(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-27
(45)【発行日】2022-05-11
(54)【発明の名称】タンデム印刷システムおよびインク送液機構
(51)【国際特許分類】
B41J 2/175 20060101AFI20220428BHJP
B41J 3/42 20060101ALI20220428BHJP
【FI】
B41J2/175 503
B41J2/175 111
B41J2/175 301
B41J2/175 501
B41J3/42
(21)【出願番号】P 2018141126
(22)【出願日】2018-07-27
【審査請求日】2021-05-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】渡部 正明
【審査官】上田 正樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2004/106068(WO,A1)
【文献】特開2008-221500(JP,A)
【文献】特開2008-221576(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0329756(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/175
B41J 3/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1インクタンクに貯留されたインクを用いて用紙に印刷処理を実行する上流側印刷装置と、第2インクタンクに貯留されたインクを用いて前記上流側印刷装置により印刷処理が実行された用紙に再度印刷処理を実行する下流側印刷装置とを用いてタンデム印刷を行うタンデム印刷システムであって、
前記第1インクタンクと前記第2インクタンクとを連通する連通管と、
前記第1インクタンクと前記第2インクタンクとの間で前記貯留されたインクを前記連通管を介して送液する送液手段と、
を備えたことを特徴とするタンデム印刷システム。
【請求項2】
前記第1インクタンクおよび前記第2インクタンクにそれぞれ設けられ、前記貯留されたインクの液位を測定する液位計と、
前記液位計により測定された液位に基づいて、前記第1インクタンクおよび前記第2インクタンクのうち、一方のインクタンクを他方のインクタンクより液位が高くなるように前記送液手段を制御する制御部と、
を備えたことを特徴とする請求項1記載のタンデム印刷システム。
【請求項3】
前記制御部は、
前記第1インクタンクおよび前記第2インクタンクのうち、前記貯留されたインクの使用頻度が低い方のインクタンクの液位が高くなるように前記送液手段を制御する
ことを特徴とする請求項2記載のタンデム印刷システム。
【請求項4】
前記制御部は、
前記第1インクタンクおよび前記第2インクタンクのうち、送液する側が同種類のインクが貯留されたインクタンクを複数有している場合、最も液位の高いインクタンクから送液するように前記送液手段を制御する
ことを特徴とする請求項2または3記載のタンデム印刷システム。
【請求項5】
第1印刷装置が備える第1インクタンクと第2印刷装置が備える第2インクタンクとを連通する連通管と、
前記第1インクタンクと前記第2インクタンクとの間で、それぞれ貯留されたインクを前記連通管を介して一方のインクタンクから他方のインクタンクへ送液する送液手段と、
を備えたことを特徴とするインク送液機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク切れによる印刷停止を防止するタンデム印刷システムおよびインク送液機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2台の印刷装置を直列に接続し、印刷するタンデム印刷システムとして利用することがある。例えば、特許文献1のように2台の印刷装置を直列に接続し、さらに上流側印刷装置と下流側印刷装置との間に、表裏反転する反転装置を設け、上流側印刷装置により一方の面に印刷された用紙を、反転装置により表裏反転し、下流側印刷装置により他方の面に印刷を行うタンデム印刷システムに関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
