(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-27
(45)【発行日】2022-05-11
(54)【発明の名称】ペプチドエポキシケトン免疫プロテアソーム阻害剤、およびその前駆体の調製プロセス
(51)【国際特許分類】
C07K 5/083 20060101AFI20220428BHJP
C07C 227/20 20060101ALI20220428BHJP
C07C 229/36 20060101ALI20220428BHJP
C07D 295/15 20060101ALI20220428BHJP
C07D 301/00 20060101ALI20220428BHJP
C07D 303/32 20060101ALI20220428BHJP
【FI】
C07K5/083
C07C227/20 CSP
C07C229/36
C07D295/15
C07D301/00
C07D303/32
(21)【出願番号】P 2018568194
(86)(22)【出願日】2017-06-29
(86)【国際出願番号】 US2017039975
(87)【国際公開番号】W WO2018005781
(87)【国際公開日】2018-01-04
【審査請求日】2020-06-17
(32)【優先日】2016-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518455077
【氏名又は名称】ケザール ライフ サイエンシズ
【氏名又は名称原語表記】KEZAR LIFE SCIENCES
【住所又は居所原語表記】4000 Shoreline Court Ste. 300 South San Francisco, CA 94080 (US).
(74)【代理人】
【識別番号】100136630
【氏名又は名称】水野 祐啓
(74)【代理人】
【識別番号】100201514
【氏名又は名称】玉井 悦
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン, ヘンリー
(72)【発明者】
【氏名】ダルジール, ショーン
(72)【発明者】
【氏名】マクミン, ダスティン
【審査官】山▲崎▼ 真奈
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-515509(JP,A)
【文献】特表2016-515127(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104710507(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第101525370(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(2S,3R)-N-[(2S)-3-(シクロペント-1-エン-1-イル)-1-[(2R)-2-メチルオキシラン-2-イル]-1-オキソプロパン-2-イル]-3-ヒドロキシ-3-(4-メトキシフェニル)-2-[(2S)-2-[2-(モルホリン-4-イル)アセトアミド]プロパンアミド]プロパンアミド(化合物「G」)を調製する方法であって、
(a)第三級アミン塩基または2,2,6,6-テトラメチルピぺリジン(「TMP」)、と、
(i)(2S,3R)-3-ヒドロキシ-3-(4-メトキシフェニル)-2-((S)-2-(2-モルホリノ-アセトアミド)プロパンアミド)プロパン酸(化合物「E」)
、および
(ii)(S)-3-(シクロペント-1-エン-1-イル)-1-((R)-2-メチルオキシラン-2-イル)-1-オキソプロパン-2-アミニウム塩(化合物「F」)
(式中、X
-は対イオンである)の懸濁液を非プロトン性溶媒中で混合して混合物を形成することと、
(b)カップリング剤とステップ(a)の前記混合物とを混合して化合物Gを形成することと、
を含み、
各混合ステップの温度は-20℃~25℃に維持される、方法。
【請求項2】
X
-は、
トシラートアニオン、トリフラートアニオン、酢酸イオン、ナフタレンスルホネートアニオン、4-ニトロベンゼンスルホネートアニオン、硫酸イオン、(硫酸メチル)イオン、硝酸イオン、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
X
-は、
トシラートアニオン、ナフタレンスルホネートアニオン、または4-ニトロベンゼンスルホネートアニオンである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
X
-は
トシラートアニオンである、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記非プロトン性溶媒は、アセトニトリル(「ACN」)、ジクロロメタン(「DCM」)、テトラヒドロフラン(「THF」)、ジメチルアセトアミド(「DMAc」)、酢酸エチル(「EtOAc」)、酢酸イソプロピル(「iPrOAc」)、ジメチルホルムアミド(「DMF」)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記非プロトン性溶媒はDCMを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第三級アミン塩基は、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(「DIPEA」)、トリエチルアミン(「TEA」)、N-メチルモルホリン(「NMM」)、2,4,6-トリメチルピリジン(「コリジン」)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第三級アミン塩基はDIPEAを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第三級アミン塩基と化合物Eとのモル比は1:1~4:1の範囲である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記カップリング剤は、カルボジイミド試薬、ホスホニウム試薬、ウロニウム試薬、イモニウム試薬、イミダゾリウム試薬、有機リン試薬、酸塩化物試薬、クロロホルメート試薬、またはピリジニウム試薬を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ウロニウム試薬は、1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスフェート(「HATU」)、O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N′,N′-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(「HBTU」)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ウロニウム試薬はHATUを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
カップリング剤と化合物Eとのモル比は1対1である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記カップリング試薬はカップリング添加剤をさらに含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記カップリング添加剤は、ベンゾトリアゾール、ジカルボキシイミド、スクシンイミド、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記カップリング添加剤は、N-ヒドロキシスクシンイミド(「HOSu」)、N-ヒドロキシ-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシイミド(「HONB」)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(「HOBt」)、6-クロロ-1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(「Cl-HOBt」)、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(「HOAt」)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
各混合の温度は-15℃~25℃に維持される、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
ステップ(a)の前記混合は、前記混合物を最長10分間撹拌することを含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
ステップ(b)の前記混合は、最長2時間の撹拌を含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
水、一塩基性リン酸カリウム、重炭酸ナトリウム、および硫酸ナトリウムのうちの1つ以上で化合物Gを洗浄することをさらに含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
化合物Eは、還元剤とベンジル(2S,3R)-3-ヒドロキシ-3-(4-メトキシフェニル)-2-((S)-2-(2-モルホリノアセトアミド)プロパンアミド)プロパノエート(化合物「D」)とを混合すること
によって調製される、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記還元剤は、H
2、Pd/C、H
2、Pd(OH)
2/C、Li、Na、リチウム4,4’-ジ-tert-ブチルビフェニル(「Li DTBBP」)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記還元剤と化合物Dとの前記混合は、窒素雰囲気下で行われる、請求項21または22に記載の方法。
【請求項24】
前記還元剤と化合物Dとの前記混合は、最長4時間行われる、請求項21~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記還元剤と化合物Dとの前記混合は、10℃~20℃の範囲の温度で行われる、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
