(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-27
(45)【発行日】2022-05-11
(54)【発明の名称】作業台におけるキャスタ装置
(51)【国際特許分類】
E04G 1/24 20060101AFI20220428BHJP
E04G 1/34 20060101ALI20220428BHJP
B60B 33/02 20060101ALI20220428BHJP
【FI】
E04G1/24 301A
E04G1/34 A
B60B33/02
(21)【出願番号】P 2018111748
(22)【出願日】2018-06-12
【審査請求日】2021-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000213851
【氏名又は名称】朝日機材株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000101662
【氏名又は名称】アルインコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077791
【氏名又は名称】中野 収二
(72)【発明者】
【氏名】清田 真人
(72)【発明者】
【氏名】古賀 一典
(72)【発明者】
【氏名】海江田 孝
(72)【発明者】
【氏名】中西 将隆
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 大介
(72)【発明者】
【氏名】菅野 友樹
(72)【発明者】
【氏名】谷出 宏文
(72)【発明者】
【氏名】矢川 一義
(72)【発明者】
【氏名】小間 靖也
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-97031(JP,A)
【文献】実開昭57-181671(JP,U)
【文献】特開2002-339564(JP,A)
【文献】特開2005-68638(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 1/24
E04G 1/34
E06C 1/39-1/397
B60B 33/02
B25H 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に直交するX方向の桁側縁部(8b)とY方向の妻側縁部(8a)を有する天板(2)を備え、脚体(3)を該天板の妻側縁部から下向きに垂設させた開脚姿勢と、該天板の下側に格納させた閉脚姿勢の間で、姿勢変更自在とする枢結機構(4)を設けて成る折畳み式の作業台において、
作業台(1)は、天板の妻側縁部から天板の外側に向けてX方向に突出する第1キャスタ(16)と第2キャスタ(17)を妻側縁部の長手方向に離間して設け、
脚体を閉脚姿勢とした作業台を地面に載置した状態から、前記キャスタを支点として作業台を起立させることにより、前記キャスタの車輪を接地させるように構成されており、
第1キャスタ(16)は、車輪(16a)の進行方向を変更可能とする旋回軸(16X)を備えた自在キャスタにより構成され、
第2キャスタ(17)は、車輪(17a)の進行方向を旋回不能としてY方向に固定した固定キャスタにより構成されており、
前記キャスタを支点として作業台を起立させるとき、第2キャスタ(17)の旋回不能な車輪(17a)により、起立方向に関する作業台の地面上での移動を阻止する起立支援手段(18)を構成して成ることを特徴とする作業台におけるキャスタ装置。
【請求項2】
前記天板(2)の妻側縁部は、全長にわたり下面に開口する長溝(11)を備えた妻側フレーム(6)により形成され、
前記脚体(3)の枢結機構(4)は、少なくとも脚体を閉脚姿勢とした状態で姿勢変更不能に係止する係脱自在なロック手段(10)を設けて成る作業台において、
前記妻側フレーム(6)に着脱自在に固着される支持基体(15)に前記第1キャスタ(16)と第2キャスタ(17)を搭載することによりキャスタユニット(14U)が構成されており、