タンデム印刷システムでは、2台の印刷装置が同時に印刷処理を行うので、2台の印刷装置のインクが同時になくなる場合があった。この場合、2台の印刷装置のインクカートリッジをそれぞれ新しいものに交換する必要があり、この交換している間、印刷不可となる。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、2台の印刷装置を直列に接続し、印刷するタンデム印刷システムとして利用するが、2台の印刷装置の間でインクを供給し合うことは行っていない。そのため、この技術では、2台の印刷装置のインクが同時になくなる場合があり、インク切れによる印刷停止が発生する場合があった。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、インク切れによる印刷停止を防止するタンデム印刷システムおよびインク送液機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係るタンデム印刷システムの第1の特徴は、
第1インクタンクに貯留されたインクを用いて用紙に印刷処理を実行する上流側印刷装置と、第2インクタンクに貯留されたインクを用いて前記上流側印刷装置により印刷処理が実行された用紙に再度印刷処理を実行する下流側印刷装置とを用いてタンデム印刷を行うタンデム印刷システムであって、
前記第1インクタンクと前記第2インクタンクとを連通する連通管と、
前記第1インクタンクと前記第2インクタンクとの間で前記貯留されたインクを送液する送液手段と、を備えたことにある。
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係るインク送液機構の第1の特徴は、
第1印刷装置が備える第1インクタンクと第2印刷装置が備える第2インクタンクとを連通する連通管と、
前記第1インクタンクと前記第2インクタンクとの間で、それぞれ貯留されたインクを前記連通管を介して一方のインクタンクから他方のインクタンクへ送液する送液手段と、
を備えたことにある。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るタンデム印刷システムおよびインク送液機構の特徴によれば、インク切れによる印刷停止を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るタンデム印刷システムの概略構成図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係るタンデム印刷システムが備える制御装置の液位制御を説明した図である。
【
図3】(a)は、本発明の第1実施形態に係るタンデム印刷システムにおける状態Fの場合の送液を模式的に示した説明図であり、(b)は、本発明の第1実施形態に係るタンデム印刷システムにおける状態Gの場合の送液を模式的に示した説明図である。
【
図4】本発明の第1実施形態の変形例に係るタンデム印刷システムの構成を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の第1実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0012】
(タンデム印刷システムの概略構成)
まず、本発明の第1実施形態に係るタンデム印刷システム1の構成について説明する。タンデム印刷システム1は、PCなどの端末装置から送信された印刷ジョブを受信し、受信した印刷ジョブに基づいて、印刷媒体である用紙に画像を印刷する。
【0013】
また、本実施形態に係るタンデム印刷システム1は、用紙に所定の印刷処理を各々行う2つの印刷装置を、用紙の搬送経路に沿って直列的に配置した構成の印刷システムである。
【0014】
ここで、
図1は、本発明の第1実施形態に係るタンデム印刷システム1の概略構成図である。
図1に示すように、第1実施形態に係るタンデム印刷システム1は、上流側印刷装置10と、中間装置20と、下流側印刷装置30と、制御装置40とを備える。
【0015】
また、本実施形態において、所定の印刷処理とは、要求された画像の印刷を完成させる処理であり、上流側印刷装置10が、用紙の一方の面に対してインクジェットヘッドからインクを吐出することにより所定の印刷処理を実行し、中間装置20が表裏を反転し、下流側印刷装置30が、インクジェットヘッドからインクを吐出することにより用紙の他方の面に対して印刷処理を実行する。なお、所定の印刷処理は、白黒印刷およびカラー印刷を含む。また、ここでは、
図1に示す例では、1つの色のインクタンクを例に挙げて説明するが、複数のインクタンクを有しており、同様の構成、作用を有する。
【0016】
上流側印刷装置10は、インクタンク12と、インク補給弁13と、液位計16(16a,16b,16c)と、インク補給管17とを備えている。また、上流側印刷装置10には、インクカートリッジ11が装着されている。
【0017】
