(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-27
(45)【発行日】2022-05-11
(54)【発明の名称】作業車輌
(51)【国際特許分類】
A01C 11/02 20060101AFI20220428BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20220428BHJP
【FI】
A01C11/02 330L
A01C11/02 311E
B60R16/02 630B
(21)【出願番号】P 2018159008
(22)【出願日】2018-08-28
【審査請求日】2021-02-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】薬師寺 賢志郎
(72)【発明者】
【氏名】宇山 昌樹
【審査官】星野 浩一
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-023818(JP,A)
【文献】特開2016-082953(JP,A)
【文献】特開平09-327213(JP,A)
【文献】特開2006-256466(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0068605(US,A1)
【文献】特開2016-078600(JP,A)
【文献】特開2010-193763(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01C 11/02
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスイッチ操作部と透光部を設けるパネルケースに、複数のタクタイルスイッチと発光ダイオードを実装する基板を内装して、
前記タクタイルスイッチによって構成する操作スイッチと
発光ダイオードによって構成するモニタランプの集合体を構成すると共に、この集合体を運転席の前方に設けるステアリングコラムを覆うコラムカバーに設け
、また、新たに必要となる自動制御用操作スイッチと、この自動制御用操作スイッチの入切状態を表示するランプを、前記タクタイルスイッチと発光ダイオードの一部を用いて構成して、前記集合体に纏めて設けることを特徴とする作業車輌。
【請求項2】
前記タクタイルスイッチによって構成する操作スイッチを灯火用
操作スイッチや、
前記自動制御用
操作スイッチとし、また、発光ダイオードによって構成するモニタランプを操作スイッチの状態表示用ランプや苗補給等の警告用
モニタランプとすることを特徴とする請求項1に記載の作業車輌。
【請求項3】
前記パネルケースを、コラムカバーに形成するスイッチ取付孔乃至ランプ収容部を備えるパネル部の上面を覆うように装着することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の作業車輌。
【請求項4】
前記基板に接続するコードをパネル部のスイッチ取付孔を通して配策することを特徴とする請求項3に記載の作業車輌。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用型田植機や野菜苗の移植機、或いはトラクタやコンバイン等の主に農業用の作業車輌に関し、詳しくは、運転席の前方にステアリングシャフトを内包するステアリングコラムを立設し、このステアリングコラムを覆うコラムカバーに、各種の操作スイッチとモニタランプを設ける作業車輌に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、乗用型田植機においては、運転席の前方にステアリングシャフトを内包するステアリングコラムを立設し、このステアリングコラムを覆うコラムカバー等に、各種の操作スイッチとモニタランプを設ける。そして、これらの操作スイッチはコラムカバーに個々に取付けたり、複数の操作スイッチをスイッチアッセンブリとして纏めて取付ける。また、モニタランプもランプアッセンブリとして纏めてコラムカバーに取付ける。
【0003】
そして、植付条数の少ない4条植え田植機等では、出来るだけ機械を安価に提供するため機械的な機構を用いて植付装置等の制御を行う。そのため、これらの制御装置等に使用する操作スイッチの数やモニタランプの数も少なくてすみ、ここで、コラムカバー(運転パネル)にスイッチ取付孔やランプ収容部を一体的に成型し、このパネル部に操作スイッチやモニタランプを纏めて取付けることが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述の特許文献1では、コラムカバーにスイッチ取付孔やランプ収容部を一体的に成型し、このスイッチ取付孔やランプ収容部に操作スイッチやモニタランプを取付ける。そのため、スイッチアッセンブリやランプアッセンブリを別に用意して、これらを個々にコラムカバー等に取付ける場合より、その部品点数や組立工数を削減してコストダウンを図ることができる。
