(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-27
(45)【発行日】2022-05-11
(54)【発明の名称】密封装置
(51)【国際特許分類】
F16J 15/3204 20160101AFI20220428BHJP
F16J 15/3264 20160101ALI20220428BHJP
【FI】
F16J15/3204 201
F16J15/3264
(21)【出願番号】P 2018558001
(86)(22)【出願日】2017-12-19
(86)【国際出願番号】 JP2017045530
(87)【国際公開番号】W WO2018117100
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-10-20
(31)【優先権主張番号】P 2016247789
(32)【優先日】2016-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】菊地 健一
【審査官】保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-208683(JP,A)
【文献】米国特許第05211406(US,A)
【文献】特開2015-169279(JP,A)
【文献】実開平03-105767(JP,U)
【文献】特開2009-257485(JP,A)
【文献】特開2003-307224(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J15/16-15/32
F16J15/3204-15/3236
F16J15/324-15/3296
F16J15/46-15/53
F16C33/72-33/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対回転する二部材のうちの内側の部材に固定される第1のシール部材と、
相対回転する二部材のうちの外側の部材の孔の内面に固定され、前記第1のシール部材が摺動可能に接触する第2のシール部材とを備え、
機器内部空間の潤滑剤を当該機器内部空間に密封する密封装置であって、
前記第2のシール部材は、
前記孔に固定される外側円筒体と、
前記第1のシール部材に摺動可能に接触するリップ部とを有しており、
前記第1のシール部材は、
前記内側の部材に固定されるスリーブと、
前記スリーブの大気側の端部に一体に連結されてその外側に放射状に広がるフランジとを有しており、
前記フランジの外端縁には、前記孔と同心の外側円筒部が形成されており、当該外側円筒部の外周面には、前記第2のシール部材の前記外側円筒体の内周面に摺動可能であって、前記外側円筒体の前記内周面に全周にわたって密封接触する、環状の突起が形成されており、
前記突起は、前記孔の軸線方向と平行な方向において、複数の
突起を成すように形成されており、
前記第1のシール部材の前記外側円筒部は、前記フランジの前記外端縁から大気側に向けて延びており、
前記複数の
突起は、大気側から機器内部空間側に向かうに連れて小さい直径を有し、
前記複数の突起のうち、最も大気側の突起を含む少なくとも1つは、前記外側円筒体の内周面に摺動し、他の突起は、前記外側円筒体の内周面に接触しておらず、
前記大気側の最も大きい直径を有する突起が
まず前記外側円筒体に押し付けられ、そして当該最も大きい直径を有する突起が摩耗すると、機器内容空間側の次に大きい直径を有する突起が前記外側円筒体に押し付けられることを特徴とする密封装置。
【請求項2】
複数の別個の環状の前記突起が、前記第1のシール部材の前記外側円筒部に、前記孔の軸線方向と平行な方向において互いに間隔をおいて配置されていることを特徴とする請求項1に記載の密封装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相対回転する二部材を有する機器に用いられる密封装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の密封装置として、例えば特許文献1に記載されているように、相対回転する二部材の一方、例えば回転軸に固定されるスリンガと呼ばれる回転シール部材と、相対回転する二部材の他方、例えばハウジングの軸孔内面に固定される固定シール部材とを有する密封構造が知られている。このような密封装置は、機器内部空間の潤滑剤、例えばグリースを密封するために使用される。回転シール部材にはフランジが設けられ、このフランジが大気側から機器内部空間への泥およびダストの侵入を防止または低減するので、例えば、鉄道車両の台車、焼結パレットの台車、建設機械、トラックのトラニオン式サスペンション、農業機械のような泥またはダストの多い環境で使用される機器に、このような密封装置が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の密封装置を有する機器については、機器内部空間への泥、泥水またはダストといった異物の侵入を可能な限り低減できることが望ましい。
