(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-27
(45)【発行日】2022-05-11
(54)【発明の名称】キュービクルシステム
(51)【国際特許分類】
H02B 3/00 20060101AFI20220428BHJP
H02B 13/065 20060101ALI20220428BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20220428BHJP
【FI】
H02B3/00 M
H02B13/065 D
H02J13/00 301A
(21)【出願番号】P 2018088252
(22)【出願日】2018-05-01
【審査請求日】2021-03-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000124591
【氏名又は名称】河村電器産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【氏名又は名称】石田 喜樹
(72)【発明者】
【氏名】馬渡 弘友希
(72)【発明者】
【氏名】三谷 靖幸
(72)【発明者】
【氏名】石原 孝一
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-096906(JP,A)
【文献】特開2002-315233(JP,A)
【文献】特開平10-163041(JP,A)
【文献】特開2005-312112(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02B 1/00 - 1/38
H02B 1/46 - 7/08
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次側から供給される交流電力を変圧して二次側に出力する変圧器がそれぞれ設けられた複数のキュービクルと、
複数の
前記キュービクルにそれぞれ配置され、対応するキュービクルの状態量
として前記変圧器の二次側の状態量を計測する複数の子機と、
複数の前記子機と通信可能に接続される親機と、を備え、
前記親機は、複数の前記子機により計測される計測情報を表示する
一方、
複数の前記キュービクルにそれぞれ設けられる前記変圧器は、共通の電路から一次側に交流電力が供給されるものであり、
前記親機は、前記共通の電路を介して前記変圧器に供給されている前記変圧器の一次側の状態量を計測する
キュービクルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、キュービクルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載のキュービクル式高圧受電設備がある。特許文献1に記載のキュービクルは、変圧器、電力用コンデンサ、高圧負荷開閉器、及び計測器等を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このようなキュービクルの点検の際には、キュービクルの計測器により計測される変圧器の電圧や電流等の情報を確認する作業が行われる。一方、例えば製造メーカの工場には、複数のキュービクルが異なる場所に設置されている場合がある。このような工場で複数のキュービクルの点検を行う場合には、異なる場所に設置されている複数のキュービクルのそれぞれの計測器の計測情報を確認する必要がある。これがキュービクルの点検の工数を増大させる要因となっている。
【0005】
本開示は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、点検時の工数を低減することの可能なキュービクルシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するキュービクルシステムは、一次側から供給される交流電力を変圧して二次側に出力する変圧器がそれぞれ設けられた複数のキュービクルと、複数のキュービクルにそれぞれ配置され、対応するキュービクルの状態量として変圧器の二次側の状態量を計測する複数の子機と、複数の子機と通信可能に接続される親機と、を備え、親機は、複数の子機により計測される計測情報を表示する一方、複数のキュービクルにそれぞれ設けられる変圧器は、共通の電路から一次側に交流電力が供給されるものであり、親機は、共通の電路を介して変圧器に供給されている変圧器の一次側の状態量を計測する。
この構成によれば、複数のキュービクルのそれぞれに配置される子機の計測情報が親機
に表示されるため、点検者は、全てのキュービクルの計測情報を親機で確認することができる。よって、点検者は、異なる場所に配置されている複数のキュービクルにそれぞれ計器確認する必要がなくなるため、点検時の工数を低減することができる。
また、点検者は、複数のキュービクルのそれぞれの変圧器の二次側の状態量を親機で確認することができる。
