(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-27
(45)【発行日】2022-05-11
(54)【発明の名称】給湯システム
(51)【国際特許分類】
F24H 15/375 20220101AFI20220428BHJP
【FI】
F24H4/02 Q
F24H4/02 P
(21)【出願番号】P 2018083941
(22)【出願日】2018-04-25
【審査請求日】2020-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今井 誠士
【審査官】宮下 浩次
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-009213(JP,A)
【文献】特開2013-224793(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 15/375
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を加熱するヒートポンプと、
水を貯えるタンクと、
タンクの下部からヒートポンプへ水を送り、ヒートポンプからタンクの上部へ水を送る循環路と、
循環路に設けられており、ヒートポンプとタンクの間で水を循環させる循環ポンプと、
タンクの上部から給湯箇所へ水を送る給湯路と、
給水源からタンクの下部へ水を送る給水路と、
制御装置を備えており、
循環ポンプを駆動してタンクとヒートポンプの間で水を循環させながら、ヒートポンプで水を加熱する沸き上げ運転を実行可能であり、
制御装置は、過去の所定期間における各日の時間帯ごとの給湯使用量の実績に基づいて、当日の時間帯ごとの給湯使用量を推定するように構成されており、
制御装置は、推定される時間帯ごとの給湯使用量に応じて、沸き上げ運転を実行するように構成されており、
制御装置は、推定される給湯使用量が大きい時間帯に備えて行う沸き上げ運転において、通常の沸き上げ運転よりも高い沸き上げ温度を設定するように構成されて
おり、
制御装置は、推定される給湯使用量が大きい時間帯に備えて行う沸き上げ運転において、通常の沸き上げ運転における沸き上げ温度で通常沸き上げ量の水を沸き上げた後、通常の沸き上げ運転よりも高い沸き上げ温度で高温沸き上げ量の水を沸き上げるように構成されており、
通常沸き上げ量と高温沸き上げ量は、合計したときにタンクの容量と一致する、給湯システム。
【請求項2】
タンクの上部の水の温度を検出する温度センサをさらに備えており、
制御装置は、通常の沸き上げ運転よりも高い沸き上げ温度で沸き上げ運転を実行した後に、再び通常の沸き上げ運転を行う場合に、沸き上げ運転における沸き上げ温度をタンクの上部の水の温度よりも高い温度に設定するように構成されている、請求項1の給湯システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する技術は、給湯システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、水を加熱するヒートポンプと、水を貯えるタンクと、タンクの下部からヒートポンプへ水を送り、ヒートポンプからタンクの上部へ水を送る循環路と、循環路に設けられており、ヒートポンプとタンクの間で水を循環させる循環ポンプと、タンクの上部から給湯箇所へ水を送る給湯路と、給水源からタンクの下部へ水を送る給水路と、制御装置を備える給湯システムが開示されている。その給湯システムは、循環ポンプを駆動してタンクとヒートポンプの間で水を循環させながら、ヒートポンプで水を加熱する沸き上げ運転を実行可能である。制御装置は、過去の所定期間における各日の時間帯ごとの給湯使用量の実績に基づいて、沸き上げ運転を実行するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、沸き上げ運転における沸き上げ温度を低く設定することで、ヒートポンプのCOPが高まり、給湯システムのエネルギー効率を高めることができる。