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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-27
(45)【発行日】2022-05-11
(54)【発明の名称】バリ取り工具およびバリ取り方法
(51)【国際特許分類】
   B23C 3/12 20060101AFI20220428BHJP
【FI】
B23C3/12 B
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019087614
(22)【出願日】2019-05-07
(65)【公開番号】P2020182998
(43)【公開日】2020-11-12
【審査請求日】2021-06-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000132161
【氏名又は名称】株式会社スギノマシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】武藤 充
(72)【発明者】
【氏名】堀 智章
【審査官】荻野 豪治
(56)【参考文献】
【文献】特許第4665440(JP,B2)
【文献】特開2009-214234(JP,A)
【文献】特開2004-142064(JP,A)
【文献】特開2012-30316(JP,A)
【文献】特開2007-301641(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/84056(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23C 3/12
B23D 79/00 - 79/12
B23B 31/08
B23B 31/36
B23B 33/00
B23B 51/10
B24B 9/00 - 9/20
B25J 1/00 - 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャンク軸に沿って配置されたシャンク、座面及び機構室を有するハウジングと、
前記シャンク軸の回りに、前記シャンク軸に平行に配置され、前記機構室に固定された複数の伝達ロッドと、
第1フランジ部を有し、前記シャンク軸に沿って往復できるリカバリーロッドと、
傾動シャフトであって、
前記第1フランジ部と対向して配置された第2フランジ部、
前記伝達ロッドがそれぞれ貫通する受容部、及び、
前記座面に支持され、前記シャンク軸上に傾動中心を有する球面ブッシュ、を有し、
前記傾動中心を通る傾動軸に沿って配置され、前記傾動中心を中心に傾動できる傾動シャフトと、
前記リカバリーロッドを前記傾動シャフトに向けて付勢する弾性部材と、
前記傾動シャフトに対して予め定められた回転角度だけ回転できるように前記傾動シャフトに配置され、刃物を固定するホルダと、
前記ホルダに前記傾動軸に沿って移動可能なプランジャを有し、前記ホルダが前記シャンクの回転方向とは逆方向に回転したときに前記第1フランジ部と前記第2フランジ部が離間して、前記プランジャを前記リカバリーロッドと前記傾動軸上で接触させる回転直動変換機構と、
を備える、バリ取り工具。
【請求項2】
前記回転直動変換機構は、前記ホルダが前記シャンクの回転方向とは逆方向に前記回転角度だけ回転したときに、前記プランジャを前記リカバリーロッドと前記傾動中心で接触させる、
請求項1のバリ取り工具。
【請求項3】
前記回転直動変換機構は、
前記ホルダに対する前記プランジャの回転を制限する回り止め機構と、
前記プランジャにらせん状に形成されたカム溝と、
前記傾動シャフト及び前記カム溝を前記傾動軸に垂直に貫通して前記傾動シャフトに配置され、前記カム溝に摺動するカムピンと、
を有する、
請求項1又は2に記載のバリ取り工具。
【請求項4】
前記回り止め機構は、
前記プランジャを径方向に貫通して前記プランジャの軸方向に延びる長穴と、
前記長穴を貫通し、前記ホルダに径方向に延びて配置された回り止めピンと、を有する、
請求項3のバリ取り工具。
【請求項5】
前記伝達ロッドは、前記シャンク軸に垂直で、かつ前記傾動中心を通る平面上に配置された膨出部を有し、
前記受容部は、前記膨出部と当接する当接面を有する、
請求項1~4のいずれか一項のバリ取り工具。
【請求項6】
前記リカバリーロッドは、前記第1フランジ部に配置され、前記伝達ロッドがそれぞれ貫通する複数のガイド穴を有し、
