(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-27
(45)【発行日】2022-05-11
(54)【発明の名称】水素化ニトリルゴム用架橋剤マスターバッチ、水素化ニトリルゴム組成物および水素化ニトリルゴム架橋成形品
(51)【国際特許分類】
C08J 3/22 20060101AFI20220428BHJP
C08L 9/02 20060101ALI20220428BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20220428BHJP
C08K 5/14 20060101ALI20220428BHJP
【FI】
C08J3/22 CEQ
C08L9/02
C08K3/04
C08K5/14
(21)【出願番号】P 2018029421
(22)【出願日】2018-02-22
【審査請求日】2020-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】川崎 邦義
【審査官】深谷 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-029790(JP,A)
【文献】特開2016-098357(JP,A)
【文献】特開平10-095858(JP,A)
【文献】特開2008-031334(JP,A)
【文献】特開2000-212333(JP,A)
【文献】特開2011-038056(JP,A)
【文献】特開平08-100084(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00- 3/28、 99/00
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素化ニトリルゴム、1,3-ビス(第3ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンおよびカーボンブラックを含有し、
前記水素化ニトリルゴムの結合アクリロニトリル量が25質量%未満であり、
前記1,3-ビス(第3ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンの含有量が10~30質量%であり、
前記カーボンブラックは、窒素吸着比表面積が20~80m
2
/gであり、DBP吸収量が50~160cm
3
/100gであり、
前記カーボンブラックの含有量が10~30質量%であることを特徴とする水素化ニトリルゴム用有機過酸化物マスターバッチ。
【請求項2】
前記水素化ニトリルゴムのムーニー粘度ML
1+4(100℃)が30~100である請求項1に記載の水素化ニトリルゴム用有機過酸化物マスターバッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素化ニトリルゴム用架橋剤マスターバッチと、当該マスターバッチを用いてなる水素化ニトリルゴム組成物および水素化ニトリルゴム架橋成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
水素化ニトリルゴム(以下、「HNBR」と記載することがある。)は、ニトリルゴム(NBR)に水素添加して、耐熱性や耐候性を改良したゴムであり、自動車用のベルト材料や各種オイルシール、パッキン等として使用されている。
【0003】
1,3-ビス(第3ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンは、主として、合成ゴムや合成樹脂の架橋剤や硬化剤として使用される有機過酸化物である。この有機過酸化物は、分子中に-O-O-結合を持っているため、比較的低い温度で熱的に分解し、あるいは還元性物質と反応して、容易に遊離ラジカルを生成する。生成した遊離ラジカルは、不飽和二重結合への付加反応や水素等の引き抜き反応を引き起こし、合成ゴム等を架橋させたり、硬化させたりする。1,3-ビス(第3ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンは、HNBRの架橋剤としても使用される。
【0004】
従来、HNBRの架橋剤である有機過酸化物の促入れ(添加混練)工程においては、単品の有機過酸化物をロールや密閉式混練機などを用いて促入れする。しかし、この混練作業は、作業者の熟練を要し、有機過酸化物を均一に分散させるために非常に長い時間がかかり、また、混練作業中にHNBRがロールから脱落する(巻き付かなくなる)といったロール作業に伴う製造上の問題があった。
【0005】
そこで、有機過酸化物の分散性に係る問題を解消するために、有機過酸化物を含有したマスターバッチが使用されている。1,3-ビス(第3ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンを主成分とするマスターバッチも、市場には既にいくつか存在し、日油(株)社製パーブチルP-40、ペロキシモンF40等が知られている。これらのマスターバッチは、希釈剤として炭酸カルシウムやシリカといった不活性の無機充填剤を用いることが一般的である。
【0006】
これらのマスターバッチを用いることによって、HNBRへ促入れする場合の促入れ時間は、従来の15分程度から10分程度へと短縮させることが可能となった。しかし、混練作業中にHNBRがロールから脱落するといった製造上の問題は改善されていない。
【0007】
