達しないことを条件とする)。
【0043】
頻度及びタイミング:
化学療法投与のタイミングはASMase活性増加内に収まるように調整されねばならない。本発明の具体的な実施態様では、化学療法剤は、当該AAAの投与後、約0.5から5時間、約0.5から4時間、約0.5から3時間、約0.5から2時間、約0.5から1.5時間、約0.5から1時間、1から5時間、約1から4時間、約1から3時間、約1から2時間、約1から1.5時間、1.5から5時間、約1.5から4時間、約1.5から3時間、約1.5から2時間、2から5時間、約2から4時間、約2から3時間、約3から5時間、約3から4時間、又は約4から5時間で投与される。本発明のある種の実施態様では、化学療法剤は当該AAAの投与後約2時間を超えないで投与される。本発明のさらに別の実施態様では、化学療法剤は当該AAAの投与後約1.5時間を超えないで投与される。本発明のさらにまた別の実施態様では、化学療法剤は当該AAAの投与後約1時間を超えないで投与される。さらにまた別の実施態様では、化学療法剤の投与は当該AAAの投与後半時間内に開始される。化学療法輸液継続時間が一般的には当該AAAとの最良の相乗作用を生じる持続時間のためにモニターされ、一方で、ASMaseシグナリング(又は灌流変化)をバイオマーカーとして用いて種々の輸液速度が試され、及び/又は腫瘍応答がモニターされるであろう。
ある種の実施態様では、化学療法投与は、用いられる化学療法剤の適用にしたがい投薬量、頻度及び使用期間の観点から実施される。投与頻度は一般的には治療の日に1回で、AAAによる治療の間の間隔は、上記記載の抗脈管形成剤の減衰時間及び化学療法サイクル間の期間を考慮して決定される。典型的には、非経口的に投与される化学療法剤は約20分から約1時間の範囲の時間にわたって輸液されるであろう。
【実施例】
【0044】
材料と方法:
細胞培養
BAECは記載1のようにウシ大動脈の内膜から樹立した。ストック培養をダルベッコー改変イーグル培地(DMEM)で100mmディッシュに増殖させた(DMEMにはグルコース(1g/リットル)、5%熱不活化仔ウシ血清(CS)、ペニシリン(50単位/mL)、及びストレプトマイシン(50μg/mL)が補充された)。精製ヒト組換えbFGF(1ng/mL;R&D Systems, Inc., Minneapolis, MN)を指数関数増殖期の間1日おきに加えた。培養8-10日後に、細胞はコンフルエントに達し、接触抑制単層の特色を示した。これらのプラトー期の細胞を実験に用いるか、又は1:8の分割割合でさらに継代培養した(最大10回まで)。継代培養のために、単層をSTV(PBSに0.05%トリプシン及び0.02% EDTA)で2-3分間22℃にて分離させ、5%CS-DMEMで2回洗浄し、上記のように補充したDMEMに再懸濁させた。これらの穏やかなトリプシン消化条件は細胞の切り離しには十分であるが、検出しうる態様では細胞機能を損傷したり、刺激したり又は影響を与えることはない。BAECは10%CO2の湿潤インキュベーターに37℃で維持した。
HCAECは業者クローンティクス(CloneticsTM Coronary Artery Endothelial Cell Systems(Cambrex Bio Science Inc.))から入手した。HCAEC培養及び継代のために、クローンティクスの成分を以下のように用いた:EBM(商標)-2(内皮細胞基礎培地-2)に増殖サプリメント(Cambrex)(Biomedical Technologies, Inc.)を含むクローンティクスのEGM-2-MV SingleQuotsを添加。継代培養のために、単層をClonetics(商標)トリプシン/EDTA溶液で2-3分間22℃にて分割割合1:4で分離させて細胞集団を実験のために増加させた。HCAEC培養は5%CO2の湿潤インキュベーターに37℃で維持した。
【0045】
in vitroアポトーシス
アポトーシスは、ビスベンズイミド三塩酸塩(Hoechst #33258; Sigma-Aldrich, Milwaukee WI)を用い各クロマチンの形態学的変化を調べることによってin vitroで査定された。まず初めにPBS中の0.25%トリプシン及び0.02% EDTAを用いてBAEC及びHCAEC単層培養を分離させ、続いて浮遊細胞集団と一緒にした。細胞ペレットをPBSで洗浄し、3%パラホルムアルデヒドに再懸濁し、22℃で10分間インキュベートした。固定液を除去した後、8μg/mLのヘキスト-33258を含むPBSに細胞を再懸濁した。22℃で15分間インキュベートした後、細胞をガラススライドに置き、蛍光顕微鏡を用いてアポトーシス性クロマチン変化の発生について採点した。少なくとも3つのアポトーシス小体を示す細胞をアポトーシスとして数えた。
【0046】
セラミド定量
処理後、細胞を氷上に置き、冷PBSで洗浄し、さらに、掻き取ったメタノール中の細胞を等体積のクロロホルム及び0.6体積の緩衝食塩水/EDTA溶液(135mM NaCl、4.5mM KCl、1.5mM CaCl2、0.5mM MgCl2、5.6mMぐるこーす、10mM HEPES(pH7.2)、10mM EDTA)に加えることによって脂質を抽出した。有機相抽出物の脂質をN2下で乾燥させ、穏やかなアルカリ性加水分解(0.1NメタノールKOHにより37℃で1時間)に付してグリセロリン脂質を除去した。サンプルを再抽出し、有機相をN2下で乾燥させた。各サンプルに含まれるセラミドを100μLの反応混合物に再懸濁した。反応混合物は以下を含んでいた:150μgのカルジオリピン、280μMジエチレントリアミンペンタ酢酸、51mMオクチル-β-D-グルコピラノシド(Calbiochem)、50mM NaCl、51mMイミダゾール、1mM EDTA、12.5mM MgCl2、2mMジチオスレイトール、0.7%グリセロール、70μM β-メルカプトエタノール、1mM ATP、10μCiの[γ-32P]ATP、35μg/mL大腸菌(Escherichia coli)ジアシルグリセロールキナーゼ(Calbiochem)(pH6.5)。室温で30分後、以下を用いる脂質抽出によって反応を停止させた:1mlのクロロホルム:メタノール:1N HCl(100:100:1)、170μLの緩衝食塩水溶液(BSS)(135mM NaCl、1.5mM CaCl2、0.5mM MgCl2、5.6mMグルコース及び10mM HEPES(pH7.2)、及び30μLの100mM EDTA。下方の有機相をN2下で乾燥させた。セラミド-1ホスフェートを、シリカゲル60プレート(Whatman)でクロロホルム:メタノール:酢酸(65:15:5(v/v/v))の溶媒系を用いて薄層クロマトグラフィーにより分解し、オートラジオグラフィーで検出し、取り込まれた32Pを液体シンチレーション計測によって定量した。セラミドレベルは、同時に作成した既知量セラミドの標準曲線と比較することによって決定した。
【0047】
ASMase活性アッセイ
ASMase活性は、記載のように(Schissel et al. J Biol Chem, 271, 18431-18436, 1996)、基質として[14C-メチルコリン]スフィンゴミエリン(Amersham)を用いる放射性酵素アッセイによって定量した。細胞溶解物を250mM酢酸ナトリウム(pH5.0)中の[14C-メチルコリン]スフィンゴミエリン基質(0.026mCi/9.5nmol)(0.1%トリトンX-100及び1mM EDTA又は0.1mM ZnClを補充)とともにインキュベートした。反応はCHCl3:MeOH:1N HCl(100:100:1(v/v/v))を用いて1時間後に停止させ、Folch抽出物の水相中の[14C-メチルコリン]ホスホコリン生成物をベックマンパッカード2200CAトリカーブシンチレーションカウンター(Beckman Packard 2200 CA Tricarb scintillation counter)を用いて定量した。患者のASMase活性の検出には10μLの血清を用いた。
【0048】
共焦点顕微鏡法
BAECをCC2-チャンバースライド(Nalge Nunc International Corp., Naperville, USA)で増殖させ、続いて、ナイスタチン(30μg/mL(Sigma))との30分間の前インキュベーションを実施して又は実施しないでエトポシド又はパクリタキセルに暴露した。続いて、BAECを冷PBSで洗浄し、新しい2%パラホルムアルデヒドで15分間固定し、冷PBSで2回洗浄し、さらにPBS中の5% FBSにより20分間室温でブロックした。1:50希釈の抗セラミドMID 15B4 IgM(Alexis Corporation)で細胞を室温で1時間染色し、PBSで3回洗浄し、その後1:500希釈のテキサスレッド結合二次抗体(Jackson Immunoresearch Laboratories, Inc.)で室温にて1時間染色した。非特異的蛍光はアイソタイプコントロールIgM(BD Biosciences)を用いて排除した。細胞を3回洗浄し、DAPIで染色し、さらに0.1%パラフェニレンジアミンでマウントした。蛍光は、MetaMorph 7.5(Molecular Devices)と組み合わせたライカTCS SP2 AOBS 1-及び2-フォトンレーザー走査共焦点(DMRXA2アップライトスタンド)顕微鏡を用いて検出した。内皮細胞膜内のCRMの数をMetaMorph 7.5ソフトウェアを用いて分析した。前記ソフトウェアは2つの規準(1)CRMサイズ(500nm以上)、(2)セラミド染色の強度に基づきCRM含有領域の概要を明らかにできる。SCID環境で維持したマウス(asmase
+/+及びasmase
-/-マウス)を、ヘテロ接合型交配ペアで以前に記載(Santana et al. Cell, 86, 189-199, 1996; Grassme et al. Nat Med 9, 322-330, 2003)の遺伝子型を有するものを用いて繁殖させた。6-12週齢のC57BL6/SV129雄マウスは業者(Jackson Laboratory, Bar Harbor)から購入した。
【0049】
腫瘍動物モデル
