(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-27
(45)【発行日】2022-05-11
(54)【発明の名称】ベリリウムを含有する物品の付加製造
(51)【国際特許分類】
C22C 1/04 20060101AFI20220428BHJP
B22F 1/17 20220101ALI20220428BHJP
B22F 3/16 20060101ALI20220428BHJP
B22F 3/24 20060101ALI20220428BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20220428BHJP
B33Y 40/00 20200101ALI20220428BHJP
C22C 25/00 20060101ALI20220428BHJP
B22F 3/105 20060101ALN20220428BHJP
【FI】
C22C1/04 E
B22F1/17
B22F3/16
B22F3/24 C
B33Y10/00
B33Y40/00
C22C25/00
B22F3/105
(21)【出願番号】P 2017530250
(86)(22)【出願日】2015-12-10
(86)【国際出願番号】 US2015065069
(87)【国際公開番号】W WO2016094704
(87)【国際公開日】2016-06-16
【審査請求日】2018-10-23
【審判番号】
【審判請求日】2020-11-09
(32)【優先日】2014-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508348680
【氏名又は名称】マテリオン コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100196597
【氏名又は名称】横田 晃一
(72)【発明者】
【氏名】ユルコ, ジェイムズ アンドリュー
【合議体】
【審判長】平塚 政宏
【審判官】池渕 立
【審判官】祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-536694(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F1/00-8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を作製する方法であって、
複数の層を堆積し、3次元予備成形物を形成することであって、前記複数の層は、付加製造システムを使用して、ベリリウム粉末および結着剤を含むベリリウム含有組成物から形成される、ことと、
前記3次元予備成形物を焼結し、焼結された予備成形物を形成し、前記結着剤を
バーンオフさせることと、
前記焼結された予備成形物
に少なくとも1つの金属
を浸潤させ、前記物品を形成することと
を含む、方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの金属は、アルミニウム、マグネシウム、およびリチウムから成る群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記結着剤は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、コロジオン、およびケイ酸塩から成る群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ベリリウム含有組成物は、0.1重量%~99.9重量%の前記結着剤と、0.1重量%~99.9重量%の前記ベリリウム粉末を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
物品を作製する方法であって、
複数の層を堆積し、3次元予備成形物を形成することと、
前記3次元予備成形物を焼結し、焼結された予備成形物を形成することと、
前記焼結された予備成形物
に少なくとも1つの金属
を浸潤させ、前記物品を形成することと
を含み、前記複数の層の少なくとも1つの層は、付加製造システムを使用して、ベリリウム粉末を含むベリリウム含有組成物から形成され、
前記ベリリウム粉末は、ニッケルでコーティングされたベリリウム粒子を含む、方法。
【請求項6】
前記ベリリウム粉末は、92重量%~100重量%未満のベリリウムと、ゼロ重量%超~8重量%のニッケルとを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記物品は、0~5重量%のニッケルと、58~65重量%のベリリウムと、30~42重量%のアルミニウムとを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記堆積することは、室温で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記3次元予備成形物の焼結に先立って、前記3次元予備成形物を硬化させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
