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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-27
(45)【発行日】2022-05-11
(54)【発明の名称】防液堤の構築方法
(51)【国際特許分類】
   E04H 7/18 20060101AFI20220428BHJP
   E04G 21/18 20060101ALI20220428BHJP
【FI】
E04H7/18 301Z
E04G21/18 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018025560
(22)【出願日】2018-02-16
(65)【公開番号】P2019143295
(43)【公開日】2019-08-29
【審査請求日】2020-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】仁井田 将人
(72)【発明者】
【氏名】本谷 幸康
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-285906(JP,A)
【文献】特開2014-058793(JP,A)
【文献】特開昭57-178066(JP,A)
【文献】特開昭62-025677(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 7/00 - 7/32
E04G 21/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセグメントを連結して内型枠を形成する内型枠形成工程と、
前記内型枠から隙間をあけて、当該内型枠の外側に外型枠を設置する外型枠形成工程と、
前記内型枠と前記外型枠との間にコンクリートを打設してコンクリート壁部を形成する打設工程と、を備える防液堤の構築方法であって、
前記内型枠形成工程では、
コンクリート壁部の既設部分の内側面に残置された既設内型枠の上に前記セグメントを立設する立設作業と、
前記既設内型枠に固定された設置治具により前記セグメントを支持する支持作業と、
隣り合う前記セグメント同士を連結する連結作業と、
を繰り返すことにより前記内型枠を形成し、
前記打設工程では、前記内型枠から前記設置治具を撤去してからコンクリートを打設することを特徴とする、防液堤の構築方法。
【請求項2】
前記支持作業では、前記既設内型枠に前記設置治具を固定した後、当該設置治具を利用して前記セグメントの傾きを調整することを特徴とする、請求項1に記載の防液堤の構築方法。
【請求項3】
前記内型枠形成工程において、所定数以上の前記セグメントを連結した後、当該セグメントのうちの1つのセグメントから前記設置治具を撤去するとともに、当該設置治具を新設のセグメントを支持する際に使用することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の防液堤の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防液堤の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地上LNGタンクや地下LNGタンクの防液堤(壁体)を構築する方法として、壁体の内周面となる位置に内型枠(鋼製ライナープレートやプレキャストコンクリートセグメント等)を設置するとともに、壁体の外周面となる位置に外型枠を設置し、内型枠と外型枠との間にコンクリートを打設する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。内型枠はいわゆる残存型枠であり、コンクリートの硬化後もそのまま残置される。
内型枠(セグメント)の組み立ては、仮設の支持部材等によりセグメントを支持しながら仮設足場において作業員が組み立てている。ところが、仮設足場および仮設支持部材の設置には手間がかかる。また、仮設足場および仮設支持部材は、地上部から組み立てるため、壁体の周囲に十分なスペースを確保する必要がある。
そのため、本出願人は、特許文献1に示すように、壁体内に残存させる多目的ポストを用いた防液堤の構築方法を開発し、実用化に至っている。この防液堤の構築方法では、予め所定の位置に立設された多目的ポストによりセグメントおよび足場を支持することで、仮設足場や仮設支持部材等の設置、撤去に要する手間を省略している。また、この防液堤の構築方法では、壁体の周囲に仮設部材を設置するための用地を確保する必要がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-58793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