ヒトHCT-116結腸癌細胞及びMCA/129ネズミ肉腫細胞を、10%ウシ胎児血清を100U/mLペニシリン及び100μg/mLストレプトマイシンとともに含むDMEMで維持した。細胞を10% CO2の湿潤インキュベーター中で75cm2の培養フラスコにより37℃で増殖させた。細胞をトリプシン消化し、PBSで洗浄し、さらにHCT-116異種移植のためにはマトリゲル(Matrigel)/PBS溶液(40:60 v/v)に希釈するか、又はMCA/129同種腫瘍移植のためにはPBSに希釈した。細胞(HCT-116の場合は3x106又はMCA129の場合は1x106)をマウスの側腹部の皮下に注射した(Garcia-Barros et al. Science 300, 1155-1159, 2003)。
【0050】
in vivoの腫瘍応答
HCT-116腫瘍(50-100mm3)を有するSCID
asmase+/+及びSCID
asmase-/-マウスに、DC101(1600μg/25gmマウス、i.v.)と一緒に若しくは前記無しに又はコントロールIgGと一緒に、35-50mg/kgのエトポシド(Novaplus(商標))、又は15-25mg/kgのパクリタキセル(Hospira)、又は1-6mg/kgのシスプラチン(APP Pharmaceuticals, LLC)を2週間毎のスケジュールで3回腹腔内注射した。MCA/129腫瘍(100-150mm3)を有するSv129/Bl6マウスに、DC101(i.v.)と一緒に若しくは前記無しに、240mg/kgのゲムシタビンを2週間毎のスケジュールで3回腹腔内注射した。
ノギス測定(ミリメートルでの長さ及び幅))を基にして、毎日以下の式(0.5x長さx幅2)を用いて腫瘍体積を計算した。
【0051】
In vivoアポトーシス
急激な内皮のアポトーシスを評価するために、腫瘍をマウスで増殖させ上記のように薬剤で処置した。最初の処置後、腫瘍を所定の時間に採集し、フォルマリンに一晩置き、次の日にパラフィンに包埋した。パラフィン包埋切片(5μm)をアポトーシス内皮のためにTUNEL及び内皮特異的モノクローナル抗体MECA-32(Developmental Studies Hybridoma Bank(NICHDの後援の下に展開されアイオワ大学によって維持されている)により同時染色した。
【0052】
選択肉腫サブタイプにおけるベバシズマブ併用ゲムシタビン及びドセタキセルのフェースII試験
転移性及び局所再発性平滑筋肉腫、多形性未分化肉腫、多形性脂肪肉腫、横紋筋肉腫又は血管肉腫の患者をゲムシタビン、ドセタキセル及びベバシズマブのフェースII試験で処置した。まず初めに、本試験は、ベバシズマブ併用又は非併用のゲムシタビン及びドセタキセルの二重盲検プラセボ対象ランダム化試験であり、前記は、ゲムシタビン、ドセタキセル及びベバシズマブの単一群非盲検非ランダム化試験の改変であった。本プロトコルは、メモリアルスローンケタリング癌センター(Memorial-Sloan Kettering Cancer Center)の治験審査委員会によって承認され、全患者が書面によるインフォームドコンセントを提出した(Clinicaltrials.gov identifier NCT00887809)。
患者は、21日サイクルのそれぞれの1日目に15mg/kgのベバシズマブを30分かけて静脈内に処置され、併せて90分かけてゲムシタビン900mg/kgを1日目及び8日目にさらにドセタキセル75mg/m2を60分かけて8日目に処置された。最初はゲムシタビンをベバシズマブの直ぐ後に投与した。しかしながら、我々の前臨床試験の結果から、プロトコルを後に修正しゲムシタビンはベバシズマブの1時間後に投与された。
【0053】
本来の試験は、腫瘍感作の方法としての時間調整抗脈管形成治療の臨床適用を特に精査するために設計又は立ち上げられたわけではないので、腫瘍の容積測定は予備的基準で実施された。我々の動物実験(臨床試験の途中で実施された)の結果を考慮すると、容積測定は、我々の前臨床データとの比較をより理想的に推進すると考えられる。さらにまた、容積測定はおそらく、軟組織肉腫のためのRECISTによる評価よりも腫瘍応答のより意味のある査定を提供するであろう。したがって、この試験の完了時に、ベバシズマブ投与スケジュールに対する患者又は初期プラセボコホートの査定を知らされていない、スタディ放射線科医(R.L.)によって容積測定分析が実施された。ベースラインCT又はMRIを用いて、測定用の優勢な標的病巣を同定した。フォローアップ試験を最良の応答のために評価した。腫瘍の輪郭は手作業で明らかにし、体軸断面の全てを合計して全体積測定値を計算した。腫瘍応答は腫瘍体積の少なくとも30%減少と定義した。フィッシャーの正確確率検定及びマン・ホイットニー順位和検定の両方を用い、患者の容積測定応答率の有意差を第一の間隔での治療試験(6週目)時及び最大治療応答時に評価した。
【0054】
例えば灌流変化によって確認される微小血管の血管収縮
微小血管の血管収縮は、Gd-DTPAを用いDCE-MRIでin situ腫瘍灌流測定によって査定した(Cho et al. Neoplasia 11, 247-259, 2009)。造影剤Gd-DPTA(0.2 mM Gd/kg, Magnevist; Berlex Laboratories, Inc., Wayne, NJ)を充填した注射器を3方向ストップコックにGd-DPTA充填チューブを介して連結した。麻酔動物を含む完全な組立て物を、水準器及び体軸方向MRプロフィールを用いて磁石内に配置した。MR実験中に呼吸をモニターした。MRIコイルをチューニングして陽子周波数に適合させ、続いてサンプルをシミングした。Hoffmannらが開発したモデルにしたがって組織の灌流を計算した(Hoffmann et al. Society of Magnetic Resonance in Medicine 33, 506-514, 1995)。このモデルは測定された飽和回収MRシグナルと組織中のGd-DPTAの濃度との間の直線関係に基づく。Akep値は時間依存性MRシグナル強化の勾配に類似し、腫瘍組織の血流/灌流のおおよその測定値とみなされる。Akepマップを腫瘍スライスの各々で作成した。加えて、DCE-MRI試験の定量分析及びそれらの臨床適用がPadhaniとHusbandにより以下で考察されている(Dynamic contrast-enhanced MRI studies in oncology with an emphasis on quantification, validation and human studies(Clin Radiol. 2001 Aug;56(8):607-20)。
【0055】
ヘキスト33342を用いる灌流測定
蛍光染料ヘキスト33342(生理学的食塩水中に5mg/mL;15mg/kg;注射呼び容積0.1mL(Sigma-Aldrich))を、処置の前後の指定時間に尾静脈注射により投与した。
【0056】
EPR画像化
腫瘍内の酸素レベルを測定するEPR画像化を以前に記載されたように実施した(Epel et al. Concepts in magnetic resonance. Part B, Magnetic resonance engineering 33B, 163-176, 2008)。EPR画像化に用いられたスピンプローブは、OX063Hラジカル(メチルトリス[8-カルボキシ-2,2,6,6-テトラキス[(2-ヒドロキシエチル]ベンゾ[1,2-d:4,5-d']ビス[1,3]ジチオール-4-いる]-三ナトリウム塩(GE Healthcare))の1mM溶液であった。このスピンプローブはホウケイ酸ガラス注射筒に封入された。サンプルをマルチサイクル凍結融解技術によって脱酸素化しフレーム封入した。続いて、共鳴装置の対象軸に沿ってかつ共鳴装置の軸平面に集中するようにサンプルを当該共鳴装置に置く。
【0057】
IVIM DW-MRI
IVIM DW-MRIは最初Le Bihanらによって記載された(MR imaging of intravoxel incoherent motions: application to diffusion and perfusion in neurologic disorders. Radiology 1986; 161: 401-407)。我々のアプローチの新規性は、経時的にIVIMデータを繰り返し採取し(例えば“ダイナミック”IVIM)、照射(又は化学療法)の急性効果をモニターすることにある(前記はこれまで記載されたことがない戦略である)。静脈内造影剤投与は不要であり、IVIMパラメータは何回も測定することができ、照射又は化学療法後の血管の機能障害の動的変化を明らかにすることを可能にする。他の選択肢(例えばDCE-MRI又は15O-PET)も同様に我々の目的には役立たないであろう(それらは組織の血管分布を高度に反映することはできるが、それらを患者に再注入して血管分布の経時的変化を連続的にモニターさせることはできない)。双指数関数シグナル減衰モデルを用いさらに組織及び血液のT1及びT2緩和時間における相違を説明する修正をそれぞれ取り込みながら、IVIMパラメータ(灌流割合(f)、偽拡散係数(D*)及び拡散係数(D)を含む)を各病巣について計算した。
DCE-MRI及びIVIM DW-MRIの他に、当業界で公知の方法のいずれかを用いて灌流を決定することができる。ASMase又はアポトーシスセラミドレベルを代用として用いることができる。
【0058】
セラミド質量分析
本開示に含まれる試験のために、アポトーシス促進セラミド種(C16:0、C18:0)及び抗アポトーシス種(C24:0)を、MSKCC質量分析コア施設で標準的手順に従い(例えば以下を参照されたい:Merrill, A.H. Jr., 2011, Chem. Rev. 111:6387-6642)測定した。
【0059】
[実施例1]
【0060】
化学療法剤は内皮細胞でASMase/セラミド経路を活性化する
ASMaseシグナリング及びセラミド生成に対する化学療法の効果を試験するために、BAECをパクリタキセル(100nM)で処理し、基質として[
14C-メチルコリン]スフィンゴミエリン(Amersham)を用いASMase活性を放射性酵素アッセイによって決定した(Rotolo et al、上掲書)(
図1A)。ASMase活性の誘発は処理後30分以内に観察され、活性は30分間持続した。セラミド生成は、ジアシルグリセロールキナーゼアッセイを用いてモニターした(Stancevic et al. PLoS ONE 8, e69025, 2013)。ASMase活性に関して観察されたものと一致して、セラミド生成は処理後数分以内にピークに達し、30分間持続した(
図1B)。セラミド生成はCRMの形成と密接に関係するので、BAEC単層を抗セラミド抗体(MID 15B4 IgM(Alexis Corporation))で染色し、共焦点顕微鏡法を用いてCRMを可視化させた(