前記支持基体(15)は、前記妻側フレーム(6)を外側から保持する保持手段(19)と、前記長溝(11)に挿脱自在に挿入係止される係止片(26)を備えた着脱手段(22)を設けて成ることを特徴とする請求項1に記載の作業台におけるキャスタ装置。
【請求項3】
前記支持基体(15)の着脱手段(22)は、前記妻側フレームの長溝(11)の溝深さ方向に延びる支軸(24)と、該支軸を介して溝深さ方向に移動自在かつ回動自在な可動部材(25)を備え、前記可動部材から長溝に向けて前記係止片(26)を延設して成ることを特徴とする請求項2に記載の作業台におけるキャスタ装置。
【請求項4】
前記枢結機構に設けられたロック手段(10)は、前記妻側フレームの長溝(11)に摺動自在に挿入された一対のロッド(12,12)により構成され、一対のロッドの相互に対向する基端部に前記長溝から突出する操作片(12a,12a)を設けると共に、該ロッドの先端部に長溝の端部から進退自在に突出するロック片(12b,12b)を設け、
一対のロッドの操作片(12a,12a)は、ロック片を脚体に係止したとき相互に離反方向に移動して第1離間距離L1を規定し、ロック片を脚体から離脱したとき相互に近接方向に移動して第2離間距離L2を規定するように構成されており、
前記キャスタユニットにおける支持基体(15)の着脱手段(22)は、前記操作片(12a,12a)の間に位置して長溝(11)に挿脱自在に挿入される一対のストッパ手段(30,30)を備え、該ストッパ手段の相互間隔LをL1>L>L2とするように形成されて成ることを特徴とする請求項2又は3に記載の作業台におけるキャスタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折畳み式の作業台を折畳んだ状態で容易に移動可能としたキャスタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、折畳み式の作業台を折畳み状態で移動させる際の便宜のため、キャスタを設けたものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1により提案された作業台は、梯子枠を構成する脚体の下端部の内側にキャスタを取付け、脚体を折畳んだ状態で作業台を地面に対して傾斜させたとき、キャスタが地面に臨まされるように構成している。
【0005】
従って、作業者は、キャスタを地面の上で転動させながら、折畳んだ作業台を牽引することにより、容易に移動させることができる利点がある。
【0006】
しかしながら、キャスタは、常時、脚体から内向きに突出状態で取付けられているので、種々の問題がある。
【0007】
例えば、高所作業を行う際、展開した脚体を地面に設置した状態で、キャスタが地面近傍の脚体から突出しているので、作業者その他の者がつまずき、作業台を転倒させるおそれがある。
【0008】
また、不使用時の作業台を保管するとき、作業台を折畳んだ状態でもキャスタが脚体から突出しているので、複数の作業台を安定状態で積層することが困難であり、しかも、突出したキャスタが異物に衝突して破損するおそれがある。
【0009】
このため、キャスタを必要時に取付け、不必要時には取外すことができ、しかも、取付け作業と取外し作業が容易であり、更に、堅固な取付け状態として折畳んだ作業台を安定した状態で移動できるように構成した装置を提供することが好ましい。
【0010】
ところで、従来から、キャスタとしては、車輪の進行方向を変更可能とする旋回軸を備えた自在式キャスタと、車輪の進行方向を旋回不能とする固定式キャスタの2種類が知られている。
【0011】
固定式キャスタは、車輪の進行方向が所定方向に固定されているのに対して、自在式キャスタは、車輪が旋回軸の廻りに回動自在とされ、進路を容易に変更することができるので、操行性に優れるという利点がある。
【0012】
この点に関して、作業台は、移動前に、脚体の折畳み作業や、キャスタ装置の取付作業等を必要とするため、折畳んだ作業台を一旦は地面に預け置き、次いで、作業台を起立させた後、キャスタを介して地面を走行させることになる。ところが、作業台に自在式キャスタを取付けた場合、キャスタを支点として作業台を起立させるとき、自在式キャスタが地面を滑動するので、起立作業が困難であり、作業台の転倒を招来する問題がある。