インクカートリッジ11は、インクを貯留しており、インクカートリッジ11内のインクは、インク補給管17を介してインクタンク12へ供給される。インクタンク12に貯留されたインクは、図示しないポンプにより上流側印刷装置10のインクジェットヘッドへと供給される。
【0018】
インク補給管17は、インクカートリッジ11とインクタンク12とを接続する配管であり、インク補給弁13が開かれることにより、インクカートリッジ11からインクタンク12へインクが供給される。
【0019】
インク補給弁13は、インク補給管17のインクの流路を開閉する。インクタンク12へインクを補給する際、インク補給弁13が開かれる。
【0020】
液位計16は、インクタンク12の液位を測定する計器であり、第1液位計16a、第2液位計16b、第3液位計16cを有する。インクタンク12の液位の高い順から第1液位計16a、第2液位計16b、第3液位計16cが設けられている。
【0021】
下流側印刷装置30は、インクタンク32と、インク補給弁33と、液位計36(36a,36b,36c)と、インク補給管37とを備えている。また、下流側印刷装置30には、インクカートリッジ31が装着されている。
【0022】
インクカートリッジ31は、インクを貯留しており、インクカートリッジ31内のインクは、インク補給管37を介してインクタンク32へ供給される。インクカートリッジ31内のインクは、インクカートリッジ11内のインクと同一のインクである。インクタンク32に貯留されたインクは、図示しないポンプにより下流側印刷装置30のインクジェットヘッドへと供給される。
【0023】
インク補給管37は、インクカートリッジ31とインクタンク32とを接続する配管であり、インク補給弁33が開かれることにより、インクカートリッジ31からインクタンク32へインクが供給される。
【0024】
インク補給弁33は、インク補給管37のインクの流路を開閉する。インクタンク32へインクを補給する際、インク補給弁33が開かれる。
【0025】
液位計36は、インクタンク32の液位を測定する計器であり、第1液位計36a、第2液位計36b、第3液位計36cを有する。インクタンク32の液位の高い順から第1液位計36a、第2液位計36b、第3液位計36cが設けられている。
【0026】
また、インクタンク12とインクタンク32とを連通し、インクタンク12に貯留されたインクをインクタンク32へ送液するための連通管51が設けられている。さらに、インクタンク12とインクタンク32とを連通し、インクタンク32に貯留されたインクをインクタンク12へ送液するための連通管52が設けられている。連通管51と連通管52との先端は、第3液位計の位置より下方になるように設けられており、貯留されているインクに液浸している。
【0027】
なお、ここでは、説明のため、上流側印刷装置10、下流側印刷装置30ともに、1つのインクタンクを有する構成として説明したが、それぞれ複数のインクタンクを有する。複数のインクタンクには、同一のインクを貯留するようにしてもよいし、種類(色、特性など)の異なるインクを貯留するようにしてもよい。すなわち、同一のインクが貯留されている上流側印刷装置10のインクタンクと下流側印刷装置30のインクタンクとの間で、連通管51,52を介して互いにインクを送液可能に構成されている。
【0028】
中間装置20は、ポンプ21とポンプ22とを備えている。
【0029】
ポンプ21は、後述する制御装置40からの指示に基づいて、インクタンク12に貯留されたインクをインクタンク32へ送液する。
【0030】
ポンプ22は、後述する制御装置40からの指示に基づいて、インクタンク32に貯留されたインクをインクタンク12へ送液する。
【0031】
制御装置40は、タンデム印刷システム1内の各種機能を制御する。例えば、制御装置40は、インクタンク12に貯留されたインクをインクタンク32へ送液するようにポンプ21を制御したり、インクタンク32に貯留されたインクをインクタンク12へ送液するようにポンプ22を制御する。ここで、インクタンク12と、インクタンク32と、連通管51と、連通管52と、ポンプ21と、ポンプ22と、制御装置40とを、インク送液機構という。制御装置40には、内部メモリが搭載されており、例えば、インクジェットヘッドから吐出したインクの吐出量、印刷枚数、液位計16の測定履歴などの情報が記憶されている。
【0032】
また、制御装置40は、インクタンク12およびインクタンク32に貯留されたインク量を適正に保つように、それぞれのインクの液位を制御する。
【0033】