図1C)。予想したように、CRM形成は5分でピークに達し、30分間上昇したままであった(
図1C)。ナイスタチンはコレステロール枯渇剤であり、前記はスフィンゴミエリンに富む細胞表面ラフトミクロドメインを破壊し、したがってスフィンゴミエリンのASMase照準及びCRM形成を阻害する。パクリタキセル及びナイスタチンの両者によるBAECの処理はCRMの形成を妨げた(
図1C)。このことは、ナイスタチンのASMase妨害はパクリタキセル媒介セラミド生成を実質的に消し去ることを示し、ASMaseシグナリング及びセラミド生成を介する化学療法剤のアポトーシス促進作用を裏付ける。前記の更なる裏付けとして、化学療法による処置前のBAECのナイスタチンによる予備インキュベーションは化学療法誘発アポトーシスを阻害する(
図3)。
【0061】
この観察結果の普遍性を確かなものにするために、追加の内皮細胞株(ヒト冠状動脈内皮細胞(HCAEC))を用いて実験を実施し、異なる化学療法剤を用いる実験もまた実施した。エトポシド(50μM)によるBAECの処理はASMaseの活性化及びセラミド形成を数分以内にもたらし、効果は30分間持続した(
図1D及び1E)。次に、HCAECをパクリタキセル(100nM)(データは示されていない)及びエトポシド(50μM)(
図1F)で処理し、セラミド生成を評価した。BAEC細胞をパクリタキセル及びエトポシドで処理したときに観察された結果と一致して、パクリタキセル又はエトポシドのどちらかによるHCAECの処理はセラミド生成をもたらす(
図1F)。
多様な化学療法剤によるASMase活性化の普遍性をさらに確立するために、シスプラチンの用量を増しながら(0.1-50μM)(データは示されていない)BAEC及びHCAECを処理した。しかしながら、試験した他の薬剤とは対照的に、シスプラチン処理はASMaseの活性化及びセラミドの生成に失敗した。シスプラチンのデータにもかかわらず、これらのデータは総合すれば、種々の作用メカニズムを有する多様な化学療法剤がASMase活性化及びセラミド生成を誘発することを裏付ける。ASMase/セラミド経路は、異なる化学療法剤クラスに属する化学療法剤(例えばタキサン、トポイソメラーゼ阻害剤及びヌクレオシドアナローグ代謝阻害剤)によって活性化された。そのような化学療法剤は腫瘍細胞で別個の作用メカニズムを有することを特徴とするので、そのような別個の薬剤の一群が内皮細胞で共通の分子(ASMase/セラミド)軸に収束することは驚くべきことである。別個の化学療法剤がASMase/セラミド経路を活性化させるという本確証は、本発明者らが単回照射放射線療法(前記は同じ経路を活性化すると報告されている(Rao, S. S. et al., Axitinib sensitization of high Single Dose Radiotherapy. Radiotherapy and Oncology: Journal of the European Society for Therapeutic Radiology and Oncology 111, 88-93, doi:10.1016/j.radonc.2014.02.010, 2014))を用いる実験の結果を説明することを可能にする。
【0062】
[実施例2]
ASMaseシグナリングはin vivoの化学療法誘発内皮細胞アポトーシスに必要である
ASMase/セラミド経路は内皮の損傷及び機能障害で決定的役割を果たすことが知られているので、BAEC及びHCAECをパクリタキセル(100nM)、エトポシド(50μM)及びシスプラチン(0.1-50μM)で処理し、内皮アポトーシスを査定した。パクリタキセル及びエトポシドによる細胞の処理は薬剤暴露の2時間以内にアポトーシスを誘発した(
図2A及び2B)。対照的にシスプラチンは、高濃度(50μM)ですら本実験のウシ上皮細胞で適切なアポトーシス応答を始動できなかった(
図2C)。
総合すれば、これらの結果は、ASMaseは化学療法によって誘発される内皮細胞死の決定要素であることを提唱している。
【0063】
[実施例3]
脈管形成促進因子は化学療法誘発内皮細胞アポトーシスを阻害する
多様な血管形成促進因子が内皮細胞でASMase活性化を阻害することが知られている。化学療法併用抗脈管形成療法及び前記併用療法プロセスにおけるASMase/セラミド経路の役割の評価を含む実験のための基礎を設定するために、化学療法誘発細胞死に対する多様な因子の作用を査定した。エトポシド(50μM)で処理する前に、BAECをbFGF(2ng/mL)、VEGF(2ng/mL)又はナイスタチン(30μg/mL)で30分間予備インキュベートし、8時間後にビスベンザミド三塩酸塩染色を用いてアポトーシスを査定した(
図3)。コントロールサンプルで観察されるようにエトポシド単独処理は顕著にアポトーシスを誘発したが、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF;2ng/mL)、血管内皮増殖因子(VEGF;2ng/mL)又はナイスタチン(30μg/mL)のいずれかによるBAECの予備インキュベーションは、エトポシド誘発アポトーシスを実質的に阻害した(
図3)。
【0064】
[実施例4]
ASMaseシグナリングはin vivoの化学療法誘発内皮細胞アポトーシスに必要である
in vivo化学療法応答におけるASMaseシグナリングの役割を査定するために、2つのマウスモデルを用いた(前記モデルでは、2つの別個の癌細胞株が野生型及びASMase欠損マウスに移植された)。最初に、HCT116ヒト結腸直腸癌異種移植片が免疫不全の野生型SCID
asmase+/+及びASMase欠損SCID
asmase-/-マウスに移植された。担癌マウスを単回投与のパクリタキセル(25mg/kg)で4時間処置し、さらに腫瘍切片を固定して、内皮表面マーカーMECA-32(黒灰色の形質膜)及びTUNEL(核の黒灰色染色)のために二重染色を実施した(
図4A)。
図4Bは内皮細胞アポトーシスの定量を示す。SCID
asmase+/+動物で生じた腫瘍は激しい内皮アポトーシスを示したが、SCID
asmase-/-同腹仔に異種移植された腫瘍は化学療法誘発内皮細胞アポトーシスに耐性であった。
次に、MCA/129線維肉腫のマウスモデルを用い、異なる化学療法剤(ゲムシタビン)のASMase欠損動物におけるアポトーシス誘発能力を試験した。結腸直腸癌モデルを用いて得られた結果と同様に、ゲムシタビン(240mg/kg)はSv129/BL6
asmase+/+マウスで時間依存性内皮細胞アポトーシスを誘発したが、Sv129/BL6
asmase-/-マウスでは誘発しなかった(
図4C及び4D)。ゲムシタビン処理は腫瘍細胞のアポトーシスを引き起こさず、当該作用は内皮細胞区画に特異的であることを示した。
総合すれば、これらの観察は、ASMaseシグナリングはin vivoの化学療法誘発内皮細胞アポトーシス応答に必要であることを示している。さらにまた、ASMase/セラミド経路は、ASMase/セラミドシグナリングを活性化する能力を有する化学療法剤によって引き起こされる腫瘍増殖遅延を媒介することが観察される。
【0065】
[実施例5]
ASMaseシグナリングは動物モデルで腫瘍の化学療法応答に必要である
HCT116結腸直腸癌異種移植モデルで腫瘍の化学療法応答を評価した。HCT116腫瘍(50-70mm
3)を有するSCID
asmase+/+又はSCID
asmase-/-マウスをパクリタキセル(15/20/25mg/kg、腹腔内)で2週間毎に3回処置した。内皮細胞アポトーシスにおけるASMaseシグナリングの必要性と一致して、ASMase経路の活性が腫瘍増殖遅延における化学療法の効果のために必要であった。パクリタキセルで処置されたSCID
asmase+/+マウスのHCT116異種移植は10±1日後に完全な腫瘍応答を示したが、SCID
asmase-/-同腹仔の異種移植では有意な腫瘍応答はなかった(
図5A)。ASMase要求がセラミドの生成によって媒介されるということを試験するために、抗セラミド又はアイソタイプコントロール抗体の存在下で、
図5Aのように腫瘍を有するSCID
asmase+/+マウスをエトポシド(35/35/50mg/kg、腹腔内)で2週間毎に処置した。
図5Bに示すように、それぞれのエトポシド注射の1時間前の抗セラミドIgM静脈内注射は、アイソタイプコントロール抗体で処置された動物と比較して腫瘍増殖遅延を弱める結果をもたらした。これらの結果は、化学療法剤に対する実質的な腫瘍応答における内皮ASMaseシグナリングの必須の関わり合いを示している。
内皮細胞アポトーシス及びin vivo腫瘍応答に影響を与えるシスプラチンの能力をさらに試験するために、腫瘍増殖に対するシスプラチンの効果を評価した。この腫瘍モデルでは、高用量シスプラチン処理(3x6mg/kg)は、有意なHCT116腫瘍増殖遅延(
図6F)も腫瘍内皮アポトーシス(データは示されていない)も誘発しなかった。
【0066】
[実施例6]
血管形成性in vivo腫瘍の化学感作はタイミングに左右される
種々の報告が、AAAが化学療法と併用されたときの累積効果又は相乗作用を示している。以前の研究は、抗VEGFR2 IgG抗体(DC101)がVEGFによって阻害された内皮ASMaseを一時的に抑制解除することを示した。VEGFは、アンギオクラインの低酸素媒介HIF-1α転写活性化を介して普遍的に生成される(Truman et al. PLoS ONE 5, 2010)。したがって、内皮ASMaseシグナリングは化学療法応答に必要であるという考えをさらに究明するために、パクリタキセル治療と一緒にDC101を用いた。SCID
asmase+/+マウスのHCT116腫瘍は、3x15mg/kgのパクリタキセル単独又は1600μgのDC101単独ではわずかな影響しか示さなかったが、一緒に用いられたときは相乗的な腫瘍応答を示した(40%完全応答、
図6A)。興味深いことには、化学療法剤との抗脈管形成性相乗作用は、シンクロナイズされた薬剤デリバリーに依存した。DC101をパクリタキセルの3-48時間前に注射した場合には、15mg/kgのパクリタキセルの単回投与後に化学感作は観察されなかった(
図6B、シスプラチンのデータは示されていない)。同様に、DC101がパクリタキセル処置後1-48時間のいずれかの時間に注射された場合、化学療法単独の利益に付加される利益はなかった(