珪藻土を通して化合物Eを濾過すること、化合物Eを洗浄すること、ならびにTHFおよび水を用いて化合物Eを結晶化させること、のうちの1つ以上をさらに含む、請求項21~25のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、(2S,3R)-N-[(2S)-3-(シクロペント-1-エン-1-イル)-1-[(2R)-2-メチルオキシラン-2-イル]-1-オキソプロパン-2-イル]-3-ヒドロキシ-3-(4-メトキシフェニル)-2-[(2S)-2-[2-(モルホリン-4-イル)アセトアミド]プロパンアミド]プロパンアミド、およびその前駆体を調製する方法およびプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
化合物、(2S,3R)-N-[(2S)-3-(シクロペント-1-エン-1-イル)-1-[(2R)-2-メチルオキシラン-2-イル]-1-オキソプロパン-2-イル]-3-ヒドロキシ-3-(4-メトキシフェニル)-2-[(2S)-2-[2-(モルホリン-4-イル)アセトアミド]プロパンアミド]プロパンアミド(「化合物G」)は、免疫プロテアソーム阻害剤として有用である。
【化1】
【0003】
真核生物において、タンパク質分解は、ユビキチン経路を介して主に媒介され、そこで、破壊の標的となるタンパク質が76アミノ酸のポリペプチドユビキチンに連結される。ひとたび標的化されると、ユビキチン化されたタンパク質は、次いで、多触媒性プロテアーゼである26Sプロテアソームの基質として機能し、その3つの主要なタンパク質分解活性の作用によりタンパク質を短いペプチドに切断する。細胞内タンパク質代謝回転における一般的な機能を有する一方で、プロテアソーム媒介性分解は、主要組織適合性複合体(MHC)クラスI抗原提示、アポトーシス、細胞増殖調節、NF-κB活性化、抗原プロセシング、および炎症促進性シグナルの伝達等の多くのプロセスにおいても重要な役割を果たす。
【0004】
20Sプロテアソームは、4つの環で構成される28個のサブユニットからなる、700kDaの円筒形状の多触媒性プロテアーゼ複合体である。酵母および他の真核生物において、7つの異なるαサブユニットが外側の環を形成し、7つの異なるβサブユニットが内側の環を含む。αサブユニットは、19S(PA700)および1S(PA28)調節複合体の結合部位として、ならびに2つのβサブユニット環によって形成される内側のタンパク質分解チャンバの物理的障壁として機能する。したがって、インビボでは、プロテアソームは26S粒子(「26Sプロテアソーム」)として存在すると考えられる。インビボ実験により、プロテアソームの20S型の阻害が、26Sプロテアソームの阻害と容易に関連付けられ得ることが示された。粒子形成中のβサブユニットのアミノ末端プロ配列の切断は、触媒求核剤として機能するアミノ末端スレオニン残基を露出させる。したがって、プロテアソームにおける触媒活性を担うサブユニットがアミノ末端求核残基を有し、これらのサブユニットは、N末端求核剤(Ntn)ヒドロラーゼのファミリーに属する(この場合、求核性N末端残基は、例えば、Cys、Ser、Thr、および他の求核性部分である)。このファミリーは、例えば、ペニシリンGアシラーゼ(PGA)、ペニシリンVアシラーゼ(PVA)、グルタミンPRPPアミドトランスフェラーゼ(GAT)、および細菌性グリコシルアスパラギナーゼを含む。遍在的に発現されるβサブユニットに加えて、より高等な脊椎動物は、3つのインターフェロンγ誘導性βサブユニット(LMP7、LMP2およびMECL1)を有し、これらは、それらの正常な対応物であるB5、B1およびB7をそれぞれ置換し、したがってプロテアソームの触媒活性を変化させる。異なるペプチド基質の使用により、3つの主要なタンパク質分解活性が真核生物の20Sプロテアソームについて定義されている:大きな疎水性残基の後を切断するキモトリプシン様活性(CT-L)、塩基性残基の後を切断するトリプシン様活性(T-L)、および酸性残基の後を切断するペプチジルグルタミルペプチド加水分解活性(PGPH)。あまり特徴が明らかになっていない2つのさらなる活性もまた、プロテアソームに起因する:分枝鎖アミノ酸の後を切断するBrAAP活性、および小さな中性アミノ酸の後を切断するSNAAP活性。阻害剤、βサブユニットの点突然変異、およびγインターフェロン誘導性βサブユニットの交換が、これらの活性を種々の程度に変化させるため、主要なプロテアソームタンパク分解活性には異なる触媒部位が寄与していると考えられる。
【0005】
PCT公開番号WO2014/152134号(参照により本明細書に組み込まれる)は、化合物G等のトリペプチドエポキシ免疫プロテアソーム阻害剤、およびそれらの小規模合成のための方法を記載している。しかしながら、化合物G等のトリペプチドエポキシ免疫プロテアム阻害剤の大規模合成は、商業的開発に必要である。
【発明の概要】
【0006】
一態様において、本開示は、(2S,3R)-N-[(2S)-3-(シクロペント-1-エン-1-イル)-1-[(2R)-2-メチルオキシラン-2-イル]-1-オキソプロパン-2-イル]-3-ヒドロキシ-3-(4-メトキシフェニル)-2-[(2S)-2-[2-(モルホリン-4-イル)アセトアミド]プロパンアミド]プロパンアミド(化合物「G」)を調製する方法であって、
【化2】
(a)第三級アミン塩基と、
(i)(2S,3R)-3-ヒドロキシ-3-(4-メトキシフェニル)-2-((S)-2-(2-モルホリノ-アセトアミド)プロパンアミド)プロパン酸(化合物「E」)
【化3】
、および
(ii)(S)-3-(シクロペント-1-エン-1-イル)-1-((R)-2-メチルオキシラン-2-イル)-1-オキソプロパン-2-アミニウム塩(化合物「F」)
【化4】
(式中、X
-は対イオンである)の懸濁液とを
非プロトン性溶媒中で混合して混合物を形成することと、
(b)カップリング剤とステップ(a)の混合物とを混合して化合物Gを形成することと、を含み、
各混合ステップの温度は-20℃~25℃に維持される、方法を提供する。
【0007】
いくつかの実施形態において、X-は、トシラートアニオン、トリフラートアニオン、酢酸イオン、ナフタレンスルホネートアニオン、4-ニトロベンゼンスルホネートアニオン、硫酸イオン、(硫酸メチル)イオン、硝酸イオン、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。ある場合には、X-は、トシラートアニオン、ナフタレンスルホネートアニオン、または4-ニトロベンゼンスルホネートアニオンである。例えば、X-はトシラートアニオンである。
【0008】
種々の実施形態において、非プロトン性溶媒は、アセトニトリル(「ACN」)、ジクロロメタン(「DCM」)、テトラヒドロフラン(「THF」)、ジメチルアセトアミド(「DMAc」)、酢酸エチル(「EtOAc」)、酢酸イソプロピル(「iPrOAc」)、ジメチルホルムアミド(「DMF」)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。例えば、非プロトン性溶媒はDCMであってもよい。
【0009】
ある場合には、第三級アミン塩基は、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(「DIPEA」)、トリエチルアミン(「TEA」)、N-メチルモルホリン(「NMM」)、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン(「TMP」)、2,4,6-トリメチルピリジン(「コリジン」)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。例えば、第三級アミン塩基は、DIPEAを含み得る。種々の場合において、第三級アミン塩基と化合物Eとのモル比は、1:1~4:1の範囲である。
【0010】
いくつかの実施形態において、カップリング剤は、カルボジイミド試薬、ホスホニウム試薬、ウロニウム試薬、イモニウム試薬、イミダゾリウム試薬、有機リン試薬、酸塩化物試薬、クロロホルメート試薬、またはピリジニウム試薬を含む。種々の実施形態において、ウロニウム試薬は、1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスフェート(「HATU」)、O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N′,N′-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(「HBTU」)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。例えば、ウロニウム試薬はHATUであってもよい。ある場合には、カップリング剤と化合物Eとのモル比は1対1である。カップリング試薬は、カップリング添加剤をさらに含む。いくつかの実施形態において、カップリング添加剤は、ベンゾトリアゾール、ジカルボキシイミド、スクシンイミド、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。種々の実施形態において、カップリング添加剤は、N-ヒドロキシスクシンイミド(「HOSu」)、N-ヒドロキシ-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシイミド(「HONB」)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(「HOBt」)、6-クロロ-1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(「Cl-HOBt」)、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(「HOAt」)、およびそれらの組み合わせがからなる群から選択される。
【0011】
種々の場合において、各混合ステップの温度は-15℃~25℃に維持される。ある場合には、ステップ(a)の混合は、混合物を最長10分間撹拌することを含む。種々の実施形態において、ステップ(b)の混合は、最長2時間撹拌することを含む。いくつかの実施形態において、化合物Gは、水、一塩基性リン酸カリウム、重炭酸ナトリウム、および硫酸ナトリウムのうちの1つ以上で洗浄される。
【0012】