【0013】
このため、本発明は、上記に鑑み、自在式キャスタと固定式キャスタの2種類のキャスタを並設することにより、自在式キャスタが有する操行良好性の利点を活用する一方において、上記のような作業台の起立時における問題は、固定式キャスタの車輪の進行方向を特定方向に固定することにより解決可能であることを知得し、これを可能としたキャスタ装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
そこで、本発明が上記課題を解決するための手段として構成したところは、相互に直交するX方向の桁側縁部とY方向の妻側縁部を有する天板を備え、脚体を該天板の妻側縁部から下向きに垂設させた開脚姿勢と、該天板の下側に格納させた閉脚姿勢の間で、姿勢変更自在とする枢結機構を設けて成る折畳み式の作業台において、作業台は、天板の妻側縁部から天板の外側に向けてX方向に突出する第1キャスタと第2キャスタを妻側縁部の長手方向に離間して設け、脚体を閉脚姿勢とした作業台を地面に載置した状態から、前記キャスタを支点として作業台を起立させることにより、前記キャスタの車輪を接地させるように構成されており、第1キャスタは、車輪の進行方向を変更可能とする旋回軸を備えた自在キャスタにより構成され、第2キャスタは、車輪の進行方向を旋回不能としてY方向に固定した固定キャスタにより構成されており、前記キャスタを支点として作業台を起立させるとき、第2キャスタの旋回不能な車輪により、起立方向に関する作業台の地面上での移動を阻止する起立支援手段を構成して成る点にある。
【0015】
本発明の実施形態において、前記天板の妻側縁部は、全長にわたり下面に開口する長溝を備えた妻側フレームにより形成され、前記脚体の枢結機構は、少なくとも脚体を閉脚姿勢とした状態で姿勢変更不能に係止する係脱自在なロック手段を設けており、前記妻側フレームに着脱自在に固着される支持基体に前記第1キャスタと第2キャスタを搭載することによりキャスタユニットが構成され、前記支持基体は、前記妻側フレームを外側から保持する保持手段と、前記長溝に挿脱自在に挿入係止される係止片を備えた着脱手段を設けている。
【0016】
前記支持基体の着脱手段は、前記妻側フレームの長溝の溝深さ方向に延びる支軸と、該支軸を介して溝深さ方向に移動自在かつ回動自在な可動部材を備え、前記可動部材から長溝に向けて前記係止片を延設することが好ましい。
【0017】
好ましい実施形態において、前記枢結機構に設けられたロック手段は、前記妻側フレームの長溝に摺動自在に挿入された一対のロッドにより構成され、一対のロッドの相互に対向する基端部に前記長溝から突出する操作片を設けると共に、該ロッドの先端部に長溝の端部から進退自在に突出するロック片を設け、一対のロッドの操作片は、ロック片を脚体に係止したとき相互に離反方向に移動して第1離間距離L1を規定し、ロック片を脚体から離脱したとき相互に近接方向に移動して第2離間距離L2を規定するように構成されており、前記キャスタユニットにおける支持基体の着脱手段は、前記操作片の間に位置して長溝に挿脱自在に挿入される一対のストッパ手段を備え、該ストッパ手段の相互間隔LをL1>L>L2とするように形成されている。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、折畳んだ作業台1を地面に預け置いた状態から起立する際、固定式キャスタにより構成された第2キャスタ17の車輪17aにより安定した支点を提供する起立支援手段18が構成されるので、起立作業を容易に行うことができる。そして、起立させた作業台1は、自在式キャスタにより構成された第1キャスタ16により、進行方向を所望の方向に向けて自在に操ることができ、操行性を良好として好適に移動させることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の1実施形態に係るキャスタ装置を取付可能とした作業台の1例を示す斜視図である。
【
図2】作業台における天板の妻側縁部とキャスタ装置の関係を示す斜視図である。
【