このため、エネルギー効率の観点からは、沸き上げ運転における沸き上げ温度は、可能な限り低く設定することが好ましい。しかしながら、常に沸き上げ温度を低く設定した沸き上げ運転を実行する構成とすると、例えば浴槽への湯はりを行う場合など、短時間で大量の給湯使用量が見込まれる場合には、タンクの蓄熱量が不足するおそれがある。本明細書では、タンクの蓄熱量が不足する事態を予防しつつ、給湯システムのエネルギー効率を高めることが可能な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示する給湯システムは、水を加熱するヒートポンプと、水を貯えるタンクと、タンクの下部からヒートポンプへ水を送り、ヒートポンプからタンクの上部へ水を送る循環路と、循環路に設けられており、ヒートポンプとタンクの間で水を循環させる循環ポンプと、タンクの上部から給湯箇所へ水を送る給湯路と、給水源からタンクの下部へ水を送る給水路と、制御装置を備えている。給湯システムは、循環ポンプを駆動してタンクとヒートポンプの間で水を循環させながら、ヒートポンプで水を加熱する沸き上げ運転を実行可能である。制御装置は、過去の所定期間における各日の時間帯ごとの給湯使用量の実績に基づいて、当日の時間帯ごとの給湯使用量を推定するように構成されている。制御装置は、推定される時間帯ごとの給湯使用量に応じて、沸き上げ運転を実行するように構成されている。制御装置は、推定される給湯使用量が大きい時間帯に備えて行う沸き上げ運転において、通常の沸き上げ運転よりも高い沸き上げ温度を設定するように構成されている。制御装置は、推定される給湯使用量が大きい時間帯に備えて行う沸き上げ運転において、通常の沸き上げ運転における沸き上げ温度で通常沸き上げ量の水を沸き上げた後、通常の沸き上げ運転よりも高い沸き上げ温度で高温沸き上げ量の水を沸き上げるように構成されている。通常沸き上げ量と高温沸き上げ量は、合計したときにタンクの容量と一致する。
【0006】
上記の給湯システムでは、過去の実績に基づいて当日の時間帯ごとの給湯使用量を推定し、推定される給湯使用量が大きい時間帯に備えて行う沸き上げ運転では、沸き上げ温度を高く設定する。このような構成とすることで、例えば浴槽への湯はりを行う場合など、短時間で大量の給湯使用量が見込まれる時間帯において、タンクの蓄熱量が不足する事態を予防することができる。また、上記の給湯システムでは、推定される給湯使用量が大きい時間帯に備えて行う沸き上げ運転以外の、通常の沸き上げ運転では、沸き上げ温度を低く設定する。このような構成とすることで、ヒートポンプを高いCOPで動作させることができ、給湯システムのエネルギー効率を高めることができる。上記の給湯システムによれば、タンクの蓄熱量が不足する事態を予防しつつ、給湯システムのエネルギー効率を高めることができる。
【0008】
例えば浴槽への湯はりの後にシャワーが使用される場合など、短時間で大量に給湯が行われた後に、通常の給湯が行われる場合がある。このような場合には、短時間で大量に行われる給湯に対しては、タンクの蓄熱量を増加させるために高い沸き上げ温度としておく事が好ましいが、その後の通常の給湯に対しては、ヒートポンプのCOPを高めるために低い沸き上げ温度としておくことが好ましい。上記の給湯システムでは、推定される給湯使用量が大きい時間帯に備えて行う沸き上げ運転において、通常の沸き上げ運転における沸き上げ温度で通常沸き上げ量の水を沸き上げた後、通常の沸き上げ運転よりも高い沸き上げ温度で高温沸き上げ量の水を沸き上げることで、タンク内に、低い沸き上げ温度で加熱された水の層の上に、高い沸き上げ温度で加熱された水の層が積層した、温度成層が形成される。このような構成とすることで、短時間で大量に行われる給湯に対して、タンクの蓄熱量を確保しつつ、低い沸き上げ温度でヒートポンプを動作させる割合を増やすことができ、エネルギー効率を向上することができる。
【0009】
上記の給湯システムは、タンクの上部の水の温度を検出する温度センサをさらに備えていてもよい。制御装置は、通常の沸き上げ運転よりも高い沸き上げ温度で沸き上げ運転を実行した後に、再び通常の沸き上げ運転を行う場合に、沸き上げ運転における沸き上げ温度をタンクの上部の水の温度よりも高い温度に設定するように構成されていてもよい。
