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特許7065100患者コンプライアンスを監視するための可搬装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-27
(45)【発行日】2022-05-11
(54)【発明の名称】患者コンプライアンスを監視するための可搬装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/50 20060101AFI20220428BHJP
   A61M 5/20 20060101ALI20220428BHJP
【FI】
A61M5/50 530
A61M5/20
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019538183
(86)(22)【出願日】2018-01-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-02-06
(86)【国際出願番号】 US2018013559
(87)【国際公開番号】W WO2018132701
(87)【国際公開日】2018-07-19
【審査請求日】2020-11-20
(31)【優先権主張番号】62/445,914
(32)【優先日】2017-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517229774
【氏名又は名称】ウエスト ファーマスーティカル サービシーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】特許業務法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チョイ ジェイソン
(72)【発明者】
【氏名】エスポジト アンソニー ジー
(72)【発明者】
【氏名】ベンソン ポール
【審査官】上石 大
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/198428(WO,A1)
【文献】特表2014-532524(JP,A)
【文献】特表2014-534032(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/50
A61M 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも未使用状態と使用状態とを有する注射装置のコンプライアンス監視システムであって、
前記注射装置の表面に取り付けられ、前記注射装置から状態情報を収集し、保存するように構成された、1以上の無線周波数タグであって、保存された前記状態情報が、少なくとも前記注射装置が前記使用状態にあることの確認を含む、無線周波数タグと、
ハウジング、前記ハウジングに収められた無線周波数アンテナ、前記ハウジングに収められた無線トランスミッタモジュールおよび前記ハウジングに収められた処理回路を備える可搬式の監視アクセサリと
を備え、
前記処理回路が、前記注射装置の廃棄前に前記無線周波数アンテナを介して、前記1以上の無線周波数タグから、前記注射装置の前記保存された状態情報を含む第1の信号を、無線周波数通信プロトコルにより受信し、
前記無線トランスミッタモジュールを介して、前記状態情報を含む第2の信号を、前記無線周波数通信プロトコルとは異なる無線通信プロトコルにより、移動体装置へ送信するように構成された
コンプライアンス監視システム。
【請求項2】
前記無線周波数通信プロトコルは、NFCプロトコルまたはRFIDプロトコルであり、
前記無線通信プロトコルは、Bluetooth通信プロトコルまたはGSM通信プロトコルである
請求項1に記載のコンプライアンス監視システム。
【請求項3】
前記保存された状態情報は、前記注射装置またはそれに収められた医薬の特有の識別子をさらに含む
請求項1に記載のコンプライアンス監視システム。
【請求項4】
前記注射装置の前記保存された状態情報は、少なくとも注射の日付および時刻、前記注射装置の特有の識別子および前記注射装置に収容された医薬の認証をさらに含む
請求項1に記載のコンプライアンス監視システム。
【請求項5】
医薬を収容し、前記医薬を患者の体内に投与するための針を備える注射装置であって、
少なくとも未使用状態と使用状態とを有する注射装置と、
前記注射装置の表面に取り付けられ、前記注射装置から状態情報を収集し、保存するように構成された、1以上の無線周波数タグであって、保存された前記状態情報が、少なくとも前記注射装置が前記使用状態にあることの確認を含む、無線周波数タグと、