【0006】
しかし、4条植え田植機等であっても、それ以上の多条植え田植機に既に採用されている電動化を推し進め、例えば、機体の旋回に伴って植付装置を上昇させる旋回アップや、次行程における走行の目印を付ける左右マーカーの切換えを自動化して、作業精度や操作性の向上に努める必要がある。そして、その場合、自動制御関連の操作スイッチやこの操作スイッチの入切状態を表示するランプ等が新たに必要となって、従来のコラムカバーでは手狭になってこれらの操作スイッチやランプを全て取付けることができないという問題が生ずる。
【0007】
そのため、この問題を解決すべくコラムカバーとは別に、例えば運転席の側方に別の操作パネルを設け、この操作パネルに新たに増えた操作スイッチやランプを設けることが考えられる。しかし、このように操作スイッチやランプを分散して配置すると、部品点数や組立工数が増大してコストアップとなると共に、操作スイッチの操作性やランプの視認性を犠牲にすることになる。
【0008】
そこで、本発明は、上記のような問題点に鑑み、ステアリングコラムを覆うコラムカバーに、従来と同様な配置スペースのもとに、新たに増えた操作スイッチやランプを漏れなく設けることができる作業車輌を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の作業車輌は、上記課題を解決するため、複数のスイッチ操作部と透光部を設けるパネルケースに、複数のタクタイルスイッチと発光ダイオードを実装する基板を内装して、前記タクタイルスイッチによって構成する操作スイッチと発光ダイオードによって構成するモニタランプの集合体を構成すると共に、この集合体を運転席の前方に設けるステアリングコラムを覆うコラムカバーに設け、また、新たに必要となる自動制御用操作スイッチと、この自動制御用操作スイッチの入切状態を表示するランプを、前記タクタイルスイッチと発光ダイオードの一部を用いて構成して、前記集合体に纏めて設けることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の作業車輌は、前記タクタイルスイッチによって構成する操作スイッチを灯火用操作スイッチや、前記自動制御用操作スイッチとし、また、発光ダイオードによって構成するモニタランプを操作スイッチの状態表示用ランプや苗補給等の警告用モニタランプとすることを特徴とする。
【0011】
さらに、本発明の作業車輌は、前記パネルケースを、コラムカバーに形成するスイッチ取付孔乃至ランプ収容部を備えるパネル部の上面を覆うように装着することを特徴とする。そして、本発明の作業車輌は、前記基板に接続するコードをパネル部のスイッチ取付孔を通して配策することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の作業車輌によれば、複数のスイッチ操作部と透光部を設けるパネルケースに、複数のタクタイルスイッチと発光ダイオードを実装する基板を内装して、前記タクタイルスイッチによって構成する操作スイッチと発光ダイオードによって構成するモニタランプの集合体を構成すると共に、この集合体を運転席の前方に設けるステアリングコラムを覆うコラムカバーに設け、また、新たに必要となる自動制御用操作スイッチと、この自動制御用操作スイッチの入切状態を表示するランプを、前記タクタイルスイッチと発光ダイオードの一部を用いて構成して、前記集合体に纏めて設けるから、操作スイッチとモニタランプの数を増やしながら、その取付けスペースを従来と同等に抑えて、操作スイッチとモニタランプの集合体をコラムカバーに十分余裕をもって設けることができる。
【0013】
また、新たな電動化に伴って増えた操作スイッチやモニタランプを走行機体の所々に分散させて設ける必要がなく、従前の操作スイッチやモニタランプと共にコラムカバーに設ける集合体に纏めて設けることができる。さらに、コラムカバーは運転席前方のステアリングホイール下方に設けるものであるから、このコラムカバーに設ける集合体に纏めて設ける操作スイッチは、ステアリングホイールを握った手元に設けることになって、ステアリングホイールから手を離して素早く目的とする操作スイッチを操作することができる。
【0014】
