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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-27
(45)【発行日】2022-05-11
(54)【発明の名称】表示媒体
(51)【国際特許分類】
   G09F 19/14 20060101AFI20220428BHJP
   B41M 3/00 20060101ALI20220428BHJP
【FI】
G09F19/14
B41M3/00 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020018033
(22)【出願日】2020-02-05
(62)【分割の表示】P 2019151127の分割
【原出願日】2019-08-21
(65)【公開番号】P2021033253
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2020-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】598138327
【氏名又は名称】株式会社ドワンゴ
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 快勢
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-036400(JP,A)
【文献】特開2009-128771(JP,A)
【文献】特開2008-040265(JP,A)
【文献】特開2017-087470(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 19/14
B41M 1/06
B41M 1/10
B41M 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に出射する光と第2の方向に出射する光で、それぞれ異なるコンテンツを表示する表示媒体であって、
光を透過するシート部材で形成され、1以上の点で形成される点群が設けられ、少なくとも一部が重複する複数のレイヤを備え、
前記第1の方向に出射する光と前記第2の方向に出射する光のそれぞれが、前記複数のレイヤのそれぞれを通過する各部分に基づいて、前記第1の方向および前記第2の方向にそれぞれ対応する第1のコンテンツおよび第2のコンテンツを表示し、
前記第1のコンテンツにおける点の位置および点の重なりが生じる位置ならびに各位置の濃淡と、前記第2のコンテンツにおける点の位置および点の重なりが生じる位置ならびに各位置の濃淡とが異なるように、前記複数のレイヤが形成され、
前記点が設けられるレイヤよりも視点に近いレイヤによる光の減衰を考慮して、前記複数のレイヤが形成され
前記点が設けられるレイヤよりも視点に近いレイヤによる光の減衰によって生じる濃淡から、前記第1のコンテンツが第1の方向で表示する目標画像に近くなり、かつ前記第2のコンテンツが第2の方向で表示する目標画像に近くなるように、前記複数のレイヤが形成され
ことを特徴とする表示媒体。
【請求項2】
第1の方向に出射する光と第2の方向に出射する光で、それぞれ異なるコンテンツを表示する表示媒体であって、
光を透過するシート部材で形成され、1以上の点で形成される点群が設けられ、少なくとも一部が重複する複数のレイヤを備え、
前記第1の方向に出射する光と前記第2の方向に出射する光のそれぞれが、前記複数のレイヤのそれぞれを通過する各部分に基づいて、前記第1の方向および前記第2の方向にそれぞれ対応する第1のコンテンツおよび第2のコンテンツを表示し、
前記第1の方向に出射する光が前記複数のレイヤのそれぞれを通過する各部分における点の有無と、前記第1の方向に出射する光が通過する方向における点の重なりの有無により、前記第1の方向に出射する光が減衰する位置および透過率と、
前記第2の方向に出射する光が前記複数のレイヤのそれぞれを通過する各部分における点の有無と、前記第2の方向に出射する光が通過する方向における点の重なりの有無により、前記第2の方向に出射する光が減衰する位置および透過率とは、異なり、
前記点が設けられるレイヤよりも視点に近いレイヤによる光の減衰を考慮して、前記点の位置が決定され
前記点が設けられるレイヤよりも視点に近いレイヤによる光の減衰によって生じる濃淡から、前記第1のコンテンツが第1の方向で表示する目標画像に近くなり、かつ前記第2のコンテンツが第2の方向で表示する目標画像に近くなるように、前記点の位置が決定され
ことを特徴とする表示媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
方向に依存して互いに異なる画像を表示する表示媒体は、その観察者の目を引き、注目されやすいので、広告用のポスター、カード等に使われる。このような表示媒体を制作するために、一般的に、特殊な装置と機材を要する。
【0003】
例えば、表示装置が左側表示用の画素列と、右側表示用の画素列を左右方向に並べて表示し、表示装置に、光を遮断する遮光部材を縦長に配設した視差バリアを設ける表示方法がある(特許文献1参照)。特許文献1は、左側からは、左側表示用の画素列により構成されるコンテンツを観察し、右側からは、右側表示用の画素列により構成されるコンテンツを観察することができる。
【0004】
万線状のパターンが印刷された2枚のシートを重ねる角度を変えることで、異なる模様を表示する表示媒体がある(非特許文献1ないし3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公報第2006/049213号
【非特許文献】
【0006】
【文献】SYLVAIN M. CHOSSON and ROGER D. HERSCH, "Beating Shapes Relying on Moire Level Lines"、ACM Transactions on Graphics, Vol. 34, No. 1, Article 9, Publication date: December 2014.