具体的には、制御装置40は、液位計16および液位計36により測定された液位に基づいて、インクタンク12の液位がインクタンク32の液位より高くなるようにポンプ21とポンプ22とを制御する。具体的には、インクタンク12の液位は、第2液位計16bで測定される液位以上であり、第1液位計16aで測定される液位以下となるように制御される。インクタンク32の液位は、第3液位計36cで測定される液位以上であり、第2液位計36bで測定される液位以下となるように制御される。
【0034】
図2は、本発明の第1実施形態に係るタンデム印刷システム1が備える制御装置40の液位制御を説明した図である。
【0035】
図2に示すように、第2液位計16bがオンの状態(液位が第2液位計16bの位置以上の状態)を“H”する。第2液位計16bがオフ、第3液位計16cがオンの状態(液位が第2液位計16bの位置未満で第3液位計16cの位置以上の状態)を“L”とする。第3液位計16cがオフの状態(液位が第3液位計16cの位置未満の状態)を“LL”とする。第1液位計36a、第2液位計36b、第3液位計36cについても同様である。
【0036】
図2では、液位計16および液位計36の検出状態に応じて、状態A~状態Iで示している。上述したように、インクタンク32の液位は、第3液位計36cで測定される液位以上であり、第2液位計36bで測定される液位以下となるように制御されるので、状態A~状態Cは、あり得ない状態となる。
【0037】
状態Dは、上流側印刷装置10のインクタンク12の液位が“H”で、下流側印刷装置30のインクタンク32の液位が“L”の状態である。この場合、インクタンク12およびインクタンク32ともに、適正なインク量のインクが貯留されているので、制御装置40は、インクの送液動作を行うことはない。
【0038】
状態Eは、上流側印刷装置10のインクタンク12の液位、下流側印刷装置30のインクタンク32の液位がともに“L”の状態である。この場合、インクタンク32は、適正なインク量のインクが貯留されているが、インクタンク12は、貯留されているインク量が不足していることになる。
【0039】
この場合、制御装置40は、第1液位計16aがオンとなるまでインク補給弁13を開く。これによりインクカートリッジ11からインクタンク12へインクが供給され、インクカートリッジ11に十分なインクがある場合には、第1液位計16aがオンとなるまで液位が上昇する。そして、制御装置40は、第1液位計16aがオンとなると、インク補給弁13を閉じる。
【0040】
一方、インクカートリッジ11に十分なインクがない場合には、インク補給弁13を開いたとしても、第1液位計16aがオンとなるまで液位が上昇しない。すなわち、インク補給弁13を開いた時点から所定時間が経過しても第1液位計16aがオンとならない場合、インクカートリッジ11に十分なインクがないと判定できる。ただし、この場合には、制御装置40は、インクの送液動作を行うことはない。
【0041】
状態Fは、
図3(a)に図示するように、上流側印刷装置10のインクタンク12の液位が“LL”で、下流側印刷装置30のインクタンク32の液位が“L”の状態である。この場合、インクタンク32は、適正なインク量のインクが貯留されているが、インクタンク12は、貯留されているインク量が印刷不可となる液位まで不足していることになる。
【0042】
この場合、インクカートリッジ11内にインクがないが、インクカートリッジ31内にインクがあることになる。
【0043】
そこで、制御装置40は、ポンプ22を起動して、第1液位計16aがオンとなるまでインクタンク32に貯留されたインクをインクタンク12へ送液する。これにより、インクタンク32からインクタンク12へインクが供給され、第1液位計16aがオンとなるまで液位が上昇する。そして、制御装置40は、第1液位計16aがオンとなると、ポンプ22を停止する。この送液により、下流側印刷装置30のインクタンク32の液位が“LL”となった場合(状態Gや状態H)、後述するように、制御装置40は、第2液位計36bがオンとなるまでインク補給弁33を開く。これによりインクカートリッジ31からインクタンク32へインクが供給される。
【0044】
状態Gは、
図3(b)に図示するように、上流側印刷装置10のインクタンク12の液位が“H”で、下流側印刷装置30のインクタンク32の液位が“LL”の状態である。この場合、インクタンク12は、適正なインク量のインクが貯留されているが、インクタンク32は、貯留されているインク量が不足していることになる。
【0045】
この場合、制御装置40は、第2液位計36bがオンとなるまでインク補給弁33を開く。これによりインクカートリッジ31からインクタンク32へインクが供給され、インクカートリッジ31に十分なインクがある場合には、第2液位計36bがオンとなるまで液位が上昇する。そして、制御装置40は、第2液位計36bがオンとなると、インク補給弁33を閉じる。