そして、操作スイッチはタクタイルスイッチに統一して、このタクタイルスイッチはパネルケースのスイッチ操作部を押すことでスイッチを切り換えることができるから、例えば、コンビネーションスイッチのように押し操作や回動操作といった別々の操作方法によってスイッチを切り換えるものより簡単且つ迅速に、また、統制された操作感のもとに誤操作なくスイッチの切換操作を行うことができる。
【0015】
また、モニタランプもコラムカバーに設ける集合体に纏めて集約するから、作業走行中に前方に向けた視線を若干、下に下げるだけで全てのモニタランプを見ることができ、それによって各部の異常や作業状態を纏めて一目瞭然に知覚することができる。そして、操作スイッチとモニタランプが一箇所に集中的に纏まり、モニタランプを見ながら同一視線のもとに操作スイッチを誤りなく確実に操作することができる。
【0016】
しかも、モニタランプを構成する発光ダイオードは、従来の白熱電球に比べて高輝度で消費電力も少なく、また、何より薄く小型化することができる。そのため、これをタクタイルスイッチと共に基板に実装して内装するパネルケースは、自らの高さを極力抑えることができるから、パネルケースがステアリング操作の邪魔にならず、逆にコラムカバーより若干、高く設けることによって操作スイッチの操作性とランプの視認性を向上させることができる。
【0017】
また、前記タクタイルスイッチによって構成する操作スイッチを灯火用操作スイッチや、前記自動制御用操作スイッチとし、また、発光ダイオードによって構成するモニタランプを操作スイッチの状態表示用ランプや苗補給等の警告用モニタランプとすると、従来のコンビネーションスイッチに設ける灯火用スイッチの機能をタクタイルスイッチによって構成する灯火用操作スイッチに置き換えたり、新たなマーカーの自動制御用操作スイッチとして、これらを集中配置してその利便性を高めることができる。
【0018】
しかも、発光ダイオードによって構成するモニタランプを苗補給等の警告用ランプにするから、従来の警告用ランプは残らず発光ダイオードによって構成するランプに置き換えることができると共に、新たな自動制御用スイッチの入切状態を発光ダイオードによって構成する表示用ランプで表示することができ、なお且つ、これらの自動制御用スイッチとその状態表示用ランプを基板に近接して実装することにより、全く視線を移すことなく状態表示用ランプを見ながら操作スイッチを適切に切換操作することができる。
【0019】
さらに、前記パネルケースを、コラムカバーに形成するスイッチ取付孔乃至ランプ収容部を備えるパネル部の上面を覆うように装着すると、従来のスイッチ取付孔やランプ収容部を一体的に成型する樹脂製のコラムカバーを用いて、このカバーにパネルケースを装着することができる。そして、従来のコラムカバーはスイッチ取付孔やランプ収容部を一体的に成型し、これを金型改造することなく、そのままパネルケースを設けるコラムカバーとして用いようとすると、スイッチ取付孔乃至ランプ収容部が外部に露出する虞があり、その場合、露出したスイッチ取付孔乃至ランプ収容部は見栄えが悪く商品価値を損ねてしまう。
【0020】
しかし、スイッチ取付孔乃至ランプ収容部を備えるパネル部の上面をパネルケースで覆ってしまえば、スイッチ取付孔乃至ランプ収容部はパネルケースに隠れて外部に露出することはなく、敢えて金型改造してこれらのスイッチ取付孔乃至ランプ収容部を無くす必要はない。従って、コラムカバーを新作したり金型改造する必要がないからコストアップを抑制することができ、しかも、コラムカバーは従来のスイッチ取付孔乃至ランプ収容部をそのまま備えるから、パネルケースを設けなければ、作業車輌の旧型となるコラムカバーの補用部品として役立てることができる。
【0021】
そして、従来のコラムカバーのスイッチ取付孔やランプ収容部を備えるパネル部は、操作スイッチやモニタランプの配置箇所として、その操作性や視認性において最適な位置に設けているから、このパネル部にパネルケースを配置することは、パネルケースに設ける操作スイッチやモニタランプが従来と変わらず最適な位置に配置されることを意味し、また、そのパネル部の限られた配置スペースにパネルケースを介して多数の操作スイッチとモニタランプを合理的に配置することができる。
【0022】
さらに、前記基板に接続するコードをパネル部のスイッチ取付孔を通して配策すると、タクタイルスイッチとLEDランプに接続するコードを、コラムカバーのパネル部に設けるスイッチ取付孔を通して制御回路に配策することができる。そのため、コードを外部への露出を防ぎながらコラムカバー内を通すために新たにコードを通す孔をコラムカバーに設ける必要がなく、ここでもコストアッブを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明を適用する乗用型田植機の側面図である。
【
図6】パネルケースのコラムカバーへの取付けを示す斜視図である。
【