前記1以上のタグの周辺に配置される可搬式の監視アクセサリであって、ハウジング、前記ハウジングに収められた無線周波数アンテナ、前記ハウジングに収められた無線トランスミッタモジュールおよび前記ハウジングに収められた処理回路を備える監視アクセサリと
を備え、
前記処理回路が、
前記注射装置の廃棄前に前記無線周波数アンテナを介して、前記1以上の無線周波数タグから、前記注射装置の前記保存された状態情報を含む第1の信号を、無線周波数通信プロトコルにより受信し、
前記無線トランスミッタモジュールを介して、前記状態情報を含む第2の信号を、前記無線周波数通信プロトコルとは異なる無線通信プロトコルにより、移動体装置へ送信するように構成された
コンプライアンス監視システム。
【請求項6】
前記注射装置は、注射後に前記針を自動的に覆って、前記注射装置を前記使用状態に置くように構成された針シールドをさらに備える
請求項5に記載のコンプライアンス監視システム。
【請求項7】
前記無線周波数通信プロトコルは、NFCプロトコルまたはRFIDプロトコルであり、
前記無線通信プロトコルは、Bluetooth通信プロトコルまたはGSM通信プロトコルである
請求項5に記載のコンプライアンス監視システム。
【請求項8】
前記保存された状態情報は、注射装置またはこれに収容された医薬の特有の識別子をさらに含む
請求項5に記載のコンプライアンス監視システム。
【請求項9】
前記注射装置の前記保存された状態情報は、少なくとも注射の日付および時刻、前記注射装置の特有の識別子および前記注射装置に収容された医薬の認証をさらに含む
請求項5に記載のコンプライアンス監視システム。
【請求項10】
少なくとも未使用状態と使用状態とを有する注射装置のコンプライアンス監視システムで使用される可搬式の監視アクセサリであって、
前記注射装置の表面に取り付けられた1以上の無線周波数タグと、
ハウジングと、
前記ハウジングに収められた無線周波数アンテナと、
前記ハウジングに収められた無線トランスミッタモジュールと、
前記ハウジングに収められた処理回路と
を備え、
前記処理回路が、
前記注射装置の廃棄前に前記無線周波数アンテナを介して、前記注射装置に設けられた1以上の無線周波数タグから、前記注射装置の前記1以上の無線周波数タグに保存された前記注射装置の状態情報を含む第1の信号であって、当該保存された状態情報が、少なくとも前記注射装置が前 記使用状態にあることの確認を含む第1の信号を、無線周波数通信プロトコルにより受信し、
前記無線トランスミッタモジュールを介して、前記状態情報を含む第2の信号を、前記無線周波数通信プロトコルとは異なる無線通信プロトコルにより、移動体装置へ送信するように構成された
可搬監視アクセサリ。
【請求項11】
前記無線周波数通信プロトコルは、NFCプロトコルまたはRFIDプロトコルであり、
前記無線通信プロトコルは、Bluetooth通信プロトコルまたはGSM通信プロトコルである
請求項10に記載の可搬監視アクセサリ。
【請求項12】
前記状態情報は、前記注射装置またはこれに収容された医薬の特有の識別子を含む
請求項10に記載の可搬監視アクセサリ。
【請求項13】
前記注射装置の前記状態情報は、少なくとも注射の日付および時刻、前記注射装置の特有の識別子および前記注射装置に収容された医薬の認証を含む
請求項10に記載の可搬監視アクセサリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、注射装置の状態情報を、再利用可能な可搬式の監視アクセサリを用いて通信する装置および技術に関する。
【背景技術】
【0002】
手動および自動式の注射装置(または自己インジェクタ)は、服用量の特定薬剤を患者の体内に投与するように設計された医療装置である。手動注射装置は通常、ハウジングに収められたシリンジを備え、シリンジの針を患者の皮内に手動で挿入しなければならず、さらに、プランジャを手動で起動させて、薬剤を投与しなければならない。自動注射装置もこれに近似するが、針の挿入および/または薬剤の投与のため、ばねにより張力がかけられたアクティベータを備えるのが一般的である。手動式のものおよび自動インジェクタの双方とも、患者または他の未習熟者による薬剤の自己投与が意図されている。これらの種類の医療装置は、少なくとも2つの状態を有し、一つは、装置が注射される前の未使用状態であり、他の一つは、装置が注射された後の使用状態である。
【0003】
ある特定の状況では、医療装置は、薬剤の管理に関する確認および指示を使用者に与える際にラベルにより識別される。しかし、ラベル上に示される情報は、概して、医療装置のリアルタイム状況、例えば、医療装置の使用を反映させるために変えられるものではない。
【0004】