図3】キャスタ装置を取付けた作業台に関して、(A)は折畳まれた作業台を地面に預け置いた状態からキャスタの車輪を支点として起立させるときの作用を示す正面図、(B)は起立後の作業台をキャスタにより移動させるときの作用を示す正面図である。
【
図4】作業台の脚体の枢結機構に関して、天板の妻側縁部に設けられたロック手段を下方から示す底面図であり、(A)はロック片をロック位置に移動した状態を示す底面図、(B)はロック片をアンロック位置に移動した状態を示す底面図である。
【
図5】天板の妻側縁部とキャスタ装置を分離した状態を示す斜視図である。
【
図6】天板の妻側縁部とキャスタ装置に関して、下面を上向きとして示す斜視図である。
【
図7】キャスタユニットが分解された状態を示す斜視図である。
【
図8】キャスタユニットが組立てられた状態を示す斜視図である。
【
図9】キャスタユニットを天板の妻側縁部に取付ける方法を示す斜視図である。
【
図10】取付け時における着脱手段の作用を示す斜視図である。
【
図11】キャスタユニットを天板の妻側縁部に取付けた状態を示す斜視図である。
【
図12】取付け後における着脱手段の状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下図面に基づいて本発明の好ましい実施形態を詳述する。
【0021】
(作業台の1例)
本発明のキャスタ装置を取付けるための作業台は、建設現場等において高所作業のために使用される種々の形式のものを広く含む汎用の作業台であり、従って、その形状や大きさを特に限定するものではないが、その1例を
図1に示している。
【0022】
図例の場合、作業台1は、天板2に相互に対向する脚体3を設け、前記脚体3を天板2から下向きとして垂設させた開脚姿勢と、天板2の下側に格納させた閉脚姿勢の間で、姿勢変更自在とする枢結機構4を設けている。図例の場合、天板2は、矩形板状に形成された床材5の図示Y方向の短手辺と図示X方向の長手辺にそれぞれ妻側フレーム6と桁側フレーム7を設け、それぞれのフレームにより形成された妻側縁部8aと桁側縁部8bを天板2の側縁部8としており、妻側縁部8aに脚体3を配置している。
【0023】
脚体3は、前記妻側縁部8aの両端部に臨む一対の柱脚3a、3aを踏桟3bにより連結した梯子脚を構成しており、各柱脚3aの上端部に手掛かり棒9の基端部が枢結されている。手掛かり棒9は、天板2の上方に向けて柱脚3aから起立する直立姿勢と、該直立姿勢から反転することにより柱脚3aに重ね合わせられる重合姿勢の間で、回動自在とされ、図示省略したロック手段によりそれぞれの姿勢で保持される。
【0024】
前記脚体3は、枢結機構4を介して図示矢印のように回動することにより、開脚姿勢(展開姿勢)と閉脚姿勢(折畳み姿勢)の間で姿勢変更自在とされ、それぞれの姿勢とした状態で、妻側フレーム6に設けられたロック手段10(
図2、
図4及び
図6参照)により、姿勢変更不能に保持される。
【0025】
その結果、作業台1は、手掛かり棒9を脚体3に重合させた状態で、該脚体3を天板2の下側に回動させた閉脚姿勢とすることにより、コンパクトに折畳まれ、その状態で、移動ないし運搬、或いは、保管することができるように構成されている。
【0026】
図4に示すように、妻側フレーム6は、全長にわたり下面に開口する長溝11を備えた角形パイプ材により形成されており、ロック手段10は、前記長溝11に摺動自在に挿入された一対のロッド12、12により構成されている。該ロッド12、12は、相互に対向する基端部に前記長溝11から突出する操作片12aを設けると共に、先端部に長溝11の両端部から進退自在に突出するロック片12bを設けており、常時、スプリング13によりロック片12bを長溝11の両端部から突出するように付勢されている。これにより、ロック片12bは、ロック位置に突出した状態で脚体3に係止し、ロック位置からアンロック位置に後退させられたとき前記係止を解除する。尚、脚体3は、開脚姿勢状態と、閉脚姿勢状態の何れの姿勢状態とされたときにも、姿勢をロック保持されるように構成することが好ましい。
【0027】
従って、ロッド12がスプリング13により移動されロック片12bを脚体3に係止したロック位置に突出した状態では、