図6C)。相乗作用は、抗脈管形成剤が化学療法処置の1-2時間前に注射された場合にのみ観察された(この間隔はAAA投与後0.5から2時間以内と考えることができる)。
同様な結果が、Sv129/Bl6
asmase+/+マウスに移植したMCA/129ネズミ線維肉腫腫瘍を用いて観察された。DC101(1.6mg/25gmマウス、腹腔内)をゲムシタビン(240mg/kg、腹腔内)暴露の1時間前又は暴露直前に投与した。処置の4時間後に腫瘍を採集し、内皮細胞アポトーシスを定量した。各ゲムシタビン投与の直前ではなく1時間前にデリバーされた場合にのみ、DC101は内皮細胞アポトーシスを増加させることができた(
図6D及び6E)。
ここに提示した結果は、抗脈管形成剤が化学療法の1-2時間前にデリバーされた場合にのみ化学感作が生じ、化学療法に先行する他の時間又は化学療法後には生じないことを示している。したがって、化学療法による処置がその間に行われなければならない、抗脈管形成剤の投与に続く化学感作の間隔又はウインドウが存在する。
【0067】
[実施例7]
ゲムシタビンとシンクロナイズさせたベバシズマブのタイミングは肉腫を有する患者の腫瘍応答を改善する
実施例1-6に示した結果は、化学療法に対する腫瘍応答の媒介及び促進におけるASMase/セラミド経路の目覚ましい役割を明らかにした。臨床での腫瘍の化学療法におけるASMaseの役割を明らかにするために、進行性軟組織肉腫で抗脈管形成剤のベバシズマブを伴うゲムシタビンとドセタキセルの治験審査委員会承認プロスペクティブフェースII臨床試験を、メモリアルスローンケタリング癌センターで2009年の6月から2012年の4月まで実施した(MSKCC 09-015;Clinicaltrials.gov identifier NCT00887809)。試験に登録された患者は、転移性又は再発性平滑筋肉腫、多形性未分化肉腫、多形性脂肪肉腫、横紋筋肉腫又は血管肉腫を有していた(
図7A)。
合計38人の患者を処置した。1つの部分集団の患者はベバシズマブの代わりにプラセボを投与された。他の患者は全て、各21日サイクルの1日目に静脈内にデリバーされるベバシズマブ(15mg/kg)及びゲムシタビン(90分かけて900mg/m
2)で処置された。8日目に、ゲムシタビン(90分かけて900mg/m
2)が投与され、その後にドセタキセル(60分かけて900mg/m
2)がベバシズマブ無しに投与された。16人の患者が即時ベバシズマブ-ゲムシタビンスケジュールで処置され(ベバシズマブは30分かけて静脈内デリバーされ、続いてゲムシタビンの静脈内投与)、14人が1時間間隔スケジュールで処置され(ベバシズマブはゲムシタビンの1時間前にデリバーされる)、一方、8人の患者はベバシズマブではなくプラセボを投与された。
【0068】
患者の腫瘍応答の容積測定分析は、ベバシズマブ/ゲムシタビン投与スケジュールの患者への割り当てを知らされていないスタディ放射線科医によって実施された。ベースラインCT又はMRIを用いて容積測定用の優勢な標的病巣を同定し、その後で最初の処置後フォローアップ試験(2カ月間)及び治療コースを通しての用量測定査定を実施した(腹腔転移の代表的なCTタイムコースは
図7Bに示され、
図7Bでは転移腫瘍の退縮が示されている)。
即時連続ベバシズマブ-ゲムシタビンデリバリーを受けた患者の38%が有意な腫瘍応答(腫瘍体積の30%を超える退縮と定義)を示し、当該応答は、8患者のプラセボコントロールグループで観察された容積測定応答の25%と有意な相違ではなかった(
図7C)。
しかしながら、ベバシズマブ-ゲムシタビン1時間間隔スケジュールコホートのほぼ全ての患者(14人のうち13人(93%))が有意に高い腫瘍応答を示した(
図7D)。用量測定分析はさらに、最初の処置後フォローアップ試験(2回の3週間処置サイクル後)でも実施された。即時連続ベバシズマブ-ゲムシタビンデリバリーを受けた16人の患者のうち4人(又は患者の25%)が有意な腫瘍応答示したが、一方、ベバシズマブ-ゲムシタビン1時間間隔スケジュールコホートでは14人のうち9人(64%)が30%を超える腫瘍退縮を示した。
これらの試験は、ゲムシタビンとシンクロナイズさせたベバシズマブのタイミング(ベバシズマブはゲムシタビンの投与1時間前にデリバーされる)は、肉腫と診断された患者の化学療法に対する腫瘍応答を顕著に改善することを確定させる。総合すれば、この試験の軟組織肉腫患者の臨床結果は、ASMaseシグナリングは治療有用性に関わりあうことができるという原理の証明である。これらの結果はまた、ASMaseシグナリングは、腫瘍応答を予測するバイオマーカーとして、さらにAAAのタイミング及び投薬量、化学療法剤の(AAA投与に対する)最適タイミング及び化学療法剤の投薬量の調整のためのいずれの事象においてもバイオマーカーとして確立できるということを支持する。
【0069】
[実施例8]
長期作用抗脈管形成剤は後続する抗脈管形成性ASMase媒介腫瘍感作に対し腫瘍を抵抗性にする
患者は、化学療法と併用されるマルチラウンドの長期作用抗脈管形成剤治療を受けるので、蓄積される長期作用抗脈管形成剤の斬新的増加が生じる。したがって、発明者らは、第一ラウンドの長期作用抗脈管形成剤が第二ラウンドの応答に影響を与えるか否かを各サイクルで最高用量の長期作用抗脈管形成剤をデリバーしながら試験した。したがって、前提は、ベバシズマブレベルが第一の投与後に達成されたレベルの半分に減衰した時点で試みられる第二ラウンドの血管化学感作で、第一及び第二ラウンドのベバシズマブが厳密に類似しているか否かを評価することであった。
簡単に記せば、1x10
6のMCA/129線維肉腫細胞をSW129/BI6
JAXマウスの右の側腹部に移植し、腫瘍体積をKimら(Cancer Res, 46, 1120-1123, 1986)が記載した式にしたがって毎日測定した。240mg/kg(腹腔内)のゲムシタビン(Gem)でマウスを4日間隔(黒の矢印)で2回処置した。いくらかの動物には、
図11Aに示すように各Gem処置の8及び1時間前にDC101(1600mg/マウス=最高用量)を投与した。データ(平均±SEM)は5マウス/グループの照合であった。別のグループの動物には、Gem処置の8時間前にDC101の0用量又は半分用量を投与し、Gem処置の1時間前に最高用量のDC101を投与した。
図11Aに示すように、ASMaseに基づく抗脈管形成剤の感作は、ASMaseに基づく抗脈管形成剤の化学感作が試みられた時点で最高用量の長期作用抗脈管形成剤(例えばDC101)が対象に既に存在するときには弱められる。対照的に、DC101用量(800mg/マウス)の半分だけが対象に存在するときには、影響は最小限であり、最高用量のDC101で観察された阻害作用はもはや検出されない。
図11Bは、
図11Aで照合した個々の腫瘍応答のプロフィールを示す。
【0070】
この試験は、蓄積された長期作用抗脈管形成剤(例えばベバシズマブ)の影響を模倣する(前記影響は、化学療法と併用した長期作用抗脈管形成剤のマルチサイクル臨床試験の連続するラウンドで生じる)。例えば、3週間サイクルの2ラウンド目には、ASMaseに基づく化学感作が試みられる時点でベバシズマブの半分の用量が対象に存在するであろう。さらにまた、3週間サイクルの4ラウンド目には、より高レベルの長期作用抗脈管形成剤の蓄積さえも存在し、この場合当該レベルは最高用量の約88%に相当するであろう。5ラウンド目では、蓄積された長期作用抗脈管形成剤のレベルは最高用量の約94%に到達しよう。これらの概算は、IgG(ベバシズマブはIgGの1つである)の半減期(t1/2)がマウスでは4日であり、人間では21日であるという事実に基づく。
この試験は、長期作用抗脈管形成剤(薬)は、後続する抗脈管形成剤のASMase媒介腫瘍化学感作に対し腫瘍を抵抗性にするということの証拠を提供する(この場合、阻害の強さは対象に存在する長期作用抗脈管形成剤の量が増加するにつれ強くなる)。したがって、これらの実験は、長期作用抗脈管形成剤(例えばベバシズマブ又はDC101)と比較して、平均半減期が約120時間未満の短期作用抗脈管形成薬がASMase/セラミド経路に基づく化学感作には好ましいという提案を支持する。
【0071】
[実施例9]
ゲムシタビン誘発ASMase/セラミド経路活性化の動態及び用量依存性
実施例1-7に提示した前臨床モデル及び臨床試験データは、ASMase/セラミド経路を活性化させる種々の化学療法剤に対する種々の腫瘍の応答を、それら薬剤が腫瘍の微小血管構造内のASMase/セラミド経路の活性を高める特定のスケジュールを用いて投与されるときに実質的に改善できることを示した。抗脈管形成性剤の化学感作を支配する原理を詳細に理解するために、A19 BAECのスフィンゴ脂質シグナリング事象におけるゲムシタビン誘発のタイミング及び用量依存を調べる試験を実施した。BAECのASMase/セラミドシグナリングに関し以下の4つの異なるリードアウトが、これらのアッセイについて標準的なプロトコルを用いて決定されるであろう:1)分泌ASMase活性、2)セラミド生成、3)ゲムシタビン投与の60分以内のCRM形成、及び4)2-24時間のアポトーシス。Zn依存性分泌ASMase活性は放射性酵素アッセイによって測定されるであろう。前記アッセイは、ミカエリス・メンテン反応速度論の規則にしたがう条件下で基質として[N-メチル-14C]スフィンゴミエリンを用いる。[14C]スフィンゴミエリンが加水分解されるとき、[14C]ホスホコリンはFolch抽出物の水相に遊離され、前記はシンチレーション計測によって定量される(Rotolo et al. J. Clin. Invest. 122: 1786-1790, 2012)。細胞のセラミドレベルは、BlighとDyerの脂質抽出及び液体クロマトグラフィーエレクトロスプレータンデム質量分析法の後で測定される(Kasumov et al. Anal. Biochem. 401:154-161, 2010)。CRPは、抗セラミドMID 15B4 IgM(Alexis Corporation)とインキュベートした固定BAEC細胞の共焦点顕微鏡法を用いて検出されるであろう(Garzotto et al. Cancer Res. 58: 2260-2264, 1998)。
【0072】