現在入手可能な医療装置用の監視ソリューションは、医療装置の状態情報を、移動体装置に対し、費用効率的な方法で即座に伝送する機能が欠如している。よって、医療装置の状態情報を用いて、患者コンプライアンスを効率的に監視および実施したり、医療従事者により速やかなアドバイスを提供したりすることができなかった。さらに、管理アプリケーションについても医療装置の状態情報が直ちに利用可能ではないことから、充分なサポートがない場合があった。
【0005】
問題の一部は、使い捨ての医療装置に関する情報を集めおよび送るための費用効果的な通信機構を設計する際の難しさである。幾つかの解決法は、タスクを果たすのに安価なタグまたはチップを採用するが、そこから出力される情報を受けるのに特別な受信装置を必要とする。幾つかの解決法は、一般的な受信装置により回収可能な信号を送ることを可能とするが、必要な要素は、概して高価であるか、そうでなければ、1回きりの使用に適したものではない。
【0006】
以上の理由の観点から、注射装置の状態情報を費用効果的な方法で集めおよび送ることが可能な監視システムが備わることが望ましい。
【発明の概要】
【0007】
本発明の一態様は、少なくとも未使用状態と使用状態とを有する注射装置のコンプライアンス監視システムを含む。システムは、注射装置の表面に取り付けられた1以上の無線周波数タグと、可搬式の監視アクセサリと、を備える。可搬監視アクセサリは、ハウジングと、ハウジングに収められた無線周波数アンテナと、ハウジングに収められた無線トランスミッタモジュールと、ハウジングに収められた処理回路と、を備える。処理回路は、1以上の無線周波数タグから、無線周波数通信プロトコルにより、無線周波数アンテナを介して第1の信号(注射装置の状態情報を含む)を受信するとともに、無線周波数通信プロトコルとは異なる無線通信プロトコルにより、移動体装置へ、無線トランスミッタを介して第2の信号(状態情報を含む)を送信するように構成される。
【0008】
コンプライアンス監視システムの更なる詳細では、無線周波数通信プロトコルは、NFCプロトコルか、RFIDプロトコルか、であり、無線通信プロトコルは、Bluetooth(登録商標)通信プロトコルか、GSM(登録商標)通信プロトコルか、である。
【0009】
コンプライアンス監視システムの更なる詳細では、状態情報は、注射装置またはこれに収容された医薬の特有の識別子と、注射装置が使用状態にあることの確認と、を含む。1以上のタグは、注射装置から状態情報を収集するように構成される。注射装置の状態情報は、少なくとも注射の日付および時刻、注射装置の特有の識別子および注射装置に収容された医薬の認証を含む。
【0010】
コンプライアンス監視システムもまた、本明細書で開示される。コンプライアンス監視システムは、医薬を収集し、医薬を患者の体内に投与するための針を有する注射装置を備える。注射装置は、少なくとも未使用状態および使用状態を含む。コンプライアンス監視システムは、注射装置の表面に取り付けられた1以上の無線周波数タグおよび1以上のタグの近くに配置される可搬式の監視アクセサリも備える。可搬監視アクセサリは、ハウジングと、ハウジングに収められた無線周波数アンテナと、ハウジングに収められた無線トランスミッタモジュールと、ハウジングに収められた処理回路と、を備える。処理回路は、1以上の無線周波数タグから、無線周波数通信プロトコルにより、無線周波数アンテナを介して第1の信号(注射装置の状態情報を含む)を受信するとともに、無線周波数通信プロトコルとは異なる無線通信プロトコルにより、移動体装置へ、無線トランスミッタを介して第2の信号(状態情報を含む)を送信するように構成される。
【0011】
コンプライアンス監視システムの更なる詳細では、注射装置は、注射後に針を自動的に覆って、注射装置を使用状態に置くように構成された針シールドをさらに備える。
【0012】
コンプライアンス監視システムの更なる詳細では、無線周波数通信プロトコルは、NFCプロトコルか、RFIDプロトコルか、であり、無線通信プロトコルは、Bluetooth通信プロトコルか、GSM通信プロトコルか、である。状態情報は、注射装置またはこれに収容された医薬の特有の識別子と、注射装置が使用状態にあることの確認と、を含む。1以上のタグは、注射装置から状態情報を収集するように構成される。注射装置の状態情報は、少なくとも注射の日付および時刻、注射装置の特有の識別子および注射装置に収容された医薬の認証を含む。
【0013】
少なくとも未使用状態と使用状態とを有する注射装置のコンプライアンス監視システムでの使用のため、可搬式の監視アクセサリもまた、本明細書に開示される。アクセサリは、注射装置の表面に取り付けられた1以上の無線周波数タグと、ハウジングと、を備える。無線周波数アンテナ、無線トランスミッタモジュールおよび処理回路が、ハウジングに収められる。処理回路は、注射装置に配置された1以上の無線周波数タグから、無線周波数通信プロトコルにより、無線周波数アンテナを介して第1の信号(注射装置の状態情報を含む)を受信するとともに、無線周波数通信プロトコルとは異なる無線通信プロトコルにより、移動体装置へ、無線トランスミッタを介して第2の信号(状態情報を含む)を送信するように構成される。
