(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-27
(45)【発行日】2022-05-11
(54)【発明の名称】電線付き端子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01R 4/18 20060101AFI20220428BHJP
H01R 43/048 20060101ALI20220428BHJP
【FI】
H01R4/18 A
H01R43/048 Z
(21)【出願番号】P 2019156241
(22)【出願日】2019-08-29
【審査請求日】2021-04-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】上原 建彦
【審査官】高橋 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-170603(JP,A)
【文献】特開2010-055874(JP,A)
【文献】特開2018-063869(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/18
H01R 43/048-43/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の素線からなる導体と前記導体を被覆する絶縁被覆部とを有する電線と、
前記電線を接続する端子とを備え、
前記端子は、前記絶縁被覆部を加締め圧着する絶縁被覆圧着部と、前記絶縁被覆部が除去されて外部に露出された前記導体を加締め圧着する導体圧着部と、前記絶縁被覆圧着部と前記導体圧着部の間に設けられ、前記絶縁被覆部と外部に露出された前記導体に跨って加締め圧着し、水が内部に浸入する隙間のない状態とされた中間圧着部とを有
し、
前記中間圧着部は、前記絶縁被覆部を加締める箇所では、前記絶縁被覆部の全周に亘って隙間なく密着し、前記導体を加締める箇所では、前記導体の全周に亘って隙間なく密着し、且つ、前記素線と前記素線の間に隙間のない状態とする、電線付き端子。
【請求項2】
複数の素線からなる導体と前記導体を被覆する絶縁被覆部とを有する電線と、
前記電線を接続し、絶縁被覆圧着部、導体圧着部、及び、前記絶縁被覆圧着部と前記導体圧着部の間に設けられた中間圧着部を有する端子とを備え、
前記電線の前記絶縁被覆部を絶縁被覆圧着部で加締め圧着する加締め加工と、前記電線の前記絶縁被覆部が除去されて外部に
露出された前記導体を導体圧着部で加締め圧着する加締め加工と、前記絶縁被覆部と外部に露出された前記導体とに跨った箇所を水が内部に浸入する隙間のない状態に中間圧着部で加締め圧着する加締め加工とを同時に行う電線付き端子の製造方法
であって、
前記中間圧着部は、前記絶縁被覆部を加締める箇所では、前記絶縁被覆部の全周に亘って隙間なく密着し、前記導体を加締める箇所では、前記導体の全周に亘って隙間なく密着し、且つ、前記素線と前記素線の間に隙間のない状態とする、電線付き端子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線付き端子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば車両のエンジンルーム内に使用されるアース端子及びこれに接続される電線は、被水することが想定される。電線内に隙間があると、水の自重、毛細管現象、電線の両端間の気圧変化等によって水が電線内を通って他端側にまで浸入し、電線の他端側の電気機器(例えばコネクタ)が被水するおそれがある。このような電線内を通る水(油等の流体を含む)による被水を防止する必要がある。
【0003】
従来例の電線付き端子は、電線と、電線が接続された端子と、熱収縮チューブと、止水剤(例えばホットメルト接着剤)とを備えている。
【0004】
電線は、端部の絶縁被覆部が剥ぎ取られ、導体が外部に露出されている。端子は、電線接続部を有する。電線接続部は、電線絶縁被覆部が加締め圧着する絶縁被覆圧着部と、絶縁被覆部から露出した導体を加締め圧着する導体圧着部とを有する。絶縁被覆圧着部と導体圧着部の外周を止水剤が覆っている。止水剤の外側を熱収縮チューブが覆っている。
【0005】
この従来例によれば、導体の外周が全て止水剤によって覆われるため、電線内への水、油等の液体の浸入を防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記従来例によれば、熱収縮チューブを取り付けたり、加熱したりする必要があるため、加工時間が長い。又、止水剤を塗布した熱収縮チューブを使用するため、部品点数が多いという問題点がある。
