(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-27
(45)【発行日】2022-05-11
(54)【発明の名称】ポリマーフィルムおよびその用途
(51)【国際特許分類】
C03C 27/12 20060101AFI20220428BHJP
B32B 17/10 20060101ALI20220428BHJP
C08K 5/103 20060101ALI20220428BHJP
C08L 29/14 20060101ALI20220428BHJP
B29C 59/04 20060101ALI20220428BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20220428BHJP
【FI】
C03C27/12 D
B32B17/10
C08K5/103
C08L29/14
B29C59/04 Z
C08J5/18 CEX
(21)【出願番号】P 2020069457
(22)【出願日】2020-04-08
【審査請求日】2020-04-08
(31)【優先権主張番号】201911201629.1
(32)【優先日】2019-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519435854
【氏名又は名称】チャン チュン ペトロケミカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100109634
【氏名又は名称】舛谷 威志
(74)【代理人】
【識別番号】100129263
【氏名又は名称】中尾 洋之
(72)【発明者】
【氏名】ファン,ヅゥ-ユオン
(72)【発明者】
【氏名】チャン,チン-イェン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,チェン-ファン
【審査官】松本 瞳
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-147981(JP,A)
【文献】特開2018-187929(JP,A)
【文献】特開2018-008867(JP,A)
【文献】特表2019-529591(JP,A)
【文献】特表2003-528791(JP,A)
【文献】特開2001-019499(JP,A)
【文献】国際公開第2016/052666(WO,A1)
【文献】特開2004-168646(JP,A)
【文献】特表2017-525597(JP,A)
【文献】国際公開第2017/171032(WO,A1)
【文献】特表2016-521302(JP,A)
【文献】特開2013-23692(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 27/12
B32B 17/10
B29C 59/04
C08J 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアセタール
及び可塑剤を含むポリマーフィルムであって、前記ポリマーフィルムの少なくとも1つの表面のボイドボリューム(Vv)の値が、10%の
負荷面積率で、2μm
3/μm
2~18μm
3/μm
2の範囲であり、前記ボイドボリューム(Vv)および前記
負荷面積率が、ISO 25178―2:2012に準拠して定義され、
前記ポリマーフィルムの少なくとも1つの表面の表面粗さRzが、15μm~40μmの範囲であり、
前記ポリマーフィルムは10℃~20℃の範囲のガラス転移温度(Tg)を有する、
ことを特徴とするポリマーフィルム。
【請求項2】
前記ポリマーフィルムの2つの表面のそれぞれのボイドボリューム(Vv)の値が、独立して、10%の
負荷面積率で、2μm
3/μm
2~18μm
3/μm
2の範囲である請求項1に記載のポリマーフィルム。
【請求項3】
前記ポリビニルアセタールが、ポリ(ビニルホルマール)、ポリ(ビニルアセタール)、ポリ(ビニルブチラール)、ポリ(ビニルペンタナール)、ポリ(ビニルヘキサナール)およびこれらの組合せからなる群から選択される請求項1または2に記載のポリマーフィルム。
【請求項4】
前記ポリマーフィルムの前記2つの表面のそれぞれの表面粗さRzが、独立して、15μm~40μmの範囲である請求項2に記載のポリマーフィルム。
【請求項5】
前記ポリビニルアセタールの重量平均分子量(Mw)が、150,000ダルトン~250,000ダルトンの範囲である請求項1~4のいずれか1項に記載のポリマーフィルム。
【請求項6】
前記可塑剤の量が、前記ポリビニルアセタール100重量部当たり、30重量部~60重量部の範囲である請求項
1に記載のポリマーフィルム。
【請求項7】
0.2mm~2mmの範囲の厚さを有する請求項1~
6のいずれか1項に記載のポリマーフィルム。
【請求項8】
多層フィルムである請求項1~
7のいずれか1項に記載のポリマーフィルム。
【請求項9】
染料、顔料、安定剤、酸化防止剤、難燃剤、赤外線吸収剤、赤外線遮断剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、潤滑剤、分散剤、界面活性剤、キレート剤、カップリング剤、バインダー、接着制御剤、およびこれらの組合せからなる群から選択される添加剤をさらに含む、請求項1~