【0014】
可搬監視アクセサリの更なる詳細では、無線周波数通信プロトコルは、NFCプロトコルか、RFIDプロトコルか、であり、無線通信プロトコルは、Bluetooth通信プロトコルか、GSM通信プロトコルか、である。
【0015】
可搬監視アクセサリの更なる詳細では、状態情報は、注射装置またはこれに収容された医薬の特有の識別子と、注射装置が使用状態にあることの確認と、を含む。注射装置の状態情報は、少なくとも注射の日付および時刻、注射装置の特有の識別子および注射装置に収容された医薬の認証を含む。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本発明の好ましい実施形態に関する以下の詳細な説明ばかりでなく、以下の概要は、添付の図面と併せて読むことで、よりよく理解される。本発明を説明する目的で、現時点で好ましい実施形態が図示される。しかし、本発明が図示の正確な配置および手段に限定されるものではないことが、理解されるべきである。
【0017】
図1図1は、医療装置、監視アクセサリおよび移動体装置に無線周波数タグを備える、本開示の一側面による患者コンプライアンスを監視するためのシステムの概略図である。
図2図2は、図1のシステムで使用される無線周波数タグの拡大側方立面図である。
図3図3は、図1のシステムに備わる監視アクセサリの概略図である。
図4A図4Aは、図1のシステムに備わる、第1タイプの監視アクセサリの斜視図である。
図4B図4Bは、図1のシステムに備わる、第2タイプの監視アクセサリの斜視図である。
図5図5は、図3の第1タイプの監視アクセサリの正面立面図および断面図である。
図6図6は、図1のコンプライアンスを監視するシステムを用いるためのプロセスの概略図である。
【0018】
図面は、必ずしも縮尺で描かれたものではなく、さらに、ありふれた構造または機能の要素は、説明のため、全図を通じて同様の参照番号により示されることに留意すべきである。
【発明の実施の形態】
【0019】
以下の説明では、単に便宜上、限定するものではなく、特定の用語法が使用される。「右」、「左」、「下方」および「上方」との言葉は、参照されるべき図面における方向を示すものである。「内方」および「外方」との言葉は、夫々装置およびその指定された部分の幾何学的な中心に向かいおよび中心から離れる方向を意味する。用語法は、以上で具体的に述べた言葉、その派生語および類似の意味を有する言葉を含む。
【0020】
図1は、注射装置110を使用する患者のコンプライアンスを監視するための例示的なシステム100を示す。図1を見ると、システム100は、注射装置110、監視アクセサリおよび移動体装置130を備えることが可能である。
【0021】
注射装置110は、自己投与装置、例えば、West PharmaによるSelfDose(登録商標)装置であることが可能であり、これは、医薬を保持するための注射器コンテナと結合された針(全体としては示されていない)を有する、針による注射装置である。注射装置110は、注射装置110の使用を反映した少なくとも2つの状態を有し、これらの状態には、注射装置110の医薬が患者の体内に投与されていない未使用状態と、医薬が注射された使用状態と、が含まれる。
【0022】
1以上の無線周波数タグ111を、注射装置110の表面に取り付けることが可能である。無線周波数タグ111は、注射装置110の、湾曲しまたは他の不規則な形状の表面へのしっかりとした粘着のため、柔軟性のある材料で作製することができる。無線周波数タグ111のそれぞれは、無線周波数認識(「RFID」)タグまたは近距離無線通信(「NFC」)タグ等であることが可能である。これに代え、情報を収集および送信することが可能な他のあらゆる適切な無線周波数タグが、注射装置110に取り付けられてもよい。幾つかの実施形態では、改竄または偶発的な損傷の可能性を削減するため、無線周波数タグ111が、注射装置110の内部に配置されてもよい。
【0023】
少なくとも1つの無線周波数タグ111を、注射装置110の識別子および/または注射装置110のコンテナに収められた医薬の識別子を保存するように構成することが可能である。これに加え、少なくとも1つの無線周波数タグ111は、注射装置110に関する収集された投与状態情報を保存することが可能であり、この状態情報は、例えば、注射装置110に関連付けられた特定のセンサ(図示せず)により、収集することができる。幾つかの実施形態では、状態情報には、日付、時刻、注射装置110の特有の識別子、患者の体内に注射された医薬の識別子、医薬の温度等が含まれる。
【0024】