【0005】
そこで、本発明は、機器内部空間への異物の侵入をさらに低減することができる密封装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る密封装置は、相対回転する二部材のうちの内側の部材に固定される第1のシール部材と、相対回転する二部材のうちの外側の部材の孔の内面に固定され、前記第1のシール部材が摺動可能に接触する第2のシール部材とを備え、機器内部空間の潤滑剤を当該機器内部空間に密封する密封装置であって、前記第2のシール部材は、前記孔に固定される外側円筒体と、前記第1のシール部材に摺動可能に接触するリップ部とを有しており、前記第1のシール部材は、前記内側の部材に固定されるスリーブと、前記スリーブの大気側の端部に一体に連結されてその外側に放射状に広がるフランジとを有しており、前記フランジの外端縁には、前記孔と同心の外側円筒部が形成されており、当該外側円筒部の外周面には、前記第2のシール部材の前記外側円筒体の内周面に摺動可能であって、前記外側円筒体の前記内周面に全周にわたって密封接触する、環状の突起が形成されていることを特徴とする。
【0007】
この密封装置においては、第1のシール部材のフランジの外端縁に形成された外側円筒部の外周面に、第2のシール部材の外側円筒体の内周面に摺動可能な環状の突起が形成されており、突起が外側円筒体の内周面に全周にわたって密封接触する。したがって、密封装置の大気側において、第1のシール部材と第2のシール部材との隙間が閉塞される。
【0008】
本発明の一態様における密封装置においては、前記突起は、前記孔の軸線方向と平行な方向において、複数の隆起を成すように形成されている。このように、孔の軸線方向と平行な方向において複数の隆起が存在することによって、複数段階で大気側からの異物の侵入が阻止される。
【0009】
本発明の一態様における密封装置においては、前記第1のシール部材の前記外側円筒部は、前記フランジの前記外端縁から大気側に向けて延びており、前記複数の隆起は、大気側から機器内部空間側に向かうに連れて小さい直径を有する。この構成では、大気側の大きい直径を有する隆起がまず、第2のシール部材の外側円筒体の内周面に強い力で押し付けられる。その隆起が摩耗すると、機器内部空間側の小さい直径を有する別の隆起が強い力で押し付けられる。したがって、局部的な摩耗があっても、この密封装置は長い寿命を有する。
【0010】
本発明の一態様における密封装置においては、複数の別個の環状の前記突起が、前記第1のシール部材の前記外側円筒部に、前記孔の軸線方向と平行な方向において互いに間隔をおいて配置されている。この構成では、一つの突起を螺旋状に形成する場合よりも、孔の軸線方向と平行な方向において複数の隆起を容易に設けることが可能である。
【発明の効果】
【0011】
本発明においては、第1のシール部材のフランジの外端縁に形成された外側円筒部の外周面に、第2のシール部材の外側円筒体の内周面に摺動可能な突起が形成されており、突起が外側円筒体の内周面に全周にわたって密封接触する。したがって、密封装置の大気側において、第1のシール部材と第2のシール部材との隙間が閉塞され、大気側から機器内部空間への異物の侵入をさらに低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係る密封装置の断面図である。
【
図2】
図1の密封装置の回転シール部材の断面図である。
【
図3】
図1の密封装置の固定シール部材の断面図である。
【
図4】回転シール部材の一部を拡大した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付の図面を参照しながら本発明に係る実施形態を説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る図であり、相対回転する二部材を有する機器に用いられる密封装置を示す。本明細書において、「回転」とは360°以上回る運動だけでなく、360°未満の範囲内で回る運動も含み、さらには360°未満の範囲内で一方向および逆方向に回る運動も含む。