【文献】Thomas Walger and Roger David Hersch, "Hiding Information in Multiple Level-line Moires"、DocEng '15 Proceedings of the 2015 ACM Symposium on Document Engineering, Pages 21-24
【文献】Roger David Hersch, Sylvain Chosson, "Band Moire Images"、SIGGRAPH '04 ACM SIGGRAPH 2004 Papers, Pages 239-247
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の表示方法は、右側表示用の画素列を左右方向に並べて表示する表示装置と、光を遮断する遮光部材を縦長に配設した視差バリアを要する。
【0008】
また非特許文献1ないし3は、いずれも、2枚のシートを重ねる角度を変えることで、異なる模様を表示するので、異なる模様を表示するために、シートが重なる角度を変更するための時間差が生じる。非特許文献1ないし3は、複数の方向に対して同時に異なるコンテンツを表示するものではない。
【0009】
このように、複数の方向に対して同時に異なるコンテンツを容易に表示する技術について、開示がない。
【0010】
従って本発明の目的は、複数の方向に対して同時に異なるコンテンツを容易に表示する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の第1の特徴は、第1の方向に出射する光と第2の方向に出射する光で、それぞれ異なるコンテンツを表示する表示媒体に関する。本発明の第1の特徴に係る表示媒体は、光を透過するシート部材で形成され、1以上の点で形成される点群が設けられ、少なくとも一部が重複する複数のレイヤを備え、第1の方向に出射する光と第2の方向に出射する光のそれぞれが、複数のレイヤのそれぞれを通過する各部分に基づいて、第1の方向および第2の方向にそれぞれ対応する複数のコンテンツを表示する。
【0012】
複数のレイヤのそれぞれに、点が離散的に設けられて、点群が形成されても良い。
【0013】
第1の方向に出射する光が点群によって減衰する位置および透過率と、第2の方向に出射する光が点群によって減衰する位置および透過率との差異により、第1の方向および第2の方向にそれぞれ対応する複数のコンテンツを表示しても良い。
【0014】
点群は、プリンタによって噴射されたインクであっても良い。
【0015】
本発明の第2の特徴は、上記表示媒体の点群が設けられる位置を決定する処理装置に関する。第2の特徴に係る処理装置は、第1の方向で表示する目標画像となる第1の入力画像と、第1の方向で表示される第1の出力画像との差分が小さくなるように、かつ、第2の方向で表示する目標画像となる第2の入力画像と、第2の方向で表示される第2の出力画像との差分が小さくなるように、複数のレイヤのそれぞれに点群が設けられる位置を決定する点群決定部を備える。
【0016】
点群決定部は、さらに、点群による光の減衰と、第1の方向の光と第2の方向の光が通過するシート部材による光の減衰によって生じる出力画像における濃淡から、点群が設けられる位置を決定しても良い。
【0017】
点群は、プリンタによって噴射されたインクであって、点群決定部は、複数のレイヤのそれぞれを、仮想的なセルに区分し、複数のレイヤのそれぞれを区分するセルにおける濃度を決定し、セルにおいて、決定した濃度になるように、セルにおけるインクの噴射位置を決定しても良い。
【0018】
第1の入力画像における所定の濃度に対する、表示媒体が表現する濃度の差が小さくなるように、第1の入力画像の色域を変更し、第2の入力画像における所定の濃度に対する、表示媒体が表現する濃度の差が小さくなるように、第2の入力画像の色域を変更する色域決定部を備え、色域決定部によって変更された第1の入力画像と第2の入力画像について、点群決定部によって新たな点群の位置が決定されても良い。
【0019】
本発明の第3の特徴は、上記表示媒体の点群が設けられる位置を決定する処理プログラムに関する。第3の特徴に係る処理プログラムは、コンピュータを、第1の方向で表示する第1の入力画像と、第1の方向で表示される第1の出力画像との差分が小さくなるように、かつ、第2の方向で表示する第2の入力画像と、第2の方向で表示される第2の出力画像との差分が小さくなるように、複数のレイヤのそれぞれに点群が設けられる位置を決定する点群決定部として機能させる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、複数の方向に対して同時に異なるコンテンツを容易に表示する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施の形態にかかる表示媒体を説明する図である。
図2】表示媒体において、コンテンツを表示する光の方向を説明する図である。
図3】各レイヤに設けられる点群の一例を示す図である。
図4】各視点で確認される画像の一例を説明する図である。
図5】反射光から視点までの光の経路を説明する図である。
図6】本発明の実施の形態にかかる処理装置のハードウエア構成および機能ブロックを説明する図である。
図7】色域決定部の説明において参照される入力画像の一例である。