多目的ポストは、壁体内に残存させるため、多目的ポストの分の鋼材量が増加してしまい費用がかかる。また、多目的ポストが配置される分、壁厚が増加してしまうため、防液堤のコンクリート量が増加(すなわち、防液堤重量が増加)し、これに伴う基礎仕様の高まりにより全体工事費が増加する場合がある。
本発明は、前記の問題点を解決することを目的とするものであり、経済性に優れた防液堤の構築方法を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、本発明の防液堤の構築方法は、複数のセグメントを連結して内型枠を形成する内型枠形成工程と、前記内型枠から隙間をあけて、当該内型枠の外側に外型枠を設置する外型枠形成工程と、前記内型枠と前記外型枠との間にコンクリートを打設してコンクリート壁部を形成する打設工程とを備えている。前記内型枠形成工程では、 コンクリート壁部の既設部分の内側面に残置された既設内型枠の上に前記セグメントを立設する立設作業と、前記既設内型枠に固定された設置治具により前記セグメントを支持する支持作業と、隣り合う前記セグメント同士を連結する連結作業とを繰り返すことにより前記内型枠を形成する。また、前記打設工程では、前記内型枠から前記設置治具を撤去してからコンクリートを打設する。
かかる防液堤の構築方法によれば、内型枠を形成する際に使用する仮設の鋼材(支持部材)を壁体の内部に残置させることがないため、鋼材量の低減化が可能となる。また、設置治具は、内型枠に取り付けられるため、壁体の周囲に仮設部材を設置するための用地を確保する必要がない。また、設置治具を利用することで、内型枠の組み立てを精度よく行うことができる。なお、設置治具を構成する材料としてアルミニウム合金等を使用すれば、設置治具の軽量化を図ることができる。設置治具が軽量であれば、足場上において人力により着脱することができる。
【0006】
前記支持作業では、前記既設内型枠に前記設置治具を固定した後、当該設置治具を利用して前記セグメントの傾きを調整するのが望ましい。かかる防液堤の構築方法によれば、セグメントの傾き調整を容易に行うことができるため、施工性に優れている。
さらに、前記内型枠形成工程では、所定数以上の前記セグメントを連結した後、当該セグメントのうちの1つのセグメントから前記設置治具を撤去するとともに、当該設置治具を新設のセグメントを支持する際に使用するのが望ましい。かかる防液堤の構築方法は、複数のセグメントを連結することで形状を安定させた後、既設のセグメントを支持する際に利用した設置治具を他のセグメントの支持に使用するものである。こうすることで、設置治具の数量を減らすことが可能となり、材料費の低減化を図ることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の防液堤の構築方法によれば、安価に防液堤を構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】(a)は壁体の構成を示す断面図、(b)は(a)の部分拡大図である。
図2】(a)は内型枠を示す平面図、(b)は図1(b)のA-A線断面図である。
図3】セグメントを示す斜視図である。
図4】セグメントへの設置治具の取付状況を示す斜視図である。
図5】設置治具を示す図であって、(a)は側面図、(b)は(a)のB-B断面図である。
図6】(a)および(b)は設置治具の調整部を示す側面図である。
図7】(a)~(c)は、内型枠の施工状況を示す正面図である。
図8】内型枠の施工状況を示す断面図である。
図9】他の形態に係る内型枠の施工状況を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態に係る壁体Wは、地上LNGタンクの防液堤であり、平面視円筒状を呈している。壁体Wは、図1の(a)に示すように、場所打ちコンクリートからなるコンクリート壁部1と、コンクリート壁部1の内側面に残置された残存型枠(内型枠2)とを備えている。
コンクリート壁部1の内部には、図1の(b)に示すように、壁筋11,11が埋設されている。壁筋11は、縦筋と横筋とを格子状に組み合わせたものである。また、コンクリート壁部1には、必要に応じて、周方向PC鋼材12や縦方向PC鋼材14などが埋設されている。
【0011】