図4(A)に示すように、操作片12a、12aは、相互に離反方向に移動させられており、相互間隔が第1離間距離L1とされる。そして、ユーザが離間距離を狭めるように操作片12a、12aを相互に近接方向に移動させ、ロック片12bをアンロック位置まで後退させると、脚体3に対する係止が解除され、このとき、
図4(B)に示すように、操作片12a、12aは、相互間隔が第2離間距離L2とされ、当然のことながら、L2<L1とされている。
【0028】
(キャスタ装置の基本的構成)
本発明は、作業台1を折畳んだ状態で、地面を走行させながら容易に移動させるためのキャスタ装置14を提供するものであり、キャスタ装置14は、
図2に示すように、作業台1の妻側フレーム6に着脱自在に装着される。尚、
図2は、理解の便宜のため、脚体3を開脚姿勢とした作業台1を図示しているが、本発明の好ましい実施形態において、キャスタ装置14は、脚体3を閉脚姿勢とすることにより折畳み状態とした作業台1に取付けることを目的としている。従って、
図2に鎖線で示すように脚体3を開脚姿勢として作業台1により高所作業を行うときには、キャスタ装置14は、取外されることが望ましいことを理解されたい。
【0029】
キャスタ装置14は、妻側フレーム6に着脱自在に固着される支持基体15に第1キャスタ16と第2キャスタ17を搭載したキャスタユニット14Uを構成している。そこで、第1キャスタ16は、車輪16aの進行方向を変更可能とする旋回軸16Xを備えた自在式キャスタにより構成され、これに対して、第2キャスタ17は、車輪17aの進行方向を変更不能に固定した固定式キャスタにより構成されている。
【0030】
支持基体15を妻側フレーム6に固着することによりキャスタ装置14を取付けた状態において、第1キャスタ16と第2キャスタ17は、妻側フレーム6の長手方向に離間して並設され、それぞれの車輪16a、17aは、天板2の妻側縁部8aから天板2の外側に向けてX方向に突出しており、X方向に向けて第1キャスタ16の旋回軸16Xが形成されている。この際、第2キャスタ17の車輪17aは、進行方向がY方向に固定されている。つまり、車輪17aを軸支する車軸17bの軸方向がX方向及びY方向に交差するZ方向に向けて固定されている。
【0031】
上述のように、作業台1は、高所作業の終了等による不使用時には、折畳み状態とされ、移動の便に供するため、キャスタ装置14が取付けられる。この際、折畳んだ作業台は、一旦は地面に預け置かれ、キャスタ装置14を取付けた後、該キャスタ装置14を下向きとして起立させられる。
【0032】
図3(A)に示すように、地面に預け置かれた作業台1は、キャスタ装置14の車輪16a、17aを支点として起立させられる。このとき、自在式キャスタにより構成された第1キャスタ16は、車輪16aを前記旋回軸16Xの軸廻りに回動自在とされ、地面に対する車輪16aの向きを自由に変更する。この点に関して、図示のように、作業台1を起立させるために、作業台の片側を起立方向Uに持ち上げたとき、もしも、接地側が図示の左右方向(矢印L、Rの方向)に自由に移動するならば、起立作業が困難となる。
【0033】
ところが、本発明のキャスタ装置14は、固定式キャスタにより構成された第2キャスタ17を並設しており、該キャスタの車輪17aの向きを固定し、図示の左右方向(矢印L、Rの方向)には回転不能とされた姿勢を保持させているので、該車輪17aが作業台1を起立するための安定した支点を提供する。つまり、図示の左右方向(矢印L、Rの方向)に関して、車輪17aが地面上で摩擦抵抗により移動を阻止する起立支援手段18を構成し、これにより、作業台1の起立作業を容易とする。
【0034】
そして、作業台1は、
図3(B)に示すように、起立させた状態で、第1キャスタ16と第2キャスタ17の2つのキャスタの車輪16a、17aにより、好適に移動させることができる。この際、第2キャスタ17の車輪17aは、妻側フレーム6の長手方向に向けて進行方向が固定されているが、第1キャスタ16の車輪16aは、旋回軸18の軸廻りに回動自在であるから、作業台1の進行方向を図示の左右方向(矢印L、Rの方向)に向けて容易に旋回させることが可能であり、良好な操行性を有する。
