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▶ ハンツマン ペトロケミカル エルエルシーの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-27
(45)【発行日】2022-05-11
(54)【発明の名称】エポキシ樹脂のための硬化剤
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/50 20060101AFI20220428BHJP
【FI】
C08G59/50
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019525744
(86)(22)【出願日】2018-02-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-02-27
(86)【国際出願番号】 US2018016804
(87)【国際公開番号】W WO2018144975
(87)【国際公開日】2018-08-09
【審査請求日】2020-11-24
(31)【優先権主張番号】62/455,034
(32)【優先日】2017-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505318547
【氏名又は名称】ハンツマン ペトロケミカル エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Huntsman Petrochemical LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】特許業務法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スー,ウェイ-ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ツォウ,フイ
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】特開昭55-056119(JP,A)
【文献】特表2010-534250(JP,A)
【文献】米国特許第04800222(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0195324(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G59/00-59/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)ポリエーテルモノアミン、ポリエーテルジアミン、ポリエーテルトリアミン、多官能価ポリエーテルアミンおよびそれらの混合物:からなる群から選択される、65重量%ないし95重量%のポリエーテルアミン、(ii)第三アミン、並びに(iii)アルカノールアミン:を含む硬化剤であって、
前記第三級アミンは、(a)R 7 、R 8 およびR 9 は独立して、C 1 -C 10 アルキル基であるか、または(b)R 7 およびR 8 はヘテロシクロアルキル残基として結合され、そしてR 9 はC 1 -C 10 アルキル基であるか、または(c)R 7 およびR 8 は独立してC 1 -C 10 アルキル基であり、そしてR 9 はシクロアルキル基である、式NR 7 8 9 を有する化合物であり、前記重量%は前記硬化剤の総重量に基づく、
硬化剤
【請求項2】
前記ポリエーテルアミンは、ポリエーテルジアミンである、請求項1の硬化剤。
【請求項3】
前記ポリエーテルジアミンが、式(3)、(4)または(5):
【化1】
[cは2ないし100の整数であり、
Hは水素であり、Meはメチルであり、そしてEtはエチルである];
【化2】
[Hは水素であり、Meはメチルであり、Etはエチルであり、
は2ないし40の整数であり、そして
dおよびfは独立して、1ないし10の整数である];または
【化3】
[gは2ないし3の整数である]:
を有する、請求項2の硬化剤。
【請求項4】
前記第三アミンは、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ-n-プロピルアミン、トリ-イソ-プロピルアミン、トリ-n-ブチルアミン、ジメチルアミノシクロヘキサンまたはN-メチルモルホリンである、請求項の硬化剤。
【請求項5】
前記アルカノールアミンは、Raは1ないし10個の炭素を有する直線状または分枝状
アルキル基でありそして少なくとも1個の第一ヒドロキシル基を含む、式RaNH2を有する化合物である、請求項1の硬化剤。
【請求項6】
前記アルカノールアミンは、モノエタノールアミンである、請求項の硬化剤。
【請求項7】
前記硬化剤は、重量%は前記硬化剤の総重量に基づいて、(i)65重量%ないし95重量%の前記ポリエーテルアミン、(ii)0.1重量%ないし10重量%の前記第三アミン、および(iii)1重量%ないし25重量%の前記アルカノールアミン:を含む、請求項1の硬化剤。
【請求項8】
前記硬化剤は、(i)70重量%ないし90重量%の前記ポリエーテルアミン、(ii)0.5重量%ないし5重量%の前記第三アミン、および(iii)5重量%ないし20重量%の前記アルカノールアミン:を含む、請求項1の硬化剤。
【請求項9】
(a)エポキシ樹脂、並びに(b)(i)硬化剤の総重量に基づいて60重量%を超える、ポリエーテルモノアミン、ポリエーテルジアミン、ポリエーテルトリアミン,多官能価ポリエーテルアミンおよびそれらの混合物:からなる群から選択されるポリエーテルアミン、(ii)第三アミン、並びに(iii)アルカノールアミン:を含む硬化剤であって、前記第三級アミンは、(a)R 7 、R 8 およびR 9 は独立して、C 1 -C 10 アルキル基であるか、または(b)R 7 およびR 8 はヘテロシクロアルキル残基として結合され、そしてR 9 はC 1 -C 10 アルキル基であるか、または(c)R 7 およびR 8 は独立してC 1 -C 10 アルキル基であり、そしてR 9 はシクロアルキル基である、式NR 7 8 9 を有する化合物である、硬化剤:を含み、そしてコアシェルポリマーを含まない、硬化性組成物。
【請求項10】
前記エポキシ樹脂は、ポリグリシジルエポキシ化合物、非グリシジルエポキシ化合物、エポキシクレゾールノボラック化合物、エポキシフェノールノボラック化合物およびそれらの混合物:の群から選択される、請求項の硬化性組成物。
【請求項11】
前記エポキシ樹脂は、ポリグリシジルエポキシ化合物である、請求項10の硬化性組成物。