さらに、点検者は、複数のキュービクルのそれぞれの変圧器の一次側の状態量を親機で更に確認することができるため、利便性を更に向上させることができる。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、点検時の工数を低減することの可能なキュービクルシステムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態のキュービクルシステムの概略構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、実施形態の子機の概略構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、実施形態の親機の概略構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、実施形態の第2及び第3のキュービクルの概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、キュービクルシステムの一実施形態について図面を参照しながら説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
図1に示されるように、本実施形態のキュービクルシステム10は、第1キュービクル11と、第2キュービクル12と、第3キュービクル13とを備えている。各キュービクル11~13は、電力会社等から供給される高圧の商用電力を、需要家の負荷設備の仕様に適合した電圧や周波数を有する電力に変換するための機器一式を金属製の外箱に収めた設備からなる。各キュービクル11~13は、例えば製造メーカの工場の敷地内の異なる場所に配置されている。
【0012】
第1キュービクル11は、断路器(DS:Disconnect Switch)20と、真空遮断器(VCB:Vacuum Circuit Breaker)21と、過電流継電器(OCR:Over Current Relay)22と、変圧器23a~23dと、親機24と、子機25a,25bとを備えている。
【0013】
各変圧器23a~23dは、高圧母線からなる一次側電路W1に電気的に並列に接続されている。各変圧器23a~23dは、一次側電路W1から供給される高圧の交流電力を低圧の単相交流電力に変換する電灯変圧器や、高圧の交流電力を低圧の三相交流電力に変換する動力変圧器等からなる。各変圧器23a~23dは、変換した交流電力を、それぞれの二次側電路W2a~W2dを介して負荷設備に供給する。
【0014】
断路器20、真空遮断器21、及び過電流継電器22は、一次側電路W1に配置されている。断路器20は、一次側電路W1の無負荷時の電圧を開閉するための機器である。過電流継電器22は、一次側電路W1の短絡や負荷設備の過負荷により一次側電路W1に発生する過電流を変流器220により検出するとともに、検出された過電流が所定値以上になることに基づいて真空遮断器21をオフ状態にすることにより一次側電路W1を遮断する機器である。
【0015】
各変圧器23a~23dの二次側電路W2a~W2dには、計器用変流器26a~26d及び計器用変圧器27a~27dが配置されている。計器用変流器26a~26dは、二次側電路W2a~W2dを流れる大電流を子機25a,25bにより計測可能な小電流に変換して出力する。計器用変圧器27a~27dは、二次側電路W2a~W2dに印加されている高電圧を子機25a,25bにより計測可能な低電圧に変換して出力する。
【0016】
子機25aは、計器用変流器26a,26bのそれぞれの出力信号、及び計器用変圧器27a,27bのそれぞれの出力信号に基づいて変圧器23a,23bのそれぞれの二次側の電流及び電圧を検出する。
具体的には、
図2に示されるように、子機25aは、計測部30と、制御部31と、システム内通信部32とを備えている。
【0017】
計測部30には、計器用変流器26a,26bのそれぞれの出力信号、及び計器用変圧器27a,27bのそれぞれの出力信号が取り込まれている。計測部30は、それらの出力信号に基づいて変圧器23a,23bのそれぞれの二次側の電流及び電圧を計測するとともに、それらの計測情報を制御部31に送信する。
【0018】
システム内通信部32は、親機24や子機25bとの通信を可能とする部分である。システム内通信部32を介した親機24や子機25bとの通信方式には、例えばシリアル通信方式を用いることが可能である。
制御部31は、計測部30から送信される変圧器23a,23bのそれぞれの二次側の電流及び電圧の計測情報をシステム内通信部32により親機24に送信する。また、制御部31は、子機25bから送信される計測情報をシステム内通信部32により受信すると、受信した計測情報を親機24に送信する。
【0019】
子機25bは、子機25aと略同一の構造を有している。但し、子機25bのシステム内通信部32は、