【0008】
本発明は、このような従来技術が有する課題に鑑みてなされたものである。そして本発明の目的は、加工時間の短縮、部品点数の削減を図ることができる電線付き端子及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様に係る電線付き端子は、複数の素線からなる導体と前記導体を被覆する絶縁被覆部とを有する電線と、前記電線を接続する端子とを備え、前記端子は、前記絶縁被覆部を加締め圧着する絶縁被覆圧着部と、前記絶縁被覆部が除去されて外部に露出された前記導体を加締め圧着する導体圧着部と、前記絶縁被覆圧着部と前記導体圧着部の間に設けられ、前記絶縁被覆部と外部に露出された前記導体に跨って加締め圧着し、水が内部に浸入する隙間のない状態とされた中間圧着部とを有する。
【0010】
中間圧着部は、前記絶縁被覆部を加締める箇所では、前記絶縁被覆部の全周に亘って隙間なく密着し、前記導体を加締める箇所では、前記導体の全周に亘って隙間なく密着し、且つ、前記素線と前記素線の間に隙間のない状態とすることが好ましい。
【0011】
本発明の第2の態様に係る電線付き端子の製造方法は、複数の素線からなる導体と前記導体を被覆する絶縁被覆部とを有する電線と、前記電線を接続し、絶縁被覆圧着部、導体圧着部、及び、前記絶縁被覆圧着部と前記導体圧着部の間に設けられた中間圧着部を有する端子とを備え、前記電線の前記絶縁被覆部を絶縁被覆圧着部で加締め圧着する加締め加工と、前記電線の前記絶縁被覆部が除去されて外部にされた前記導体を導体圧着部で加締め圧着する加締め加工と、前記絶縁被覆部と外部に露出された前記導体とに跨った箇所を水が内部に浸入する隙間のない状態に中間圧着部で加締め圧着する加締め加工とを同時に行う。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、加工時間の短縮、部品点数の削減を図ることができる電線付き端子 及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】(a)は本実施形態に係る電線付き端子の加締め加工前の斜視図、(b)は本実施形態に係る電線付き端子の加締め加工後の斜視図である。
【
図2】本実施形態に係る電線付き端子の平面図である。
【
図3】本実施形態に係る電線付き端子の側面図である。
【
図4】(a)は
図3のIV-IV線断面図、(b)は中間圧着部がなくて加締め圧着されない場合の
図3のIV-IV線に相当する断面図である。
【
図5】(a)は
図3のV-V線断面図、(b)は中間圧着部がなくて加締め圧着されない場合の
図3のV-V線に相当する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を用いて本実施形態に係る電線付き端子を詳細に説明する。なお、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率と異なる場合がある。
【0015】
本実施形態に係る電線付き端子1は、
図1に示すように、電線Wと、電線Wが接続された端子2とを備えている。
図1(a)は、電線付き端子1の加締め圧着加工前を示す。
図1(b)は、電線付き端子1の加締め圧着後を示す。
【0016】
電線Wは、多数の素線aが撚り合わされた導体w1と、導体w1を被覆する絶縁被覆部w2とを有する。電線Wは、端部の絶縁被覆部w2が剥ぎ取られ、導体w1が外部に露出されている。導体w1は、銅材、又は、アルミニューム材、又は、それ以外の導電材である。
【0017】
端子2は、アース用の端子である。端子2は、導電性金属材の母材をプレス加工で所定形状に打ち抜き、この所定形状の導電性金属材を折り曲げ加工することによって形成されている。端子2は、相手端子接続部(図示せず)と、相手端子接続部(図示せず)に一体に設けられた電線接続部5とを有する。相手端子接続部(図示せず)は、相手端子(図示せず)に接続される。
【0018】
電線接続部5は、絶縁被覆圧着部6と、導体圧着部7と、絶縁被覆圧着部6と導体圧着部7の間に設けられた中間圧着部8とを有する。絶縁被覆圧着部6、導体圧着部7及び中間圧着部8は、円弧状の底面壁9と、底面壁9の両端より延設された一対の加締め片6a,7a,8aを有する。