また、マスターバッチの希釈剤として、炭酸カルシウム等の無機充填剤を配合させたくないといった要望が存在する。そこで、マスターバッチの希釈剤を無機充填剤に代えてHNBRにしたところ、マスターバッチ中の1,3-ビス(第3ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンの含有量を高くすることが困難であることが判明した。すなわち、1,3-ビス(第3ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンをHNBRに対して10~50質量%の割合で混合分散させることを試みた。しかし、HNBRとの相溶性が必ずしも高くないため、1,3-ビス(第3ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンがHNBRから容易に分離(ブルーム)してしまい、シート生地状のマスターバッチを作成することが困難であった。
【0008】
希釈剤として、HNBRと低分子量のポリブタジエンオリゴマーを併用した1,3-ビス(第3ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンを主成分とするマスターバッチが特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献1のマスターバッチは、ポリブタジエンオリゴマーを成分として含有するものであり、当該オリゴマーを含有しないHNBR組成物とすることはできない。
【0011】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の課題は、1,3-ビス(第3ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンの含有量が高く、混練作業中にHNBRがロールから脱落するといった加工作業における問題点を解消し得るHNBR用有機過酸化物マスターバッチを提供することである。また、当該マスターバッチを用いてなるHNBR組成物およびHNBR架橋成形品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記課題を解決するために、HNBRの組成について検討を進めた。その結果、HNBRの結合アクリロニトリル量(以下、「結合AN量」と記載することがある。)を適正な範囲とすることにより、1,3-ビス(第3ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンとの相溶性を高めることが可能となることを見出した。また、補強剤として加えるカーボンブラックについても適性な組成を見出した。本発明はこのような知見を基に完成するに至ったものである。
【0013】
すなわち、本発明のHNBR用有機過酸化物マスターバッチは、HNBR、1,3-ビス(第3ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンおよびカーボンブラックを含有し、前記HNBRの結合AN量が25質量%未満であり、前記1,3-ビス(第3ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンの含有量が10~30質量%であり、前記カーボンブラックの含有量が10~30質量%である。
【0014】
また、本発明のHNBR用有機過酸化物マスターバッチは、HNBRのムーニー粘度ML1+4(100℃)が30~100であることが好ましい。
【0015】
また、本発明のHNBR用有機過酸化物マスターバッチは、前記カーボンブラックは、窒素吸着比表面積が20~80m2/gであり、DBP吸収量が50~160cm3/100gであることが好ましい。
【0016】
また、本発明のHNBR組成物は、前記HNBR用有機過酸化物マスターバッチを用いてなるものである。
【0017】
また、本発明のHNBR架橋成形品は、前記HNBR組成物を架橋成形してなるものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明のHNBR用有機過酸化物マスターバッチは、1,3-ビス(第3ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンの含有量が高く、混練作業中にHNBRがロールから脱落するといった加工作業における問題点を解消することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。ただし、本発明の範囲は、以下に説明する具体例としての実施形態に限定されるわけではない。
【0020】
本実施形態のHNBR用有機過酸化物マスターバッチ(以下、「マスターバッチ」と記載することがある。)は、HNBR、1,3-ビス(第3ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンおよびカーボンブラックを含有する。以下、各成分について説明する。
【0021】
(HNBR)
HNBRは、アクリロニトリル-ブタジエン共重合ポリマーであるニトリルゴムが有するポリマー主鎖中の不飽和結合を水素化することによって、耐熱性、耐薬品性、耐候性などを改良したゴムである。
【0022】
HNBRのポリマー主鎖中に残留している不飽和結合量の目安として、ヨウ素価(g/100g)が用いられる。耐熱性を考慮すると、ヨウ素価(g/100g)が20以下のものが好ましく、15以下のものがより好ましい。一方、HNBRに適度に不飽和結合を残存させることによって、過酸化物架橋や特殊架橋(アミン架橋等)を行うことができ、耐熱性、機械的強度、耐油性等の向上の観点から好ましい。
【0023】
HNBRは、アクリルゴムに近い耐熱性を有し、優れた化学的安定性を備えている。また、機械的強度、耐摩耗性などにも優れている。そのため、オイルシールやパッキン等の用途に対して適性を有している。
【0024】
