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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-27
(45)【発行日】2022-05-11
(54)【発明の名称】回路遮断器
(51)【国際特許分類】
   H01H 73/02 20060101AFI20220428BHJP
   H01H 73/36 20060101ALI20220428BHJP
   H01H 71/52 20060101ALI20220428BHJP
   H01H 71/12 20060101ALI20220428BHJP
【FI】
H01H73/02 D
H01H73/36 D
H01H71/52
H01H71/12
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018121581
(22)【出願日】2018-06-27
(65)【公開番号】P2020004560
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000124591
【氏名又は名称】河村電器産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(72)【発明者】
【氏名】加藤 裕明
(72)【発明者】
【氏名】山中 佑太
【審査官】北岡 信恭
(56)【参考文献】
【文献】実開平03-118535(JP,U)
【文献】特開昭60-160534(JP,A)
【文献】米国特許第04553116(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 71/00-83/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングの内部に収容された固定接触子及び可動接触子が接触及び離隔することにより電源側端子及び負荷側端子の間の電路を接続及び遮断することの可能な回路遮断器であって、
オン位置及びオフ位置に操作可能なハンドルと、
前記ハンドルがオフ位置に操作されているときに保持位置に位置することにより前記固定接触子から離隔した状態で前記可動接触子を保持する一方、前記ハンドルが前記オフ位置からオン位置に操作された際に前記保持位置から押圧位置に変位して前記可動接触子を押圧することにより前記固定接触子に接触させるセパレータと、
前記ハンドルの操作力を前記セパレータに伝達することにより前記セパレータを前記保持位置及び前記押圧位置に変位させるリンク部材と、を備え、
前記リンク部材は、
板状の連結板と、
前記連結板の一端部に設けられ、前記連結板の一側面から突出するように設けられる第1アーム部、及び前記第1アーム部と同軸上に配置されて前記連結板の他側面から突出するように設けられる第2アーム部を有する第1連結ピンと、
前記連結板の他端部に設けられ、前記連結板の一側面から突出するように設けられる第3アーム部、及び前記第3アーム部と同軸上に配置されて前記連結板の他側面から突出するように設けられる第4アーム部を有する第2連結ピンと、を有し、
前記ハンドルは、前記第1連結ピンの前記第1アーム部及び前記第2アーム部が挿入される挿入部を有し、
前記セパレータは、前記第2連結ピンの前記第3アーム部及び前記第4アーム部に接触している一方、
前記電路に過電流が流れた際に変位するラッチ片と、
前記ラッチ片の変位に基づいて変位するトリップアームと、を更に備え、
前記トリップアームは、
前記電路に過電流が流れていない場合、前記セパレータに近接して配置されることにより、前記第2連結ピンの移動を規制するとともに、
前記電路に過電流が流れた場合、前記ラッチ片の変位に基づいて前記セパレータから離間するように変位するとともに、当該変位によって前記第2連結ピンの移動の規制を解除することにより、前記リンク部材から前記セパレータに付与されている力を解除し、
前記リンク部材から前記セパレータに付与されている力が解除された際に、前記セパレータが前記押圧位置から前記保持位置に変位することにより、前記可動接触子が前記固定接触子から離隔し、
前記トリップアームは、前記連結板の他端部との干渉を回避するためのトリップアーム切欠き部を有している
回路遮断器。
【請求項2】
前記ハンドルは、前記挿入部を第1挿入部及び第2挿入部に分離するように設けられ、且つ前記連結板の一端部が挿入されるハンドル切欠き部を更に有し、
前記第1挿入部には、前記第1アーム部が回転可能に挿入され、
前記第2挿入部には、前記第2アーム部が回転可能に挿入されている
請求項1に記載の回路遮断器。
【請求項3】
前記セパレータは、前記連結板の他端部との干渉を回避するためのセパレータ切欠き部を有している