内型枠2は、複数のセグメント3,3…を周方向および上下方向に連結して形成したものである(図2(a)および(b)参照)。セグメント3は、図3に示すように、正面視矩形状且つ平面視円弧状を呈するプレキャストコンクリート製品である。セグメント3には、コンクリート壁部1側に開口する継手ボックス32の他、インサートナット(外槽ライナープレートやセパレータ用)、コンクリート壁部1との一体化を図るためのせん断伝達部材などが埋設されている。また、セグメント3の上部(高さ方向中央よりも上側)には、設置治具4を取り付けるための設置治具用ナット(プレート付インサートナット)31が複数設けられている。設置治具用ナット31は、セグメント3の外面に開口している。本実施形態では、セグメント3の左右端部に上下2段の設置治具用ナット31,31が設けられている。すなわち、本実施形態のセグメント3には、計4個の設置治具用ナット31,31,…が設けられている。なお、設置治具用ナット31の数および配置は限定されるものではない。また、設置治具4を取り付けるための治具は、必ずしもプレート付インサートナットである必要はない。
【0012】
壁体Wを構築する場合には、複数回のロットに分けて数mずつ立ち上げる。すなわち、壁体Wの施工は、一回のロット毎に内型枠形成工程、外型枠設置工程および打設工程とを備えている。
内型枠形成工程は、複数のセグメント3,3,…を周方向に連結して内型枠2を形成する工程である。内型枠2(残存型枠)は、図2(a)に示すように、平面視リング状を呈している。内型枠形成工程では、立設作業、支持作業および連結作業を繰り返すことにより内型枠2を形成する。
立設作業では、まず、地上部(作業ヤード)に平置きされたセグメント3の背面に設置治具4、4を取り付ける(図4参照)。
【0013】
ここで、本実施形態の設置治具4は、図5(a)および(b)に示すように、本体部41と、本体部41の上端に形成された調整部42とを備えている。
本実施形態の本体部41は、セグメント3の高さよりも大きな長さを有したH形鋼により形成されている。本体部41の断面寸法は、セグメント3を支持し得るような大きさとする。なお、本体部41を構成する部材はH形鋼に限定されるものではなく、例えば、溝形鋼やL形鋼であってもよい。また、本体部41を構成する材料は鋼材に限定されるものではなく、例えば、アルミニウム合金等の比較的軽量な材料であってもよい。
本体部41の下部には、図5(b)に示すように、上下2段のボルト孔(図示せず)が形成されている。ボルト孔には、セグメント3が上載された既設内型枠2a(土台)に設置治具4を固定するための固定ボルト43を挿通する。なお、ボルト孔の数は限定されない。ボルト孔同士の間隔は、セグメント3の中央部に形成された設置治具用ナット31同士の上下方向の間隔と同一とする。
本体部41の上端部では、セグメント3側のフランジの一部(図5(b)において右側部分)が除去されている。
【0014】
調整部42は、本体部41の上端に一体に固定された調整板45と、調整板45に進退可能に設けられた調整ボルト44とを備えている。
調整板45は、本体部41の上端部において、ウェブの一方の面(図5(b)において右側面)の中央部に接合されている。本実施形態では、本体部41の2つのフランジのうち、本体部41のセグメント3の反対側のフランジと調整板45との間に補強用の板材が横架されている。図6(a)に示すように、調整板45には、調整ボルト44を螺合するためのナット(固定ナット46)が固定されている。調整板45は、補強材を適宜配設することで、本体部41の上端部に強固に固定されている。調整ボルト44は、調整板45に対して進退可能に設けられている。
設置治具4は、セグメント3の外面の左右端上部に形成された設置治具用ナット31に調整ボルト44を螺着することで、セグメント3に取り付けられる。調整ボルト44には、ボルト先端側の固定用ナット47と、固定用ナット47と調整板45との間に配設された二つの調整ナット48,48とが間隔をあけて螺着されている。調整ボルト44をセグメント3に螺着したら、固定用ナット47をセグメント3の背面に密着させる。図4に示すように、設置治具4をセグメント3に取り付けると、本体部41の下部(ボルト孔が形成された部分)がセグメント3の下端から突出した状態となる。なお、調整部42の構成は限定されるものではない。例えば、ジャッキベースであってもよいし、チェーンブロックを取り付ける係止部であってもよい。
【0015】