ゲムシタビンの90%致死用量を用い、各リードアウトの最大活性化の時間がまず初めに決定されるであろう。以前の実験から、ASMase/セラミド/CRP生成はゲムシタビン投与の5-15分以内に最大となり、アポトーシスは6-8時間で最大となるであろうと予想される。続いて、実験的に決定した当該4事象の各々のピーク時間を用い、有効なゲムシタビンの用量範囲で(例えば100nMまで(Laquente et al. Mol. Cancer Ther. 2008; 7:638-647))ゲムシタビン用量応答曲線が作成されるであろう。ASMase特異性のためのコントロールには、イミプラミン(50μM)を用いる薬理学的ASMase不活化及びラフト破壊剤のナイスタチン(30μg/mL)による前処置が含まれるであろう。初期スフィンゴ脂質事象の秩序を正確に記述するために、抗セラミド2A2抗体(前記はASMase活性化-セラミド生成を阻止しないがセラミドのCRPへの合体及びアポトーシスを妨げる)が用いられるであろう。ASMaseシグナリングとde novoのセラミド合成とを区別するために、十分に規定されているセラミド合成阻害剤(フモニシンB1、50μM)が用いられるであろう。総合すれば、これらの実験は、内皮細胞のゲムシタビン誘発スフィンゴ脂質死応答の動態に関する詳細な情報を提供するであろう。ASMase活性は、ゲムシタビンに定量的に応答して
図14Cの場合と同様に統計的に有意な増加を示すであろうと期待される。さらにまた、セラミドレベル(C16:0、C18:0)は、化学療法に続いて定量的に
図8の場合と同様に統計的に有意な増加を経ると期待される。前記は実施例20に記載するように試験できる。
【0073】
[実施例10]
抗脈管形成剤投与のタイミング及びゲムシタビン感作ピークの決定
DC101及びアキシチニブ(VEGF受容体1、2及び3の選択的阻害剤)のアポトーシス化学感作のためのタイミングが培養BAECで最適化されるであろう。ゲムシタビンの例えばLD40用量の投与に対して-24時間から+24時間を包含する時間ウインドウでDC101(5μg/mL)又はアキシチニブ(50nM)により細胞が処理されるであろう。その後、アキシチニブに対し4つのリードアウトの用量応答曲線を感作するDC101の能力が査定されるであろう。
【0074】
[実施例11]
後続の化学療法サイクルに対する抗脈管形成剤の影響
上記の実施例7に記載した臨床試験は予備的動物データ(提示されていない)とともに、長期の抗脈管形成作用は、当該抗脈管形成効果の減衰がASMase感受性をリセットするまで、おそらく抗VEGF及び化学療法の後続ラウンドに対しASMaseを抵抗性にするという仮説を推し進めた。例えば、実施例7の試験では、恩恵の大半はAAA+化学療法の1サイクル後に達成され、2様式治療の第二ラウンドでは付加される恩恵が存在しないか又は最小限の恩恵しか付加されなかった(
図7E及び7F参照)。この仮説は実施例8の実験で確認された。
抗脈管形成剤の後続化学療法サイクルに対する影響をさらに試験するために、実施例10で得られたタイミング情報にしたがって、BAECは最大用量の長期作用AAA(DC101)又は短期作用AAA(アキシチニブ)と併せてゲムシタビンのLD
40で処理されるであろう。内因性抗脈管形成剤を除去するために、培養液は種々の間隔で(6時間から2日)で交換され、その後で細胞はゲムシタビン±DC101又はアキシチニブで再処理されるであろう。実施例9に記載した4つのリードアウト全てに対する連続治療サイクルの影響が評価されるであろう。これらの試験は、AAAの減衰時間に関連して必要であり、かつ抗脈管形成抑制解除に対してASMase感受性のリセットに必要である最少時間ウインドウを決定するであろうと期待される。
【0075】
[実施例12]
化学療法の第二のサイクルに対する長期作用抗脈管形成剤と短期作用抗脈管形成剤の影響
長期の抗脈管形成剤処置は、抗脈管形成作用の減衰がASMase感受性をリセットするまで後続の抗VEGF処置サイクルに対しASMaseを抵抗性にするので、1サイクル目の処置に由来する循環長期作用抗脈管形成剤の存続が、2サイクル目でスフィンゴ脂質に基づく抗脈管形成化学感作を弱めるであろうということはありうる。したがって、もしこれが本当ならば、長期作用抗脈管形成剤(例えばベバシズマブ又はDC101)と比較して、短期作用抗脈管形成薬がおそらくASMase/セラミド経路に基づく化学感作のために優れている。
MCA/129線維肉腫のマウスモデルによるin vivo実験を用いて、長期作用及び短期作用抗脈管形成剤の両方の後続化学療法ラウンドに対する影響を直接査定及び比較できるであろう。
長期間持続抗脈管形成剤のために、処置サイクル間で種々の間隔が試験されるであろう(この場合、評価される範囲は、DC101の0.25-4半減期まで変動するであろう(1-16日(マウスで半減期は4日))。マウスでのIgGの半減期は人間の場合よりも短いことに留意することは重要である(4日対21日)。ASMase/セラミド経路活性のリードアウトは、2つのサイクル間の腫瘍増殖応答と同様に決定されるであろう(Kimら(Cancer Res, 46, 1120-1123, 1986)の標準的ノギス測定によって査定される)。最初の実験セットでは、動物は腫瘍内皮アポトーシスの査定の6時間前にゲムシタビンで処理されるであろう。内皮アポトーシスの抗脈管形成剤化学感作のこれらの間隔タイミング実験から得られる結果は、内皮アポトーシスのために用いられた同じDC101半減期レジメンを利用して90日の最高腫瘍応答を調べ、完全な応答及び腫瘍増殖遅延を観察することによって立証されるであろう。
本開示に提示される発見に基づいて、ゲムシタビン誘発内皮アポトーシスは腫瘍応答と相関関係を有するであろうと予測される。
【0076】
[実施例13]
ASMase活性はネズミMCA/29線維肉腫モデルで単回高線量照射後の腫瘍応答の結果を予測する
単回照射放射線療法(SDRT)は以前には放射線耐性と考えられていた癌治療で成功することが証明された。SDRT応答の正確なメカニズムは完全には特徴付けられてはいないが、内皮細胞ASMase/セラミド経路がこの応答の媒介に目覚ましい役割を果たすことが知られている。照射は急激な内皮細胞ASMase活性化を誘発し、照射誘発アポトーシスはASMase依存性である(なぜならばASMaseを欠くマウス内皮はアポトーシスに耐性である)。さらにまた、アポトーシス欠損は外因性セラミドの添加によりレスキューされる。
本実施例では、発明者らは、市販のSv129/BL6マウスの線維肉腫モデルで照射後の血清ASMaseレベルを評価した。
図12A及び12Bに示すように、血清ASMase活性は照射後に用量依存態様で増加する。詳細なコントロール用量試験で、完全応答(照射後30日で触診可能な腫瘍は無し)によって規定される50%腫瘍コントロール用量(TCID
50)は29.8Gy±0.9Gyであると決定された。タイムコース実験は照射後1-72時間の全ての時点でASMaseの上昇を示したので、24時間の時点を更なる評価のために選択した。15、27及び40Gyを選択したとき、照射後24時間で血清ASMase活性上昇に顕著な相違が観察されたが、9GY照射後では顕著な変化は生じなかった(
図12C)。重要なことには、SDRT誘発血清ASMase活性は15から40Gyの範囲にわたって直線的に増加し、完全腫瘍応答と密接な相関性を示し(R
2=0.89、
図12D)、血清ASMaseを臨床SDRTシナリオのASMase/セラミド経路活性の潜在的バイオマーカーとして示唆した。
【0077】
本試験の第二の部分で、発明者らは、ASMase/セラミド経路はSDRT応答のバイオマーカーとして用いることができるという仮説を試験した。27Gy(Sv129/BL6マウスのMCA/129モデル(n=19のSv129/BL6マウスの拡大コホート)のTCID
50よりわずかに低い)の均一線量を用いて、発明者らは、24時間の誘発血清ASMase活性が30日の腫瘍応答を予測するか否かを評価した。これらの試験では、5匹のマウスが完全な応答を示し、一方、3匹の別のマウスは触診可能な腫瘍を示し、前記腫瘍は照射後15日を超えて増殖せず部分的応答と定義された。当該コホートの残りの腫瘍は増殖を続け、応答無しと定義された。全てのマウスは照射後に血清ASMase活性の増加を示し、1.1から2.7倍の範囲の増加であった(
図13A)。しかしながら、SDRTに完全又は部分的応答を示した腫瘍(
図13Aの明灰色及び暗灰色)については、ASMase活性のより高い倍差が観察され(
図13A、13B)、ASMase/セラミド経路の活性化と直接的にリンクする応答が観察された。
ここに示すように、ASMase血清活性の増加はSDRT応答に比例した。このことは重要である。なぜならば、ASMaseを阻害することが知られている標的因子(例えば脈管形成増殖因子(例えばVEGFシグナリング))はASMaseの更なる増加をもたらし、前記は順にSDRTへの応答の強化を生じよう。したがって、SDRT処置の間にASMaseをさらに高めるか及び/又は活性化することができる、(SDRT処置の少し前の)抗脈管形成剤の使用は極めて望ましい。いっそう強いASMase活性化を達成するために、短時間持続ウインドウでASMase活性を増加させることがここでもまた示された抗脈管形成剤をより高い投薬量で使用することが所望されよう(特に他の治療様式(SDRT又は化学療法)は、しばしば最大耐性用量で又は最大耐性用量近くで実施されるからである)。例えば、AAAの最大ASMase増進用量(任意の用量制限毒性に付される)を査定及び投与することができる。この用量は、現在入手可能な毎日の低用量処方物よりも実質的に高いと予想される。
したがって、処置対象で毒性を誘発しないで実現できる限りのASMase活性の増加は、ASMase刺激薬剤(前記がAAAであれ、SDRTであれ、化学療法様式であれ、又は両方であれ)の投薬量を調整することによる処置最適化の明瞭なゴールとなった。
虚血再灌流損傷をもたらして腫瘍退縮及び対象の生存を可能にするASMase経路の活性化はHDRT及び化学療法の両方にとって共通であるということが、前述のデータから明らかになった。(第二の治療様式に対して適切な時に与えられる場合を除いて)ASMaseを弱め、したがって虚血再灌流の強度を弱めるAAAの能力もまた確定された。したがって、ASMase活性化及び虚血再灌流強度に関する本明細書に記載する結果は、AAA+SDRT又はAAA+化学療法のどちらの組み合わせにも適用できる。
【0078】
[実施例14]
単回照射放射線療法は動物モデルで微小血管の血管収縮を誘発する