【0035】
(キャスタ装置の実施形態)
図5ないし
図11は、キャスタ装置14の好ましい実施形態を示している。
【0036】
図5及び
図6に示すように、作業台1における天板2の妻側縁部8aを構成する妻側フレーム6は、天板2とほぼ面一で平行な上壁6aと、該上壁6aから鈍角を成して折曲され外向きに傾斜する側壁6bを備え、下面の両端部には長溝11に挿入された一対のロッド12を摺動自在に保持する保持板6c、6cが設けられている。
【0037】
これに対して、キャスタ装置14を構成する支持基体15は、金属板を折曲することにより形成され、
図5及び
図6に示すように、妻側フレーム6を外側から保持する保持手段19を備えている。保持手段19を構成するため、支持基体15は、妻側フレーム6の上壁6aに沿って添接自在とされた保持壁15aと、該保持壁15aの側縁から直角に折曲されることにより妻側フレーム6の側壁6bを被う支持壁16bと、該支持壁16bの両端部から折曲されることにより妻側フレーム6の保持板6c、6cに添接される抱持壁15c、15cを備えている。更に、保持手段19は、支持壁16bの内側において、妻側フレーム6の側壁6bに形成された孔6dに嵌入自在なピン20を設けると共に、該側壁6bに接支自在なリブ21を設けている。
【0038】
支持基体15は、支持壁16bの外側の両端部に第1キャスタ16と第2キャスタ17を装着することによりキャスタユニット14Uを構成している。両キャスタ16、17は、作業台1の天板2と直角関係に形成された支持壁16bに装着され、折畳み状態で起立させられる作業台1の荷重を好適に支持する。
【0039】
キャスタユニット14Uの支持基体15は、上記構成の保持手段19により、ピン20を孔6dに嵌入したとき、リブ21を側壁6bに接支すると共に、保持壁15a及び抱持壁15cをそれぞれ上壁6a及び保持板6cに添接させ、これにより、妻側フレーム6を外側から保持した状態で位置決め固定される。
【0040】
この状態で、キャスタ装置14には、妻側フレーム6に着脱自在に係止される着脱手段22が設けられており、着脱手段22は、妻側フレーム6の長溝11に挿脱自在に挿入係止されるように構成されている。
【0041】
図7及び
図8に示すように、支持基体15は、妻側フレーム6の長溝11の長手方向中央部(操作片12a、12aの間の部分)に臨まされるブラケット23を設けており、前記着脱手段22は、長溝11の溝深さ方向に延びる支軸24と、該支軸24を介して溝深さ方向に移動自在かつ回動自在な可動部材25と、該可動部材25から長溝11に向けて延設された係止片26、26により構成されている。尚、可動部材25の両側縁には摘み部25aが設けられている。
【0042】
図示実施形態の場合、前記ブラケット23は、前記可動部材25を載置状態で支持する支持台27を設けている。前記支軸24は、頭部24aとネジ付きの軸部24bを備えたボルトにより構成され、頭部24aにより圧縮可能なコイルバネから成るバネ手段28を軸部24bに外挿している。
【0043】
前記支軸24は、ブラケット23に開設された挿通窓孔23aに対してバネ手段28と共に軸部24bを図示の下方から挿通され、バネ手段28から突出する軸部24bを支持台27の軸孔27aと可動部材25の軸孔25aに挿通した状態で、軸端部にナット29が締結される。
【0044】
これにより、可動部材25は、前記バネ手段28により支持台27に向けて付勢され、常時は、支持台27に載置される。この状態で、係止片26、26は、ブラケット23の切欠き状の凹部23bに嵌合されると共に、長溝11に挿入させられる。また、可動部材25の摘み部25aは、ユーザが指先で容易に摘まむことができるように、支持台27を介してブラケット23の表面から離間させられている。
【0045】
このように、可動部材25が支持台27に載置された状態で、係止片26、26は、長溝11に挿入される長さ寸法を有すると共に、挿入状態で長溝11の幅方向にガタツキを有しない幅寸法を有している。この際、上述したロック手段10における操作片12a、12aの第1離間距離L1と第2離間距離L2に対して、一対の係止片26、26は、外側面の相互間隔LをL1>L>L2とするように形成されることが好ましく、これにより、後述するようなストッパ手段30を構成している。