【0010】
上記の給湯システムによれば、高い沸き上げ温度で沸き上げ運転を実行した後に、再び通常の沸き上げ運転を行う際に、タンクの内部に高温の水の層が残存していた場合であっても、タンク内の温度成層を崩すことなく、必要な沸き上げ運転を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施例の給湯装置2の構成を模式的に示す図。
【
図2】実施例の給湯装置2の制御部70が行う設定処理を説明するフローチャートである。
【
図3】実施例の給湯装置2の制御部70が行う高温沸き上げ運転処理を説明するフローチャートである。
【
図4】実施例の給湯装置2の制御部70が行う通常沸き上げ運転処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に示すように、給湯装置2は、タンク10と、タンク水循環路20と、水道水導入路30と、供給路40と、ヒートポンプ50と、燃焼装置60と、制御部70と、リモコン80を備える。
【0013】
ヒートポンプ50は、自然環境である外気から吸熱して、タンク水循環路20内の水を加熱する熱源機である。ヒートポンプ50は、図示しないが、冷媒(代替フロンまたは自然冷媒、例えばR410Aやプロパン、CO2等)を循環させる冷媒循環路と、外気と冷媒との間で熱交換を行う蒸発器と、冷媒を圧縮して高温高圧にする圧縮器と、タンク水循環路20内の水と高温高圧の冷媒との間で熱交換を行う凝縮器と、熱交換を終えた後の冷媒を減圧させて低温低圧にする膨張弁と、を備えている。
【0014】
タンク10は、ヒートポンプ50によって加熱された温水を貯える。タンク10は、密閉型であり、断熱材によって外側が覆われている。タンク10内には満水まで水が貯留されている。本実施例では、タンク10の容量は160Lである。タンク10の頂部には、サーミスタ11が取り付けられている。また、タンク10には、サーミスタ12、14、16、18が、それぞれ、タンク10の上部から12L、30L、50L、80Lの位置に取り付けられている。各サーミスタ11、12、14、16、18は、その取付位置の水の温度を測定する。
【0015】
タンク水循環路20は、上流端がタンク10の下部に接続されており、下流端がタンク10の上部に接続されている。タンク水循環路20には、循環ポンプ22が介装されている。循環ポンプ22は、タンク水循環路20内の水を上流側から下流側へ送り出す。また、タンク水循環路20は、ヒートポンプ50の凝縮器を通過している。そのため、ヒートポンプ50を作動させると、タンク水循環路20内の水がヒートポンプ50の凝縮器で加熱される。従って、循環ポンプ22とヒートポンプ50とを作動させると、タンク10の下部の水がヒートポンプ50に送られて加熱され、ヒートポンプ50で加熱された水がタンク10の上部に戻される。また、タンク水循環路20のヒートポンプ50の上流側には、サーミスタ24が介装されている。サーミスタ24は、タンク10の下部から導出され、ヒートポンプ50を通過する前の水の温度を測定する。サーミスタ24は、循環ポンプ22よりもヒートポンプ50に近い位置のタンク水循環路20に設けられていてもよいし、循環ポンプ22よりもタンク10に近い位置のタンク水循環路20に設けられていてもよい。
【0016】
水道水導入路30は、上流端が給水源である水道水供給源31に接続されている。水道水導入路30には、サーミスタ32が介装されている。サーミスタ32は、水道水の温度を測定する。水道水導入路30の下流側は、第1導入路30aと第2導入路30bに分岐している。第1導入路30aの下流端は、タンク10の下部に接続されている。第2導入路30bの下流端は、供給路40の途中に接続されている。第2導入路30bの下流端と供給路40との接続部分には、混合弁42が設けられている。混合弁42は、供給路40内を流れる温水に、第2導入路30b内の水を混合させる量を調整する。
【0017】