図7】(a)はパネルケースをコラムカバーに取付けた状態を示す正面図、(b)はその底面図、(c)はその側面図である。
【
図8】(a)はパネルケースの平面図、(b)はその底面図、(c)はその斜視図である。
【
図9】基板等のパネルケースへの取付けを示す斜視図である。
【
図10】(a)は基板等をパネルケースに取付けた状態を示す背面図、(b)はその平面図、(c)はその正面図、(d)はその底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1乃至及び
図5に示すように農業用の作業車輌を構成する乗用型田植機1は、前輪2と後輪3を備える走行機体4の後部にリンク機構5を介して作業装置を構成する植付装置6をローリング自在に連結する。そして、この植付装置6は、走行機体4の後部とリンク機構5の後部に亘って取付ける油圧シリンダ7によって下降させた作業姿勢と上昇させた非作業姿勢に昇降自在に設ける。なお、後輪3と植付装置6との間には、走行機体4の旋回によって荒れた枕地を均す整地ロータ8を設け、この整地ロータ8は植付装置6と共に昇降するように設ける。
【0025】
一方、前記走行機体4は、左右のサイドメンバーに複数のクロスメンバーを固着して構成するシャーシフレーム9に、トランスミッションケース10、左右のフロントアクスルケース、リヤアクスルケース11等を取付けて一体的に構成する。また、トランスミッションケース10の前部寄りにエンジンフレーム12を取付け、このエンジンフレーム12にはガソリンやディーゼルエンジン13を搭載する。
【0026】
また、エンジン13後方のシャ-シフレーム9に左右のフロントアクスルケースを介して取付けるトランスミッションケース10は、その上面にパワーステアリング装置を構成するトルクジェネレータ14を取付ける(
図3参照)。そして、このトルクジェネレータ14には、上方に延出するステアリングシャフト15とこのステアリングシャフト15を内包するステアリングコラム16を立設する。また、ステアリングシャフト15の上端部には前輪2を操舵するステアリングホイール17を取付ける。
【0027】
さらに、トルクジェネレータ14の出力シャフトはトランスミッションケース10内に設ける歯車減速装置に連結し、また、この歯車減速装置のセクタシャフト18の下端はトランスミッションケース10の下方に突出し、セクタシャフト18の下端部にピットマンアーム19を設ける。また、ピットマンアーム19に取付ける左右のタイロッド20は、フロントアクスルケースの両端部に設けるキングピンケースを介して左右の前輪2を操舵する。
【0028】
一方、前記ステアリングコラム16の中途部にブラケット21を固着し、このブラケット21にステアリングコラム16自体を覆うコラムカバー22を取付ける。また、ブラケット21の左右に主変速レバー23、副変速レバー24、及びエンジンコントロールレバー25を回動自在に取付けると共に、その前寄り上部に燃料タンク26を取付ける。
【0029】
そして、前記コラムカバー22は合成樹脂製とし、その上方寄りの前部中央にステアリングシャフト15を通す孔22aを設ける(
図4、5参照)。また、その後方寄りに後述する操作スイッチやモニタランプを設ける取付部(パネル部)22bを設け、さらに、その左右外側寄りに振り分けて、主変速レバー23、副変速レバー24、及びエンジンコントロールレバー25のガイド孔22c、22dを設ける。
【0030】
また、上記コラムカバー22の下方には、スタータスイッチ27等を取付けるリヤカバー28を設け、また、コラムカバー22とリヤカバー28の前方側には、前照灯29を備えてエンジン13の後方側と下方側を除いてこれを覆うボンネット30を設ける。従って、エンジン13等で構成する原動部と作業車輌の主たる運転操作部の基部寄りは、ボンネット30及び燃料タンク26と、コラムカバー22とリヤカバー28によって覆うことになる。
【0031】
さらに、前記シャーシフレーム9には、合成樹脂製のフロントステップ31とリヤステップ32を設ける。この内、フロントステップ31は、ボンネット30の左右側方となる左右のフロントステップ部31aと、これに続いてリヤカバー28の後方となるフロアステップ部31bを備える。一方、リヤステップ32は、フロアステップ部31bの後部寄りから階段状に立ち上がり、シャーシフレーム9の後部に設けるシートフレーム9aに取付ける。
【0032】
そして、このリヤステップ32は、その上部中央に運転席33を設け、また、運転席33の左右には作業者が片足を掛けるリヤサイドステップ部32aを設ける。なお、前記フロアステップ部31bの前部中央寄りには株間調節レバー34を通す開口を、また、前部右寄りにはブレーキぺダル35を通す開口を設け、このブレーキぺダル35は、その踏み込みによってベルトテンションクラッチで構成する主クラッチを切ると共に、トランスミッションケース10に付設する前輪2と後輪3の四輪ブレーキを作動させる。
