(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-27
(45)【発行日】2022-05-12
(54)【発明の名称】全熱交換器エレメント、そのようなエレメントを含む全熱交換器、およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
F28F 3/00 20060101AFI20220428BHJP
B32B 38/18 20060101ALI20220428BHJP
B32B 27/12 20060101ALI20220428BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20220428BHJP
B29C 51/14 20060101ALI20220428BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20220428BHJP
C08J 7/04 20200101ALI20220428BHJP
F28F 21/06 20060101ALI20220428BHJP
F28F 3/08 20060101ALI20220428BHJP
F28F 3/06 20060101ALI20220428BHJP
【FI】
F28F3/00 301Z
B32B38/18 Z
B32B27/12
B32B27/00 103
B29C51/14
C08J5/18
C08J7/04 Z
F28F21/06
F28F3/08 301Z
F28F3/06 A
(21)【出願番号】P 2019503947
(86)(22)【出願日】2017-07-24
(86)【国際出願番号】 IB2017054466
(87)【国際公開番号】W WO2018020392
(87)【国際公開日】2018-02-01
【審査請求日】2020-04-30
(32)【優先日】2016-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514212744
【氏名又は名称】ツェンダー グループ インターナショナル アーゲー
(73)【特許権者】
【識別番号】506148279
【氏名又は名称】シンパテックス テクノロジース ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Sympatex Technologies GmbH
【住所又は居所原語表記】Feringastrasse 7A,D-85774 Unterfoehring,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】特許業務法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヒルシュ,クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ブラント,ステファン
(72)【発明者】
【氏名】ビア,クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】マイアースホーファー,マーチン
【審査官】長尾 裕貴
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/011543(WO,A1)
【文献】特開2006-150323(JP,A)
【文献】国際公開第2015/006856(WO,A1)
【文献】特開平08-254400(JP,A)
【文献】特開2005-282904(JP,A)
【文献】特開2007-255755(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 3/00
B32B 38/18
B32B 27/12
B32B 27/00
B29C 51/14
C08J 5/18
C08J 7/04
F28F 21/06
F28F 3/08
F28F 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
全熱交換器エレメント(E、E’、PF、PL)の製造方法であって、
a)通気性シートエレメント(1)を用意する工程と、
b)前記シートエレメント(1)の少なくとも片面(1a、1b)を水蒸気透過特性を有するポリマー薄膜(3、4)で積層し、積層シートエレメント(1)を形成する工程と、
c)前記積層シートエレメント(1)を三次元波形パターン(5、5、…)を示す所望の形状に成形する工程とを含み、
前記波形パターンを示す前記積層シートエレメントは、パラレルフロー領域又はカウンターフロー領域を形成し、
前記波形パターンを示す前記積層シートエレメントには、前記パラレルフロー領域又はカウンターフロー領域の上流の第1クロスフロー領域と、前記パラレルフロー領域又はカウンターフロー領域の下流の第2クロスフロー領域と、が設けられ、
前記第1クロスフロー領域
及び前記第2クロスフロー領域
のそれぞれが複数の空気案内壁を有する、方法。
【請求項2】
前記
通気性シートエレメント(1)のシート材料がポリマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記
通気性シートエレメント(1)が布である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記布の繊維(6)のうち少なくとも50重量%の割合が多成分繊維である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記
積層シートエレメント(1)を形成する工程が、前記ポリマー薄膜(3、4)を前記
通気性シートエレメント(1)への結合、溶接、および接着のうちの少なくとも1つを含む、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記
通気性シートエレメント(1)の少なくとも片面(1a、1b)上の前記少なくとも1つのポリマー薄膜(3、4)が空気不透過性ポリマーフィルムである、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリマー薄膜(3、4)が、異なるポリマータイプの一連のポリマー層を含む多層フィルムである、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
各ポリマー層の前記ポリマータイプが、ポリエーテルエステル、ポリエーテルアミドおよびポリエーテルウレタンからなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記多層フィルムの総厚が5μm~200μmの間である、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記多層フィルム内の各個々のポリマー層の厚さが1μm~20μmの間である、請求項7~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
成形工程c)が熱成形工程である、請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
製造される前記全熱交換器エレメント(E、E’)の前記所定の波形パターンを画定または共画定する第1の波形成形を有する少なくとも第1の成形部品が、前記熱成形工程c)に提供され使用される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
製造される前記全熱交換器エレメント(E、E’)の前記所定の波形パターンを共画定する前記第1の波形構造と相補的な第2の波形構造を有する第2の成形部品が、熱成形工程c)で提供され使用される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ノズルが、熱成形工程c)に提供され使用される加圧空気源に接続されている、請求項10~13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記ノズルは、前記第1の成形部品および/または前記第2の成形部品に隣接して設けられる、請求項
13に記載の方法。
【請求項16】
前記積層シートエレメント(1)の成形工程c)の前に、前記積層シートエレメント(1)を成形温度より低い予熱温度に予熱する、請求項2~15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
予熱が、成形工程c)の成形温度より5K~30K低い予熱温度まで行われる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
予熱が、成形工程c)の成形温度より10K~20K低い予熱温度まで行われる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記積層シートエレメントが、その厚さ全体にわたって均一な予熱温度に予熱される、請求項16~18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記積層シートエレメントは、その表面に第1のポリマー材料および多成分繊維内部に第2のポリマー材料を有し、前記第1のポリマー材料は前記第2ポリマー材料よりも低い軟化点または融点を有する、前記多成分繊維を含む、請求項16~19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
少なくとも前記多成分繊維が極性官能基を有するポリマー材料を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記多成分繊維の表面の前記第1のポリマー材料のみが極性官能基を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記積層シートエレメントの前記予熱温度が、それらの表面における前記多成分繊維の前記第1のポリマー材料の融点または軟化点と、前記多成分繊維内の前記第2のポリマー材料の融点または軟化点との間の温度である、請求項20~22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
前記積層シートエレメントの前記予熱温度が、それらの表面における前記多成分繊維の前記第1のポリマー材料の融点と、前記多成分繊維内の前記第2のポリマー材料の融点との間の温度である、請求項20~22のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
全熱交換器の製造方法であって、
請求項1の全熱交換器エレメントの製造方法に記載された工程a)、b)およびc)を含み、さらに、
d)三次元波形パターンを示す複数の積層成形されたシートエレメントを製造するために工程a)、b)およびc)を繰り返す工程と、
e)前記複数の積層成形されたシートエレメントを積み重ねる工程と、
f)積み重ねられた積層成形されたシートエレメントを互いに固定する工程と、を含む方法。
【請求項26】
a1)第1の通気性シートエレメントを用意する工程と、
b1)前記第1の通気性シートエレメントの少なくとも片面を水蒸気透過特性を有するポリマー薄膜で積層し、第1の積層シートエレメントを形成する工程と、
c1)前記第1の積層シートエレメントを第1の三次元波形パターンを示す第1の所望の形状に成形する工程と、
d1)工程a1)、b1)およびc1)を繰り返して、第1の三次元波形パターンを示す複数の積層成形された第1タイプのシートエレメントを製造する工程と、
a2)第2の通気性シートエレメントを用意する工程と、
b2)前記第2の通気性シートエレメントの少なくとも片面を水蒸気透過特性を有するポリマー薄膜で積層し、第2の積層シートエレメントを形成する工程と、
c2)前記第2の積層シートエレメントを第2の三次元波形パターンを示す第2の所望の形状に成形する工程と、
d2)工程a2)、b2)およびc2)を繰り返して、第2の三次元波形パターンを示す複数の積層成形された第2タイプのシートエレメントを製造する工程と、
e)前記複数の積層成形された第1タイプのシートエレメントと第2タイプのシートエレメントを積み重ねて、第1タイプのシートエレメントと第2タイプのシートエレメントを互い違いにしたスタックを得る工程と、
f)前記積み重ねられた積層成形されたシートエレメントを互いに固定する工程と、を含む請求項25に記載の方法。
【請求項27】
全熱交換器であって、
少なくとも3つのシート状又はプレート状の全熱交換器エレメント(E、E’、PR、PF)を有し、
前記少なくとも3つの全熱交換器エレメントは、それぞれの三次元波形パターン(5、5、...)