供給路40は、上流端がタンク10の上部に接続されている。第2導入路30bとの接続部より上流側の供給路40には、サーミスタ41が介装されている。サーミスタ41は、タンク10から供給路40に供給される水の温度を測定する。第2導入路30bとの接続部より下流側の供給路40には、燃焼装置60が介装されている。また、燃焼装置60より下流側の供給路40には、サーミスタ44が介装されている。サーミスタ44は、燃焼装置60を通過した後の水の温度を測定する。燃焼装置60は、燃料ガスの燃焼によって水を加熱する。燃焼装置60は、サーミスタ44が測定する水の温度が、給湯設定温度と一致するように、供給路40内の水を加熱する。供給路40の下流端は、例えば台所のカランや、浴室48のシャワー54やカラン56等に接続されている。また、供給路40の下流端には、浴室48の浴槽58に湯はりをするための湯はり弁46が設けられている。湯はり弁46は、開度を調整することにより浴槽58へ供給される温水の流量を調整可能である。なお、本明細書では、供給路40から温水が供給される、台所のカランや、浴室48のシャワー54やカラン56、浴槽58を総称して、給湯箇所ともいう。
【0018】
制御部70は、図示しないCPU、ROM、RAM等を備えている。制御部70は、給湯装置2の各構成要素と電気的に接続されており、各構成要素の動作を制御する。制御部70には、リモコン80が接続されている。リモコン80は、図示しないCPU、ROM、RAM等を備えている。また、リモコン80は、給湯装置2に関連する各種の情報を表示する表示部80aと、給湯装置2に関連する各種の操作入力を受け入れる操作部80bを備えている。ユーザは、リモコン80を介して、シャワー54やカラン56、浴槽58等に供給する水の温度である給湯設定温度を設定しておくことができる。また、ユーザは、リモコン80を介して、浴槽58への湯はりの開始を指示することができる。
【0019】
次いで、給湯装置2の動作について説明する。給湯装置2は、沸き上げ運転、給湯運転および湯はり運転を実行することができる。なお、本明細書では、給湯装置2の給湯運転と湯はり運転の両方を、給湯装置2による給湯という。以下、各運転について説明する。
【0020】
(沸き上げ運転)
沸き上げ運転は、ヒートポンプ50によって、タンク10内の水を加熱する運転である。制御部70によって沸き上げ運転の実行が指示されると、ヒートポンプ50が作動するとともに、循環ポンプ22が作動する。循環ポンプ22が作動すると、タンク水循環路20内をタンク10内の水が循環する。即ち、タンク10の下部に存在する水がタンク水循環路20内に導入され、導入された水がヒートポンプ50の凝縮器を通過する際に、冷媒の熱によって加熱され、加熱された水がタンク10の上部に戻される。沸き上げ運転においては、制御部70は、ヒートポンプ50によって加熱された水の温度が、沸き上げ設定温度に一致するように、ヒートポンプ50および循環ポンプ22の動作を制御する。これにより、タンク10の上部に、沸き上げ設定温度まで昇温した水が戻される。タンク10の内部には、低温の水の層の上に高温の水の層が積層された、温度成層が形成される。
【0021】
(給湯運転)
給湯運転は、タンク10内の水を給湯箇所に供給する運転である。給湯運転は、上記の沸き上げ運転中にも実行することができる。給湯箇所において給湯栓が開かれると、水道水供給源31からの水圧によって、水道水導入路30(第1導入路30a)からタンク10の下部に水道水が流入する。同時に、タンク10上部の温水が、供給路40を介して給湯箇所に供給される。
【0022】
制御部70は、タンク10から供給路40に供給される水の温度(即ち、サーミスタ41の測定温度)が、給湯設定温度より高い場合には、混合弁42を開いて第2導入路30bから供給路40に水道水を導入する。従って、タンク10から供給された水と第2導入路30bから供給された水道水とが、供給路40内で混合される。制御部70は、給湯箇所に供給される水の温度が、給湯設定温度と一致するように、混合弁42の開度を調整する。一方、制御部70は、タンク10から供給路40に供給される水の温度が、給湯設定温度より低い場合には、燃焼装置60を作動させる。従って、供給路40を通過する水が燃焼装置60によって加熱される。制御部70は、給湯箇所に供給される水の温度が、給湯設定温度と一致するように、燃焼装置60の出力を制御する。