【0014】
この密封装置1は、回転軸(半径方向内側の部材)4と、この回転軸4が挿入されたハウジング(半径方向外側の部材)5の軸孔6の内面との間を封止して、機器内部空間Sから大気A側へ流体が漏出するのを防止または低減させるものである。回転軸4は円柱状であり、軸孔6は断面円形であり、密封装置1はほぼ環状であるが、
図1においては、軸孔6および密封装置1の左側部分のみが示されている。
【0015】
密封装置1は、回転軸4に固定されて回転軸4と一体的に回転するスリンガと呼ばれる回転シール部材8と、軸孔6に固定される固定シール部材10との組み合わせであるアセンブリである。回転シール部材8と固定シール部材10は協働して潤滑剤を機器内部空間Sに密封する。回転シール部材8は、固定シール部材10に嵌め合わせられており、密封装置1の軸線方向に沿って大きな力を与えると、その嵌め合わせが解除されて取り外されうる。
【0016】
回転シール部材8は、回転軸4に固定されるスリーブ12と、スリーブ12の大気A側の端部に一体に連結されてその外側に放射状に広がるフランジ14とを有する。回転軸4とスリーブ12の固定の方式は、限定されないが、例えば締まり嵌めであってよい。回転シール部材8は二重構造であって、弾性体、例えばエラストマーで形成された弾性環16と、弾性環16に密着し弾性環16を補強する剛体、例えば金属製の補強環18とを有する。
【0017】
図2に示すように、スリーブ12は、弾性環16の一部であって回転軸4に密着させられる内側円筒部16aと、補強環18の一部であって内側円筒部16aの外周に固着された外側円筒部18aとを有する。フランジ14は、弾性環16の一部であって大気A側に配置される弾性フランジ部16bと、補強環18の一部であって機器内部空間S側に配置され弾性フランジ部16bに固着された剛性フランジ部18bとを有する。
【0018】
図3に示すように、固定シール部材10も二重構造であって、弾性体、例えばエラストマーで形成された弾性環20と、弾性環20を補強する剛体、例えば金属製の補強環22とを有する。補強環22は、その大部分が弾性環20に埋設されており、弾性環20に密着している。
【0019】
図1に示すように、固定シール部材10の補強環22は、軸孔6に同心に配置される円筒部分22aと、円筒部分22aよりも半径方向内側に配置されるL字形の屈曲部分22bと、円筒部分22aおよび屈曲部分22bを連結する円板形の連結部分22cとを有する。固定シール部材10の補強環22は、さらに、軸孔6に同心に配置され円筒部分22aよりも大きな直径を有する大径円筒部分22dと、円筒部分22aおよび大径円筒部分22dを連結する円錐台状の輪郭を有する連結部分22eとを有する。大径円筒部分22dは、円筒部分22aよりも大気A側に配置されている。
【0020】
固定シール部材10の弾性環20は、円筒部分22aの外側に配置される外側円筒部20aを有する。外側円筒部20aは、軸孔6に固定される外側シール部である。固定の方式は、限定されないが、例えば締まり嵌めであってよい。補強環22は、弾性環20の外側円筒部20aに半径方向外側に向かう力を与え、外側円筒部20aを軸孔6に強固に押圧する。
【0021】
弾性環20の外側円筒部20a、ならびに補強環22の円筒部分22a、連結部分22eおよび大径円筒部分22dは、軸孔6に固定される外側円筒体26を構成する。
【0022】
また、固定シール部材10の弾性環20は、外側円筒部20aと同心の内側円筒部20bを有する。内側円筒部20bの周囲には、内側円筒部20bを半径方向内側に圧縮するためのガータースプリング30が巻かれている。内側円筒部20bにはガータースプリング30を受け入れる受け溝32(
図3参照)が形成されている。
【0023】
固定シール部材10の弾性環20の内側円筒部20bは、シールリップ部36、ダストリップ部38、およびダストリップ部40を有する。シールリップ部36は、内側円筒部20bから内側に突出し、周方向に連続している環状の突起である。シールリップ部36は、回転シール部材8のスリーブ12の外周面に密封接触し、機器内部空間Sから大気A側への流体の漏れを防止または低減する。回転シール部材8が回転軸4とともに回転する時、スリーブ12の外周面はシールリップ部36に対して摺動する。上記のガータースプリング30は、シールリップ部36を回転軸4に押し付ける力をシールリップ部36に与える。
図1は、シールリップ部36およびその他のリップ部が回転シール部材8に押し付けられて変形した状態を示し、
図3はこれらのリップ部が弾性変形させられていない状態を示す。
