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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-27
(45)【発行日】2022-05-11
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂組成物及び成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 25/04 20060101AFI20220428BHJP
   C08L 23/00 20060101ALI20220428BHJP
   C08L 67/00 20060101ALI20220428BHJP
   C08L 53/02 20060101ALI20220428BHJP
   C08F 297/04 20060101ALI20220428BHJP
【FI】
C08L25/04
C08L23/00
C08L67/00
C08L53/02
C08F297/04
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018045507
(22)【出願日】2018-03-13
(65)【公開番号】P2018184589
(43)【公開日】2018-11-22
【審査請求日】2020-12-22
(31)【優先権主張番号】P 2017086467
(32)【優先日】2017-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】久末 隆寛
【審査官】西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-274191(JP,A)
【文献】特開2006-328314(JP,A)
【文献】特開2001-131308(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル系樹脂(A-1)と、ポリスチレン系樹脂(A-2)と、ポリオレフィン
系樹脂(A-3)とを含有する樹脂組成物(A)70~99質量部と、
水添ブロック共重合体(B)1~30質量部と、
を、含む熱可塑性樹脂組成物であって、
前記樹脂組成物(A)が、前記ポリエステル系樹脂(A-1)を5~50質量%、前記ポリスチレン系樹脂(A-2)を40~85質量%、前記ポリオレフィン系樹脂(A-3)を10~50質量%、それぞれ含有し、
前記ポリエステル系樹脂(A-1)が、ポリエチレンテレフタレート及び/又はポリブチレンテレフタレートであり、
前記水添ブロック共重合体(B)が、少なくとも1個のビニル芳香族炭化水素化合物単量体単位を主体とする重合体ブロック(a)と、少なくとも1個の共役ジエン化合物単量体単位を主体とする重合体ブロック(b)と、を含み、
前記水添ブロック共重合体(B)の重量平均分子量が30,000~500,000であり、
前記水添ブロック共重合体(B)の全ビニル芳香族炭化水素化合物単量体単位の含有量が10質量%~80質量%である、
熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
前記水添ブロック共重合体(B)の重量平均分子量が30,000~300,000であり、
前記水添ブロック共重合体(B)の全ビニル芳香族炭化水素化合物単量体単位の含有量が20質量%~80質量%である、
請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリエステル系樹脂(A-1)が、芳香族炭化水素化合物単量体単位を含有する芳
香族系ポリエステルである、
請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
前記水添ブロック共重合体(B)が、1種以上の官能基を有する1種以上の変性ブロック共重合体(B-1)を含有し、
前記変性ブロック共重合体(B-1)が、アミノ基及び/又はイミノ基を有する原子団
が結合している変性ブロック共重合体である、
請求項1乃至のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
前記水添ブロック共重合体(B)が、当該水添ブロック共重合体(B)中に、1種以上の官能基を有する1種以上の変性ブロック共重合体(B-1)を30~100質量%と、非変性ブロック共重合体(B-2)を0~70質量%とを、含有する、
請求項1乃至のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
前記変性ブロック共重合体(B-1)が、
アミノ基、イミノ基、水酸基、エポキシ基、カルボキシル基、酸無水物基、イソシアネ
ート基、シリル基、アルコキシシラン基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基
を有する原子団が結合している変性ブロック共重合体である、
請求項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項7】
前記変性ブロック共重合体(B-1)が、
アミノ基及び/又はイミノ基を有する原子団が結合している変性ブロック共重合体であ
る、請求項5又は6に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物からなる成形品。
【請求項9】
シート状成形品である、請求項に記載の成形品。
【請求項10】
容器である、請求項に記載の成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物及び成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
包装容器には、輸送や使用に耐えうる耐衝撃強度や成形加工性が要求される。これに加え、近年、食品用途においては、電子レンジの普及等により耐熱性や、さらには、食品の保存のため、ガスバリヤー性も要求されている。
このような要求性能に対し、従来においては、それぞれの性能を付与するため、異なる熱可塑性樹脂からなる複合材料が用いられている。
例えば、外層がポリスチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂又はポリエステル系樹脂のいずれかであり、内層がポリプロピレン系樹脂又はポリエステル系樹脂のいずれかである二重構造の樹脂材料からなる容器が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、内層側から、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート等から選ばれる樹脂層/ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等から選ばれる樹脂層/その他の層、である多層構造の樹脂材料からなる成形容器が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-72037号公報
【文献】特開2001-55216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、地球温暖化の抑制や省資源化のために、容器包装のリサイクルが求められており、上述のように容器自体に対して要求される性能に応えるための材料の開発は進んでいるものの、容器包装をリサイクルすることを前提として容器の材料を選択するという考え方は十分に周知されておらず、リサイクルするために好適な材料上の条件については十分な検討がなされていない。
そのため、上述の従来提案されている容器についても、リサイクルに好適な材料ではない。
具体的には、特許文献1に記載の二重容器の各層を構成する熱可塑性樹脂は、それぞれが極性等の異なる非相容の材料であり、リサイクルする際は、各層を分離する工程が必要となり工程が煩雑である、という問題を有している。
また、特許文献2に記載の多層成形容器に関しては、リサイクルのために混合された場合、再生品においては、強度の低下や、バリ部分をカットする際の割れ、切粉の発生等の問題が生じ、実用上の観点からは、リサイクルが困難である、という問題を有している。
【0005】
そこで本発明においては、容器や包装材を構成する複数種類の樹脂を含有する熱可塑性樹脂組成物及び成形品であって、溶融混合された場合にそれぞれの樹脂が非相容であっても、カット時の割れや切粉の発生が無く、耐衝撃性、剛性、及び成形性にも優れる熱可塑性樹脂組成物、及び成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明者らは、上記課題に対して鋭意研究を行った結果、ポリエステル系樹脂と、ポリスチレン系樹脂と、ポリオレフィン系樹脂とを含有する非相容系の樹脂組成物に対し、所定の構造を有するブロック共重合体を含有させた熱可塑性樹脂組成物が、上述した従来技術の課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
【0007】
〔1〕
ポリエステル系樹脂(A-1)と、ポリスチレン系樹脂(A-2)と、ポリオレフィン
系樹脂(A-3)とを含有する樹脂組成物(A)70~99質量部と、
水添ブロック共重合体(B)1~30質量部と、
を、含む熱可塑性樹脂組成物であって、
前記樹脂組成物(A)が、前記ポリエステル系樹脂(A-1)を5~50質量%、前記ポリスチレン系樹脂(A-2)を40~85質量%、前記ポリオレフィン系樹脂(A-3)を10~50質量%、それぞれ含有し、
前記ポリエステル系樹脂(A-1)が、ポリエチレンテレフタレート及び/又はポリブチレンテレフタレートであり、
前記水添ブロック共重合体(B)が、少なくとも1個のビニル芳香族炭化水素化合物単量体単位を主体とする重合体ブロック(a)と、少なくとも1個の共役ジエン化合物単量体単位を主体とする重合体ブロック(b)と、を含み、
前記水添ブロック共重合体(B)の重量平均分子量が30,000~500,000であり、
前記水添ブロック共重合体(B)の全ビニル芳香族炭化水素化合物単量体単位の含有量が10質量%~80質量%である、
熱可塑性樹脂組成物。
〔2〕
前記水添ブロック共重合体(B)の重量平均分子量が30,000~300,000であり、
前記水添ブロック共重合体(B)の全ビニル芳香族炭化水素化合物単量体単位の含有量が20質量%~80質量%である、前記〔1〕に記載の熱可塑性樹脂組成物。
〔3〕
前記ポリエステル系樹脂(A-1)が、芳香族炭化水素化合物単量体単位を含有する芳
香族系ポリエステルである、前記〔1〕又は〔2〕に記載の熱可塑性樹脂組成物。
〔4〕
前記水添ブロック共重合体(B)が、1種以上の官能基を有する1種以上の変性ブロック共重合体(B-1)を含有し、
前記変性ブロック共重合体(B-1)が、アミノ基及び/又はイミノ基を有する原子団
が結合している変性ブロック共重合体である、
前記〔1〕乃至〔3〕のいずれか一に記載の熱可塑性樹脂組成物。
〔5〕
前記水添ブロック共重合体(B)が、当該水添ブロック共重合体(B)中に、1種以上の官能基を有する1種以上の変性ブロック共重合体(B-1)を30~100質量%と、非変性ブロック共重合体(B-2)を0~70質量%とを、含有する、
前記〔1〕乃至〔3〕のいずれか一に記載の熱可塑性樹脂組成物。
〔6〕
前記変性ブロック共重合体(B-1)が、
アミノ基、イミノ基、水酸基、エポキシ基、カルボキシル基、酸無水物基、イソシアネ
ート基、シリル基、アルコキシシラン基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基
を有する原子団が結合している変性ブロック共重合体である、
前記〔5〕に記載の熱可塑性樹脂組成物。