セグメント3の設置治具4を取り付けたら、揚重機(図示せず)を利用してセグメント3を吊り上げる。本実施形態では、図7(a)に示すように、設置治具4に吊金物6を固定し、この吊金物6に揚重機のワイヤ(図示せず)を係止する。吊金物6は、左右一対の縦材61,61と、横材62と、揚重機のフックを係止するワイヤとを備えている。縦材61,61の上端は、横材62の端部にそれぞれ連結されている。ワイヤは、横材62の上面に取り付けられている。縦材61の下部を設置治具4に固定した後、揚重機によってワイヤを吊り上げる。なお、吊金物6の構成および吊金物6の設置治具4への固定方法は限定されるものではない。
次に、揚重機を利用してセグメント3を所定の位置に移動させる。そして、このセグメント3を吊持した状態でコンクリート壁部1の既設部分の内側面に残置された既設内型枠2a(土台)の上にセグメント3を立設する。
なお、セグメント3は、設置治具4を取り付けることなく、揚重機を利用して既設内型枠2a上に立設させてもよい。この場合の吊金物6は、直接または治具を介してセグメント3に取り付ける。
【0016】
支持作業では、図8に示すように、セグメント3に固定された設置治具4の下部を既設内型枠2aに固定することによりセグメント3を支持(仮固定)する。設置治具4は、既設内型枠2a(既設のセグメント3の上部左右)に形成された設置治具用ナット31に、ボルト孔を挿通させた固定ボルト43を螺着することにより固定する。設置治具4を既設内型枠2aに固定することで、セグメント3が設置治具4によって支持された状態となる。ここで、設置治具4には、足場用のブラケット5が固定されている。設置治具4を既設内型枠2aに固定したら、ブラケット5に足場板を横架させることで、足場51を形成する。なお、設置治具4に足場用のブラケット5が固定されていない場合には、図9に示すように、組立式足場や可搬式足場52を設置する。
本実施形態では、図7(a)~(c)に示すように、セグメント3を列状に配置(いわゆるいも継配置)する。
なお、セグメント3を既設内型枠2a上に配置してから設置治具4を取り付ける場合には、セグメント3と既設のセグメント3とに跨って設置治具4を配設した状態でボルト(固定ボルト43、調整ボルト44)を締着する。このとき、組立式足場または可搬式足場52上で作業を行う(図9参照)。
【0017】
支持作業では、既設内型枠2aに設置治具4を固定した後、当該設置治具4を利用してセグメント3の傾きを調整する。設置治具4の下部を既設内型枠2aに固定することで、設置治具4が既設内型枠2aの外面に沿って立設した状態となる。支持作業では、図6(a)および(b)に示すように、設置治具4の上部においてセグメント3に取り付けられた調整ボルト44を調整板45に対して進退させることで、セグメント3の傾き(鉛直に対する角度)を調整する。本実施形態では、セグメント3の外面が所定角度(本実施形態では鉛直)になるように傾きを調整する。調整ボルト44の操作(進退)は、足場51上の作業員が行う。
【0018】
連結作業では、隣り合うセグメント3同士を連結する。傾きを調整した後、設置治具4により支持された周方向に隣り合うセグメント3同士を、各セグメント3に設けた継手ボックス32を利用してボルト接合する。 本実施形態では、図7(b)に示すように、3枚以上の前記セグメント3を連結した後、連結されたセグメント3のうちの1つのセグメント3(図面では左端のセグメント3)および既設内型枠2aから設置治具4を撤去する(取り外す)。取り外した設置治具4は、作業ヤードにおいて、新設するセグメント3に取り付けて、当該セグメント3を支持する際に使用する(図7(c)参照)。すなわち、本実施形態では、設置治具4を介してセグメント3を支持しつつセグメント3同士を連結し、所定数のセグメント3が弧状に連結されて安定したら、連結されたセグメント3から設置治具4を取り外し、新設するセグメント3の施工に利用する。このようにすれば、セグメント3同士(内型枠2)の組み始め等の不安定な状況下において、セグメント3が倒れることがないように支持することができる。また、設置治具4を流用することで必要最小限の設置治具4により内型枠2を形成することが可能となり、工事費の低減化を図ることができる。
【0019】
外型枠形成工程は、内型枠2から隙間をあけて、当該内型枠2の外側に外型枠7(図8参照)を設置する工程である。
内型枠2を設置したら、必要な壁筋11の配筋および周方向PC鋼材12や縦方向PC鋼材14の設置を行う。壁筋11は、施工現場内の鉄筋加工場において組み立てておき、鉄筋網あるいは鉄筋籠の状態で建て込むとよい。壁筋11の下端部は、コンクリート壁部1の既設部分から突出する既設の壁筋11に適宜な鉄筋継手(重ね継手や機械式継手など)を介して連結する。周方向PC鋼材12は、壁筋11の配筋後、外側の壁筋11に沿って配設された横シース13に挿入する。周方向PC鋼材12の端部には、ピラスター(図示略)に定着される定着具を装着する。また、縦方向PC鋼材14の下端部は、コンクリート壁部1の既設部分から突出する既設の縦方向PC鋼材に適宜な機械式継手を介して連結する。縦方向PC鋼材14の設置位置は、内型枠2からのオフセット量を計測することによって確認する。