8のいずれか1項に記載のポリマーフィルム。
【請求項10】
第1のガラスシートと、第2のガラスシートと、前記第1のガラスシートおよび前記第2のガラスシートの間に配置された請求項1~
9のいずれか1項に記載の前記ポリマーフィルムと、を含む合わせガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーフィルム、特に、特定の負荷面積率(material ratio)で特定のボイドボリューム(void volume,Vv)の値を有するポリマーフィルムを提供する。ポリマーフィルムは、建築物用合わせガラス(laminated glass)の中間層として使用するのに適している。
【背景技術】
【0002】
合わせガラスは、2枚のガラスシートの間にポリマーフィルムを介在させ、ホットプレスを行ってガラスシートとポリマーフィルムとを接合することによって形成された複合構造を有するガラス物質である。合わせガラスは、耐衝撃性、防音性に優れているため、自動車業界や建築業界で広く使用されている。
【0003】
一般に、合わせガラスは、2枚のガラスシートの間にポリマーフィルムを介在させて積層体を得る工程と、ガラスシートおよびポリマーフィルムの間の空気を除去するように、積層体を予備プレスする工程と、予備プレスされた積層体を、高温高圧下のオートクレーブに一定期間入れ、合わせガラスを得る工程と、によって製造される。平面状の合わせガラスを用意する場合、予備プレス工程は、通常、積層体をローラにより押圧し、上昇させた温度で、ベーキングすることによって行われる。
【0004】
合わせガラスの製造工程は、ガラスシートおよびポリマーフィルムのホットプレス工程を含むので、歩留まりを改善するために、合わせガラスのガラスシートおよびポリマーフィルムの間に空気が残るのを回避することが重要である。合わせガラスのガラスシートおよびポリマーフィルムの間の空気を除去する公知の手法は、ポリマーフィルムの表面に凹凸構造を形成して、ホットプレス中の脱気を促進することである。しかしながら、既存のポリマーフィルムは脱気性能が依然として不十分であり、通常、エッジ剥離(delamination of edge)という不具合(すなわち、合わせガラスのエッジにおけるポリマーフィルムとガラスシートとの分離)を有し、その結果、合わせガラスの歩留まりは依然として不十分である。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、ポリマーフィルムを提供すること、特に、特定の負荷面積率で特定のボイドボリューム(Vv)の値を有するポリマーフィルムを提供することを目的とする。当該ポリマーフィルムは、ローラによって予備プレスが行われる合わせガラスの製造において優れた性能を発揮する。また、当該ポリマーフィルムは、ガラスと強固にかつ完全に接合される。製造された合わせガラスは、バブリング試験で優または良の結果を示し、エッジ剥離の不具合を有していない。したがって、本発明のポリマーフィルムは、建築物用合わせガラスの製造に特に適している。
【0006】
したがって、本発明の目的は、ポリビニルアセタールを含むポリマーフィルムであって、ポリマーフィルムの少なくとも1つの表面が、10%の負荷面積率で、2μm3/μm2~18μm3/μm2の範囲のボイドボリューム(Vv)の値を有し、ボイドボリューム(Vv)および負荷面積率がISO 25178―2:2012に準拠して定義されるポリマーフィルムを提供することである。
【0007】
本発明のいくつかの実施形態では、ポリマーフィルムの2つの表面のそれぞれのボイドボリューム(Vv)の値が、独立して、10%の負荷面積率で、2μm3/μm2~18μm3/μm2の範囲である。
【0008】
本発明のいくつかの実施形態では、ポリマーフィルムに含まれるポリビニルアセタールが、ポリ(ビニルホルマール)、ポリ(ビニルアセタール)、ポリ(ビニルブチラール)、ポリ(ビニルペンタナール)、ポリ(ビニルヘキサナール)、およびこれらの組合せからなる群から選択される。
【0009】
本発明のいくつかの実施形態では、ポリマーフィルムの少なくとも1つの表面の表面粗さRzが、15μm~40μmの範囲である。
【0010】
本発明のいくつかの実施形態では、ポリマーフィルムの2つの表面のそれぞれの表面粗さRzが、独立して、15μm~40μmの範囲である。
【0011】
本発明のいくつかの実施形態では、ポリマーフィルムのガラス転移温度(glass transition temperature,Tg)が、10℃~22℃の範囲である。
【0012】