無線周波数タグ111は、これに保存された状態情報を、短距離(または近距離)での信号伝送に適する、選択された無線周波数または無線波長にある第1の電磁波113により送信するように構成することが可能である。1つの無線周波数タグ111が使用される場合は、無線周波数タグ111は、医薬および/または注射装置の特有の識別子を包含する無線周波数信号を送信することが可能である。これに加え、無線周波数タグ111は、注射装置110の使用の確認を送信することも可能である。例えば、無線周波数タグ111は、初めは、遮蔽されており(図示せず)、注射装置110の起動により、その遮蔽が除去され、そうでなければ、タグ111を露出させて、読み取られるようにする。タグ111により装置110の状態をも示すことを可能とするのに、タグ111と通信可能なセンサ(図示せず)、タグ111を起動し、露出させる簡単な回路(図示せず)等、他の方法が用いられてもよい。2以上のタグ111が使用される場合は、それらの無線周波数タグ111の少なくとも一方により、注射装置110の特有の識別子および/または使用の確認を送信することが可能である。
【0025】
監視アクセサリ120は、持ち運びが可能な監視アクセサリであることが可能であり、第1の電磁波113を受信するように構成可能なレシーバ121を備えることができる。レシーバ121は、近距離無線周波数信号を受信するため、無線周波数タグ111の近くに配置されるように構成されたリーダアンテナであることが可能であり、例えば、注射装置110が、信号を送信するため、監視アクセサリ120に対して殆ど接するほどに近接させられる。監視アクセサリ120は、情報を幾度にも亘って受信および送信するため、再利用可能であってもよい。
【0026】
監視アクセサリ120は、受信信号を処理することが可能であり、例えば、信号を復調して、注射装置110の状態情報を回復させたり、状態情報110を変調して、第1の通信プロトコルとは異なっていてもよい第2の通信プロトコルを介して伝送させるのに適した第2の信号を発生させたりする。例えば、第2の通信プロトコルは、Bluetooth通信プロトコルまたは他の移動体通信プロトコルである。
【0027】
監視アクセサリ120は、第2の信号を、第1の電磁波113とは異なり、移動体装置130が受信するのに適した第2の電磁波115の形態で送信することが可能である。幾つかの実施形態では、第2の電磁波115は、注射装置110と監視アクセサリ120との間の距離よりも遠い距離を越えて移動体装置130へ伝送可能である。
【0028】
移動体装置130は、限定されるものではなく、注射装置110の受信状態情報を処理する医療分析アプリケーション等のアプリケーションを実行可能なスマートフォン、タブレット、ラップトップおよび他の個人利用の情報端末を含む、パーソナルコンピューティング装置であることが可能である。本開示の幾つかの側面によれば、移動体装置130は、アプリケーションを実行して、受信情報を受信し、処理し、分析し、表示しおよび/またはネットワーク150に接続されたサーバおよび/またはデータベース(図示せず)へチャネル18を介して送信することが可能であり、チャネル118は、いかなる種類の有線または無線接続および対応するプロトコルによるものであってもよい。医療従事者は、収集された状態情報を分析するためにサーバおよび/またはデータベースにアクセスすることが可能であり、投与計画に関する患者のコンプライアンスを監視しおよび/または専門的なアドバイスを提供する。状態情報、分析結果および/または専門的なアドバイスは、患者または他の承認を与えられた人員により、移動体装置130またはあらゆる他の適切な装置を介してアクセス可能である。プライバシー規則に準拠するため、情報へのアクセスは、一般的に知られるように制限されるのが好ましい。
【0029】
これに加えるかまたはこれに代え、監視アクセサリ120は、ネットワーク150へのアクセスポイントが利用可能な場合に、注射装置110の状態情報を、チャネル119で(例えば、Wi-Fi、GSMまたは他の類似の種類の無線または有線接続を介して)ネットワーク150に接続されたサーバまたはコンピュータへ直接送信するように構成することも可能である。状態情報および分析結果は、患者により、移動体装置130またはあらゆる他の適切な装置を介してアクセル可能にすることができる。
【0030】
図2を参照すると、注射装置110は、患者の体内へ注射する医薬(図示せず)を保持するためのシリンジ(図示せず)、患者の体内に医薬を投与するためのハンドル114および針ガード116を備えることが可能であり、針ガード116は、針刺し事故を防止するため、注射後、自動的に起動して針を覆うのが好ましい。
【0031】