が平行配向で互いに積み重ねられ、流体
が流れることを可能にす
るパラレルフロー路を形成し、
各全熱交換器エレメントは、所定の三次元波形パターン(5、5、…)を備えた通気性シートエレメント(1)を含み、第1のポリマー薄膜(3)が前記シートエレメント(1)の第1の側(1a)に積層され、および/または第2のポリマー薄膜(4)が前記シートエレメント(1)の第2の側(1b)に積層され、1つまたは両方のポリマー薄膜(3、4)が選択的水蒸気透過のための特性を有しており、
各全熱交換器エレメントは、パラレルフロー領域又はカウンターフロー領域と、前記パラレルフロー領域又はカウンターフロー領域の上流の第1クロスフロー領域と、前記パラレルフロー領域又はカウンターフロー領域の下流の第2クロスフロー領域と、をさらに有し、
前記少なくとも3つの全熱交換器エレメントは、右手側全熱交換器シートエレメントが左手側全熱交換器シートエレメントと互い違いに積み重ねられるようにして、積層されている、全熱交換器。
【請求項28】
前記第1のポリマー薄膜(3)と前記第2のポリマー薄膜(4)は互いに同一である、請求項27に記載の全熱交換器。
【請求項29】
前記第1のポリマー薄膜(3)と前記第2のポリマー薄膜(4)は互いに異なる、請求項27に記載の全熱交換器。
【請求項30】
前記全熱交換器エレメント(E、E’、PR、PF)内の前記波形パターン(5、5、…)の波形(5)によって成形された各ダクトの長さに沿って中間に位置するオフセット(17)を含む、請求項27~29のいずれかに記載の全熱交換器。
【請求項31】
前記全熱交換器エレメント(E、E’、PR、PF)内の前記波形パターン(5、5、…)の波形(5)によって成形された各ダクトの長さに沿って互いに対して離間した第1のオフセット(171)および第2のオフセット(172)を含む、請求項27~29のいずれかに記載の全熱交換器。
【請求項32】
各オフセット(17;171、172)が、前記波形パターン(5、5、…)の長手方向に延びる波形(5)内の湾曲した長手方向部分または円弧状の長手方向部分として成形される、請求項30または31に記載の全熱交換器。
【請求項33】
前記少なくとも3つのシート状またはプレート状の全熱交換器エレメント(E1、E2、E3;E1’、E2’、E3’)は、ピンチ溶接、レーザー溶接または超音波溶接によって、または接着によって、それぞれの三次元波形パターン(5、5、...)
が平行配向で互いに積み重ねられ固定され、流体
が流れることを可能にす
るパラレルフロー路を形成する、請求項27に記載の全熱交換器。
【請求項34】
前記布が不織布である、請求項3に記載の方法。
【請求項35】
前記多成分繊維が二成分繊維である、請求項4に記載の方法。
【請求項36】
前記結合が熱結合である、請求項5に記載の方法。
【請求項37】
前記多層フィルムの総厚が10μm~150μmの間である、請求項7または8に記載の方法。
【請求項38】
前記多層フィルム内の各個々のポリマー層の厚さが4μm~20μmの間である、請求項7~9のいずれかに記載の方法。
【請求項39】
前記多層フィルム内の各個々のポリマー層の厚さが4μm~15μmの間である、請求項7~9のいずれかに記載の方法。
【請求項40】
成形工程c)が真空成形工程またはプリーツ加工工程である、請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全熱交換器エレメントおよびそのようなエレメントを含む全熱交換器に関する。さらに、本発明は、そのような全熱交換器エレメントおよび全熱交換器を製造する方法を開示する。
【0002】
異なる目的のために異なる種類の熱交換器を使用することはよく知られている。通常、熱交換器は、ある流体または媒体から別の流体または媒体に熱エネルギーを回収するために使用される。この種の熱エネルギーは顕在エネルギーと呼ばれる。1つの流体、通常は空気の熱エネルギーまたは顕在エネルギーは、流体がより低い温度にある最初のものに隣接して、例えばパラレルフロー、カウンターフローまたはクロスフローで流れる別のものに回収される。流体の流れを逆にすることによって、両者の間の交換はより低温の流体を生成するだろう。顕在エネルギー回収に使用される熱交換器は、通常、金属またはポリマーエレメントでできている。クロスフロー、パラレルフローまたはカウンターフロー構成があり得るので、異なる種類がある。エレメントは、流体がエレメント間を流れることができるようにそれら自体の間に流路を画定している。そのような装置は、例えば住宅用および商業用換気(HRV)において使用される。
【0003】
別の種類のエネルギー交換器は、空気中の水分を含むいわゆる潜在エネルギーを指す。潜在エネルギーを交換するために、乾燥剤を含浸させたセルロースまたはポリマーから製造された乾燥剤被覆金属またはポリマー基材または膜を使用することが知られている。セルロースまたはポリマーから製造されたプレートの間に、流体がプレートの表面に沿って通過することを可能にするように空気通路が画定または形成され、それによって一方の流体から他方の流体に水分を移動させる。膜は通常構造強度を持たないので、膜をフレームまたはグリッドと組み合わせることによって膜間の間隔を画定することが知られている。
【0004】
上記の組み合わせ、すなわち熱交換および水分交換の場合、エネルギー交換器は全熱交換器と呼ばれる。これらの全熱交換器は、顕在エネルギーと潜在エネルギーの交換を可能にし、結果として総エネルギー回収をもたらす。
【0005】
現在入手可能な膜材料はロールによって配送される。膜材料は、全熱交換器の最も重要な部分である。膜は、一種のグリッドまたはフレームに固定およびシールされ、流体が各膜層間を流れることを可能にするように配置されなければならない。したがって、既知の技術の全熱交換器が妥協案であることは明らかである。現在使用されている膜の選択的範囲および特性の結果として、それらは通常、顕在エネルギー交換を失い、潜在エネルギー交換を獲得する。
【0006】
それぞれのエレメントから構築されたそのような全熱交換器は、例えばWO02/072242A1である。グリッド上には、繊維製のそれぞれの膜が配置されている。すなわちスペーサと膜とが交互に並ぶような、隣接する膜の間に膜またはスペーサを含むグリッドは、ステープル留めされるかまたは積み重ねられ、それによって異なる空気流の方向を作り出すためにプレートの方向を変える。
【0007】
上述した技術水準に鑑みて、本発明の目的は、全熱交換器エレメントおよび全熱交換器、ならびに各全熱交換器エレメントにおける顕在エネルギー交換と潜在エネルギー交換の両方の効率が増加し、全熱交換器エレメントおよびそのようなエレメントから作られた全熱交換器の製造コストが減少する全熱交換器の作製を可能にする製造方法を提供することである。
【0008】
本発明の他の目的は、水蒸気に対して高い比交換面積を有する全熱交換器エレメントおよび全熱交換器、ならびにそれらの製造方法を提供することである。
【0009】
この目的を達成するために、本発明は以下の工程を含む全熱交換器エレメントの製造方法を提供する。
a)通気性シートエレメントを用意する。
b)シートエレメントの少なくとも片面を水蒸気透過特性を有するポリマー薄膜で積層する。
c)積層シートエレメントを三次元波形パターンを示す所望の形状に成形する。
【0010】
その結果、エレメントの一方の側からエレメントの他方の側へエレメントのほぼ全域にわたって、エレメントを横切って熱と蒸気の形で水分子との両方を移動させることができる、全熱交換器エレメントが得られる。これは今や先行技術におけるそのようなエレメントよりも高い比交換面積を有する。対照的に、二酸化炭素および臭気関連分子のような水分子よりも大きい分子またはより少ない極性の分子は、エレメントを横切るのを妨げられる。さらに、シートエレメントおよびシートエレメントの少なくとも片面に積層された選択的水蒸気透過性バリア材料は、1つの成形工程のみを用いて所望の波形形状に成形される(「1段階成形)。かくして、本発明による全熱交換器エレメントにおいては、一方では全(すなわち、顕在プラス潜在)エネルギー移動効率が増大し、他方で製造コストが減少する。
【0011】
あるいは、この方法における工程b)およびc)の順序は入れ替えてもよい。すなわち(まだ積層されていない)シートエレメントを三次元波形パターンを示す所望の形状に成形し、次いで成形シートの少なくとも片面を水蒸気透過特性を有するポリマー薄膜で積層する。(「2段階成形」)。