焼結に先立って、かつ硬化後、望ましくない材料を除去することをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記物品を焼鈍することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記焼鈍された物品を仕上げることをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記仕上げることは、研磨およびめっきから成る群から選択された少なくとも1つの作用を含む、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2014年12月12日に出願された米国仮特許出願第62/091,060号に対する優先権を主張するものである。該仮特許出願の全体は、参照により本明細書中に完全に援用される。
【0002】
本開示は、付加製造技法を使用して、ベリリウム含有組成物から製品を製造するためのシステムおよび方法に関する。これは、ベリリウムおよびその合金を含む複雑な軽量かつ剛性の部品が、他のプロセスと比較して安価に作製されることを可能にし、また、そのような部品の高速構築を可能にする。
【背景技術】
【0003】
付加製造(AM)は、デジタルモデルから、直接、プロトタイプ部品、最終用途部品、およびツールを高速かつ柔軟に生産するための新しい生産技法である。AMは、デジタルモデルから、事実上任意の形状の3次元(3D)中実物体を作製する。概して、これは、コンピュータ支援設計(CAD)モデル化ソフトウェアを用いて、所望の中実物体のデジタル青写真を生成し、次いで、その仮想青写真を非常に小さいデジタル断面/層にスライスすることによって達成される。各層は、土台またはプラットフォームの表面にわたって拡散された粉末の薄い分布から始まる。粉末は、物体が形成されるべき場所で選択的に継合される。土台/プラットフォームを構築ボックス内に支持するピストンが、次の粉末層が、拡散され、選択的に継合され得るように降下する。本順次層化プロセスは、AM機械(3次元プリンタ等)内で繰り返され、所望の部品を構築する。熱処理に続いて、非結着粉末は、除去され、半加工部品を残す。
【0004】
AMは、設計から商業用製品へのプロトタイプ化までの時間を大幅に短縮することを含む、多くの利点を有する。実証用ユニットおよび部品は、迅速に生産されることができる。部品は、任意の幾何学形状から、かつ概して、セラミック、金属、ポリマー、および複合材を含む、任意の材料から生成されることができる。局所制御は、材料組成物、微小構造、および表面テクスチャに対して行われることができる。設計変更の実施も、可能性として考えられる。複数の部品が、単一アセンブリ内で構築されることができる。複雑な潜在的に1度限りのダイまたはツールが、プロトタイプが生産され得るまでに作製される必要はない。最小限のエネルギーが、これらの3D中実物体を作製するために必要とされる。また、廃棄物および未加工材料の量を減少させる。AMはまた、非常に複雑な幾何学的部品の生産も促進する。支持材料が、張り出し、アンダーカット、および内部容積を生成するために使用されることができる。AMはまた、部品が、需要に応じて、かつ現場で迅速に作製されることができるため、業務用の部品在庫を低減させる。
【0005】
2つの従来のAM方法として、電子ビーム溶融およびレーザ焼結が挙げられる。電子ビーム溶融では、金属粉末の堆積後、遊離金属粉末断面は、電子ビームによって溶融または融合される。レーザ焼結では、レーザビームが、疎充塞された金属粉末断面の面積を焼結するために使用される。用語「焼結」は、微粒子が、外部から印加されるエネルギーに起因して、中実質量に接着するプロセスを指す。レーザ焼結はまた、所与の断面と真下のすでに焼結された断面を融合させるであろう。レーザビームが当てられていない金属粉末は、遊離したままであって、AM機械から除去されるときに、完成部品から落下する。代替として、完成部品は、真空化して、または圧縮空気等の流体を使用して、完成部品を洗浄し、任意の遊離粉末を取り除くことによって、粉末が除去されることもできる。後続仕上げステップもまた、部品に適用され、所望の特性をもたらしてもよい。そのようなステップとして、限定ではないが、さらなる硬化、焼結、浸潤、焼鈍、および最終表面仕上げが挙げられる。
【0006】
第3のAM方法として、結着剤噴射が挙げられる。結着剤噴射では、金属粉末の堆積後、液体結着薬剤が、選択的に堆積され、粉末粒子をともに結着する。完成部品は、粉末および結着剤の層化を通してもたらされる。結着剤噴射は、未加工完成部品をもたらし得る。用語「未加工部品」は、他の製造技法を用いてさらに処理されるように生産される、物品または予備成形物を指す。例えば、金属未加工部品は、オーブン内で焼結し、少なくとも1つの金属を浸潤させることによって、さらに処理される。浸潤は、焼結された予備成形物内の空隙を充填する。