前記リカバリーロッドは、前記ガイド穴が前記伝達ロッドと摺動してガイドされる、
請求項1~5のいずれか一項のバリ取り工具。
【請求項7】
前記リカバリーロッドは、前記第1フランジ部に形成された前記ガイド穴に挿通された前記伝達ロッド、および前記ハウジングによってガイドされて前記シャンク軸方向に移動する、請求項6のバリ取り工具。
【請求項8】
ハウジングに固定された伝達ロッドが傾動シャフトの第2フランジ部に形成された受容部に当接して、前記ハウジングの回転を前記傾動シャフトに伝達し、
非加工時において、リカバリーロッドの第1フランジ部が前記傾動シャフトの前記第2フランジ部に向かって付勢し、
加工時において、
ワークから受けた切削抵抗によって刃物を保持するホルダが前記傾動シャフトに対して前記刃物の回転方向と逆方向に回転し、
回転直動変換機構が前記ホルダの回転を変換してプランジャを前記リカバリーロッド側に移動させ、
前記プランジャが前記リカバリーロッドを押し上げて、前記リカバリーロッドと傾動軸上で接触し、前記第1フランジ部が前記第2フランジ部と離間し、
前記傾動シャフトと一体となって回転する前記刃物が前記ワークを切削する、
バリ取り方法。
【請求項9】
更に、
前記ホルダがあらかじめ定められた回転角度だけ回転し、前記プランジャが前記リカバリーロッドと傾動中心で接触する、
請求項8のバリ取り方法。
【請求項10】
更に、
弾性部材が前記リカバリーロッドを前記傾動シャフトに向かって付勢する、
請求項8又は9のバリ取り方法。
【請求項11】
更に、
前記伝達ロッドが前記リカバリーロッドをガイドして、前記リカバリーロッドが移動する、
請求項8~10のいずれか一項のバリ取り方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バリ取り工具およびバリ取り方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械の主軸に装着される加工工具であって、シャンクと、シャンクが回転できるように支持されるケースと、ケースに配置された位置決め係合部と、シャンク内に配置された吸収ロッドと、傾動ケースと、傾動ケースを支持する傾動支持ピン装置と、傾動ケースに回転自在に配置されたホルダーと、吸収ロッドとホルダーとを接続する自在継手と、を備える加工工具が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4665440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のバリ取り工具を用いるためには、工作機械に、位置決め係合部と係合する固定部を配置する必要がある。
本発明は、位置決め係合部を含まないバリ取り工具およびバリ取り方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の側面は、バリ取り工具であって、
シャンク軸に沿って配置されたシャンク、座面及び機構室を有するハウジングと、
前記シャンク軸の回りに、前記シャンク軸に平行に配置され、前記機構室に固定された複数の伝達ロッドと、
第1フランジ部を有し、前記シャンク軸に沿って往復できるリカバリーロッドと、
傾動シャフトであって、
前記第1フランジ部と対向して配置された第2フランジ部、
前記伝達ロッドがそれぞれ貫通する受容部、及び、
前記座面に支持され、前記シャンク軸上に傾動中心を有する球面ブッシュ、を有し、
前記傾動中心を通る傾動軸に沿って配置され、前記傾動中心を中心に傾動できる傾動シャフトと、
前記リカバリーロッドを前記傾動シャフトに向けて付勢する弾性部材と、
前記傾動シャフトに対して予め定められた回転角度だけ回転できるように前記傾動シャフトに配置され、刃物を固定するホルダと、
前記ホルダに前記傾動軸に沿って移動可能なプランジャを有し、前記ホルダが前記シャンクの回転方向とは逆方向に前記回転角度だけ回転したときに前記第1フランジ部と前記第2フランジ部が離間して、前記プランジャを前記リカバリーロッドと前記傾動軸上で接触させる回転直動変換機構と、
を備える。
本発明の第2の側面は、バリ取り方法であって、
ハウジングに固定された伝達ロッドが傾動シャフトの第2フランジ部に形成された受容部に当接して、前記ハウジングの回転を前記傾動シャフトに伝達し、
非加工時において、リカバリーロッドの第1フランジ部が前記傾動シャフトの前記第2フランジ部に向かって付勢し、
加工時において、
ワークから受けた切削抵抗によって刃物を保持するホルダが前記傾動シャフトに対して前記刃物の回転方向と逆方向に回転し、