本発明のいくつかの実施形態では、ポリマーフィルムに含まれるポリビニルアセタールの重量平均分子量(Mw)が、150,000ダルトン~250,000ダルトンの範囲である。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態では、ポリマーフィルムは可塑剤をさらに含み、可塑剤の量は、ポリビニルアセタール100重量部当たり30重量部~60重量部の範囲とすることができる。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態では、ポリマーフィルムの厚さは、0.2mm~2mmの範囲である。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態では、ポリマーフィルムは多層フィルムである。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態では、ポリマーフィルムが、染料、顔料、安定剤、酸化防止剤、難燃剤、赤外線吸収剤、赤外線遮断剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、潤滑剤、分散剤、界面活性剤、キレート剤、カップリング剤、接着剤、接着制御剤、およびこれらの組合せからなる群から選択される添加剤をさらに含む。
【0017】
本発明の別の目的は、第1のガラスシートと、第2のガラスシートと、第1のガラスシートおよび第2のガラスシートの間に配置された前述のポリマーフィルムと、を含む合わせガラスを提供することである。
【0018】
本発明の上記の目的、技術的特徴および利点をより明白にするために、以下のいくつかの実施形態を参照して詳細に本発明を説明する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明のいくつかの実施形態について詳細に説明する。しかしながら、本発明の精神から逸脱することなく、本発明は様々な実施形態で具現化されることができ、本明細書に記載された実施形態に限定されるべきではない。
【0020】
追加的に説明されない限り、本明細書および特許請求の範囲に記載される表現「1つ」、「当該」などは、単数形および複数形の両方を含むべきである。
【0021】
追加的に説明されない限り、本明細書および特許請求の範囲に記載される「第1」、「第2」などの表現は、特別な意味を有しておらず、図示されている要素または成分を区別するためにのみ使用される。これらの表現は、優先度を表すために使用されていない。
【0022】
追加的に説明されない限り、本明細書および特許請求の範囲に記載される「負荷面積率」という用語は、ISO 25178-2:2012に準拠して定義される。負荷面積率曲線は、それによって囲まれた局所面積に対する表面高さを表すファンクションカーブグラフを意味し、負荷面積率は、指定された高さより上の囲まれた局所面積を意味する。
【0023】
追加的に説明されない限り、本明細書および特許請求の範囲に記載される「ボイドボリューム(Vv)」は、ISO 25178-2:2012に準拠して定義される。ボイドボリュームは、特定の負荷面積率での単位面積当たりの空隙の体積を意味する。
【0024】
追加的に説明されない限り、本明細書および特許請求の範囲に記載される「表面粗さRz」は、表面の十点平均粗さを意味し、JIS B 0601(1994)に準拠して測定されるものである。
【0025】
本発明は、特定の負荷面積率で特定のボイドボリューム(Vv)の値を有するポリマーフィルムおよびそれを用いて製造された合わせガラスを提供する。当該ポリマーフィルムを用いて製造された合わせガラス(特に建築物用合わせガラス)は、バブリング試験で優または良の結果を示し、エッジ剥離の不具合を有していない。以下、本発明のポリマーフィルムおよびその用途について詳細に説明する。
【0026】
1.ポリマーフィルム
【0027】
1.1.ポリマーフィルムの構成
【0028】
本発明のポリマーフィルムは必須成分としてポリビニルアセタールを含み、必要に応じて、可塑剤または他の標準的な添加剤などの他の任意の成分をさらに含んでもよい。本発明のいくつかの実施形態では、ポリマーフィルムは、ポリビニルアセタールおよび可塑剤を含む、または、ポリビニルアセタールおよび可塑剤からなる。
【0029】
ポリビニルアセタールの例としては、ポリ(ビニルホルマール)、ポリ(ビニルアセタール)、ポリ(ビニルブチラール)、ポリ(ビニルペンタナール)、およびポリ(ビニルヘキサナール)が挙げられるが、これらに限定されない。上記ポリビニルアセタールは、単独で、または2種以上の混合物として使用することができる。添付の実施例では、ポリ(ビニルブチラール)が使用される。
【0030】
本明細書で記載されるように、可塑化剤とも呼ばれる可塑剤は、熱可塑性樹脂の可塑性を修正可能な化学物質である。可塑剤の例としては、トリエチレングリコールビス(2―エチルヘキサノエート)、テトラエチレングリコールビス(2―エチルヘキサノエート)、トリエチレングリコールビス(2―エチルブチレート)、テトラエチレングリコールビス(2―エチルブチレート)、トリエチレングリコールジヘプタノエート、テトラエチレングリコールジヘプタノエート、ジヘキシルアジペート、ジオクチルアジペート、ヘキシルシクロヘキシルアジペート、ジイソノニルアジペート、ヘプチルノニルアジペート、ジブチルセバケート、ビス[2―(2―ブトキシエトキシ)エチル]アジペート、ポリマーアジペート、ジプロピレングリコールジベンゾエート、トリプロピレングリコールジベンゾエート、ポリプロピレングリコールジベンゾエート、イソデシルベンゾエート、2-エチルヘキシルベンゾエート、プロピレングリコールジベンゾエート、ジイソノニルフタレート、ジブトキシエチルテレフタレート、ヒマシ油、メチルリシノレート、大豆油、エポキシ化大豆油、およびこれらの組合せなどの多塩基酸または多価アルコールのエステルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