請求項1又は2に記載の回路遮断器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回路遮断器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の回路遮断器は、複数の固定接触子と、複数の固定接触子のそれぞれに対応して設けられる複数の可動接触子と、複数の可動接触子を保持するセパレータと、ユーザにより操作されるハンドルとを備えている。ハンドルは、リンク部材を介してセパレータに連結されている。より詳しくは、リンク部材の一端部は、ハンドルに連結されている。リンク部材の他端部は、セパレータに接触している。この回路遮断器では、ハンドルがオン位置に操作されると、その操作力がリンク部材を介してセパレータに付与されることにより、セパレータが第1位置から第2位置に変位して可動接触子を押圧する。これにより、可動接触子が固定接触子に接触して、回路遮断器がオン状態になる。また、ハンドルがオフ位置に操作された場合には、ハンドルからリンク部材を介してセパレータに付与されている操作力が解除されるため、セパレータが第2位置から第1位置に戻る。これにより、可動接触子が固定接触子から離隔して、回路遮断器がオフ状態になる。
【0003】
一方、上記のリンク部材としては、例えば下記の特許文献1に記載のリンク部材がある。特許文献1に記載のリンク部材は、一対の板材と、一対の板材を所定の間隔を開けて連結する第1ピン及び第2ピンとを有している。第1ピンには、ハンドルが連結される。第2ピンは、セパレータに接触している。特許文献1に記載のリンク部材は、ハンドルの操作に基づいてリンク部材の第2ピンがセパレータを押圧する構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-102261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載されるようなリンク部材を用いた場合、一対の板材が必要となるため、材料歩留まりが悪化する可能性がある。また、一対の板材を第1ピン及び第2ピンにより連結する際に、各板材の平行度や、一対の板材の間に形成される幅の寸法等を管理する必要があるため、生産性が悪化したり、品質管理が煩雑になったりする等の弊害が生じる可能性がある。
【0006】
本開示は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ハンドルからセパレータへの動力の伝達を可能とするリンク部材の構造を簡素化することの可能な回路遮断器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する回路遮断器は、ハウジングの内部に収容された固定接触子及び可動接触子が接触及び離隔することにより電源側端子及び負荷側端子の間の電路を接続及び遮断することの可能な回路遮断器であって、ハンドルと、セパレータと、リンク部材と、を備える。ハンドルは、オン位置及びオフ位置に操作可能である。セパレータは、ハンドルがオフ位置に操作されているときに保持位置に位置することにより固定接触子から離隔した状態で可動接触子を保持する一方、ハンドルがオフ位置からオン位置に操作された際に保持位置から押圧位置に変位して可動接触子を押圧することにより固定接触子に接触させる。リンク部材は、ハンドルの操作力をセパレータに伝達することによりセパレータを保持位置及び押圧位置に変位させる。リンク部材は、板状の連結板と、第1連結ピンと、第2連結ピンと、を有する。第1連結ピンは、連結板の一端部に設けられ、連結板の一側面から突出するように設けられる第1アーム部、及び第1アーム部と同軸上に配置されて連結板の他側面から突出するように設けられる第2アーム部を有する。第2連結ピンは、連結板の他端部に設けられ、連結板の一側面から突出するように設けられる第3アーム部、及び第3アーム部と同軸上に配置されて連結板の他側面から突出するように設けられる第4アーム部を有する。ハンドルは、第1連結ピンの第1アーム部及び第2アーム部が挿入される挿入部を有する。セパレータは、第2連結ピンの第3アーム部及び第4アーム部に接触している。更に、電路に過電流が流れた際に変位するラッチ片と、ラッチ片の変位に基づいて変位するトリップアームと、を備える。トリップアームは、電路に過電流が流れていない場合、セパレータに近接して配置されることにより、第2連結ピンの移動を規制するとともに、電路に過電流が流れた場合、ラッチ片の変位に基づいてセパレータから離間するように変位するとともに、当該変位によって第2連結ピンの移動の規制を解除することにより、リンク部材からセパレータに付与されている力を解除する。リンク部材からセパレータに付与されている力が解除された際に、セパレータが押圧位置から保持位置に変位することにより、可動接触子が固定接触子から離隔する。トリップアームは、連結板の他端部との干渉を回避するためのトリップアーム切欠き部を有している。