〔7〕
前記変性ブロック共重合体(B-1)が、
アミノ基及び/又はイミノ基を有する原子団が結合している変性ブロック共重合体であ
る、前記〔5〕又は〔6〕に記載の熱可塑性樹脂組成物。
〔8〕
前記〔1〕乃至〔7〕のいずれか一に記載の熱可塑性樹脂組成物からなる成形品。
〔9〕
シート状成形品である、前記〔8〕に記載の成形品。
〔10〕
容器である、前記〔8〕に記載の成形品。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、非相容である、異なる種類の樹脂が溶融混合されても、得られる成形体にカット時の割れや切粉が少なく、耐衝撃性、剛性、成形性に優れる、熱可塑性樹脂組成物が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と記載する。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0010】
〔熱可塑性樹脂組成物〕
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、
ポリエステル系樹脂(A-1)と、ポリスチレン系樹脂(A-2)と、ポリオレフィン系樹脂(A-3)とを含有する樹脂組成物(A)70~99質量部と、
ブロック共重合体(B)1~30質量部と、
を、含む熱可塑性樹脂組成物であって、
前記ブロック共重合体(B)が、少なくとも1個のビニル芳香族炭化水素化合物単量体単位を主体とする重合体ブロック(a)と、少なくとも1個の共役ジエン化合物単量体単位を主体とする重合体ブロック(b)と、を含み、
前記ブロック共重合体(B)の重量平均分子量が30,000~500,000であり、
前記ブロック共重合体(B)の全ビニル芳香族炭化水素化合物単量体単位の含有量が10質量%~80質量%である。
【0011】
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、前記構成を有することにより、カット時の割れや切粉が無く、耐衝撃性、剛性、成形性に優れたものとなる。
以下、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物の成分について詳細に説明する。
【0012】
(熱可塑性樹脂組成物の組成)
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、ポリエステル系樹脂(A-1)と、ポリスチレン系樹脂(A-2)と、ポリオレフィン系樹脂(A-3)とを含有する樹脂組成物(A)と、ブロック共重合体(B)とを含む。
樹脂組成物(A)の含有量が70~99質量%であり、ブロック共重合体(B)の含有量が1~30質量部である。
樹脂組成物(A)/ブロック共重合体(B)の含有量は、硬度、弾性率の観点から、好ましくは75~98質量%/2~25質量%であり、より好ましくは80~97質量%/3~20質量%であり、さらに好ましくは85~96質量%/4~15質量%である。
【0013】
<樹脂組成物(A)>
樹脂組成物(A)は、ポリエステル系樹脂(A-1)、ポリスチレン系樹脂(A-2)、及びポリオレフィン樹脂(A-3)を含有する。
【0014】
[ポリエステル系樹脂(A-1)]
ポリエステル系樹脂(A-1)としては、分子内にエステル基を有する樹脂であればよく、特に限定されない。
ポリエステルは分子内に鎖状炭化水素及び/又は芳香族環を持つため、後述のブロック共重合体(B)に含まれるStやエチレンやブチレンと親和性を示す。特に、ブロック共重合体(B)が極性基を有する場合には、エステル結合による極性基部分により親和する傾向を示す。
ポリエステル系樹脂(A-1)としては、以下に限定されないが、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコール等の脂肪族グリコール;シクロヘキサンジメタノール等の脂環族グリコール;ビスフェノール等の芳香族ジヒドロキシ化合物或いはこれらの2種以上から選ばれたジヒドロキシ化合物(ジオール化合物)と、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタリンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ウンデカジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸;ヘキサヒドロジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸或いはこれらの2種以上から選ばれたジカルボン酸との縮合反応により形成されたものが挙げられる。
また、ポリエステル系樹脂(A-1)としては、環状ジエステルであるラクチド類や、環状エステルであるラクトン類の開環重合によって形成されたものも挙げられる。
これらポリエステル系樹脂(A-1)は、エポキシ樹脂等の他の成分により変性されていてもよい。
【0015】
ポリエステル系樹脂(A-1)としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」ともいう)、ポリブチレンサクシネート(以下、「PBS」ともいう)、ポリブチレンサクシネートアジペート(以下、「PBSA」ともいう)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(以下、「PBAT」ともいう)、ポリブチレンテレフタレート(以下、「PBT」ともいう)、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、エチレンテレフタレート-イソフタレート共重合体、ポリ乳酸(以下、「PLA」ともいう)、及びポリ酪酸等のポリヒドロキシアルカン酸(以下、「PHA」ともいう)から選ばれる一種以上が好ましいものとして挙げられる。
これらの中でも、工業生産性、機械強度、加工性の観点から、分子内に芳香族炭化水素化合物単量体単位を含有する芳香族系ポリエステルがより好ましく、さらに好ましくはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンサクシネート、及びポリヒドロキシアルカン酸から選ばれる1種以上であり、さらにより好ましくはポリエチレンテレフタレー卜、ポリブチレンテレフタレートである。
前記ポリエステル系樹脂は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0016】
前記樹脂組成物(A)は、ポリエステル系樹脂(A-1)を、耐熱変形性の観点から、5~50質量%含有することが好ましい。
より好ましくは5~40質量%、さらに好ましくは5~30質量%、さらにより好ましくは5~20質量%である。
【0017】
[ポリスチレン系樹脂(A-2)]
ポリスチレン系樹脂(A-2)としては、以下に限定されるものではないが、例えば、汎用ポリスチレン(GPPS)、ゴム成分で補強された耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、スチレン-ブタジエン共重合体、本実施形態で用いるブロック共重合体(a)以外のスチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、スチレン-メタクリル酸メチル共重合体等が挙げられる。
これらの共重合体は、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよい。
ポリスチレン系樹脂(A-2)は、分子内に鎖状炭化水素や芳香族環を持つため、後述するブロック共重合体(B)に含まれるスチレン(St)やエチレンやブチレンと親和性を示す。
これらの中でも、工業的生産性と剛性と成形性の観点からポリスチレンが好ましい。
前記ポリスチレン系樹脂は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0018】
ポリスチレン系樹脂(A-2)は、温度200℃、荷重5kgの条件で求めたメルトフローレート値(MFR)が0.1~30g/10分であることが好ましく、より好ましくは0.5~25g/10分、さらに好ましくは1.0~20g/10分である。
ポリスチレン系樹脂(A-2)のMFRが前記範囲内にあると、成形加工性により優れた熱可塑性樹脂組成物が得られる傾向にある。
【0019】
前記樹脂組成物(A)は、硬度、弾性率、寸法安定性の観点からポリスチレン系樹脂(A-2)を、40~85質量%含有することが好ましい。
より好ましくは40~80質量%、さらに好ましくは50~75質量%、さらにより好ましくは50~70質量%である。
【0020】
[ポリオレフィン系樹脂(A-3)]
ポリオレフィン系樹脂は、分子内に鎖状炭化水素を持つため、後述するブロック共重合体(B)に含まれるStやエチレンやブチレンと親和性を示す。
ポリオレフィン系樹脂(A-3)としては、以下に限定されないが、例えば、プロピレン単独重合体、又は、プロピレンとプロピレン以外のオレフィン、好ましくは炭素数2~20のα-オレフィン、とのブロック共重合体もしくはランダム共重合体、あるいはこれらのブレンド物が挙げられる。
炭素数や、ブロック共重合体、ランダム共重合体の別などは、後述するブロック共重合体(B)等との相溶性にあまり影響しない。
炭素数が2~20のα-オレフィンとしては、以下に限定されないが、例えば、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン等が挙げられ、好ましくは炭素数2~8のα-オレフィンであり、より好ましくはエチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテンである。
前記オレフィン系樹脂(A-3)は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
ポリオレフィン系樹脂(A-3)は、温度230℃、荷重2.16kgの条件で求めたメルトフローレート値(MFR)が0.1~50g/10分であることが好ましく、より好ましくは0.5~45g/10分、さらに好ましくは1.0~40g/10分である。MFRが前記範囲内であれば耐熱性がより向上する傾向にある。
【0022】
ポリオレフィン系樹脂(A-3)の製造方法としては、以下に限定されないが、例えば、チタン含有固体状遷移金属成分と有機金属成分を組み合わせたチーグラー・ナッタ型触媒を用いて、上述した単量体を重合する製造方法が挙げられる。
チーグラー・ナッタ型触媒に用いられる遷移金属成分としては、以下に限定されないが、例えば、チタン、マグネシウム及びハロゲンを必須成分とし、電子供与性化合物を任意成分とする固体成分、又は三塩化チタンが挙げられ、有機金属成分としては、以下に限定されないが、例えば、アルミニウム化合物が挙げられる。
また、ポリオレフィン系樹脂(A-3)を製造する際の重合方法としては、以下に限定されないが、例えば、スラリー重合法、気相重合法、バルク重合法、溶液重合法、又はこれらを組み合わせた多段重合法等が挙げられる。これらの重合方法において、プロピレン単独重合体を得る場合にはプロピレンのみを重合し、共重合体を得る場合にはプロピレンとプロピレン以外の単量体を重合する。
【0023】
前記樹脂組成物(A)は、耐油性、靭性、流動性の観点から、ポリオレフィン系樹脂(A-3)を、10~50質量%含有することが好ましい。より好ましくは10~45質量%、さらに好ましくは10~40質量%、さらにより好ましくは10~35質量%である。
【0024】
<ブロック共重合体(B)>
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、ブロック共重合体(B)を含む。