標準的な添加剤は、製造工程中にポリマーフィルムの加工性を適応的に改善することができるか、またはポリマーフィルムに特定の機能を付与することができる任意の物質である。標準的な添加剤の例としては、染料、顔料、安定剤、酸化防止剤、難燃剤、赤外線吸収剤、赤外線遮断剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、潤滑剤、分散剤、界面活性剤、キレート剤、カップリング剤、接着剤、および接着制御剤が挙げられるが、これらに限定されない。上記の添加剤は、単独で、またはこれらの組合せで使用することができる。例えば、ポリマーフィルムは、着色ポリマーフィルムを形成するために染料または顔料を含むことができる。また、ポリマーフィルムは、抗紫外線機能を有するポリマーフィルムまたは抗赤外線機能を有するポリマーフィルムを形成するために、紫外線吸収剤または赤外線吸収剤を含むことができる。
【0032】
本発明のポリマーフィルムの厚さは、ポリマーフィルムが指定されたボイドボリューム(Vv)の値を有する限り、実用的なニーズに応じて調整することができる。一般に、ポリマーフィルムの厚さは、0.2mm~2mmの範囲とすることができ、より具体的には、0.5mm~1.5mmの範囲とすることができ、例えば、0.51mm、0.52mm、0.53mm、0.54mm、0.55mm、0.56mm、0.57mm、0.58mm、0.59mm、0.6mm、0.61mm、0.62mm、0.63mm、0.64mm、0.65mm、0.66mm、0.67mm、0.68mm、0.69mm、0.7mm、0.71mm、0.72mm、0.73mm、0.74mm、0.75mm、0.76mm、0.77mm、0.78mm、0.79mm、0.8mm、0.81mm、0.82mm、0.83mm、0.84mm、0.85mm、0.86mm、0.87mm、0.88mm、0.89mm、0.9mm、0.91mm、0.92mm、0.93mm、0.94mm、0.95mm、0.96mm、0.97mm、0.98mm、0.99mm、1.0mm、1.01mm、1.02mm、1.03mm、1.04mm、1.05mm、1.06mm、1.07mm、1.08mm、1.09mm、1.1mm、1.11mm、1.12mm、1.13mm、1.14mm、1.15mm、1.16mm、1.17mm、1.18mm、1.19mm、1.2mm、1.21mm、1.22mm、1.23mm、1.24mm、1.25mm、1.26mm、1.27mm、1.28mm、1.29mm、1.3mm、1.31mm、1.32mm、1.33mm、1.34mm、1.35mm、1.36mm、1.37mm、1.38mm、1.39mm、1.4mm、1.41mm、1.42mm、1.43mm、1.44mm、1.45mm、1.46mm、1.47mm、1.48mm、または1.49mmであるが、本発明はこれらに限定されない。
【0033】
本発明のポリマーフィルムは、全体として指定されたボイドボリューム(Vv)の値を有するものであれば、単層から構成される単層フィルムであってもよいし、多層から構成される多層フィルムであってもよい。ポリマーフィルムが多層フィルムである場合、ポリマーフィルムの複数の層は、同一または異なる原材料からなり、したがって、同一または異なる機能層とすることができる。上記機能層は、例えば、防音機能、断熱機能、反射機能、反射防止機能、屈折機能、屈折防止機能、光分割機能、および調光機能のうちの1つ以上の機能を有する層であってもよい。
【0034】
1.2.ポリマーフィルムの特性
【0035】
ポリマーフィルムの表面の凹凸構造は、表面形態(surface morphology)の三次元画像によって特定することができる。ISO 25178―2:2012は、表面形態を評価するための測定基準であり、すなわち、表面形態に関連するパラメータとしてボイドボリューム(void volume,Vv)を開示している。ボイドボリューム(Vv)は、特定の負荷面積率(material ratio)での単位面積当たりの空隙の体積として定義され、面積負荷面積率曲線グラフから計算することができる。面積負荷面積率曲線グラフにおいて、Y軸は表面高さを示し、X軸は負荷面積率を示す。X軸の負荷面積率が0%の場合、Y軸の表面高さは最大であり、X軸の負荷面積率が100%の場合、Y軸の表面高さは0である。例えば、負荷面積率10%でのボイドボリューム(Vv)は、X軸の負荷面積率10%に対応するY軸の表面高さに設定された水平切断面(horizontal cutting plane)の下方に囲まれた空隙の体積を表す。このため、負荷面積率が0%の場合には、ボイドボリューム(Vv)の値が最大となる。負荷面積率が100%の場合、ボイドボリューム(Vv)の値は0である。ボイドボリューム(Vv)のパラメータについての関連説明は、ISO 25178―2:2012を参照することができ、その主題は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0036】