回転直動変換機構が前記ホルダの回転を変換してプランジャを前記リカバリーロッド側に移動させ、
前記プランジャが前記リカバリーロッドを押し上げて、前記リカバリーロッドと傾動軸上で接触し、前記第1フランジ部が前記第2フランジ部と離間し、
前記傾動シャフトと一体となって回転する前記刃物が前記ワークを切削する、
方法である。
【0006】
バリ取り工具は、マシニングセンタ、ターニングセンタなどの工作機械に装着され、回転工具として利用される。バリ取り工具は、シャンクが工具主軸に装着され、バリ取り工具全体が工具主軸と共に回転する。
説明の都合上、刃物が取り付けられる側を先端側と、シャンクが配置された側を基端側と呼ぶ。
【0007】
リカバリーロッド、球面ブッシュ、座面、ホルダ、プランジャおよび刃物は、シャンクの中心軸であるシャンク軸上に配置される。
ガイド穴および伝達ロッドは、シャンク軸を中心とする円筒面上に、円周上均等に振り分けられて同数配置される。
受容部は傾動軸を中心とする円筒面状に円周上均等に振り分けられて伝達ロッドと同数配置されて良い。受容部は、シャンク軸を通る平面上に当接面を有して良い。
【0008】
刃物がワークに接触したときに、刃物が切削抵抗を受ける。刃物がワークから受けた切削抵抗によって、刃物を保持するホルダが傾動シャフトに対してバリ取り工具の回転方向と逆方向に回転する。回転量は、回転直動変換機構の構造によって定められている。
なお、刃物は、ブラシを含んで良い。
【0009】
回転直動変換機構は、プランジャを有する。プランジャは傾動シャフトの中心軸である傾動軸に沿って移動する。回転直動変換機構はホルダの回転方向と逆方向の回転に伴い、プランジャを基端方向に押し上げる。ホルダの所定の回転角に対して、構造的に定められたストロークだけプランジャが往復する。
ホルダがバリ取り工具の回転方向と逆方向に回転すると、プランジャは弾性部材の付勢力に抗してリカバリーロッドを基端側へ押し上げる。プランジャは、リカバリーロッドを押し上げて、第1フランジ部と第2フランジ部とを離間させる。プランジャの頂部は傾動軸上でリカバリーロッドと当接し、傾動シャフトは自由に傾動できる。
ホルダがバリ取り工具の回転方向と逆方向の端まで回転すると、プランジャの頂部は、リカバリーロッドと傾動中心付近で接触する。
回転直動変換機構は、例えば、円筒溝カム機構である。円筒溝カム機構は、カムピン及びプランジャを有する。プランジャはカム溝を有し、ホルダの内側に往復可能かつ、回転不能に配置される。プランジャは傾動軸に沿って移動する。プランジャの頂部は傾動軸上にある。カムピンは傾動シャフトに、傾動軸と垂直に延びて固定される。カム溝は好ましくはプランジャを貫通する。カム溝はプランジャの円筒面状にらせんを描く開口を持つ。カムピンは、カム溝に摺動する。
ホルダは傾動軸に垂直な平面上に、傾動軸を中心に扇形に広がる旋回穴を持つ。カムピンは旋回穴を貫通する。旋回穴の中心角はカム溝の回転角以上である。
ホルダが傾動シャフトに対して工具の回転方向に回転するに従って、プランジャは、先端方向へ移動する。プランジャが先端方向の端部にあるときに、第1フランジ部は第2フランジ部と当接する。好ましくは、このときにプランジャの頂部はリカバリーロッドと当接する。
【0010】
刃物がワークに接触しないとき、ばねの付勢力によって、リカバリーロッドはプランジャを押し下げる。回転直動変換機構は、プランジャを押し下げるときに、ホルダを傾動シャフトに対してバリ取り工具の回転方向に回転させる。これにより、ホルダおよびプランジャは、初期位置に戻る。そして、第1フランジ部が第2フランジ部と接触する。このとき、傾動シャフトは傾動できない。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、位置決め係合部を含まないバリ取り工具およびバリ取り方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態の非加工時におけるバリ取り工具の縦断面図
図2図1のII-II線断面図
図3図1のIII-III線断面図
図4図1のIV-IV線断面図
図5図1のV-V線断面図
図6】実施形態のプランジャの斜視図
図7】プランジャの移動ストロークの説明図
図8】実施形態の加工時におけるバリ取り工具の縦断面図
図9図8のIX-IX線断面図
図10図8のX-X線断面図