図8】色域決定部の説明において参照されるシミュレーション画像の一例である。
図9】本発明の実施の形態にかかる処理方法を説明するフローチャートである。
図10】本発明の実施の形態に係る表示媒体の表示対象となる入力画像の一例である。
図11】本発明の実施の形態に係る処理装置によって変更された入力画像の一例である。
図12】本発明の実施の形態に係る処理装置によって算出された各レイヤの点群の一例である。
図13】本発明の実施の形態に係る処理装置によって算出された各レイヤの点群によって表示される出力画像の一例である。
図14】シートの透過率を算出する処理を説明する図である。
図15】インクの透過率を算出する処理を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一または類似の部分には同一または類似の符号を付している。
【0023】
本発明の実施の形態において、表示媒体1を形成するシート部材の平面を、X方向およびY方向に形成されるXY平面と称する。シートの厚みであって、シートを重ねる方向を、Z方向と称する。
【0024】
(表示媒体)
図1を参照して、本発明の実施の形態に係る表示媒体1を説明する。表示媒体1は、第1の方向に出射する光と第2の方向に出射する光で、それぞれ異なるコンテンツを同時に表示する。本発明の実施の形態において表示媒体1は、光源は全方位に存在する場合を想定する。表示媒体1は、特定の光源を有する場合でも、表示媒体1から出射する光が視認できればよく、特定の光源を有さなくても良い。表示媒体1がコンテンツを表示する第1の方向および第2の方向を総称して、指定方向と称する場合がある。
【0025】
表示媒体1は、複数のレイヤを含む。各レイヤは、厚みがあり、光を透過するシート部材で形成される。各レイヤを形成するシート部材の平面に、1以上の点で形成される点群が設けられる。点群は、1以上の点の集合である。各レイヤにおいて設けられた1以上の点のパターンを、点群と称する。点は、光の一部を遮蔽して、光を部分的に透過する。
【0026】
各レイヤは、少なくとも一部が重複するように形成される。各レイヤが重複するそれぞれの部分に、点群が設けられる。図1に示す表示媒体1は、第1のレイヤL1と第2のレイヤL2を有する場合を説明するが、これに限らない。表示媒体1は、2以上の複数のシート部材を重ねて、2以上のレイヤが形成されればよい。
【0027】
表示媒体1において、複数のレイヤのそれぞれに、点が離散的に設けられて、点群が形成される。点は、部分的に集中的に形成されたり分散的に形成されたりして、各レイヤにおいて離散的に形成される。本発明の実施の形態において、各レイヤが点で塗りつぶされる態様は想定していない。
【0028】
各レイヤで形成される点群は、例えば、プリンタによって噴射されたインクである。点群を形成する1つの点は、プリンタがインクを1回噴射して形成されても良いし、所定回噴射して形成されても良い。プリンタは、所定箇所に1回以上噴射して、格子状に並列に点を印刷することができる。点群は、格子状に印刷可能な点のうち、所定位置の点が印刷されて構成される。
【0029】
表示媒体1は、第1の方向D1に出射する光と第2の方向D2に出射する光のそれぞれが、複数のレイヤのそれぞれを通過する各部分に基づいて、第1の方向D1および第2の方向D2にそれぞれ対応する複数のコンテンツを表示する。表示媒体1は、観察者が表示媒体1を観察した際の視線上の点の有無によって、コンテンツを表示する。表示媒体1は、観察者が表示媒体1を観察する方向によって、視線上の点の有無の状況が異なるように形成する。また表示媒体1は、視線上で重なる点の数によって異なる濃度(輝度)を表現する。さらに表示媒体1は、視線上で点に重畳されるシートの数によって濃度が減衰する。表示媒体1から光が出射する方向によって、点の有無および濃度の減衰に差異が生じ、それぞれ異なるコンテンツを表示する。
【0030】
第1の方向D1に出射する光が、各レイヤを通過する位置の点の有無によって、観察者が、第1の方向D1から出射する光を観察する際の点の濃淡とその位置が決定される。同様に、第2の方向D2に出射する光が、各レイヤを通過する位置の点の有無によって、観察者が、第2の方向D2から出射する光を観察する際の点の濃淡とその位置が決定される。複数のレイヤでそれぞれ所定の位置に点が設けられることにより、第1の方向D1に出射する光が通過する点の位置と、第2の方向D2に出射する光が通過する点の位置とを、異ならせることができる。従って表示媒体1は、第1の方向D1から出射する光で表示する第1の出力画像と、第2の方向D2から出射する光で表示する第2の出力画像とが、異なるように形成することができる。
【0031】
表示媒体1は、基材Bの上に、複数のレイヤを形成しても良い。基材Bは、表示媒体1の視認性を向上させるために、表示媒体1が設置される周囲の状況に応じて、任意に配設される。基材Bは、観察者が表示媒体1を観察した際に、表示媒体1の先の背景を遮蔽し、点群により形成される画像の視認性を向上する。基材Bは、点群の色と同系色の色を避け、点群の色がわかりやすい色を有することが好ましい。例えば点が黒の場合、基材Bは、白である。基材Bの材質は問わないが、例えば紙であっても良い。
【0032】
