IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パテオン オーストリア ゲーエムベーハー ウント コー カーゲーの特許一覧

<>
  • 特許-ペンテノエートの調製プロセス 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-27
(45)【発行日】2022-05-11
(54)【発明の名称】ペンテノエートの調製プロセス
(51)【国際特許分類】
   C07C 67/31 20060101AFI20220428BHJP
   C07C 69/527 20060101ALI20220428BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20220428BHJP
   C07C 45/52 20060101ALN20220428BHJP
   C07C 47/22 20060101ALN20220428BHJP
【FI】
C07C67/31
C07C69/527
C07B61/00 300
C07C45/52
C07C47/22 H
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019565054
(86)(22)【出願日】2018-02-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-03-19
(86)【国際出願番号】 EP2018053434
(87)【国際公開番号】W WO2018146306
(87)【国際公開日】2018-08-16
【審査請求日】2020-11-11
(31)【優先権主張番号】17155927.1
(32)【優先日】2017-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519293092
【氏名又は名称】パテオン オーストリア ゲーエムベーハー ウント コー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】コールス,パウル
(72)【発明者】
【氏名】ポッシュロウアー,ペーター
(72)【発明者】
【氏名】シュタインホファー,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】シュスター,クリスティアン
【審査官】早川 裕之
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-104882(JP,A)
【文献】特表2013-545732(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0051869(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0087861(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0267719(US,A1)
【文献】国際公開第2005/103280(WO,A1)
【文献】J. Org. Chem.,1989年,54,4717-4719
【文献】Org. Lett. ,2015年,17,1353-1356
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 67/30~31
C07C 69/527
C07C 45/52
C07C 47/22
C07B 61/00
CAplus/REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(1):
【化1】
(式中、Rは独立して、C-C アルキル、シクロアルキル、アラルキル、及びアリ-ルから選択され、R、R、及びRは独立して、水素並びにC-C アルキル、シクロアルキル、アラルキル、及びアリ-ルから選択される)
で表される化合物を調製するためのプロセスであって、以下の:、
a)以下の式(2):
【化2】
(式中、R及びRは、上記の通りであり、Mは、一価の金属イオンである)
で表される化合物を、
以下の式(3):
【化3】
(式中、R及びRは上記の通りである)
で表される化合物と接触させて、以下の式(4):
【化4】
で表される化合物を形成するステップ;かつ、
b)その後、前記式(4)で表される化合物を酸と接触させて、前記式(1)で表される化合物を得るステップと、を含み、ここで、ステップ(a)は、少なくとも0℃で行われ、かつ
ステップ(a)及び/又はステップ(b)は、連続モ-ドで行われる、プロセス。
【請求項2】
式(2)で表される化合物は、
(c)以下の式(5):
【化5】
で表される化合物を塩基と接触させるステップにより形成される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