【0046】
(キャスタ装置の着脱方法)
作業台1の妻側フレーム6にキャスタ装置14を取付ける際は、
図9及び
図10に示すように、着脱手段22の可動部材25をバネ手段28に抗して支持台27から引き離すことにより、係止片26、26を後退させ、該可動部材25を支軸24の軸廻りに回動することにより、係止片26、26をブラケット23の表面に接支させる。
【0047】
この状態で、上述のように、保持手段19により、妻側フレーム6を外側から保持することにより、支持基体15を位置決め固定することができる。即ち、ピン20を孔6dに嵌入すると共に、リブ21を側壁6bに接支すると、保持壁15a及び抱持壁15cが妻側フレーム6を外側から保持する。
【0048】
そこで、可動部材25を支軸24の軸廻りに回動することにより、係止片26、26をブラケット23の凹部23bに臨ませると、可動部材25がバネ手段28により支持台27に向けて引き寄せられ、係止片26、26は、凹部23bに沿って下動しつつ妻側フレーム6の長溝11に挿入される。従って、これにより、キャスタ装置14は、係止状態として妻側フレーム6に取付けられる。
【0049】
上述のように、キャスタ装置14は、脚体3を閉脚姿勢とした折畳み状態の作業台1に取付けられ、脚体3を開脚姿勢として作業台1により高所作業を行うときには、作業台1から取外すことが望ましい。
【0050】
この点に関して、作業台1は、脚体3を閉脚姿勢としたとき、枢結機構4のロック手段10により閉脚姿勢状態にロックされており、この状態で、キャスタ装置14が取付けられる。そして、作業台1は、キャスタ装置14を取付けた状態のままでは、前記ロックを解除することができない、つまり、脚体3を開脚姿勢として高所作業のために使用することはできないように構成されている。
【0051】
キャスタ装置14を取付けた状態で、係止片26、26は、着脱手段22を構成するだけでなく、ロック手段10におけるロッド12、12の操作片12a、12aの間に介装され、操作片12a、12aがアンロック位置(つまり第2離間距離L2とする位置)に移動することを阻止するストッパ手段30を構成している。
【0052】
このため、ユーザは、作業台1の脚体3を開脚させて使用するために、ロック手段10のロックを解除しようとするときは、必ずキャスタ装置14を取外さなければならず、その取外しを忘れたまま脚体3を開脚して高所作業に供することはできないから、作業の危険や事故等がキャスタ装置14を原因として発生することはない。
【0053】
因みに、キャスタ装置14を妻側フレーム6から取外す際は、可動部材25をバネ手段28に抗して支軸24の軸方向に移動することにより、係止片26、26を長溝11から脱出させると共に、可動部材25を支軸24の軸廻りに回動することにより、係止片26をブラケット23の表面に接支させ、この状態で、支持基体15を妻側フレーム6から引き抜き方向に移動し、保持手段19による保持を解除すれば良い。そして、キャスタ装置14を取外した状態では、ロック手段10の操作が可能となる。
【符号の説明】
【0054】
1 作業台
2 天板
3 脚体
3a 柱脚
3b 踏桟
4 枢結機構
5 床材
6 妻側フレーム
6a 上壁
6b 側壁
6c 保持板
6d 孔
7 桁側フレーム
8 側縁部
8a 妻側縁部
8b 桁側縁部
9 手掛かり棒
10 ロック手段
11 長溝
12 ロッド
12a 操作片
12b ロック片
13 スプリング
14 キャスタ装置
14U キャスタユニット
15 支持基体
16 第1キャスタ
16a 車輪
16X 旋回軸
17 第2キャスタ
17a 車輪
17b 車軸
18 起立支援手段
19 保持手段
20 ピン
21 リブ
22 着脱手段
23 ブラケット
23a 挿通窓孔
23b 凹部
24 支軸
24a 頭部
24b 軸部
25 可動部材
25a 摘み部
26 係止片
27 支持台
28 バネ手段
29 ナット
30 ストッパ手段