【請求項12】
更に添加剤を含む、請求項の硬化性組成物。
【請求項13】
前記硬化性組成物は、2パッケージタイプの組成物である、請求項の硬化性組成物。
【請求項14】
基材に、請求項の硬化性組成物を適用し、そして前記硬化性組成物を硬化して、硬化製品を形成する工程により得られる、硬化製品。
【発明の詳細な説明】
【関連出願に対する相互参照】
【0001】
本願は、2017年2月6日出願の、これにより、その内容全体が参照により本明細書中に明白に引用されたものとされる、米国特許仮出願第62/455,034号明細書に対する優先権を請求する。
【連邦支援研究、開発に関する陳述】
【0002】
適用不可能。
【発明の分野】
【0003】
本開示は概括的に、ポリエーテルアミン、第三アミン(tertiary amine;以下「第三アミン」ということもある)およびアルカノールアミンを含む硬化剤に関する。前記硬化剤は、エポキシ樹脂と混合されて、基材に適用されそして硬化されて、硬化製品を形成する場合がある硬化性組成物を形成する場合がある。
【背景技術】
【0004】
エポキシ樹脂および様々な硬化剤を基剤にする硬化性組成物は、硬化エポキシ樹脂を生産するために該産業において大規模に使用される。硬化剤の典型的な、代表的例は例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、イソホロンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ポリアミド、ジシアンジアミド、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、メチルナド酸無水物、イミダゾールおよび三フッ化ホウ素のアミン錯体がある。
【0005】
ポリエーテルアミンはまた、複合体、一体成形物、接着剤、等のような多くの用途において優れた物理的特性を示す硬化製品を提供するために、エポキシ樹脂の硬化に使用されてきた(例えば、それらが本開示に矛盾しない限り、それぞれが、参照により本明細書に引用されたものとされる、特許文献1、2、3、4、5および6を参照されたい)。しかし、このようなポリエーテルアミンの価格は、前記硬化製品が、一般に必要とされるものよりずっと良好な物理特性を示す幾つかの用途(例えば、床の塗膜)における使用に対して、高過ぎると考えられる場合がある。従って、減少された使用レベルのポリエーテルアミンを有し、それにより原料の価格を低下させるが、しかし許容され得る物理特性および熱特性を有する硬化製品を製造するためにエポキシ樹脂をまだ有効に硬化する可能性がある、新規のポリエーテルアミン基剤の(polyetheramine-based)硬化剤を開発することは望ましいと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2016/089663号パンフレット
【文献】米国特許第9,012,020号明細書
【文献】米国特許第8,399,577号明細書
【文献】米国特許出願公開第2013/0012669号明細書
【文献】米国特許第7,816,481号明細書
【文献】米国特許第3,654,370号号明細書
【発明の概要】
【0007】
本開示は概括的に、(i)前記硬化剤の総重量に基づいて、60重量%を超えるポリエーテルアミン、(ii)第三アミン、および(iii)アルカノールアミン、を含む硬化剤を提供する。
【0008】
別の態様において、本開示の前記硬化剤およびエポキシ樹脂を含み、実質的にコアシェルポリマーを含まない硬化性組成物が提供される。
【0009】
まだ別の態様において、基材に前記硬化性組成物を適用し、そして前記硬化性組成物を硬化する工程により得られる硬化製品が提供される。
【0010】
発明の詳細な説明
本開示は概括的に、(i)前記硬化剤の総重量に基づいて、60重量%を超える、ポリエーテルモノアミン、ポリエーテルジアミン、ポリエーテルトリアミン、多官能価ポリエーテルアミンおよびそれらの混合物から選択されるポリエーテルアミン、(ii)第三アミン並びに(iii)アルカノールアミン、を含む硬化剤を提供する。驚くべきことには、硬化剤中の成分の本組み合わせ物は、前記アルカノールアミン上のヒドロキシル基に、通常のプロセス温度で、前記エポキシ樹脂と重合/反応させることが見いだされた。更に、成分のこの組み合わせは、最新技術のポリエーテルアミン基剤の硬化剤よりもずっと安価に硬化剤を生産するが、しかしエポキシ樹脂をまだ急速に硬化させて、物理的特性と熱特性との優れたバランスを有する硬化製品を提供する場合がある。
以下の用語は以下の意味を有することとする:
本明細書で使用される用語「硬化(curing)」または「硬化する(cure)」は、化学的架橋によるエポキシ樹脂の硬化(hardening)を意味する。用語「硬化性(curable)」は、前記組成物が、前記組成物を、硬化された(cured)または熱硬化された(thermoset)状況(state)もしくは状態(condition)にさせると考えられる状態に曝露される可能性があることを意味する。
【0011】
用語「アルキル」は、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、t-ブチルおよびペンチルのような直鎖または分枝鎖アルキル基を意味する。
【0012】
用語「シクロアルキル」は、それらに限定はされないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルおよびシクロヘキシルを含む3ないし10個の炭素原子を含む脂環式基を意味する。
【0013】
用語「ヘテロシクロアルキル」は、3ないし6個の炭素原子および1個もしくは2個の酸素、硫黄または窒素原子を含むヘテロシクロアルキル基を含む。このような基の具体的な例は、アゼチジニル、ピロリジニル、ピペリジニル、ホモピペリジニル、ピペラジニル、ホモピペラジニル、モルホリニルおよびチオモルホリニル基を含む。
【0014】
用語「コアシェルポリマー」は、ポリマーの1つ以上のシェルまたは層により囲まれた第1のポリマーのコアを有するポリマー粒子を表わし、各シェルポリマーはあらゆる隣接シェルと異なり、前記粒子は、前記の1個または複数のシェルが前記のコアおよび/または隣接シェルに共有結合されるように多段階重合により形成される。
【0015】
用語「実質的に含まない(substantially free)」は、配合物中の物質の実質的な不在に関連して使用される場合に、このような物質は含まれないか、または、たとえ含まれるとしても、偶発的な不純物または副産物として含まれることを意味する。言い換えると、前記物質は前記配合物の前記の特性に影響を与えない。