ステップ(c)は、連続モ-ドで行われる、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
式(3)で表される化合物は、
(d)以下の式(6):
【化6】
で表される化合物を、酸触媒の存在下で脱水するステップにより形成される、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
ステップ(d)は、連続モードで行われる、請求項4に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペンテノエ-ト及びペンテノエ-ト様化合物を調製するためのプロセスに関する。本発明は、プロペナ-ルを調製するためのプロセスをさらに提供する。
【背景技術】
【0002】
ペンテノエ-ト及びペンテノエ-ト様化合物を調製する合成経路は、当技術分野で公知である。非特許文献1は、亜鉛系触媒の存在下でのブロモ酢酸誘導体とプロペナ-ル誘導体との反応によるペンテノエ-トの合成を開示している。さらなる合成では、非特許文献2に記載されるように酢酸誘導体の縮合を使用する。これらの反応は、発熱性であるため、制御及び高収率を得ることが困難である。さらに、プロペナ-ル、特にアクロレインは、重合する傾向があり、必要なプロペナ-ルを実質的に劣化させることなく、これらの化合物を保管及び/又は輸送するのを困難にする。そのようなプロペナ-ルを使用してペンテノエ-ト又はペンテノエ-ト様化合物を生成すると、収率がさらに低下し、(より多くの)望ましくない副産物の存在をもたらす。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】Kelly et al Tetrahedron Letters,vol.40,lss.16(1999),pp.3251-3254
【文献】Dewi-Wuelfling et al. Synlett,nb.3(2006),pp.487-489
【0004】
本発明の目的は、ペンテノエ-ト及びペンテノエ-ト様化合物を調製するための新規プロセス並びに改善されたプロセスを提供することである。
【0005】
本発明は、以下の式(1):
【0006】
【化1】
(式中、Rは独立して、C-C アルキル、シクロアルキル、アラルキル、及びアリ-ルから選択され、R、R、及びRは独立して、水素並びにC-C アルキル、シクロアルキル、アラルキル、及びアリ-ルから選択される)
で表される化合物を調製するためのプロセスであって、以下の:、
a)以下の式(2):
【0007】
【化2】
(式中、R及びRは、上記の通りであり、Mは、一価の金属イオンである)
で表される化合物を、以下の式(3):
【0008】
【化3】
(式中、R及びRは上記の通りである)
で表される化合物と接触させて、
以下の式(4):
【0009】
【化4】
で表される化合物を形成するステップと、
b)その後、式(4)で表される化合物を酸と接触させて、式(1)で表される化合物を得るステップと、を含み、
ステップ(a)及び/又はステップ(b)が、連続モ-ドで行われる、プロセスに関する。
【0010】
プロセスは、安全であり、式(1)で表される化合物を良好な収率及び良好な選択性で調製することができるという利点を有する。ステップ(a)及び/又は(b)を連続モ-ドで行うことにより、特にこれらのステップがマイクロ反応器又はチュ-ブ反応器で行われる場合、プロセス条件をよりよく制御することができ、安全性が大幅に改善される。さらなる利点は、一般にこれらのプロセスステップが、一般に極低温を必要とするバッチ様プロセスと比較して、より高い温度で行うことができることである。さらに、本発明のプロセスの生産性は、一般的により高い。
【0011】
置換基R、R、R、及びRは、Rは、独立して、C-C アルキル、シクロアルキル、アラルキル、及びアリールから選択され、R、R、及びRは、独立して、水素並びにC-C アルキル、シクロアルキル、アラルキル、及びアリールから選択される化合物(1)~(4)のうちのいずれか1つに存在する。これらの置換基は、同じでも異なっていてもよい。好ましくは、置換基R、R、R、及びRは、水素及び/又はC-Cアルキルである。さらにより好ましくは、置換基Rは、アルキル、好ましくはエチル、sec-ブチル、又はtert-ブチルであり、R、R、及びRは、水素又はメチルである。さらにより好ましくは、置換基Rは、アルキル、好ましくはエチル、sec-ブチル、又はtert-ブチルであり、R、R、及びRは、水素である。
【0012】
は、一価の金属イオンを表す。金属イオンMは、式(2)及び(4)で表される化合物で適切に使用することができる任意の金属イオンであり得る。適切な金属イオンの例としては、Na、Li、及びKが挙げられる。好ましくは、金属イオンは、Li及びKである。最も好ましくは、金属イオンは、Liである。