最近の研究は、抗脈管形成薬はASMase/セラミド経路の抑制を解除しセラミド媒介内皮アポトーシスを強化できるが、ただしSDRT時の前にデリバーされた場合のみでSDRT時の近くでは強化できないことを示した(例えばSDRT前の1時間から2時間未満の任意の事象(Rao et al. Radiotherapy and oncology : journal of the European Society for Therapeutic Radiology and Oncology 111, 88-93,2014))。動物モデルでは、抗脈管形成剤処置と併用されたSDRTに対する異種移植片の応答は、腫瘍がasm
-/-マウスに移植されるときに有意に弱められる。同様な効果が、異種移植片を有するasm
+/+マウスが阻害性抗セラミド抗体で前処置されたときに観察される。これらの結果は、宿主内皮は、腫瘍細胞に対する照射の直接的効果と一緒になったSDRT誘発腫瘍応答の重要な成分であることを示している。
単回照射放射線療法(SDRT)は、以前には放射線耐性と考えられた癌の治療で成功することが証明された。SDRT応答の正確なメカニズムは完全には特徴付けられてはいないが、内皮細胞ASMase/セラミド経路がこの応答の媒介に目覚ましい役割を果たすことが知られている。照射は急激な内皮細胞ASMase活性化を誘発し、照射誘発アポトーシスはASMase依存性である(なぜならばASMaseを欠くマウス内皮はアポトーシスに耐性である)。さらにまた、アポトーシス欠損は外因性セラミドの添加によりレスキューされる。
【0079】
最近の研究は、抗脈管形成薬はASMase/セラミド経路の抑制を解除しセラミド媒介内皮アポトーシスを強化できるが、ただしSDRT時の前にデリバーされた場合のみでSDRT時の近くでは強化できないことを示した(例えばSDRT前の1時間から2時間未満の任意の事象(Rao et al. Radiotherapy and oncology : journal of the European Society for Therapeutic Radiology and Oncology 111, 88-93,2014))。動物モデルでは、抗脈管形成剤処置と併用されたSDRTに対する異種移植片の応答は、腫瘍がASMase-/-マウスに移植されるときに有意に弱められる。同様な効果が、異種移植片を有するasmase+/+マウスが阻害性抗セラミド抗体で前処置されたときに観察される(データは示されていない)。これらの結果は、宿主内皮は、腫瘍細胞に対する照射の直接的効果と一緒になったSDRT誘発腫瘍応答の重要な成分であることを示している。SDRTによって引き起こされる血管機能障害を支配する生物学的プロセスのより良好な理解を得るために、ASMase/セラミド経路は、アポトーシス死経路における急激な損傷応答として微小血管の血管収縮を媒介すると解釈された。したがって、腫瘍微小血管の血管収縮(例えば灌流の変化によって測定される)を種々の線量のSDRTの後で評価した。
SDRT誘発血管機能障害は、Gd-DTPAを用いDCE-MRIによってin situで腫瘍灌流を測定することによって査定した(Cho et al. Neoplasia 11, 247-259, 2009)。組織の灌流は、Hoffmannらによって開発されたモデル(Hoffmann et al. Society of Magnetic Resonance in Medicine 33, 506-514, 1995)にしたがって計算した。全腫瘍切片のAkep値を決定した(ここでAkep値の低下は灌流の減少及びそれゆえに腫瘍の低酸素又は虚血を示す)。照射後短時間(30分)で、asm
+/+宿主由来の腫瘍サンプル(2つの異なる腫瘍タイプを試験した)は有意な灌流減少を示したが、asm
-/-宿主のサンプルでは減少は検出されなかった。同様な灌流機能障害はasm
-/-宿主で検出されなかった。ASMase調節血管収縮のタイミングはMCa同種乳癌モデルで定量された(ここでは灌流はSDRT後30分及び100分で減少した)。これらの結果は、腫瘍毛細管灌流の測定によって確認された(前記灌流は、asm
+/+マウスではSDRT後まもなく(30分)有意に減少したが、asm
-/-マウスでは変化は無かった(データは示されていない))。
【0080】
電子常磁性共鳴(EPR)分光O2レベルは、asmase
+/+
マウス腫瘍の20Gy SDRT後のB16メラノーマO2強度で29%減少を示し、asmase
-/-
同腹仔では無効であった。
総合すれば、これらの結果はSDRT後の急激な灌流欠乏はO2減少を伴うことを示唆している。これらの観察は、ASMase媒介内皮機能障害が腫瘍応答を決定するもっともであると思われるメカニズムを提唱し、当該メカニズムでは、アポトーシスそれ自体は腫瘍応答の原因ではなく、むしろASMaseによって媒介される急激な血管機能障害はSDRTを通常の分割放射線療法と区別する。これらの観察は化学療法にも当てはめることができる。なぜならば、ASMaseはまた化学療法に応答して増加するからである。
【0081】
[実施例15]
微小血管の血管収縮は24Gyの単回照射放射線療法に続いて1-2時間以内に生じる
転移症状を有する患者の血管機能障害を、ボクセル内非干渉性運動(IVIM)拡散強調磁気共鳴画像化(IVIM DW-MRI)として公知の非侵襲性画像化技術を用いて査定した。生物学的組織では、標準的なDW-MRIによって検出される微視的運動には以下が含まれる:(i)組織の構造的成分によって影響を受ける、水分子の拡散、及び(ii)毛細管ネットワークにおける血液の微小循環(灌流)。高い細胞密度を特徴とする組織(例えば腫瘍)では、水分子の運動は通常の組織よりも制約される。
IVIM DW-MRIは、短時間の間に何度も測定を収集することを可能にする。IVIM DW-MRIでは、拡散勾配の種々の強度及びタイミングを反映する多数のb-値が適用される。種々のb値の腫瘍内MRシグナル強度(S)間の関係は、低いb値で急勾配及びより高いb値で緩やかな勾配を有する双指数関数パターンを示す。低b値における最初の曲線の険しさは微小血管の拡散に対する影響を反映する。当該曲線の最初の勾配は微小血管構造内の流速の概算(偽拡散、D
*)を表し、1-当該曲線の後の部分のY切片は灌流割合(f)(すなわち微小血管構造内の血液の体積)を表す。したがって、両パラメータは微小血管機能の関連する測定値を提供する。15人の患者で(そのうちの10人はまた選ばれて血清収集に参加した)、IVIM DW-MRIを照射前に実施し、さらに照射後の0.5-2時間以内に繰り返した(0.5-2時間は、SDRTの後0.5-2時間でASMase依存灌流減少を示す前臨床データに基づいて選択された時間枠である)。IVIM画像は4分の収集間隔によりいくつかの連続時点で収集した。経験を有する放射線医師が、参照として解剖学的(T1-及びT2-荷重)MRIシーケンスを用いてIVIM DW-MRI画像の照射病巣に関心体積(VOI)を定めた(
図9A)。D
*及びf値をVOIの各ピクセル内で計算し、平均腫瘍D
*及びfを得るために平均した。16回まで繰り返した平均腫瘍D
*及びf測定値をSDRT前及び後で得た。照射前IVIM DW-MRI D
*及びf値は腫瘍間で相当な非均質性を示し、種々のベースライン腫瘍微小血管灌流を反映していた(
図9B及び9C)。微小血管灌流の変化を比較するために、平均腫瘍D
*及びfを各腫瘍のSDRT前の平均腫瘍D
*及びfの分数として表す(
図9D、9E)。24Gy SDRTを受けた9人の患者では、IVIMパラメータf(平均-30%)及びD
*(平均-24%)で有意な減少が存在した。対照的に、9Gyの前及び後でIVIM画像化を受けた6人の患者では、平均D
*及びfは有意には変化しなかった。これらの結果は、MRIで検出可能な灌流欠乏はSDRTの腫瘍生物学のバイオマー化として機能しうることを提唱している。
これらの発見をより多くの線量を含むように拡大できよう。前記は、腫瘍の微小血管の血管収縮を誘発する最少及び最大SDRT線量の確立を可能にするであろう。
【0082】
[実施例16]
ASMase活性の増加は24Gy SDRTに続いて1-2時間で患者の血清で検出される
最近の研究は、抗脈管形成薬はASMase/セラミド経路の抑制を解除し、SDRTの1-2時間前にデリバーされるときはセラミド媒介内皮アポトーシスを強化できることを示した(Rao et al. Radiotherapy and oncology : journal of the European Society for Therapeutic Radiology and Oncology 111, 88-93,2014))。ここに提示したデータは、SDRTは24Gy後に微小血管の血管収縮をもたらすことを示しているので、SDRT後のASMaseを測定した。
用量及び分割に関するいくつかの案を脊椎への骨転移の臨床処置で用いる。共通レジメンは16-24Gyの単回照射及び低分割化レジメン(例えば9Gyx3分割)を含む。局所腫瘍制御に関して、あるレジメンが別のレジメンより優れているか否かは不明である。この問題は、組織学的に任意の固形腫瘍の骨転移を有する患者で局所制御を主要な目標として、24Gyx1分割と9Gyx3分割を比較する進行中の多拠点任意抽出試験(NCT01223248)の焦点である。ネステッドバイオマーカー試験に同意したこの試験の患者のある部分集団で、血清サンプルを照射処置前並びに照射処置後1時間及び24時間で収集した。9Gyx3部分のためには、最初の9Gy照射線量の後で血清を収集した。この戦略は、ASMase/セラミド経路の活性化のために線量閾値が存在するという、前臨床で立ち上げられた仮説を直接試験することを可能にした。バイオマーカーサブ試験に集まった18人の患者で、10人を24Gyコホートに集め、8人を9Gyx3コホートに集めた(
図10C)。仮説のように、24Gyの後で血清ASMase活性の上昇があったが、9Gyの後では変化はなかった(
図10A、10B)。24Gyグループの10人の患者のうち7人がASMase活性の増加を示した(1.2から1.5倍増加、
図10A)。上昇は24時間の時点で最も突出し一貫していたが(
図10B)、それにもかかわらず平均値はSDRTの1時間後及び24時間後の両方で上昇し、MCa/129ネズミ線維肉腫モデルの我々の観察と一致した。
【0083】
誘発された血清ASMase活性増加が、全累積照射線量が24Gyの範囲の特定の閾値に達した後で生じた可能性を調べるするために、我々は、9Gyの3回目の照射(27Gyの累積線量)の1及び24時間後に5人の患者のサンプルでASMase活性レベルを調べた。9Gyの3回目照射後の1時間(平均1.04±0.06倍差)又は24時間(平均1.02±0.07倍差)で、ベースラインを超える有意なASMase血清変化は観察されなかった。これらの試験は、ASMaseの循環中への急激な放出は患者でSDRTの生物学的影響のバイオマーカーとなりうるという仮説を強力に支持する。