【0016】
用語「含む(comprising)」およびその派生語(derivatives)は、それが本明細書に開示されているいないに拘わらず、どんな更なる成分、工程または手順の存在をも排除することは意図されない。あらゆる疑念を回避するために、用語「含む(comprising)」の使用により、本明細書に請求されるすべての組成物は、その反対に記述されない限り、あらゆる更なる添加剤または化合物を含む場合がある。それに対して、用語「本質的にそれらからなる(consisting essentially of)」が、本明細書に出現する場合は、それは実施可能性(operability)に本質的でないものを除いて、あらゆるそれに続く復唱の範囲から、あらゆる別の成分、工程または手順を排除し、そして用語「からなる(consisting of)」が使用される場合は、それは具体的に説明もしくは記載されていないあらゆる成分、工程または手順を排除する。用語「または(or)」は、別記されない限り、個々に、並びにどんな組み合わせでも、記載されたメンバー(member)を表わす。
【0017】
冠詞「一つの(a)」および「一つの(an)」は本明細書においては、前記冠詞の一つまたは二つ以上(すなわち少なくとも一つ)の、文法的対象を表わすために使用される。一例として、エポキシ樹脂「an epoxy resin」は、1種のエポキシ樹脂または2種以上のエポキシ樹脂を意味する。
【0018】
前記の言い回し「一つの態様において(in one aspect)」、「一つの態様によると(according to one aspect)」、等は、概括的に、前記の言い回しに続く特定の特性、構成または特徴は、本開示の少なくとも一つの態様中に含まれ、そして本開示の二つ以上の態様中に含まれる場合があることを意味する。重要なことには、このような言い回しは必ずしも同一の態様を表わすわけではない。
【0019】
前記明細書中で、成分または特性が、特徴中に含まれるかまたは特徴を有する、「場合がある(may)」、「可能性がある(can)」、「かも知れない(could)」または「かも知れない(might)」と記述する場合には、その特定の成分または特性が、前記特徴中に含まれることまたは前記特徴を有すること、は必須ではない。
【0020】
硬化剤
一つの態様によると、本開示の前記硬化剤は(i)前記硬化剤の総重量に基づいて、60重量%を超える、ポリエーテルモノアミン、ポリエーテルジアミン、ポリエーテルトリアミン、多官能価ポリエーテルアミンおよびそれらの混合物:からなる群から選択されるポリエーテルアミン、(ii)第三アミン、並びに(iii)アルカノールアミン:を含む。
【0021】
一つの態様において、前記ポリエーテルアミンは、一般式(1)または(1a):
【0022】
【化1】
【0023】
[Rは水素、メチルまたはエチルであり、そして
aおよびbは独立して、約1ないし約150の整数である]、あるいは
【0024】
【化2】
【0025】
[Hは水素であり、Meはメチルであり、そしてEtはエチルであり、
ZはC1-C40アルキル基またはC1-C40アルキルフェノール基であり、そして
wは約1ないし約100の整数である]、
を有するポリエーテルモノアミンである。
【0026】
まだ別の態様において、前記ポリエーテルアミンは、式(2)または(2a):
【0027】
【化3】
【0028】
[Meはメチルであり、そしてEtはエチルである]
を有するポリエーテルモノアミンである。
【0029】
市販のポリエーテルモノアミンは、Huntsman Petrochemical LLCから市販されている、それらに限定はされないが、JEFFAMINE(登録商標)M-600、M-1000、M-2005、M-2070、XTJ-435およびXTJ-436アミンを含む、JEFFAMINE(登録商標) M-シリーズおよびXTJ-シリーズのアミンを含む。
【0030】
まだ別の態様において、前記ポリエーテルアミンは、式(3)、(4)または(5):
【0031】
【化4】
【0032】
[cは約2ないし約100の整数であり、
Hは水素であり、Meはメチルであり、Etはエチルである]、
【0033】
【化5】
【0034】
[Hは水素であり、Meはメチルであり、Etはエチルであり、
eは約2ないし約40の整数であり、そして
dおよびfは独立して、約1ないし約10の整数である]、または
【0035】
【化6】
【0036】
[gは約2ないし約3の整数である]
を有するポリエーテルジアミンである。
【0037】
市販のポリエーテルジアミンは、Huntsman Petrochemical LLCから市販の、それらに限定はされないが、JEFFAMINE(登録商標) D-230、D-400、D-2000、D-4000、ED-600、ED-900、ED-20003、EDR-148およびEDR-176アミンを含むJEFFAMINE(登録商標)D、EDおよびEDRアミンを含む。
【0038】
まだ更に別の態様によると、前記ポリエーテルアミンは、式(6):
【0039】
【化7】
【0040】
[R1は水素、メチルまたはエチルであり、
Hは水素であり、Meはメチルであり、Etはエチルであり、
nは0または1の整数であり、そして
h、iおよびjは独立して、約1ないし約100の整数である]
を有するポリエーテルトリアミンである。
【0041】
市販のポリエーテルトリアミンは、Huntsman Petrochemical LLCから市販の、それらに限定はされないが、JEFFAMINE(登録商標) T-403、T-3000およびT-5000アミンを含むJEFFAMINE(登録商標)T-シリーズのアミンを含む。
【0042】
別の態様において、前記ポリエーテルアミンは多官能価ポリエーテルアミン(multifunctional polyetheramine)である。前記多官能価ポリエーテルアミンは、前記アミン基の少なくとも1個の水素を、ヒドロキシル基により置換された、本明細書に記載されたもののようなポリエーテルジアミンまたはポリエーテルトリアミンである場合がある。例えば、前記多官能価ポリエーテルアミンは式(7)
【0043】
【化8】
【0044】
[R4およびR5はそれぞれ独立して、水素またはヒドロキシル基であり、但しR4の少なくとも1個は水素であり、R5の少なくとも1個はヒドロキシル基であることとし、
Hは水素であり、Meはメチルであり、そしてEtはエチルである]
を有する場合がある。
【0045】
一つの具体的な態様において、前記ポリエーテルアミンは、ポリエーテルモノアミン、ポリエーテルジアミンおよびそれらの混合物からなる群から選択される。まだ別の具体的