【0013】
本発明のプロセスのステップ(a)では、式(2)及び(3)で表される化合物を接触させて式(4)で表される化合物を形成する。好ましくは、式(2)で表される化合物は、酢酸tert-ブチル、酢酸エチル、及び酢酸secブチルであり、式(3)で表される化合物は、アクロレイン、2-メチルプロペン-2-アル、及び4-メチルブテン-2-アルである。より好ましくは、式(2)で表される化合物は、酢酸tert-ブチルであり、式(3)で表される化合物は、アクロレインである。
【0014】
本発明の一実施形態では、式(2)で表される化合物と式(3)で表される化合物とのモル比は、少なくとも0.1、好ましくは少なくとも0.5、より好ましくは少なくとも0.8、最も好ましくは少なくとも1であり、一般に最大10、好ましくは最大8、より好ましくは最大6、最も好ましくは最大5である。
【0015】
必要に応じて、このプロセスステップ中に触媒が存在する。適切な触媒の例としては、当技術分野で既知のキラル触媒が挙げられる。
【0016】
本発明の一実施形態では、触媒と式(2)で表される化合物とのモル比は、少なくとも0.001、好ましくは少なくとも0.002、より好ましくは少なくとも0.005、最も好ましくは少なくとも0.01であり、一般に最大1、好ましくは最大0.5、より好ましくは最大0.2、最も好ましくは最大0.1である。
【0017】
必要に応じて、このプロセスステップ中に溶媒が存在する。適切な溶媒の例としては、ペンタン、ヘキサン、及びヘプタンなどのアルカン、tert-ブチルメチルエ-テル及びテトラヒドロフラン(THF)などのエ-テルが挙げられる。また、2つ以上の溶媒の組み合わせも考えられる。好ましくは、溶媒は、アルカン、特にヘキサン及びヘプタン、並びにTHFから選択される。最も好ましくは、溶媒は、THFである。
【0018】
一実施形態では、反応混合物は、反応混合物の総重量に基づいて、少なくとも50重量%(wt%)の量の溶媒を含む。好ましくは、溶媒は、反応混合物の総重量に基づいて、少なくとも55重量%、より好ましくは少なくとも60重量%、さらにより好ましくは少なくとも65重量%、最も好ましくは少なくとも70重量%、かつ好ましくは最大99重量%、より好ましくは最大95重量%、さらにより好ましくは最大90重量%、最も好ましくは最大85重量%の量で存在する。反応混合物は、式(2)及び(3)で表される化合物を式(4)で表される化合物に変換するために必要なすべての成分を含み、すなわち、式(2)及び(3)で表される化合物、(任意選択の)触媒、(任意選択の)溶媒、及び存在する任意の他の成分を含む。
【0019】
一態様では、このプロセスステップは、少なくとも-100℃、好ましくは少なくとも-50℃、より好ましくは少なくとも-20℃、最も好ましくは少なくとも-10℃、かつ好ましくは最大30℃、より好ましくは最大20℃、最も好ましくは最大10℃の温度で行われる
【0020】
本発明のプロセスのステップ(b)では、式(4)で表される化合物を酸と接触させて式(1)で表される化合物を形成する。酸は、本発明のプロセスに適切な任意の酸であり得る。そのような酸の例としては、硫酸、酢酸、クエン酸、塩化水素、p-トルエンスルホン酸(pTsOH)、及びメタンスルホン酸が挙げられる。好ましくは、酸は、クエン酸及び酢酸である。最も好ましくは、酸は、酢酸である。
【0021】
本発明の一実施形態では、酸と式(4)で表される化合物とのモル比は、少なくとも0.1、好ましくは少なくとも0.3、より好ましくは少なくとも0.5、最も好ましくは少なくとも1.0であり、一般に最大5、好ましくは最大2、より好ましくは最大1.5、最も好ましくは最大1.1である。
【0022】
必要に応じて、プロセスのこのステップ中に溶媒が存在する。適切な溶媒の例としては、メタノ-ル、エタノ-ル、又はイソプロパノ-ルなどのアルコ-ル、エチレングリコ-ル及びプロピレングリコ-ルなどのアルキレングリコ-ル、並びに水が挙げられる。また、2つ以上の溶媒の組み合わせも考えられる。好ましくは、溶媒は、水又はアルコ-ル、特にメタノ-ル、エタノ-ル、及びイソプロパノ-ルである。最も好ましくは、溶媒は、水又はメタノ-ルである。
【0023】
一実施形態では、反応混合物は、反応混合物の総重量に基づいて、少なくとも50重量%(wt%)の量の溶媒を含む。好ましくは、溶媒は、反応混合物の総重量に基づいて、少なくとも55重量%、より好ましくは少なくとも60重量%、さらにより好ましくは少なくとも65重量%、最も好ましくは少なくとも70重量%、かつ好ましくは最大99重量%、より好ましくは最大95重量%、さらにより好ましくは最大90重量%、最も好ましくは最大85重量%の量で存在する。反応混合物は、式(4)で表される化合物を式(1)で表される化合物に変換するために必要なすべての成分を含み、すなわち、式(4)で表される化合物、酸、(任意選択の)溶媒、及び存在する任意の他の成分を含む。