ブロック共重合体(B)は、少なくとも1個のビニル芳香族炭化水素化合物単量体単位を主体とする重合体ブロック(a)と、少なくとも1個の共役ジエン化合物単量体単位を主体とする重合体ブロック(b)と、を含む。
樹脂組成物(A)との相溶性の観点では、ブロック共重合体(B)が水素添加(水添)されていることは必須ではないが、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物が容器等に利用されて、その後リサイクルされる場合、特に何度も繰り返してリサイクルされる場合や、容器等におけるリサイクル材の含有比率が高い場合には、熱可塑性樹脂組成物の耐熱性を向上させるために、ブロック共重合体(B)は水添ブロック共重合体であることが好ましい。
【0025】
前記ビニル芳香族炭化水素化合物単量体単位を主体とする重合体ブロック(a)とは、重合体ブロック(a)中のビニル芳香族炭化水素化合物単量体単位の含有量が50質量%を超えることを意味し、機械強度、耐熱変形性の観点から、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは80質量%以上であり、さらにより好ましくは90質量%以上である。
【0026】
前記共役ジエン化合物単量体単位を主体とする重合体ブロック(b)とは、重合体ブロック(b)中の共役ジエン化合物単量体単位の含有量が50質量%を超えることを意味し、耐衝撃性の観点から、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは80質量%以上であり、さらにより好ましくは90質量%以上である。
【0027】
なお、本実施形態において、ブロック共重合体を構成する各単量体単位の命名は、当該単量体単位が由来する単量体の命名に従っているものとする。例えば、「ビニル芳香族炭化水素化合物単量体単位」とは、単量体であるビニル芳香族炭化水素化合物を重合した結果生ずる、重合体の構成単位を意味し、その構造は、置換ビニル基に由来する置換エチレン基の二つの炭素が結合部位となっている分子構造である。また、「共役ジエン化合物単量体単位」とは、単量体である共役ジエン化合物を重合した結果生ずる、重合体の構成単位を意味し、その構造は、共役ジエン化合物単量体に由来するオレフィンの二つの炭素が結合部位となっている分子構造である。
【0028】
本実施形態において、重合体ブロック(a)中のビニル芳香族炭化水素化合物単量体単位として用いることができる単量体とは、ビニル基と芳香環とを有する化合物をいう。
ビニル芳香族炭化水素化合物単量体としては、以下に限定されないが、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1-ジフェニルエチレン、N,N-ジメチル-p-アミノエチルスチレン、N,N-ジエチル-p-アミノエチルスチレン等が挙げられる。これらの中でも、重合性の観点から、スチレン、α-メチルスチレン、ジビニルベンゼンが好適に用いられる。これらビニル芳香族炭化水素化合物単量体は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0029】
重合体ブロック(b)中の共役ジエン化合物単量体単位として用いることができる単量体とは、1対の共役二重結合(共役するように結合した2つの二重結合)を有するジオレフィンである。共役ジエン化合物単量体としては、以下に限定されないが、例えば、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン(イソプレン)、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン等が挙げられる。これらの中でも、重合性の観点から、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン(イソプレン)が好適に用いられる。これら共役ジエン化合物単量体は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0030】
ブロック共重合体(B)は、樹脂組成物(A)との相溶性の観点から、重量平均分子量が30,000~500,000であり、30,000~300,000(SEBSの粒子サイズや分散性の均一化に寄与)が好ましい。また、全ビニル芳香族炭化水素化合物単量体単位の含有量が10質量%~80質量%以下であり、20質量%~80質量%以下が好ましい。
ブロック共重合体(B)としては、例えば、下記一般式(1)~(7)で表される構造を有するものが挙げられる。また、ブロック共重合体(B)は、下記一般式(1)~(7)で表されるような構造の共重合体を、複数種類、任意の割合で含む混合物であってもよい。
(a-b)n (1)
a-(b-a)n (2)
b-(a-b)n (3)
[(b-a)nm-Z (4)
[(a-b)nm-Z (5)
[(b-a)n-b]m-Z (6)
[(a-b)n-a]m-Z (7)
【0031】
前記一般式(1)~(7)において、(a)はビニル芳香族炭化水素化合物単量体単位を主体とする重合体ブロックであり、(b)は共役ジエン化合物単量体単位を主体とする重合体ブロックである。重合体ブロック(a)と重合体ブロック(b)との境界線は必ずしも明瞭に区別される必要はない。
また、nは1以上の整数、好ましくは1~5の整数である。
mは2以上の整数、好ましくは2~11、より好ましくは2~8の整数である。
Zはカップリング剤残基を表す。ここで、カップリング残基とは、共役ジエン化合物単量体単位とビニル芳香族炭化水素化合物単量体単位との共重合体の複数を、重合体ブロック(a)-重合体ブロック(a)間、重合体ブロック(b)-重合体ブロック(b)間、又は重合体ブロック(a)-重合体ブロック(b)間において結合させるために用いられるカップリング剤の結合後の残基を意味する。
カップリング剤としては、以下に限定されないが、例えば、後述するポリハロゲン化合物や酸エステル類等が挙げられる。
【0032】
前記一般式(1)~(7)において、重合体ブロック(a)及び重合体ブロック(b)中のビニル芳香族炭化水素化合物単量体単位は均一に分布していても、テーパー状に分布していてもよい。
また、重合体ブロック(a)及び重合体ブロック(b)がビニル芳香族炭化水素化合物単量体単位と共役ジエン化合物単量体単位の共重合体ブロックである場合には、当該共重合体ブロック中のビニル芳香族炭化水素化合物単量体単位は均一に分布している部分及び/又はテーパー状に分布している部分がそれぞれ複数個存在していてもよい。さらに、前記共重合体ブロック部分には、ビニル芳香族炭化水素化合物単量体単位の含有量が異なる部分が複数個共存していてもよい。
【0033】
ブロック共重合体(B)の重量平均分子量は、上述したように30,000~500,000である。好ましくは35,000以上、より好ましくは40,000以上である。
また、300,000以下が好ましく、200,000以下がより好ましく、100,000以下がさらに好ましい。
ブロック共重合体(B)の重量平均分子量が30,000以上であると、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃強度が良好なものとなる傾向にある。ブロック共重合体(B)の重量平均分子量が500,000以下、好ましくは300,000以下であると、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物において、良好な流動性が得られ、優れた成型加工性が得られる。
【0034】
ブロック共重合体(B)の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1.01~8.0、より好ましくは1.01~6.0、さらに好ましくは1.01~5.0である。
ブロック共重合体(B)の分子量分布が前記範囲内にあれば、より良好な機械強度が得られる傾向にある。
なお、GPCにより測定したブロック共重合体(B)の分子量分布の形状は特に限定されず、ピークが二ヶ所以上存在するポリモーダルの分子量分布を持つものでもよいし、ピークが一つであるモノモーダルの分子量分布を持つものでもよい。
なお、ブロック共重合体(B)の重量平均分子量(Mw)及び分子量分布〔Mw/Mn;重量平均分子量(Mw)の数平均分子量(Mn)に対する比〕は、後述する実施例に記載の方法でゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定したクロマトグラムのピークの分子量を、市販の標準ポリスチレンの測定から求めた検量線(標準ポリスチレンのピーク分子量を使用して作成)を使用して求めることができる。
【0035】
ブロック共重合体(B)中の全ビニル芳香族炭化水素化合物単量体単位の含有量は、10質量%~80質量%である。
機械物性、再シール性に係る回復性の観点から、10質量%以上とし、好ましくは20質量%以上であり、より好ましくは22質量%以上であり、さらに好ましくは24質量%以上であり、さらにより好ましくは26質量%以上であり、よりさらに好ましくは28質量%以上である。また、80質量%以下とし、好ましくは70質量%以下であり、より好ましくは60質量%以下であり、さらに好ましくは50質量%以下であり、さらにより好ましくは40質量%以下である。
【0036】
ブロック共重合体(B)中の全ビニル芳香族炭化水素化合物単量体単位の含有量が10質量%以上であると、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物の弾性率が向上する傾向にあり、全ビニル芳香族炭化水素化合物の含有量が80質量%以下であると、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が向上する傾向にある。
なお、全ビニル芳香族炭化水素化合物単量体単位の含有量は、ブロック共重合体(B)の重合工程において単量体の添加量を調整することにより前記数値範囲に制御することができ、後述する実施例に記載の方法で紫外線分光光度計を用いて、262nmの波長の吸収強度により算出することができる。
【0037】
ブロック共重合体(B)中の重合体ブロック(b)のミクロ構造(シス、トランス、ビニルの比率)は、後述する極性化合物等の使用により任意に制御することができる。
【0038】
ブロック共重合体(B)中の共役ジエン化合物単量体単位中の水素添加前のビニル結合量は、好ましくは30モル%~60モル%であり、より好ましくは31~57モル%であり、さらに好ましくは31~54モル%であり、さらにより好ましくは32~51モル%であり、よりさらに好ましくは32~45モル%以下である。
共役ジエン化合物単量体単位中の水素添加前のビニル結合量が30モル%以上であるとブロック共重合体(B)と前述のポリオレフィン系樹脂(A-3)との相溶性がより向上する傾向にあり、共役ジエン化合物単量体単位中の水素添加前のビニル結合量が60モル%以下であると弾性率がより向上する傾向にある。
【0039】
上述したように、本実施形態においては、ブロック共重合体(B)における全ビニル芳香族炭化水素化合物単量体単位の含有量が10質量%~80質量%であり、さらに共役ジエン化合物単量体単位中の水素添加前のビニル結合量が30モル%~60モル%であると好ましい。
【0040】
なお、本実施形態において、ビニル結合量とは、例えばブタジエンでは水素添加前において、1,2-結合、3,4-結合及び1,4-結合の結合様式で組み込まれている共役ジエン単量体単位の総モル量に対する、1,2-結合及び3,4-結合で組み込まれている共役ジエン単量体単位の総モル量の割合である。