な態様において、前記ポリエーテルアミンはポリエーテルジアミンである。
【0046】
別の態様に従うと、前記硬化剤は、重量%は前記硬化剤の総重量に基づいて、少なくとも約65重量%のポリエーテルアミンを含む。別の態様において、前記硬化剤は、重量%は前記硬化剤の総重量に基づいて、少なくとも約70重量%の前記ポリエーテルアミン、または少なくとも約75重量%の前記ポリエーテルアミンを含む。更にまだ別の態様において、前記硬化剤は、重量%は前記硬化剤の総重量に基づいて、少なくとも約80重量%、または少なくとも約81重量%、または少なくとも約82重量%、または少なくとも約83重量%、または少なくとも約84重量%、または少なくとも約85重量%の量の前記ポリエーテルアミンを含む。
【0047】
更なる態様において、前記硬化剤は、重量%は前記硬化剤の総重量に基づいて、約65重量%ないし約95重量%の前記ポリエーテルアミンを含む。別の態様において、前記硬化剤は、重量%は前記硬化剤の総重量に基づいて、約70重量%ないし90重量%の前記ポリエーテルアミンを含む。まだ別の態様において、前記硬化剤は、重量%は前記硬化剤の総重量に基づいて、約75重量%ないし約85重量%の前記ポリエーテルアミンを含む。
【0048】
前記硬化剤はまた、第三アミンを含む。
【0049】
一つの具体的な態様において、前記第三アミンは、(a)R7、R8およびR9は独立してC1-C10アルキル基であるか、または(b)R7およびR8はヘテロシクロアルキル残基として結合され、そしてR9はC1-C10アルキル基であるか、または(c)R7およびR8は独立してC1-C10アルキルで基あり、そしてR9はシクロアルキル基である:式NR789を有する化合物である。
【0050】
このような第三アミンは、それらに限定はされないが、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ-n-プロピルアミン、トリ-n-ブチルアミン、トリ-イソ-プロピルアミン、トリ-イソ-ブチルアミン、ジメチルアミノシクロヘキサン、ジエチルアミノシクロヘキサン、ジメチルアミノシクロペンタン、ジエチルアミノシクロペンタン、N-メチルモルホリン、N-N-メチルピロリジン、N-エチルピロリジン、N-n-プロピルピロリジン、N-イソ-プロピルピロリジン、N-メチルピペリジン、N-エチルピペリジン、N-n-プロピルピペリジン、N-イソ-プロピルピペリジン、N,N’-ジメチルピペラジン、N,N’-ジエチルピペラジン、N,N’-ジプロピルピペラジンおよびそれらの混合物を含む場合がある。一つの具体的な態様において、前記第三アミンは、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ-n-プロピルアミン、トリ-イソ-プロピルアミン、トリ-n-ブチルアミン、ジメチルアミノシクロヘキサンまたはN-メチルモルホリンである。別の態様において、前記第三アミンはジメチルアミノシクロヘキサンである。
【0051】
別の態様において、前記第三アミンは、2個未満の反応性水素を有する場合がある。更なる態様において、前記第三アミンは1個の反応性水素を有する場合がある。まだ別の態様において、前記第三アミンは、例えばN,N-ジメチルベンジルアミンのように、反応性水素をもたない場合がある。
【0052】
一つの態様に従うと、前記硬化剤は、重量%は前記硬化剤の総重量に基づいて、約10重量%未満の前記第三アミンを含む場合がある。別の態様において、前記硬化剤は、重量%は前記硬化剤の総重量に基づいて、約8重量%未満の前記第三アミン、または約7.5重量%未満の前記第三アミンを含む。更にまだ別の態様において、前記硬化剤は、重量%は前記硬化剤の総重量に基づいて、約5重量%未満、または約4重量%未満、または約3
重量%未満、または約2.5重量%未満、または約2重量%未満、または約1重量%未満の量の前記第三アミンを含む。
【0053】
まだ別の態様において、前記硬化剤は、重量%は前記硬化剤の総重量に基づいて、約0.1重量%ないし約10重量%の前記第三アミンを含む。別の態様において、前記硬化剤は、重量%は前記硬化剤の総重量に基づいて、約0.5重量%ないし約5重量%の前記第三アミンを含む。まだ別の態様において、前記硬化剤は、重量%は前記硬化剤の総重量に基づいて、約1重量%ないし約3重量%の前記第三アミンを含む。
【0054】
前記硬化剤はまたアルカノールアミンを含む。一つの態様において、前記アルカノールアミンは、Raが、2ないし8個の炭素、または2ないし4個の炭素のような、1ないし10個の炭素の直線状もしくは分枝状アルキル基であり、そして少なくとも1個の第一(primary)ヒドロキシル基を含む、式RaNH2を有する化合物である。別の態様において、前記アルカノールアミンは、Rbが、2ないし8個の炭素、または2ないし4個の炭素のような、1ないし10個の炭素の直線状もしくは分枝状アルキル基でありそして、少なくとも1個の第一ヒドロキシル基を含み、そしてRcは、2ないし8個の炭素、または2ないし4個の炭素のような、1ないし10個の炭素の直線状もしくは分枝状アルキル基であり、そして少なくとも1個の一級ヒドロキシル基を含む、式RbcNHを有する化合物である。
【0055】
アルカノールアミンの例は、それらに限定はされないが、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、2-アミノ-1-ブタノール、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、モノメチルアミノエタノール、イソプロピルアミノエタノール、t-ブチルアミノエタノール、エチルアミノエタノール、n-ブチルアミノエタノール、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミンおよびそれらの混合物を含む。
【0056】
一つの態様において、前記硬化剤は、重量%は前記硬化剤の総重量に基づいて、約30重量%未満のアルカノールアミンを含む。別の態様において、前記硬化剤は、重量%は前記硬化剤の総重量に基づいて、約25重量%未満の前記アルカノールアミン、または約20重量%未満の前記アルカノールアミンを含む。更にまだ別の態様において、前記硬化剤は、重量%は前記硬化剤の総重量に基づいて、約15重量%未満、または約14重量%未満、または約13重量%未満、または約12重量%未満、または約11重量%未満、または約10重量%未満の量の前記アルカノールアミンを含む。
【0057】