外型枠7は、セパレータ(図示せず)を介して内型枠2に連結する。本実施形態では、上下2段のセパレータを配設するが、セパレータの段数や配設ピッチ等は限定されない。なお、外型枠7は、コンクリートの側圧により変形することがない強度を有している。また、外型枠7は、既設の外型枠7の上面に固定する。外型枠7の設置は、外型枠7の外側に配設された足場51を利用して行う。
【0020】
打設工程は、内型枠2と外型枠7との間にコンクリートを打設してコンクリート壁部1を形成する工程である。
打設工程では、まず、内型枠2から設置治具4を撤去する。次に、タンク(内型枠2)の中心軸を挟んで対向する2カ所からコンクリートを打設する(図2の(a)参照)。コンクリートの打設は、コンクリート圧送管を利用して、外型枠7の天端よりも低い位置までコンクリートを打ち込むものとする。なお、コンクリートの打設方法は限定されるものではない。コンクリートの打設が終了したら、コンクリートを養生する。 全てのロットが終了したら、周方向PC鋼材12および縦方向PC鋼材14引張力を付与し、壁体Wにプレストレスを導入する。
【0021】
本実施形態に係る壁体Wの構築方法(防液堤の構築方法)および設置治具4によれば、次のような作用効果が得られる。
仮設支持部材として利用した設置治具4を残置させないため、鋼材量の低減化が可能となる。また、設置治具4を順次転用することで、さらなる鋼材料の低減を可能としている。また、壁体W内に仮設支持部材を残存させないため、壁厚を最小限に抑えることが可能となり、ひいては、壁体Wおよび基礎部のコンクリート量の低減化を図ることができる。また、設置治具4は、内型枠2に取り付けられるため、壁体Wの周囲に仮設部材を設置するための用地を確保する必要がない。
【0022】
セグメント3に取り付けられた設置治具4を既設内型枠2aに固定するのみでセグメント3の支持が完了するため、施工性に優れている。また、設置治具4を利用することで、内型枠2の組み立て(セグメント3の傾き調整等)を精度よく行うことができる。さらに、設置治具4の頭部に設けられた調整ボルト44を進退させるのみで、簡易に傾き調整を行うことができる。
内型枠2には、コンクリートの側圧がタンクの中心方向に均等に作用するため、内型枠2にはリングコンプレッションが働き、内型枠2の移動や変形が抑制される。そのため、壁体Wの施工を高品質に行うことができる。
【0023】
以上、本発明に係る実施形態について説明した。しかし、本発明は、前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更が可能である。
前記実施形態では、立設作業において、セグメント3に設置治具4を取り付けてから所定の位置に移送させるものとしたが、設置治具4は、既設内型枠(土台)2aの上においてセグメント3に取り付けてもよい。設置治具4が、アルミニウム合金等、軽量な材料により形成されていれば、足場51上の作業員が人力により着脱することができる。
また、セグメント3の傾き調整は必要に応じて行えばよい。例えば、既設内型枠2a上に立設させた状態で、セグメント3が垂直である場合には、傾き調整は省略してもよい。
前記実施形態では、設置治具4(本体部41)の長さをセグメント3の高さ以上としたが、設置治具4の長さは限定されるものではない。すなわち、設置治具4(本体部41)の長さは、セグメント3の高さ以下であってもよい。
前記実施形態では、セグメント3をいも継配置としているが、セグメント3は、いわゆる千鳥配置としてもよい。
前記実施形態では、調整ボルトを利用して、セグメントの傾きを調整する場合について説明したが、セグメントの傾き調整方法は限定されるものではない。例えば、既設内型枠2aに固定された設置治具の調整部42に設けられたジャッキやチェーンブロックを利用して、傾きを調整してもよい。
【符号の説明】
【0024】
1 コンクリート壁部
2 内型枠
2a 既設内型枠
3 セグメント
31 設置治具用ナット
4 設置治具
41 本体部
42 調整部
43 固定ボルト
44 調整ボルト
45 調整板
5 ブラケット
51 足場
6 吊金物
7 外型枠
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9