本発明者は驚くべきことに、特定の負荷面積率で、合わせガラスに使用されるポリマーフィルムのボイドボリューム(Vv)の値を制御することによって、バブリング試験で優または良の結果を示し、エッジ剥離の不具合を有さない合わせガラス(特に建築物用合わせガラス)を提供することができることを見出した。具体的には、本発明のポリマーフィルムの少なくとも1つの表面のボイドボリューム(Vv)の値は、10%の負荷面積率で、2μm3/μm2~18μm3/μm2の範囲、例えば、2.5μm3/μm2、3μm3/μm2、3.5μm3/μm2、4μm3/μm2、4.5μm3/μm2、5μm3/μm2、5.5μm3/μm2、6μm3/μm2、6.5μm3/μm2、7μm3/μm2、7.5μm3/μm2、8μm3/μm2、8.5μm3/μm2、9μm3/μm2、9.5μm3/μm2、10μm3/μm2、10.5μm3/μm2、11μm3/μm2、11.5μm3/μm2、12μm3/μm2、12.5μm3/μm2、13μm3/μm2、13.5μm3/μm2、14μm3/μm2、14.5μm3/μm2、15μm3/μm2、15.5μm3/μm2、16μm3/μm2、16.5μm3/μm2、17μm3/μm2、または17.5μm3/μm2である。ここで、負荷面積率およびボイドボリューム(Vv)は、ISO 25178-2:2012に準拠して定義される。本発明の好ましい実施形態では、本発明のポリマーフィルムの2つの表面のそれぞれのボイドボリューム(Vv)は、独立して、10%の負荷面積率で、2μm3/μm2~18μm3/μm2の範囲である。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態では、本発明のポリマーフィルムの少なくとも1つの表面の表面粗さRzは、15μm~40μmの範囲である。ポリマーフィルムの2つの表面のそれぞれの表面粗さRzは、独立して、15μm~40μmの範囲、例えば、16μm、17μm、18μm、19μm、20μm、21μm、22μm、23μm、24μm、25μm、26μm、27μm、28μm、29μm、30μm、31μm、32μm、33μm、34μm、35μm、36μm、37μm、38μm、または39μmであることが好ましい。上記Rzは、JIS B 0601(1994)に準拠して測定される。
【0038】
本発明のポリマーフィルムの表面に所望のボイドボリューム(Vv)の値および表面粗さRzを提供するための方法は、任意の標準的な手法とすることができる。例えば、ポリマーフィルムの表面に機械エンボス加工を施して、ポリマーフィルムの表面に凹凸構造を形成し、ポリマーフィルムの構成または機械エンボス加工の条件を調整することにより、指定のボイドボリューム(Vv)の値および表面粗さRzが提供される。本明細書で記載されるように、機械エンボス加工は、ポリマーフィルムが形成された後、ローラによってポリマーフィルムの表面にテクスチャを形成することである。機械エンボス加工のための方法としては、エンボスローラ法またはカレンダーローラ法が挙げられるが、これらに限定されない。なお、エンボスローラ法が好ましい。機械エンボス加工の方法を用いて提供されるテクスチャタイプは、ひし形、線形状、鋸歯形状、正方形、テーパ形状、円形状、半円形状(sub-circular shape)、および不規則形状を含むが、これらに限定されない。上述のテクスチャタイプは、単独で、またはこれらの組合せで使用することができる。例えば、以下の手法のうちの1つ以上を使用して、ポリマーフィルムの特性または機械エンボス加工の条件を調整し、指定されたボイドボリューム(Vv)の値および表面粗さRzを得ることができる。
(i) ポリビニルアセタールの重量平均分子量(Mw)は、150,000ダルトン~250,000ダルトンの範囲であり、例えば、155,000ダルトン、160,000ダルトン、165,000ダルトン、170,000ダルトン、175,000ダルトン、180,000ダルトン、185,000ダルトン、190,000ダルトン、195,000ダルトン、200,000ダルトン、205,000ダルトン、210,000ダルトン、215,000ダルトン、220,000ダルトン、225,000ダルトン、230,000ダルトン、235,000ダルトン、240,000ダルトン、または245,000ダルトンであってもよい。本発明のいくつかの実施形態では、ポリビニルアセタールの重量平均分子量(Mw)は、180,000ダルトン~205,000ダルトンの範囲である。
(ii) ポリマーフィルムのガラス転移温度(Tg)は、10℃~22℃の範囲であり、例えば、10.5℃、11℃、11.5℃、12℃、12.5℃、13℃、13.5℃、14℃、14.5℃、15℃、15.5℃、16℃、16.5℃、17℃、17.5℃、18℃、18.5℃、19℃、19.5℃、20℃、20.5℃、21℃、または21.5℃であってもよい。