無線周波数タグ111は、注射装置110の下側ハウジング部112に取付可能なNFCまたはRFIDタグであることが可能である。無線周波数タグ111は、限定されるものではなく、無線周波数タグ111の近くで電磁波を送信可能な、集積回路125およびアンテナ126を備える。幾つかの実施形態では、無線周波数タグ111は、自動認識およびデータキャプチャ(AIDC)技術を適用して、注射装置110を自動的に認識しおよび/または注射装置110の状態情報を収集する。
【0032】
説明のため、注射装置110の下側ハウジング部112に取り付けられる場合が図示され、記載されるが、無線周波数タグ111は、注射装置110の、あらゆる適切な表面、例えば、注射装置110の上面117に取り付けられてもよい。
【0033】
無線周波数タグ111は、無線周波数タグ111に電源が備わっているかどうかに応じて、受動的無線周波数タグであってもよいし、能動的無線周波数タグであってもよい。受動的無線周波数タグは、電源が備わっていなくともよく、よって、アンテナ126により外部の無線周波数問い合わせ信号(例えば、監視アクセサリ120により送信される)の形態で受信されたエネルギにより、電力を供給することが可能である。能動的無線周波数タグは、電源、例えば、バッテリが備わっていてもよく、状態情報を、それ自身で、つまり、レシーバから電力を吸収せずに、レシーバへ送信することが可能である。通常は、能動的無線周波数タグは、受動的無線周波数タグよりも遠くから読み取られることが可能である。
【0034】
集積回路125およびアンテナ126は、マイラー(Mylar)またはプラスチックフィルムであってもよい基板127に取り付けることが可能である。基板127は、注射装置110の湾曲面に緊密に取り付けるため、柔軟性がありおよび/または伸縮性があってもよい。
【0035】
説明のため、集積回路(またはチップ)125およびアンテナ126を備えるものとして図示され、記載されたが、無線周波数タグ111は、他の要素、例えば、多様なセンサ、マイクロプロセッサ、入力および/または出力ポート等を備えていてもよい。
【0036】
図3は、本発明の一実施形態に係る監視アクセサリ120の概略図である。監視アクセサリ120は、第1の通信プロトコルレシーバ121、第2の通信プロトコルトランスミッタを備えることが可能であり、好ましくは、それらの双方が処理回路137に結合される。
【0037】
第1の通信レシーバ121は、無線周波数の第1の変調信号を受信するように構成することが可能であり、この第1の変調信号は、データとして、図2の注射装置110の状態情報を含むことが可能である。無線周波数信号は、図2の無線周波数タグ111から送信することが可能である。第1の通信レシーバ121は、無線周波数信号を受信するように構成されたアンテナであることが可能である。
【0038】
受信された無線周波数信号を処理回路137により復調して、注射装置110の状態情報を取り出すことが可能である。処理回路137は、限定されるものではなく、印刷回路、様々な電気要素、メモリーおよび/またはプロセッサを備えることが可能である。処理回路137は、その後、状態情報を、無線通信プロトコル、例えば、Bluetooth通信プロトコル、WiFi通信プロトコルまたは適切な移動体通信プロトコルであってもよい第2の通信プロトコルに基づき変調するように構成することが可能である。
【0039】
変調された状態情報は、第2の通信トランスミッタ123を介して送信することが可能である。第2の通信トランスミッタ123は、移動体装置、WiFiネットワークおよび移動体ネットワークのそれぞれとの通信のため、Bluetooth通信モジュール、WiFi通信モジュールおよび/または移動体通信モジュールを備えることが可能である。
【0040】
説明のため、Bluetooth、WiFiおよび移動体通信モジュールとして図示され、記載されたが、状態情報を移動体装置またはネットワークへ送信するのに、他の適切な無線通信による解決法が採用されてもよい。
【0041】
図4Aおよび4Bは、監視アクセサリ120の2つの例示的実施形態を示している。図4Aを参照すると、注射装置110に取り付けられた無線周波数タグ111を走査し、走査された情報を移動体装置1130またはネットワーク150(図1に、全体を示す)に送信するのに、ハンドヘルド式の監視アクセサリ120Aを採用することが可能である。
【0042】
ハンドヘルド式の監視アクセサリ120Aは、無線周波数信号を第1の通信プロトコルで受信するため、マッシュルーム型のハウジング151Aに収められた無線周波数レシーバ(またはアンテナ)121Aを備えることが可能である。レシーバ121Aは、監視アクセサリ120Aのハウジング151Aのハンドル部を持ちながらの簡単な操作のため、マッシュルーム型の監視アクセサリ120Aの頭部152Aに配置することが可能である。本開示の幾つかの側面によれば、無線周波数レシーバ121Aは、マッシュルーム型の監視アクセサリ120Aのいかなる適切な位置に封入されてもよい。本実施形態において、アクセサリ120Aは、マッシュルーム型の形状を有するものとして示されているが、この形状は、限定的なものではなく、他の形状であっても実施可能である。