【0023】
(湯はり運転)
湯はり運転は、タンク10内の水を浴槽58に供給する運転である。リモコン80から湯はりの開始が指示されると、制御部70は、湯はり弁46を開く。これによって、給湯運転と同様にして、給湯設定温度に調温された水が浴槽58へ供給される。
【0024】
(学習制御)
制御部70は、1時間毎に、給湯で使用された温水の量を示す給湯使用量を記憶する。制御部70は、過去の所定期間(例えば7日間)の各日について、1時間毎の給湯使用量を、給湯装置2の給湯実績として記憶している。
【0025】
制御部70は、毎日、現在時刻が基準時刻(例えば2:00)になる毎に、
図2に示す設定処理を行う。
【0026】
ステップS2では、制御部70は、前日までの給湯実績に基づいて、当日に予想される1時間毎の給湯使用量を、予測出湯量Qm1~Qm24として推定する。例えば、Qm1は、2:00から3:00までの予測出湯量であり、Qm2は、3:00から4:00までの予測出湯量であり、Qm24は、1:00から2:00までの予測出湯量である。
【0027】
ステップS4では、制御部70は、予測出湯量Qm1~Qm24に基づいて、通常の沸き上げ温度の沸き上げ運転で対応可能な時間帯(通常時間帯)と、高温の沸き上げ温度の沸き上げ運転での対応が必要な時間帯(高温時間帯)を特定する。例えば、制御部70は、通常の沸き上げ温度(例えば65℃)でタンク10を満畜(例えば160L)まで沸き上げた後、給湯設定温度(例えば40℃)で予測出湯量Qm1~Qm24の給湯が行われた場合に、タンク10の蓄熱量として最小蓄熱量(例えば、給湯設定温度(例えば40℃)で所定量(例えば50L)の給湯が可能な蓄熱量)を確保できない場合に、その予測出湯量Qm1~Qm24に対応する時間帯を、高温時間帯として特定し、それ以外の時間帯を、通常時間帯として特定する。例えば、制御部70は、予測出湯量Qm16に対応する時間帯(例えば18:00から19:00まで)を、高温時間帯として特定し、予測出湯量Qm1~Qm15、Qm17~Qm24(例えば、2:00から18:00までと、19:00から2:00まで)を、通常時間帯として特定する。
【0028】
ステップS6では、制御部70は、高温時間帯に備えて行う沸き上げ運転の沸き上げ温度(高温沸き上げ温度)を特定する。例えば、制御部70は、通常の沸き上げ温度(例えば65℃)よりも所定温度幅(例えば5℃)高い温度(例えば70℃)を判定用沸き上げ温度として設定する。そして、制御部70は、判定用沸き上げ温度でタンク10を満畜(例えば160L)まで沸き上げた後、給湯設定温度(例えば40℃)で予測出湯量(例えばQm16)の給湯が行われた場合に、タンク10の蓄熱量として最小蓄熱量を確保できるか否かを判断する。上記の場合で、タンク10の蓄熱量として最小蓄熱量を確保できる場合には、制御部70は、判定用沸き上げ温度を高温沸き上げ温度として設定する。上記の場合で、タンク10の蓄熱量として最小蓄熱量を確保できない場合、制御部70は、判定用沸き上げ温度(例えば70℃)をさらに所定温度幅(例えば5℃)高い温度(例えば75℃)に設定した上で、上記の判定を再び行う。制御部70は、上記の処理を繰り返し行って、高温沸き上げ温度(例えば85℃)を特定する。
【0029】
ステップS8では、制御部70は、高温時間帯に備えて行う沸き上げ運転に関して、高温沸き上げ温度(例えば85℃)での沸き上げ量(高温沸き上げ量)と、通常の沸き上げ温度(例えば65℃)での沸き上げ量(通常沸き上げ量)を特定する。高温沸き上げ量と通常沸き上げ量は、合計したときにタンク10の容量(例えば160L)と一致する。制御部70は、通常の沸き上げ温度(例えば65℃)で通常沸き上げ量の沸き上げ運転を行い、かつ高温沸き上げ温度(例えば85℃)で高温沸き上げ量の沸き上げ運転を行った場合に、高温時間帯の予測出湯量(例えばQm16)の給湯が行われた後に、タンク10の蓄熱量として最小蓄熱量を確保できるように、高温沸き上げ量と通常沸き上げ量を特定する。
【0030】