したがって、ASMase活性の測定は、SDRT臨床応答のバイオマーカーとしてIVIM DW-MRIの代替物を構成しうる。
【0084】
[実施例17]
微小血管の血管収縮は動物モデルでASMaseシグナリングを活性化する化学療法剤の投与直後に生じる
放射線療法によるASMase/セラミド経路の活性化は血管収縮を媒介するという実施例14に記載の結果を基にして、さらに実施例14の結果を条件にすれば、血管収縮及びその後の灌流欠乏はまた、同じ経路を活性化する化学療法剤の投与に続いて生じると想定される。このことを確認するために、血管機能障害を実施例14に記載した灌流透過性の測定によって査定した。
簡単に記せば、MCA/129線維肉腫腫瘍をマウスの後部臀部に移植し、腫瘍が150-300mm
3のサイズに達したときボクセル内非干渉性運動(IVIM)MRIに付した。ゲムシタビン(240mg/kg)の腹腔内注射後に、血管分布(Fp、
図14A)及び拡散(D
*、
図14B)の両方が1時間にわたって再現可能な態様で減少し、血管分布及び拡散減少のピークは、ゲムシタビン処理後15から30分の間に観察された(p<0.05、ボンフェローニの修正を適用)。データ(平均±SEM)は1グループに付き6匹の動物の照合である。
ゲムシタビンはまた培養内皮細胞でASMaseを活性化させた。ウシ大動脈内皮細胞にゲムシタビン(100nM)を添加した後のASMase活性のタイムコースを調べるために実験を行った。
図14Cに示すように、ゲムシタビンは急激な細胞性ASMaseの活性化を引き起こした。さらにまた、
図14Dで明らかなようにASMase活性化は用量依存態様で生じた(
図14Dは5分の時点のASMase活性化の用量応答曲線を表す)。ASMase活性は全細胞溶解物で決定した。データ(平均±SEM)は3つの別々の実験の照合である。
図14Dに示すようにASMase活性化は用量依存態様で生じるという事実は重要である。なぜならば、当該事実は、ASMase媒介化学感作を最高に利用するためにはより高用量の化学療法薬を必要とする可能性があることを示唆するからである。必要かつ実現可能な最適用量を決定するために更なる試験が必要である。
【0085】
[実施例18]
asmase
-/-
動物でASMaseシグナリングを活性化する化学療法剤の投与直後の血管収縮の確立
微小血管の血管収縮は化学療法剤の投与直後に生じるという発見(
図14A及び14B)が与えられたとすれば、以下の試験は
asmase
-/-動物を用いる別の動物モデルでのASMaseシグナリングの役割を立証するであろう。
MCA/129線維肉腫及びB16メラノーマ腫瘍モデルを
asmase
+/+又は
asmase
-/-動物で作り出し、続いてASMase/セラミドシグナリングを活性化する多様な化学療法剤(例えばパクリタキセル、エトポシド及び/又はゲムシタビン)のX(例えば1、2、3)用量による処置を実施した。化学療法剤のボーラス注射直前及び注射後0.5-24時間内の時間間隔で、腫瘍組織の血液灌流/透過性を決定した。
asmase
+/+動物(
asmase
-/-動物ではない)に移植された腫瘍の化学療法剤投与後の灌流減少は、ASMase-セラミド経路の活性化は微小血管の血管収縮-機能障害を媒介し、したがって治療剤の直接的細胞毒性作用から腫瘍が回復する能力を妨害することを立証するであろう。
MRI検出に加えて、化学療法誘発灌流欠乏は、ヘキスト染料管外遊出を用いて特徴づけられるであろう(Chaplin et al. Cancer Research, 47, 597-601, 1987)。簡単に記せば、MCA/129線維肉腫及びB16メラノーマを有する
asmase
+/+又は
asmase
-/-マウスにヘキスト33342を尾静脈から注射し、続いて化学療法で処置する。腫瘍切片の平均蛍光が腫瘍毛細管灌流の測定として用いられるであろう。測定は化学療法処置後の多様な時点で実施されるであろう。
血管灌流は第三の技術を用いて決定されるであろう。当該技術では、電子常磁性共鳴(EPR)分光O
2レベルはin vivo腫瘍の直接的画像化によって定量される(Epel et a. Concepts in magnetic resonance. Part B, Magnetic resonance engineering 33B, 163-176, 2008)。
総合すれば、これらの試験は、化学療法のタイミング及び投薬量並びに対応する血管収縮とともにこのプロセスにおけるASMase-セラミド経路の関与に関する詳細な情報を提供するであろう。これらの実験は、この経路が、(ASMase、スフィンゴ脂質又はセラミドの直接的又は間接的測定(又はその派生術)により)化学療法の有効性の重要なバイオマーカーを提供するであろうということを立証すると期待される。
【0086】
[実施例19]
IVIM拡散強調MRIが化学療法直後の腫瘍血管機能障害を定量的に査定し、さらに腫瘍応答予測のためのバイオマーカーとして役立てることができるか否かを試験する
実施例7に提示した臨床試験データは、患者の腫瘍応答を改善するために、抗脈管形成剤の投与とASMase-セラミド経路を活性化する化学療法剤の投与のタイミングの重要性を強調する。本明細書に開示するように、抗脈管形成剤の投与は時間調整してASMase-セラミド経路の活性化を生じるようにしなければならない。内皮細胞アポトーシスを媒介するということに加えて、ASMaseシグナリング、セラミドシグナリング経路は、急性血管障害を支配して再灌流を伴う腫瘍灌流の急激な減少をもたらしうるという仮説が立てられる。この仮説は、実施例17及び18で上述したようにまず初めに動物モデルで試験された。次に、時間調整を実施した抗脈管形成剤と化学療法の処置に続く血管の機能障害の発生が患者で精査されるであろう。
血管の機能障害は、ダイナミックIVIM拡散強調磁気共鳴画像化(IVIM DW-MRI)を用いて査定されるであろう。生物学的組織では、標準的なDW-MRIによって検出される微視的運動には以下が含まれる:(i)組織の構造的成分によって影響を受ける、水分子の拡散、及び(ii)毛細管ネットワークにおける血液の微小循環(灌流)。高い細胞密度を特徴とする組織(例えば腫瘍)では、水分子の運動は通常の組織よりも制約される。IVIM DW-MRIの重要な利点の1つは、前記は、静脈内造影剤を必要とすることなく、数分毎に灌流及び拡散関連代用物測定基準の“ダイナミックな”測定を繰り返すことを可能にするということである。標準的なDW-MRIは、典型的にはシングルショットスピンエコー・エコープラナー画像化(SE-EPI)を用いて実施されるが、これらの試験では改変方法が用いられるであろう。以下を可能にする技術が適用されるであろう:(i)多数の連続する2Dスライスの入手、(ii)多数のb-値、及び(iii)データセンサーシップ及びオフ-ライン平均。IVIMパラメータは短時間(45-60分)にわたって何度も測定できるので、IVIM DW-MRIを用いて、化学療法投与後の腫瘍の血管障害の詳細な動態を得ることができる。他の選択肢(例えばダイナミックコントラスト強化(DCE)-MRI又は15O-PET)もまた組織の血管分布の査定に用いることは可能であるが、これらの方法は、本提唱試験の目的には適切ではない。なぜならば、それらは再注射を実施して血管分布の経時的な変化を連続的にモニターすることはできないからである。
【0087】
MSKCCで骨又は軟組織への転移性症状のために処置された患者がこの試験に参加するであろう。以下の組み入れ基準が用いられるであろう:(i)転移性症状の組織学的立証;(ii)化学療法処置に臨床的に適切とみなされる患者;(iii)余命が6カ月を超える;(iv)年齢が18歳を超える。排除規準は以下のとおりである:(i)インフォームドコンセント提供不能;(ii)プロトコル順守不能;(iii)MRI禁忌;(iv)内臓器官、脳又は脊椎を含む腫瘍;(v)血小板数<75,000/μL、HgBレベル<9g/dL、WBC<3500/μL;(vi)上部胸椎転移(心臓運動によるMRI人工産物の回避のため);(vii)病巣<1.5cm(厳しい測定を担保するため)。従来、骨及び軟組織転移を有する患者は静脈内ゲムシタビンを90分かけて投与される。
IVIM DW-MRIは、ゲムシタビン(900mg/m2)又はドセタキセル(75mg/m2)の静脈内投与に続いて16回繰り返されるであろう。画像は、化学療法処置の後で種々の時点(60、90、120及び150分を含む)で入手されるであろう。
灌流割合、偽拡散係数、及び拡散係数は、双指数関数シグナル減衰モデルを用い、さらに血液及び組織のT1及びT2緩和時間の相違を説明する修正をそれぞれ取り込みながら各病巣について計算されるであろう(Lemke et al. Magnetic resonance in medicine: official journal of the Society of Magnetic Resonance in Medicine, 64, 1580-1585, 2010)。各薬品(ゲムシタビン及びドセタキセル)カテゴリーの患者について、処置後測定(処置前の値の割合として表される)が要約され、最下点値/時点が時系列プロットを用いて決定されるであろう。いずれかの特定時点の測定が1よりも有意に低いか否かを試験するために、1サンプル片側t検定が用いられるであろう。ある時点の測定が別の時点のものより有意に低いか否かを試験するために(最下点の統計的確認のために適用できる)、片側ペアワイズt検定が用いられるであろう。
化学療法誘発血管損傷の動態についてもたらされた詳細な理解を用いて、抗脈管形成剤と化学療法の用量及びタイミングの最適化に用いられる画像化バイオマーカーを開発できるであろう。IVIMパラメータのf及びD*(それぞれ血液体積割合及び毛細血管内の血液の微小循環灌流を表す)は、化学療法の後で変化するであろう。変化値は以下の範囲に収まると期待される:1)血液体積割合(f)の30-50%減少(例えば40%);及び2)毛細血管内の血液の微小循環灌流(D*)の15-35%減少(例えば25%)。
【0088】
[実施例20]
化学療法直後のASMase活性及びセラミド種の量がバイオマーカーとして機能し、さらに化学療法に対する腫瘍応答を予測できるか否かを試験する