なお、水素添加後において、水素未添加の1,2-結合、水素添加後の1,2-結合、水素未添加の3,4-結合、水素添加後の3,4-結合、水素未添加の1,4-結合及び水素添加後の1,4-結合の結合様式で組み込まれている共役ジエン単量体単位の総モル量に対する、水素未添加の1,2-結合、水素添加後の1,2-結合、水素未添加の3,4-結合及び水素添加後の3,4-結合で組み込まれている共役ジエン単量体単位の総モル量の割合は、水素添加前の共役ジエン単量体単位のビニル結合量と等しい。従って、水素添加前の共役ジエン単量体単位のビニル結合量は、水素添加後のブロック共重合体を用いて核磁気共鳴スペクトル解析(NMR)により測定でき、具体的には後述する実施例に記載の方法により測定できる。
【0041】
ブロック共重合体(B)中の共役ジエン化合物に由来する脂肪族二重結合の水素添加率は、好ましくは50%以上であり、より好ましくは60%以上であり、さらに好ましくは70%以上である。水素添加率が50%以上であれば、ブロック共重合体(B)の熱劣化(酸化劣化)による機械物性の低下をより効果的に抑制できる傾向にある。また、水素添加率が70%以上であれば、より優れた耐候性が得られる傾向にある。水素添加率の上限値は特に限定されないが、100%以下であることが好ましく、99%以下であることがより好ましい。
【0042】
ブロック共重合体(B)中のビニル芳香族炭化水素化合物単量体単位に基づく芳香族二重結合の水素添加率については特に限定されないが、好ましくは50%以下であり、より好ましくは30%以下であり、さらに好ましくは20%以下である。
【0043】
ブロック共重合体(B)の製造方法としては、以下に限定されないが、例えば、特公昭36-19286号公報、特公昭43-17979号公報、特公昭46-32415号公報、特公昭49-36957号公報、特公昭48-2423号公報、特公昭48-4106号公報、特公昭51-49567号公報、特開昭59-166518号公報等に記載された方法が挙げられる。
【0044】
ブロック共重合体(B)の、水添前の共役ジエン化合物単量体単位とビニル芳香族炭化水素化合物単量体単位とを含む共重合体は、以下に限定されないが、例えば、炭化水素溶媒中で有機アルカリ金属化合物等の開始剤を用いてアニオンリビング重合を行う方法等により得られる。
炭化水素溶媒としては、特に限定されず、例えば、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン等の脂肪族炭化水素類、シクロヘキサン、シクロヘプタン、メチルシクロヘプタン等の脂環式炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類等が挙げられる。
【0045】
重合開始剤としては、特に限定はないが、一般的に、共役ジエン化合物単量体及びビニル芳香族炭化水素化合物単量体に対し、アニオン重合活性があることが知られている有機アルカリ金属化合物であれば特に限定されず、例えば、炭素数1~20の脂肪族炭化水素アルカリ金属化合物、炭素数1~20の芳香族炭化水素アルカリ金属化合物、炭素数1~20の有機アミノアルカリ金属化合物等が挙げられる。
重合開始剤に含まれるアルカリ金属としては、以下に限定されないが、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。なお、アルカリ金属は、1分子中に1種、又は2種以上含まれていてもよい。
重合開始剤としては、以下に限定されないが、例えば、n-プロピルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、n-ペンチルリチウム、n-ヘキシルリチウム、ベンジルリチウム、フェニルリチウム、トリルリチウム、ジイソプロペニルベンゼンとsec-ブチルリチウムの反応生成物、さらにジビニルベンゼンとsec-ブチルリチウムと少量の1,3-ブタジエンの反応生成物等が挙げられる。
さらにまた、米国特許5,708,092号明細書に開示されている1-(t-ブトキシ)プロピルリチウム及びその溶解性改善のために1~数分子のイソプレンモノマーを挿入したリチウム化合物、英国特許2,241,239号明細書に開示されている1-(t-ブチルジメチルシロキシ)ヘキシルリチウム等のシロキシ基含有アルキルリチウム、米国特許5,527,753号明細書に開示されているアミノ基含有アルキルリチウム、ジイソプロピルアミドリチウム及びヘキサメチルジシラジドリチウム等のアミノリチウム類も使用することができる。
【0046】
有機アルカリ金属化合物を重合開始剤として、共役ジエン化合物単量体とビニル芳香族炭化水素化合物単量体を共重合する際に、共重合体に組み込まれる共役ジエン化合物単量体に起因するビニル結合(1,2-結合又は3,4-結合)の含有量の調整や共役ジエン化合物単量体とビニル芳香族炭化水素化合物単量体とのランダム共重合性を調整するために、調整剤として、例えば、第3級アミン化合物、エーテル化合物、金属アルコラート化合物を添加することができる。
調整剤は1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
前記調整剤の第3級アミン化合物としては、一般式R123N(ここで、R1、R2、R3は炭素数1~20の炭化水素基又は第3級アミノ基を有する炭化水素基を示す。)で表される化合物が適用できる。
第3級アミン化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N-ジメチルアニリン、N-エチルピペリジン、N-メチルピロリジン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラエチルエチレンジアミン、1,2-ジピペリジノエタン、トリメチルアミノエチルピペラジン、N,N,N’,N”,N”-ペンタメチルエチレントリアミン、N,N’-ジオクチル-p-フェニレンジアミン等が挙げられる。
【0048】
前記調整剤のエーテル化合物としては、直鎖状エーテル化合物及び環状エーテル化合物等が適用できる。
直鎖状エーテル化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジフェニルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル等のエチレングリコールのジアルキルエーテル化合物類、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等のジエチレングリコールのジアルキルエーテル化合物類が挙げられる。
環状エーテル化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、2,5-ジメチルオキソラン、2,2,5,5-テトラメチルオキソラン、2,2-ビス(2-オキソラニル)プロパン、フルフリルアルコールのアルキルエーテル等が挙げられる。
【0049】
前記調整剤の金属アルコラート化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ナトリウム-t-ペントキシド、ナトリウム-t-ブトキシド、カリウム-t-ペントキシド、カリウム-t-ブトキシド等が挙げられる。
【0050】
有機アルカリ金属化合物を重合開始剤として共役ジエン化合物単量体とビニル芳香族炭化水素化合物単量体を共重合する方法は、特に限定されず、バッチ重合であっても連続重合であっても、あるいはそれらの組み合わせであってもよい。分子量分布を好ましい適正範囲に調整する観点から、バッチ重合方法が好ましい。
重合温度は、特に限定されないが、通常は0~180℃であり、好ましくは30~150℃である。
重合に要する時間は条件によって異なるが、通常は48時間以内であり、好ましくは0.1~10時間である。
また、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で重合することが好ましい。重合圧力は、上記重合温度範囲でモノマー及び溶媒を液相に維持するに充分な圧力の範囲で行えばよく、特に限定されるものではない。
【0051】
さらに、重合終了時に2官能基以上のカップリング剤を必要量添加してカップリング反応を行ってもよい。2官能基以上のカップリング剤としては、特に限定されず、公知のものを用いることができる。2官能基カップリング剤として、例えば、ジメチルジクロロシラン、ジメチルジブロモシラン等のジハロゲン化合物、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸フェニル、フタル酸エステル類等の酸エステル類等が挙げられる。
【0052】
3官能基以上の多官能カップリング剤としては、以下に限定されないが、例えば、3価以上のポリアルコール類、エポキシ化大豆油、ジグリシジルビスフェノールA等の多価エポキシ化合物、式R1(4-n)SiXn(ここで、R1は炭素数1~20の炭化水素基、Xはハロゲン、nは3又は4の整数を表す。)で表されるハロゲン化珪素化合物、及びハロゲン化錫化合物が挙げられる。
【0053】
ハロゲン化珪素化合物としては、以下に限定されないが、例えば、メチルシリルトリクロリド、t-ブチルシリルトリクロリド、四塩化珪素、及びこれらの臭素化物等が挙げられる。
【0054】
ハロゲン化錫化合物としては、以下に限定されないが、例えば、メチル錫トリクロリド、t-ブチル錫トリクロリド、四塩化錫等の多価ハロゲン化合物等が挙げられる。また、炭酸ジメチルや炭酸ジエチル等も使用可能である。
【0055】
水添ブロック共重合体を製造するために用いられる水添触媒としては、特に限定されず、例えば、特公昭42-8704号公報、特公昭43-6636号公報、特公昭63-4841号公報、特公平1-37970号公報、特公平1-53851号公報、特公平2-9041号公報等に記載された水添触媒を使用することができる。
好ましい水添触媒としては、チタノセン化合物及び/又は還元性有機金属化合物が挙げられる。
チタノセン化合物としては、特に限定されないが、例えば、特開平8-109219号公報に記載された化合物等が挙げられ、具体的には、ビスシクロペンタジエニルチタンジクロライド、モノペンタメチルシクロペンタジエニルチタントリクロライド等の(置換)シクロペンタジエニル構造、インデニル構造、及びフルオレニル構造を有する配位子を少なくとも1つ以上持つ化合物等が挙げられる。
還元性有機金属化合物としては、特に限定されないが、例えば、有機リチウム等の有機アルカリ金属化合物、有機マグネシウム化合物、有機アルミニウム化合物、有機ホウ素化合物、有機亜鉛化合物等が挙げられる。
【0056】
水添反応の反応温度は、通常0~200℃、好ましくは30~150℃である。水添反応に使用される水素の圧力は、好ましくは0.1~15MPa、より好ましくは0.2~10MPa、さらに好ましくは0.3~5MPaである。水添反応の反応時間は、通常3分~10時間、好ましくは10分~5時間である。なお、水添反応は、バッチプロセス、連続プロセス、あるいはそれらの組み合わせのいずれも用いることができる。
【0057】
水添反応終了後の反応溶液から、必要に応じて触媒残査を除去してもよい。水添ブロック共重合体と溶媒を分離する方法としては、以下に限定されないが、例えば、水添ブロック共重合体の溶液に、アセトン又はアルコール等の水添ブロック共重合体に対して貧溶媒となる極性溶媒を加えて、水添ブロック共重合体を沈澱させて回収する方法、あるいは、水添ブロック共重合体の溶液を撹拌下熱湯中に投入し、スチームストリッピングにより溶媒を除去して回収する方法、水添ブロック共重合体の溶液を直接加熱することによって溶媒を留去する方法等が挙げられる。
【0058】
ブロック共重合体(B)を製造する際の反応溶液には、酸化防止剤を添加してもよい。