図1に示されるように子機25a及び第2キュービクル12との通信を可能としている。子機25bの制御部31は、変圧器23c,23dのそれぞれの二次側の電流及び電圧の計測情報をシステム内通信部32により子機25aに送信する。また、制御部31は、第2キュービクル12から送信される計測情報をシステム内通信部32により受信すると、受信した計測情報を子機25aに送信する。
【0020】
図1に示されるように、一次側電路W1には、計器用変流器28及び計器用変圧器29が配置されている。計器用変流器28は、一次側電路W1を流れる大電流を親機24により計測可能な小電流に変換して出力する。計器用変圧器29は、一次側電路W1に印加されている高電圧を親機24により計測可能な低電圧に変換して出力する。
【0021】
親機24は、計器用変流器28及び計器用変圧器29のそれぞれの二次側の電流及び電圧を検出する。
具体的には、
図3に示されるように、親機24は、計測部40と、制御部41と、タッチパネル42と、システム内通信部43と、ネットワーク通信部44とを備えている。
【0022】
計測部40には、計器用変流器28及び計器用変圧器29のそれぞれの出力信号が取り込まれている。計測部40は、それらの出力信号に基づいて一次側の電流及び電圧を計測するとともに、それらの計測情報を制御部41に送信する。
タッチパネル42は、親機24により取得可能な各種情報を表示する表示部としての機能、及びタッチ操作により各種情報を入力可能な入力部としての機能を有している。
【0023】
システム内通信部43は、子機25aや第3キュービクル13との通信を可能とする部分である。システム内通信部43を介した子機25aや第3キュービクル13との通信方式には、例えばシリアル通信方式を用いることができる。
ネットワーク通信部44は、LTE等の長距離無線通信やWi-fi等の近距離無線通信を用いることにより、ネットワーク回線NTを介したサーバ装置50との通信を可能とする部分である。
【0024】
制御部41は、計測部30から一次側の電流及び電圧の計測情報を取得する。また、制御部41は、子機25aからシステム内通信部43を介して変圧器23a~23dのそれぞれの二次側の電流及び電圧の計測情報、並びに第2キュービクル12の計測情報を取得する。また、制御部41は、第3キュービクル13からシステム内通信部43を介して第3キュービクル13の計測情報を取得する。制御部41は、タッチパネル42に対する点検者のタッチ操作に基づいて、これらの計測情報をタッチパネル42に表示する。
【0025】
また、制御部41は、これらの計測情報から演算可能な物理量を演算式等により演算する。例えば、制御部41は、変圧器23a~23dのそれぞれの二次側の電流及び電圧の計測情報から、変圧器23a~23dのそれぞれの電力や力率、電力量等を演算する。制御部41は、タッチパネル42に対する点検者のタッチ操作に基づいて、これらの演算情報をタッチパネル42に表示する。
【0026】
さらに、制御部41は、これらの計測情報及び演算情報をネットワーク通信部44によりサーバ装置50に送信することが可能である。サーバ装置50は、制御部41から送信される各キュービクル11~13の計測情報及び演算情報をデータベース化している。
図1に示されるように、第1キュービクル11の一次側電路W1には、第2キュービクル12及び第3キュービクル13が電気的に並列に接続されている。
図4に示されるように、第2キュービクル12及び第3キュービクル13は、第1キュービクル11の構成要素の一部、具体的には変圧器23a~23d、子機25a,25b、計器用変流器26a~26d、及び計器用変圧器27a~27dを備える構造からなる。それらの要素の基本的な機能は、
図1で説明した通りであるため、詳細な説明は割愛する。
【0027】
なお、第2キュービクル12の各変圧器23a~23dは、第1キュービクル11から延びる一次側電路W1に電気的に並列に接続されている。第2キュービクル12の子機25aは、変圧器23a,23bのそれぞれの二次側の電流及び電圧の計測情報を第1キュービクル11の子機25bに送信する。また、第2キュービクル12の子機25aは、子機25bから送信される計測情報を受信すると、受信した計測情報を第1キュービクル11の子機25bに送信する。
【0028】
一方、第3キュービクル13の各変圧器23a~23dは、第1キュービクル11から延びる一次側電路W1に電気的に並列に接続されている。第3キュービクル13の子機25aは、変圧器23a,23bのそれぞれの二次側の電流及び電圧の計測情報を第1キュービクル11の親機24に送信する。また、第3キュービクル13の子機25aは、子機25bから送信される計測情報を受信すると、受信した計測情報を第1キュービクル11の親機24に送信する。
【0029】
このように、親機24は、キュービクル11~13にそれぞれ設けられる子機25a,25bと直接的又は間接的に通信可能である。