【0012】
特に、全熱交換器エレメントを製造する方法は、積層工程b)の後に切断工程を含み得る。好ましくは、工程a)およびb)の間に、典型的にはローラーから巻き出すことによって提供される空気透過性ウェブ材料と、典型的にはフィルム押出しによって提供されるポリマー薄膜とを、水蒸気透過特性を有する連続気密性のポリマー薄膜で積層された連続通気性支持層を含む連続気密性ウェブを用意するために、積層工程b)において熱融着によっておよび/または接着剤によって結合する。
【0013】
積層工程b)の後に切断工程が続く。
【0014】
第1の変形において、切断工程は、積層工程b)と成形工程c)との間の追加の中間工程であり得る。好ましくは、連続積層ウェブを最初に切断して、水蒸気透過特性を有する連続気密性のポリマー薄膜で積層された通気性支持層を含む別々の積層シートエレメントにする。次に、各積層シートエレメントを三次元波形パターンを示す所望の形状に成形する。言い換えれば、連続積層ウェブは、最初に切断工具を含む切断ステーションを通って供給され、次いで成形工具を含む成形ステーションを通って供給される。
【0015】
第2の変形では、切断工程は成形工程c)内の追加工程、すなわち成形工程の一部であり得る。好ましくは、連続積層ウェブは、同時に切断され、水蒸気透過特性を有する連続気密性のポリマー薄膜で積層され、三次元波形パターンを示す所望の形状を有する通気性支持層を含む別々の積層シートエレメントに成形される。言い換えれば、連続積層ウェブは、切断工具と成形工具とを含む切断兼成形ステーションを通って供給される。好ましくは、切断工具と成形工具とは互いに関連付けられ、好ましくは互いに結合される。それらは互いに強固に結合されていても、互いに弾性的に結合されていてもよい。第1の代替案として、切断工具と成形工具は、結合された切断と成形の工程の間に、成形工具が積層ウェブと係合する前に切断工具が積層ウェブと係合するような位置関係を有してもよい。第2の代案案として、切断工具と成形工具は、結合された切断と成形の工程の間に、成形工具が積層ウェブと係合すると同時に切断工具が積層ウェブと係合するような位置関係を有してもよい。第3の代案として、切断工具と成形工具は、結合された切断と成形の工程の間に、成形工具が積層ウェブに係合した後に切断工具が積層ウェブに係合するような位置関係を有してもよい。
【0016】
水蒸気透過特性とは、少なくとも500g/m2/24時間、好ましくは少なくとも1000g/m2/24時間、さらにより好ましくは少なくとも1500g/m2/24時間、最も好ましくは少なくとも2000g/m2/24時間の水蒸気透過速度を意味する。修正ASTM E 96~66Bによる直立カップ法を用いて測定;変更点:Twater=30℃、Tair=21℃、相対湿度=60%、空気流=2m/s。
【0017】
積層シートエレメントを三次元波形パターンを示す所望の形状に成形する工程c)は、第1工程c1)および第2工程c2)を含み得る。
【0018】
工程c1)は、第1の方向に延在し比較的微細な構造を有する波形を有する第1の波形パターンまたは補強波形パターンを成形することを含む。第1の波形パターンは、正弦状、矩形状または三角形状の周期的プロファイルを有することができる。好ましくは、第1の波形パターンのこの第1の周期的プロファイルは0.5mmから2mmの周期と0.5mmから1mmの振幅を有する。第1の波形パターンは隣接する隆起部を含み得る。隣接する隆起部間に間隔があってもよい。すなわち、隣接する隆起部間の積層または未積層シートエレメントの空間は実質的に平坦な領域であり、隣接隆起部はシートエレメントから同じ方向または反対方向に突出してもよい。これらの個々に配置された隆起部の高さまたは深さならびに幅は、0.2mmから1mmであり得る。隆起間隔は、隆起幅の1~10倍であり得る。
この任意の第1工程c1)は、全熱交換器エレメントの全体的な剛性に寄与する。
【0019】
工程c2)は、第2の方向に延在し、熱交換器プレートチャネル断面形状を画定する比較的粗い構造を有する第2の波形パターンまたは主波形パターンを成形することを含む。やはり、第2の波形パターンは、正弦状、矩形状または三角形状の周期的プロファイルを有することができるが、第1の波形パターンよりも大きい寸法を有する。好ましくは、第2の波形パターンのこの第2の周期的プロファイルは、2mmから10mmの周期および2mmから10mmの振幅を有する。
結果として、任意の第1工程c1)および必要な第2工程c2)は、二重波形および強化された剛性を有する全熱交換器エレメントを提供する。
【0020】
第1の方向、すなわち第1の波形パターンの隆起部の方向は、第2の方向、すなわち第2の波形パターンの隆起部の方向に対してある角度、好ましくは45°~90°、より好ましくは85°~90°、最も好ましくは約90°の角度を形成する。
【0021】
シートエレメントのシート材料はポリマー、好ましくは熱可塑性ポリマーを含み得る。従って、シートエレメントは、例えば成形工程c)における熱処理に適している。好ましくは、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのビスコースまたはポリエステル、またはコポリエステルが熱可塑性ポリマーとして選択される。好ましくは、シート材料のポリマーは可塑剤を全く含まない。シート材料のポリマーは殺生物剤(殺菌剤および/または防カビ剤)を含み得る。
【0022】
好ましい実施形態では、シートエレメントは布地、好ましくは不織布である。布は、熱可塑性繊維のみ、または熱可塑性繊維と熱硬化性繊維との組み合わせ、または熱可塑性繊維と樹脂との組み合わせ、または熱可塑性繊維と無機繊維との組み合わせを含み得る。最も好ましくは、布は、標準の熱硬化性および/または熱可塑性繊維と共に多成分または二成分繊維を含む。好ましくは、布は50重量%を超える多成分または二成分繊維を含み、多成分または二成分繊維のみを含み得る。さらに、布は、それぞれ機械的強度および高い毛管作用(「湿度伝導率」)と共に高い熱伝導率を提供する金属繊維および/または芯繊維を含んでもよい。無機繊維は、ガラス繊維、炭化ケイ素繊維または任意の鉱物繊維であり得る。
【0023】
あるいは、シートエレメントは、好ましくは異方性構造およびそれから生じる異方性特性を有する織布である。例えば、織布は、第1の繊維方向に厚いポリマー繊維を有し、第2の繊維方向に薄いポリマー繊維を有していてもよい。第2の繊維方向は、第1の繊維方向に対して90°~100°、好ましくは約90°であり得る。第1の繊維方向のポリマー繊維が厚いため、異方性織布は、薄いポリマー繊維の第2の繊維方向に沿った場合よりも機械的に弱められることなく(または損傷を受けることもなく)第1の繊維方向に沿ったより大きな伸張に耐えることができる。
【0024】
あるいは、シートエレメントは、異方性構造およびそれから生じる異方性特性を有し得る不織布、および好ましくは異方性構造およびそれから生じる異方性特性を有する織布を含んでもよい。
【0025】
シートエレメントは、さらなる強度を提供するための追加の強化繊維を含み得る。これらの強化繊維は、金属繊維、炭素繊維または熱可塑性ポリマー繊維のうちの少なくとも1つであり得る。強化繊維は、シートエレメント内で第1の一般的な方向に延びてもよい。好ましくは、強化繊維は非直線状である。特に、それらは、好ましくは1mmから3mmの周期および1mmから3mmの振幅を有する、例えば三角形状または正弦状のフラットパターンを有する波状パターンを有してもよい。あるいは、それらは、好ましくは1mm未満のらせん直径を有する、例えばらせん形状などのカーリー形状を有してもよい。
【0026】
強化繊維は、連続繊維または最小長さ5mmの短繊維であり得る。金属繊維は、10μm~200μm、好ましくは20μm~100μmの直径を有するアルミニウム、銅、銀または鋼繊維から選択されてもよい。
【0027】
好ましくは、波状パターンの第1の一般的な方向および/または強化繊維のカーリー形状は、熱交換器プレートチャネル断面形状を画定する第2の波形パターンの方向に対してある角度を形成する。好ましくは、それらは互いに対して45°~90°の角度、より好ましくは85°~90°の角度、最も好ましくは約90°の角度を形成する。
【0028】