【0008】
この構成によれば、連結板の両端部に第1連結ピン及び第2連結ピンをそれぞれ設けた上で、第1連結ピンにハンドルを連結し、且つ第2連結ピンをセパレータに接触させれば、ハンドルからリンク部材を介してセパレータに動力を伝達することが可能となる。また、リンク部材の連結板として一枚の板材を用いるだけでよいため、従来の回路遮断器のように一対の板材を用いる必要がなくなる。よって、リンク部材の構造を簡素化することが可能となる。
さらに、この構成によれば、リンク部材の動作がトリップアームにより阻害されることを回避できる。
【0009】
上記の回路遮断器において、ハンドルは、挿入部を第1挿入部及び第2挿入部に分離するように設けられ、且つ連結板の一端部が挿入されるハンドル切欠き部を更に有し、第1挿入部には、第1アーム部が回転可能に挿入され、第2挿入部には、第2アーム部が回転可能に挿入されていることが好ましい。
【0010】
この構成によれば、ハンドルに対してリンク部材を回転可能に支持することができる。
上記の回路遮断器において、セパレータは、連結板の他端部との干渉を回避するためのセパレータ切欠き部を有していることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、リンク部材の動作がセパレータにより阻害されることを回避できる
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、ハンドルからセパレータへの動力の伝達を可能とするリンク部材の構造を簡素化することの可能な回路遮断器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、実施形態の回路遮断器の断面構造を示す断面図である。
図2図2は、実施形態の回路遮断器の動作例を示す断面図である。
図3図3は、実施形態のリンク部材の斜視構造を示す斜視図である。
図4図4は、実施形態の回路遮断器の部分的な斜視構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、回路遮断器の一実施形態について図面を参照しながら説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
図1に示される本実施形態の回路遮断器10は、単相三相式の電路等に配置される回路遮断器である。図1に示されるように、本実施形態の回路遮断器10は、ハウジング20の左側壁部21において外部に露出するように設けられる電源側端子31と、ハウジング20の右側壁部22において外部に露出するように設けられる負荷側端子41とを備えている。なお、図1では、ハウジング20の上蓋の図示が省略されている。電源側端子31には電源側配線が接続される。負荷側端子41には負荷側配線が接続される。回路遮断器10は、電源側端子31と負荷側端子41とが電気的に接続されている状態と、それらの接続が遮断されている状態とを切り替えることにより、電源側配線と負荷側配線との電気的な接続状態を切り替えることの可能な装置である。
【0016】
回路遮断器10は、一端部に電源側端子31が設けられる固定接触子30と、一端部に負荷側端子41が設けられる負荷側端子金具40と、ハウジング20の内部に設けられる可動接触子50と、可動接触子50を保持するセパレータ60と、ハウジング20の上蓋上面から突出するように設けられるハンドル70とを備えている。
【0017】
固定接触子30は、導電性を有する金属部材からなる。固定接触子30は、電源側端子31からハウジング20の内部に延びるように配置されており、ハウジング20に固定されている。ハウジング20の内部に延びる固定接触子30の端部には、可動接触子50の可動接点51に対向するように固定接点32が設けられている。
【0018】
可動接触子50は、導電性を有する平板状の金属部材からなる。可動接触子50の先端部には、可動接点51が設けられている。可動接触子50は、その上面がセパレータ60に形成された挿通孔61の内壁面に当接するように配置されている。可動接触子50の底面には、コイルばね52の一端部が挿入される突出部53が形成されている。コイルばね52の他端部は、ハウジング20の内部に形成された挿入部に挿入されている。コイルばね52は、ハウジング20の挿入部と可動接触子50との間に圧縮された状態で挿入されている。コイルばね52は、可動接触子50をセパレータ60の内壁面に対して押圧している。これにより、可動接触子50は、セパレータ60の内壁面に当接した状態で保持されている。