【0046】
一方、インクカートリッジ31に十分なインクがない場合には、インク補給弁33を開いたとしても、第2液位計36bがオンとなるまで液位が上昇しない。すなわち、インク補給弁33を開いた時点から所定時間が経過しても第2液位計36bがオンとならない場合、インクカートリッジ31に十分なインクがないと判定できる。この場合には、制御装置40は、ポンプ21を起動して、第2液位計36bがオンとなるまでインクタンク12に貯留されたインクをインクタンク32へ送液する。これにより、インクタンク12からインクタンク32へインクが供給され、第2液位計36bがオンとなるまで液位が上昇する。そして、制御装置40は、第2液位計36bがオンとなると、ポンプ21を停止する。これにより、インクタンク32にインクが供給されるので、印刷処理を継続することができる。なお、この送液により、上流側印刷装置10のインクタンク12の液位が“L”となった場合(状態E)、上述したように、制御装置40は、第1液位計16aがオンとなるまでインク補給弁13を開く。これによりインクカートリッジ11からインクタンク12へインクが供給される。
【0047】
状態Hは、上流側印刷装置10のインクタンク12の液位が“L”で、下流側印刷装置30のインクタンク32の液位が“LL”の状態である。この場合、インクタンク32およびインクタンク12は、ともに貯留されているインク量が不足していることになる。
【0048】
この場合、インクカートリッジ11およびインクカートリッジ31ともにインクがないことになるので、インクカートリッジからのインク補給が困難となる。
【0049】
ここで、下流側印刷装置30のインクタンク32は、貯留されているインク量が印刷不可となる液位まで不足しているので、インクが補給されない限り印刷処理を継続することができない。
【0050】
そこで、制御装置40は、ポンプ21を起動して、第2液位計36bがオンとなるまでインクタンク12に貯留されたインクをインクタンク32へ送液する。これにより、インクタンク12からインクタンク32へインクが供給され、第2液位計36bがオンとなるまで液位が上昇する。そして、制御装置40は、第2液位計36bがオンとなると、ポンプ21を停止する。これにより、インクタンク32にインクが供給されるので、印刷処理を継続することができる。
【0051】
状態Iは、上流側印刷装置10のインクタンク12の液位が“LL”で、下流側印刷装置30のインクタンク32の液位が“LL”の状態である。この場合、インクタンク32およびインクタンク12は、ともに貯留されているインク量が印刷不可となる液位まで不足していることになる。
【0052】
この場合、インクカートリッジ11およびインクカートリッジ31ともにインクがないことになるので、インクカートリッジからのインク補給が困難であり、インクタンク12,32は共に他のインクタンクにインクを供給できるほどインクを貯留していないので、制御装置40は、タンデム印刷システム1のシステム全体を停止する。
【0053】
以上のように、本発明の第1実施形態に係るタンデム印刷システム1によれば、インクタンク12とインクタンク32とを連通する連通管51,52と、インクタンク12とインクタンク32との間で貯留されたインクを送液するポンプ21,22とを備えている。
【0054】
これにより、インクタンク12とインクタンク32とが同時にインク切れを生じることがないので、インク切れによる印刷停止を防止することができる。
【0055】
なお、制御装置40は、液位計16および液位計36により測定された液位に基づいて、インクタンク12の液位がインクタンク32の液位より高くなるようにポンプ21とポンプ22とを制御したが、これに限らない。
【0056】
例えば、インクタンク12およびインクタンク32のうち、貯留されたインクの使用頻度が低い方の液位が高くなるようにポンプ21とポンプ22とを制御するようにしてもよい。ここで、インクの使用頻度は、インクジェットヘッドから吐出したインクの吐出量、印刷枚数、液位計の履歴などに基づいて求められる。
【0057】
例えば、インクタンク12よりインクタンク32の方が使用頻度が低い場合には、制御装置40は、インクタンク32の液位を第2液位計36bで測定される液位以上であり、第1液位計36aで測定される液位以下となるように制御し、インクタンク12の液位を第3液位計16cで測定される液位以上であり、第2液位計16bで測定される液位以下となるように制御する。
【0058】
これにより、液位が高くなるように制御されているインクタンクの使用頻度が低いので、他のインクタンクへ余裕を持って供給することができる。