工程c)の間、または特に工程c1)およびc2)の間、しかし主として工程c2)の間に、非直線状強化繊維は真っ直ぐにされる。特に、波状パターンおよび/またはカーリー形状は引き伸ばされてプロファイルが平らになる。すなわち、波状パターンの振幅が減少し、その周期が増加する、および/またはカーリー/らせん形状の直径が減少し、その周期(またはピッチ)が増加する。非直線状の炭素繊維および/または金属繊維が完全に真っ直ぐにされると、シートエレメントは第1の一般的な方向に沿ってそれ以上伸びることが防止される。
【0029】
加えて、シートエレメントが、工程c)の前または間に、または特に工程c1)および/またはc2)の前または間に、熱可塑性ポリマー繊維の軟化温度を超えて加熱された場合には、熱可塑性繊維は、局所的な延伸および/または屈曲を経ることによって変形される。成形工程c)または成形工程c1)およびc2)の後に、熱可塑性ポリマー繊維の永久変形は、全熱交換器エレメントの寸法安定性、即ち形状保持に寄与する。
【0030】
好ましくは、炭素繊維がシートエレメント内に含まれる場合、それらは第2の(主)波形パターンの第2の方向に沿って延びる。したがって、成形工程c)中または成形サブ工程c2)中に、炭素繊維はいかなる屈曲も受けない。しかしながら、それらは成形工程c)またはc2)の前後のシートエレメントの全体的な強度に寄与する。
【0031】
好ましくは、金属繊維がシートエレメント内に含まれる場合、それらはシートエレメント内の任意の方向に沿って延びることができる。したがって、成形工程c)中または成形サブ工程c2)中に、たとえシートエレメントが熱可塑性ポリマー繊維の軟化温度を超えて加熱されたとしても、金属繊維は金属の冷間変形条件下で屈曲される。成形工程c)または成形工程c1)およびc2)後、金属繊維の永久変形は全熱交換器エレメントの寸法安定性、即ち形状保持に寄与する。
【0032】
好ましくは、布の繊維は、1μm~40μmの間、より好ましくは3μm~40μmの間、最も好ましくは5μm~20μmの間の繊維直径を有する。結果として、積層工程b)において布が水蒸気透過特性を有するポリマー薄膜と積層されるとき、ポリマー薄膜と直接接触する布繊維は、ポリマー薄膜の表面のごく一部のみを覆うことになり、これにより、ポリマー薄膜のいかなるブロッキングも最小限に抑えることができる。さらに、熱可塑性ポリマー繊維または金属繊維について上述したように永久的に変形していなくても、工程c)の間に弾性屈曲を受けるいかなる布繊維も高度の柔軟性を有し、それは成形工程c)をより実施しやすくする。
【0033】
好ましくは、シートエレメント内の繊維または布フィラメント、特にシートエレメントの非積層表面にあるものは、1~10dtex(1tex=1g/1000m;1dtex=1g/10000m)の線質量密度(フィラメント重量)を有することができる。このような微細繊維は、それらをアロイ化して湿気をより速く輸送する強力な吸湿効果を示す。さらに、1つのシート表面または両方のシート表面で使用されるとき、それらはより滑らかでよりざらつきの少ない表面を提供する。第1に、これは、それぞれの表面に積層された非常に薄い隣接する機能性膜層への損傷の危険性を減らすのに役立つ。第2に、これは、積層されていないシート表面に空気境界層が形成されるのを防止するのに役立つ。
【0034】
布の繊維は、実質的に円形、三角形または楕円形の断面を有することができる。また、布の繊維は、X型または星形の断面を有してもよい。布は、好ましくは言及した種類の断面から選択される、異なる断面を有する繊維を含み得る。
【0035】
また、布は、成形工程の後に構造的安定性を向上させるために、表面含浸、好ましくは熱可塑性または熱硬化性ポリマーを含むことができる。加えてまたは代替として、布は、成形工程c)の後、架橋することができる表面含浸剤、好ましくは成形工程c)の後、UV照射によって硬化させることができる樹脂を含むことができる。
【0036】
布または全熱交換器エレメントは、その一方の面に疎水化処理された層を、そして他方の面にポリマー薄膜、すなわち単一の撥水剤含浸を含んでもよい。
【0037】
これは、工程b)において布の片面のみに水蒸気透過特性を有するポリマー薄膜で積層し、積層工程b)の前、最中または後に布の他方の面に疎水化処理を施すことによって達成することができる。疎水化処理は、成形工程c)の後でも実施することができる。
【0038】
好ましくは、布の疎水化処理は積層工程b)の前に行われる。すなわち、提供工程a)の前、最中または後である。これは、水蒸気透過特性を有するポリマー薄膜がその布に面する表面上で偶然に疎水性にされるのを防止する。
【0039】
布または全熱交換器エレメントは、その両側に疎水化処理された層と、布または全熱交換器エレメントの第1の疎水化処理された層および第2の疎水化処理された層の間に、「平行に」延びるポリマー薄膜、すなわち二重撥水剤含浸を含み得る。
【0040】
これは以下の工程で達成できる。
【0041】
第1に、積層工程b)の前、最中または後に、第1の布の片面または第1の布全体に疎水化処理を施すこと。
【0042】
第2に、積層工程b)の前、最中または後に、第2の布の片面または第2の布全体に疎水化処理を施すこと。
【0043】
第3に、第1の布の片面と水蒸気透過特性を有するポリマー薄膜の第1の面とを積層すること。
【0044】
第4に、第2の布の片面と水蒸気透過特性を有するポリマー薄膜の第2の面と積層することにより、第1の布と第2の布との間に挟まれたポリマー薄膜を有するサンドイッチ構造を作り出すこと。
【0045】
最後に、工程c)に従って、第1の布/薄膜/第2の布型サンドイッチ構造を有するこの積層シートエレメントは、三次元波形パターンを示す所望の形状に成形される。
【0046】
好ましくは、工程3および4は同時に実施される、すなわち、第1の布および第2の布を、水蒸気透過特性を有する1つのポリマー薄膜と共積層または1工程積層して、2枚の布シートの間に挟まれたポリマー薄膜を有するサンドイッチ構造を作り出す。
【0047】
好ましくは、第1の布および/または第2の布の疎水化処理は、積層工程b)の前、すなわち布提供工程a)の前、最中または後に行われる。これも、水蒸気透過特性を有する任意のポリマー薄膜が、布、すなわち第1の布または第2の布に面するその表面上で誤って疎水性にされることを防止する。
【0048】
代わりに、第1の布および/または第2の布の疎水化処理は、成形工程c)の後に行われてもよい。
【0049】
シートエレメントは、前の段落で述べた繊維の任意の組み合わせを含む一層の布から構成されていてもよい。あるいは、シートエレメントは、互いに付着し、それぞれが前の段落で述べた繊維の組み合わせの異なる1つを含む、布のいくつかの、好ましくは2つまたは3つの積み重ねられた層から構成されてもよい。
【0050】
布のいくつかの積み重ねられた層は、異なるフィラメント重量を有してもよい。それらは、例えば1~10dtexの比較的細いフィラメントを有する第1の層、および10から40dtexの比較的粗いフィラメントを有する第2の層を含んでもよい。
【0051】
好ましくは、より粗いまたはより重いフィラメントを有する第2の層は、ポリマー薄膜(膜)に取り付けられ、シートエレメント表面とそれに取り付けられたポリマー薄膜との間に小さな直接接触領域を提供し、したがってポリマー薄膜の活性膜表面領域を増加させる。好ましくは、より重いフィラメントの少なくとも一部は二成分繊維であり、ポリマー薄膜をより少ない接着剤でまたは全く接着剤なしでシートエレメント表面に付着させることができる。
【0052】
あるいは、フィラメントの種類によっては、より細いフィラメントを有する第1の層をポリマー薄膜(膜)と接触させて付着させ、シートエレメント/ポリマー薄膜の界面に滑らかな表面を作り出し、波形パターンを成形する成形工程c)中または第2の波形パターンを成形する成形サブ工程c2)中または最終使用中にポリマーフィルムを損傷しないことは有利であり得る。
【0053】
シートエレメント内のその位置に関係なく、より重いまたはより太いフィラメントを有する第2の層は、有孔で空気および蒸気の透過性が高いシートエレメントの層を提供するであろう。
【0054】
さらに、シートエレメントは、シートエレメントを通る湿気の輸送を促進するために強い吸湿性を有する細いフィラメントまたは繊維を含むことができる。好ましくは、細いフィラメントまたは繊維は、DIN53924に従って測定したとき、30秒後に少なくとも30~60mmの上昇高さ、より好ましくは30秒後に少なくとも40~60mmの上昇高さを示す。
【0055】