【0007】
ベリリウムは、非常に望ましい特性を伴う金属である。これらは、高剛性(ヤング係数=287GPa)、低密度(1.85g/cc)、高弾性率(130GPa)、高比熱(1925J/kg・K)、高熱伝導性(216W/m・K)、および低線形熱膨張係数(11.4×106/°K)を含む。その結果、ベリリウムおよびその複合材は、航空用および宇宙用構造、高性能機関および制動装置、ならびに熱性能および振動減衰性のための電子構成要素において有用である。ベリリウムおよびその複合材はまた、燃焼用途、超音速飛行体、および核エネルギー成長用途においても有用である。
【0008】
加えて、ベリリウムおよびベリリウム金属間化合物から作製される物品は、連続使用のための高比弾性率およびより高い温度範囲を含む、チタンおよびチタン合金等の他の金属に優る多くの利点を有する。
【0009】
しかしながら、ベリリウムの他の特性は、AM技法を使用してベリリウムから部品および構造を作製することを困難にする。ベリリウムは、容易に酸化し、炭素、窒素、および他の材料と反応する。その溶融状態では、ベリリウムはまた、高速粒子成長を受ける。加えて、そのような材料は、典型的には、部分的に、その複雑な結晶構造に起因して、室温では脆弱である。その結果、電子ビーム溶融およびレーザ焼結のような金属粉末の局所溶融を要求するAM技法は、ベリリウムに容易に適用されることができない。ベリリウム含有組成物に適用され得る、付加製造技法を提供することが望ましいであろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示は、付加製造(AM)技法を介して、ベリリウムから物品を作製する方法に関する。物品は、ベリリウムおよび/またはアルミニウムもしくはマグネシウム等の少なくとも1つの金属を含むその合金から作製される。
【0011】
種々の実施形態に開示されるのは、複数の層を堆積し、3次元予備成形物を形成するステップと、予備成形物を焼結し、焼結された予備成形物を形成するステップと、焼結された予備成形物に少なくとも1つの浸潤金属を浸潤させ、物品を形成するステップとを含む、物品を作製する方法である。複数の層の少なくとも1つの層は、ベリリウム粉末を含有する、ベリリウム含有組成物から形成される。浸潤金属は、アルミニウムおよびマグネシウムから選択されることができる。
【0012】
ベリリウム含有組成物はさらに、結着剤を含んでもよい。いくつかの実施形態では、結着剤は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、コロジオン、またはケイ酸塩から選択される。ベリリウム含有組成物は、0.1~99.9重量%の結着剤と、0.1~99.9重量%のベリリウム粉末とを含んでもよい。
【0013】
いくつかの実施形態では、ベリリウム粉末は、ニッケルでコーティングされたベリリウム粒子を含む。ベリリウム粉末は、約92重量%~100重量%未満のベリリウムと、ゼロ重量%超~約8重量%のニッケルとを含んでもよい。
【0014】
いくつかの実施形態では、物品は、0~約5重量%のニッケルと、約58~約65重量%のベリリウムと、約30~約42重量%のアルミニウムとを含む。
【0015】
堆積するステップは、ほぼ室温で行われてもよい。
【0016】
いくつかの実施形態では、本方法はさらに、予備成形物の焼結に先立って、複数の層を硬化させるステップを含む。本方法はさらに、焼結に先立って、かつ硬化後、遊離粉末を除去するステップを含むことができる。
【0017】
時として、物品は、焼鈍される。焼鈍された物品は、例えば、研磨またはめっきによって仕上げられることができる。
【0018】
また、開示されるのは、本明細書に記載の方法によって形成される物品である。概して、これらの物品は、ベリリウムとアルミニウムまたはマグネシウム等の少なくとも1つの他の金属の合金から形成される。物品は、約1.5g/cc~約2.5g/ccの密度、25℃で約5ppm/℃~約25ppm/℃の熱膨張係数、約100GPa~約300GPaの弾性率、約150MPa~約900MPaの降伏強度、および/または約170MPa~約1000MPaの極限引張強度の特性の任意の組み合わせを有し得る。
【0019】
これらおよび他の非限定的特性は、以下により具体的に説明される。
本発明は、例えば、以下を提供する。
(項目1)
物品を作製する方法であって、
複数の層を堆積し、3次元予備成形物を形成するステップと、
前記予備成形物を焼結し、焼結された予備成形物を形成するステップと、
前記焼結された予備成形物を少なくとも1つの金属に浸潤させ、前記物品を形成するステップと、
を含み、前記複数の層の少なくとも1つの層は、ベリリウム粉末を含むベリリウム含有組成物から形成される、方法。