本発明者は、HNBRと1,3-ビス(第3ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンとの相溶性を高めるため、HNBRの結合AN量に着目した。HNBRの結合AN量が多くなると一般に、HNBRの極性は高くなり、HNBRの耐油性、耐摩耗性等が向上する。しかし、1,3-ビス(第3ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンとの関係では適正な結合AN量は不明であった。そこで、検討を進めたところ、HNBRの結合AN量が25質量%未満であると、1,3-ビス(第3ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンを高濃度で含有させても、分離(ブルーム)が生じ難いことを見出した。
【0025】
この結果は、1,3-ビス(第3ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンの溶解度パラメーターSp値が低結合AN量のHNBRと近い範囲にあるためと推測された。また、HNBRの結合AN量が25質量%未満であると、HNBRとの混練設備の混合槽内の汚れも軽減された。
【0026】
HNBRのムーニー粘度ML1+4(100℃)は、機械的強度や加工性の観点から、30~100のものが好ましく、30~80のものがより好ましい。ここで、ムーニー粘度ML1+4(100℃)は、JIS K 6300-1:2013に準拠して測定される。
【0027】
HNBRとしては、例えば、日本ゼオン社製のゼットポール(Zetpol、登録商標)、ランクセス社製テルバン(Therban、登録商標)等を用いることができる。
【0028】
(1,3-ビス(第3ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン)
1,3-ビス(第3ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンは、1,3-ビス[1-(tert-ブチルペルオキシ)-1-メチルエチル]ベンゼンとも称される有機過酸化物である。白色の粉体であり、CAS番号25155-25-3の化合物である。
【0029】
(カーボンブラック)
マスターバッチには、補強剤として、カーボンブラックが添加される。補強剤としては、カーボンブラック以外にもシリカ(ホワイトカーボン)、炭酸マグネシウム、クレー等があるが、カーボンブラックが好ましい。適切なカーボンブラックを選定することによって、加工作業性をより改善することができる。
【0030】
カーボンブラックとしては、窒素吸着比表面積が20~80m2/gであるカーボンブラックが好ましく、30~50m2/gであるカーボンブラックがより好ましい。カーボンブラックの窒素吸着比表面積が上記数値範囲より小さいと、カーボンブラックの分散が不十分となり、生地が硬化して、ロール加工性が低下する。一方、カーボンブラックの窒素吸着比表面積が上記数値範囲より大きいと、生地のグリーン強度が低下して、ロール加工性が低下する。カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、JIS K 6217:1997に準拠して測定することができる。
【0031】
また、カーボンブラックとしては、DBP(ジブチルフタレート)吸収量が50~160cm3/100gであるカーボンブラックが好ましく、100~150cm3/100gであるカーボンブラックがより好ましい。DBP吸収量は、カーボンブラックのアグリゲート間の空隙率の指標となる。カーボンブラックのDBP吸収量が上記数値範囲内にあると、ロール加工性が良好となる。カーボンブラックのDBP吸収量は、JIS K 6217:1997に準拠して測定することができる。
【0032】
(マスターバッチ)
マスターバッチにおける1,3-ビス(第3ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンの含有量は10~30質量%であり、20~30質量%が好ましい。また、マスターバッチにおけるカーボンブラックの含有量は10~30質量%であり、20~30質量%が好ましい。マスターバッチにおいて、1,3-ビス(第3ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンおよびカーボンブラック以外の成分が、基本的にHNBRとなる。マスターバッチはこのように1,3-ビス(第3ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンを高濃度で含有するものである。1,3-ビス(第3ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンおよびカーボンブラックの含有量が上記数値範囲内にあると、混練性やロール加工性に優れ、混練作業中にHNBRがロールから脱落するといった加工作業における問題点を解消することができる。
【0033】
マスターバッチには、汎用性が求められるため、HNBR、1,3-ビス(第3ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンおよびカーボンブラック以外の成分として、加工助剤などの添加剤を配合することができる。これらの添加剤は、必要に応じて適宜添加される。
【0034】
(マスターバッチの製造方法)
マスターバッチの製造に用いる混練装置としては、大気の影響を極力遮断するため、密閉式の混練装置を用いることが好ましい。混練装置は、バッチ式であってもよいし、連続式であってもよい。バッチ式混練装置としては、加圧ニーダー、バンバリーミキサー、オープンロール等がある。連続式混練装置としては、一軸押出機、二軸押出機、フィーダールーダー等がある。