種々の実施形態において、化合物Eは、還元剤とベンジル(2S,3R)-3-ヒドロキシ-3-(4-メトキシフェニル)-2-((S)-2-(2-モルホリノアセトアミド)プロパンアミド)プロパノエート(化合物「D」)とを混合して
【化5】
化合物Eを形成することによって調製される。ある場合には、還元剤は、H
2、Pd/C、H
2、Pd(OH)
2/C、Li、Na、リチウム4,4’-ジ-tert-ブチルビフェニル(「Li DTBBP」)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、還元剤と化合物Dとの混合は、窒素雰囲気下で行われる。還元剤と化合物Dとの混合は、最長4時間行うことができる。さらに、混合は、10℃~20℃の範囲の温度で行うことができる。種々の場合において、化合物Eの調製は、珪藻土を通して化合物Eを濾過すること、化合物Eを洗浄すること、ならびにTHFおよび水を用いて化合物Eを結晶化させること、のうちの1つ以上をさらに含む。
【0013】
本開示の別の態様は、(S)-3-(シクロペント-1-エン-1-イル)-1-((R)-2-メチルオキシラン-2-イル)-1-オキソプロパン-2-アミニウム塩(化合物「F」)を調製する方法であって、
【化6】
(a)トリフルオロ酢酸(「TFA」)とtert-ブチル-((S)-3-(シクロペント-1-エン-1-イル)-1-((R)-2-メチルオキシラン-2-イル)-1-オキソプロパン-2-イル)カルバメート(化合物「H」)とを
【化7】
-5℃~5℃の範囲の温度での非プロトン性溶媒中で混合して混合物を形成することと、
(b)混合物を濃縮することと、
(c)酸とステップ(b)の濃縮混合物とを-5℃~5℃の範囲の温度で混合して化合物Fを形成することと、を含み、
式中、X
-は、酸の共役塩基である、方法を提供する。
【0014】
いくつかの実施形態において、酸は、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、ナフタレンスルホン酸、4-ニトロベンゼンスルホン酸、スルホン酸、メチルスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、硝酸、HF、HCl、HBr、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。例えば、酸は、トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、4-ニトロベンゼンスルホン酸、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。ある場合には、酸と化合物Hとのモル比は1対1である。種々の場合において、TFAと化合物Hとのモル比は8対1である。種々の実施形態において、ステップ(a)の非プロトン性溶媒は、アセトニトリル(「ACN」)、ジクロロメタン(「DCM」)、テトラヒドロフラン(「THF」)、ジメチルアセトアミド(「DMAc」)、メチルtert-ブチルエーテル(「MTBE」)、イソプロピルエーテル(「IPE」)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。例えば、非プロトン性溶媒は、DCMを含み得る。ある場合には、ステップ(a)、ステップ(c)、またはその両方の温度は0℃である。種々の場合において、ステップ(b)の混合物は、15℃~25℃の範囲の温度で濃縮される。種々の実施形態において、ステップ(a)の混合は、2時間撹拌することを含む。ある場合には、ステップ(c)の混合は、10~12時間撹拌することを含む。いくつかの実施形態において、ステップ(b)の濃縮混合物は、15℃~25℃の範囲の温度での極性非プロトン性溶媒でさらに洗浄される。好適な極性非プロトン性溶媒として、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(「THF」)、アセトニトリル(「ACN」)、メチルtert-ブチルエーテル(「MBTE」)、イソプロピルエーテル(「IPE」)、およびそれらの組み合わせが挙げられる。例えば、極性非プロトン性溶媒は、MBTEを含み得る。ある場合には、方法は、化合物Fを濾過すること、化合物Fを極性非プロトン性溶媒で洗浄すること、および化合物Fを乾燥させること、の1つ以上をさらに含む。化合物Fを洗浄するための極性の非プロトン性溶媒は、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(「THF」)、アセトニトリル(「ACN」)、メチルtert-ブチルエーテル(「MBTE」)、イソプロピルエーテル(「IPE」)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。
【0015】
本開示のさらに別の態様は、ベンジル(2S,3R)-3-ヒドロキシ-3-(4-メトキシフェニル)-2-((S)-2-(2-モルホリノアセトアミド)プロパンアミド)プロパノエート(化合物「D」)を調製する方法であって、
【化8】
(a)第三級アミン塩基と、
(i)(2S,3R)-1-(ベンジルオキシ)-3-ヒドロキシ-3-(4-メトキシフェニル)-1-オキソプロパン-2-アミニウム塩(化合物「B」)
【化9】
(式中、X
-は対イオンである)および
(ii)(2-モルホリノアセチル)-L-アラニン(化合物「C」)の懸濁液とを
【化10】
非プロトン性溶媒中で混合して混合物を形成することと、
(b)カップリング剤とステップ(a)の混合物とを混合して化合物Dを形成することと、を含み、
各混合ステップの温度は-5℃~5℃に維持される、方法を提供する。
【0016】
いくつかの実施形態において、X-は、トシラートアニオン、トリフラートアニオン、酢酸イオン、ナフタレンスルホネートアニオン、4-ニトロベンゼンスルホネートアニオン、硫酸イオン、(硫酸メチル)イオン、硝酸イオン、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。例えば、X-は塩化物イオンであってもよい。ある場合には、非プロトン性溶媒は、アセトニトリル(「ACN」)、ジクロロメタン(「DCM)、テトラヒドロフラン(「THF」)、ジメチルアセトアミド(「DMAc」)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される例えば、非プロトン性溶媒はACNを含み得る。種々の実施形態において、第三級アミン塩基は、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(「DIPEA」)、トリエチルアミン(「TEA」)、N-メチルモルホリン(「NMM」)、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン(「TMP」)、2,4,6-トリメチルピリジン(「コリジン」)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。例えば、第三級アミン塩基はDIPEAを含み得る。種々の場合において、カップリング剤は、カルボジイミド試薬、ホスホニウム試薬、ウロニウム試薬、イモニウム試薬、イミダゾリウム試薬、有機リン試薬、酸塩化物試薬、クロロホルメート試薬、またはピリジニウム試薬を含む。いくつかの実施形態において、ウロニウム試薬は、1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスフェート(「HATU」)、O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N′,N′-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(「HBTU」)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。例えば、ウロニウム試薬はHATUを含み得る。いくつかの実施形態において、カップリング剤と化合物Bとのモル比は1対1である。種々の実施形態において、カップリング試薬は、カップリング添加剤をさらに含む。カップリング添加剤は、ベンゾトリアゾール、ジカルボキシイミド、スクシンイミド、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。例えば、カップリング試薬は、N-ヒドロキシスクシンイミド(「HOSu」)、N-ヒドロキシ-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシイミド(「HONB」)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(「HOBt」)、6-クロロ-1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(「Cl-HOBt」)、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(「HOAt」)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。ある場合には、各混合ステップの温度は-5℃~5℃に維持される。いくつかの実施形態において、ステップ(b)の混合は、カップリング剤の一部をステップ(a)からの混合物と30分以上にわたって混合することを含む。種々の場合において、ステップ(b)の混合は、2時間撹拌することを含む。いくつかの実施形態において、方法は、水、酢酸イソプロピル、一塩基性リン酸カリウム、重炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、およびTHFのうちの1つ以上で化合物D を洗浄することをさらに含む。
【0017】
化合物Bは、(i)酸と(ii)ベンジル(2S,3R)-2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-3-ヒドロキシ-3-(4-メトキシフェニル)プロパノエート(化合物「A」)とを
【化11】