図11】傾動シャフトが傾いた状態のバリ取り工具を示す縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に示すように、実施形態のバリ取り工具100は、シャンク11を持つハウジング1、一組の伝達ロッド3、傾動シャフト4、リカバリーロッド5、ばね6、ホルダ7、球面ブッシュ24及び回転直動変換機構9を含む。回転直動変換機構9は、プランジャ8、カム溝85、カムピン84、回り止め機構87を含む。
バリ取り工具100はシャンク11をマシニングセンタ等である工作機械の主軸(不図示)に装着されて、バリ取り工具100全体が刃物101と一体となって回転して使用される。
以下、説明の都合上、シャンク軸15又は傾動軸43に沿った方向を上下方向と呼ぶ場合がある。
【0014】
ハウジング1はボディ12、機構室13及び座面14を有する。ハウジング1は調整ねじ61を有しても良い。シャンク11は、例えばストレートシャンクである。シャンク11は、シャンク軸15に沿って延びる。
ボディ12はシャンク11の先端側に配置される。ボディ12はシャンク軸15を中心とする円筒状である。
機構室13は、シャンク軸15を中心とする段付き円筒であり、シャンク11及びボディ12の内部に広がっている。機構室13は基端部に配置された小径部13aと先端部に配置された大径部13bを持つ。小径部13aにブッシュ53が配置されてよい。小径部13aはシャンク11の基端側に開口13cを持っても良い。開口13cには雌ねじ11aが配置される。調整ねじ61は、雌ねじ11aにねじ込まれる。
座面14は機構室13の先端部に配置される、先端側に向けて縮径する直円錐面状の内面である。なお、座面14は、凹状の球面であっても良い。
【0015】
球面ブッシュ24は凸面である球面24aを持つ。球面24aの中心が傾動中心25である。球面24aは、座面14に内接する。球面ブッシュ24は座面14上を摺動する。
【0016】
伝達ロッド3は、軸部33及び膨出部34を有する。伝達ロッド3は、機構室13の内部に、シャンク軸15に平行に配置される。伝達ロッド3は、シャンク軸15を中心とする直円筒面16(図2参照)の円周上に複数配置される。伝達ロッド3は、円周上に等間隔に配置されてよい。伝達ロッド3は例えば5~7本配置される。伝達ロッド3はハウジング1に固定される。伝達ロッド3は、ガイド穴51a、および受容部41aを貫通する。
膨出部34の外表面は凸状の球面である。膨出部34の中心は、シャンク軸15に垂直で、かつ傾動シャフト4の傾動中心25を通る平面上に配置される。膨出部34は、受容部41aに若干量の遊びをもって配置される。
【0017】
リカバリーロッド5は、ステム52、第1フランジ部51及びガイド穴51aを有する。第1フランジ部51はシャンク軸15を中心とする円板である。リカバリーロッド5は凸部56、当接部54及びブッシュ55を有しても良い。凸部56は円筒状であり、第1フランジ部51の先端部に配置される。凹部51bは、凸部56の先端部のシャンク軸15上に配置される。当接部54は凹部51bに装着される。当接部54の先端面54aは、シャンク軸15に垂直な平面である。先端面54aは、第1フランジ部51の外周部よりも先端側に突出しても、基端側に窪んでも、同一面でも良い。
ステム52は円筒状であり、小径部13a内に配置される。ステム52は、小径部13a又はブッシュ53に摺動自在に支持されている。
ガイド穴51aは伝達ロッド3と同数配置される。ガイド穴51aは円筒穴であり、第1フランジ部51に配置される。ガイド穴51aは、シャンク軸15と平行に延びて、直円筒面16の円周上に配置される。ブッシュ55はガイド穴51aの内径に配置される。
伝達ロッド3はガイド穴51aを貫通する。軸部33はガイド穴51a又はブッシュ55に摺動する。
リカバリーロッド5はステム52が小径部13aにガイドされ、ガイド穴51aが軸部33にガイドされて上下方向に往復できる。
【0018】
ばね6は、例えばコイルばね、皿ばねである。ばね6は、リカバリーロッド5を先端方向に付勢する。ばね6はリカバリーロッド5と調整ねじ61に支持される。調整ねじ61は、ばね6の初期長さを調整する。
【0019】
傾動シャフト4は、ロッド部42、第2フランジ部41及び一組の受容部41aを含む。傾動シャフト4は傾動軸43に沿って延びる。傾動軸43は傾動中心25を通る。傾動シャフト4は、球面ブッシュ24を介して座面14に支持される。
ロッド部42は中空円筒状である。ロッド部42は第2フランジ部41の先端側に配置され、ハウジング1の下方に延びる。第2フランジ部41は傾動軸43を中心とする円板である。受容部41aは第2フランジ部41に配置される。