本発明の実施の形態において表示媒体1がコンテンツを表示する方向は、図2に示すように、Z方向よりも傾き、XY平面に対して所定の仰角(<90°)を有する方向である。第1の方向D1は、Z方向に対して左方向に傾き、第2の方向D2は、右方向に傾く。
【0033】
なお図2に示すコンテンツを表示する方向は一例であって、これに限るものではない。例えば、図2に示す2方向のみならず、3方向以上にコンテンツを表示しても良い。表示媒体1は、例えば、Z方向にコンテンツを表示しても良いし、第1の方向D1または第2の方向の仰角を変更した方向にコンテンツを表示しても良い。表示媒体1は、2方向以上の任意の数の方向に、コンテンツを表示することができる。
【0034】
図3ないし図4を参照して、表示媒体1の仕組みを説明する。
【0035】
図3(a)および(b)に示すように、各レイヤには、1以上の点が設けられる。第1のレイヤL1には、点L1aおよび点L1bが、互いに離れて設けられる。第2のレイヤL2には、点L2aが設けられる。第1のレイヤL1および第2のレイヤL2を重ねた状態で、点L1aおよび点L2aは、図3(c)に示すように、一部が重なった位置に形成される。
【0036】
第1のレイヤL1および第2のレイヤL2を重ねて、図2に示す第1の方向D1で観察すると、図4(a)に示す第1の出力画像T1が観察される。第1の出力画像T1では、第1のレイヤL1の点L1aと、第2のレイヤL2の点L2aが重なって見える。従って、第1の出力画像T1において、2つの点が観察される。また、左側の点は、2つの点L1aおよびL2aが重なって形成されるので、右側の点よりも濃く観察される。
【0037】
第1のレイヤL1および第2のレイヤL2を重ねて、図2に示す第2の方向D2で観察すると、図4(b)に示す第2の出力画像T2が観察される。第2の出力画像T2では、第2のレイヤL2の点L2aは、第1のレイヤの点L1aおよびL1bの点の間に観察される。従って、第2の出力画像T2において、3つの点が連なった棒形状が観察される。第2のレイヤL2の上に第1のレイヤL1を形成する場合、第2のレイヤL2の点L2aは、第1のレイヤL1のシートによる減衰の影響を受ける。一方、第1のレイヤL1の点L1aおよびL2bは、表示媒体1の最上シートの上面に設けられるので、シートによる減衰の影響を受けない。従って、図3(b)に示すように1重の点が連なった棒形状であっても、中央の点L2aは、左右両脇の点L1aおよびL1bよりも薄く観察される。
【0038】
なお、図1に示すように、所定の仰角で表示媒体1を観察するので、各視点から観察される画像は、遠近法により台形に形成されるが、図4に示す図は、台形補正をしたものである。
【0039】
このように表示媒体1は、第1の方向D1に出射する光が点群によって減衰する位置および透過率と、第2の方向D2に出射する光が点群によって減衰する位置および透過率との差異により、第1の方向D1および第2の方向D2にそれぞれ対応する2つのコンテンツを表示する。図3および図4に示すように、表示媒体1において、第1の方向D1に出射する光が点群によって減衰する位置および透過率と、第2の方向D2に出射する光が点群によって減衰する位置および透過率とは異なる。
【0040】
ここで、透過率は、光が通過する点の数によって異なる。光が通過する点の数が多いほど、透過率は低くなる。光が通過する点の数が少ないほど、透過率は高くなる。また透過率は、視線上において点に重畳されるシートの数によっても異なる。重畳されるシートの数が多いほど、透過率は低くなる。重畳されるシートの数が少ないほど、透過率は高くなる。
【0041】
このように、視点から確認できる画像において、位置に応じて減衰率が異なることにより、所望の画像を表示することができる。これにより、表示媒体1は、異なる視点に対して、異なる画像を表示することができる。
【0042】
図5を参照して、所定の方向から出射する光が形成する画像を説明する。図5に示す表示媒体1は、上から第1のレイヤL1、第2のレイヤL2および第3のレイヤL3の順に重ねられる。第1のレイヤL1に、点L1aが設けられる。第2のレイヤL2に、点L2aが設けられる。第3のレイヤL3に、点L3aが設けられる。第1のレイヤL1の点L1aと第2のレイヤL2の点L2aは、Z方向に重なる。第3のレイヤL3の点L3aは、第1のレイヤL1の点L1aと第2のレイヤL2の点L2aとは、Z方向に重ならない。
【0043】
図5に示す視線は、第1のレイヤL1の点L1aと、第3のレイヤL3の点L3aを通過する。図5に示す視点に入る光は、第1のレイヤL1の点L1aと、第3のレイヤL3の点L3aによって減衰する。
【0044】
視点に入る光は、点群以外によっても減衰する。例えば、視点に入る光は、各レイヤを構成するシートによって減衰する。図5に示す視点に入る光は、第1のレイヤL1、第2のレイヤL2および第3のレイヤL3を構成するシートによって減衰する。またレイヤを構成する印刷用の透明シートは、インクが乗りやすいように、表面加工が施され、半透明性(translucent)を有するので、視点に入射する光は、シートの半透明性により、シートの表面で反射して、さらに減衰する。
【0045】
このように表示媒体1は、各レイヤの点群の重なりによって、各レイヤの点群位置とは異なる点群の粗密が現れることにより、モアレと呼ばれる現象を生じさせる。表示媒体1は、見る方向によって点の粗密が異なるため、見る方向によって異なる濃度を表示し、異なるモアレを生じさせる。これにより表示媒体1は、見る方向によって、異なる画像を表示することができる。