【0059】
<変形例>
本発明の第1実施形態に係るタンデム印刷システム1では、上流側印刷装置10、下流側印刷装置30ともに、それぞれ複数のインクタンクを有し、同一のインクが貯留されている上流側印刷装置10のインクタンク12と下流側印刷装置30のインクタンク32との間で、連通管51,52を介して互いにインクを送液可能に構成されているが、送液する側が同一のインクが貯留されたインクタンクを複数有していてもよい。
【0060】
図4は、本発明の第1実施形態の変形例に係るタンデム印刷システム1の構成を示した図である。
【0061】
図4に示すように、上流側印刷装置10のインクタンク12は、C(シアン)のインクが貯留されたインクタンク12Aと、M(マゼンタ)のインクが貯留されたインクタンク12Bと、Y(イエロー)のインクが貯留されたインクタンク12Cと、K(ブラック)のインクが貯留されたインクタンク12Dとを備える。また、インクタンク12Eは、CMYKのインクに加え、エキストラのインクを貯留するために設けられたインクタンクであり、ここではK(ブラック)のインクが貯留されているとする。
【0062】
また、下流側印刷装置30のインクタンク32も同様に、C(シアン)のインクが貯留されたインクタンク32Aと、M(マゼンタ)のインクが貯留されたインクタンク32Bと、Y(イエロー)のインクが貯留されたインクタンク32Cと、K(ブラック)のインクが貯留されたインクタンク32Dと、K(ブラック)のインクが貯留されたインクタンク32Eとを備える。
【0063】
インクタンク12AからC(シアン)のインクをインクタンク32Aへ送液するためのポンプ21AAと、インクタンク12BからM(マゼンタ)のインクをインクタンク32Bへ送液するためのポンプ21BBと、インクタンク12CからY(イエロー)のインクをインクタンク32Cへ送液するためのポンプ21CCと、インクタンク12DからK(ブラック)のインクをインクタンク32Dへ送液するためのポンプ21DDと、インクタンク12EからK(ブラック)のインクをインクタンク32Eへ送液するためのポンプ21EEとを備えている。
【0064】
さらに、インクタンク12AからC(シアン)のインクをインクタンク32Eへ送液するためのポンプ21AEと、インクタンク12BからM(マゼンタ)のインクをインクタンク32Eへ送液するためのポンプ21BEと、インクタンク12CからY(イエロー)のインクをインクタンク32Eへ送液するためのポンプ21CEと、インクタンク12DからK(ブラック)のインクをインクタンク32Eへ送液するためのポンプ21DEとを備えている。インクタンク32Eには、K(ブラック)のインクが貯留されているので、ポンプ21AE、ポンプ21BE、ポンプ21CEが起動されることはないが、ポンプ21DE、ポンプ21EEが起動されることはある。
【0065】
なお、ここでは、インクタンク12(12A,12B,12C,12D,12E)からインクタンク32Eへ送液するポンプ21(ポンプ21AE,ポンプ21BE,ポンプ21CE,ポンプ21DE)について説明したが、インクタンク32Eだけでなく、インクタンク32A,32B,32C,32Dについても、それぞれインクタンク12(12A,12B,12C,12D,12E)から送液するポンプ21を有するポンプを備えている(図示しない)。
【0066】
さらに、図示しないが、同様に、下流側印刷装置30のインクタンク32(32A,32B,32C,32D,32E)から、それぞれ上流側印刷装置10のインクタンク12(12A,12B,12C,12D,12E)へ送液するポンプ22も備えている。
【0067】
図4に示すように、インクタンク12Dとインクタンク12Eとインクタンク32Eに貯留されたインクは、いずれもK(ブラック)であり、同一のインクであるとする。そのため、例えば、状態Hの場合、インクタンク12Dまたはインクタンク12Eのいずれのインクタンクからもインクタンク32Eへインクを送液することが可能となる。
【0068】
そこで、制御装置40は、インクタンク12Dまたはインクタンク12Eのうち、液位計16の測定結果に基づいて、液位の高い方のインクタンクから送液するようにポンプ21を制御する。これにより、貯留されているインク量が多いインクタンクからインクを送液することができるので、バランスよく供給するインクタンクを使用することができる。
【0069】
なお、本発明の第1実施形態やその変形例では、タンデム印刷システム1を例に挙げて説明したが、本発明では、タンデム印刷システムに限らず、1つの印刷装置(第1印刷装置)と、他の印刷装置(第2印刷装置)とで、インク送液機構を備えていればよい。
【0070】