まだ別の態様において、前記硬化剤は、重量%は前記硬化剤の総重量に基づいて、約1重量%ないし約25重量%の前記アルカノールアミンを含む。別の態様において、前記硬化剤は、重量%は前記硬化剤の総重量に基づいて、約5重量%ないし約20重量%の前記アルカノールアミンを含む。まだ別の態様において、前記硬化剤は、重量%は前記硬化剤の総重量に基づいて、約10重量%ないし約15重量%の前記アルカノールアミンを含む。
【0058】
硬化性組成物
別の態様によると、(i)エポキシ樹脂、並びに(ii)ポリエーテルアミン、第三アミンおよび上述の通りのアルカノールアミン、を含む本開示の前記硬化剤:を含み、そして実質的に、コアシェルポリマーを含まない、硬化性組成物が提供される。
【0059】
一般に、参照により本明細書に引用されたものとされる米国特許第5,476,748号明細書中に開示された前記エポキシ含有化合物のようなあらゆるエポキシ含有化合物は
、本開示中の前記エポキシ樹脂としての用途に適する。前記エポキシ樹脂は固体または液体である場合がある。一つの実施態様において、前記エポキシ樹脂は、ポリグリシジルエポキシ化合物、非グリシジルエポキシ化合物、エポキシクレゾールノボラック化合物、エポキシフェノールノボラック化合物およびそれらの混合物:からなる群から選択される。
【0060】
前記ポリグリシジルエポキシ化合物は、ポリグリシジルエーテル、ポリ(β-メチルグリシジル)エーテル、ポリグリシジルエステルまたはポリ(β-メチルグリシジル)エステルである場合がある。ポリグリシジルエーテル、ポリ(β-メチルグリシジル)エーテル、ポリグリシジルエステルおよびポリ(β-メチルグリシジル)エステルの合成および例は、参照により本明細書に引用されたものとされる、米国特許第5,972,563号明細書に開示されている。例えば、エーテルは、少なくとも1個の遊離アルコール性ヒドロキシル基および/またはフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物を、適当に置換されたエピクロロヒドリンと、アルカリ性条件下または、その後のアルカリ処理を伴う酸性触媒の存在下で反応させることにより得られる場合がある。前記アルコールは例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコールおよび、より高次のポリ(オキシエチレン)グリコール、プロパン-1,2-ジオール、またはポリ(オキシプロピレン)グリコール、プロパン-1,3-ジオール、ブタン-1,4-ジオール、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ペンタン-1,5-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオール、ヘキサン-2,4,6-トリオール、グリセロール、1,1,1-トリメチロールプロパン、ビストリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールおよびソルビトールのような非環式アルコールである場合がある。しかし、適当なグリシジルエーテルはまた、1,3-もしくは1,4-ジヒドロキシシクロヘキサン、ビス(4-ヒドロキシシクロ-ヘキシル)メタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンまたは1,1-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキセ-3-エンのような脂環式アルコールから得られる場合があるか、あるいは、それらは、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)アニリンまたはp,p’-ビス(2-ヒドロキシエチルアミノ)ジフェニルメタンのような芳香環を有する場合がある。
【0061】
ポリグリシジルエーテルまたはポリ(β-メチルグリシジル)エーテルの、特に重要な代表は、単環式フェノール(例えば、レソルシノールまたはヒドロキノン)、多環式フェノール(例えば、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン(ビスフェノールF)、2,2-ビス(4-ヒドロキシルフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン(ビスフェノールS)、アルコキシル化ビスフェノールA、FもしくはS、トリオール延長ビスフェノールA、FもしくはS、臭素化ビスフェノールA、FもしくはS、水素化ビスフェノールA、FもしくはS、フェノールおよび、側基もしくは側鎖をもつフェノールのグリシジルエーテル)、フェノールノボラックおよびクレゾールノボラックのような、フェノールまたはクレゾールの、ホルムアルデヒドとの、酸性条件下で得られる縮合生成物、あるいはシロキサンジグリシジル、を基剤にする。
【0062】
ポリグリシジルエステルおよびポリ(β-メチルグリシジル)エステルは、エピクロロヒドリンまたはグリセロールジクロロヒドリンまたはβ-メチルエピクロロヒドリンを、ポリカルボン酸化合物と反応させることにより生成される場合がある。前記反応は、便法として塩基の存在下で実施される。前記ポリカルボン酸化合物は例えば、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、または二量化または三量化リノール酸である場合がある。しかし、同様に、脂環式ポリカルボン酸、例えばテトラヒドロフタル酸、4-メチルテトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸または4-メチルヘキサヒドロフタル酸を使用することも可能である。更に、例えば、フタル酸、イソフタル酸、トリメリチン酸またはピロメリチン酸のような芳香族ポリカルボン酸を使用することも可能であるか、あるいは、例えばトリメリチン酸とポリオールとの、例えばグリセロールまたは2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンとの、カルボ
キシル末端付加物が使用される場合がある。
【0063】
別の態様において、前記エポキシ樹脂は、非グリシジルエポキシ化合物である。非グリシジルエポキシ化合物は、直線状、分枝状または環式構造である場合がある。例えば、前記エポキシ基が脂環式または複素環式環系の一部を形成する1種以上のエポキシ化合物が含まれる場合がある。別の例は、少なくとも1個のケイ素原子を含む基に、直接または間接的に結合される少なくとも1個のエポキシシクロヘキシル基をもつ、エポキシ含有化合物を含む。例は、参照により本明細書に引用されたものとされる、米国特許第5,639,413号明細書に開示されている。更に別の例は、1個以上のシクロヘキセンオキシド基を含むエポキシ化合物および1個以上のシクロペンテンオキシド基を含むエポキシ化合物を含むエポキシ化合物、を含む。