(項目2)
前記少なくとも1つの金属は、アルミニウム、マグネシウム、およびリチウムから成る群から選択される、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記ベリリウム含有組成物はさらに、結着剤を含む、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記結着剤は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、コロジオン、およびケイ酸塩から成る群から選択される、項目3に記載の方法。
(項目5)
前記ベリリウム含有組成物は、0.1重量%~99.9重量%の前記結着剤と、0.1重量%~99.9重量%の前記ベリリウム粉末を含む、項目3に記載の方法。
(項目6)
前記ベリリウム粉末は、ニッケルでコーティングされたベリリウム粒子を含む、項目1に記載の方法。
(項目7)
前記ベリリウム粉末は、約92重量%~100重量%未満のベリリウムと、ゼロ重量%超~約8重量%のニッケルとを含む、項目6に記載の方法。
(項目8)
前記物品は、0~約5重量%のニッケルと、約58~約65重量%のベリリウムと、約30~約42重量%のアルミニウムとを含む、項目1に記載の方法。
(項目9)
前記堆積するステップは、ほぼ室温で行われる、項目1に記載の方法。
(項目10)
前記予備成形物の焼結に先立って、前記複数の層を硬化させるステップをさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目11)
焼結に先立って、かつ硬化後、望ましくない材料を除去するステップをさらに含む、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記物品を焼鈍するステップをさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目13)
前記焼鈍された物品を仕上げるステップをさらに含む、項目12に記載の方法。
(項目14)
前記仕上げるステップは、研磨およびめっきから成る群から選択された少なくとも1つの作用を含む、項目13に記載の方法。
(項目15)
項目1-14のいずれかに記載の方法によって形成される、物品。
(項目16)
約1.5g/cc~約2.5g/ccの密度を有する、項目15に記載の物品。
(項目17)
25℃で約5ppm/℃~約25ppm/℃の熱膨張係数を有する、項目15に記載の物品。
(項目18)
約100GPa~約300GPaの弾性率を有する、項目15に記載の物品。
(項目19)
約150~約900MPaの降伏強度を有する、項目15に記載の物品。
(項目20)
約170MPa~約1000MPaの極限引張強度を有する、項目15に記載の物品。
【図面の簡単な説明】
【0020】
以下は、図面の簡単な説明であって、本明細書に開示される例示的実施形態を図示する目的のために提示されるものであって、それを限定する目的のためのものではない。
【0021】
【
図1】
図1は、本開示による物品を作製する方法の例示的実施形態を図示する、フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本開示は、その中に含まれる所望の実施形態および実施例の以下の発明を実施するための形態を参照することによって、より容易に理解され得る。以下の明細書および続く請求項では、以下の意味を有するものと定義される、いくつかの用語を参照する。
【0023】
別様に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術および科学用語は、当業者によって一般に理解されるものと同一意味を有する。矛盾する場合、定義を含む本書が、優先されるものとする。好ましい方法および材料が、以下に説明されるが、本明細書に説明されるものと類似または均等物の方法および材料も、本開示の実践または試験において使用されることができる。本明細書に記載の全ての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、参照することによってその全体として組み込まれる。本明細書に開示される材料、方法、および実施例は、例証にすぎず、限定として意図されるものではない。
【0024】
単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈によって明確に別様に示されない限り、複数参照も含む。
【0025】