酸化防止剤としては、以下に限定されないが、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤等が挙げられる。
具体的には、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、n-オクタデシル-3-(4’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチル・フェニル)プロピオネート、テトラキス-〔メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン]、トリス-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、4,4’-ブチリデン-ビス-(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、3,9-ビス[2-{3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ}-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、トリエチレングリコール-ビス[3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6-ヘキサンジオール-ビス-〔3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4-ビス-(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルアニリノ)1,3,5-トリアジン、ペンタエリスリチル・テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2-チオ-ジエチレンビス〔3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、N,N’-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナマミド)、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホネート-ジエチルエステル、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)カルシウムとポリエチレンワックス(50%)の混合物、オクチル化ジフェニルアミン、2,4-ビス[(オクチルチオ)メチル]-o-クレゾール、イソオクチル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ブチル酸,3,3-ビス(3-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)エチレンエステル、1,1,3-トリス-(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)イソシアヌレート、2-t-ブチル-6-(3’-t-ブチル-5’-メチル-2’-ヒドロキシベンジル)-4-メチルフェニル・アクリレート、及び2-〔1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ペンチルフェニル)-エチル〕-4,6-ジ-t-ペンチルフェニルアクリレート等が挙げられる。
【0059】
[変性ブロック共重合体(B-1)]
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物においては、ブロック共重合体(B)が、当該ブロック共重合体(B)中に、1種以上の官能基を有する1種以上の変性ブロック共重合体(B-1)を含むことが好ましい。変性ブロック共重合体(B-1)の含有率は、ブロック共重合体(B)中、30~100質量%であることが好ましい。
樹脂組成物(A)との相溶性の観点では、変性ブロック共重合体(B-1)が水素添加(水添)されていることは必須ではないが、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物が容器等に利用されて、その後リサイクルされる場合、特に何度も繰り返してリサイクルされる場合や、容器等におけるリサイクル材の含有比率が高い場合には、熱可塑性樹脂組成物の耐熱性を向上させるために、変性ブロック共重合体(B-1)は水添変性ブロック共重合体であることが好ましい。
変性ブロック共重合体(B-1)が、水添変性ブロック共重合体である場合、当該水添変性ブロック共重合体中の共役ジエン化合物に由来する脂肪族二重結合の水素添加率は、好ましくは50%以上であり、より好ましくは60%以上であり、さらに好ましくは70%以上である。水素添加率が50%以上であれば、水添変性ブロック共重合体(B-1)の熱劣化(酸化劣化)による機械物性の低下をより効果的に抑制できる傾向にある。また、水素添加率が70%以上であれば、より優れた耐候性が得られる傾向にある。水素添加率の上限値は特に限定されないが、100%以下であることが好ましく、99%以下であることがより好ましい。
水添方法は、上述したブロック共重合体(B)の水添方法と同様の方法を用いることができる。
【0060】
変性ブロック共重合体(B-1)が、1種以上の官能基を有する重合体であること、すなわち官能基を含有する原子団が結合した重合体であることは、ポリエステル系樹脂(A-1)との親和性を更に向上させる観点から好ましい。
【0061】
官能基は、未変性のブロック共重合体に結合することによって、当該ブロック共重合体に極性を付与するものである限り、特に限定されない。F,O,Cl,N,S,P等の電気陰性度の大きな原子が結合している官能基は極性を有しており、このような極性官能基を有することにより、変性ブロック共重合体(B-1)は、分子内にエステル結合による極性構造を持つポリエステルとの親和性が特に良好となる。
官能基を含有する原子団としては、例えば、水酸基、カルボニル基、チオカルボニル基、酸ハロゲン化物基、酸無水物基、カルボキシル基、チオカルボキシル酸基、アルデヒド基、チオアルデヒド基、カルボン酸エステル基、アミド基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、リン酸基、リン酸エステル基、アミノ基、イミノ基、シアノ基、ピリジル基、キノリン基、エポキシ基、チオエポキシ基、スルフィド基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、ハロゲン化ケイ素基、シリル基、シラノール基、アルコキシシラン基、ハロゲン化スズ基、アルコキシスズ基、フェニルスズ基、ボロン酸基、ボロン酸塩基、ホウ素含有基等から選ばれる官能基を少なくとも1種含有する原子団が挙げられる。
これらの官能基の中でも、ポリエステル系樹脂(A-1)への親和性及び相溶性の観点から、水酸基、カルボニル基、酸無水物基、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基、イミノ基、イソシアネート基、シリル基、アルコキシシラン基が好ましく、アミノ基及び/又はイミノ基がより好ましい。
変性基として、アミノ基及び/又はイミノ基を有する原子団が結合している変性ブロック共重合体は、ポリエステル系樹脂(A-1)との相溶性が一層高く、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が高くなる傾向にある。
本実施形態において、アミノ基とは1~3級アミンの構造を有している官能基を意味する。又、イミノ基とは窒素原子が同一の炭素原子と二重結合で結合している基、すなわち=NHを意味する。このような官能基を有する原子団が結合した変性ブロック共重合体(B-1)を用いることにより、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物の機械強度、弾性率が良好となる。
【0062】
変性ブロック共重合体に水素添加し、水添変性ブロック共重合体(B-1)を得る方法としては、例えば、官能基を有する重合開始剤や官能基を有する不飽和単量体を用いて重合して得られた非水添変性ブロック共重合体を水素添加する方法、アニオン重合で得られたリビング末端を有する非水添ブロック共重合体に官能基を形成したり、官能基を有する変性剤を付加反応させ、その後に水素添加したりする方法が挙げられる。
また、水添変性ブロック共重合体(B-1)を得る他の方法としては、非水添ブロック共重合体に有機リチウム化合物等の有機アルカリ金属化合物を反応させ、すなわちメタレーション反応させ、有機アルカリ金属が付加した非水添ブロック共重合体に官能基を有する変性剤を付加反応させ、その後に水添反応させる方法が挙げられる。
前記他の方法においては、水添ブロック共重合体を得た後にメタレーション反応させ、その後に官能基を有する変性剤を反応させることにより水添変性ブロック共重合体(B-1)を得ることもできる。
上述したいずれの変性方法においても、反応温度は、好ましくは0~150℃、より好ましくは20~120℃である。
変性反応に要する時間は他の条件によって異なるが、好ましくは24時間以内であり、より好ましくは0.1~10時間である。変性剤の種類により、変性剤を反応させた段階で一般に水酸基やアミノ基等は有機金属塩となっていることもあるが、その場合には水やアルコール等活性水素を有する化合物で処理することにより、水酸基やアミノ基等にすることができる。
なお、変性ブロック共重合体(B-1)においては、一部変性されていないブロック共重合体が混在してもよい。
【0063】
変性ブロック共重合体(B-1)は、当該共重合体中に、官能基を、平均で20モル%以上含有していることが好ましく、平均で30モル%以上含有していることがより好ましく、平均で40モル%以上含有していることがさらに好ましい。
官能基の含有量が前記範囲であると、ポリエステル系樹脂(A-1)への親和性や相溶性が良好となる傾向にある。
【0064】
官能基を有する変性剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、テトラグリシジル-1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、ε-カプロラクトン、4-メトキシベンゾフェノン、テトラグリシジル-p-フェニレンジアミン、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルオルソトルイジン、γ-グリシドキシエチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシブチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリブトキシシランが挙げられる。
また、γ-グリシドキシプロピルトリフェノキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルエチルジメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルエチルジエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジプロポキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジブトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジフェノキシシラン、γ-グリシドキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルジエチルエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルジメチルエトキシシランが挙げられる。