【0064】
非グリシジルエポキシ化合物の具体的な例は、前記エポキシ基が、脂環式または複素環式環系の一部を形成する、以下の二官能価の非グリシジルエポキシ化合物:ビス(2,3-エポキシシクロペンチル)エーテル、1,2-ビス(2,3-エポキシシクロペンチルオキシ)エタン、3,4-エポキシシクロヘキシル-メチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-6-メチル-シクロヘキシルメチル3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ジ(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)ヘキサンジオエート、ジ(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)ヘキサンジオエート、エチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エタンジオールジ(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)、を含む。
【0065】
幾つかの具体的な態様において、前記二官能価非グリシジルエポキシ化合物は、前者が最も好ましいが、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートおよび2,2’-ビス-(3,4-エポキシ-シクロヘキシル)-プロパンのような、脂環式二官能価非グリシジルエポキシ化合物を含む。
【0066】
まだ別の態様において、前記エポキシ樹脂は、ポリ(N-グリシジル)化合物またはポリ(S-グリシジル)化合物である。ポリ(N-グリシジル)化合物は、例えば、エピクロロヒドリンと、少なくとも2個のアミン水素原子を含むアミンとの、反応生成物の脱塩化水素(dehydrochlorination)により得られる。これらのアミンは、例えば、n-ブチルアミン、アニリン、トルイジン、m-キシレンジアミン、ビス(4-アミノフェニル)メタンまたはビス(4-メチルアミノフェニル)メタンである場合がある。ポリ(N-グリシジル)化合物の別の例は、エチレン尿素または1,3-プロピレン尿素のようなシクロアルキレン尿素のN,N’-ジグリシジル誘導体、および5,5-ジメチルヒダントインのようなヒダントインのN,N’-ジグリシジル誘導体を含む。ポリ(S-グリシジル)化合物の例は、ジチオール、例えばエタン-1,2-ジチオールまたはビス(4-メルカプトメチルフェニル)エーテルから誘導されるジ-S-グリシジル誘導体である。
【0067】
更に、前記1,2-エポキシ基が異なるヘテロ原子または官能基に結合されているエポキシ樹脂を使用することも可能である。例は、4-アミノフェノ-ルのN,N,O-トリグリシジル誘導体、サリチル酸の前記グリシジルエーテル/グリシジルエステル、N-グリシジル-N’-(2-グリシジルオキシプロピル)-5,5-ジメチルヒダントインまたは2-グリシジルオキシ-1,3-ビス(5,5-ジメチル-1-グリシジルヒダントイン-3-イル)プロパンを含む。
【0068】
ビニルシクロヘキセンジオキシド、リモネンジオキシド、リモネンモノオキシド、ビニルシクロヘキセンモノオキシド、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル9,10-エポキシステアレートお
よび1,2-ビス(2,3-エポキシ-2-メチルプロポキシ)エタン、のような別のエポキシ誘導体が使用される場合もある。
【0069】
更に、前記エポキシ樹脂は、上述された通りのようなエポキシ樹脂の、エポキシ基と反応性の遊離水素を有する化合物との、予備反応された付加物(pre-reacted adduct)である場合がある。典型的には、このような反応性水素は、カルボン酸基、芳香族ヒドロキシル基、アミノ基およびスルフヒドリル基中に認められる。
【0070】
前記硬化性組成物中に使用されるエポキシ樹脂の量は、前記標的の分子量およびエポキシ官能価に左右される場合がある。幾つかの態様において、前記硬化性組成物は、重量%は前記硬化性組成物の総重量に基づいて、約30重量%ないし約85重量%の量の前記エポキシ樹脂を含む場合がある。別の態様において、前記硬化性組成物は、重量%は前記硬化性組成物の総重量に基づいて、約40重量%ないし約85重量%、または約45重量%ないし約80重量%の量の前記エポキシ樹脂を含む場合がある。
【0071】
別の態様において、前記硬化性組成物は、上述の本開示の前記硬化剤を含む。幾つかの態様において、前記硬化性組成物は、前記硬化性組成物の総重量に基づいて、少なくとも約5重量%、または少なくとも10重量%、または少なくとも15重量%、または少なくとも20重量%の量の前記硬化剤を含む場合がある。
【0072】
まだ別の態様において、前記硬化性組成物は、本開示の前記エポキシ樹脂および硬化剤に加えて、更にそれらの意図される用途に有用な1種以上の別の添加剤を含む場合がある。例えば、前記硬化性組成物中に有用な、前記の任意選択的添加剤は、それらに限定はされないが、希釈剤[1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDGE)、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(HDDGE)、クレゾールジグリシジルエーテル(CGE)、C12-14アルキルグリシジルエーテル(AGE)、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(TMPTGE)]、不活性充填剤、強化繊維(炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ホウ素繊維、シリコンカーバイド繊維)、安定剤、界面活性剤、流動調整剤(flow modifiers)、顔料もしくは染料、剥離剤、艶消剤(matting agents)、脱気剤、難燃剤(例えば、無機難燃剤、ハロゲン化難燃剤および、リン含有物質のような非ハロゲン化難燃剤)、強化剤、硬化開始剤、硬化阻害剤、湿潤化剤、加工助剤、蛍光化合物、UV安定剤、抗酸化剤、衝撃変更剤およびそれらの混合物を含む場合がある。
【0073】
前記硬化性組成物中に含まれる添加剤の量は、それが含まれる場合は、前記硬化性組成物の総重量に基づいて、少なくとも約0.5重量%、または少なくとも2重量%、または少なくとも5重量%、または少なくとも10重量%である場合がある。