【0024】
一態様では、このプロセスステップは、少なくとも-40℃、好ましくは少なくとも-20℃、最も好ましくは少なくとも-10℃、かつ好ましくは最大50℃、より好ましくは最大20℃、最も好ましくは最大10℃の温度で行われる
【0025】
本発明のプロセスは、さらに、前記式(2)で表される化合物が、(c)以下の式(5):
【0026】
【化5】
で表される化合物を塩基と接触させるステップにより形成されるステップを含んでもよい。
【0027】
好ましくは、プロセスのこのステップ(c)は、連続モ-ドでさらに行われうる。このステップを連続モ-ドで行う利点は、形成された式(2)で表される化合物を、式(2)で表される化合物の分離及び/もしくは精製ステップ、又は貯蔵及び/もしくは輸送せずに、上記の本発明のプロセスのステップ(a)に連続的に供給することができることである。
【0028】
式(5)で表される化合物を塩基と接触させて、式(2)で表される化合物を形成する。式(2)で表される化合物は、続いて、本発明のプロセスのステップ(a)で使用して、式(4)で表される化合物を形成することができる。塩基は、本発明のプロセスで適切に使用することができる任意の塩基であり得る。そのような塩基の例としては、リチウムジイソプロピルアミド、カリウムジイソプロピルアミド、カリウムtert-ブトキシド、ナトリウムtert-ブトキシド、リチウムヘキサメチルジシラザン、及びカリウムヘキサメチルジシラザンが挙げられる。好ましくは、塩基は、リチウムジイソプロピルアミド及びリチウムヘキサメチルジシラザンから選択される。最も好ましくは、塩基は、リチウムジイソプロピルアミドである。リチウムジイソプロピルアミドは、そのままで反応混合物に添加することができるか、又はその場で形成することができることに留意されたい。好ましい実施形態では、ジイソプロイルアミンとn-ブチルリチウムとの組み合わせを反応混合物に添加して、その場でリチウムジイソプロピルアミドを形成する。
【0029】
本発明の一実施形態では、塩基と式(5)で表される化合物とのモル比は、少なくとも0.1、好ましくは少なくとも0.5、より好ましくは少なくとも0.8、最も好ましくは少なくとも1であり、一般に最大10、好ましくは最大8、より好ましくは最大6、最も好ましくは最大5である。
【0030】
必要に応じて、このプロセスステップ中に触媒が存在する。本発明の一実施形態では、触媒は、非ラセミ触媒である。適切な触媒の例としては、キラルビス(オキサゾリン)銅(II)錯体、並びにL-プロリン及び5,5-ジメチルチアゾリジニウム-4-カロキシレ-ト(DMTC)から誘導された触媒などのキラルアミノ酸誘導触媒が挙げられる。
【0031】
本発明の一実施形態では、触媒と式(5)で表される化合物とのモル比は、少なくとも0.001、好ましくは少なくとも0.002、より好ましくは少なくとも0.005、最も好ましくは少なくとも0.01であり、一般に最大1、好ましくは最大0.5、より好ましくは最大0.2、最も好ましくは最大0.1である。
【0032】
必要に応じて、このプロセスステップ中に溶媒が存在する。適切な溶媒の例としては、ペンタン、ヘキサン、及びヘプタンなどのアルカン、tert-ブチルメチルエ-テル及びテトラヒドロフラン(THF)などのエ-テルが挙げられる。また、2つ以上の溶媒の組み合わせも考えられる。好ましくは、溶媒は、アルカン、特にヘキサン及びヘプタン、並びにTHFから選択される。最も好ましくは、溶媒は、THFである。
【0033】
一実施形態では、反応混合物は、反応混合物の総重量に基づいて、少なくとも50重量%(wt%)の量の溶媒を含む。好ましくは、溶媒は、反応混合物の総重量に基づいて、少なくとも55重量%、より好ましくは少なくとも60重量%、さらにより好ましくは少なくとも65重量%、最も好ましくは少なくとも70重量%、かつ好ましくは最大99重量%、より好ましくは最大95重量%、さらにより好ましくは最大90重量%、最も好ましくは最大85重量%の量で存在する。反応混合物は、式(5)で表される化合物を式(2)で表される化合物に変換するために必要なすべての成分を含み、すなわち、式(5)で表される化合物、塩基、(任意選択の)溶媒、及び存在する任意の他の成分を含む。
【0034】
一態様では、このプロセスステップは、少なくとも-100℃、好ましくは少なくとも-50℃、より好ましくは少なくとも-20℃、最も好ましくは少なくとも-10℃、かつ好ましくは最大30℃、より好ましくは最大20℃、最も好ましくは最大10℃の温度で行われる
【0035】
本発明のプロセスは、代替的又は追加的に、式(3)で表される化合物が、
(d)以下の式(6):
【0036】
【化6】
で表される化合物を、酸触媒の存在下で脱水するステップにより形成されるステップを含んでよい。