極性非プロトン性溶媒中で混合して化合物Bを形成することによって調製され得る。いくつかの実施形態において、酸は、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、ナフタレンスルホン酸、4-ニトロベンゼンスルホン酸、スルホン酸、メチルスルホン酸、硝酸、HF、HCl、HBr、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。例えば、酸は、トリフルオロ酢酸またはHClを含み得る。いくつかの実施形態において、極性非プロトン性溶媒は、酢酸エチル、N-メチルピロリドン(「NMP」)、テトラヒドロフラン(「THF」)、アセトン、ジメチルホルムアミド(「DMF」)、アセトニトリル(「ACN」)、ジメチルスルホキシド(「DMSO」)、ジクロロメタン(「DCM」)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。例えば、極性非プロトン性溶媒は、酢酸エチル、DCM、またはそれらの組み合わせを含み得る。ある場合には、混合ステップは、15℃~25℃の範囲の温度で撹拌することを含む。方法は、化合物Bを濾過すること、化合物Bを乾燥させること、またはその両方をさらに含み得る。
【0018】
本開示の別の態様は、(2S,3R)-1-(ベンジルオキシ)-3-ヒドロキシ-3-(4-メトキシフェニル)-1-オキソプロパン-2-アミニウムクロリド塩(化合物「B-Cl」)の結晶形であって、
【化12】
4.6、9.2、13.8、18.5、および32.9±0.2°2θにピークを含む、CuKα線を用いた粉末X線回折パターンによって特徴付けられる、結晶形を提供する。
【0019】
本開示のさらに別の態様は、(2S,3R)-3-ヒドロキシ-3-(4-メトキシフェニル)-2-((S)-2-(2-モルホリノアセトアミド)プロパンアミド)プロパン酸(化合物「E」)の結晶形であって、
【化13】
6.2、8.5、9.7、12.7、13.7、16.0、16.9 17.2、18.4、18.9、19.2、19.7、22.5、24.7、25.4、28.7、および29.7±0.2
o2θにピークを含む、CuKα線を用いた粉末X線回折パターンによって特徴付けられる、結晶形を提供する。
【0020】
本開示のさらに別の態様は、(S)-3-(シクロペント-1-エン-1-イル)-1-((R)-2-メチルオキシラン-2-イル)-1-オキソプロパン-2-アミニウム塩(化合物「F」)の結晶形であって、
【化14】
式中、X
-は
トシラートアニオンであり、6.8、7.1、7.4、14.2、14.8、17.0、17.5、17.8、18.5、18.7、20.1、20.3、23.0、23.6、24.5、29.3、および31.2±0.2
o2θにピークを含む、CuKα線を用いた粉末X線回折パターンによって特徴付けられる結晶形を提供する
【0021】
さらなる態様および利点は、以下の詳細な説明の考察から当業者に明らかとなるであろう。本明細書に開示される方法は、種々の形態の実施形態の影響を受けるが、以下の説明は、本開示が例示であるという理解の下に特定の実施形態を含むものであり、本発明が本明細書に記載される特定の実施形態に限定されることを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】(2S,3R)-1-(ベンジルオキシ)-3-ヒドロキシ-3-(4-メトキシフェニル)-1-オキソプロパン-2-アミニウム塩(化合物「B」)の特徴的な示差走査熱量測定(「DSC」)曲線を示す。
【
図2】(2S,3R)-3-ヒドロキシ-3-(4-メトキシフェニル)-2-((S)-2-(2-モルホリノ-アセトアミド)プロパンアミド)プロパン酸(化合物「E」)の特徴的なDSCサーモグラムを示す。
【
図3】化合物Eの特徴的な熱重量分析(「TGA」)データを示す。
【
図4】化合物Eの特徴的な粉末X線回折パターン(「XRPD」)を示す。
【
図5】(S)-3-(シクロペント-1-エン-1-イル)-1-((R)-2-メチルオキシラン-2-イル)-1-オキソプロパン-2-アミニウム塩(化合物「F」)のトシル酸塩の特徴的なDSCサーモグラムを示す。
【
図6】化合物Fのトシル酸塩の特徴的な熱重量分析(「TGA」)データを示す。
【
図7】化合物Fのナフタレンスルホン酸塩の特徴的なDSCサーモグラムを示す。
【
図8】化合物Fのナフタレンスルホン酸塩の熱重量分析(TGA)データを示す。
【
図9】化合物Fのトシル酸塩の特徴的なXRPDパターンを示す。
【
図10】化合物Fのトシル酸塩の単結晶X線回折(「XRD」)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(2S,3R)-N-[(2S)-3-(シクロペント-1-エン-1-イル)-1-[(2R)-2-メチルオキシラン-2-イル]-1-オキソプロパン-2-イル]-3-ヒドロキシ-3-(4-メトキシフェニル)-2-[(2S)-2-[2-(モルホリン-4-イル)アセトアミド]プロパンアミド]プロパンアミド(化合物「G」)
【化15】
およびその前駆体の調製のためのプロセスが本明細書に開示されるが、ある場合には、該プロセスは化合物Gの大規模調製のためのものである。化合物Gの調製のための全体的スキームを、以下のスキーム1に示す。
【化16】
【0024】
本明細書に開示される化合物は、本明細書に記載されるそれらの化学構造および/または化学名のいずれかによって同定され得る。化学構造と化学名が矛盾する場合、化学構造がその化合物の同一性を決定付ける。
【0025】
別途指示のない限り、本明細書で使用される用語および略語は、関連分野におけるそれらの通常の慣習的な意味を含む。
【0026】
本開示の貢献は、本明細書に開示される特定の実施形態または態様に限定されないため、本開示は、種々の用途および条件に適応するための変更および修正を含む追加の実施形態を当業者に提供する。例えば、本明細書に記載される材料、合成方法、または手順に対する変更および修正は、当業者には明らかであろう。
【0027】
分子量等の物理的特性または化学式等の化学的特性について本明細書で範囲が使用される場合、範囲およびその中の特定の実施形態の全ての組み合わせおよび部分的組み合わせが含まれることが意図される。
【0028】
化合物Gの調製
一態様において、化合物Gを調製するための方法が本明細書に提供される。化合物Gは、ステップ(a)およびステップ(b)の2つのステップで調製することができる。ステップ(a)において、混合物は、第三級アミン塩基と、(i)(2S,3R)-3-ヒドロキシ-3-(4-メトキシフェニル)-2-((S)-2-(2-モルホリノ-アセトアミド)プロパンアミド)プロパン酸(化合物「E」)
【化17】
、および
(ii)(S)-3-(シクロペント-1-エン-1-イル)-1-((R)-2-メチルオキシラン-2-イル)-1-オキソプロパン-2-アミニウム塩(化合物「F」)
【化18】
(X
-は対イオンである)を含む懸濁液とを非プロトン性溶媒中で一緒に混合して混合物を形成することにより形成される。ステップ(b)において、ステップ(a)からの混合物とカップリング剤とが約-20℃~約25℃の範囲の温度で一緒に混合されて化合物Gが形成される。
【0029】
対イオン(X-)は、化合物Fのアンモニウム基とイオン結合を形成することができる任意のアニオンであり得る。いくつかの実施形態において、X-は、トシラートアニオン、トリフラートアニオン、酢酸イオン、ナフタレンスルホネートアニオン、4-ニトロベンゼンスルホネートアニオン、硫酸イオン、(硫酸メチル)イオン、硝酸イオン、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。ある場合には、X-は、トシラートアニオン、ナフタレンスルホネートアニオン、または4-ニトロベンゼンスルホネートアニオンである。例えば、X-はトシラートアニオンである。
【0030】
非プロトン性溶媒は、化合物EとFとの間の求核性アシル置換反応が進行し得る任意の非プロトン性溶媒(または溶媒の混合物)であり得る。好適な非プロトン性溶媒として、アセトニトリル(「ACN」)、ジクロロメタン(「DCM」)、テトラヒドロフラン(「THF」)、ジメチルアセトアミド(「DMAc」)、酢酸エチル(「EtOAc」)、酢酸イソプロピル(「iPrOAc」)、ジメチルホルムアミド(「DMF」)、およびそれらの組み合わせが挙げられる。種々の実施形態において、非プロトン性溶媒は、ACN、THF、DMF、およびDCMからなる群から選択される。例えば、非プロトン性溶媒はDCMを含み得る。
【0031】
化合物Eおよび化合物Fは、約0.8:1~1.3:1のモル比で存在し得る。いくつかの実施形態において、化合物EおよびFは、約0.9:1~1.1:1の比で存在する。例えば、化合物EとFとのモル比は、約1:1、または1:1.11~1:1.15の範囲であってもよい。
【0032】
第三級アミン塩基は、化合物EとFとの間の求核性アシル置換反応を促進または触媒することができる任意の第三級アミン塩基であり得る。好適な第三級アミン塩基として、例えば、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(「DIPEA」)、トリエチルアミン(「TEA」)、N-メチルモルホリン(「NMM」)、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン(「TMP」)、2,4,6-トリメチルピリジン(「コリジン」)、およびそれらの組み合わせを挙げることができる。例えば、第三級アミン塩基はDIPEAを含み得る。第三級アミン塩基は、約1:1~約4:1の範囲の化合物Eに対するモル比で存在し得る。いくつかの実施形態において、第三級アミン塩基および化合物Eは、約2.5:1~4:1または2.5:1~3.5:1の比で存在する。例えば、第三級アミン塩基と化合物Eのとの比は、約3.5:1または3.9:1であってもよい。
【0033】