【0065】
さらに、γ-グリシドキシプロピルジメチルフェノキシシラン、γ-グリシドキシプロピルジエチルメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジイソプロペンオキシシラン、ビス(γ-グリシドキシプロピル)ジメトキシシラン、ビス(γ-グリシドキシプロピル)ジエトキシシラン、ビス(γ-グリシドキシプロピル)ジプロポキシシラン、ビス(γ-グリシドキシプロピル)ジブトキシシラン、ビス(γ-グリシドキシプロピル)ジフェノキシシラン、ビス(γ-グリシドキシプロピル)メチルメシシラン、ビス(γ-グリシドキシプロピル)メチルエトキシシランが挙げられる。
さらにまた、ビス(γ-グリシドキシプロピル)メチルプロポキシシラン、ビス(γ-グリシドキシプロピル)メチルブトキシシラン、ビス(γ-グリシドキシプロピル)メチルフェノキシシラン、トリス(γ-グリシドキシプロピル)メトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシエチルトリエトキシシラン、ビス(γ-メタクリロキシプロピル)ジメトキシシラン、トリス(γ-メタクリロキシプロピル)メトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランが挙げられる。
【0066】
また、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリプロポキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリブトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリフェノキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルエチルジメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルエチルジエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジプロポキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジブトキシシランが挙げられる。
【0067】
さらに、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジフェノキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルジメチルメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルジエチルエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルジメチルエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルジメチルプロポキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルジメチルブトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルジメチルフェノキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルジエチルメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジイソプロペンオキシシラン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジエチル-2-イミダゾリジノン、N,N’-ジメチルプロピレンウレア、N-メチルピロリドン、N-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-(トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン等が挙げられる。
これらの中でも、特に1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジエチル-2-イミダゾリジノンのような、イミダゾリジノン骨格を有する変性剤が好ましい。
【0068】
また、変性ブロック共重合体(B-1)は、変性ブロック共重合体に、官能基と反応性を有する二次変性剤をさらに反応させたものであってもよい。
二次変性剤は、変性ブロック共重合体の官能基と反応性を有する官能基を有する変性剤であり、好ましくはカルボキシル基、酸無水物基、イソシアネート基、エポキシ基、シラノール基、アルコキシシラン基から選ばれる官能基を有する二次変性剤である。
二次変性剤は、これらの官能基から選ばれる官能基を少なくとも2個有する二次変性剤であることが好ましい。なお、官能基が酸無水物基の場合、酸無水物基が1個の二次変性剤であってもよい。
変性ブロック共重合体に二次変性剤を反応させる場合、当該変性ブロック共重合体に結合されている官能基1当量あたり、二次変性剤は0.3~10モルであることが好ましく、より好ましくは0.4~5モル、さらに好ましくは0.5~4モルである。官能基の含有量が前記範囲であると、ポリスチレン系樹脂(A-2)とポリオレフィン系樹脂(A-3)とポリエステル系樹脂(A-1)への相溶性のバランスが良好となる傾向にある。変性ブロック共重合体と二次変性剤を反応させ、二次変性させた変性ブロック共重合体(B-1)を得る方法は、特に制限されるものではなく、公知の方法が利用できる。例えば、後述する溶融混練方法や各成分を溶媒等に溶解又は分散混合して反応させる方法等が挙げられる。
【0069】
特に好ましい二次変性剤としては、以下に限定されるものではないが、カルボキシル基を2個以上有するカルボン酸又はその酸無水物、或いは酸無水物基、イソシアネート基、エポキシ基、シラノール基、アルコキシシラン基からなる群より選ばれる少なくともいずれかを2個以上有する2次変性剤が挙げられ、具体的には、無水マレイン酸、無水ピロメリット酸、1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、トルイレンジイソシアナート、テトラグリジジル-1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、ビス-(3-トリエトキシシリルプロピル)-テトラスルファン等を好適に用いることができる。
【0070】
また、変性ブロック共重合体(B-1)は、α,β-不飽和カルボン酸又はその誘導体、例えば、その無水物、エステル化物、アミド化物、イミド化物でグラフト変性した変性ブロック共重合体であってもよい。
α,β-不飽和カルボン酸又はその誘導体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、無水マレイン酸、無水マレイン酸イミド、アクリル酸又はそのエステル、メタアクリル酸又はそのエステル、エンド-シス-ビシクロ〔2,2,1〕-5-ヘプテン-2,3-ジカルボン酸又はその無水物等が挙げられ、これらの中でも無水マレイン酸が好ましい。
α,β-不飽和カルボン酸又はその誘導体の付加量は、全変性ブロック共重合体中、通常0.01~20質量%、好ましくは0.1~17質量%、より好ましく1~15質量%である。付加量が前記範囲であると、ポリスチレン系樹脂(A-2)とポリオレフィン系樹脂(A-3)とポリエステル系樹脂(A-1)への相溶性のバランスが良好となる傾向にある。
グラフト変性する場合の反応温度は、好ましくは100~300℃、より好ましくは120~280℃である。グラフト変性する方法の詳細については、例えば、特開昭62-79211号公報を参照できる。
【0071】
前記ブロック共重合体(B)は、変性ブロック共重合体(B-1)を、カット時の割れや切粉を防止し、耐衝撃性、剛性、伸びを向上させる観点から、30~100質量%含有することが好ましい。より好ましくは35~100質量%、さらに好ましくは40~100質量%、さらにより好ましくは50~100質量%、よりさらに好ましくは50~90質量%、特に好ましくは50~80質量%である。
また、成型時の流動性向上による成形外観の改善、カット時の割れや切粉を防止する観点から、ブロック共重合体(B)は、非変性ブロック共重合体(B-2)を、0~70質量%含有することが好ましい。より好ましくは0~65質量%、さらに好ましくは0~60質量%、さらにより好ましくは0~50質量%、よりさらに好ましくは10~50質量%、特に好ましくは20~50質量%である。変性ブロック共重合体(B-1)と、非変性ブロック共重合体(B-2)を併用することで、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物の流動性が向上し易くなり、成形歪が少なくなる傾向にある。そのため、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物をより大型形状及び/又は複雑な形状に成型する場合、特に割れ防止や耐衝撃性の向上効果の観点で、変性ブロック共重合体(B-1)と、非変性ブロック共重合体(B-2)を併用することが有効である。
【0072】
<添加剤>
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、上述した樹脂組成物(A)及びブロック共重合体(B)以外に、必要に応じて任意の添加剤を配合することができる。
【0073】
添加剤の種類は、熱可塑性樹脂やゴム状重合体の配合に一般的に用いられるものであればよく、以下に限定されるものではないが、例えば、シリカ、タルク、マイカ、ケイ酸カルシウム、ハドロタルサイト、カオリン、珪藻土、グラファイト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の無機充填剤、カーボンブラック等の有機充填剤が挙げられる。
【0074】
また、ステアリン酸、ベヘニン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、エチレンビスステアロアミド等の滑剤;離型剤、有機ポリシロキサン、ミネラルオイル等の可塑剤;ヒンダードフェノール系酸化防止剤、りん系、硫黄系及びアミン系熱安定剤等の酸化防止剤;ヒンダードアミン系光安定剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、難燃剤、帯電防止剤、有機繊維、ガラス繊維(GF)、炭素繊維、金属ウィスカ等の補強剤;酸化チタン、酸化鉄、カーボンブラック等の着色剤;その他「ゴム・プラスチック配合薬品」(ラバーダイジェスト社編)等に記載されたものが挙げられる。
【0075】
(熱可塑性樹脂組成物の製造方法)
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、特に制限されるものではなく、公知の方法が利用できる。
例えば、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、2軸スクリュー押出機、コニーダ、多軸スクリュー押出機等の一般的な混和機を用いて、各成分を溶融混練する方法、各成分を溶解又は分散混合後、溶剤を加熱除去する方法等が挙げられる。
本実施形態においては押出機による溶融混練法が生産性、良混練性の観点から好ましい。
熱可塑性樹脂組成物の形状に特に制限はないが、ペレット状、シート状、ストランド状、チップ状等を挙げられる。
また、溶融混練後、直接成形品とすることもできる。
【0076】
〔成形品〕