工程c)または工程c2)で、上部プリーツ加工工具の支持を得て真空成形により成形が行われる場合、シートエレメントは、その厚さに渡って非対称構造を有していてもよい。特に、それは、真空側に比較的微細なフィラメントを有する層を有し、金型形状の良好な複製を提供し、比較的粗いフィラメントが上部プリーツ加工工具に面し、シートエレメントに必要な構造強度を提供する。
【0056】
シートエレメントは、互いに付着した不織布層と織布層とを含むことができる。好ましくは、織布は、上述のように、異方性構造およびそれから生じる異方性の機械的特性を有する。
【0057】
シートエレメント内の繊維の一部、好ましくは5~60重量%は、中空繊維であり得る。シートエレメント内の繊維の一部、好ましくは20~70重量%は二成分繊維であり得る。これらの二成分繊維は、円形および/または非円形の断面を有していてもよい。
【0058】
シートエレメント内の繊維の一部、好ましくは5~60重量%は、水分の輸送を増加させるために強い吸湿性を示す親水性繊維であり得る。好ましくは、そのような吸湿繊維はそれらの表面上で親水性でありそしてそれらの中心で疎水性である。
【0059】
シートエレメント内の繊維の一部、好ましくは5~30重量%は、過剰な湿気のための水緩衝剤を作るために吸水性繊維、好ましくはハイドロポリマーであり得る。
【0060】
シートエレメントは、テクスチャ表面および/または統合グリッド構造を有することができる。結果として、このタイプのシートエレメントは、シートエレメントに取り付けられた隣接するポリマー薄膜の最小表面積を覆うであろう。統合グリッド構造は、第1の成形工程c1)で成形された上述の第1の波形パターンまたは補強波形パターンであり得る。
【0061】
シートエレメントの構造強度を増大させるための上述の手段に加えてまたはその代わりとして、
1)水流交絡および/またはスパンレース。および/または
2)表面テクスチャ処理。および/または
3)グリッド構造と第2の波形パターンまたは主波形パターンの幾何学形状に適合したパターンとの統合は、その後の積層の前に未積層シートエレメントに適用することができる。
【0062】
シートエレメントの構造強度および成形性を増加させるための上述の手段に加えて、またはその代わりとして、シートエレメントは、シートエレメントのより高い全体強度および/またはシートエレメントの好ましい方向におけるより高い強度を提供する異方性繊維分布で作られてもよい。特に、上述のように、異方性繊維分布は、シートエレメントのいくつかの層のうちの少なくとも1つに含まれる炭素繊維、金属繊維または熱可塑性ポリマー繊維のうちの少なくとも1つによって提供され得る。
【0063】
好ましくは、金属繊維および/または熱可塑性ポリマー繊維は、第2の(主)波形パターンの第2の方向に関して直交に近い関係で配向されているか、またはシートエレメント内のどの方向に沿って延びてもよい。好ましくは、炭素繊維は、第2の(主)波形パターンの第2の方向と平行に配向している。
【0064】
積層工程b)は、ポリマー薄膜のシートエレメントへの結合、好ましくは熱結合、溶接および/または接着を含み得る。好ましくは、ポリマーフィルムとシートエレメントとの間の結合には、熱可塑性接着剤(ホットメルト接着剤)、熱硬化性接着剤またはUV硬化性接着剤を使用する。
【0065】
好ましい実施形態では、ポリマー薄膜はモノリシック膜、すなわち個々の水分子に対して溶液拡散輸送機構を示す無孔質膜である。好ましくは、このモノリシック膜は、100%~300%の間、より好ましくは150%~200%の間の最大伸びを有する。
【0066】
さらに好ましい実施形態では、ポリマー薄膜は、異なるポリマータイプの一連のポリマー層を含む多層フィルムである。したがって、いくつかの所与のポリマータイプと共に、異なる水蒸気透過性のポリマー薄膜を、設計および製造することができる。
【0067】
好ましくは、各ポリマー層のポリマータイプは、ポリエーテルエステル、ポリエーテルアミドおよびポリエーテルウレタンからなる群から選択される。
【0068】
好ましくは、ポリマー多層フィルムの総厚は、5μm~200μmの間、より好ましくは10μm~150μmの間である。
【0069】
薄いポリマー多層フィルム内の各個々のポリマー層の厚さは、1μm~20μmの間、好ましくは4μm~20μmの間、最も好ましくは4μm~15μmの間であり得る。
【0070】
一般に、ポリマーフィルムまたはポリマー層は、高い輸送速度のためにできるだけ薄くあるべきである。本発明による全熱交換器エレメントの構成において、水蒸気の輸送のための制限層は、1つのポリマー積層体の隣または2つのポリマー積層体の間に配置された三次元シートエレメントである。一方では積層の機械的強度および堅牢性を、他方では高い輸送速度を達成するために、1μm~20μmの間、好ましくは4μm~20μmの間、最も好ましくは4μm~15μmの間のポリマーフィルム(積層)の厚さで設定が選択される。以下、また、三次元シートエレメントは可能な限り薄くそして可能な限り透過性である。好ましくは、シートエレメントは、200μm~600μm、好ましくは300μm~500μmの厚さを有する布である。好ましくは、シートエレメントは、布体積の10%~65%、好ましくは布体積の20%~50%の繊維体積部分を有する布である。
【0071】
好ましくは、ポリマー薄膜の熱可塑性ポリマーは可塑剤を含まない。代わりに、ポリマー薄膜は殺生物剤(殺菌剤および/または防カビ剤)を含んでもよい。殺生物剤は、ポリマー上のバクテリアや真菌の増殖を防止するのを助け、そしてそれ故に洗浄することなくより長い操作期間を達成するだろう。
【0072】
熱可塑性ポリマーに関して上述したように、成形工程c)はプリーツ加工工程または熱成形工程、好ましくは真空成形工程であり得る。製造される全熱交換器エレメントの所定の波形パターンを共画定する第1の波形成形部を有する少なくとも第1の成形部品(例えば下側工具)が熱成形工程において提供される。少なくとも第1の成形部品に加えて、第1の波形成形部と相補的な第2の波形成形部を有する第2の成形部品(例えば上側工具)、および/または製造される全熱交換器エレメントの所定の波形パターンを共画定する成形真空が、熱成形工程において提供される。
【0073】
好ましくは、第1の成形部品の特定の所定の成形温度で、または第1および第2の成形部品の特定の所定の成形温度での積層シートエレメントの実際の成形作業より前に、積層シートエレメントは、成形温度より数度低い予熱温度まで、好ましくはその成形温度以下5K~30Kの予熱温度まで、より好ましくはその成形温度以下10K~20Kに予熱される。プリーツ加工のため、積層シートの予熱温度は低くてもよい。好ましくは、プリーツ加工のため、予熱温度は、積層シートの成形温度より10K~40K低く、より好ましくは、15K~30K低い。
【0074】
好ましくは、成形工程の前に、積層シートをその厚さ全体にわたって均一な予熱温度に予熱する。これにより、すべてのポリマー繊維をそれらの軟化温度または溶融温度近くまで加熱することが可能になる。好ましくは、積層シートの内側布は、その表面に第1のポリマー材料および多成分繊維内部に第2のポリマー材料を有し、第1のポリマー材料は第2のポリマー材料よりも低い軟化点または融点を有する、多成分繊維を含む。好ましくは、多成分繊維は二成分繊維である。
【0075】
好ましくは、少なくとも多成分繊維は極性官能基を有するポリマー材料を含む。より好ましくは、多成分繊維の表面の少なくとも第1のポリマー材料は極性官能基を含む。あるいは、多成分繊維の表面の第1のポリマー材料のみが極性官能基を含む。
【0076】
好ましくは、多成分繊維が積層シートに含まれるとき、積層シートの予熱温度は、それらの表面における多成分繊維の第1のポリマー材料の融点または軟化点と、多成分繊維内の第2のポリマー材料の融点または軟化点との間の温度である。
【0077】
あるいは、多成分繊維が積層シートに含まれる場合、積層シートの予熱温度は、それらの表面における多成分繊維の第1のポリマー材料の融点と多成分繊維内の第2のポリマー材料の融点との間の温度である。
【0078】
好ましくは、成形温度は、内部加熱された第1および/または第2の成形部品によって提供される。
【0079】
好ましくは、予熱温度は、まだ成形されていない積層シートを電磁放射(例えば赤外線またはマイクロ波周波数)および/または機械的波(例えば超音波周波数)にさらすことによって提供される。
【0080】