【0035】
マスターバッチは、前記の混練装置を用いて各成分を10分程度混練することにより調製することができる。具体的には、HNBRポリマーを素練りした後に、1,3-ビス(第3ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンとカーボンブラック等を事前にプレミックスした混合物を2~3回に分けて投入し、10分程度混練することにより行われる。
【0036】
得られたマスターバッチは、架橋に必要とされる有機過酸化物量に相当する割合で計量され、HNBRおよび他の成分と混合され、溶融混練等を行うことによって、HNBR組成物として得ることができる。さらに、得られたHNBR組成物を通常行われるHNBRの架橋成形条件によって架橋成形することにより、架橋成形品とすることができる。
【0037】
従来、低融点で粉体の1,3-ビス(第3ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンをHNBRに促入れする際には、ロール作業が非常に長く、薬品飛散による作業環境の悪化、また、HNBRがロールから脱落するといった問題を有するものであった。本実施形態のマスターバッチを採用することによって、作業者の熟練を必要とせず、作業時間の大幅な短縮が可能となった。さらに、混練作業中にHNBRがロールから脱落するといった問題が解消され、作業環境が改善され、安全作業の確保が可能となった。
【実施例】
【0038】
以下、実施例と比較例により本発明を説明するが、これらの実施例は本発明を限定するものではない。
【0039】
(マスターバッチ原料)
HNBR:日本ゼオン社製ゼットポール2000L、3110、4310
HNBR:ランクセス社製テルバンAT LT2004VP
各HNBRの結合AN量およびムーニー粘度は表1に示した。
1,3-ビス(第3ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン:化薬アクゾ社製パーカドックス14
カーボンブラック:東海カーボン社製カーボンブラック、SRF-HS(シーストSVH)、SRF(シーストS)、FEF(シーストSO)、MAF(シースト116)
各カーボンブラックの窒素吸着比表面積およびDBP吸収量は表2に示した。
シリカ:東ソー・シリカ社製沈殿法シリカ、Nipsil ER
【0040】
【0041】
【0042】
(マスターバッチ組成物の製造)
マスターバッチ製造用の混練機として、ニーダー(日本スピンドル製造社製加圧式3lニーダー)を用いた。
表3に記載の組成で、HNBRポリマーを素練りした後に、1,3-ビス(第3ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンと補強剤を事前にプレミックスした混合物を3回に分けて投入し、回転数30rpmで10分間混練した。
得られた各マスターバッチ組成物を用いて、次の各項目の評価を行い、その結果を表3に示した。
【0043】
(ニーダー混練性)
ニーダーによる混練時および混練後の状況について、下記の観点から評価を行った。
○:特に問題なく、混練性良好
△:電力トルクが低く、練りが不十分である
×:練りが利かない、または練ることができない、特に、ニーダー排出時に砂状になって生地としてまとまらないときは、×の中でも最も悪い状態である
【0044】
(ロール加工性)
12インチオープンロールを用いて各マスターバッチ組成物を混練して、ロール加工性を以下の基準で評価した。ここで、バギングとは、ロールに巻いた生地がロール表面から浮き上がり、ナイフが入らず、シート出し作業ができなくなる現象をいう。
○:加工性良好
△:少しバギングする(巻き難い)
×:バギングが激しい(巻くことができない)
【0045】
(生地裁断のし易さ)
各マスターバッチ組成物を用いて、5mm厚のシート生地を調製した。調製したシート生地を室温下で24時間放冷した後、ハサミで裁断した。
○:容易に裁断が可能
△:少し硬いが裁断可能
×:硬くて裁断が困難
【0046】
【0047】
表3の評価結果から分かるように、実施例1~2のマスターバッチ組成物は、ニーダー混練性、ロール加工性および生地裁断のし易さにおいて良好な性能を有していた。比較例1のマスターバッチ組成物は、HNBRの結合AN量が25質量%であるため、ニーダー混練時の練りが不十分となり、ロール混練時に若干バギングが発生し、ニーダー混練性、ロール加工性および生地裁断のし易さにおいてやや劣っていた。比較例2のマスターバッチ組成物は、HNBRの結合AN量が36質量%であるため、ニーダー排出時にスポンジ状となり、ロールに巻き付かず、それ以降の性能評価を行うことができなかった。比較例3のマスターバッチ組成物は、カーボンブラックの含有量が多く、HNBRの結合AN量が大きいため、ニーダー排出時にスポンジ状となり、いずれの性能も劣っていた。
【0048】
比較例4~6のマスターバッチ組成物は、カーボンブラックの種類が異なるものであるが、カーボンブラックの含有量が多く、ニーダー混練性、ロール加工性および生地裁断のし易さのいずれかの性能において劣っていた。比較例7のマスターバッチ組成物は、補強剤としてシリカを用いたものであるが、生地粘度が非常に高くなり、ロール混練時にバギングが発生し、生地裁断のし易さにおいても劣っていた。
【0049】
比較例8のマスターバッチ組成物は、カーボンブラックの含有量が多いため、ロール加工性において劣っていた。比較例9のマスターバッチ組成物は、架橋剤の含有量が多いため、ニーダー排出時に砂状になって生地としてまとまらず、それ以降の性能評価を行うことができなかった。