カップリング剤として、例えば、カルボジイミド試薬、ホスホニウム試薬、ウロニウム試薬、イモニウム試薬、イミダゾリウム試薬、有機リン試薬、酸塩化物試薬、クロロホルメート試薬、ピリジニウム試薬、またはそれらの組み合わせを挙げることができる。例えば、Han&Kim,Tetrahedron Report 60:2447-2467(2004)、Montalbetti andn Falque,Tetrahedron 61:10827-10852(2005)を参照されたい。カルボジイミドとして、例えば、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(「DCC」)、1,3-ジイソプロピルカルボジイミド(「DIC」)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(「EDC」)、または/およびイソプロピルカルボジイミド(「CIC」)、ならびにそれらの組み合わせを挙げることができる。ホスホニウム剤として、例えば、(ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(「BOP」)またはベンゾトリアゾール-1-イル-オキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(「PyBOP」)、およびそれらの組み合わせを挙げることができる。ウロニウム剤として、例えば、1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスフェート(「HATU」)、O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N′,N′-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(「HBTU」)、およびそれらの組み合わせを挙げることができる。例えば、ウラン剤はHATUを含み得る。イミダゾリウム剤は、例えば、1,1’-カルボニルジイミダゾール(「CDI」)を含み得る。酸塩化物剤は、例えば、塩化ピバロイル、2,4,6-トリメチルベンゾイルクロリド、およびそれらの組み合わせを含む。クロロホルメート剤は、例えば、クロロギ酸エチル、クロロギ酸イソブチル、およびそれらの組み合わせを含み得る。カップリング剤は、約0.8:1~約1:5の範囲の化合物Eに対するモル比で存在し得る。いくつかの実施形態において、カップリング剤および化合物Eは、約0.9:1~1.1:1の比で存在する。例えば、カップリング剤と化合物Eとの比は、約1:1または1.11:1であってもよい。
【0034】
カップリング反応は、カップリング添加剤の存在下で行うことができる。カップリング添加剤は、当該技術分野において既知であり、任意の適切な添加剤が化合物Gの形成に使用され得る。好適なカップリング添加剤として、例えば、ベンゾトリアゾール、ジカルボキシイミド、およびスクシンイミドが挙げられる。いくつかの実施形態において、カップリング添加剤は、N-ヒドロキシスクシンイミド(「HOSu」)、N-ヒドロキシ-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシイミド(「HONB」)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(「HOBt」)、6-クロロ-1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(「Cl-HOBt」)、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(「HOAt」)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。例えば、カップリング添加剤はHOBtを含み得る。
【0035】
各混合ステップの温度は、約-20℃~約25℃の範囲に維持される。いくつかの実施形態において、各混合ステップの温度は、約-15℃~約25℃の範囲に維持される。ある場合には、各混合ステップの温度は、約-5℃~約15℃の範囲に維持される。例えば、各混合ステップの温度は、約-5℃~約5℃の範囲に維持され得る。各混合ステップの温度は、同じであっても異なっていてもよい。
【0036】
化合物Gの調製のステップ(a)において、混合は、最長約30分間の期間にわたって(例えば、最長約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、16、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30分)行うことができる。いくつかの実施形態において、ステップ(a)の混合は、最長約10分間行うことができる。ある場合には、ステップ(a)の混合は、少なくとも約30秒間または少なくとも約1分間(例えば、少なくとも約2、3、4、5、6、7、8または9分)行うことができる。例えば、ステップ(a)の混合は、約30秒~約30分間、または約1分~約20分間、または約2分~約15分間、または約5分~約10分間行うことができる。
【0037】
化合物Gの調製のステップ(b)において、混合は、最長約3時間の期間にわたって(例えば、最長約1、1.5、2、2.5、または3時間)行うことができる。いくつかの実施形態において、ステップ(b)の混合は、最長約2時間行うことができる。ある場合には、ステップ(b)の混合は、少なくとも約30分間、または少なくとも約1時間、または少なくとも約1.5時間行うことができる。例えば、ステップ(b)の混合は、約30分~約3時間、または約30分~約2.5時間、または約1時間~約2時間行うことができる。
【0038】
ステップ(b)において、カップリング反応は窒素雰囲気下で行うことができる。ある場合には、カップリング反応は窒素雰囲気下で行われない。
【0039】
ステップ(b)の後、化合物Gを1つ以上の溶媒で洗浄することができる。洗浄中の温度は、任意選択的に、約0℃~約25℃、または約15℃~約25℃の範囲であり得る。洗浄に適した溶媒として、例えば、水、一塩基性リン酸カリウム、重炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、およびそれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態において、ステップ(b)の後に水が化合物Gに加えられ、洗浄する前に得られた二相混合物を水層と有機層とに分離する。種々の場合において、化合物Gは、水、一塩基性リン酸カリウム、重炭酸ナトリウム、および硫酸ナトリウムのそれぞれで洗浄することができる。
【0040】
例えば、化合物Gは、(a)化合物Eと化合物Fと(1:1のモル比)をDCM中で最長約10分間一緒に混合して混合物を形成し、(b)ステップ(a)からの混合物と約1モル当量のHATUとを窒素雰囲気下で最長約2時間混合することによって調製され得、各ステップの温度は約-20℃~約25℃、または約-20℃~0℃の範囲である。得られた混合物を水で急冷して二相混合物を得ることができる。有機層を分離し、水で洗浄し、次いで、一塩基性リン酸カリウム、続いて重炭酸ナトリウムおよび硫酸ナトリウムで洗浄することができる。
【0041】
化合物Eの調製
化合物Eは、還元剤とベンジル(2S,3R)-3-ヒドロキシ-3-(4-メトキシフェニル)-2-((S)-2-(2-モルホリノアセトアミド)プロパンアミド)プロパノエート(化合物「D」)とを混合することによって調製され得る。
【化19】
【0042】
還元剤は、化合物D上のベンジル基を除去して化合物Eのカルボン酸を形成することができる任意の好適な薬剤であり得る。好適な還元剤として、例えば、Pd/CまたはPd(OH)2/Cの存在下にあるH2、Li、Na、リチウム4,4’-ジ-tert-ブチルビフェニル(「Li DTBBP」)、およびそれらの組み合わせが挙げられる。例えば、還元剤はPd/Cの存在下にあるH2であり得る。
【0043】
還元剤と化合物Dとの混合は、還元反応を起こすことができる任意の溶媒中で行うことができる。例えば、溶媒は、THF、メタノール、またはそれらの組み合わせを含み得る。
【0044】
いくつかの実施形態において、化合物Dは、水素雰囲気に曝露される前に窒素雰囲気下で提供される。種々の実施形態において、水素雰囲気は、約15psiで確立される。
【0045】
還元剤と化合物Dとの混合は、少なくとも30分から最長約5時間の期間にわたって(例えば、最長約2、2.5、3、3.5、4、または4.5時間)行うことができる。いくつかの実施形態において、混合は最長約4時間行うことができる。ある場合には、還元剤と化合物Dとの混合は、少なくとも約30分間、または少なくとも約1時間(例えば、少なくとも約1.5時間、または2時間、2.5時間、または3時間、または3.5時間)行うことができる。例えば、混合は、約30分~約5時間、または約1時間~約4時間、または約2時間~約4時間行うことができる。
【0046】
混合の温度は、約10℃~約20℃の範囲に維持される。いくつかの実施形態において、温度は約17℃に維持される。
【0047】
ある場合には、混合が完了した後、化合物Eは、例えば珪藻土(diatomaceous earth)(すなわち、珪藻土(diatomite))を通して濾過される。得られた濾液は、その後、好適な溶媒(例えば、水、メタノール、水、およびそれらの組み合わせ)で洗浄することができる。
【0048】
化合物E(洗浄の有無にかかわらず)は、
図2、3、および4にそれぞれ示される示差走査熱量測定(「DSC」)サーモグラム、熱重量分析(「TGA」)データ、および粉末X線回折(「XRPD」)パターンによって特徴付けられる多形を形成するように結晶化することができる。例えば、化合物Eの結晶化は、約50℃~約70℃、または約60℃~約70℃、または約55℃~約65℃の範囲の温度に化合物Eを加熱し、次いで、その温度を約0℃に冷却することによって、THFおよび水中で行うことができる。したがって、本開示の別の態様は、
図4に示されるように、6.2、8.5、9.7、12.7、13.7、16.0、16.9 17.2、18.4、18.9、19.2、19.7、22.5、24.7、25.4、28.7、および29.7±0.2
o2θにピークを含む、CuKα線を用いたXRPDパターンによって特徴付けられる化合物Eの結晶形である。
【0049】
例えば、化合物Eは、Pd/Cの存在下にあるH2等の還元剤と化合物Dとを、窒素雰囲気下、10℃~20℃で、少なくとも30分~最長4時間の期間にわたって一緒に混合することによって調製され得る。化合物Eは、珪藻土を通して濾過することができ、得られた濾過ケーキを(例えば、水、メタノール、および/またはTHFで)洗浄することができる。化合物Eは、約60℃~70℃に加熱し、温度を約55℃~65℃に調整し、THFを混合物に加え、混合物を再び60℃~70℃に加熱し、加熱した混合物に水を加え、混合物を55℃~65℃に冷却し、種結晶を混合物に加え、播種した混合物を0℃で約2時間撹拌することによって調製することができる。冷却した混合物を濾過し、洗浄し、乾燥させると、結晶化した化合物Eが得られる。
【0050】
化合物Fの調製
別の態様において、化合物Fを調製する方法が本明細書に提供される。
【化20】
、式中、X