【0019】
可動接触子50は、図示しない配線を通じて電磁コイル91の下端部に電気的に接続されている。電磁コイル91の上端部には、負荷側端子金具40の一端部が電気的に接続されている。すなわち、可動接触子50は、電磁コイル91を介して負荷側端子金具40に電気的に接続されている。
【0020】
ハンドル70には、ハウジング20に固定される回転軸71が形成されている。ハンドル70は、回転軸71を中心に、図1に示されるオフ位置と、図2に示されるオン位置とに揺動可能に支持されている。すなわち、ハンドル70は、図1に示されるオフ位置と、図2に示されるオン位置とに操作可能である。ハウジング20の内部に挿入されるハンドル70の一端部には、円筒状の挿入部72が形成されている。挿入部72には、リンク部材80が連結されている。
【0021】
具体的には、図3に示されるように、リンク部材80は、一枚板からなる平板状の連結板81と、連結板81の一端部に設けられる第1連結ピン82と、連結板81の他端部に設けられる第2連結ピン83とを有している。
第1連結ピン82は、軸線m1を中心に円柱状に形成されており、連結板81の一端部に形成された貫通孔810に挿通されている。このような構造からなる第1連結ピン82は、連結板81の一側面から突出するように設けられるアーム部820と、アーム部820と同軸上に配置されて連結板81の他側面から突出するように設けられるアーム部821とを有している。本実施形態では、アーム部820が第1アーム部に相当し、アーム部821が第2アーム部に相当する。
【0022】
第2連結ピン83は、軸線m2を中心に円柱状に形成されており、連結板81の他端部に形成された貫通孔811に挿通されている。このような構造からなる第2連結ピン83は、連結板81の一側面から突出するように設けられるアーム部830と、アーム部830と同軸上に配置されて連結板81の他側面から突出するように設けられるアーム部831とを有している。本実施形態では、アーム部830が第3アーム部に相当し、アーム部831が第4アーム部に相当する。
【0023】
図4に示されるように、挿入部72の軸方向の中央部分には、連結板81の一端部が挿入される切欠き部73が形成されている。本実施形態では、切欠き部73が、ハンドル切欠き部に相当する。切欠き部73により、挿入部72は、第1挿入部720及び第2挿入部721に分離されている。第1挿入部720には、リンク部材80のアーム部820が回転可能に挿入されている。第2挿入部721には、リンク部材80のアーム部821が回転可能に挿入されている。このような挿入部72とリンク部材80の第1連結ピン82との連結により、リンク部材80の一端部がハンドル70に対して回転可能に連結されている。
【0024】
第1連結ピン82の一端部は、フレーム120に形成された案内溝121に挿入されている。フレーム120は、ハウジング20に固定されている。案内溝121は、ハンドル70の揺動に伴ってリンク部材80が変位する際に、第1連結ピン82の移動を案内する。
図1に示されるように、リンク部材80の他端部に設けられる第2連結ピン83は、セパレータ60の上方の一端面62に接触している。より詳しくは、図4に示されるように、第2連結ピン83のアーム部830,831がセパレータ60の一端面62に接触している。リンク部材80は、第1連結ピン82を介してハンドル70から伝達される操作力をセパレータ60に第2連結ピン83を介して伝達することにより、セパレータ60を、図1に示される保持位置から、図2に示される押圧位置に変位させる。
【0025】
セパレータ60は、樹脂等の絶縁性を有する材料により形成されている。図4に示されるように、セパレータ60は、略直方体状に形成されている。セパレータ60には、可動接触子50が挿通される挿通孔61が形成されている。図1に示されるように、セパレータ60においてリンク部材80の第2連結ピン83が接触する一端面62には、第2連結ピン83が挿入される挿入部63が形成されている。挿入部63は、セパレータ60の一端面62に直交する断面形状が略凹字状をなすように形成されている。
【0026】
なお、図4に示されるように、セパレータ60のX1方向の側壁部64には、リンク部材80の連結板81との干渉を回避するための切欠き部66が形成されている。本実施形態では、切欠き部66がセパレータ切欠き部に相当する。