明細書および請求項で使用されるように、用語「comprising(備える)」は、実施形態「consisting of(から成る)」および「consisting esssentially of(から本質的に成る)」を含み得る。用語「comprisse(備える)」、「include(含む)」、「having(有する)」、「has(有する)」、「can(できる)」、「contain(含有する)」、およびその変形は、本明細書で使用されるように、非限定遷移句として意図され、挙げられた原料/ステップの存在を要求し、かつ他の原料/ステップの存在も可能にする。しかしながら、そのような説明は、そこから生じ得る任意の不純物とともに、挙げられた原料/ステップのみの存在を可能にし、他の原料/ステップを除外する、列挙された原料/ステップ「consisting of(から成る)」および「consisting esssentially of(から本質的に成る)」ような組成物またはプロセスもまた説明するものと解釈されるべきである。
【0026】
本願の明細書および請求項における数値は、ポリマーまたはポリマー組成物に関する際、異なる特性の個々のポリマーを含有し得る組成物に関する平均値を反映する。本明細書に開示される数値は、同一の有効桁数まで丸められると同一である、数値と、値を判定するために本願で説明されるタイプの従来の測定技法の実験誤差未満だけ、記載の値と異なる、数値とを含むものと理解されたい。
【0027】
本明細書に開示される全ての範囲は、列挙される終点を含み、かつ独立して組み合わせ可能である(例えば、「2グラム~10グラム」の範囲は、終点である、2グラムおよび10グラムと、全ての中間値とを含む)。本明細書に開示される範囲の終点および任意の値は、精密な範囲または値に限定されず、これらの範囲および/または値に近似する値を含むように十分に不精密なものである。
【0028】
本明細書で使用されるように、近似を表す言語は、それが関連する基本機能に変化をもたらさずに、変動し得る、任意の定量的表現を修飾するために適用され得る。故に、「約」および「実質的に」等の用語または複数の用語によって修飾される値は、ある場合には、規定される精密な値に限定されない場合がある。修飾語「約」はまた、2つの終点の絶対値によって定義される範囲を開示するものと見なされるべきである。例えば、表現「約2~約4」はまた、範囲「2~4」を開示する。用語「約」は、示される数の±10%を指し得る。例えば、「約10%」は、9%~11%の範囲を示し得、「約1」は、0.9~1.1を意味し得る。
【0029】
本明細書の数値範囲の列挙に関して、同一精度を伴うその間の各介在数字も、明示的に検討される。例えば、6~9の範囲に関して、数字7および8も、6および9に加えて検討され、範囲6.0~7.0に関して、数字6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、および7.0も、明示的に検討される。
【0030】
本開示は、あるプロセスステップのための温度を参照し得る。これらは、概して、熱源(例えば、炉、オーブン)が設定される温度を指し、必ずしも、熱に暴露されている材料によって達成されなければならない温度を指すわけではないことに留意されたい。
【0031】
本開示は、付加製造(AM)技法を使用して、ベリリウムから物品を作製する方法に関する。
図1は、本開示による、物品を作製する方法100の一般的ステップを図示する。ステップ110では、第1のベリリウム含有組成物の複数の層が、所定のパターンで堆積され、3次元予備成形物を形成する。随意のステップ120では、複数の層が、硬化され、隣接する層間の凝集を助長し、硬化された予備成形物を形成する。随意のステップ130では、第1の組成物の遊離粒子は、例えば、真空化によって、硬化された予備成形物から除去される。ステップ140では、硬化された予備成形物は、焼結され、焼結された予備成形物を形成する。本焼結された予備成形物は、比較的に多孔性である。次に、浸潤ステップ150において、焼結された予備成形物は、金属で浸潤され、物品を形成する。随意のステップ160では、物品は、焼鈍されることができる。随意のステップ170では、焼鈍された物品は、例えば、研磨またはめっきによって、平滑表面を得るように仕上げられる。
【0032】
ベリリウム含有組成物は、ベリリウム粉末を含む。ベリリウム粒子は、主に、純ベリリウムまたはベリリウム合金から成ってもよい。例示的ベリリウム合金として、Materion CorporationからAlBeMet(登録商標)として市販されている、約35重量%~約65重量%のベリリウムと、約35重量%~約65重量%のアルミニウムとを含有する、二元合金が挙げられる。具体的ベリリウム金属として、S-65グレード(99.2%最小Be含有率、0.9%最大BeO)、S-200(98.5%最小Be含有率)、B-26、I-220(ホットアイソスタチックプレスベリリウム、最小98%Be含有率)、O-30(ホットアイソスタチックプレスベリリウム、最小99%Be含有率、0.5% max BeO)、およびUHP9999(99.99%最小Be含有率)が挙げられ、全て、Materion Corporationから利用可能である。
【0033】