【0033】
ここで、乗用型田植機1の動力伝達系について簡単に説明すると、前記エンジン13は主クラッチを備える伝動ベルトを介してトランスミッションケース10に取付けるHST(静油圧式無段変速装置:主変速装置)を駆動する。また、HSTからトランスミッションケース10内に伝達された動力は、トランスミッションケース10内に設ける歯車変速装置によって構成する副変速装置、及び前輪の差動歯車装置を経由して、左右のフロントアクスルケース及びキングピンケース内に設ける伝動軸から左右の前輪2を駆動する。
【0034】
また、左右の後輪3はトランスミッションケース10内に設ける副変速装置からリヤアクスルケース11内に設ける後輪3の差動歯車装置を経由して駆動する。なお、植付装置6は、同様にHSTからトランスミッションケース10内に伝達され、また、トランスミッションケース10内に設ける株間変速装置及び植付クラッチから、さらに、植付PTOシャフト及びドライブシャフトを介して植付装置6のドライブケース内に動力が伝達される。
【0035】
そして、植付装置6は4条植えとなし、走行機体4の後部にローリング自在に連結する植付フレームに、前高後低状に傾斜して複数のマット苗を載置する苗載台36、苗載台36の下端から1株分ずつ苗を植付爪37により掻き取って田面に植付けるロータリ植付機構38、走行跡や旋回跡を整地しながら植付け箇所を均すフロート39、次行程における作業走行の目印を田面に付ける左右のマーカー40等を備えて構成し、そのドライブケースに入った動力によってスクリュシャフトを回転させて苗載台36を左右往復スライド作動させる。また、苗載台36の縦送りベルト41を駆動してマット苗を下方に間欠的に縦送りする。
【0036】
さらに、ドライブケースに入った動力によってロータリ植付機構38を構成するプランタケース42に動力を伝達し、ロータリケース43を回転駆動する。また、ロータリケース43に取付けたプランタアーム44に装着した植付爪37が苗載台36の下端から1株分ずつ苗を掻き取ると共に、掻き取った苗をフォーク45で押し出して苗を田面に植付ける。なお、左右のプランタケース42に設けるプランタシャフトには条止めクラッチをそれぞれ設け、それ以降の植付け作動を停止する。さらに、この条止めクラッチはワイヤにより条止めレバー46に接続し、この条止めレバー46を操作することによって、2条分の植付けを停止することができる。
【0037】
また、植付装置6に設ける左右のマーカー40は、植付フレームにその支持杆40aを回動自在に支持し、この支持杆40aをスプリングによつてマーカー40が田面に接地するように付勢する。また、支持杆40aはワイヤを介してマーカー40の作動機構に連結する。そして、この作動機構は植付装置6が上昇すると左右のマーカー40を共に上昇させる。また、植付装置6が下降するとマーカー40はスプリングの付勢力によって下降しようとするが、マーカーセット操作によって選択されなかったマーカー40は上昇したまま保持され、選択されたマーカー40のみ下降して次行程における作業走行の目印を田面に付ける。
【0038】
さらに、詳細に説明すると、左右のマーカー40は電動モータを備える制御装置によって作動機構を制御する。そして、制御装置は、植付装置6の上昇に合わせて次に植付装置6が下降した際に下降させるマーカー40の選択を右と左に交互に行うように自動制御する。そのため、往復植付走行する際のマーカーセット操作を不要にして煩雑な操作から解放する。なお、作業を開始する際や1行程の中途で植付装置6を上昇させるとマーカー40の選択が間違う場合がある。そこで、この場合は次に使用するマーカー40を後述する操作スイッチ47f、47gによって指定することができる。
【0039】
なお、植付装置6の昇降制御は、主変速レバー23のグリップの側面に設けるアップ・ダウンスイッチ48、49によって行う。そして、植付装置6が上昇している状態からダウンスイッチ49を押すと、電動モータで構成するカムモータが昇降バルブを下降位置に切換えて植付装置6を下降させる。また、後述する作業スイッチ47eが作業に設定されている場合、再度ダウンスイッチ49を押すとカムモータは植付クラッチを入りにする。さらに、この状態でアップスイッチ48を押すとカムモータは植付クラッチを切り、再度アップスイッチ48を押すと昇降バルブを上昇位置に切換え、植付装置6が最上昇位置になると固定位置に切換えて植付装置6を最上昇位置に保持する。
【0040】