本発明はまた、好ましくは、第1のポリマー薄膜がシートエレメントの第1の面に積層され、および/または第2のポリマー薄膜がシートエレメントの第2の面に積層され、両方のポリマー薄膜は水蒸気透過特性を有する、シートエレメントおよび所定の波形パターンを含む、前段落に規定した方法を使用して製造される、全熱交換器エレメントも提供する。
【0081】
第1のポリマー薄膜と第2のポリマー薄膜とは同一であってもよい。シートエレメントの両面を積層すると、優れた衛生特性を有する全熱交換器エレメントが得られる。シートエレメントの片面のみが積層されている場合、シート材料の熱可塑性ポリマーは好ましくは疎水化処理されているおよび/または殺生物剤(殺菌剤および/または防カビ剤)を含み、また優れた衛生特性を有する全熱交換器エレメントが得られる。
【0082】
第1のポリマー薄膜と第2のポリマー薄膜とは異なっていてもよい。これにより、全熱交換器エレメントの熱および水分移動特性を調整および最適化するためのさらなる自由度がもたらされる。
【0083】
最後に、本発明は、前段落のいずれかで定義された少なくとも3つのシート状またはプレート状の全熱交換器エレメントを有し、それらはそれぞれの波形パターンが直交または平行配向で互いに積み重ねられ固定され、流体がそこを通って流れることを可能にする直交またはパラレルフロー路を形成する、全熱交換器を提供する。個々の全熱交換器エレメントは、互いに固定され、好ましくはピンチ溶接またはレーザー溶接を使用した溶接および/または好ましくはエポキシを使用した接着によってシールされてもよい。
【0084】
この目的を達成するために、本発明は以下の工程を含む全熱交換器の製造方法を提供する。
a)通気性シートエレメントを用意する。
b)シートエレメントの少なくとも片面を水蒸気透過特性を有するポリマー薄膜で積層する。
c)積層シートエレメントを三次元波形パターンを示す所望の形状に成形する。
d)三次元波形パターンを示す複数の積層成形されたシートエレメントを製造するために工程a)、b)およびc)を繰り返す。
e)複数の積層成形されたシートエレメントを積み重ねる。
f)積み重ねられた積層成形されたシートエレメントを互いに固定する。
【0085】
第1の変形では、積層成形されたシートエレメントは、スタック内の隣接エレメントの波形パターンが互いに平行になるように積み重ねられる。その結果、カウンターフロー全熱交換器が得られる。
【0086】
第1の変形では、積層成形されたシートエレメントは、スタック内の隣接するエレメントの波形パターンが互いに直交するように積み重ねられる。その結果、クロスフロー全熱交換器が得られる。
【0087】
好ましくは、この方法は以下の工程を含む。
【0088】
a1)第1の通気性シートエレメントを用意する。
【0089】
b1)第1のシートエレメントの少なくとも片面を水蒸気透過特性を有するポリマー薄膜で積層する。
【0090】
c1)第1の積層シートエレメントを第1の三次元波形パターンを示す第1の所望の形状に成形する。
【0091】
d1)工程a1)、b1)およびc1)を繰り返して、第1の三次元波形パターンを示す複数の積層成形された第1タイプのシートエレメントを製造する。
【0092】
a2)第2の通気性シートエレメントを用意する。
b2)第2のシートエレメントの少なくとも片面を水蒸気透過特性を有するポリマー薄膜で積層する。
c2)第2の積層シートエレメントを第2の三次元波形パターンを示す第2の所望の形状に成形する。
【0093】
d2)工程a2)、b2)およびc2)を繰り返して、第2の三次元波形パターンを示す複数の積層成形された第2タイプのシートエレメントを製造する。
【0094】
e)複数の積層成形された第1タイプのシートエレメントと第2タイプのシートエレメントを積み重ねて、第1タイプのシートエレメントと第2タイプのシートエレメントを互い違いにしたスタックを得る。
【0095】
f)積み重ねられた積層成形されたシートエレメントを互いに固定する。
【0096】
好ましくは、第1タイプのシートエレメントは第1の形状を有し、第2タイプのシートエレメントは第1の形状と相補的な第2の形状を有する。特に、第1タイプのシートエレメントは右手側シートエレメントであり、第2タイプのシートエレメントは左手側シートエレメントである。
【図面の簡単な説明】
【0097】
以下の説明では、本発明の2つの非限定的な実施形態が、図面を参照しながら以下にさらに詳細に記載される。
【0098】
【
図1】
図1は、本発明による全熱交換器エレメントを製造する方法の概略図である。
【0099】
【
図2】
図2は、本発明による全熱交換器、または本発明による複数の全熱交換器エレメントを含むその一部の概略図である。
【0100】
【
図3】
図3は、本発明による全熱交換器エレメントを製造するための方法の間に製造された中間製品の一部の断面図のSEM(走査型電子顕微鏡)顕微鏡写真である。
【0101】
【
図4】
図4は、本発明による方法によって製造された全熱交換器エレメントの一部分の断面図のSEM顕微鏡写真である。
【0102】
【
図5】
図5は、本発明による全熱交換器エレメントを製造するための方法の間に製造された中間製品のより小さな部分の拡大断面図を示す、
図3のものと同様のSEM顕微鏡写真である。
【0103】
【
図6】
図6は、本発明による方法によって製造された全熱交換器エレメントのより大きな部分のより小さなスケールの断面図を示す、
図4のものと同様のSEM顕微鏡写真である。
【0104】
【
図7】
図7は、本発明による第1実施形態の右手側全熱交換器シートエレメントを示す概略斜視図である。
【0105】
【
図8】
図8は、本発明にようる第1実施形態の右手側全熱交換器シートエレメントを示す概略平面図である。
【0106】
【
図9】
図9は、本発明による第2実施形態の左手側全熱交換器シートエレメントを示す概略斜視図である。
【0107】
【
図10】
図10は、本発明による第2実施形態の左手側全熱交換器シートエレメントを示す概略平面図である。
【0108】
【
図11】
図11は、本発明による第2実施形態の右手側全熱交換器シートエレメントを示す概略斜視図である。
【0109】
【
図12】
図12は、本発明による第2実施形態の右手側全熱交換器シートエレメントを示す概略平面図である。
【0110】
【
図13】
図13は、一方が他方の上に積み重ねられた一対の全熱交換器シートエレメントを示す概略平面図であり、一方は
図10に示すような左手側全熱交換器シートエレメントであり、他方は
図12に示すような右手側全熱交換器シートエレメントである。
【0111】
図1に、本発明による全熱交換器エレメントを製造する方法の概略図を示す。中間製品の断面図、すなわち工程S1、S2およびS3のそれぞれの結果が示されている。
【0112】
第1の工程S1において、空隙または開口部2を有する通気性シートエレメント1を用意する。
【0113】
第2の工程S2において、シートエレメント1の両面1a、1bは、水蒸気透過特性を有するポリマー薄膜3、4で積層される。
【0114】
第3の工程S3において、積層シートエレメント1は、三次元波形パターン5を示す所望の形状に成形される。
【0115】
シートエレメント2は、熱可塑性繊維のみ、または熱硬化性繊維と熱可塑性繊維との組み合わせを含む不織布である。布は、二成分繊維を標準の熱硬化性および/または熱可塑性繊維と一緒に含んでもよい。
【0116】
ポリマー薄膜3、4は、異なるポリマータイプのポリマー層の配列(図示しない)を含むことができる多層フィルムである。
【0117】
成形工程S3は、熱成形工程、好ましくは真空成形工程である。
製造される全熱交換器エレメントE、E’の所定の波形パターン5を共画定する第1の波形成形部を有する少なくとも第1の成形部品(例えば下側工具、図示せず)が熱成形工程S3において使用される。少なくとも第1の成形部品に加えて、第1の波形成形部に相補的な第2の波形成形部を有する第2の成形部品(例えば上側工具、図示せず)、および/または製造される全熱交換器エレメントE、E’の所定の波形パターンを共画定する成形真空は、熱成形工程S3で使用される。
【0118】
得られた、シートエレメント1の第1の側面1a上に第1のポリマー薄膜3を、およびシートエレメント1の第2の側面1b上に第2のポリマー薄膜4を有する全熱交換器エレメントEは、圧搾部5aと圧搾/延伸部5bとが互い違いになる波形構造体5を備える。圧搾部5aは第1の方向(