ステップS10では、制御部70は、当日の沸き上げ運転の開始時刻を特定する。例えば、制御部70は、高温時間帯より前の時間帯に対応する予測出湯量Qm1~Qm15に備えて行う沸き上げ運転と、高温時間帯に対応する予測出湯量Qm16に備えて行う沸き上げ運転と、高温時間帯より後の時間帯に対応する予測出湯量Qm17~Qm24に備えて行う沸き上げ運転について、それぞれの時間帯の最初の給湯が開始されるまでに沸き上げ運転が終了するように、沸き上げ運転の開始時刻を特定する。
【0031】
図2の処理の終了後、制御部70は、設定された沸き上げ運転の開始時刻が到来すると、
図3または
図4に示す処理を実行する。制御部70は、高温時間帯に備えて行う沸き上げ運転の開始時刻が到来すると、
図3に示す高温沸き上げ運転処理を実行し、それ以外の沸き上げ運転の開始時刻が到来すると、
図4に示す通常沸き上げ運転処理を実行する。
【0032】
(高温沸き上げ運転処理)
以下では
図3を参照しながら、制御部70が行う高温沸き上げ運転処理について説明する。
【0033】
ステップS22では、制御部70は、沸き上げ設定温度を通常沸き上げ温度(例えば65℃)に設定する。
【0034】
ステップS24では、制御部70は、沸き上げ運転を開始する。これによって、通常沸き上げ温度(例えば65℃)に加熱された水が、タンク10の上部に蓄えられていく。
【0035】
ステップS26では、制御部70は、ステップS24以降の沸き上げ運転での沸き上げ量が、通常沸き上げ量に達するまで待機する。沸き上げ運転での沸き上げ量は、例えば、循環ポンプ22の回転数と、沸き上げ運転の継続時間に基づいて、算出することができる。ステップS26で沸き上げ量が通常沸き上げ量に達すると(YESとなると)、処理はステップS28へ進む。
【0036】
ステップS28では、制御部70は、沸き上げ設定温度を通常沸き上げ温度(例えば65℃)から高温沸き上げ温度(例えば85℃)へ変更する。これによって、タンク10の上部には、通常沸き上げ温度(例えば65℃)まで加熱された水の上方に、高温沸き上げ温度(例えば85℃)まで加熱された水が蓄えられていく。
【0037】
ステップS30では、制御部70は、ステップS28以降の沸き上げ運転での沸き上げ量が、高温沸き上げ量に達するまで待機する。ステップS30で沸き上げ量が高温沸き上げ量に達すると(YESとなると)、処理はステップS32へ進む。
【0038】
ステップS32では、制御部70は、沸き上げ運転を終了する。
【0039】
図3に示す高温沸き上げ運転処理を実行することで、タンク10の内部には、
図1に示すように、低温(例えば65℃)の水の層の上に高温(例えば85℃)の水の層が積層された温度成層が形成される。これによって、短時間で行われる大量の給湯(例えば予測出湯量Qm16)に対してタンク10に十分な蓄熱量を確保しつつ、低い沸き上げ温度でヒートポンプ50を動作させる割合を増やすことができ、エネルギー効率を向上することができる。
【0040】
(通常沸き上げ運転処理)
以下では
図4を参照しながら、制御部70が行う通常沸き上げ運転処理について説明する。
【0041】
ステップS42では、制御部70は、サーミスタ11によって検出されるタンク10の上部の水の温度(タンク上部温度)を取得する。
【0042】
ステップS44では、制御部70は、タンク上部温度が、通常沸き上げ温度(例えば65℃)以下であるか否かを判断する。
【0043】
ステップS44で、タンク上部温度が通常沸き上げ温度(例えば65℃)以下である場合(YESの場合)、処理はステップS46へ進む。ステップS46では、制御部70は、沸き上げ設定温度を通常沸き上げ温度(例えば65℃)に設定する。ステップS46の後、処理はステップS50へ進む。
【0044】
ステップS44で、タンク上部温度が通常沸き上げ温度(例えば65℃)を超えている場合(NOの場合)、処理はステップS48へ進む。ステップS48では、制御部70は、沸き上げ設定温度を、タンク上部温度に所定温度幅(例えば1℃)を加算した温度に設定する。これによって、タンク10の内部の温度成層を崩してしまうことなく、その後の沸き上げ運転を行うことができる。ステップS48の後、処理はステップS50へ進む。