ところで、乗用型田植機1は、植付装置6によって苗を植付けると同時に土中に肥料を撒く、例えばペースト施肥機仕様や粒状施肥機仕様を設けている。そして、前者のペースト施肥機仕様の場合、肥料タンクを走行機体4に設ける。また、この肥料タンクに貯留する肥料をホースで施肥ポンプに供給し、施肥ポンプは中途に設けるストップバルブやインジケータを経由して植付装置6のフロート39近傍に取付ける各条毎のノズルに肥料を圧送し、植付けた苗の側方の土中に肥料を吐出させる。なお、ペースト施肥機には肥料補給センサと肥料詰まりセンサを設ける。
【0041】
また、後者の粒状施肥機仕様は、粒状肥料を貯留するホッパと、肥料の繰出装置と、繰出装置の目皿ロールから繰出した肥料をエアーで圧送するブロアを備え、エアと共に圧送した肥料は各条毎にホースを介してホース端末に設ける作溝仕組に搬送し、それによって肥料を植付装置6で植付けた苗の側方の土中に撒くことができる。なお、繰出装置は各条用の条止めレバーを設け、不要な条列の施肥を止めることができると共に、ホッパには肥料補給センサを、また、作溝仕組には肥料詰りセンサを設ける。
【0042】
さらに、乗用型田植機1は、走行機体4の前部寄りの左右両側部にシャシフレーム9から立ち上げた取付けフレーム50を介して予備苗(マット苗)を載置する予備苗台51や、マット苗を畦際からスライドさせて植付装置6に供給するスライド式予備苗台を設ける。また、シャシフレーム9の前部にはセンターポール52を前後に回動自在に設け、シャシフレーム9の左右には図示しないトレースマーカーを設ける。
【0043】
次に、前述したコラムカバー22のパネル部22bに設ける操作スイッチやモニタランプについて説明する。先ず、パネル部22bは
図6及び
図7に示すように、その左側寄りに設ける大径のスイッチ取付孔22eと右側寄りに設ける矩形状になすランプ収容部22fを備える。そして、その大径になしたスイッチ取付孔22eには1つのコンビネーションスイッチを取付けることができる。なお、コンビネーションスイッチは、前照灯29を点灯させるライティングスイッチと、作業切替スイッチと、警報停止スイッチを統合して一体的に備える。
【0044】
また、矩形状になすランプ収容部22fは、その内部に仕切壁で区分けした5つのモニタランプ収納室22gを備え、各収納室22gの底部にはモニタランプを収納室に装着するための取付孔22hを設ける。なお、取付孔22hにはそれぞれ1個宛ての白熱電球(バルブ)を取付け、このバルブの上方となるランプ収容部22fの上面に透光性樹脂材で形成するパネル、若しくはフィルムを貼り付けて収納室22gの全体を覆う。また、上記パネル若しくはフィルムは、右側から順に「作業」「苗補給」「肥料詰り」「施肥条止め」「肥料」の警告文字をプリントし、各バルブが点灯するとバルブの上方に位置する警告文字部が発光するように構成する。
【0045】
但し、本実施形態の場合、係るコラムカバー22のパネル部22bの特にスイッチ取付孔22eとランプ収容部22fに夫々、前述のコンビネーションスイッチや白熱電球を取付けるものではなく、本実施形態の場合は、コラムカバー22の取付孔22eや収容部22fを備えるパネル部22bを利用して、そのパネル部22bに合成樹脂製のパネルケース53を装着し、また、パネルケース53に従来のコンビネーションスイッチや白熱電球に換わるタクタイルスイッチ54と発光ダイオード55を増設分を含めて多数設ける。
【0046】
即ち、上記パネルケース53は
図8に示すように、底が無く左右方向に長尺な例えば硯箱の蓋状に形成し、また、その側壁53aの一周する底面を、コラムカバー22のパネル部22bを取り囲む上面に隙間なく密着するようにパネル部22bの凹凸に倣って形成する。そして、パネルケース53の裏面側には、コラムカバー22への取付座53bと基板の取付座53cを数個一体に成型し、また、パネルケース53の天板となる平坦なパネル部53dには、複数のスイッチ操作部53eと発光ダイオードの透光孔(透光部)53fを成型する。
【0047】
より詳しく説明すると、上記スイッチ操作部53eは、パネルケース53のパネル部53dから丸底フラスコ状の切欠部53gによって、その先端寄りの操作部53hを切り離すように成型し、このスイッチ操作部53hを上方から押圧することによってスイッチ操作部53hの小幅な基部53i寄りが弾性変形し、その先端寄りの円形になす操作部53hが沈下してタクタイルスイッチ54を押圧操作するようになす。また、発光ダイオードの透光孔53fは、上記スイッチ操作部53hに近接させて設ける小径の丸孔53jと、それより大径の丸孔53kと、略矩形状の孔53lで構成し、この内、略矩形状の孔53lの外周縁53mは裏面側に若干、突出成型してランプの遮光壁に形成する。
【0048】