【0019】
絶縁被覆圧着部6には、電線Wの絶縁被覆部w2の箇所が加締め圧着されている。導体圧着部7には、絶縁被覆部w2から露出した導体w1の箇所が加締め圧着されている。中間圧着部8には、絶縁被覆部w2と外部に露出された導体w1に跨って(亘って)加締め圧着されている。中間圧着部8は、中間圧着部8内の電線W内に水が浸入する隙間のない状態とされている。
【0020】
詳細には、中間圧着部8は、
図4(a)に示すように、絶縁被覆部w2を加締める箇所では、絶縁被覆部w2の全周に亘って密着している。これにより、中間圧着部8の内面と絶縁被覆部w2の外面との間には隙間がなく、これらの間に水等が浸入しない。
【0021】
中間圧着部8は、
図5(a)に示すように、導体w1を加締める箇所では、導体w1の全周に亘って隙間なく密着し、且つ、素線aと素線aの間が密着して隙間のない状態となっている。これにより、中間圧着部8の内面と導体w1の外周との間、及び、素線a同士(素線aと素線a)の間には隙間がなく、これらの間に水等が浸入しない。
【0022】
図4(b)及び
図5(b)は、中間圧着部8が存在しない場合の断面図である。中間圧着部8がない比較例では、導体w1の素線aと素線aの間と、絶縁被覆部w2の内面と導体w1の間に隙間が存在し、この隙間より毛細管現象等によって電線Wの内部に水等が浸入する。本実施形態ではこのような隙間が存在しないために水等が電線W内を通って他端側に浸入するのを防止できる。
【0023】
次に、本実施形態に係る電線付き端子1の製造方法を説明する。電線Wの端部の絶縁被覆部w2を皮むきし、導体w1を外部に露出する。端子2の絶縁被覆圧着部6の底面壁9上に電線Wの絶縁被覆部w2の箇所を、導体圧着部7の底面壁9上に導体w1の箇所を、中間圧着部8の底面壁9上に絶縁被覆部w2と導体w1が跨る箇所をそれぞれ配置する。
【0024】
そして、電線Wの絶縁被覆部w2を絶縁被覆圧着部6で加締圧着する加締め加工と、電線Wの絶縁被覆部w2が除去されて外部にされた導体w1を導体圧着部7で加締圧着する加締め加工を行う。絶縁被覆圧着部6の加締め加工と導体圧着部7の加締め加工と同時に、絶縁被覆部w2と外部に露出された導体w1とに跨った箇所を中間圧着部8で加締め圧着する加締め加工も行う。中間圧着部8は、上記したように、水が内部に浸入する隙間のない状態にする圧縮率で圧縮する。つまり、3か所の加締め加工を同時に行う。
【0025】
以上説明したように、本実施形態に係る電線付き端子1は、複数の素線aからなる導体w1と導体w1を被覆する絶縁被覆部w2とを有する電線Wと、電線Wを接続する端子2とを備えている。そして、端子2は、絶縁被覆部w2を加締め圧着する絶縁被覆圧着部6と、外部に露出された導体w1を加締め圧着する導体圧着部7と、絶縁被覆部w2と導体w1に亘って加締め圧着する中間圧着部8とを有する。中間圧着部8は、水が内部に浸入する隙間のない状態とされたよう圧着する。従って、従来例のように、熱収縮チューブを取り付けたり、加熱したりする必要がなく、加締め圧着工程のみで止水できるため、加工時間が短くて済む。又、従来例のように、止水剤を塗布した熱収縮チューブを使用しないため、部品点数の削減できる。
【0026】
中間圧着部8は、絶縁被覆部w2を加締める箇所では、絶縁被覆部w2の全周に亘って隙間なく密着し、導体w1を加締める箇所では、導体w1の全周に亘って隙間なく密着し、且つ、素線aと素線aの間に隙間のない状態とされる。従って、このように絶縁被覆部w2の内部には隙間が存在しないために、水等が電線W内を通って他端側に浸入するのを確実に防止できる。
【0027】
この実施形態では、中間圧着部8は、絶縁被覆部w2を加締める箇所では、絶縁被覆部w2の全周に亘って隙間なく密着し、導体w1を加締める箇所では、導体w1の全周に亘って隙間なく密着し、且つ、素線aと素線aの間に隙間のない状態とされる。しかし、水等の浸入しない程度の小さな隙間であれば、隙間が存在しても良い。
【0028】
この実施形態では、端子2は、アース端子であるが、アース用の端子以外に適用しても良い。
【0029】
以上、本実施形態を説明したが、本実施形態はこれらに限定されるものではなく、本実施形態の要旨の範囲内で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0030】
1 電線付き端子
2 端子
6 絶縁被覆圧着部
7 導体圧着部
8 中間圧着部
W 電線
w1 導体
w2 絶縁被覆部
a 素線