-は対イオンである
【0051】
化合物Fは、(a)、(b)および(c)の3つのステップで調製することができる。ステップ(a)において、混合物は、非プロトン性溶媒、トリフルオロ酢酸(「TFA」)、およびtert-ブチル-((S)-3-(シクロペント-1-エン-1-イル)-1-((R)-2-メチルオキシラン-2-イル)-1-オキソプロパン-2-イル)カルバメート(化合物H)を
【化21】
約-5℃~約5℃の範囲の温度で一緒に混合することにより形成される。ステップ(b)において、ステップ(a)からの混合物が濃縮される。ステップ(c)において、ステップ(b)の濃縮混合物が約-5℃~5℃の範囲の温度で酸と一緒に混合されて化合物Fが形成される。
【0052】
酸は、化合物Fのアンモニウム基と塩を形成することができる任意の酸であり得る。好適な酸として、例えば、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、ナフタレンスルホン酸、4-ニトロベンゼンスルホン酸、スルホン酸、メチルスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、硝酸、HF、HCl、HBr、およびそれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態において、酸は、p-トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、4-ニトロベンゼンスルホン酸、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。例えば、酸はp-トルエンスルホン酸を含み得る。
【0053】
ステップ(a)における非プロトン性溶媒は、反応が進行し得る任意の非プロトン性溶媒(または溶媒の混合物)であり得る。好適な非プロトン性溶媒として、アセトニトリル(「ACN」)、ジクロロメタン(「DCM」)、テトラヒドロフラン(「THF」)、ジメチルアセトアミド(「DMAc」)、メチルtert-ブチルエーテル(「MTBE」)、イソプロピルエーテル(「IPE」)、およびそれらの組み合わせを挙げることができる。例えば、非プロトン性溶媒はDCMを含み得る。
【0054】
ステップ(a)におけるトリフルオロ酢酸は、約15:1~5:1の範囲の化合物Hに対するモル比で存在し得る。いくつかの実施形態において、トリフルオロ酢酸および化合物Hは、約10:1~7.5:1の比で存在する。例えば、トリフルオロ酢酸と化合物Hとのモル比は、約8:1であり得る。
【0055】
いくつかの実施形態において、ステップ(a)の脱保護反応は窒素雰囲気下で行われる。
【0056】
ステップ(a)、ステップ(c)、またはステップ(a)およびステップ(c)の両方における混合物の温度は、約-5℃~約5℃の範囲、または約0℃に維持される。いくつかの実施形態において、混合物は、ステップ(b)において、約15℃~約25℃の範囲の温度で濃縮される。
【0057】
ある場合には、ステップ(a)の混合は、少なくとも30分~最長約3時間の期間にわたって(例えば、最長約1、1.5、2、2.5、または3時間)行うことができる。いくつかの実施形態において、ステップ(a)の混合は、最長約2時間の期間にわたって行うことができる。ある場合には、ステップ(a)の混合は、少なくとも約30分間、または少なくとも約1時間、または少なくとも約1.5時間行うことができる。例えば、ステップ(a)の混合は、約30分~約3時間、または約30分~約2.5時間、または約1時間~約2時間行うことができる。
【0058】
種々の場合において、ステップ(c)の混合は、少なくとも5時間から最長約12時間の期間にわたって(例えば、最長約7、8、9、10、または11時間)行うことができる。いくつかの実施形態において、ステップ(c)の混合は、最長約10~12時間の期間にわたって行うことができる。ある場合には、ステップ(c)の混合は、少なくとも約5時間(例えば、少なくとも約6、7、8、9または10時間)行うことができる。例えば、ステップ(c)の混合は、約5時間~約12時間、または約10時間~約12時間行うことができる。
【0059】
ある場合には、ステップ(b)の濃縮混合物は、極性非プロトン溶媒ですすぐことができる。好適な極性非プロトン性溶媒として、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(「THF」)、アセトニトリル(「ACN」)、メチルtert-ブチルエーテル(「MBTE」)、イソプロピルエーテル(「IPE」)、およびそれらの組み合わせが挙げられる。例えば、極性非プロトン性溶媒は、MBTEであり得る。
【0060】
ステップ(c)の後、化合物Fは、任意選択的に約-5℃~約5℃の範囲の温度で濾過し、1つ以上の極性非プロトン性溶媒(例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(「THF」)、アセトニトリル(「ACN」)、メチルtert-ブチルエーテル(「MBTE」)、イソプロピルエーテル(「IPE」)、およびそれらの組み合わせ)を用いて洗浄し、かつ/または乾燥させることができる。
【0061】
化合物Fは、
図5,6に示される示差走査熱量測定(「DSC」)サーモグラム、熱重量分析(「TGA」)データ、およびX線パワー回折(「XRPD」)パターンによって特徴づけられる結晶化されて多形を形成することができる、7,8,9。したがって、本開示の別の態様は、
図9に示されるように、6.8、7.1、7.4、14.2、14.8、17.0、17.5、17.8、18.5、18.7、20.1、20.3、23.0、23.6、24.5、29.3、および31.2±0.2
o2θにピークを含む、CuKα線を用いたXRPDパターンによって特徴付けられる化合物Fの結晶形、例えば、化合物Fのトシル酸塩である。
【0062】
化合物Fのトシラート形態はまた、後述の実施例の項に記載されるように、単結晶X線回折(「XRD」)構造によっても特徴付けられ得る。
図10に示す結晶は、a=13.264(3)Å、a=90°、b=5.6920(11)Å、b=109.410(4)°、c=13.416(3)Å、g=90°の単位胞寸法を有し、空間群P21に属する。Flackパラメータは0.03(0.08su)である。2-ナフタレンスルホン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、リン酸、および硫酸等の他の酸を用いた結晶化では、以下の溶媒中にX線品質の結晶が得られなかった:トルエン、ジエチルエーテル、MTBE、1,4-ジオキサン、酢酸エチル、アセトン、アセトニトリル、ブタノール、イソプロパノール、およびヘキサン/酢酸エチル(1:1の比)。
【0063】
例えば、化合物Fは、(a)非プロトン性溶媒(例えばDCM)、TFA、および化合物Hを、8:1のモル比および約0℃の温度で、窒素雰囲気下で、最長約2時間の時間にわたって一緒に混合し、(b)混合物を約15℃~25℃の温度で濃縮し、(c)濃縮した混合物と酸(例えば、p-トルエンスルホン酸)とを約0℃の温度で10~12時間の期間にわたって混合することによって調製され得る。得られた化合物Fは、約0℃で濾過し、極性非プロトン性溶媒(例えば、MBTE)で洗浄し、真空下で乾燥させることができる。
【0064】
化合物Dの調製
別の態様において、化合物Dを調製する方法が本明細書に提供される。
【0065】
化合物Dは、ステップ(a)およびステップ(b)の2つのステップで調製することができる。ステップ(a)において、混合物は、第三級アミン塩基と、化合物Bおよび化合物Cの懸濁液とを一緒に混合することによって調製される:(i)(2S,3R)-1-(ベンジルオキシ)-3-ヒドロキシ-3-(4-メトキシフェニル)-1-オキソプロパン-2-アミニウム塩(化合物「B」)
【化22】
(式中、X
-は対イオンである)および
(ii)(2-モルホリノアセチル)-L-アラニン(化合物「C」)
【化23】
ステップ(b)において、ステップ(a)からの混合物とカップリング剤とが約-5℃~約5℃の範囲の温度で一緒に混合されて化合物Dが形成される。
【0066】
対イオン(X-)は、化合物Bのアンモニウム基とイオン結合を形成することができる任意のアニオンであり得る。いくつかの実施形態において、X-は、トシラートアニオン、トリフラートアニオン、酢酸イオン、ナフタレンスルホネートアニオン、4-ニトロベンゼンスルホネートアニオン、硫酸イオン、(硫酸メチル)イオン、硝酸イオン、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。ある場合には、X-は、トシラートアニオン、ナフタレンスルホネートアニオン、または4-ニトロベンゼンスルホネートアニオンであり得る。例えば、X-は塩化物イオンであってもよい。
【0067】
非プロトン性溶媒は、化合物BとCとの間の求核性アシル置換反応が進行し得る任意の非プロトン性溶媒(または溶媒の混合物)であり得る。好適な非プロトン性溶媒として、アセトニトリル(「ACN」)、ジクロロメタン(「DCM」)、テトラヒドロフラン(「THF」)、ジメチルアセトアミド(「DMAc」)、酢酸エチル(「EtOAc」)、酢酸イソプロピル(「iPrOAc」)、ジメチルホルムアミド(「DMF」)、およびそれらの組み合わせを挙げることができる。例えば、非プロトン性溶媒はACNを含み得る。
【0068】
化合物Bおよび化合物Cは、約0.65:1~1.1:1のモル比で存在し得る。いくつかの実施形態において、化合物BおよびCは、約0.75:1~1:1の比で存在する。例えば、化合物BとCとのモル比は、約0.8:1であってもよい。
【0069】
第三級アミン塩基は、化合物BとCとの間の求核アシル置換反応を促進または触媒することができる任意の第三級アミン塩基であり得る。好適な第三級アミン塩基として、例えばN,N-ジイソプロピルエチルアミン(「DIPEA」)、トリエチルアミン(「TEA」)、N-メチルモルホリン(「NMM」)、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン(「TMP」)、2,4,6-トリメチルピリジン(「コリジン」)、またはそれらの組み合わせを挙げることができる。例えば、第三級アミン塩基はDIPEAを含み得る。第三級アミン塩基は、約1:1~約3.5:1の範囲の化合物Bに対するモル比で存在し得る。例えば、第三級アミン塩基と化合物Bとのモル比は、約3.5:1であり得る。