受容部41aは第2フランジ部41を上下方向に貫通する穴である。図2に示すように、受容部41aは傾動軸43を中心とする直円筒面44上に、均等に配置される。直円筒面44は直円筒面16と同径である。受容部41aは伝達ロッド3と同数配置される。受容部41aは、当接面41bを有する。当接面41bは、受容部41aの、刃物101の回転方向側の壁面である。当接面41bは傾動軸43を含む平面(例えば平面102)の一部を構成する。当接面41bは伝達ロッド3の位置に対応して配置される。例えば、伝達ロッド3が円周上に均等に配置されたときは、当接面41bも円周上に均等に配置される。傾動軸43の軸方向から見て、受容部41aは例えば矩形である。傾動シャフト4が傾動したときに、受容部41aは、伝達ロッド3が当接面41b以外に接触しない大きさを持つ。
【0020】
図1及び図5に示すように、ホルダ7はロッド部42の径方向内側に配置される。ホルダ7は、傾動軸43の軸方向への移動が抑制されて、傾動軸43を中心に旋回角78(図4参照)だけ回転できるように支持される。
バリ取り工具100は、ボール保持穴42a、環状溝71及びボール72を含んで良い。
ボール保持穴42aはロッド部42に配置される。ボール保持穴42aは、半径方向に延びて円周上に等間隔に複数(図5では2個)形成される。
環状溝71は、略半円の縦断面を持ち、ホルダ7の円周方向に延びる。環状溝71は全周にわたって配置されて良い。
ボール72はボール保持穴42aと環状溝71の間に保持され、環状溝71を転動する。
なお、ボール保持穴42aは半径方向に延びてロッド部42を貫通して良い。この場合、ボール保持穴42aの径方向外側に保持筒73が配置される。保持筒73は、中空円筒状をなし、ボール保持穴42aの外側に配置される。ボール72は保持筒73によって保持される。
【0021】
図1及び図4に示すように、ホルダ7は、保持穴74及び旋回穴77を有し、中空円筒状である。
保持穴74は、傾動軸43に沿って延びる円筒穴である。保持穴74はホルダ7を貫通する。
旋回穴77は傾動軸43に垂直な平面に沿って延びる。図4を参照して、旋回穴77は傾動軸43を中心として扇状に広がる。旋回穴77の広がる中心角が旋回角78である。旋回穴77の上下方向の幅はカムピン84の直径よりも大きい。旋回角78は、回転角φ以上である。
ホルダ7はコレット75を有して良い。コレット75は保持穴74の先端部に装着される。コレット75は刃物101を保持する。例えば保持穴74は雌ねじ74aを有し、コレット75は、その外周部に雄ねじ75aを持つ。コレット75は雌ねじ74aにねじ締結される。
【0022】
図6に示すように、プランジャ8は砲弾状をなし、筒部82、頂部81及びカム溝85を持つ。プランジャ8は、保持穴74の内部に配置される。
筒部82は傾動軸43を中心とする円筒である。筒部82は中空で良い。筒部82は保持穴74と摺動する。
頂部81は筒部82の基端側に突出して配置される。頂部81は半球状である。頂部81は当接部54に当接する。頂部81の中心は傾動軸43上に配置される。
【0023】
カム溝85はらせん溝である。カム溝85は傾動軸43に直交する方向にプランジャ8を貫通する。カム溝85は筒部82の円筒面82aに開口85aを持つ。開口85aは円筒面82aに沿ってらせんを描くように構成される。開口85aは刃物101の回転方向に沿って回るにつれて先端方向に向かう。例えば、刃物101が基端方向から見て時計回りに回転するときは、開口85aは右上がりのらせんである。カム溝85は、図7に示すように、次式を満たす。
L=φDtanA
ここで、
A:らせん溝のリード角
φ:回転角(rad)
D:プランジャ(カム溝の部分)の径
L:プランジャの移動ストローク
【0024】
例えば、リード角Aは15°~20°で、回転角φは60°~120°である。カム溝85の幅は、カムピン84の直径に実質的に等しい。
【0025】
プランジャ8が基端方向の端部にあるときに、頂部81の頂点86は傾動中心25の近傍に位置する。
【0026】
回り止め機構87は、ホルダ7に対するプランジャ8の回転を制限する。回り止め機構87は、例えば保持穴79と、長穴83と、回り止めピン76とを有する。
図1及び図3に示すように、保持穴79はホルダ7に配置される。保持穴79は傾動軸43に直交して延びて、ホルダ7を貫通する。保持穴79の内径は回り止めピン76と実質的に同一である。
長穴83はプランジャ8に配置される。長穴83は、傾動軸43に直交する方向に筒部82を貫通する。長穴83は傾動軸43に沿って延びる。長穴83の上下方向の長さは、プランジャ8の移動ストロークLと実質的に同じである。