なお、前述のスイッチ操作部53eは、同種のスイッチを操作する2つのスイッチ操作部の弾性力を同じにして、スイッチを操作した際の押圧感を統一することが好ましい。従って、この2つのスイッチ操作部の切欠部53gの形状は同一にすることとなる。しかし、スイッチ操作部53eのパネル部22bにおける配置箇所によって、一方のスイッチ操作部(47g)の基部寄りの小幅なバネ代aが他方のスイッチ操作部(47f)のバネ代bより短くなる場合がある。そこで、スイッチを操作した際の押圧感を合わせるため、他方のスイッチ操作部(47f)のバネ代を一方のスイッチ操作部(47g)のバネ代aに合わせて短くして対応する。
【0049】
また、
図9及び
図10に示すように、パネルケース53の取付座53cにビスで取付ける基板56は、そのパネル部22bと略同一形状に形成し、この基板56上に、パネル部53dのスイッチ操作部53eと透光孔53fの下方に臨む位置に対応させて、それぞれタクタイルスイッチ54と発光ダイオード55を実装する。また、基板56の裏側には防水シート57を装着する。そして、パネルケース53の上面には透光性樹脂材で形成する防水用を兼ねた表示シート58を貼り付けて、複数のスイッチ操作部53eと発光ダイオード55の透光孔53fの全体を覆う。
【0050】
さらに、上記表示シート58は、例えば、黒色、白色、緑色、橙色、及び黄色の地と、黒色と白色の文字を使い分けてスイッチとランプの内容を表示し、具体的にはその左側寄りに「警報停止」「前照灯」「旋回アップ」「マーカー自動」「作業」の操作スイッチ47a~47eに関する文字表示とそのスイッチの操作位置s1及びスイッチの現在の状態を表示するランプ59a~59dの発光面f1の表示を行う。
【0051】
また、表示シート58の中程から右寄りには、「植付」「苗補給」「肥料補給」「肥料詰り」「施肥条止め」のランプ59e~59iに関する文字表示とこの文字を囲むランプの発光面f2の表示を行う。さらに、これらの左右には、「左」と「右」の操作スイッチ47f、47gに関する文字表示とその文字を囲むスイッチの操作位置s2、及び左右矢印のシンボルマークによって表す現在の状態を表示するランプ59j、59kの発光面f3の表示を行う。なお、上記各スイッチの操作位置s1、s2を表示する部位は上方に膨らませて、他の面とは区別できるようにしている。
【0052】
従って、表示シート58に表示される各スイッチの操作位置s1、s2の下方には、パネルケース53の各スイッチ操作部53eが望み、更にその下方には各タクタイルスイッチ54を配置し、一方、各ランプの発光面f1、f2、f3の下方には、パネルケース53の各発光ダイオードの透光孔53j、53k、53lが望み、更にその下方に各発光ダイオード55を配置する。なお、透光孔53j、53kに臨む発光ダイオード55は各1個ずつ設け、略矩形状の透光孔53lに臨む発光ダイオード55は各6個ずつ設ける。
【0053】
次に、前述の表示のもとに設ける操作スイッチ47a~47gとモニタランプ59a~59kの役割について簡単に説明すると、先ず、「前照灯」スイッチ47bは押すたびに前照灯29を入り切りし、その切り替わり状態は前照灯ランプ59aの点灯と消灯によって表示する。また、「作業」スイッチ47eは押すたびに作業と走行に切り替わり、作業に切り替わるとモニタランプの表示を有効にすると共に作業ランプ59dと「植付」ランプ59eを点灯させる。一方、走行に切り替わるとモニタランプの表示を無効(消灯)にすると共に作業ランプ59dと「植付」ランプ59eを消灯させる。
【0054】
また、「旋回アップ」スイッチ47cは、ステアリングホイール17を旋回操作すると植付装置6を自動的に上昇させる旋回アップ機能を押すたびに入り切りし、その切り替わり状態は旋回アップランプ59bの点灯と消灯によって表示する。さらに、「マーカー自動」スイッチ47dは、左右のマーカー40の選択を植付装置6の上昇に合わせて交互に右と左に切り換える自動制御を押すたびに入り切りし、その切り替わり状態はマーカー自動ランプ59cの点灯と消灯によって表示する。
【0055】
そして、「左」と「右」のスイッチ47f、47gは、上記マーカー自動制御におけるマーカー40の選択が誤っている場合、このスイッチを押すことによって正しいマーカー40を選択することができ、その選択状態は左右のマーカーランプ59j、59kの背反的な点灯と消灯によって表示する。なお、植付装置6を下降させている状態で、左右のマーカー40を共に下降させたい場合は、未だ下降していない側の「左」又は「右」のスイッチ47f、47gを押すとその側のマーカー40を下降させることができる。
【0056】