【0037】
好ましくは、プロセスのこのステップ(c)は、連続モ-ドでさらに行われうる。このステップを連続モ-ドで行う利点は、式(3)の形成された化合物を式(3)で表される化合物の貯蔵及び/又は輸送の必要なしに、上記の本発明のプロセスのステップ(a)に連続的に供給することができることである。アクロレインなどの式(3)で表される化合物は、一般に危険で毒性があり、輸送及び貯蔵に費用がかかる。さらに、そのような貯蔵及び輸送は、式(3)で表される化合物の重合生成物の存在を増加させ、これはプロセスの収率を減少させ、精製ステップを必要とする。プロセスのステップ(a)への式(3)で表される化合物の即時及び/又は継続的な使用は、これらの問題を克服し、さらに、良好なプロセス制御を可能にし、プロセスの安全性及び安定性を高める。
【0038】
式(6)で表される化合物を、式(6)で表される化合物を脱水して式(3)で表される化合物を形成することができる酸触媒と接触させる。式(3)で表される化合物は、続いて、本発明のプロセスのステップ(a)で使用して、式(4)で表される化合物を形成することができる。酸触媒は、本発明のプロセスにおいて適切に使用することができる任意の酸であり得る。そのような酸の例としては、硫酸、リン酸、重硫酸カリウム/硫酸カリウム混合物、塩化水素、p-トルエンスルホン酸(pTsOH)、及びメタンスルホン酸が挙げられる。好ましくは、酸は、硫酸である。
【0039】
本発明の一実施形態では、酸触媒と式(6)で表される化合物とのモル比は、少なくとも0.001、好ましくは少なくとも0.003、より好ましくは少なくとも0.005、最も好ましくは少なくとも0.01であり、一般に最大1、好ましくは最大0.5、より好ましくは最大0.3、最も好ましくは最大0.2である。
【0040】
必要に応じて、プロセスのこのステップ中に溶媒が存在する。適切な溶媒の例としては、アルコ-ル、特に沸点が180℃以上、好ましくは200℃以上のアルコ-ル、例えば、テトラエチレングリコ-ルのようなアルキレングリコ-ル、ポリエチレングリコ-ル、ポリプロピレングリコ-ル、及びジフェニルエ-テルなどのエ-テルが挙げられる。また、2つ以上の溶媒の組み合わせも考えられる。好ましくは、溶媒は、アルコ-ル、特にポリエチレングリコ-ルである。
【0041】
一実施形態では、反応混合物は、反応混合物の総重量に基づいて、少なくとも1重量%(wt%)の量の溶媒を含む。好ましくは、溶媒は、反応混合物の総重量に基づいて、少なくとも3重量%、より好ましくは少なくとも5重量%、さらにより好ましくは少なくとも8重量%、最も好ましくは少なくとも10重量%、かつ好ましくは最大50重量%、より好ましくは最大30重量%、さらにより好ましくは最大25重量%、最も好ましくは最大20重量%の量で存在する。反応混合物は、式(6)で表される化合物を式(3)で表される化合物に変換するために必要なすべての成分を含み、すなわち、式(6)で表される化合物、酸、(任意選択の)溶媒、及び存在する任意の他の成分を含む。
【0042】
一態様では、このプロセスステップは、少なくとも150℃、好ましくは少なくとも170℃、最も好ましくは少なくとも190℃、かつ好ましくは最大250℃、より好ましくは最大230℃、最も好ましくは最大220℃の温度で行われる
【0043】
本発明はさらに、以下の式(2):
【0044】
【化7】
(式中、Rは独立して、C-C アルキル、シクロアルキル、アラルキル、及びアリ-ルから選択され、Rは独立して、水素並びにC-C アルキル、シクロアルキル、アラルキル、及びアリ-ルから選択される)
で表される化合物を調製するためのプロセスであって、
(a)以下の式(5):
【0045】
【化8】
で表される化合物を塩基と接触させるステップを含み、
ステップ(a)が、連続モ-ドで行われる、プロセスに関する。
【0046】
反応物及び量は、上記の通りである。
【0047】
本発明はさらに、以下の式(3)の化合物:
【0048】
【化9】
(式中、R及びRは独立して、水素並びにC-C アルキル、シクロアルキル、アラルキル、及びアリ-ルから選択される)
で表される化合物を調製するためのプロセスであって、
(a)以下の式(6)の化合物:
【0049】
【化10】
で表される化合物を酸触媒の存在下で脱水するステップを含み、
ステップ(a)が、連続モ-ドで行われる、プロセスに関する。
【0050】
好ましくは、式(6)で表される化合物は、グリセロ-ルであり、式(3)で表される化合物は、アクロレインである。
【0051】
反応物及び量は、上記の通りである。
【0052】