【0024】
ダストリップ部38,40は、内側円筒部20bから大気A側かつ半径方向内側に斜めに延びている。ダストリップ部38,40の先端は、回転シール部材8のスリーブ12の外周面に密封接触し、回転シール部材8が回転軸4とともに回転する時、スリーブ12の外周面はダストリップ部38,40に対して摺動する。
【0025】
さらに、固定シール部材10の弾性環20は、ダストリップ部42を有する。ダストリップ部42は、内側円筒部20bの近傍から大気A側に延びており、屈曲してさらに半径方向外側かつ大気A側に斜めに延びる。ダストリップ部42の先端は、回転シール部材8のフランジ14の剛性フランジ部18bに接触し、回転シール部材8が回転軸4とともに回転する時、剛性フランジ部18bはダストリップ部42に対して摺動する。
【0026】
ダストリップ部38,40,42は、主に大気A側から機器内部空間S側への異物(泥、泥水およびダスト)の侵入を防止する役割を担う。但し、ダストリップ部38,40,42は、機器内部空間S側から大気A側への潤滑剤の流出を防止してもよい。
【0027】
この実施形態において、回転シール部材8のフランジ14の剛性フランジ部18bの外端縁には、軸孔6と同心の外側円筒部44が形成されている。外側円筒部44は、フランジ14の外端縁から大気A側に向けて延びる。
【0028】
外側円筒部44の外周面には、複数の(この実施形態では5つの)突起46が形成されている。これらの突起46は、外側円筒部44に軸孔6の軸線方向と平行な方向において互いに間隔をおいて配置されている。これらの突起46は、外側円筒部44の外周面から半径方向外側に向けて突出し、各突起46は周方向に連続する環状である。
図2に示すように、各突起46は、弾性変形させられていない状態では、ほぼ半円状の輪郭を有するが、突起46の輪郭は図示に限定されず、様々な輪郭を有していてもよい。
【0029】
図1に示すように、これらの突起46の少なくとも1つは、固定シール部材10の外側円筒体26の大径円筒部分22dの内周面に摺動可能であって、大径円筒部分22dの内周面に全周にわたって密封接触する。他の突起46は、大径円筒部分22dの内周面に接触していなくてもよい。
【0030】
この密封装置1においては、回転シール部材8のフランジ14の外端縁に形成された外側円筒部44の外周面に、固定シール部材10の外側円筒体26の大径円筒部分22dの内周面に摺動可能な環状の突起46が形成されており、突起46が外側円筒体26の大径円筒部分22dの内周面に全周にわたって密封接触する。したがって、密封装置1の大気A側において、回転シール部材8と固定シール部材10との隙間が閉塞され、大気A側から機器内部空間Sへの異物の侵入を低減することができる。
【0031】
大気A側から機器内部空間Sへの異物の侵入を低減するため、この密封装置1よりもさらに大気A側に保護カバーを設けてもよい。しかし、この密封装置1によれば、異物の侵入を阻止する特性が高いので、このような保護カバーを設けなくてもよい。
【0032】
突起46は、軸孔6の軸線方向と平行な方向において(すなわち
図1および
図2に示す断面において)、複数の隆起を成すように形成されている。この実施形態では、各突起46が隆起に対応する。この実施形態では、複数の隆起が波形を呈する。軸孔6の軸線方向と平行な方向において複数の隆起が存在することによって、複数段階で大気A側からの異物の侵入が阻止される。
【0033】
図4は、
図1の密封装置1の回転シール部材8の一部を拡大した断面図である。
図4ではハッチングを省略する。
図4に示すように、回転シール部材8の外側円筒部44は、フランジ14の外端縁から大気A側に向けて延びており、複数の環状の突起46(
図4では46a~46eで示す)は、大気A側から機器内部空間S側に向かうに連れて小さい直径を有する。すなわち、最も大気A側にある突起46aは、固定シール部材10の外側円筒体26の大径円筒部分22dの内周面に接触させられた状態であっても、最も大きい直径Daを有する。2番目に大気A側にある突起46bは、2番目に大きい直径Dbを有する。3番目に大気A側にある突起46cは、3番目に大きい直径Dcを有する。4番目に大気A側にある突起46dは、4番目に大きい直径Ddを有する。最も機器内部空間S側にある突起46eは、最も小さい直径Deを有する。
【0034】