【0046】
(点群の位置の解法)
ここで、図1等を参照して説明した表示媒体1において、所望の画像を表示するための各レイヤの点群の位置を算出する方法を説明する。
【0047】
本発明の実施の形態において、入力画像は、表示媒体1の表示対象の目標画像である。出力画像は、表示媒体1が表示する画像である。入力画像は、表示媒体1が想定する方向の数に応じて予め用意される。例えば、図1に示すように2つの方向から異なるコンテンツを表示する場合、2つの入力画像が、用意される。また、2つの入力画像が用意される場合、表示媒体1も2つの出力画像を表示する。
【0048】
なお、各レイヤに設けられる点群は、画像で点の位置を指定できるように、格子状の点の有無で定義する。プリンタのインクの噴射により点が形成される場合、点の位置は、プリンタの精度に依存する。
【0049】
入力画像を、式(1)で表現する。
【0050】
【数1】
【0051】
このとき、式(2)を満たすように、各レイヤの点群が形成される。
【0052】
【数2】
【0053】
式(2)に示すように、表示媒体1は、(1)yに近いy’を形成し、(2)y’の色域内に、yの色域を納まる条件を満たして、各レイヤの点群の位置を最適化する必要がある。この最適化問題を解くために、出力画像y’の値域は、0から1とする。また1つのセルに相当する領域の輝度は、正規化により、0から1の値に写像する。
【0054】
表示媒体1の各シートに点群が形成されるため、点が設けられない部分は、空白となる。そこで本発明の実施の形態において、このような空白部分に光が入射すると、シート自体の反射が発生するので、その影響を考慮して、レンダリングモデルを設計する必要がある。インクが一面に塗布されるケースの場合、シートの反射による影響は小さいが、表示媒体1においてインクが離散的に印刷され空白部分が大きいため、シート自体の反射による影響を考慮するのが好ましい。
【0055】
出力画像y’をシミュレーションするレンダリングモデルを説明する。ここで図5に示すように、第1のレイヤL1を0番目のシート、第2のレイヤL2を1番目のシート、第3のレイヤL3を2番目のシートと称する。なお、図5には図示しないが、シートの底面(0から数えてn番目)には、白色反射材の基材Bが設けられる。
【0056】
シートに印刷される点群を、式(3)に示す。
【0057】
【数3】
【0058】
i番目のシートの点群の有無を示したベクトルは、式(4)に示される。なお、各レイヤに設けられる点の最大数zは、入力画像のセル数mよりも多くなり、各レイヤの解像度は、入力画像よりも高い。各レイヤに設けられる点の最大数zは、プリンタが各レイヤにインクを噴射可能な位置の数に対応する。
【0059】
【数4】
【0060】
本発明の実施の形態において、インクで形成される点による光の透過率は、qにより定義される。qは、クベルカムンクのモデルにより、光の経路長に依存して異なる。インク中の光の経路長は、式(5)で表現される。
【0061】
【数5】
【0062】
透過率qは、シートに対して垂直方向での光の透過率に対して、1/sin(α)を乗じた値となる。
【0063】
印刷用の透明シートには、インクが乗りやすいように表面加工が施されている。そのため、シートは、半透明性を有する。レンダリングにおいて、この半透明性は、シート表面の光の反射として扱う。1枚当たりの表面の反射光をrとする。なお、光源は全方位に存在し、反射光は全方位に等方的に拡散すると仮定する。そのため、光源の位置は考慮しない。
【0064】
i番目のシート表面での指定方向への反射光の光量をriとする。i番目のシート表面での反射光だけに注目すると、指定方向に抜ける光は、i番目のシートから0番目のシート上の点群を通過する。反射後の光は、i-1枚のシートを通過する。印刷面の反射により、通過時に光は、減衰する。riが視点に届く時の像は、式(6)で表される。
【0065】
【数6】
【0066】
なお、シートの底面(0から数えてn番目)に設けられる基材Bの反射光も、シートの反射光と同様に扱われる。また、dnは、全て1とする。すべてのシートの反射光は、加算合成される、指定方向での点群Dの像y’’は、式(7)で定義される。
【0067】
【数7】
【0068】
指定方向の像は、式(8)で求まる。
【0069】
【数8】
【0070】
式(8)を、式(6)および式(7)に代入し、整えると、指定方向での出力画像y’は、式(9)で示される。
【0071】
【数9】
【0072】
ここで、各レイヤの点群Dは、式(10)により算出される。なお、入力画像y、指定方向a、シートの透過率b、インクの透過率q、シートの数n、射影関数pおよび行列fは、予め与えられる。またaは、指定方向の集合であって、yは、各指定方向に対応する入力画像の集合である。所定の指定方向およびその指定方向に対応する入力画像は、kによって特定される。
【0073】
【数10】
【0074】
(処理装置)
図6を参照して、本発明の実施の形態に係る処理装置2を説明する。処理装置2は、表示媒体1の点群が設けられる位置を決定する。処理装置2は、所望の入力画像を表示するための各レイヤの点群の位置を算出して、各レイヤの点群の位置をプリンタ等に出力する。プリンタは、処理装置2から入力された各レイヤの点群の位置に従って点群を印刷する。プリンタによって点群が印刷された各シートを重ねることにより、図1等を参照して説明した表示媒体1が形成される。