【0074】
更に、本開示の範囲内の前記硬化性組成物は、溶媒を含まない場合があり、無溶媒とも呼ばれる。あるいはまた、本開示の前記硬化性組成物は更に、少なくとも1種の有機または水性溶媒を含む場合がある。このような溶媒または溶媒の混合物は、しばしば、前記硬化性組成物の成分の溶解度を維持しながら、前記硬化性組成物に対する固有の蒸発速度プロファイルを与えるように選択される。
【0075】
本明細書に使用される場合がある溶媒の例は、それらに限定はされないが、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、グリコールエーテル、アミド、スルホキシド、スルホンおよびそれらの混合物を含む。具体的な溶媒は例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、トルエン、キシレン、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールn-ブチルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテ
ル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールn-ブチルエーテル、ジエチレングリコールフェニルエーテル、ブチレングリコールメチルエーテル、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリジノン、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホランおよびそれらの混合物を含む場合がある。
【0076】
幾つかの態様において、前記溶媒は、重量%は前記硬化性組成物と溶媒の総重量に基づいて、約5重量%ないし約95重量%の量で前記硬化性組成物中に含まれる場合がある。別の態様において、前記溶媒は、重量%は前記硬化性組成物と溶媒の総重量に基づいて、約10重量%ないし約60重量%、または約20重量%ないし約40重量%の量で使用される場合がある。
【0077】
硬化性組成物の配合
前記硬化性組成物は、特定の限定を伴わずに、必要な場合は前記の成分が加熱される状態において前記成分を撹拌、混合することにより調製される場合がある。本開示の前記硬化性組成物は、前記硬化性組成物の少なくとも2種の成分は、別々に調製されて、別々の容器(containers)(または入れ物(vessels))中に包装され、そして前記硬化性組成物は、前記の2種以上の別々に調製された成分(例えば、部分Aは前記エポキシ樹脂であり、部分Bは前記硬化剤であり、そしてあらゆる任意選択的添加剤は部分Aおよび/または部分Bに含まれる)を、使用前に前以て決定された比率で混合することにより得られる、複数パッケージタイプ(例えば、2パッケージタイプ)の組成物である場合がある。前記の撹拌/混合法は、特に限定はされない。例えば、ミキサー[例えば、溶解機(dissolver)、ホモジナイザーまたは静的混合機]、混練機(kneader)、ロールミキサー、ビーズミル、または遊星式撹拌装置のような、知られた、または慣用の撹拌/混合ユニットが使用される場合がある。撹拌および混合後に前記混合物は真空中で脱泡処理を受ける場合がある。
【0078】
別の態様において、本開示の前記硬化性組成物は、容器内で、前記エポキシ樹脂と本開示の前記硬化剤とを含む前記成分を混合し、次に前記成分を、硬化性組成物に配合させる工程により達成される一ポットタイプの組成物である。混合の順序に対して重要性(criticality)はなく、すなわち、前記成分は、本開示の硬化性組成物を提供するために、どんな順序で混合されてもよい。上述の、いずれの任意的添加剤が添加されてもよい。
【0079】
一つの態様において、前記エポキシ樹脂と硬化剤は、前記硬化性組成物中に含まれるエポキシ化合物の当量数に対する、前記硬化剤中の反応性アミン水素の当量数の比率が、約0.2ないし約1.3、または約0.4ないし約1、または更に約0.4ないし約0.9、またはまだ更に約0.5ないし約0.85、そして更にまだ約0.6ないし約0.8、そして時には、約0.65ないし約0.75の範囲にあるように混合される。まだ別の態様において、前記エポキシ樹脂と硬化剤は、少なくとも約1:1、または少なくとも1.2:1、または更に少なくとも約1.5:1の、エポキシ樹脂:硬化剤の重量比で混合される。別の態様において、エポキシ樹脂:硬化剤の前記重量比は、少なくとも約2:1、そしてまだ更に、少なくとも2.5:1、そしてまだ更に、少なくとも約3:1である場合がある。
【0080】
更に、前記硬化性組成物の前記成分は、前記の所望される用途のための低粘度を有する有効な硬化性組成物の調製を可能にする温度で、混合、分散される場合がある。前記成分の混合期間中の温度は、約0℃ないし約100℃、または約0℃ないし約50℃である場合がある。
【0081】
硬化製品
別の態様に従うと、一旦配合された前記硬化性組成物は、硬化製品を形成するために当該産業により実施される典型的な方法に従って、あらゆる適切な基材と接触され、または基材に適用され、そして硬化される場合がある。本開示に従う硬化製品は、それらに限定はされないが、塗膜、接着剤、建設製品(construction product),床製品または複合製品(composite product)を含む。
【0082】
典型的な硬化法は、外界温度の硬化ないし、熱、放射線またはエネルギー源の組み合わせを使用する高温の硬化を含む。前記硬化性組成物は、一工程で、または当該産業でしばしば実施されるA、B段階硬化のような複数工程で硬化される場合がある。あるいは、前記硬化性組成物は、その初回硬化サイクル後に、異なる温度またはエネルギー源を使用して後硬化される場合がある。
【0083】
前記硬化反応が実施される場合がある温度は、使用される特定のエポキシ樹脂および硬化剤に左右されると考えられる。従って、一つの態様において、前記硬化温度は、約25℃ないし200℃、または約40℃ないし約195℃、または約45℃ないし190℃、または約50℃ないし185℃、または約60℃ないし約180℃、または約70℃ないし約135℃の範囲にある場合がある。まだ別の態様において、前記硬化性組成物は、約80℃ないし約130℃の範囲内の温度で硬化される場合がある。
【0084】
前記硬化性組成物は、前記エポキシ樹脂を硬化し、そして前記硬化製品を形成するために有効な時間にわたり、前記硬化温度において硬化される場合がある。幾つかの態様において、前記硬化時間は、72時間未満である場合がある。別の態様において、前記の硬化時間は、48時間未満、または24時間未満、または16時間未満、または12時間未満、または10時間未満、または8時間未満、または6時間未満、または4時間未満、または2時間未満である場合がある。まだ別の態様において、前記硬化時間は、60分未満、または45分未満、または30分未満である場合がある。