図1の水平方向)に延び、圧搾/延伸部5bは第1方向とは異なる第2の方向に延びている。好ましくは、全熱交換器エレメントEの波形パターン5における第1の方向と第2の方向との間の角度αは、90°~120°、好ましくは95°~105°であり、その一例を
図1に示す。あるいは、
図1に示す例とは異なり、全熱交換器エレメントEの波形パターン5における第1の方向と第2の方向との間の角度αは、80°~90°、好ましくは85°~90°である。
【0119】
図2には、本発明による第1タイプの全熱交換器E1-E2-E3または第2タイプの全熱交換器E1’-E2’-E3’の概略図が示されている。第1のタイプE1-E2-E3は、第1のポリマー薄膜3と第2のポリマー薄膜4(
図1)が同じ種類のフィルムである複数の全熱交換器エレメントE1、E2、E3を含む。第2のタイプE1’-E2’-E3’は、第1のポリマー薄膜3と第2のポリマー薄膜4(
図1)が異なる種類のフィルムである複数の全熱交換器エレメントE1’、E2’、E3’を含む。ここで2つのフィルム3、4のうちの1つがゼロ厚さを有する場合、すなわち、全熱交換器エレメントがシートエレメント1の一方の面1aまたは1b上に、ただ1つのポリマー薄膜3または4を有する場合を含む。
【0120】
図2において、全熱交換器E1-E2-E3またはE1’-E2’-E3’のハウジング/パッケージの外壁は、図示されていない。全熱交換器E1-E2-E3またはE1’-E2’-E3’の空気入口/出口部分(図示せず)には、こちらに向かう空気の流れをO記号で示し、向こうに離れる空気の流れをX記号で示すとおり、全熱交換器E1-E2-E3またはE1’-E2’-E3’内の隣接する空気ダクト内の空気の流れ方向が反対方向になるように、空気分配パターンが設けられる。
【0121】
図3は、本発明による方法の工程b)の結果として、その上側1a上を第1のポリマー薄膜3で積層し、その下側1b上を第2のポリマー薄膜4で積層した、通気性シートエレメント1の断面のSEM(走査型電子顕微鏡)顕微鏡写真を示す。
【0122】
積層工程b)は、ポリマー薄膜3、4のシートエレメント1への結合、好ましくは熱結合および/または接着を含み得る。ポリマーフィルム3、4とシートエレメント1との結合には、熱可塑性接着剤(ホットメルト接着剤)を用いることができる。
【0123】
シートエレメント1は、複数の繊維6を含む不織布である。繊維6は、一方では熱可塑性繊維のみ、または熱硬化性繊維および/または鉱物繊維の組み合わせであり得、他方で熱可塑性繊維であり得る。最も好ましくは、布は、標準の熱硬化性および/または熱可塑性繊維と共に多成分または二成分繊維を含む。
図3と
図4とを比較することによって最もよく分かるように、
図3に示す不織布シートエレメント1の繊維6は、
図4に示す全熱交換器エレメントの不織布シートエレメント1の繊維6よりも密度が低い。
【0124】
図4は、本発明による方法の工程c)の結果として、
図3の積層シートエレメント1を三次元波形パターンを示す所望の形状に成形することによって製造された全熱交換器エレメントEの一部の断面のSEM顕微鏡写真を示す。
【0125】
成形工程c)はプリーツ加工工程または熱成形工程、好ましくは真空成形工程であり得る。製造される全熱交換器エレメントE、E’の所定の波形パターンを画定または共画定する第1の波形成形を有する少なくとも第1の成形部品(例えば下側工具、図示せず)が提供され、熱成形工程で使用される。少なくとも第1の成形部品に加えて、第1の波形成形部に相補的な第2の波形成形部を有する第2の成形部品(例えば上側工具、図示せず)、および/または製造される全熱交換器エレメントE、E’の所定の波形パターンを共画定する成形真空は、熱成形工程において提供され得る。
【0126】
第1の成形部品(例えば下側工具)は、真空成形工程のために真空を提供する真空源に空気圧で接続されたノズルまたはスルーホールを含むことができる。
【0127】
成形工程c)で使用される第1の成形部品および/または第2の成形部品に加えて、好ましくは真空成形工程における真空作用を支援するために、加圧空気源に接続されたノズルを設けてもよい。これらのノズルは、第1の成形部品および/または第2の成形部品の近くに、好ましくはそれに隣接して設けることができる。好ましくは、加圧空気源は、加圧空気を加熱するための空気加熱装置を含む。
【0128】
熱成形工程c)における第1の工具と真空源との併用は、好ましくは空気加熱装置と共に、第2の工具および/または加圧空気源によって補充することができる。結果として、これらの補充の少なくともいくつかを使用して、第1のポリマー薄膜3および任意の第2のポリマー薄膜4で積層されたシートエレメント1を第1の成形部品の第1の波形成形部に対してより強く押し付けることができ、したがって製造される全熱交換器エレメントEの所定の波形パターンを画定または共画定する第1の成形部品の第1の波形成形部のより良好なコピーを有する全熱交換器エレメントEが製造される。
【0129】
全熱交換器エレメントEのシートエレメント1は、その繊維6が
図3のシートエレメント1よりもはるかに高密度に充填されている。プリーツ加工または熱成形工程c)の間に、その第1のポリマー薄膜3およびその第2のポリマー薄膜4を有する布シートエレメント1を圧縮および加熱する。プリーツ加工または熱成形工程c)の間に、少なくとも熱可塑性繊維または複数の繊維6のうちの多成分もしくは二成分繊維が、軟化または部分的に溶融される。結果として、熱可塑性繊維または複数の繊維6の多成分もしくは二成分繊維の冷却および硬化の後、その第1のポリマー薄膜3およびその第2のポリマー薄膜4を有する布シートエレメント1は、布シートエレメント1内のよりコンパクトな繊維構造を有し、かつ三次元波形パターンを有する、本発明による全熱交換器エレメントEに変換される。
【0130】
図5は、本発明による方法の工程b)の結果として、その上面1a上を第1のポリマー薄膜3で積層し、その下側1b上を第2のポリマー薄膜4で積層した、通気性布シートエレメント1のより小さい部分の拡大断面図を示す、
図3のものと同様のSEM顕微鏡写真を示す。
【0131】
図6は、本発明による方法によって製造された全熱交換器エレメントEのより大きな部分のより小さなスケールの断面図を示す、
図4のものと同様のSEM顕微鏡写真を示す。
【0132】
図7および
図8は、それぞれが本発明による第1実施形態の右手側全熱交換器シートエレメントPRの概略斜視図および概略平面図である。プレート状全熱交換器エレメントPRは、波形5、パラレルフロー/カウンターフロー領域PF上流の第1クロスフロー領域CF1、およびパラレルフロー/カウンターフロー領域PF下流の第2クロスフロー領域CF2を含む、パラレルフロー/カウンターフロー領域PFを有する。複数のそのような右手側全熱交換器シートエレメントPRは、複数の左手側全熱交換器シートエレメントPL(図示せず)と積み重ねられ、右手側の熱交換器シートエレメントPRと左手側全熱交換器シートエレメントPLを互い違いにした全熱交換器スタックを形成する。
【0133】
平面図において、第1および第2のクロスフロー領域CF1およびCF2は、三角形の輪郭線で区切られ、すなわち三角形の形状を有する。各クロスフロー領域CF1およびCF2は、それぞれ複数の空気案内壁15および16を備える。空気案内壁15は、互いに略平行であり、第1クロスフロー領域CF1の三角形の一辺と略平行である。同様に、空気案内壁16は、互いに略平行であり、第2クロスフロー領域CF2の三角形の一辺と平行である。第1クロスフロー領域CF1の空気案内壁15および第2クロスフロー領域CF2の空気案内壁16はどちらも、パラレルフロー/カウンターフロー領域PFの波形5の方向と約45°の角度βをなす方向に延びる。結果として、右手側全熱交換器シートエレメントPRと左手側全熱交換器シートエレメントPLを互い違いにした全熱交換器スタック内で、右手側と左手側のシートエレメントPRとPLに隣接する空気案内壁15は、互いに対して約90°の角度をなす方向に延び、したがって全熱交換器スタックの第1のクロスフロー領域CF1を画定する。同様に、右手側全熱交換器シートエレメントPRと左手側全熱交換器シートエレメントPLを互い違いにした全熱交換器スタック内で、右手側と左手側のシートエレメントPRとPLに隣接する空気案内壁16は互いに対して約90°の角度をなす方向に延び、したがって全熱交換器スタックの第2のクロスフロー領域CF2を画定する。
【0134】