【0075】
処理装置2は、処理制御装置20、記憶装置10および入出力インタフェース30を備える一般的なコンピュータである。一般的なコンピュータが処理プログラムを実行することにより、図6に示す機能を実現する。
【0076】
処理制御装置20は、CPU(Central Processing Unit)であって、処理装置2における処理を実行する。記憶装置10は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random access memory)、ハードディスク、SSD等であって、処理制御装置20が処理を実行するための入力データ、出力データおよび中間データなどの各種データを記憶する。入出力インタフェース30は、処理制御装置20が、外部装置とデータを送受信するためのインタフェースである。外部装置は、マウス、キーボード等の入力装置、ディスプレイ装置、プリンタ等の出力装置、コンピュータ読取り可能な記録媒体等である。
【0077】
処理プログラムは、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)、USB(Universal Serial Bus)メモリ、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)などのコンピュータ読取り可能な記録媒体に記憶されても良いし、ネットワークを介して配信されても良い。
【0078】
記憶装置10は、入力画像群データ11、パラメータデータ12および点群データ13を記憶する。
【0079】
入力画像群データ11は、各指定方向に対応する入力画像の集合データである。入力画像は、表示媒体1の表示対象の目標画像である。
【0080】
パラメータデータ12は、処理装置2が、各シートの点群の位置を決定するために用いるシートの特定のデータである。パラメータデータ12は、上記の式(10)に基づいて、出力画像をシミュレーションするために必要なパラメータの値である。パラメータは、具体的には、指定方向a、シートの透過率b、インクの透過率q、1つのレイヤに設けられる点の最大数z、シートの数n、射影関数pおよび行列fである。パラメータデータ12は、点群の位置を決定する処理の前に、記憶装置10に記憶される。
【0081】
点群データ13は、処理制御装置20が算出した各シートの点群の位置を特定するデータである。点群データ13は、プリンタに入力され、所望の位置に点を印刷するためのデータである。
【0082】
処理制御装置20は、点群決定部21、色域決定部22および出力部23を備える。
【0083】
点群決定部21は、第1の方向で表示する目標画像となる第1の入力画像と、第1の方向で表示される第1の出力画像との差分が小さくなるように、かつ、第2の方向で表示する目標画像となる第2の入力画像と、第2の方向で表示される第2の出力画像との差分が小さくなるように、複数のレイヤのそれぞれに点群が設けられる位置を決定する。点群決定部21は、各指定方向の出力画像をシミュレーションし、入力画像と最も近くなるように、点群を最適化する。第1の入力画像および第2の入力画像は、表示媒体1が各方向に表示したい画像である。処理装置2は、表示媒体1が、第1の入力画像および第2の入力画像を表示できるように、表示媒体1の点群の位置を算出する。第1の出力画像および第2の出力画像は、処理装置2が算出した点群の位置に従って形成された表示媒体1が、各方向に表示する画像である。
【0084】
ここで点群決定部21は、点群による光の減衰によって生じる出力画像における濃淡から、点群が設けられる位置を決定しても良い。点群決定部21は、さらに、第1の方向の光と第2の方向の光が通過するシート部材による光の減衰によって出力画像に生じる濃淡も考慮して、点群が設けられる位置を決定しても良い。ここで式(10)によって、各指定方向の出力画像がシミュレーションされる。
【0085】
点群決定部21は、例えば全探索で、点群が設けられる位置を決定する。このとき、点群決定部21は、複数のレイヤのそれぞれを、仮想的なセルに区分し、複数のレイヤのそれぞれを区分するセルにおける濃度を決定し、セルにおいて、決定した濃度になるように、セルにおけるインクの噴射位置を決定する。
【0086】
点群決定部21は、1つのシートに設けられる最大の点の数zをもとに、可能性のある組み合わせをすべて探索する。入力画像の全ての画素を同時に解くと、探索空間が大きすぎるので、点群決定部21は、入力画像の1画素毎に、その画素に相当する点群を評価する。例えば、入力画素に相当するシート上のセルの大きさは、3*3である場合、z=3*3*m(m:入力画像の画素数)である。シートの数n=2の場合、入力画像の1画素に対応する点の有無の組み合わせは、3*3*2=18パターンの組み合わせであるので、点群決定部が探索する数は、2の18乗=262144回である。点群決定部21は、この全ての組み合わせで、指定方向それぞれの輝度を算出し、算出された輝度の値を用いて、式(10)が満たされるDを算出する。
【0087】
なお、本発明の実施の形態において、点群決定部21は、全探索で点群が設けられる位置を決定する場合を説明したが、これに限らない。点群決定部21は、遺伝的アルゴリズム等の最適化アルゴリズムを用いて、点群が設けられる位置を決定しても良い。