【0043】
第2の通信トランスミッタ123Aは、本体151A内において、走査された情報を第2の通信プロトコルで送信するのに適した位置に配置することが可能である。第2の通信トランスミッタ123Aの操作を、見ることができおよび/または聞くことができるインジケータ(図示せず)により、使用者に合図することが可能である。
【0044】
図4Bを参照すると、注射装置110の状態情報を走査し、状態情報を移動体装置130またはネットワーク150へ送信するのに、デスクトップ監視型のアクセサリ120Bを提供することが可能である。
【0045】
デスクトップ監視アクセサリ120Bは、無線周波数信号を第1の通信プロトコルで受信するため、ボタン型のハウジング151Bに収められた無線周波数レシーバ121Bを備えることが可能である。無線周波数レシーバ121Bは、注射装置110を手のひらに持ちながらの、つまり、監視アクセサリ120Bが机またはテーブルの表面等に支えられた状態での簡単な走査のため、監視アクセサリ120Bの上側表面の下に配置することが可能である。幾つかの実施形態では、無線周波数レシーバ120Bは、ボタン型の監視アクセサリ120Bのいかなる適切な部位に配置されてもよい。
【0046】
第2の通信トランスミッタ123Bは、状態情報を第2の通信プロトコルで送信するため、ハウジング151B内のいかなる位置に配置することも可能である。第2の通信トランスミッタ123Bの操作は、見ることができおよび/または聞くことができるインジケータ129Bにより、使用者に合図されてもよい。
【0047】
図5は、図4Aにおけるマッシュルーム型の監視アクセサリ120Aの断面図である。図5を参照すると、マッシュルーム型の監視アクセサリ120Aは、回路ハウジング135A、無線周波数アンテナ132Aおよび印刷回路基板137Aを備えることが可能である。印刷回路基板137Aは、限定されるものではなく、トランスミッタモジュール138Aおよびマイクロプロセッサ(図示せず)を含む、様々な電子要素を備えることが可能である。無線周波数アンテナ132A、印刷回路基板137Aおよびトランスミッタモジュール138A等を含め、回路ハウジング135Aに封入されている電気要素を保護するため、カバー151Aが、回路ハウジング135Aと同一の形状で設けられてもよい。
【0048】
無線周波数アンテナ132Aは、回路ハウジング135Aに取り付けて、無線周波数タグ111(図1に示されている)から無線周波数信号を受信するように構成することが可能である。無線周波数アンテナ132Aは、インレー型であり、無線周波数信号を受信するのに適した形状に作製することが可能である。無線周波数アンテナ132Aは、監視アクセサリ120Aの頂部またはいかなる他の適切な部分に配置することも可能である。
【0049】
印刷回路基板137Aは、回路ハウジング135Aに取り付けることが可能であり、トランスミッタモジュール138Aのほか、限定されるものではなく、視覚的インジケータ、聴覚的インジケータおよび電源等を含む(図5において、全体としては示されていない)、他の電子要素を備えることができる。電源は、監視アクセサリ110Aの電子要素、例えば、無線周波数アンテナ132Aおよび印刷回路基板137Aに電力を提供するため、バッテリおよび/または配線接続された電源(有線電源)を備えることが可能である。視覚的インジケータおよび/または聴覚的インジケータは、監視アクセサリ110Aの動作状態を表示するように構成することが可能であり、例えば、視覚的インジケータは、電源が投入されたときに、明かりを灯し、聴覚的インジケータは、無線周波数信号が監視アクセサリ110Aにより受信されおよび/または第2の信号が送信されたときに、ビープ音を発する。
【0050】
マイクロプロセッサは、限定されるものではなく、無線周波数信号を復調して、注射装置110の状態情報を取り出すこと、さらに、その状態情報を移動体装置130またはネットワーク150に送信するため(図1に、全体を示す)、状態情報を、例えば、Bluetooth通信プロトコル、WiFi通信プロトコルまたは移動体通信プロトコル等の第2の通信プロトコルに従って変調することを含め、受信された無線周波数信号を処理するように構成することが可能である。
【0051】
トランスミッタモジュール138Aは、BluetoothモジュールまたはGSMモジュールであることが可能であり、印刷回路基板137Aに埋め込むか、差し込むことができる。トランスミッタモジュール138Aは、第2の通信プロトコルを介して変調させた状態情報を送信するように構成することも可能である。