回り止めピン76は保持穴79に支持される。回り止めピン76はホルダ7の径方向に延びてホルダ7に配置される。回り止めピン76は長穴83を貫通する。回り止めピン76は長穴83と摺動する。
プランジャ8は、ホルダ7に対して、回転が制限され、軸方向に移動できる。
【0027】
図4に示すように、カムピン84は径方向に延びて、ロッド部42に配置される。カムピン84はロッド部42に固定されてよい。カムピン84は旋回穴77及びカム溝85を貫通する。カムピン84は旋回穴77及びカム溝85と摺動する。
【0028】
本実施形態のバリ取り工具100の動作について説明する。
シャンク11が工作機械の主軸(不図示)に装着される。ハウジング1は主軸と共に回転する。ハウジング1の回転は、伝達ロッド3を介して傾動シャフト4に伝達する。刃物101、ホルダ7および傾動シャフト4が一体となって回転する。
【0029】
図1に示すように、刃物101がワーク103(図8参照)に接触していないときは、ばね6の弾性力によって第1フランジ部51が第2フランジ部41に当接し、第2フランジ部41を付勢する。傾動軸43とシャンク軸15が一致した状態に保持される。
【0030】
工作機械はバリ取り工具100を回転しながら、移動させる。刃物101がワーク103に接触する。すると、刃物101は切削抵抗を受けて、ホルダ7は傾動シャフト4に対して、バリ取り工具100の回転方向と逆方向に回転する。図8~10に示すように、回転直動変換機構9によって、プランジャ8は基端方向へ移動する。プランジャ8がリカバリーロッド5を基端方向に押し上げる。第1フランジ部51は第2フランジ部41と離間する。頂部81は、傾動軸43がシャンク軸15に一致する状態において傾動軸43上で当接部54と当接する。傾動シャフト4は傾動できる状態となる。
ホルダ7が傾動シャフト4に対して回転角φだけ回転すると、プランジャ8は基端方向端まで移動する。頂部81と当接部54との接触位置は傾動中心25の近傍となる。
【0031】
主軸の移動に伴って、刃物101はワーク103の稜線に沿って移動しながらワーク103を削る。このとき、ばね6の弾性力によってリカバリーロッド5は、プランジャ8、カムピン84を介して傾動シャフト4を先端方向に付勢する。球面ブッシュ24は座面14と摺動して支持された状態を保ち、傾動シャフト4は傾動中心25を中心に傾動できる(図11参照)。
【0032】
再び刃物101がワーク103から離間すると、刃物101は切削抵抗を受けない。そしてばね6の弾性力によってリカバリーロッド5がプランジャ8を先端方向に押し下げる。リカバリーロッド5はブッシュ53にステム52が、軸部33にガイド穴51aがガイドされてスムーズに移動する。プランジャ8が先端方向に移動するにつれて、ホルダ7は傾動シャフト4に対して、刃物101の回転方向に回転する。第1フランジ部51は第2フランジ部41に当接する。傾動軸43はリカバリーロッド5の先端方向への移動と共にシャンク軸15に対する傾斜を小さくする。リカバリーロッド5とプランジャ8が先端方向の端まで到達する。傾動軸43はシャンク軸15と一致する。
【0033】
なお、本発明は前述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。前記実施形態は、好適な例を示したものであるが、当業者ならば、本明細書に開示の内容から、各種の代替例、修正例、変形例あるいは改良例を実現することができ、これらは添付の特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0034】
1 ハウジング
11 シャンク
13 機構室
14 座面
15 シャンク軸
24 球面ブッシュ
25 傾動中心
3 伝達ロッド
34 膨出部
4 傾動シャフト
41 第2フランジ部
41a 受容部
41b 当接面
43 傾動軸
5 リカバリーロッド
51 第1フランジ部
51a ガイド穴
6 ばね(弾性部材)
61 調整ねじ
7 ホルダ
71 環状溝
72 ボール
76 回り止めピン(回り止め機構)
8 プランジャ
81 頂部
83 長穴(回り止め機構)
84 カムピン(回転直動変換機構)
85 カム溝(回転直動変換機構)
87 回り止め機構
9 回転直動変換機構
100 バリ取り工具
101 刃物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11