【0088】
色域決定部22は、点群の位置を算出する際に探索した濃度の精度の色域に、入力画像の色域が含まれるように、各入力画像の色域を変更する。具体的には色域決定部22は、第1の入力画像における所定の濃度に対する、表示媒体1が表現する濃度の差が小さくなるように、第1の入力画像の色域を変更し、第2の入力画像における所定の濃度に対する、表示媒体1が表現する濃度の差が小さくなるように、第2の入力画像の色域を変更する。
【0089】
点群決定部21における全探索で表現できる色域は、全探索で検索された濃度の精度に依存する。そこで、色域決定部22は、点群決定部21で探索された色域に合わせるように、入力画像の色域を変更する。
【0090】
例えば、8ビット画像では、256階調の濃度を表現できる。すなわち入力画像は、0から255までの濃度を指定できる。濃度は0の時に黒で、255のときに白となる。例えば表示媒体1が2つのレイヤを有し、2枚の入力画像があるとする。
【0091】
図7(a)および(b)に示すように、第1の入力画像N1と第2の入力画像N2があるとする。第1の入力画像N1の画素N1aおよびN1bの位置と、第2の入力画像の画素N2aおよびN2bの位置は対応する。
【0092】
図8(a)および(b)は、点群決定部21により決定された点群位置に基づいてシミュレーションされる第1のシミュレーション画像P1および第2のシミュレーション画像P2である。第1のシミュレーション画像P1の画素P1aおよびP1bの位置と、第2のシミュレーション画像P2の画素P2aおよびP2bの位置は対応する。また、第1の入力画像N1の画素N1aおよびN1bの位置と、第1のシミュレーション画像P1の画素P1aおよびP1bの位置は対応する。第2の入力画像N2の画素N2aおよびN2bの位置と、第2のシミュレーション画像P2の画素P2aおよびP2bの位置は対応する。点群決定部21は、所定の画素について、第1のシミュレーション画像P1と第2のシミュレーション画像P2に設定された濃度を満たす様に、これらの画素に対応する表示媒体1上のセルの濃度を決定する。
【0093】
入力画像においてN1a=0かつN2a=255の各濃度が指定される場合、点群決定部21は、式(9)のシミュレーションによってP1a=100かつP2a=200の各濃度を算出し、この濃度を表現するように、表示媒体1上のN1a、N2a、P1aおよびP2aに対応するセルの濃度200を算出するとする。また入力画像においてN1b=255かつN2b=255の各濃度が指定され、点群決定部21は、式(9)のシミュレーションによってP1b=255かつP2b=255の各濃度を算出し、この濃度を表現するように、表示媒体1上のN1b、N2b、P1bおよびP2bに対応するセルの濃度255を算出するとする。
【0094】
このような状況において、第2の入力画像N2において、画素N2aおよびN2bはともに濃度255が設定されるのに対し、表示媒体1で表現される濃度は、200と255であるので、差が生じる。この差は、ゴースティングの原因となる。そこで色域決定部22は、各入力画像における所定の濃度に対する、表示媒体1が表現する濃度の差が小さくなるように、各入力画像の色域を小さくして、画像コントラストを小さくする。
【0095】
色域決定部22によって変更された第1の入力画像と第2の入力画像について、点群決定部21によって新たな点群の位置が決定される。処理装置2は、色域が変更された入力画像を用いてさらに点群決定部21によって点群を決定する処理を、所定条件を満たすまで繰り返す。所定条件は、ユーザが指定した回数、時間等である。
【0096】
出力部23は、所定条件を満たすまで、色域決定部22と点群決定部21の処理が繰り返されると、点群決定部21によって決定された各シートの点群の位置を特定する点群データ13を生成し、出力する。点群データ13は、プリンタに入力され、所望の位置に点が印刷されたシートが形成される。
【0097】
図9を参照して、処理装置2による処理方法を説明する。
【0098】
まず所定の終了条件を満たすまで、ステップS1およびステップS2の処理を繰り返す。ステップS1において処理装置2は、点群決定部21によって、各レイヤの点群の位置を決定する。ステップS2において処理装置2は、色域決定部22によって、ステップS1で設定した点群決定部21によって決定された点群の位置に基づいて、入力画像群の色域を変更する。なおステップS1の初回の処理は、予め与えられた入力画像群データ11に従って行われ、2回目以降の処理は、ステップS2の処理によって変更された後の入力画像群のデータに従って行われる。
【0099】
終了条件を満たすと、ステップS3において処理装置2は、最終的に得られ変更後の入力画像群のデータに従って、各レイヤの点群の位置を決定する。
【0100】
ステップS4において処理装置2は、出力部23によって、ステップS3で決定あれた各レイヤの点群の位置をプリンタに入力し、プリンタに、各レイヤの点群の位置を印刷させる。
【0101】
(具体例)
図10ないし図13を参照して、具体的に説明する。ここでは、表示媒体1が、2レイヤで形成され、3つの指定方向に対して3つのコンテンツを表示する場合を説明する。
【0102】