本発明のプロセスは、好ましくは連続モ-ドで行われる。適切な連続反応器としては、連続運転撹拌タンク反応器、マイクロ反応器、又はミリ反応器が挙げられる。これらのそれぞれは、反応チャネル構造の寸法及び構造においてのみ従来のサイズの反応器と異なる。マイクロ反応器又はミリ反応器は、マイクロメ-トル(マイクロ反応器)からミリメ-トル(ミリ反応器)の特徴的な寸法(チャネル幅及び深さ、又はプレ-ト幅)を有する小型反応器である。特徴的な寸法は、マイクロ反応器を通る反応混合物の流れに垂直な寸法である。特徴的な寸法は、例えば0.1mm~20mm、典型的には、1~10mm、例えば2~5mmである。一実施形態では、本発明のプロセスは、マイクロ反応器又はミリ反応器で行うことができ、式(6)で表される化合物の式(3)で表される化合物への変換は、連続運転撹拌タンク反応器で行われる
【0053】
好ましくは、マイクロ反応器又はミリ反応器は、水力直径が20mm以下のチャネルを有する反応器として定義される。水力直径Dhは、4A/Uとして定義され、Aは、反応器チャネルの断面積であり、Uは、前記断面の周囲長である。そのような反応器は、当技術分野において、例えば、V.Hessel and H.Lowe,“Mikroverfahrenstechnik:Komponenten,Anlagen-konzeption,Anwenderakzeptanz”,Chem.Ing.Techn.74,2002,pages 17-30,185-207 and 381-400、S.Lobbecke et al.,“The Potential of Microreactors for the Synthesis of Energetic Materials”,31st Int.Annu.Conf.ICT;Energetic Materials-Analysis,Diagnostics and Testing,33,27-30 June 2000,Karlsruhe,Germanyに記載されている。マイクロ反応器、マイクロ混合機、マイクロ熱交換器は、例えばドイツ(すなわち、IMM、Mainz、及びForschungszentrum Karlsruhe)並びに米国(すなわち、MIT及びDuPont)で開発されている。
【0054】
マイクロ反応器又はミリ反応器を使用する利点は、反応器との間で非常に効果的な熱伝達があり、高度に発熱性の反応の良好な制御が可能なことである。また、試薬及び製品の量が少なく、これは、あらゆる爆発が小規模なもののみになるため、安全性が向上することを意味する。
【0055】
一実施形態では、プロセスステップ(c)、すなわち化合物(5)から化合物(2)への変換、及び(d)すなわち化合物(6)から化合物(3)への変換は、連続モ-ドで行われ、特に、これらのステップは、連続撹拌タンク反応器、マイクロ反応器、又はミリ反応器で実行され、後続の生成物流は、さらなるマイクロ反応器又はミリ反応器で混合され、式(2)及び(3)で表される化合物から式(4)で表される化合物への変換が続行される。混合は、従来の混合機、好ましくは従来の撹拌機又はT-混合機などの静的混合機を使用して行うことができる。
【0056】
図面の簡単な説明を以下に示す。
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1ポンプの流量及びチューブの内径を含む、R=tert.ブチル及びR=R=R=Hであるペンテノエート(1)の生成のための配置である。
【0058】
本発明を以下の実施例で例示する。
【実施例
【0059】
実施例1:グリセロ-ルからのアクロレインの連続合成
連続撹拌タンク反応器に、14gのグリセロ-ル、40gのKHSO、及び8gのKSOを入れる。混合物を200~230℃まで加熱する。次いで、連続動作中に、グリセロ-ルを90分かけて380μL/分の速度で添加する。グリセロ-ルの添加中、アクロレイン及び水を390μl/分の一定速度で留去するため撹拌タンク反応器内の容積を1mlで一定に保つ必要がある。90分の間に35.1mlが蒸留された。留出物は、水及びアクロレインで構成されていた。
【0060】
実施例2:グリセロ-ルからのアクロレインの連続合成
連続撹拌タンク反応器に、28gのグリセロ-ル、80gのKHSO、及び16gのKSOを入れる。混合物を200~230℃まで加熱する。次いで、連続動作中に、グリセロ-ルを300分かけて1600μL/分の速度で添加する。グリセロ-ルの添加中、アクロレイン及び水は、1230μl/分の一定速度で留去された。300分の間に365mlが蒸留された。留出物は、水及びアクロレインで構成されていた。
【0061】
実施例3:R=tert.ブチル及びR=R=R=Hである化合物(1)の連続生成
図1に描写された配置では、示された組成物の示されたプロセスフロ-が反応して、82%の粗収率(tert-ブチルアセテ-トに基づく)及び86%の純度(1H-NMR、内部標準としてピリジンにより決定)で、71%の純粋な生成物の収率を示す、R=tert.ブチル及びR=R=R=Hである化合物(1)を形成する。
図1