第1の移行領域18は、第1のクロスフロー領域CF1とパラレルフロー/カウンターフロー領域PFとの間に延びる。第2の移行領域19は、第2のクロスフロー領域CF2とパラレルフロー/カウンターフロー領域PFとの間に延びる。両移行領域18および19は、各閉鎖端ダクトが隣接する開放端ダクトを有するように、波形5の開放端および閉鎖端、ならびに波形によって成形された平行な空気ダクトを備える。各閉鎖端ダクトの端部壁は、壁が平行な空気ダクトの長手方向に対して5°~60°の角度をなすように傾斜している。結果として、右手側全熱交換器シートエレメントPRと左手側全熱交換器シートエレメントPLを互い違いにした全熱交換器スタック内で、空気流に対する抵抗は、全熱交換器スタックの第1の移行領域18および全熱交換器スタックの第2の移行領域19内で最小化される。
【0135】
プレート状全熱交換器エレメントPRは、その外側の輪郭線に沿って複数の工程を有する。
図7および
図8に示す例では、プレート状全熱交換器エレメントPRは、第1の三角クロスフロー領域CF1の角に位置する第1の段部11と、その一方の側のパラレルフロー/カウンターフロー領域PFに沿ってほぼ中間に位置する第2の段部12と、第2の三角クロスフロー領域CF2の角に位置する第3の段差13と、およびその他方の側のパラレルフロー/カウンターフロー領域PFに沿ってほぼ中間に位置する第4の段部14とを有する。その結果、右手側全熱交換器シートエレメントPRと左手側全熱交換器シートエレメントPLを互い違いにした全熱交換器スタック内で、隣接する全熱交換器シートエレメントは、右手側全熱交換器シートエレメントPRの段部11、12、13、14を、隣接する左手側全熱交換器シートエレメントPLの対応する相補的な段部11、12、13、14に嵌合することにより、正しく位置決めすることができる。言い換えれば、右手側シートエレメントPRは「相伴って」行き、積み重ねられたシートエレメントが互いに恒久的に固定される前に、隣接する左手側シートエレメントPLとぴったりと嵌合する。
【0136】
また、プレート状の全熱交換器エレメントPRは、波形5によって形成された各ダクトの長さに沿ってほぼ中間に位置するオフセット17を有する。結果として、右手側全熱交換器シートエレメントPRと左手側全熱交換器シートエレメントPLを互い違いにした全熱交換器スタック内で、隣接する全熱交換器シートエレメントは、正確に位置決めすることができ、スタッキング操作中に互いの中に滑り込むのが防止される。
【0137】
図9および
図10は、それぞれが本発明の第2実施形態の左手側熱交換器シートエレメントPLの概略斜視図および概略平面図である。プレート状全熱交換器エレメントPLは、波形5、パラレルフロー/カウンターフロー領域PF’下流の第1クロスフロー領域CF1’、およびパラレルフロー/カウンターフロー領域PF’上流の第2クロスフロー領域CF2’を含む、パラレルフロー/カウンターフロー領域PF’を有する。
【0138】
図11および
図12は、それぞれ本発明による第2実施形態の右手側全熱交換器シートエレメントPRの概略斜視図および概略平面図である。プレート状全熱交換器エレメントPRは、波形5、パラレルフロー/カウンターフロー領域PF上流の第1クロスフロー領域CF1、およびパラレルフロー/カウンターフロー領域PF下流の第2クロスフロー領域CF2を含む、パラレルフロー/カウンターフロー領域PFを有する。
【0139】
第2実施形態と第1実施形態との違いは、オフセットの種類と数である。それ以外は、第1および第2実施形態の右手側プレート状全熱交換器エレメントPRと左手側プレート状全熱交換器エレメントPLとは同一である。第1および第2実施形態の図面において、両方の実施形態における同一の特徴には同じ参照番号が使用されている。
【0140】
右手側プレート状全熱交換器エレメントPR(
図7および
図8)および左手側プレート状全熱交換器エレメントPL(図示せず)のそれぞれが、プレートエレメントPRおよびPLの波形5によって形成された各ダクトの長さに沿ってほぼ中間に位置する1つのオフセット17を有する第1の実施形態とは異なり、第2の実施形態の右手側プレート状全熱交換器エレメントPR(
図11および
図12)および左手側プレート状全熱交換器エレメントPL(
図9および
図10)のそれぞれは、プレートエレメントPRおよびPFの波形5によって形成された各ダクトの長さに沿って互いに対して離間した第1のオフセット171および第2のオフセット172を有する。再び、結果として、右手側全熱交換器シートエレメントPRと左手側全熱交換器シートエレメントPLを互い違いにした全熱交換器スタック内で、隣接する全熱交換器シートエレメントPRおよびPLは、正確に位置決めすることができ、機械的な力がシートに作用するスタッキング動作中、および/または熱交換器スタックまたはブロック内の隣接するパラレルフロー/カウンターフロー領域PFとPF’で対向する空気流間の圧力差が生じる可能性がある動作中に、互いの中に滑り込むのが防止される。
【0141】
第1のオフセット171および第2のオフセット172はそれぞれ、プレートエレメントPRおよびPFの長手方向に延びる波形5内に湾曲した長手方向部分としてまたは弓形の長手方向部分として成形されている。
図9、
図10、
図11、
図12および
図13に示すように、右手側プレートエレメントPRの第1のオフセット171は、波形5の長手方向に対して第1の横方向に延び、左手側プレートエレメントPLの第1のオフセット171は、波形5の長手方向に対して第1の横方向とは反対の第2の横方向に延びる。同様に、右手側プレートエレメントPRの第2のオフセット172は、波形5の長手方向に対して第1の横方向とは反対の第2の横方向に延び、左手側プレートエレメントPLの第2のオフセット172は、波形5の長手方向に対して第1の横方向に延びる。
【0142】
ここでも、複数のそのような右手側全熱交換器シートエレメントPR(
図11および
図12に示すように)は、複数のそのような左手側全熱交換器シートエレメントPL(
図9および
図10に示すように)と積み重ねられ、右手側全熱交換器シートエレメントPRと左手側全熱交換器シートエレメントPLを互い違いにした全熱交換器スタックを形成する。そのようなスタックにおいて、隣接するシートエレメントPRおよびPLの反対側に横方向に延びる第1のオフセット171は、互いの上に配置される。同様に、隣接するシートエレメントPRおよびPLの反対側に横方向に延びる第2のオフセット172は、互いの上に配置される。結果として、スタック内の全ての隣接する第1のオフセット171および全ての隣接する第2のオフセット172は、スタッキング動作中および/または対向する空気流間の圧力差が生じる可能性がある動作中に隣接するスタックの波形5が互いに滑り込むのを防止する。
【0143】
図13は、一方が他方の上に積み重ねられた一対の全熱交換器シートエレメントを示す概略平面図であり、
図10に示すように、連続線で示されるのは左手側全熱交換器シートエレメントPLであり、
図12に示すように、不連続線で示されるのは右手側全熱交換器シートエレメントPRである。このような左手側全熱交換器シートエレメントPLと右手側全熱交換器シートエレメントPRの対は、互いの上に積み重ねられて完全な全熱交換器スタックまたはブロックを形成する。
【符号の説明】
【0144】
参照番号:
1 布シートエレメント
1a 第1の面
1b 第2の面
2 空隙または開口部
3 第1のポリマー薄膜
4 第2のポリマー薄膜
5 波形
5a 圧搾部
5b 圧搾および/または延伸部
S1 準備工程
S2 積層工程
S3 成形工程(共成形)
O こちらに向かう空気の流れ方向
X 向こうに離れる空気の流れ方向
6 繊維
α 角度(波形パターン)
PR プレート状全熱交換器エレメント、右手側
PL プレート状全熱交換器エレメント、左手側
11 段部
12 段部
13 段部
14 段部
CF1 PRの第1のクロスフロー領域
CF2 PRの第2のクロスフロー領域
PF PRのパラレルフロー/カウンターフロー領域
CF1’PLの第1のクロスフロー領域
CF2’PLの第2のクロスフロー領域
PF’PLのパラレルフロー/カウンターフロー領域
15 空気案内壁(CF1での)
16 空気案内壁(CF2での)
17 オフセット
171 第1のオフセット
172 第2のオフセット
18 第1の移行領域(CF1側)
19 第2の移行領域(CF2側)
β 波形と空気案内壁の方向の間の角度