ここでは、1つのセルが3*3の点で構成される。所定の方向は、仰角が、-45度、0度および45度(法線方向が0度)と設定する。なお、各所定方向の方位角0度で、所定のXZ平面上に所定の方向のそれぞれが設定される。またパラメータは、後述の式(14)および(17)で特定されたものを用いる。
【0103】
図10(a)、(b)および(c)は、それぞれ入力画像である。図10に示す入力画像は、白と黒とで構成され、濃度の差、すなわち輝度の差が大きい。
【0104】
図10に示す各入力画像は、処理装置2によって、最終的に、図11(a)、(b)および(c)に示す入力画像に変更される。変更後の入力画像は、変更前の入力画像に比べて、濃度の差、すなわち輝度の差が小さい。これは、色域決定部22によって、色域が狭められた結果である。
【0105】
処理装置2は、図11の各図に示す入力画像を表示するために、図12(a)および(b)に示す点群を算出する。図12(a)は、第1のレイヤL1の点群を示し、図12(b)は、第2のレイヤL2の点群を示す。
【0106】
図12に示す各点群が印刷されたシートを重ねて形成された表示媒体1は、図13(a)、(b)および(c)に示す各画像を表示する。図13に示す各画像は、シミュレーション結果であって、本来遠近法により台形に形成されるが、台形補正された画像である。図13(a)、(b)および(c)に示す各画像は、それぞれ、図10(a)、(b)および(c)に示す各画像に対応する。
【0107】
このような本発明の実施の形態に係る表示媒体1は、複数のシートのそれぞれに点群を印刷して重ねることにより、複数の方向にそれぞれ異なるコンテンツを、容易に表示することができる。
【0108】
また処理装置2は、表示媒体1が表示する出力画像が、入力画像に近づけるのみならず、シートによる減衰、および点群を構成するインクの減衰も考慮して、点群の位置を算出する。これにより表示媒体1は、精細なコンテンツを表示することができる。
【0109】
さらに処理装置2は、点群の位置を算出する際に探索した濃度の精度の色域に、入力画像の色域が含まれるように、各入力画像の色域を変更する。これにより表示媒体1は、ゴースティングが発生しにくい出力画像を表示することができる。
【0110】
(シートのパラメータの算出方法)
発明の実施の形態において、シートおよびインクの材料から、シートによる光の透過率bと、インクの光の透過率qを算出する方法を説明する。
【0111】
準備として、プリンタの設定は、CMYK指定で、プリンタ内部の画像処理はすべて機能しないようにする。点群は、K(Key-Plate)で印刷される。この条件で所定の点を印刷したシートを、基材Bの上に置き、デジタルカメラで撮影する。撮影して得られる輝度が、計測値として扱われる。光源は、表示媒体1を観察する環境と同様に、周囲に一様にある状態とする。
【0112】
まず、シートの透過率bを推定する。図14に示すように、2枚の透明シートを一部ずらして重ね、基材Bの上に配置する。各シート表面での反射光は、同等とし、それぞれの透過率も同じとする。すると、式(9)のレンダリング方程式から、rとbを未知変数とした、次のような式(11)が導かれる。
【0113】
【数11】
【0114】
x0とx1にx2を代入し、rについて整理すると、式(11)から、式(12)が得られる。
【0115】
【数12】
【0116】
式(12)のrを代入し、整理すると、式(13)が得られる。
【0117】
【数13】
【0118】
式(13)は、bについての二次方程式であり、この解は、式(14)で得られる。式(14)により、シートの透過率bが算出される。
【0119】
【数14】
【0120】
次に、インクの透過率bを推定する。図15に示すように、基材Bの上に印刷されたシートを配置し、図14と同じ条件で撮影する。これにより、式(15)が成り立つ。
【0121】
【数15】
【0122】
式(15)を、qについて整理すると、式(16)が得られる。式(16)により、インクの透過率qが算出される。
【0123】
【数16】
【0124】
上記により、パラメータは、例えば式(17)のように算出される。
【0125】
【数17】
【0126】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明の実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述および図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例および運用技術が明らかとなる。
【0127】
例えば、本発明の実施の形態に記載した処理装置は、図6に示すように一つのハードウエア上に構成されても良いし、その機能や処理数に応じて複数のハードウエア上に構成されても良い。また、他の機能を実現するコンピュータ上に実現されても良い。
【0128】
本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。従って、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0129】
1 表示媒体
2 処理装置
10 記憶装置
11 入力画像群データ
12 パラメータデータ
13 点群データ
20 処理制御装置
21 点群決定部
22 色域決定部
23 出力部
30 入出力インタフェース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15