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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-27
(45)【発行日】2022-05-11
(54)【発明の名称】骨セメント分注装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/88 20060101AFI20220428BHJP
   A61F 2/46 20060101ALI20220428BHJP
【FI】
A61B17/88
A61F2/46
【請求項の数】 13
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020141125
(22)【出願日】2020-08-24
(65)【公開番号】P2021065689
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2020-10-16
(31)【優先権主張番号】19204495.6
(32)【優先日】2019-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】510340506
【氏名又は名称】ヘレウス メディカル ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】フォクト セバスティアン
(72)【発明者】
【氏名】クルーゲ トーマス
【審査官】小河 了一
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-519388(JP,A)
【文献】特表2004-533881(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0079786(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/88
A61F 2/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器(500)から骨セメント(600)を分注するための装置(100)であって、
前記装置(100)を前記容器(500)に可逆的に接続するための接続要素(240)と、
少なくとも部分的に雄ねじ(310)を有する棒状の分注要素(300)と、
少なくとも部分的に第1雌ねじ(220)を有する切替システム(200)と
を備え、前記第1雌ねじ(220)は、前記分注要素(300)が、結合された第1切替システム位置において前記容器(500)内に軸方向に螺合されることができ、前記分注要素(300)が、分離された第2切替システム位置において前記容器(500)内に自由に軸方向に押し込まれることができるように、前記雄ねじ(310)に噛み合い式に結合されることができ、
前記第1雌ねじ(220)は、スリーブ状に前記分注要素(300)を取り囲み、前記切替システム(200)は、前記分注要素(300)の長手方向軸(700)の周りの回転運動によって、前記第1切替システム位置と前記第2切替システム位置との間で可逆的にシフトされることができることを特徴とする装置(100)。
【請求項2】
前記切替システム(200)が、前記第1雌ねじ(220)を有する第1中空筒体(210)と、前記第1中空筒体(210)に軸方向に接続される第2中空筒体(250)とを有し、
前記第1中空筒体(210)と前記第2中空筒体(250)とは、前記切替システム(200)が、前記第1切替システム位置と前記第2切替システム位置との間で、前記長手方向軸(700)の周りの前記第1中空筒体(210)の前記第2中空筒体(250)に対して反対方向への回転運動によって可逆的にシフトされることができるように接続されていることを特徴とする請求項1に記載の装置(100)。
【請求項3】
前記第2中空筒体(250)が、少なくとも部分的に第2雌ねじ(260)を有し、前記雄ねじ(310)が、前記長手方向軸(700)に沿って延びる少なくとも1つの雄ねじ溝(315)を有し、
前記第1雌ねじ(220)が、前記長手方向軸(700)に沿って延びる少なくとも1つの第1雌ねじ溝(225)を有し、
前記第2雌ねじ(260)が、前記長手方向軸(700)に沿って延びる少なくとも1つの第2雌ねじ溝(265)を有することを特徴とする請求項2に記載の装置(100)。
【請求項4】
前記少なくとも1つの雄ねじ溝(315)が前記雄ねじ(310)を雄ねじ部(320)に分割し、
前記少なくとも1つの第1雌ねじ溝(225)が前記第1雌ねじ(220)を第1雌ねじ部(230)に分割し、
前記少なくとも1つの第2雌ねじ溝(265)が前記第2雌ねじ(260)を前記長手方向軸(700)に沿って第2雌ねじ部(270)に分割することを特徴とする請求項3に記載の装置(100)。
【請求項5】
前記少なくとも1つの雄ねじ溝(315)、前記少なくとも1つの第1雌ねじ溝(225)、及び前記少なくとも1つの第2雌ねじ溝(265)の半径が、前記雄ねじ部(320)、前記第1雌ねじ部(230)、及び前記第2雌ねじ部(270)の半径と同等又はそれよりも大きいことを特徴とする請求項4に記載の装置(100)。
【請求項6】
前記雄ねじ(310)、前記第1雌ねじ(220)、及び前記第2雌ねじ(260)が、本質的に同一の傾斜角度を有することを特徴とする請求項3から請求項5のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項7】
前記雄ねじ(310)、前記第1雌ねじ(220)、及び前記第2雌ねじ(260)が、それぞれ、同一数の雄ねじ溝(315)、第1雌ねじ溝(225)、及び第2雌ねじ溝(270)を有し、それぞれが、本質的に同一の半径を備えることを特徴とする請求項3から請求項6のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項8】
前記少なくとも1つの第1雌ねじ溝(225)及び前記少なくとも1つの第2雌ねじ溝(265)が、前記第2切替システム位置において、本質的に共通の軸上に位置することを特徴とする請求項3から請求項7のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項9】
前記分注要素(300)を前記容器(500)内に自由に軸方向に押し込むために、前記少なくとも1つの第1雌ねじ溝(225)及び前記少なくとも1つの第2雌ねじ溝(265)が、前記第2切替システム位置において、前記雄ねじ(310)を前記第1雌ねじ溝(225)及び前記第2雌ねじ溝(265)に自由に軸方向に押し込むことができるように、前記雄ねじ(310)に配向しており、特に、共通の軸上に位置することを特徴とする請求項8に記載の装置(100)。