【0070】
カップリング剤として、化合物Gの調製について前述したように、例えば、カルボジイミド試薬、ホスホニウム試薬、ウロニウム試薬、イモニウム試薬、イミダゾリウム試薬、有機リン試薬、酸塩化物試薬、クロロホルメート試薬、ピリジニウム試薬、またはそれらの組み合わせを挙げることができる。カルボジイミド試薬、ホスホニウム試薬、ウロニウム試薬、イモニウム試薬、イミダゾリウム試薬、有機リン試薬、酸塩化物試薬、クロロホルメート試薬、およびピリジニウム試薬の例は、化合物Gの調製について上述される。いくつかの実施形態において、ウロニウム剤は、HATU、HBTU、およびそれらの組み合わせを含み得る。例えば、ウラン剤はHATUであってもよい。カップリング剤は、約1:1~約1:3の範囲の化合物Bに対するモル比で存在し得る。いくつかの実施形態において、カップリング剤および化合物Bは、約1:1~1:2の比で存在する。例えば、カップリング剤と化合物Bとの比は、約1:1.5であり得る。
【0071】
カップリング反応は、カップリング添加剤の存在下で行うことができる。カップリング添加剤の量の例は、化合物Gの調製のために記載されている。
【0072】
各混合ステップの温度は、約-5℃~約5℃の範囲に維持される。いくつかの実施形態において、各混合ステップの温度は約0℃に維持される。各混合ステップの温度は同じであっても異なっていてもよい。
【0073】
化合物Dの調製のステップ(b)において、混合は、カップリング剤の一部をステップ(a)からの混合物と少なくとも1分間~最長約30分間の期間にわたって(例えば、最長約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、16、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30分)混合することを含み得る。いくつかの実施形態において、カップリング剤の一部は、少なくとも約1分間の期間にわたって(例えば、少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25分)ステップ(a)からの混合物に加えられ得る。例えば、カップリング剤の一部は、約1分~約30分または約10分~約30分、または約20分~約30分の期間にわたって、ステップ(a)からの混合物に加えられ得る。ステップ(b)の混合は、混合物を最長約3時間(例えば、最長約1、1.5、2、2.5、または3時間)撹拌することも含み得る。いくつかの実施形態において、撹拌は、最長約2時間行うことができる。ある場合には、撹拌は、少なくとも約30分間、または少なくとも約1時間、または少なくとも約1.5時間行うことができる。例えば、撹拌は約30分~約3時間、または約30分~約2.5時間、または約1時間~約2時間行うことができる。
【0074】
ステップ(b)の後、化合物Dを約15℃~約25℃の範囲の温度の1つ以上の溶媒で急冷および/または洗浄することができる。急冷および/または洗浄に適した溶媒として、例えば、水、酢酸イソプロピル、一塩基性リン酸カリウム、重炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、THF、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0075】
例えば、化合物Dは、(a)化合物Bおよび化合物(C)(1:1のモル比)と第三アミン塩基(例えばDIPEA)とをACN中で一緒に混合し、(b)ステップ(a)からの混合物と約1モル当量のHATUとを約30分の期間にわたって少しずつ混合し、次いで、最長約2時間の時間にわたって混合物を撹拌することによって調製され得、各ステップの温度は約0℃である。得られたステップ(b)からの混合物は、例えば、重炭酸ナトリウムで急冷して二相混合物を形成することができる。有機相を分離し、重炭酸ナトリウム、一塩基性リン酸カリウム、および/または硫酸ナトリウムで洗浄することができる。
【0076】
化合物Bの調製
化合物Bは、(i)酸と(ii)ベンジル(2S,3R)-2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-3-ヒドロキシ-3-(4-メトキシフェニル)プロパノエート(化合物「A」)とを
【化24】
非プロトン性溶媒中で混合することによって調製され得る。
【0077】
酸は、化合物A上のアミノ基を脱保護することができる任意の好適な酸であり得る。好適な酸として、例えば、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、ナフタレンスルホン酸、4-ニトロベンゼンスルホン酸、スルホン酸、メチルスルホン酸、硝酸、HF、HCl、HBr、およびそれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態において、酸は、トリフルオロ酢酸またはHClを含む。
【0078】
非プロトン性溶媒は、脱保護反応が起こり得る任意の溶媒であり得る。好適な溶媒として、酢酸エチル、N-メチルピロリドン(「NMP」)、テトラヒドロフラン(「THF」)、アセトン、ジメチルホルムアミド(「DMF」)、アセトニトリル(「ACN」)、ジメチルスルホキシド(「DMSO」)、ジクロロメタン(「DCM」)、およびそれらの組み合わせが挙げられる。例えば、溶媒は、酢酸エチル、DCM、またはそれらの組み合わせを含み得る。
【0079】
いくつかの実施形態において、混合ステップ中の混合物の温度は、約15℃~約25℃の範囲、または約20℃に維持される。
【0080】
ある場合には、混合が完了した後、化合物Bを濾過し、真空下で乾燥させて、
図1に示すDSCサーモグラムによって特徴付けられる結晶多形を形成する。したがって、本開示の別の態様は、4.6、9.2、13.8、18.5、および32.9±0.2°2θにピークを含む、CuKα線を用いたXRPDパターンによって特徴付けられる化合物Bの結晶形である。
【0081】
例えば、化合物Bは、酸(例えば、HCl)と化合物Aとを20℃で一緒に混合し、濾過し、得られた化合物Bを乾燥させることによって調製され得る。
【実施例】
【0082】
以下の実施例は、例示のために提供され、本発明の範囲を限定することは意図されない。
【0083】
一般合成スキーム
化合物Gは、上に示したスキーム1に従って調製することができる。
【0084】
実施例1:(2S,3R)-1-(ベンジルオキシ)-3-ヒドロキシ-3-(4-メトキシフェニル)-1-オキソプロパン-2-アミニウム塩(化合物「B」)のHCl塩の大規模調製:
【化25】
20℃の酢酸エチル(58.5kg)にHClガス(6.8kg)を導入した。この溶液にベンジル(2S,3R)-2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-3-ヒドロキシ-3-(4-メトキシフェニル)プロパノエート(化合物「A」)を溶解した。
【化26】
(5kg、12.5mol、酢酸エチル32.5kgに予め溶解)。懸濁液を20℃で撹拌し、HPLCによって決定されるように、完了してから、濾過し、真空下45℃で乾燥させて、化合物Bの結晶多形(3.85kg)をHCl塩として得た。LC/MS(LRMS(MH) m/z:302)。HPLC純度97.9%。特徴的なDSC曲線を
図1に示す。
【0085】
実施例2:(2S,3R)-1-(ベンジルオキシ)-3-ヒドロキシ-3-(4-メトキシフェニル)-1-オキソプロパン-2-アミニウム塩(化合物「B」)のTFA塩の小規模合成:
0℃のジクロロメタン(「DCM」)(50mL)中の化合物Aの溶液(7.0g、17.4mmol)にトリフルオロ酢酸(「TFA」)(20mL)を加えた。混合物を30分間撹拌し、次いでDCM(100mL)で希釈した。飽和NaHCO3(水性、100mL)を加え、2つの層を分離した。水層をDCM(2×100mL)で抽出し、合わせた有機層を無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濃縮して、粗化合物B(5.0g、収率84%)をTFA塩として得た。LC/MS(LRMS(MH)m/z:302。
【0086】
実施例3:(2S,3R)-3-ヒドロキシ-3-(4-メトキシフェニル)-2-((S)-2-(2-モルホリノアセトアミド)プロパンアミド)プロパノエート(化合物「D」)の大規模調製
【化27】
20℃の化合物B(3.8kg)および(2-モルホリノアセチル)-L-アラニン(化合物「C」)
【化28】
(2.5kg)に、アセトニトリル(30.4kg)を加えた。温度を0℃に調節し、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(「DIPEA」)(3.19kg)、続いて1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスフェート(「HATU」)(5.22kg)を30分かけて少しずつ加えた。反応混合物を0℃で2時間撹拌し、次いで3.5%NaHCO
3(水性、46kg)で急冷し、30分間撹拌した。20℃で1時間放置した後、NaHCO
3固体を加え、混合物を30分間撹拌し、次いで再び20℃で1時間放置した。水層を水(30.6kg)で希釈し、酢酸イソプロピル(「iPrOAc」)(23.4kg)で抽出し、有機層を合わせた。有機層をiPrOAc(3×27kg)でチェイスし、3.5%NaHCO
3(水性、30kg)、KH
2PO
4(水性、3×65kg)、水(15kg)、7%NaHCO
3(水性、2×61kg)、および5%Na
2SO
4(水性、3×55kg)で洗浄した。溶液を18Lに濃縮し、次いでテトラヒドロフラン(「THF」)(4×22.8L)でチェイスして、生成物(5.04kg、収率90%、HPLCによる純度97.9%)をTHF中の溶液(34.5重量%、合計14.6kg)として得た。
【0087】
カップリング試薬としてHATUの代わりに1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドHCl(「EDC」)(1.1当量)を用いても同様の結果が得られた。
【0088】
実施例4:化合物Dの小規模合成