本実施形態の熱可塑性樹脂組成物は、従来公知の方法、例えば、押出成形、射出成形、二色射出成形、サンドイッチ成形、中空成形、圧縮成形、真空成形、回転成形、パウダースラッシュ成形、発泡成形、積層成形、カレンダー成形、ブロー成形等によって、実用上有用な成形品に加工することができる。また、必要に応じて、発泡、粉末、延伸、接着、印刷、塗装、メッキ等の加工をしてもよい。かかる成形方法により、シート、フィルム、各種形状の射出成形品、中空成形品、圧空成型品、真空成形品、押出成形品、発泡成形品等多種多様の成形品として活用でき、これらの成形品は、工業用、食品用、家電用、自動車用、建材用、スポーツ用、レジャー用等の各種包装材料や、各種容器に利用できる。
【0077】
ポリスチレン/ポリプロピレンの樹脂組成物からなる容器包装をリサイクルするときにPETフィルム等が混入する場合があり、リサイクル後は少量のPETを含有するポリスチレン/ポリプロピレン樹脂組成物の容器になることがある。
容器包装の材料として本実施形態の熱可塑性樹脂組成物を採用すると、ポリエステル系樹脂をバージン材の時点から含むので、容器包装としての性能が高く、リサイクルにより多少のPETフィルム等が混入する場合にも、リサイクル品が十分に所期の機能を発揮することができる。
また、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂が容器包装に使用され、リサイクルのために回収された場合でも、樹脂の劣化等に起因して、同じ組成のままでは容器包装にリサイクルできない場合があるが、回収品を一部及び/又は全部に含むように配合し、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物として使用することは、資源を有効に利用しながら十分な機能を奏する容器包装を利用する観点で好ましい態様である。
【実施例
【0078】
以下、具体的な実施例及び比較例を挙げて本実施形態について詳細に説明するが、本実施形態は以下の実施例に限定されるものではない。
実施例及び比較例に適用した、評価方法及び物性の測定方法について下記に示す。
【0079】
〔ブロック共重合体(B)の評価方法〕
((1)全ビニル芳香族炭化水素化合物単量体単位の含有量(全スチレン含有量))
一定量のブロック共重合体をクロロホルムに溶解し、紫外分光光度計(島津製作所製、UV-2450)にて測定し、ビニル芳香族化合物成分(スチレン)に起因する吸収波長(262nm)のピーク強度から検量線を用いてビニル芳香族炭化水素化合物単量体単位(スチレン)の含有量を算出した。
【0080】
((2)ビニル結合量)
ブロック共重合体中の共役ジエン単量体単位のビニル結合量(ポリブタジエンブロック中のビニル結合量)は、核磁気共鳴装置(NMR)を用いて、下記の条件で測定した。
全ての反応終了後の反応液に、大量のメタノールを添加することで、ブロック共重合体を沈殿させて回収した。次いで、ブロック共重合体をアセトンで抽出し、抽出液を真空乾燥し、1H-NMR測定のサンプルとして用いた1H-NMR測定の条件を以下に記す。
(測定条件)
測定機器 :JNM-LA400(JEOL製)
溶媒 :重水素化クロロホルム
サンプル濃度 :50MG/ML
観測周波数 :400MHZ
化学シフト基準:TMS(テトラメチルシラン)
パルスディレイ:2.904秒
スキャン回数 :64回
パルス幅 :45°
測定温度 :26℃
ビニル結合量は、得られたピーク中の共役ジエン単量体単位に関わる全てのピーク(1,2-結合、3,4-結合、1,4-結合)合計面積に対する1,2-結合及び3,4-結合のピーク合計面積の比率により求めた。
【0081】
((3)重量平均分子量、数平均分子量、分子量分布)
ブロック共重合体(水添ブロック共重合体)(B)の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)は、市販の標準ポリスチレンの測定から求めた検量線(標準ポリスチレンのピーク分子量を使用して作成)を使用して、クロマトグラムのピークの分子量に基づいて求めた。
測定ソフトとしては、HLC-8320ECOSEC収集を用い、解析ソフトとしてはHLC-8320ECOSEC解析を用いた。
(測定条件)
GPC ;HLC-8320GPC(東ソー株式会社製)
検出器 ;RI
検出感度 ;3MV/分
サンプリングピッチ;600MSEC
カラム ;TSKGEL SUPERHZM-N(6MMI.D×15CM)4本(東ソー株式会社製)
溶媒 ;THF
流量 ;0.6ML/分
濃度 ;0.5MG/ML
カラム温度 ;40℃
注入量 ;20ML
【0082】
((4)アミノ基変性率)
ブロック共重合体(B-1)のアミノ基変性率は、全ブロック共重合体中の変性ブロック共重合体の割合(モル%)とした。
測定方法としては、シリカゲルを充填剤としたGPCカラムに変性した成分が吸着する特性を応用し、変性ブロック共重合体と低分子量内部標準ポリスチレンを含む試料溶液について、上記(3)で測定したクロマトグラム中の標準ポリスチレンに対する水添変性ブロック共重合体の割合と、シリカ系カラムGPC〔装置:LC-10(島津製作所製)、カラム:Zorbax(デュポン社製)〕で測定したクロマトグラム中の標準ポリスチレンに対する変性ブロック共重合体の割合を比較し、それらの差分よりシリカカラムへの吸着量を測定した。
シリカカラムへ吸着しなかったものの割合を非変性ブロック共重合体の割合とし、それ以外を変性ブロック共重合体の割合とした。
【0083】
((5)酸無水物基の付加量)
ブロック共重合体(B-1)の酸無水物基変性品の付加量は、全水添ブロック共重合体中に付加反応している酸無水物基の付加量(質量%)とした。
測定方法としては、まず、変性ブロック共重合体(B-1)をアセトンにて60分間煮沸させた後、真空乾燥させたものを、トルエンに溶解させた。次いでフェノールフタレイン指示薬を入れ、ナトリウムメチラート(CH3ONa)のメタノール溶液で滴定を行い、ナトリウムメチラートの酸無水物基への付加量から酸無水物基の付加量を算出した。
【0084】
((6)水素添加率(水添率))
ブロック共重合体(B)中の共役ジエン単量体単位の二重結合の水素添加率は、核磁気共鳴装置(NMR)を用いて、前記((4)ビニル結合量)と同様の条件で測定した。
水素添加率は、得られたピーク中の共役ジエン単量体単位中の二重結合に関わる全てのピーク(1,2-結合、3,4-結合、1,4-結合)合計面積に対する水添された1,2-結合及び水添された3,4-結合及び水添された1,4-結合のピーク合計面積の比率により求めた。
【0085】
〔熱可塑性樹脂組成物の製造〕
(実施例1~3、参考例4、実施例5~14)、(比較例1~3)
後述する材料を用い、下記表2に示す配合割合(質量部)に基づき、同方向2条二軸押
出機(日本製鋼所製「TEX-30αII」、シリンダー口径30mm)によって、シリ
ンダー設定最高温度260℃で溶融混練して熱可塑性樹脂組成物のペレットを得た。
【0086】
〔熱可塑性樹脂組成物の評価方法〕
((7)メルトフローレート(MFR))
上述のようにして得られた熱可塑性樹脂組成物のペレットのメルトフローレート(MFR)を、JIS K7210(ISO1133準拠)に準拠し、温度230℃、荷重2.16kgの条件下で測定した。
MFRは5(g/10分)以上であれば、十分な成形加工性を有しているものと判断した。
【0087】
〔射出成形品の製造〕
上述のようにして得られた熱可塑性樹脂組成物のペレットを用いて、射出成形機(日精樹脂工業製「FE-120S18A」)によって、シリンダー設定最高温度220℃、金型温度40℃で、多目的試験片A型(ダンベル形状、全長170mm、平行部分の幅/長さ10mm/80mm、厚み4mm)、短冊形試験片(長110mm、幅10mm、厚み4mm)、小平板試験片(長90mm、幅50mm、厚み2mm)をそれぞれ作製した。
得られた試験片を用いて、下記の測定方法に従い物性を測定した。
【0088】
〔射出成形品の評価方法〕
((8)ロックウェル硬度)
小平板試験片を用いて、JIS K7202-2(ISO2039-2準拠)に準拠し、ロックウェル硬度計を用い、R硬さスケールにて測定した。
ロックウェル硬度は70(-)以上であれば、十分な剛性を有しているものと判断した。
【0089】
((9)引張破断強度、引張弾性率、引張破断伸び)
多目的試験片A型(ダンベル形状)を用いて、JIS K7161(ISO527-1準拠)に準拠し、引張試験機(ミネベア製「テクノグラフTG-5kN」)を用い、クロスヘッドスピード500mm/分で次のとおり引張試験を実施した。
引張破断強度・・・破断の際の応力を測定した。
引張弾性率・・・・引張時の弾性率を測定した。
引張破断伸び・・・破断の際の伸びを測定した。
引張破断強度は30(MPa)以上であれば、十分な強度を有しているものと判断した。
引張弾性率は1300(MPa)以上であれば、十分な剛性を有しているものと判断した。
引張破断伸びは4(%)以上あれば、十分な剛性を有しているものと判断した。
【0090】
((10)最大曲げ強度)
短冊状試験片を用いて、JIS K7171(ISO178準拠)に準拠し、引張試験機(ミネベア製「テクノグラフTG-5kN」)を用い、クロスヘッドスピード2mm/分、支点間距離64mm、圧子R5mmで次のとおり曲げ試験を実施した。
最大曲げ強度・・・最大応力を測定した。
曲げ弾性率・・・・曲げ時の弾性率を測定した。
破断の有無・・・・最大応力到達前の破断の有無を目視確認した。
最大曲げ強度は50(MPa)以上であれば、十分な強度を有しているものと判断した。
曲げ弾性率は1400(MPa)以上であれば、十分な剛性を有しているものと判断した。
破断の有無は、無いものであれば、十分な強度を有しているものと判断し、下記表2中、「○」と表記した。
【0091】
((11)シャルピー衝撃強度)
短冊状試験片を用いて、JIS K7110-1(ISO179-1準拠)に準拠し、シャルピー衝撃試験機を用い、打撃方向エッジワイズ、ノッチ無し、振り上げ角150°、支持台間距離62mm、ハンマー容量15Jで試験を実施した。
シャルピー衝撃強度は30(kJ/m2)以上であれば、十分な耐衝撃性を有しているものと判断した。
【0092】
((12)ビカット軟化点)
短冊状試験片を用いて、JIS K7206(ISO306準拠)に準拠し、軟化点測定機(東洋精機製「HDTテスター6M-2」)を用い、針入量1mm、荷重10N、昇温速度120℃/hで試験を実施した。
ビカット軟化点は100(℃)以上であれば、十分な耐熱変形性を有しているものと判断した。
【0093】
〔プレスシートの作製〕
上述のようにして得られた熱可塑性樹脂組成物のペレットを用いて、50t電熱プレス(東邦プレス製作所製)によって、設定温度200℃、100kgf/cm2で、幅110mm、長さ220mm、厚み0.5mmのプレスシートを作製した。得られたプレスシートを用いて、下記の測定方法に従い物性を測定した。
【0094】
((13)カット時の割れ、切粉)
カット時の割れについては、0.5mm厚プレスシートを、打ち抜き器(ダンベル社製「SDL-200」)を用いて、幅10mm、長さ60mmのカミソリ刃型の打ち抜き型(ダンベル社製「SSK-1000」)で10か所打ち抜いた際、打ち抜いた内側及び外側のシート割れが無いか目視で確認した。
カット時の切粉については、前記の10カ所打ち抜いた後のカミソリ刃への切粉の付着の有無を目視で確認した。
割れ・切粉が無ければ、充分なカット性を有していると判断し、下記表2中、「○」と表記した。
【0095】
次に、熱可塑性樹脂組成物に含まれる樹脂組成物(A)、水添ブロック共重合体(B)について、説明する。
【0096】
(樹脂組成物(A)の構成成分)
<ポリエステル系樹脂(A-1)>
ポリエステル系樹脂(A-1)は下記の市販品を使用した。