【0052】
説明のため、状態情報をBluetooth通信プロトコル、WiFi通信プロトコルまたはGSM通信プロトコルで変調し、送信するように図示され、記載されたが、サーバまたはネットワーク150に関連付けられた他の無線装置または設備へ状態情報を送信するのに、いかなる他の適切な無線通信プロトコルが採用されてもよい。例えば、状態情報をネットワーク150へ送信するのに、CDMA、LTEおよび/または将来の5G移動体通信プロトコルを採用することが可能である。
【0053】
図6は、監視アクセサリ120を使用した、注射装置110の監視プロセスを示すフローチャートである。図6を参照すると、注射装置110は、少なくとも2つの状態、つまり、未使用状態110Aおよび使用状態110Bを有することが可能である。
【0054】
注射装置110がこれに収容されている医薬を患者の体内に投与すると、注射装置110は、その状態を未使用状態110Aから使用状態110Bへ変更する(161)。センサは、この状態変更を検出し、これを、投与の結果として状態変更を記録することが可能な、注射装置110Bに取り付けられた少なくとも1つの無線周波数タグ111に受け渡す。以上に図示され、記載されたように、記録された注射装置110Bの状態情報は、投与の日付および時刻、注射装置110の特有の識別子および/または医薬が投与されたことの確認等であってもよい。注射装置110Bの状態情報は、注射装置110の無線周波数タグ111(図1に示される)により収集し、記録することが可能である。無線周波数タグ111は、状態情報を注射装置110の周辺に送信するため、状態情報を第1の通信プロトコルにより変調することが可能である。第1の通信プロトコルは、無線周波数通信プロトコルであってもよい。
【0055】
ステップ163では、注射装置110からその変調された状態情報を受け取るため、無線周波数タグ111が監視アクセサリ120により走査され、読み取られる。無線周波数タグ111から受信された変調後の状態情報をプロセッサ(図示せず)により復調して、状態情報を取り出すことが可能である。状態情報は、第2の通信プロトコルで変調し、近くの移動体装置または設備に送信することが可能である。
【0056】
注射装置110は、その後、デスクトップ監視アクセサリ120により走査された後、鋭利な針によるケガを防止するため、ステップ165で、シャープビン(鋭利医療器具廃棄ビン)の開口部157に入れられる。
【0057】
第2の通信プロトコルにより変調された状態情報は、ステップ167で、移動体装置130により受信するか、代わりにステップ168で、無線ネットワーク150により受信することが可能である。変調された状態情報が移動体装置130により受信される場合は、例えば、移動体装置130で実行されるアプリケーションは、受信された状態情報を、使用者の介入を伴うかまたは伴わずに復調するように構成することが可能である。幾つかの実施形態では、使用者は、画面131Aを介してこのアプリケーションにログインし、状態情報をサーバにアップロードしおよび/または状態情報をデータベースに保存することが可能である。
【0058】
ステップ169では、患者または何らかの他の団体の移動体装置130が、アップロードされた状態情報にサーバからアクセルすることが可能である。医療従事者は、アップロードされた状態情報を、同一のアプリケーションツールまたは異なるアプリケーションツールにより、ディスプレイ131Bを介して表示しおよび/または分析することが可能である。医療従事者は、患者に指示、コメント、警告および/または督促を提供することを通じて、患者の医療アドヒアランスを監視しおよび/または実施することが可能である。これに代えるかまたはこれに加え、患者は、アップロードされた状態情報を確認しおよび/または医療従事者からの指示、コメント、警告および/または督促を知るため、ディスプレイ131Bを介して注射装置110の状態情報にアクセスすることが可能である。
【0059】
説明のため、サーバから状態情報にアクセスするのに同一の移動体装置130を使用するものとして図示され、記載されたが、アップロードされた状態情報は、あらゆる認証された目的のため、あらゆる認証された者により、あらゆる適切な装置を介してアクセスしまたは使用することが可能である。
【0060】
本開示の様々な態様が、以上に提示された。しかし、本発明は、以上に提示された、説明のみを目的とした特定の態様に限定されることが意図されたものではない。むしろ、本発明は、添付のクレームの範囲内に収まるであろう、機能的な均等物をも包含する。当業者であれば、本明細書の教示をもって、本発明の範囲および精神から逸脱することなく、その様々な態様において、多くの修正をなし得る。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6