(iii) ポリマーフィルム中の可塑剤の量は、ポリビニルアセタール100重量部当たり、30重量部~60重量部であり、例えば、31重量部、32重量部、33重量部、34重量部、35重量部、36重量部、37重量部、38重量部、39重量部、40重量部、41重量部、42重量部、43重量部、44重量部、45重量部、46重量部、47重量部、48重量部、49重量部、50重量部、51重量部、52重量部、53重量部、54重量部、55重量部、56重量部、57重量部、58重量部または59重量部であってもよい。
(iv) エンボスローラの圧力は、1kg/cm2~15kg/cm2の範囲であってもよく、好ましくは、3kg/cm2~13kg/cm2の範囲であり、より具体的には、5kg/cm2~10kg/cm2の範囲であり、例えば、6kg/cm2、7kg/cm2、8kg/cm2、9kg/cm2、または10kg/cm2であってもよい。
(v) エンボスローラの温度は、80℃~130℃の範囲であってもよく、好ましくは、85℃~125℃の範囲であり、より具体的には、90℃~120℃の範囲であり、例えば、91℃、92℃、93℃、94℃、95℃、96℃、97℃、98℃、99℃、100℃、101℃、102℃、103℃、104℃、105℃、106℃、107℃、108℃、109℃、110℃、111℃、112℃、113℃、114℃、115℃、116℃、117℃、118℃、または119℃であってもよい。エンボスローラの温度が指定された範囲内ではない場合、ポリマーフィルムが、所望のボイドボリューム(Vv)の値を有さないことがある。
【0039】
1.3.ポリマーフィルムの製造
【0040】
本発明のポリマーフィルムの製造方法は、特に限定されない。例えば、ポリマーフィルムの表面に所望のボイドボリューム(Vv)の値および表面粗さRzを提供するように、ポリビニルアセタールと任意の成分(例えば、可塑剤)とを混合混練してポリマー組成物を得、このポリマー組成物を用いて、標準的な方法によりポリマーフィルムを提供し、任意に、機械エンボス加工工程を行うことにより、本発明のポリマーフィルムを製造することができる。ポリマーフィルムを提供するための標準的な方法の例としては、カレンダー法、キャスティング法、押出延伸法、直接押出法、および押出ブロー法が挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
本発明のいくつかの実施形態において、ポリマーフィルムは以下のように製造される。まず、5分~30分間、10rpm~50rpmの範囲の回転速度で、かつ100℃~150℃の範囲の温度で、ミキサーを用いて、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを混合および混練し、ポリマー組成物を得る。次に、ポリマー組成物を室温に冷却し、それをホットプレッサーに入れて、1分間~10分間、2kg~5kgの範囲の圧力で、かつ100℃~200℃の範囲の温度で、ホットプレスし、フィルムを形成する。任意に、上記のフィルム形成工程を繰り返し、ポリマー組成物の構成を調整して異なる機能を有する複数のフィルムを提供し、それらのフィルムを積層して、多層構造を有するポリマーフィルムを形成する。また、所望のボイドボリューム(Vv)の値および表面粗さRzを提供するように、ポリマーフィルムに対して機械エンボス加工工程を任意に行う。機械エンボス加工の条件は、エンボスローラの圧力が5kg/cm2~8kg/cm2の範囲であり、エンボスローラの温度が90℃~120℃の範囲である。
【0042】
2.合わせガラス
【0043】
本発明のポリマーフィルムは、合わせガラスの中間層としての使用に適している。したがって、本発明は、第1のガラスシートと、第2のガラスシートと、第1のガラスシートおよび第2のガラスシートの間に配置された前述のポリマーフィルムとを含む合わせガラスも提供する。
【0044】
第1のガラスシートおよび第2のガラスシートは、互いに同一であっても異なっていてもよい。第1のガラスシートおよび第2のガラスシートはそれぞれ、合わせガラスを製造するための任意の標準的なガラスシートとすることができる。合わせガラスを製造するための標準的なガラスシートとしては、例えば、フロートガラス(float glass)、強化ガラス、ワイヤードガラス、または平板ガラスが挙げられるが、これらに限定されない。添付の実施例では、フロートガラスが第1のガラスシートおよび第2のガラスシートとして使用される。
【0045】
本発明の合わせガラスは、当該技術分野で公知の任意の方法によって製造することができる。本発明の合わせガラスは例えば、次のようにして製造することができる。まず、2枚のガラスシートの間にポリマーフィルムを介在させて積層体を得る。ローラプレッサおよびオーブンは、それぞれ、ローラプレッサのコンベヤベルトの搬送速度が2m/分~8m/分、かつオーブンの温度が150℃~200℃となるように設定される。積層体は、積層体がオーブンを通過し、次に5.5mm~6.5mmの間隔である一対のローラの間を通過するように、コンベヤベルト上に配置される。その後、ローラプレスされた積層体を室温まで冷却し、予備プレスを完了する。次に、予備プレスした積層体をオートクレーブに入れ、高圧高温条件下で100分~150分間ホットプレスし、合わせガラスを得る。上記の高圧高温条件は、10バール~15バールの範囲の圧力および100℃~150℃の範囲の温度を指す。