本明細書に開示する発見は、ASMaseシグナリングの活性化は、アポトーシス促進C16:0及びC18:0セラミドの生成と同様に、ASMase/セラミド感作抗脈管形成剤と併用される化学療法のスケジュール及び用量最適化のために用いることができるバイオマーカーとして機能しうることを提唱する。ASMaseの分泌形(多様な化学療法剤に応答して遊離される)はヒトの血清で検出できる。ASMaseに加えて、C16:0又はC18:0セラミドもまたヒト血清を用いる質量分析法(MS)によって測定できる。
発明者らは既に照射後の血清セラミドレベルに関する動物試験を実施している。MCA129線維肉腫腫瘍の同種移植片(腫瘍サイズ約150mm
3)を27Gy IRで処理した。マウスは照射前24時間(0h)及び照射後24時間(24h)に採血し、MS分析のために血清を採集した。
図8に示すように、C16:0及びC18:0セラミド種は照射に応答して上昇した。対照的に、抗アポトーシスセラミドC24:0の血清レベルは照射後も無変化のままであった。
照射に応答したASMase活性増加と化学療法に応答したASMase活性増加との間に類似性があるとしたら、アポトーシス促進C16:0及びC18:0セラミドレベルの両方が動物及び/又は患者の血清で化学療法剤の処置後に増加するであろうと予想される。
ASMase/セラミド経路が臨床環境でバイオマーカーとして機能しうることを立証するために、実施例9に記載したIVIM DW-MRI試験を受けている患者の血清サンプルが化学療法処置1時間前及び処置後24時間に収集されるであろう。
この試験に登録された各患者の全血8-10mLがガラスの抗凝固剤フリーチューブに収集され、20-30分間凝固させられるであろう。サンプルの遠心分離後(1200g)、血清上清はN
2ガス下で5x500μL及び5x50μLアリコットとして保存されるであろう。ASMase活性は、C
14標識スフィンゴミエリンを基質として用い10μLの血清で査定されるであろう。ASMase媒介スフィンゴミエリン加水分解はC
14標識ホスホコリンの遊離をもたらすであろう(前記ホスホコリンは水相に抽出してシンチレーション計測によって定量できる)。さらにまた、セラミドMSを実施して、アポトーシス促進(C16:0及びC18:0)及び抗アポトーシスセラミド種(C24:0)の両方が査定されるであろう。
化学療法剤は、ASMaseレベル及び/又は活性の統計的に有意な増加を引き起こすであろうと予想される。同様に、アポトーシス促進セラミドレベル(C16:0及びC18:0)は化学療法に続いて統計的に有意な増加を示すと期待される。
【0089】
[実施例21]
最適な化学感作強化のための短期作用抗脈管形成剤の用量上昇臨床試験
フェースIBが標準的3+3様式で実施されるであろう。したがって、当該試験に加えられる最初の3人の患者は下記の表に提供されるように用量レベル1で処置されるであろう。患者は、用量制限毒性とともに、ASMase活性、腫瘍血管分布に対する抗脈管形成剤の急性作用(例えばIVIM DW-MRIによって測定される)及びもちろん腫瘍応答(例えば造影剤を用いる通常のMRIによって測定される)についてモニターされるであろう。ASMaseレベルは、Raoら(Radiotherapy and oncology : journal of the European Society for Therapeutic Radiology and Oncology 111, 88-93,2014)にしたがって基質として[14C]スフィンゴミエリンを用いる標準化放射性酵素アッセイによって、また別には、例えば以下に記載されたように(Merrill, A.H., Jr. (2011). Chem. Rev. 111, 6387-642)セラミド種の測定によって測定される。この臨床試験は一般的には以下の論文に基づくであろう:Rugo, H.S. et al, J. Clin. Oncol, 23(24): August 20, 2005。
これらの患者のいずれも最初の3サイクルの処置の後で用量制限毒性(DLT)を示さなければ、AAAの用量はレベル2に増加されるであろう。3人の患者のうち2人がDLTを示す場合、この用量レベルを減少させて3人の新たな患者が用量レベル-1に加えられるであろう。3人の患者のうち1人が用量レベル1で毒性を示す場合、さらに別の3人の患者がこのレベルに加えられるであろう。用量レベル1で<2/6の患者が用量制限毒性(DLT)を示す場合、この用量は下記に記載するように用量レベル2に上昇させられるであろう。2/6の患者が用量レベル1でDLTを示す場合、この用量レベルを減少させ、3人の患者が用量レベル-1に加えられるであろう。用量レベル-1で0/3の患者がDLTを示す場合、このレベルはMTDとみなされよう。1/3の患者がDLTを示す場合、この用量レベルは合計6人の患者に拡大されるであろう。<3/6の患者がこのレベルでDLTを示す場合、前記用量はMTDとみなされるであろう。>2の患者が用量レベル-1でDLTを有する場合、この処置の併用は実現不能とみなされ、当該併用の更なる開発は停止されるであろう。逆に、用量レベル2で最初の3人の患者でDLTが存在しない場合(又は6人の患者のうち<2人がDLTの場合)、この用量は用量レベル3に増加させられるであろう。毒性がこの用量2で処置された最初の6人の患者の>2人で認められる場合、用量レベル1はMTDとみなされるであろう。用量レベル2で処置された患者の0/3又は<2/6がDLTを有する場合、この用量はMTDとみなされるであろう。同時に、ASMase増加がモニターされるであろう。用量は、最大ASMase活性レベルがAAA投与直後に達成されるまで上昇され続けるが、ただしもちろんDLTに達しないことを条件とする。
【0090】
ASMase測定の目的は、どのように抗脈管形成剤を追加すればASMaseレベルの漸増増加(又はセラミド種レベルの漸増増加)が生じるか否かを査定することであろう。より高用量のAAAでASMase追加が発現されなければ、たとえDLTに達しなくてもAAAを増加させる理由は存在しない。最大ASMase増加の用量よりも低い用量でDLTに達する場合、DLTによって示される用量が採用されることを期待できる。
AAAに対する応答を査定するために、すなわち各サイクルの化学療法がASMase抑制解除間隔又はウインドウの間に投与されることを確認し、さらに前のサイクルのAAAがAAA(及び化学療法)の別の用量の投与の前に減衰していることを確認して化学療法剤の投与を担保するために、ASMase測定は実施され続けるであろう。
加えられた患者の各々は、最初の化学療法処置の1時間前及び処置の24時間後に血清サンプルを収集されるであろう。各患者について、全血の8-10mLがガラスの抗凝固剤フリーチューブに収集され、20-30分間凝固させられるであろう。血液は1200gで遠心分離され、血清上清はN2ガス下で5x500μL及び5x50μLアリコットとして保存されるであろう。ASMase活性アッセイは、C14標識スフィンゴミエリンを基質として用い10μLの血清により実施されるであろう。ASMaseはスフィンゴミエリンを加水分解してC14標識ホスホコリンを遊離させ、前記ホスホコリンは水相に抽出されてシンチレーション計測によって定量できる。さらにまた、セラミド質量分析(MS)は既に確立されたプロトコル(Merrill, A.H., Jr. (2011). Chem. Rev. 111, 6387-6422)を用いて実施され、アポトーシス促進(C16:0及びC18:0)及び抗アポトーシスセラミド種(C24:0)が査定されるであろう。
同様に、IVIM DW-MRI(前記は、静脈内造影剤を必要とすることなく、数分毎に灌流及び拡散関連代用物測定基準の“ダイナミックな”測定を繰り返すことを可能にする)の目的は、AAA及び化学療法の投与時の腫瘍血管の機能障害を直ちに査定することである。SDRTの予備的データに基づけば、血管体積割合及び血管流はAAA及びSDRT併用処置後減少する。同様な結果は、本開示にしたがって化学療法後の時間調整AAA投与に続いて得られるであろうということは予想される。例えば以下を参照されたい:Bisdas, S. et al. Correlative assessment of tumor microcirculation using contrast-enhanced perfusion MRI and intravoxel incoherent motion diffusion-weighted MRI: is there a link between them? NMR in Biomedicine 27, 1184-1191, doi:10.1002/nbm.3172, 2014。
【0091】
毛細血管内の血液の微小循環灌流は特定の向きをもたず、“偽拡散”(前記は流れる血液の速度及び血管構造物に左右される)と考えることができる。IVIMアプローチは、測定されるMRシグナル減弱は組織の灌流及び組織の拡散率の混合を含むと考える。これらの作用は、単一指数関数減衰の代わりに双指数関数を用いてb-値の関数としてMRシグナル減衰のモデルを得ることによって特徴づけられる。全腫瘍に対するIVIM画像の獲得は2-3分を要し、組織水の拡散率(D)、組織の灌流(偽灌流係数-D*)、及び血管体積割合(f)を示す定量的指標の計算を可能にする。非侵襲的に“灌流”(IVIMパラメータD*及びf)を定量するIVIMの能力は、急激な化学療法誘発(又は併用AAA誘発及び化学療法誘発)血管機能障害の検出の概念の中枢である。
、AAAに対する応答を査定するために、すなわち各サイクルの化学療法がASMase抑制解除間隔又はウインドウの間に投与されることを確認し、さらに前のサイクルのAAAがAAA(及び化学療法)の別の用量の投与の前に減衰していることを確認して化学療法剤の投与を担保するために、IVIM DW-MRIはベースライン及び多様な時点で入手されるであろう。
用量制限毒性(DLT)は以下の発生と定義される:グレード4の血液学的毒性、グレード3又は4の非血液学的毒性(下痢(抗下痢予防剤又はグルココルチコイドの使用にかかわらない)又は吐き気及び嘔吐(最大の抗嘔吐剤の使用にかかわらない)を含む)。
【0092】
【0093】
本明細書に記載した材料、方法及び測定は制限的ではなく、当業界で公知の代替技術を用いて同じ査定を実施することができる。同様、使用されるAAA及び化学療法剤の量は制限的ではなく、当業者により又は本明細書に開示するバイオマーカーによって示されるように調整に付すことが可能である。全ての引用文献は参照によりその全体が本明細書に含まれる。