さらに、「苗補給」ランプ59fは、植付装置6の苗載台36にマット苗が少なくなったことを苗警報スイッチによって検出した際に点灯し、それに合わせて制御装置は警報ブザーを例えば5秒間作動させる。また、「肥料補給」ランプ59gは、ペースト施肥機仕様の田植機であれば肥料タンクに設けるペースト残量センサが肥料の残り少なくなったことを検出した際に、或いは粒状施肥機仕様の田植機であればホッパに肥料が残り少なくなったことを肥料補給センサが検出した際に点灯し、この場合も制御装置は警報ブザーを5秒間作動させる。
【0057】
また、「肥料詰り」ランプ59hは、ペースト施肥機仕様の田植機であればインジケータに設ける肥料詰まりセンサが肥料の詰まりを検出した際に、或いは粒状施肥機仕様の田植機であれば作溝仕組に設ける肥料詰りセンサが肥料の詰まりをけん出した際に点灯し、同時に警報ブザーも作動する。さらに、「施肥条止め」ランプ59iは、植付装置6の条止めレバー46を操作して例えば、2条分の植付けを停止させた際に、或いはペースト施肥機仕様の田植機であればストップバルブを操作して肥料の圧送を止めたり、粒状施肥機仕様の田植機であれば繰出装置の条止めレバーを操作して肥料の繰り出しを止めた際に点灯し、同時に警報ブザーも作動する。
【0058】
そして、「警報停止」スイッチ47aは、「苗補給」「肥料補給」「肥料詰り」「施肥条止め」の各ランプが点灯する際に同時に作動させる警報ブザーの吹鳴を、このスイッチ47aを押すことによって速やかに鳴りやます。なお、警報ブザーは、「作業」「前照灯」「旋回アップ」「マーカー自動」「左」「右」の各スイッチを押した際にも単音を発し、各スイッチの押し操作に伴う自動制御状態等の切り替わりを報知する。
【0059】
以上、各操作スイッチとモニタランプの役割について説明したが、係る操作スイッチ47a~47gとモニタランプ59a~59kの集合体をコラムカバー22のパネル部22bに設ける場合、
図6に示すようにそのスイッチ取付孔22eの周縁とランプ収容部22fの周縁に6個程度のビス通し孔hを穿設し、このビス通し孔hの裏側からビスを通してパネルケース53の取付座53bを螺子止めする。すると、パネルケース53の底面はコラムカバー22のパネル部22bを取り囲む上面に隙間なく密着し、埃や水滴がパネルケース53内に回り込まなくすることができる。
【0060】
なお、上記ビス通し孔hはコラムカバー22の金型を修正したり、成型後の機械加工によって形成することができ、その場合、コラムカバー22を旧型のコラムカバーの補用部品として使用する際に、新たに設けるビス通し孔hはコンビネーションスイッチやランプ収容部の表側に貼着するモニタカバーによって隠れ、外観上の見栄えを悪くすることはない。
【0061】
また、パネルケース53に設けた基板56の端子に接続する2つのコネクタc1、c2は、
図7に示すようにスイッチ取付孔22eに臨み、このコネクタc1、c2から下方に引き出したコード(不図示)はスイッチ取付孔22eを通して、例えばステアリングコラム16にクランプしながら電子制御装置の制御回路に配策する。従って、コードの外部への露出を防ぐためコラムカバー22にコードの通し孔を新たに設ける必要はない。
【0062】
さらに、「植付」及び「左」と「右」のランプ59e、59j、59kは、例えば、緑色を発する発光ダイオード55を用い、また、「苗補給」「肥料補給」「肥料詰り」「施肥条止め」のランプ59f~59iは、橙色を発する発光ダイオード55を用いることによって警告の種類を区分けし、作業者への注意喚起を速やかに行うことができるようにする。なお、各操作スイッチ47b~47eの切り替わり状態を表示するランプ59a~59dは、黄色、紫外等の上記以外の色を発する発光ダイオード55を用いることができる。
【0063】
そして、本実施形態に係るコラムカバー22に設ける操作スイッチやモニタランプの集合体の取付構造に基づく上記以外の作用効果は、既に発明の効果欄に記載した通りであって、ここでは重複を避けるためにその説明を省略する。なお、本実施形態においては、パネルケース53をビスでコラムカバー22に取付けたが、発光ダイオード55の長寿命の特性等からこれらのメンテナンスは殆ど不要になるから、パネルケース53をコラムカバー22に接着して設けたり、パネルケース53に爪を一体成型してコラムカバー22に取り付けることもでき、本発明は、前記実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0064】
1 乗用型田植機(作業車輌)
4 走行機体
6 植付装置(作業装置)
16 ステアリングコラム
22 コラムカバー
33 運転席
53 パネルケース
53e スイッチ操作部
53f 透光孔(透光部)
54 タクタイルスイッチ
55 発光ダイオード
56 基板