この構成では、大気A側の最も大きい直径Daを有する突起46aがまず、固定シール部材10の外側円筒体26の大径円筒部分22dの内周面に強い力で押し付けられる。その突起46aが摩耗すると、機器内部空間S側の次に大きい直径Dbを有する別の突起46bが大径円筒部分22dの内周面に強い力で押し付けられる。その突起46bが摩耗すると、機器内部空間S側の次に大きい直径Dcを有する別の突起46cが大径円筒部分22dの内周面に強い力で押し付けられる。その突起46cが摩耗すると、機器内部空間S側の次に大きい直径Ddを有する別の突起46dが大径円筒部分22dの内周面に強い力で押し付けられる。その突起46dが摩耗すると、機器内部空間S側の次に大きい直径Deを有する別の突起46eが大径円筒部分22dの内周面に強い力で押し付けられる。したがって、局部的な摩耗があっても、この密封装置1は長い寿命を有する。すなわち、長期にわたって異物の侵入を阻止することができる。
【0035】
この実施形態では、回転シール部材8と固定シール部材10が組み合せられた状態(
図1)で、複数の突起46が、大気A側から機器内部空間S側に向かうに連れて小さい直径を有する。このことを確実にするため、回転シール部材8が固定シール部材10に組み合わせられない状態(
図2)では、外側円筒部44、特にその外周面は、フランジ14の外端縁から大気A側かつ半径方向外側に向けて斜めに延びている。回転シール部材8と固定シール部材10が組み合せられた状態(
図1)では、大気A側の最も大きい直径を有する突起46が固定シール部材10の大径円筒部分22dに規制されて、外側円筒部44、特にその外周面の軸孔6の軸線に対する傾き角が小さくなるが、元々、外側円筒部44は斜めであったので、弾性変形した後も複数の突起46が大気A側から機器内部空間S側に向かうに連れて小さい直径を有することが維持される。
【0036】
変形例として、一つの突起を螺旋状に形成した場合でも、局部的な摩耗に伴って、大径円筒部分22dの内周面に接触する隆起部分が変化してゆくようにすることができる。しかし、この実施形態では、複数の別個の環状の突起46が、回転シール部材8の外側円筒部44に、軸孔6の軸線方向と平行な方向において互いに間隔をおいて配置されているため、一つの突起46を螺旋状に形成する場合よりも、軸孔6の軸線方向と平行な方向において複数の隆起を容易に設けることが可能である。
【0037】
以上のように、密封装置1では、大気A側から機器内部空間Sへの異物の侵入を防止または低減するための各種の方策が施されている。したがって、密封装置1は、例えば、鉄道車両の台車、焼結パレットの台車、建設機械、トラックのトラニオン式サスペンション、農業機械(耕耘機、トラクタ、田植機など)のような泥またはダストの多い環境で利用される機器でも、好適に密封機能を発揮する。但し、密封装置1の用途は、そのような機器に限定されず、他の機器であってもよい。
【0038】
シールリップ部36とダストリップ部38の間の空間50(
図1参照)、ダストリップ部38,40の間の空間52、およびダストリップ部40,42の間の空間54に潤滑剤を配置してもよい。この場合には、これらのリップ部の耐摩耗性が向上する。
【0039】
他の変形
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記の説明は本発明を限定するものではなく、本発明の技術的範囲において、構成要素の削除、追加、置換を含む様々な変形例が考えられる。
例えば、固定シール部材10のリップ部の形状および数は、上記のものに限定されない。
【0040】
また、突起46の数は実施形態に限定されない。
上記実施形態では、軸4が回転軸であり、軸孔6を有するハウジングが静止部材である。しかし、本発明は、上記実施形態に限定されず、互いに相対回転する二部材の間の密封に適用されうる。例えば軸4(およびシール部材8)が静止し、ハウジング(およびシール部材10)がその周囲を回転してもよいし、軸4もハウジングも回転してもよい。
【符号の説明】
【0041】
A 大気
S 機器内部空間
1 密封装置
4 回転軸(内側の部材)
5 ハウジング(外側の部材)
6 軸孔(孔)
8 回転シール部材(第1のシール部材)
10 固定シール部材(第2のシール部材)
12 スリーブ
14 フランジ
16 弾性環
16a 内側円筒部
16b 弾性フランジ部
18 補強環
18a 外側円筒部
18b 剛性フランジ部
20 弾性環
20a 外側円筒部
20b 内側円筒部
22 補強環
22a 円筒部分
22b 屈曲部分
22c 連結部分
22d 大径円筒部分
22e 連結部分
26 外側円筒体
30 ガータースプリング
32 受け溝
36 シールリップ部
38,40,42 ダストリップ部
44 外側円筒部
46 突起
50,52,54 空間