【0046】
3.実施例
【0047】
3.1.試験方法
【0048】
本発明は以下の実施形態によってさらに例示される。ここで、試験機器および試験方法は以下の通りである。
【0049】
[ポリビニルアセタールの分子量分布の測定]
【0050】
ポリビニルアセタールの分子量分布は、ゲル浸透クロマトグラフィー(gel permeation chromatography,GPC)によって測定される。ここで、ポリビニルアセタールをテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、以下の条件下でGPC分析を行う。ポリビニルアセタールの分子量は、標準ポリスチレン(Water PS STD)の面積に対応する比に基づいて計算される。
装置:Waters 1515 PUMP system
検出器:Waters 2414 RI
溶出条件:1.0mL/分、THF
カラム:Waters Styragel HR5 THF、Waters Styragel HR4 THF、Waters Styragel HR3 THF、Waters Styragel HR1 THF
【0051】
[ボイドボリューム(Vv)の測定]
【0052】
ポリマーフィルムの表面の10%の負荷面積率でのボイドボリューム(Vv)の値は、ISO 25178―2:2012に準拠して、24±3℃の温度および63±3%の相対湿度で、レーザー共焦点顕微鏡(laser confocal microscope)(型番:LEXT OLS5000―SAF、Olympusから購入)を用いることによって測定される。測定条件は、次の通りである。光源波長は405nmであり、対物レンズは100倍(MPLAPON―100xLEXT)であり、光学ズーム(optical zoom)は50倍であり、観察面積は1500μm×1500μmであり、解像度は1024画素×1024画素であり、動作条件はオートチルト除去(auto tilt removal)に設定され、フィルタは不使用である。なお、得られた負荷面積率曲線グラフにおいて、コアボイドボリューム(Vvc)値およびデールボイドボリューム(Vvv)値を求めることができる。ボイドボリューム(Vv)の値は、コアボイドボリューム(Vvc)値およびデールボイドボリューム(Vvv)値の合計である。ボイドボリューム(Vv)の単位はμm3/μm2である。
【0053】
[表面粗さRzの測定]
【0054】
表面粗さRzは、JIS B 0601(1994)に準拠して、粗さ試験機(型名:SE 300、KOSAKA Laboratory Ltd.から購入)を用いて測定される。まず、ポリマーフィルムを切断して、8cm×30cmの試験サンプルとする。測定条件は次の通りである。垂直倍率(vertical magnification)は自動に設定され、水平倍率(horizontal magnification)は25mm/λcに設定され、カットオフ(cut off)距離は2.5mm(すなわち、2.5mmごとに1回計算する)に設定され、評価の長さはカットオフ距離の7倍であり、ベースライン長さは17.5mmに設定され、測定方向は流れ方向(machine direction)である。
【0055】
[ガラス転移温度(Tg)の測定]
【0056】
ポリマーフィルムのTgは、示差走査熱量計(型番:TA DSC 25、TA Instrumentsから購入)を用いて窒素雰囲気中で測定される。まず、サンプルとしてのポリマーフィルム7mgを示差走査熱量計のサンプル台に載せ、10℃/分の加熱速度で150℃に加熱し、その温度で5分間保持する。次いで、サンプルを-50℃でバランスさせ、その温度で5分間保持する。その後、加熱速度10℃/分でサンプルを100℃に加熱し、熱流(heat flow)に対する温度の曲線グラフ(X軸は温度、Y軸は熱流)を得る。ガラス転移の中点(midpoint)に対応する温度をTgとして記録する。
【0057】
[バブリング試験]
【0058】
合わせガラスを切断して、幅30cmかつ長さ30cmの試験サンプルとする。試験サンプルを120℃のオーブンに14日間垂直に設置する。次に、試験サンプルを目視で観察し、バブリングが見つかったかどうかを確認する。ここで、バブリングとは、外気に触れていない気泡が、ガラスシートおよびポリマーフィルムの間に存在することを意味する。バブリング試験の基準は、次の通りである。試験サンプル中に気泡がない場合、バブリング試験の結果は優であり、「◎」と記録される。試験サンプル中に気泡が1個しかなく、かつ、気泡の直径が0.5mm未満である場合、バブリング試験の結果は良であり、「○」と記録される。試験サンプル中に、直径が0.5mm未満の気泡が2個以上ある、または、直径が0.5mmより大きい気泡が1個ある場合、バブリング試験の結果は不良であり、「×」と記録される。
【0059】
[エッジ剥離試験]
【0060】