ベリリウム粉末は、約25ミクロン~約70ミクロンを含む、約1ミクロン~約200ミクロンの粒子サイズを有してもよい。粒子サイズは、D50、すなわち、粒子の体積比50%の累積率が達成される直径である。換言すると、粒子の所与の体積の50%が、より小さい直径を有し、粒子の50%が、より大きい直径を有する。
【0034】
いくつかの実施形態では、ベリリウム粉末は、ベリリウム含有組成物内の唯一の成分である。これらの実施形態では、ベリリウム粉末は、コアを成すベリリウムとシェルを成すコーティングとを伴うコアシェル構造を有する、粒子の形態である。シェルは、結着剤(多くの場合、炭素ベース)との酸化または反応を低減/防止するように、ベリリウムを周囲環境から隔離する。いくつかの実施形態では、コーティングは、純ニッケルまたはニッケル合金のいずれかの形態におけるニッケルを含む。コアは、0.1重量%~99.9重量%の粒子、または50重量%~99.9重量%、または約92重量%~100重量%未満の粒子であってもよい。いくつかの実施形態では、コーティングは、0.1重量%~99.9重量%の粒子、または0.1重量%~50重量%、またはゼロ重量%超~約8重量%のニッケルであってもよい。特定の実施形態では、ベリリウム粉末は、約92重量%~100重量%未満のベリリウムと、ゼロ重量%超~約8重量%のニッケルとを含む。概して、コーティングは、完成物品の一部となることが検討される。
【0035】
他の実施形態では、ベリリウム粉末は、ベリリウムを周囲環境から隔離する、好適な結着剤と混合される。結着剤は、本明細書に開示されるベリリウム含有組成物の化学的および物理的特性に基づいて選択されてもよい。結着剤のいくつかの非限定的実施例として、フラン、フェノール、および水性ベースの結着剤が挙げられる。結着剤のさらなる非限定的実施例として、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、コロジオン、またはケイ酸塩が挙げられる。これらの実施形態では、ベリリウム含有組成物は、0.1~99.9重量%のベリリウム粉末を含有する。ベリリウム含有組成物はまた、0.1~99.9重量%の結着剤を含有する。通常、ベリリウム粉末は、ベリリウム含有組成物の大部分(重量比)である。結着剤は、焼結の間、「バーンオフ」され、ベリリウムと反応しないことが検討される。結着剤を含む、これらの実施形態では、ベリリウム粉末は、最終用途に応じて、コーティングされないこともできる、または前述のように、コアシェル構造であることもできる。
【0036】
3次元予備成形物が、次いで、付加製造(AM)システムを使用して、ベリリウム含有組成物から作製される。例示的AMシステムは、構築ボックスと、供給源とを含む、3次元プリンタである。構築ボックスは、構築プラットフォームと、側壁と、ガントリと、少なくとも1つの堆積ヘッド(通常、少なくとも2つ)とを備える。構築プラットフォームは、概して、ベリリウム含有組成物の層が堆積される、平坦表面である。構築プラットフォームは、コンピュータ作動式コントローラから提供される信号に基づいて、ガントリに対して垂直z-軸に沿って移動する。側壁は、構築プラットフォームと協働し、堆積される粉末を含有する、「ボックス」を形成する。概して、側壁は、固定場所に留まり、構築プラットフォームは、下向きに移動し、粉末の次の層が堆積されることを可能にする。
【0037】
ガントリは、望ましくは、コントローラから提供される信号に基づいて、構築ボックスを中心として、水平x-y平面内で堆積ヘッドを移動させるように構成される。水平x-y平面は、x-軸およびy-軸によって画定された平面であって、x-軸、y-軸、およびz-軸は、相互に直交する。他の類似配列もまた、構築プラットフォームおよび堆積ヘッドが相互に対して移動可能であるように使用されてもよい。構築ボックスは、概して、不活性ガスがAMプロセスの間に使用され得るように、筐体によって封入される。
【0038】
堆積ヘッドは、ベリリウム含有組成物を構築プラットフォーム上の規定された場所に堆積させるために使用される。実施形態では、2つのそのような堆積ヘッドが存在することが検討される。一方の堆積ヘッドは、ベリリウム含有組成物を堆積するために使用される。別の堆積ヘッドは、支持材料を堆積するために使用されてもよい。支持材料は、物品の最終所望形状が得られ得るように、ベリリウム含有組成物に支持を提供するために使用される。例えば、支持材料は、下層内に堆積され、下層上に位置する上層内の支持材料の直上に置かれるであろう、覆いかぶさるベリリウムを支持することができる。いったんベリリウム含有組成物が固化されると、支持材料は、例えば、洗浄または真空化されることによって、除去されることができる。例示的支持材料として、鋳物砂およびポリマーが挙げられる。
【0039】
堆積ヘッドは、概して、相互に固定関係に搭載され、ガントリを介して、構築プラットフォームに対して移動する。各堆積ヘッドはまた、その特定のヘッドによって堆積されるべき材料のための供給源に接続される。材料は、ノズルまたはオリフィスを通して、堆積ヘッドを通して堆積される。