次に、本実施形態のキュービクルシステム10の動作例について説明する。
【0030】
第1キュービクル11では、各変圧器23a~23dのそれぞれの電流及び電圧の計測情報が子機25a,25bから親機24に送信される。また、第2キュービクル12に設置されている各変圧器23a~23dのそれぞれの電流及び電圧の計測情報は、第1キュービクル11の子機25a,25bを介して親機24に送信される。さらに、第3キュービクル13に設置されている各変圧器23a~23dのそれぞれの電流及び電圧の計測情報は、第1キュービクル11の親機24に送信される。
【0031】
図3に示される親機24は、各キュービクル11~13の変圧器23a~23dの電流及び電圧の計測情報を取得する。また、親機24は、各キュービクル11~13の変圧器23a~23dの電流及び電圧の計測情報に基づいて、各キュービクル11~13の変圧器23a~23dの電力や力率、電力量等を演算する。
【0032】
さらに、親機24は、一次側電路W1の電圧及び電流の情報を取得する。また、親機24は、一次側電路W1の電圧及び電流の計測情報に基づいて、一次側電路W1の電力や力率、電力量等を演算する。
親機24は、タッチパネル42に対する点検者の操作に基づいて、各キュービクル11~13の変圧器23a~23dの電流及び電圧の計測情報、及びその計測情報から取得可能な演算情報をタッチパネル42に表示する。また、親機24は、タッチパネル42に対する点検者の操作に基づいて、一次側電路W1の電圧及び電流の計測情報、及びその計測情報から取得可能な演算情報をタッチパネル42に表示する。すなわち、点検者は、親機24を操作するだけで、各キュービクル11~13の計測情報及び演算情報を閲覧することができる。
【0033】
また、親機24は、各キュービクル11~13の計測情報及び演算情報をサーバ装置50に送信している。親機24からサーバ装置50に送信される各キュービクル11~13の計測情報及び演算情報は、サーバ装置50においてデータベース化される。このデータベース化された情報は、スマートフォンやデスクトップパソコン等の任意の機器で閲覧可能である。
【0034】
以上説明した本実施形態のキュービクルシステム10によれば、以下の(1)~(3)に示される作用及び効果を得ることができる。
(1)親機24は、複数のキュービクル11~13にそれぞれ配置される子機25a,25bにより計測される計測情報を表示する。このような構成によれば、点検者は、全てのキュービクル11~13の計測情報を親機24で確認することができる。すなわち、点検者は、異なる場所に配置されている複数のキュービクル11~13にそれぞれ計器確認する必要がなくなるため、点検時の工数を低減することができる。
【0035】
(2)子機25a,25bは、キュービクル11~13の状態量として、各キュービクル11~13のそれぞれの変圧器23a~23dの二次側の電圧や電流等の状態量を計測する。このような構成によれば、点検者は、キュービクル11~13のそれぞれの変圧器23a~23dの二次側の状態量を親機24で確認することが可能である。
【0036】
(3)キュービクル11~13にそれぞれ設けられる変圧器23a~23dには、共通の一次側電路W1から一次側に交流電力が供給されている。親機24は、共通の一次側電路W1を介して変圧器23a~23dに供給されている変圧器23a~23dの一次側の状態量を計測する。このような構成によれば、複数のキュービクル11~13のそれぞれの変圧器23a~23dの一次側の電圧や電流等の情報を親機24で更に確認することができるため、利便性を更に向上させることができる。
【0037】
なお、上記実施形態は、以下の形態にて実施することもできる。
・上記実施形態では、親機24が、変圧器23a~23dのそれぞれの二次側の電流及び電圧の計測情報から電力等を演算したが、この演算は子機25a,25bが行ってもよい。
【0038】
・キュービクルシステム10に設けられるキュービクルの数は3つに限らず、任意に変更可能である。
・親機24は、一次側電路W1の電圧及び電流を計測する機能、及びそれらの計測情報から取得可能な演算情報を演算する機能を有していなくてもよい。換言すれば、親機24は、各キュービクル11~13の子機25a,25bから送信される計測情報、及びその計測情報から取得可能な演算情報を表示する機能のみを有するものであってもよい。
【0039】
・本開示は上記の具体例に限定されるものではない。上記の具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素、及びその配置、条件、形状等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0040】
10:キュービクルシステム
11~13:キュービクル
23a~23d:変圧器
24:親機
25a,25b:子機