0℃のジメチルホルムアミド(「DMF」)(100mL)中の化合物B(TFA塩、5.0g、14.8mmol)および化合物C(3.36g、15.9mmol)の溶液に、試薬HATU(6.79g、17.9mmol)およびDIPEA(9.63mL、59.2mmol)を加えた。反応混合物を室温に加温し、1時間撹拌した。混合物を濃縮し、シリカゲル上のフラッシュカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/EtOAc=2:1~1:2)により残渣を精製して化合物D(5.8g、収率78%)を無色の固体として得た。LC/MS(LRMS(MH) m/z:500。
【0089】
実施例5:(i)(2S,3R)-3-ヒドロキシ-3-(4-メトキシフェニル)-2-((S)-2-(2-モルホリノ-アセトアミド)プロパンアミド)プロパン酸(化合物「E」)の大規模調製
【化29】
ベンジル(2S,3R)-3-ヒドロキシ-3-(4-メトキシフェニル)-2-((S)-2-(2-モルホリノアセトアミド)プロパンアミド)プロパノエート(化合物「D」)(THF中34.5重量%の溶液として5.04kg)にTHF(3.25kg)、続いてメタノール(7.0kg)を加えた。反応容器内にAN
2雰囲気を確立し、窒素保護下でPd/C(10%、473g)を加えた。THF(500g)およびメタノール(1kg)を加えて反応容器を洗浄し、H
2雰囲気(15psi)を確立した。反応物を17℃で4時間撹拌し、次いで珪藻土を通して濾過した。湿潤ケーキをメタノール(30kg)で洗浄し、3~4体積に濃縮し、THF(4×45kg)でチェイスし、60~70℃に加熱した。2時間後、温度を50~60℃に調整し、THF(30kg)を添加した。混合物を再び60~70℃まで2時間加熱した。この溶液に水(370kg)を60~70℃で加え、次いで混合物を55~65℃に冷却した。種結晶(18.0g)を加え、混合物を55~65℃で1時間撹拌した。懸濁液を5~6体積に2回濃縮し、0℃で2時間撹拌した。THF(10kg)を用いて混合物を濾過し、洗浄した。湿潤ケーキを乾燥させて化合物Eの結晶多形(3.54kg、純度97.6%)を得た。特徴的なDSC、TGA、およびXRPDデータを
図2~4に示す。
【0090】
実施例6:化合物Eの小規模合成
THF(120mL)中の化合物D(5.8g、11.6mol)の溶液に、Pd/C(1.5g、10%)を加えた。混合物を周囲温度、H2雰囲気(1気圧)下で一晩撹拌し、次いでセライトのパッドを通して濾過した。減圧下で濾液を濃縮し、残渣をEtOAc(20mL)で洗浄して化合物E(4.8g、収率約100%)を無色の固体として得た。
【0091】
実施例7:(S)-3-(シクロペント-1-エン-1-イル)-1-((R)-2-メチルオキシラン-2-イル)-1-オキソプロパン-2-アミニウム塩(化合物「F」)のトシル酸塩の大規模調製
【化30】
0℃のDCM(402mL)中のtert-ブチル((S)-3-(シクロペント-1-エン-1-イル)-1-((R)-2-メチルオキシラン-2-イル)-1-オキソプロパン-2-イル)カルバメート(化合物「H」)(134g)の溶液に、
【化31】
内部温度を-5~5℃に維持するような速度でTFA(414.3g、8当量)を加えた。N
2下で、反応混合物をこの温度で2時間撹拌した。次いで、暗色の混合物を濃縮し、15~25℃でDCMおよびTFAを除去した。溶液をメチルtert-ブチルエーテル(「MBTE」)(5×2L)でチェイスした。HPLC分析は、2.72当量のTFAが溶液中に残っていることを示し、MTBE(804mL)を15~25℃で加えた。この溶液に0℃でp-トルエンスルホン酸(「PTSA」)(83.6g)を加え、混合物をこの温度で10~12時間撹拌した。次いで、混合物を0℃で濾過し、MTBE(3×268mL、次いで1×168mL)で洗浄し、濾過ケーキを15~25℃で16~18時間真空乾燥させて、化合物F(126g、純度99.4%)をトシル酸塩として得た。特徴的なDSCおよびTGA曲線を
図5および6に示し、特徴的なXRPDパターンを
図9に示す。
【0092】
実施例8:化合物Fのナフタレンスルホネート塩の小規模合成
化合物H(2g)にDCM(8mL)を加え、混合物を5℃に冷却した。内部温度を10℃未満に維持するような速度でTFA(8mL)を加えた。次いで、混合物を周囲温度で30分間撹拌し、次いで真空下で濃縮した。トルエン(3×5mL)を加えて過剰なTFAを除去した。TFA塩にEtOAc(4mL)を加え、続いて2-ナフタレンスルホン酸(6.78mmol、1.41g、10mLのEtOAcに溶解)を加えた。混合物を周囲温度で撹拌したところ、5分以内に無色の固体が沈殿した。混合物をさらに15分間撹拌し、次いで、すすぎのためにEtOAc(10mL)を用いて濾過した。固体を16時間真空下に置いて、ナフタレンスルホネート塩を無色の固体として得た(1.62g、収率72%)。特徴的なDSCおよびTGAデータを
図7および8に示す。
【0093】
同様の手順を用いて、化合物Fの4-ニトロベンゼンスルホン酸を生成した。
【0094】
実施例9:(2S,3R)-N-[(2S)-3-(シクロペント-1-エン-1-イル)-1-[(2R)-2-メチルオキシラン-2-イル]-1-オキソプロパン-2-イル]-3-ヒドロキシ-3-(4-メトキシフェニル)-2-[(2S)-2-[2-(モルホリン-4-イル)アセトアミド]プロパンアミド]プロパンアミド(化合物「G」)の大規模調製
【化32】
化合物E(110.0g)および化合物F(トシル酸塩、110.0g)にDCM(1.46kg)を加え、懸濁液を-15~-5℃に冷却した。-15~-5℃の内部温度を維持するような速度でDIPEA(122.1g)を加えた。次いで、混合物を10分間撹拌し、この溶液に窒素下-15~-5℃でHATU(114.4g)を加えた。混合物を-15~-5℃で2時間撹拌し、化合物F(3.91g)を加えた。10分後、内部温度を5~15℃に調整し、次いで水(1100g)を加えた。溶液を30~60分間撹拌し、30~60分間放置した。有機層を分離し、水(1100g)で30~60分間洗浄し、混合物を30~60分間放置した。有機相を合わせ、温度を15~25℃に上昇させた。溶液を真空下(<45℃)で2~4体積に濃縮した。iPrOAc(957g)を加え、溶液を真空下(<45℃)で2~4体積に濃縮した。この溶液を5% KH
2PO4(水性、1100g)、1% KH
2PO4(水性、2×1100g)、7% NaHCO
3(水性、1100g)および5% Na
2SO
4(水性、1100g)で洗浄した。生成物をiPrOAc(89.8%)中の10.53重量%溶液として得た。
【0095】
実施例10:化合物Gの小規模調製
0℃のDMF(90mL)中の化合物E(4.8g、11.7mmol)および化合物F(TFA塩、3.46g、11.7mmol)の溶液に、HATU(5.35g、14.1mmol)およびDIPEA(9.55mL、58.7mmol)を加えた。反応混合物を室温に加温し、30分間撹拌した。混合物を濃縮し、シリカゲル上のフラッシュカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/EtOAc=2:1~EtOAc)により残渣を精製して、化合物G(4.8g、収率70%、HPLC純度95.2%)を無色の固体として得た。LC/MS(LRMS(MH) m/z:587)。
【0096】
実施例11:化合物Fのトシル酸塩の単結晶の調製
化合物FのTFA塩(0.70g、2.39mmol)をMTBE(3.5mL)に溶解し、p-トルエンスルホン酸(0.45g、2.39mmol)を加えた。溶液をバイアルに密封し、周囲温度で放置した。9ヶ月後、沈殿した結晶から溶媒を除去し、2日間にわたって周囲温度で固体を乾燥させた。Flack,H.D.;Bernardinelli,G.The Use of X-Ray Crystallography to Determine Absolute Configuration. Chirality,2008,20,681-690を参照されたい。
【0097】
実施例12:化合物Fのトリフルオロ酢酸とトシル酸塩の安定性の比較
化合物Fのトリフルオロ酢酸塩およびトシル酸塩の安定性は、各塩の複数のロットを1日または90日間、相対湿度40%で25℃の温度に曝露し、各試料が分解した割合を測定することによって決定した。以下の表に示すように、化合物Fのトシル酸塩は、そのトリフルオロ酢酸対応物よりも著しく安定である。
【表1】
【0098】
上記の説明は、理解を明確にするために示されているに過ぎず、本発明の範囲内の修正は当業者に明らかであり得るため、そこから不必要な限定が理解されるべきではない。
【0099】
本明細書および続く特許請求の範囲を通して、文脈上他の意味に解釈する必要のない限り、「含む(comprise)」という用語、ならびに「含む(comprises)」および「含んでいる(comprising)」等の変形例は、記載の整数もしくはステップ、または整数もしくはステップの群を含むが、他のいずれの整数もしくはステップ、または整数もしくはステップの群を除外しないことを意味するものと理解されよう。
【0100】
本明細書を通して、組成物が構成成分または材料を含むものとして記載される場合、その組成物は、別途記載のない限り、列挙される構成成分もしくは材料の任意の組み合わせから本質的になるか、またはそれらからなってもよいことが企図される。同様に、方法が特定のステップを含むものとして記載される場合、その方法は、別途記載のない限り、列挙されるステップの任意の組み合わせから本質的になるか、またはそれらからなってもよいことが企図される。本明細書において例示的に開示される発明は、本明細書に具体的に開示されていない任意の要素またはステップの非存在下で、好適に実施され得る。
【0101】
本明細書に開示される方法、およびそれらの個々のステップの実施は、手動で、および/または電子機器によって提供される自動化の助けにより行われ得る。プロセスは、特定の実施形態に関して説明してきたが、当業者は、方法に関連する行為を実施する他の手段が使用され得ることを容易に認識するであろう。例えば、様々なステップの順序は、別途記載のない限り、その方法の範囲または主旨から逸脱することなく変更されてもよい。加えて、個々のステップの一部を、組み合わせること、省略すること、またはさらなるステップにさらに再分割することができる。
【0102】
本明細書で引用した全ての特許、刊行物、および参考文献は、参照により完全に本明細書に組み込まれる。本開示と、組み込まれる特許、刊行物、および参考文献との間に矛盾がある場合は、本開示が優先されるべきである。