【0040】
本開示のAMプロセスでは、ベリリウム含有堆積物の複数の層が、事前設定パターンで堆積される。層毎の事前設定パターンは、組み合わせられた層が所望の物品を形成するように判定される。各層は、ベリリウム含有組成物から形成される。概して、各層は、各層内に、別の層内のベリリウム含有組成物の一部に接触するベリリウム含有組成物のいくつかの部分が存在するように、別の層上またはそれに隣接して堆積される。各層の厚さは、約10マイクロメートル(μm)~約120μmの範囲であることができる。ベリリウム含有組成物の堆積は、概して、室温で行われる。再び、所望に応じて、本堆積は、アルゴン等の不活性貴ガスの存在下でも行われることができる。
【0041】
ベリリウム含有組成物が粉末の形態であるとき、粉末粒子は、比較的に高率で均一に堆積されるはずである。粉末粒子は、より大きい多孔率を有する部品が所望されない限り、好ましくは、比較的に高密度で充塞されることができる。コロイド科学および粉末分散化学の分野において使用される公知の技法が、要求される率および密度におけるそのような粉末の所望の均一堆積を提供するために使用されることができる。ベリリウム含有組成物が結着剤を含有するとき、ベリリウム含有組成物は、加熱され、次いで、溶融モノフィラメントの形態で押出されることができる。
【0042】
各層が堆積された後、層は、次いで、熱源への暴露によって、部分的に硬化される。本部分的硬化は、コアシェル粒子のシェルまたは結着剤を粘着性にさせ、所与の層内および層間の両方のベリリウム含有組成物の結着を助長することが検討される。
【0043】
特定の実施形態では、ベリリウム含有堆積層を堆積し、層を部分的に硬化させるステップは、繰り返される。層の結果として生じる組み合わせは、3次元予備成形物の形成をもたらす。予備成形物は、非常に多孔性であって、典型的には、約30体積%(体積%)~約60体積%のベリリウム含有組成物から成り、残りは、空隙である。
【0044】
いくつかの実施形態では、ベリリウム含有組成物の粉末層が堆積された後、堆積された層は、粉末層の選択的焼結または溶融に先立って、熱源への暴露によって硬化されてもよい。粉末層を堆積し、随意に、層を硬化させた後、粉末層は、コントローラから提供される信号に基づく事前設定パターンに基づいて、選択的に焼結または溶融される。いくつかの実施形態では、事前設定パターンは、CADモデルの層に基づいて判定される。焼結または溶融は、電子ビームまたはレーザビームを使用して行われてもよい。いくつかの実施形態では、電子ビームまたはレーザビームは、約104W/mm2~約107W/mm2の電力密度を有する。焼結または溶融は、真空下で、またはアルゴン等の不活性貴ガスの存在下で行われることができる。粉末層を堆積し、随意に、層を硬化させ、層を焼結または溶融するステップは、3次元予備成形物が形成されるまで繰り返される。
【0045】
他の実施形態では、ベリリウム含有組成物の粉末層が堆積された後、液体結着薬剤が、選択的に堆積され、粉末粒子をともに結着させる。結着薬剤は、フラン、フェノール、ケイ酸塩、および水性ベースの結着剤から選択される。ベリリウム含有組成物および結着薬剤の粉末層は、コントローラから提供される信号に基づく事前設定パターンに基づいて、選択的に堆積される。事前設定パターンは、CADモデルの層に基づいて判定されてもよい。粉末および結着薬剤を展着するステップは、3次元予備成形物が形成されるまで繰り返される。
【0046】
次に、多孔性予備成形物は、完全に硬化され120、取り扱いのための未加工強度をもたらすことができ、隣接する層間の凝集を助長する。硬化は、オーブン内で行われてもよい。硬化は、約9時間を含む、約6~約12時間の時間周期の間に行われてもよい。再び、これは、熱源が設定される温度であって、必ずしも、予備成形物によって達成される温度ではない。また、再び、所望に応じて、硬化は、アルゴン等の不活性貴ガスの存在下でも行われることができる。本硬化は、通常、予備成形物を高密度化させる。
【0047】
硬化後、予備成形物は、任意の望ましくない材料、例えば、遊離粉末、支持材料等から分離される130。これは、例えば、真空化によって、または吹送によって、行われることができる。所望に応じて、これらの材料は、リサイクルされることができる。
【0048】
予備成形物は、次いで、焼結され140、焼結された予備成形物を形成する。焼結140は、るつぼ(例えば、黒鉛るつぼ)内で仕上げられてもよい。焼結は、存在し得る任意の結着剤を「バーンオフ」させ、ベリリウム自体を含む、金属粒子の冶金結着を生じさせる。焼結後、焼結された予備成形物は、約30体積%(体積%)~100体積%未満の範囲内の多孔率を有し得る。所望に応じて、焼結は、真空下で、またはアルゴン等の不活性貴ガス下で行われることができる。