【0085】
一つの態様において、上述の硬化性組成物は、塗膜として使用される場合がある。例えば、塗布された基材を形成する方法は、基材に前記硬化性組成物を適用して、前記塗布基材を形成する工程を含む場合がある。前記硬化性組成物は、浸漬、吹付塗り、ダイ塗布、ロール塗り、樹脂注入法および、前記硬化性組成物を含む浴との前記基材の接触工程によるような、あらゆる知られた方法により前記基材に適用される場合がある。塗布される場合がある基材のタイプは例えば、ガラス、木材、コンクリート、比較的高いガラス遷移温度(Tg)および/または融点を有するプラスチックまたはポリマー、強化繊維および金属を含む。前記基材は、前記の所望材料の平らなシートまたはコイルである場合があるか、あるいはパイプ、管、ワイアまたは別の形状のような、より複雑なプロファイルを有する場合がある。
【0086】
別の具体的な態様において、前記硬化性組成物は工業的塗膜の用途に使用される場合がある。このような工業的塗膜は、装飾的目的ための連続膜を形成するのみならずまた、前記基材を保護するために、硬化または架橋される基材に適用される表面保護膜を含む場合がある。保護膜は通常、有機ポリマー結合剤、顔料および様々な塗料添加剤を含み、前記ポリマー結合剤は前記顔料のための流体ビヒクルとして働き、前記流体塗膜にレオロジー特性を与える。前記ポリマー結合剤は、硬化または架橋時に硬化し、そして前記顔料の結合剤として働き、そして前記基材に対する前記乾燥塗膜の接着を提供する。前記顔料は有機または無機であってもよく、そして耐久性および硬度に加えて、透明度および色彩に対して機能的に寄与する場合がある。
【0087】
更なる態様において、本明細書に記載の硬化性組成物並びに適切な顔料、触媒および添
加剤を含む粉末塗料が得られる場合がある。これらの粉末塗料およびそれらからの塗膜は、特性の、驚くほど良好な組み合わせを有する場合がある。エポキシ樹脂の選択および量に応じて、硬化剤および別の、任意選択的添加剤、それらから誘導される粉末塗料は、良好な流動性、良好な化学的抵抗性、高い光沢、高い引っかき抵抗性、良好な機械的特性、良好な屋外の耐久性および良好な色彩安定度を有する場合がある。
【0088】
更に別の態様において、本明細書に記載された前記硬化性組成物は、水性および油性分散物の一部を形成する場合がある。例えば、本明細書に開示された前記硬化性組成物を含む水分散性塗膜組成物は、缶およびコイルの塗膜組成物として使用される場合がある。
【0089】
まだ別の態様において、前記硬化性組成物は、圧力および/または熱の適用を含む前記硬化性組成物を硬化するために十分な条件下で、前記硬化性組成物と、接着される類似のまたは異なる基材の一つ以上の面とを接触させることにより、1つ以上の基材を一緒に接着する方法における接着剤として使用される場合がある。
【0090】
まだ更なる態様において、前記硬化性組成物はまた、船舶用塗膜、土木工学の用途、床板、注型品、亀裂または欠損修復、一次成形品、製陶、フィラメントワインディング、容器封入並びに構造的および導電性薄板並びに複合体に使用される場合がある。例えば、本明細書に開示された前記硬化性組成物を使用して形成される複合体は、風車の羽根および別の用途に使用される場合がある。
【0091】
代わりの態様において、前記硬化性組成物は、当該産業で周知の方法により、例えば、引き抜き成形(pultrusion)、注型(infusion)、一次成形(molding)、封入(encapsulating)または塗布(coating)により、注型品(castings)、プレプレグ、ボンディングシート、薄板および金属フォイル被覆薄板(clad laminate)におけるような複合製品を製造するために使用される場合がある。前記複合製品の特性は、強化繊維の添加により、特定の用途に適合させる場合がある。
【0092】
従って、まだ別の態様において、(i)強化繊維の層もしくは束を提供し、(ii)前記硬化性組成物を提供し、(iii)前記強化繊維を前記硬化性組成物と接触させて、前記強化繊維を被覆および/または含浸させ、そして(iv)前記の塗布および/または含浸された強化繊維を、少なくとも約60℃、または少なくとも約120℃、または更にまだ少なくとも約195℃の温度において、硬化する:工程を含む、複合製品の製法が提供される。
【実施例
【0093】
実施例1ないし10
ビスフェノールAエポキシ樹脂(ARALDITE(登録商標) GY6010エポキシ樹脂)を、ポリエーテルアミン(JEFFAMINE(登録商標)D-230アミン)、モノエタノールアミン(「MEA」)およびジメチルアミノシクロヘキサン(「DMCHA」))を含む硬化剤と混合して、以下の表1に示される通りの硬化性組成物を形成した。各硬化性組成物を80℃で3時間、次に125℃で2時間硬化させた。次に、前記の生成された硬化製品のガラス遷移温度を、前記対照として役立つ実施例10を使用してDSCにより測定した。前記の結果は、前記アルカノールアミンの前記ヒドロキシル基が前記ポリマー骨格(polymer backbone)中に反応されるために、前記第三アミンが必要であったことを示した。更に、驚くべきことには、本発明の硬化剤が使用されるとき、前記ポリエーテルアミンを単独で含む硬化剤に比較して、アミン1単位当り、より多量のエポキシ樹脂が使用可能であり、従って配合コストを更に低下させることが見いだされた。
【0094】
【表1】
【0095】
実施例11および12
前記の最終硬化製品の前記特性を比較するために、実施例1(対照)および実施例8(20重量%のMEA、2重量%のDMCHA)を基剤にした硬化組成物を評価し、それぞれ、表2中の実施例11および12に相当する。前記結果は下記の表2に与えられる。
【0096】
【表2】
【0097】
前記の結果は、前記硬化剤中の前記ポリエーテルアミンの一部は、それ以降に硬化される製品の物理的特性を損なわずに、エポキシ含有硬化性組成物中のアルカノールアミン及び第三アミンで置換される場合があることを示す。
【0098】
本発明の様々な実施態様を製造し、使用する工程は、以上に詳細に説明されたが、本発明は、広範な具体的な文脈中に具体化される場合がある、多くの適用可能な発明の考え方を提供することは、理解されなければならない。本明細書に考察された具体的な実施態様は、本発明を製造し、使用するための具体的な方法を単に例証するものであり、本発明の範囲を限定するものではない。