また、本発明の第1実施形態やその変形例では、インク送液機構を備えたタンデム印刷システム1を例に挙げて説明したが、インクなどの液体に限らない。液体の他にもトナーなどの紛体である消耗品に適用することも可能である。
【0071】
(付記)
本出願は、以下の発明を開示する。
【0072】
(付記1)
第1インクタンクに貯留されたインクを用いて用紙に印刷処理を実行する上流側印刷装置と、第2インクタンクに貯留されたインクを用いて前記上流側印刷装置により印刷処理が実行された用紙に再度印刷処理を実行する下流側印刷装置とを用いてタンデム印刷を行うタンデム印刷システムであって、
前記第1インクタンクと前記第2インクタンクとを連通する連通管と、
前記第1インクタンクと前記第2インクタンクとの間で前記貯留されたインクを前記連通管を介して送液する送液手段と、
を備えたことを特徴とするタンデム印刷システム。
【0073】
これにより、第1インクタンクと第2インクタンクとが同時にインク切れを生じることがないので、インク切れによる印刷停止を防止することができる。
【0074】
(付記2)
前記第1インクタンクおよび前記第2インクタンクにそれぞれ設けられ、前記貯留されたインクの液位を測定する液位計と、
前記液位計により測定された液位に基づいて、前記第1インクタンクおよび前記第2インクタンクのうち、一方のインクタンクを他方のインクタンクより液位が高くなるように前記送液手段を制御する制御部と、
を備えたことを特徴とする(付記1)記載のタンデム印刷システム。
【0075】
これにより、第1インクタンクと第2インクタンクとのインク切れを生じるタイミングをずらすことができるので、より第1インクタンクと第2インクタンクとが同時にインク切れを生じることがなく、インク切れによる印刷停止を防止することができる。
【0076】
例えば、上流側印刷装置と下流側印刷装置とで同量のインクを使用して印刷を継続した場合、一方のインクタンク(液位が高くなるように送液手段を制御しているインクタンク)に接続されたインクカートリッジのインクが先になくなるので、先にインクカートリッジを交換することになる。その間にインクタンクにインクが不足した場合でも、他方のインクタンクからインクが供給されるので、インク切れによる印刷停止を防止することができる。
【0077】
(付記3)
前記制御部は、
前記第1インクタンクおよび前記第2インクタンクのうち、前記貯留されたインクの使用頻度が低い方のインクタンクの液位が高くなるように前記送液手段を制御する
ことを特徴とする(付記2)記載のタンデム印刷システム。
【0078】
これにより、液位が高くなるように制御されているインクタンクの使用頻度が低いので、他のインクタンクへ余裕を持ってインクを供給することができる。
【0079】
(付記4)
前記制御部は、
前記第1インクタンクおよび前記第2インクタンクのうち、送液する側が同種類のインクが貯留されたインクタンクを複数有している場合、最も液位の高いインクタンクから送液するように前記送液手段を制御する
ことを特徴とする(付記2)または(付記3)記載のタンデム印刷システム。
【0080】
これにより、貯留されているインク量が多いインクタンクからインクを送液することができるので、バランスよく供給するインクタンクを使用することができる。
【0081】
(付記5)
第1印刷装置が備える第1インクタンクと第2印刷装置が備える第2インクタンクとを連通する連通管と、
前記第1インクタンクと前記第2インクタンクとの間で、それぞれ貯留されたインクを前記連通管を介して一方のインクタンクから他方のインクタンクへ送液する送液手段と、
を備えたことを特徴とするインク送液機構。
【0082】
これにより、第1インクタンクと第2インクタンクとのインク切れを生じるタイミングをずらすことができるので、より第1インクタンクと第2インクタンクとが同時にインク切れを生じることがなく、インク切れによる印刷停止を防止することができる。
【符号の説明】
【0083】
1 タンデム印刷システム
10 上流側印刷装置
11 インクカートリッジ
12(12A~12E) インクタンク(第1インクタンク)
13 インク補給弁
16 液位計
16a 第1液位計
16b 第2液位計
16c 第3液位計
17 インク補給管
20 中間装置
21(21AA,21AE,21BB,21BE,21CC,21CE,21DD,21DE,21EE) ポンプ
22 ポンプ
30 下流側印刷装置
31 インクカートリッジ
32(32A~32E) インクタンク
33 インク補給弁
36 液位計
36a 第1液位計
36b 第2液位計
36c 第3液位計
37 インク補給管
40 制御装置
51,52 連通管