【0049】
次に、焼結された予備成形物は、少なくとも1つの金属で浸潤される150。例示的金属として、アルミニウム、マグネシウム、リチウム、およびその合金が挙げられる。浸潤は、焼結された予備成形物内の空隙を充填する。その結果、物品の相対的密度は、約90%~100%まで増加される。相対的密度は、空隙を含有しない場合の実際の物品と物品が有するであろう密度の比率であって、多孔率とは異なる。典型的には、予備成形物は、支柱とともに作製され、浸潤金属が、支柱を通して予備成形物の中に吸い上げられる。支柱は、次いで、処理後に除去され、物品を得る。
【0050】
特定の実施形態では、浸潤は、アルミニウムのみを用いて行われる。他の実施形態では、浸潤は、ベリリウムのみを用いて行われる。ベリリウム含有組成物内の材料に応じて、結果として生じる物品は、全体として、(1)ベリリウムもしくはアルミニウムのみ、または(2)ベリリウムおよびマグネシウムのみから成ってもよい。ベリリウムがニッケルでコーティングされた粒子の形態である場合、結果として生じる物品は、全体として、(3)ベリリウム、ニッケル、およびアルミニウムのみ、または(4)ベリリウム、ニッケル、およびマグネシウムのみから成ってもよい。前述のように、ベリリウム粉末自体が、例えば、アルミニウムとの合金であり得る。焼結された予備成形物の表面エネルギーに応じて、浸潤は、約1~約1000大気圧の範囲の圧力で行われる必要があり得る。
【0051】
次に、焼結された物品は、概して、焼鈍される160。焼鈍は、典型的には、温度が上昇され、次いで、材料が室温までゆっくり冷却される、熱処理を指す。焼結、浸潤、および焼鈍は、連続して行われることができる。焼結および浸潤において使用される高温のため、ここでの焼鈍は、概して、冷却のみから成る。焼鈍は、物品の引張強度および降伏強度を低下させ、取扱および随意の事後機械加工(例えば、フライス加工、穿孔、およびタッピング)のために物品を低脆弱性にし得る。
【0052】
所望に応じて、物品は、次いで、仕上げられることができる170。仕上げは、物品の研磨および/またはめっきを含んでもよい。物品の表面粗度が、例えば、ビード吹付加工またはバーレル仕上げを介して、低減されてもよい。典型的アルミニウム保護コーティング、例えば、アロジンもしくはカドミウムオーバーニッケル、または無電解ニッケルめっきもしくは陽極酸化が、適用されることができる。
【0053】
本明細書に説明される方法およびプロセスは、高剛性を伴う複雑な軽量部品を生産可能であって、そのため、他のプロセスより安価かつ迅速であるように検討される。
【0054】
物品のAl-BeまたはMg-BeまたはAl-Mg-BeまたはAl-Be-NiまたはAl-Mg-Be-Ni組成物は、依然として、それらのより高い純度金属製品と非常に類似または同じ特性を得ながら、より高い純度金属製品と比較して、より多くの汚染物質または合金元素を存在させるであろうことが検討される。これらの付加製造プロセスはまた、概して、より高い純度ベリリウム製品と併用されなければならない製造プロセスより容易かつ安価であろう。
【0055】
特定の実施形態では、物品は、0重量%~約5重量%のニッケルと、約58重量%~約65重量%のベリリウムと、約30~約42重量%のアルミニウムとを含有する。
【0056】
物品は、約1.5g/cc~約2.5g/ccの密度、25℃で約5ppm/℃~約25ppm/℃の熱膨張係数、約100GPa~約300GPaの弾性率、約150MPa~約900MPaの降伏強度、および/または約170MPa~約1000MPaの極限引張強度の特性の任意の組み合わせを有し得る。
【0057】
アルミニウム-ベリリウム金属マトリクスを有する、結果として生じる物品は、ベリリウムの高弾性率および低密度特性と、アルミニウムの加工および機械的特性とを組み合わせることができることが検討される。これらとして、良好な処理特性を伴う高比剛性が挙げられる。例えば、物品は、溶接可能であって、機械加工損傷を被りにくくなるはずであって、ベリリウムのように、機械加工後にエッチングを要求しないはずである。良好な弾性率、低密度、および高熱容量を有するはずである。高弾性率/密度比は、撓曲を最小限にし、機械的に誘発される破壊の機会を低減させる。高熱伝導性は、放熱板としての使用を可能にする。検討される低CTEは、アルミニウム単独等の他の材料より、一般的セラミックチップ担体のものと密接に合致するはずである。CTEの合致がより良好であるほど、はんだ継手にかかる歪みが少なくなり、はんだ継手の疲労寿命を延長させ、回路基板のためのより長い寿命をもたらす。
【0058】
本開示は、例示的実施形態を参照して説明された。前述の発明を実施するための形態の熟読および理解に応じて、修正および改変が、想起されることは明白であろう。本開示は、添付の請求項またはその均等物の範囲内にある限りにおいて、全てのそのような修正および改変を含むものと解釈されることが意図される。