ポリエステル系樹脂(A-1-1):帝人株式会社TR-BB、ポリエチレンテレフタレート、融点245℃
ポリエステル系樹脂(A-1-2):ユニチカ株式会社TE-2000、ポリ乳酸、融点170℃
<ポリスチレン系樹脂(A-2)>
ポリスチレン系樹脂(A-2)は下記の市販品を使用した。
ポリスチレン系樹脂(A-2):PSジャパン株式会社685、ポリスチレン、MFR(200℃、5kg)2g/10分
<ポリオレフィン系樹脂(A-3)>
ポリオレフィン系樹脂(A-3)は下記の市販品を使用した。
ポリプロピレン系樹脂(A-3):サンアロマー株式会社PC630A、プロピレンランダム重合体、MFR(230℃、2.16kg)7.5g/10分
【0097】
(ブロック共重合体(水添ブロック共重合体)(B)の製造)
<水添触媒の調製>
後述する実施例及び比較例において、水添ブロック共重合体を製造する際に用いる水添触媒を、下記の方法により調製した。
攪拌装置を具備する反応容器を窒素置換しておき、これに、乾燥及び精製したシクロヘキサンを1L仕込んだ。
次に、ビス(η5-シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド100mmolを添加した。これを十分に攪拌しながら、トリメチルアルミニウム200mmolを含むn-ヘキサン溶液を添加して、室温にて約3日間反応させ、水添触媒を得た。
【0098】
<水添ブロック共重合体(1)>
内容積が10Lの攪拌装置及びジャケット付き槽型反応器を洗浄、乾燥、窒素置換してバッチ重合を行った。
先ず、1,3-ブタジエンモノマー5質量部を含むシクロヘキサン溶液を投入後、n-ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.155質量部とテトラメチルエチレンジアミン(以下、TMEDA)をn-ブチルリチウム1モルに対して0.28モル添加し、70℃で15分間重合した。
次いで、スチレンモノマー17質量部を含むシクロヘキサン溶液を加えて70℃で25分間重合し、さらに、1,3-ブタジエンモノマー63質量部を含むシクロヘキサン溶液を加えて70℃で40分間重合した。
最後に、スチレンモノマー15質量部を含むシクロヘキサン溶液を加えて70℃で25分間重合した。
重合反応終了後にメタノールを、n-ブチルリチウム1モルに対して0.95モル添加し、反応触媒を失活させ、ポリマーを得た。
次に、得られたポリマーに、前記水添触媒をポリマー100質量部当たりチタンとして100ppm添加し、水素圧0.8MPa、温度85℃で水添反応を行った。
水添反応終了後、安定剤としてオクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを重合体100質量部に対して0.3質量部添加し、水添ブロック共重合体(1)を得た。
得られた水添ブロック共重合体(1)は、全スチレン含有量32.3質量%、ポリブタジエンブロック中の水素添加前のビニル結合量35.5モル%、ポリマー全体の重量平均分子量7.9万、分子量分布1.33であった。また、1,3-ブタジエンに由来する脂肪族二重結合の水素添加率は99.5%であった。
【0099】
<水添ブロック共重合体(2)>
前記水添ブロック共重合体(1)を、脱溶剤、乾燥し、単軸押出機にてペレタイズ後、水添ブロック共重合体(1)100質量部に対し、無水マレイン酸を2.1質量部、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサンを0.12質量部添加し、二軸押出機にて設定温度200℃で付加反応を行い、水添ブロック共重合体(2)を得た。
得られた水添ブロック共重合体(2)は、無水マレイン酸による酸無水物基の付加量は1.8質量%であった。
【0100】
<水添ブロック共重合体(3)>
内容積が10Lの攪拌装置及びジャケット付き槽型反応器を洗浄、乾燥、窒素置換してバッチ重合を行った。
先ず、スチレンモノマー16質量部を含むシクロヘキサン溶液を投入後、n-ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.180質量部とテトラメチルエチレンジアミン(以下、TMEDA)をn-ブチルリチウム1モルに対して0.23モル添加し、70℃で25分間重合し、ついで、1,3-ブタジエンモノマー69質量部を含むシクロヘキサン溶液を加えて70℃で40分間重合した。
最後に、スチレンモノマー15質量部を含むシクロヘキサン溶液を加えて70℃で25分間重合した。
重合反応終了後に、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンをn-ブチルリチウム1モルに対して0.8モル添加し、70℃で15分間反応させた。
反応終了後にメタノールを、n-ブチルリチウム1モルに対して0.15モル添加し、反応触媒を失活させ、ポリマーを得た。
次に、得られたポリマーに、前記水添触媒をポリマー100質量部当たりチタンとして100ppm添加し、水素圧0.8MPa、温度85℃で水添反応を行った。
水添反応終了後、安定剤としてオクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを重合体100質量部に対して0.3質量部添加し、水添ブロック共重合体(3)を得た。
得られた水添ブロック共重合体(3)は、全スチレン含有量31.2質量%、ポリブタジエンブロック中の水素添加前のビニル結合量35.8モル%、ポリマー全体の重量平均分子量6.4万、分子量分布1.26であった。また、1,3-ブタジエンに由来する脂肪族二重結合の水素添加率は82.3%、アミノ基変性率は75.3モル%であった。
【0101】
<水添ブロック共重合体(4)>
内容積が10Lの攪拌装置及びジャケット付き槽型反応器を洗浄、乾燥、窒素置換してバッチ重合を行った。
先ず、スチレンモノマー16質量部を含むシクロヘキサン溶液を投入後、n-ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.095質量部とテトラメチルエチレンジアミン(以下、TMEDA)をn-ブチルリチウム1モルに対して0.26モル添加し、70℃で25分間重合し、ついで、1,3-ブタジエンモノマー69質量部を含むシクロヘキサン溶液を加えて70℃で40分間重合した。
最後に、スチレンモノマー15質量部を含むシクロヘキサン溶液を加えて70℃で25分間重合した。
重合反応終了後に、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンをn-ブチルリチウム1モルに対して0.8モル添加し、70℃で15分間反応させた。
反応終了後にメタノールを、n-ブチルリチウム1モルに対して0.15モル添加し、反応触媒を失活させ、ポリマーを得た。
次に、得られたポリマーに、前記水添触媒をポリマー100質量部当たりチタンとして100ppm添加し、水素圧0.8MPa、温度85℃で水添反応を行った。
水添反応終了後、安定剤としてオクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを重合体100質量部に対して0.3質量部添加し、水添ブロック共重合体(4)を得た。
得られた水添ブロック共重合体(4)は、全スチレン含有量30.8質量%、ポリブタジエンブロック中の水素添加前のビニル結合量36.9モル%、ポリマー全体の重量平均分子量15.3万、分子量分布1.28であった。また、1,3-ブタジエンに由来する脂肪族二重結合の水素添加率は84.7%、アミノ基変性率は72.8モル%であった。
【0102】
<水添ブロック共重合体(5)>
内容積が10Lの攪拌装置及びジャケット付き槽型反応器を洗浄、乾燥、窒素置換してバッチ重合を行った。
先ず、スチレンモノマー11質量部を含むシクロヘキサン溶液を投入後、n-ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.180質量部とテトラメチルエチレンジアミン(以下、TMEDA)をn-ブチルリチウム1モルに対して0.23モル添加し、70℃で25分間重合し、ついで、1,3-ブタジエンモノマー79質量部を含むシクロヘキサン溶液を加えて70℃で40分間重合した。
最後に、スチレンモノマー10質量部を含むシクロヘキサン溶液を加えて70℃で25分間重合した。
重合反応終了後に、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンをn-ブチルリチウム1モルに対して0.8モル添加し、70℃で15分間反応させた。
反応終了後にメタノールを、n-ブチルリチウム1モルに対して0.15モル添加し、反応触媒を失活させ、ポリマーを得た。
次に、得られたポリマーに、前記水添触媒をポリマー100質量部当たりチタンとして100ppm添加し、水素圧0.8MPa、温度85℃で水添反応を行った。
水添反応終了後、安定剤としてオクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを重合体100質量部に対して0.3質量部添加し、水添ブロック共重合体(5)を得た。
得られた水添ブロック共重合体(5)は、全スチレン含有量20.6質量%、ポリブタジエンブロック中の水素添加前のビニル結合量35.7モル%、ポリマー全体の重量平均分子量6.6万、分子量分布1.24であった。また、1,3-ブタジエンに由来する脂肪族二重結合の水素添加率は86.1%、アミノ基変性率は77.6モル%であった。
【0103】
<水添ブロック共重合体(6)>
内容積が10Lの攪拌装置及びジャケット付き槽型反応器を洗浄、乾燥、窒素置換してバッチ重合を行った。
先ず、スチレンモノマー16質量部を含むシクロヘキサン溶液を投入後、n-ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.055質量部とテトラメチルエチレンジアミン(以下、TMEDA)をn-ブチルリチウム1モルに対して0.28モル添加し、70℃で25分間重合し、ついで、1,3-ブタジエンモノマー69質量部を含むシクロヘキサン溶液を加えて70℃で40分間重合した。
最後に、スチレンモノマー15質量部を含むシクロヘキサン溶液を加えて70℃で25分間重合した。
重合反応終了後に、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンをn-ブチルリチウム1モルに対して0.8モル添加し、70℃で15分間反応させた。
反応終了後にメタノールを、n-ブチルリチウム1モルに対して0.15モル添加し、反応触媒を失活させ、ポリマーを得た。
次に、得られたポリマーに、前記水添触媒をポリマー100質量部当たりチタンとして100ppm添加し、水素圧0.8MPa、温度85℃で水添反応を行った。
水添反応終了後、安定剤としてオクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートを重合体100質量部に対して0.3質量部添加し、水添ブロック共重合体(6)を得た。
得られた水添ブロック共重合体(6)は、全スチレン含有量31.3質量%、ポリブタジエンブロック中の水素添加前のビニル結合量35.2モル%、ポリマー全体の重量平均分子量35.4万、分子量分布1.26であった。また、1,3-ブタジエンに由来する脂肪族二重結合の水素添加率は85.3%、アミノ基変性率は73.2モル%であった。
【0104】
【表1】
【0105】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明の熱可塑性樹脂組成物、及びそれを用いた成形品は、工業用、食品用、家電用、自動車用、建材用、スポーツ用、レジャー用等の各種包装材料容器として、産業上の利用可能性を有している。