合わせガラスを切断し、幅30cmかつ長さ30cmの試験サンプルとする。試験サンプルを50℃および95%の相対湿度のオーブンに14日間垂直に設置する。次に、試験サンプルを目視で観察して、エッジ剥離が見つかるかどうかを確認する。エッジ剥離試験の基準は、次の通りである。試験サンプルがエッジ剥離を有さない(すなわち、ポリマーフィルムがガラスシートと強固に接合されている)場合、エッジ剥離試験の結果は合格であり、「◎」として記録される。一方、試験サンプルがエッジ剥離を有する(すなわち、ポリマーフィルムがガラスシートと強固に接合されていない)場合、エッジ剥離試験の結果は不合格であり、「×」として記録される。
【0061】
3.2.実施例および比較例で使用した原材料リスト
【0062】
【0063】
3.3.ポリマーフィルムの製造および特性
【0064】
実施例1~10および比較例1~5のポリマーフィルムは、以下のように製造された。まず、PVB100重量部と3GO38.5重量部とを混合して混合物を得た。この混合物を、ミキサーを用いて120℃、回転速度35rpmで15分間混練した後、室温まで冷却してポリマーフィルム組成物を得た。次に、ポリマーフィルム組成物をホットプレッサーに入れ、150℃、3kgの圧力で3分間ホットプレスを施し、ポリマーフィルムを得た。
【0065】
その後、ポリマーフィルムの2つの表面に、任意に機械エンボス加工を施した。機械エンボス加工の条件を表2―1および表2―2に示し、一対のエンボスローラを通過するポリマーフィルムの線速度は、10m/分~18m/分の範囲であった。
【0066】
実施例1~10および比較例1~5のポリマーフィルムのPVBの分子量、ならびに実施例1~10および比較例1~5のポリマーフィルムの厚さ、Tg、表面粗さRz、および負荷面積率10%におけるボイドボリューム(Vv)を、前述の試験方法に従って測定した。それらの結果を表2-1および表2-2に示す。
【0067】
表2―1:実施例1~10の機械エンボス加工の条件ならびにPVBおよびポリマーフィルムの特性
【0068】
表2―2:比較例1~5の機械エンボス加工の条件ならびにPVBおよびポリマーフィルムの特性
【0069】
3.4.合わせガラスの製造および特性
【0070】
実施例1~10および比較例1~5のポリマーフィルムをそれぞれ用いて、合わせガラスを製造した。まず、クリーンな透明フロートガラスシート(長さ300mm、幅150mm、厚さ2mm~4mm)を2枚用意した。実施例1~10および比較例1~5のポリマーフィルムを、2枚の透明フロートガラスシートの間にそれぞれ介在させて、積層体を得た。この積層体を、ローラプレッサとオーブンを用いたローラプレスにより予備プレスした。ローラプレスは次のように行った。ローラプレッサのコンベヤベルトの搬送速度を3.5m/分とし、オーブンの温度を180℃とした。積層体がオーブンを通過して6.3mmの間隔である一対のローラの間を通過するように、積層体をコンベヤベルトに配置し、ローラプレスされた積層体を室温まで冷却した。次に、予備プレスした積層体をオートクレーブに入れ、13バールの圧力および135℃の温度で120分間ホットプレスを施した後、室温まで冷却して合わせガラスを得た。
【0071】
実施例1~10および比較例1~5の合わせガラスに対するバブリング試験およびエッジ剥離試験を、上記の試験方法に従って評価した。それらの結果を表3―1および表3―2に示す。
【0072】
【0073】
【0074】
表3―1に示すように、本発明のポリマーフィルムから製造された合わせガラスは、バブリング試験およびエッジ剥離試験に合格し、バブリング試験では優または良の結果を示し、エッジ剥離の不具合は全く無かった。特に、実施例1~10に示すように、PVBの分子量、Tgおよびエンボス加工の条件は変化しても、合わせガラスのそれぞれは、ポリマーフィルムの負荷面積率10%におけるボイドボリューム(Vv)の値が指定された範囲内であれば、バブリング試験での優または良の結果を示す要求、およびエッジ剥離を有さない要求を満たすことができる。
【0075】
これに対し、表3―2に示すように、本発明に属さないポリマーフィルムから製造された合わせガラスは、バブリング試験で優または良の結果を示す要求、およびエッジ剥離を有さない要求を満たすことができない。特に、比較例2~4に示すように、PVBの分子量、Tg、およびエンボス加工の条件に関わらず、ポリマーフィルムのボイドボリューム(Vv)の値が指定された範囲未満の場合には、いずれの合わせガラスもバブリング試験に合格することができず、エッジ剥離を有さないことができない。また、比較例1および5に示すように、ポリマーフィルムのボイドボリューム(Vv)の値が、指定された範囲よりも大きい場合、合わせガラスはバブリング試験で良の結果を示すものの、エッジ剥離を有する。
【0076】
上記の実施例は、本発明の原理および有効性を説明するために使用され、本発明の特徴を示すが、本発明の範囲を限定するためには使用されない。当業者は、本発明の原理および精神から逸脱することなく、記載された本発明の開示および示唆に基づいて、様々な修正および置換を行うことができる。したがって、本発明の保護範囲は、添付の特許請求の範囲に定義されるものである。