図1に示されるように、セパレータ60のX2方向の側壁部65には、トリップアーム110が近接して配置されている。トリップアーム110は、セパレータ60の挿入部63のX2方向側の開口部分を閉塞するように配置されている。このトリップアーム110にリンク部材80の第2連結ピン83が接触することにより、セパレータ60の挿入部63から第2連結ピン83が脱落しないようになっている。すなわち、トリップアーム110は第2連結ピン83の移動を規制している。トリップアーム110は、ハンドル70の回転軸71に連結されており、回転軸71を中心に回転可能に支持されている。図4に示されるように、トリップアーム110には、リンク部材80の連結板81との干渉を回避するための切欠き部111が形成されている。本実施形態では、切欠き部111がトリップアーム切欠き部に相当する。
【0027】
この回路遮断器10では、ハンドル70が図1に示されるオフ位置から図2に示されるオン位置に向かって操作されると、ハンドル70の操作力がリンク部材80を介してセパレータ60の一端面62に付与されることにより、セパレータ60が下方に変位する。このセパレータ60の変位により可動接触子50が下方に押圧される。そして、ハンドルが図2に示されるオン位置まで操作されると、ハンドル70、リンク部材80、及びセパレータ60が図2に示される位置に保持される。これにより、可動接触子50の可動接点51が固定接触子30の固定接点32に接触した状態に保持される。すなわち、電源側端子31及び負荷側端子41の間の電路が接続された状態となる。また、コイルばね52から可動接触子50に付与される付勢力により、可動接触子50の可動接点51と固定接触子30の固定接点32との接点圧力が確保される。すなわち、コイルばね52は接点圧ばねとして機能する。
【0028】
また、ハンドルが図2に示されるオン位置から図1に示されるオフ位置に操作されると、ハンドル70が図1に示される位置に戻る。この際、可動接触子50、セパレータ60、及びリンク部材80がコイルばね52の付勢力によって図1に示される位置に戻る。これにより、可動接触子50の可動接点51が固定接触子30の固定接点32から離隔するため、電源側端子31及び負荷側端子41の間の電路が遮断された状態になる。
【0029】
図1に示されるように、回路遮断器10は、ハウジング20の内部に収容される磁気式引き外し装置90を更に備えている。磁気式引き外し装置90は、ハンドル70がオン位置に操作されている状況で回路遮断器10に過電流が流れた際に可動接触子50を固定接触子30から離隔させることにより、電源側端子31及び負荷側端子41の間の電路を遮断する、いわゆるトリップ動作を行う装置である。磁気式引き外し装置90は、電磁コイル91と、可動磁気片92と、オイルダッシュポット93と、継鉄94とを備えている。
【0030】
電磁コイル91は、オイルダッシュポット93の外周に配置されている。電磁コイル91は、自身を流れる電流、すなわち可動接触子50から負荷側端子41に向かって流れる電流に基づいて磁気を形成する。
可動磁気片92は、「へ」の字状に形成されている。可動磁気片92の一辺920はオイルダッシュポット93の上面930に対向している。可動磁気片92の他辺921はラッチ片100に対向している。可動磁気片92は、一辺920と他辺921との接続部分である角部922において回動可能に支持されている。また、可動磁気片92は、図示しないコイルばねから付与される付勢力により、図1に示される位置で、すなわち一辺920がオイルダッシュポット93の上面930から離間し、且つ他辺921がラッチ片100から離間している位置で保持されている。
【0031】
継鉄94は、略L字状に形成されている。継鉄94の一端部にはオイルダッシュポット93が固定して取り付けられている。継鉄94の他端部は、ハウジング20に固定されている。すなわち、オイルダッシュポット93は、継鉄94を介してハウジング20に固定されている。
【0032】
ラッチ片100は、略L字状に形成されている。ラッチ片100の角部には、ハウジング20に固定される回転軸102が設けられている。ラッチ片100は、この回転軸102を中心として回転可能に支持されている。ラッチ片100の一端部には、円柱状の係合部101が形成されている。ラッチ片100の他端部は、トリップアーム110に接触している。
【0033】
磁気式引き外し装置90は、図2に示されるように回路遮断器10がオン状態であるときに、負荷側端子41からの電力の供給対象である負荷が過負荷状態となったり、負荷側端子41に接続されている配線が短絡したりすることにより過電流が発生した場合にトリップ動作を行う。
【0034】