【0045】
ステップS50では、制御部70は、沸き上げ運転を開始する。これによって、ステップS46またはステップS48で設定された沸き上げ設定温度まで加熱された水が、タンク10の上部に蓄えられていく。
【0046】
通常は、沸き上げ運転の実行によって、タンク10の上部では沸き上げ設定温度まで加熱された水が徐々に増えていく。しかしながら、沸き上げ運転の実行中に、給湯運転が行われることによって、タンク10の上部の水の温度が低下していくことがある。このため、制御部70は、ステップS50で沸き上げ運転を開始した後も、ステップS52以降の処理によって、沸き上げ設定温度の更新を行う。
【0047】
ステップS52では、制御部70は、サーミスタ11によって検出されるタンク10の上部の水の温度(タンク上部温度)を取得する。
【0048】
ステップS54では、制御部70は、タンク上部温度が、通常沸き上げ温度(例えば65℃)以下であるか否かを判断する。
【0049】
ステップS54で、タンク上部温度が通常沸き上げ温度(例えば65℃)以下である場合(YESの場合)、処理はステップS56へ進む。ステップS56では、制御部70は、沸き上げ設定温度を通常沸き上げ温度(例えば65℃)に設定する。ステップS56の後、処理はステップS60へ進む。
【0050】
ステップS54で、タンク上部温度が通常沸き上げ温度(例えば65℃)を超えている場合(NOの場合)、処理はステップS58へ進む。ステップS58では、制御部70は、沸き上げ設定温度を、タンク上部温度に所定温度幅(例えば1℃)を加算した温度に設定する。これによって、タンク10の内部の温度成層を崩してしまうことなく、その後の沸き上げ運転を行うことができる。ステップS58の後、処理はステップS60へ進む。
【0051】
ステップS60では、制御部70は、沸き上げ設定量を特定する。例えば、予測出湯量Qm17~Qm24に備えた沸き上げ運転の場合には、制御部70は、ステップS50以降すでに沸き上げられた水の沸き上げ温度および沸き上げ量を勘案した上で、ステップS56またはステップS58で設定された沸き上げ設定温度で、予測出湯量Qm17~Qm24を賄うことが可能な沸き上げ量を算出し、沸き上げ設定量として特定する。
【0052】
ステップS62では、制御部70は、ステップS50以降の沸き上げ運転での沸き上げ量が、ステップS60で特定された沸き上げ設定量に達したか否かを判断する。ステップS62で沸き上げ量が沸き上げ設定量に達していない場合(NOの場合)、処理はステップS52へ戻る。ステップS62で沸き上げ量が沸き上げ設定量に達すると(YESとなると)、処理はステップS64へ進む。
【0053】
ステップS64では、制御部70は、沸き上げ運転を終了する。
【0054】
図4に示す通常沸き上げ運転処理では、高い沸き上げ温度で沸き上げ運転を実行した後(例えば、予測出湯量Qm16に備えて
図3の高温沸き上げ運転処理を実行した後)の沸き上げ運転において、タンク10の上部に高温(例えば85℃)の水が残存している場合であっても、タンク10の内部の温度成層を崩すことなく、必要な沸き上げ運転を行うことができる。
【0055】
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0056】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0057】
2 :給湯装置
10 :タンク
11 :サーミスタ
12 :サーミスタ
14 :サーミスタ
16 :サーミスタ
18 :サーミスタ
20 :タンク水循環路
22 :循環ポンプ
24 :サーミスタ
30 :水道水導入路
30a :第1導入路
30b :第2導入路
31 :水道水供給源
32 :サーミスタ
40 :供給路
41 :サーミスタ
42 :混合弁
44 :サーミスタ
46 :湯はり弁
48 :浴室
50 :ヒートポンプ
54 :シャワー
56 :カラン
58 :浴槽
60 :燃焼装置
70 :制御部
80 :リモコン
80a :表示部
80b :操作部