具体的には、負荷側端子41からの電力の供給対象である負荷が過負荷状態となったり、負荷側端子41に接続されている配線が短絡したりした場合、電磁コイル91に過電流が流れる。電磁コイル91に過電流が流れると、電磁コイル91により形成されている磁界が強くなる。これにより、オイルダッシュポット93内に収容されている鉄心が時間の経過に伴って下方から上方に移動し、電磁コイル91により形成される磁界が更に強くなる。このような磁界の変化により、オイルダッシュポット93の上面930に発生している磁力が強くなるため、可動磁気片92の一辺920がオイルダッシュポット93の上面930に向かって吸引される。これにより、可動磁気片92が角部922を中心に回動する。可動磁気片92の一辺920がオイルダッシュポット93の上面930に接触する位置まで可動磁気片92が回動すると、可動磁気片92の他辺921がラッチ片100の係合部101を押圧する。これによりラッチ片100が回転軸102を中心に矢印Cで示される方向に回動すると、ラッチ片100が、回転軸71を中心に、トリップアーム110から離間する方向に回動する。そのため、トリップアーム110がセパレータ60の側壁部65から離間して、セパレータ60の側壁部65とトリップアーム110との間に隙間が形成される。この隙間に第2連結ピン83が移動することにより、リンク部材80からセパレータ60に付与されている力が解除され、コイルばね52の付勢力によりセパレータ60が上方に、すなわち押圧位置から保持位置に向かって変位する。これにより、可動接触子50の可動接点51が固定接触子30の固定接点32から離隔するため、ハンドル70がオン位置に操作されている状況であっても、電源側端子31及び負荷側端子41の間の電路が遮断される。
【0035】
以上説明した本実施形態の回路遮断器10によれば、以下の(1)~(5)に示される作用及び効果を得ることができる。
(1)リンク部材80は、板状の連結板81と、連結板81の一端部に設けられる第1連結ピン82と、連結板81の他端部に設けられる第2連結ピン83とを有する。ハンドル70は、第1連結ピン82のアーム部820,821が挿入される挿入部72を有する。セパレータ60は、第2連結ピン83のアーム部830,831に接触している。このような構成によれば、ハンドル70からリンク部材80を介してセパレータ60に動力を伝達することが可能となる。また、リンク部材80の連結板81として一枚の板材を用いるだけでよいため、従来のリンク部材のように一対の板材を用いる必要がない。よって、リンク部材80の構造を簡素化することができるとともに、リンク部材80の材料歩留まりを改善することができる。また、部品コストや製造コストを減少させることもできる。
【0036】
(2)従来のリンク部材のように一対の板材を用いる場合、それらの平行度や幅寸法の管理が必要となる。これが回路遮断器の生産性の悪化や品質検査の煩雑化を招いている。この点、本実施形態の回路遮断器10では、リンク部材80の連結板81が一枚の板材により構成されているため、平行度や幅寸法の管理が必要ない。そのため、生産性を向上させることができるとともに、品質検査を簡素化することができる。
【0037】
(3)ハンドル70は、挿入部72を第1挿入部720及び第2挿入部721に分離するように設けられる切欠き部73を有する。切欠き部73には、連結板81の一端部が挿入されている。第1挿入部720には、リンク部材80のアーム部820が回転可能に挿入されている。第2挿入部721には、リンク部材80のアーム部821が回転可能に挿入されている。このような構成によれば、ハンドル70に対してリンク部材80を回転可能に支持することができる。
【0038】
(4)セパレータ60は、連結板81の他端部との干渉を回避するための切欠き部66を有している。これにより、リンク部材80の動作がセパレータ60により阻害されることを回避できる。
(5)トリップアーム110は、連結板81の他端部との干渉を回避するための切欠き部111を有している。これにより、リンク部材80の動作がトリップアーム110により阻害されることを回避できる。
【0039】
なお、上記実施形態は、以下の形態にて実施することもできる。
・セパレータ60やハンドル70、トリップアーム110の形状は適宜変更可能である。
・本開示は上記の具体例に限定されるものではない。上記の具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素、及びその配置、条件、形状等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0040】
10:回路遮断器
20:ハウジング
30:固定接触子
31:電源側端子
41:負荷側端子
50:可動接触子
60:セパレータ
66:切欠き部(セパレータ切欠き部)
70:ハンドル
72:挿入部
73:切欠き部(ハンドル切欠き部)
80:リンク部材
81:連結板
82:第1連結ピン
83:第2連結ピン
100:ラッチ片
110:トリップアーム
111:切欠き部(トリップアーム切欠き部)
820:アーム部(第1アーム部)
821:アーム部(第2アーム部)
830:アーム部(第3アーム部)
831:アーム部(第4アーム部)
図1
図2
図3
図4