【請求項10】
前記少なくとも1つの第1雌ねじ溝(225)及び前記少なくとも1つの第2雌ねじ溝(265)が、前記第1切替システム位置において共通の軸上に位置していないことを特徴とする請求項3から請求項9のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項11】
前記少なくとも1つの第1雌ねじ溝(225)及び前記少なくとも1つの第2雌ねじ溝(265)が、前記第1切替システム位置において共通の軸上に位置しておらず、前記分注要素(300)を前記容器(500)内に軸方向に螺合することができるように、前記雄ねじ(310)が前記第1雌ねじ(220)及び前記第2雌ねじ(260)と互いに結合することを特徴とする請求項10に記載の装置(100)。
【請求項12】
前記装置(100)が、プラスチック、特に堆肥化可能なプラスチック、好ましくはガラス繊維強化プラスチック、金属、又はプラスチック、特に堆肥化可能なプラスチック、好ましくはガラス繊維強化プラスチック及び金属の組合せで作られていることを特徴とする請求項から請求項11のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項13】
前記第1中空筒体(210)が、前記接続要素(240)を取り囲むことを特徴とする請求項2から請求項12のいずれか一項に記載の装置(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器から骨セメントを分注するための装置であって、この装置は、この装置を容器に可逆的に接続するための接続要素と、少なくとも部分的に雄ねじを有する棒状の分注要素と、少なくとも部分的に第1雌ねじを有する切替システムとを備え、第1雌ねじは、分注要素が、結合された第1切替システム位置において容器内に軸方向に螺合されることができ、分注要素が、分離された第2切替システム位置において容器内に自由に軸方向に押し込まれることができるように、雄ねじに噛み合い式に結合されることができる装置に関する。本発明はさらに、装置によって容器から骨セメントを分注するための方法であって、この装置は、この装置を容器に可逆的に接続するための接続要素と、少なくとも部分的に雄ねじを有する棒状の分注要素と、少なくとも部分的に第1雌ねじを有する切替システムとを備え、第1雌ねじは、分注要素が、結合された第1切替システム位置において容器内に軸方向に螺合されることができ、分注要素が、分離された第2切替システム位置において容器内に自由に軸方向に押し込まれることができるように、雄ねじに噛み合い式に結合されることができる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
整形外科手術中、特に人工股関節及び人工膝関節を骨材料で固定している間に、骨セメントを容易に、安全に、かつ費用効率よく塗布(施用)することができる骨セメントを分注するための装置及び方法を示すために、かなりの努力がなされている。
【0003】
骨セメントは、通常、容器内に準備され、分注ガンによって容器から分注される。このタイプの分注ガンは、例えば、米国特許第5,638,997B2号明細書及び米国特許第4,338,925A号明細書に記載されている。分注ガンは、トリガ機構を有し、トリガの作動は、分注要素を駆動し、分注要素は、容器から骨セメントを分注する。このタイプの分注ガンの欠点は、骨セメントの量が、通常、トリガーストローク全体によって、又は少なくとも、分注ガンの機構によって定められる個別の体積単位で送達されるため、正確な量の骨セメントを容器から分注することが困難であることである。さらに、このタイプの分注ガンを使用する場合には、高いコストがかかり、これは、一方では、高い取得コスト、並びに高価な塗布ガンを再使用するために必要な消毒工程に起因する。
【0004】
市場では、骨セメントを分注するための装置のコストを改善し、低減することが望まれている。
【0005】
骨セメントを分注するための装置は、米国特許第6,796,987B2号明細書に記載されており、これは、回転運動によって容器から骨セメントを分注するための、雄ねじを備えた分注要素を有する。この目的のために、雄ねじは、切替要素の雌ねじの部分に片側で結合し、それによって、雌ねじは、ばねによって雄ねじに押し付けられる。切替システムに対する一定の圧力のために、雌ねじは、雄ねじから切り離され得る。これにより、装置内で分注要素が軸方向に自由にシフトすることが可能になる。
【0006】
この装置の欠点は、自由に軸方向にシフトすることが、切替システムに対して一定の圧力を維持する場合にのみ可能であることである。これは、外科医がその装置を操作することをより困難にする。というのも、片手が切替システムの作動のために拘束されているからである。
【0007】
この装置のさらなる欠点は、雄ねじと雌ねじとの片側結合である。これは、片側材料応力をもたらし、従って、装置の破断関連故障の起こりやすさを増加させる。
【0008】
上記装置のさらなる欠点は、雄ねじと雌ねじとの間の弱い機械的結合であり、この結合はばねの張力のみによって決まる。特に、高粘性の骨セメントの場合、ばねの張力は、骨セメントを分注するのに十分ではない。連続的に螺合される代わりに、分注要素は代わりに押し離され、従って雌ねじは雄ねじから切り離される。
【0009】
加えて、上記装置は多くの可動部品を含み、その結果、特にばねによって引き起こされる誤動作のリスクが増大している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】米国特許第5,638,997B2号明細書
【文献】米国特許第4,338,925A号明細書
【文献】米国特許第6,796,987B2号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、従来技術から生じる欠点の1つ又はいくつかを少なくとも部分的に克服することである。
【0012】
特に、本発明は、取り扱いが容易で、費用効率が高く、高い機械的安定性を有する、容器から骨セメントを分注するための装置を提供するという目的に基づく。この装置は、負圧の影響下で分注する前に容器の一端に骨セメントが集められる容器、並びに分注する前に容器の内容積にわたって骨セメントが不定的に分配される容器に適しているべきである。この装置は、使用者がするべき作業量をできるだけ少なく保つべきであり、例えば負圧の影響下で、分注前に、骨セメントが端部、特に分注端で集められる容器のための分注の可能な限り迅速な開始を提供するべきである。
【0013】
本発明のさらなる目的は、骨セメントを容器から分注することができ、それによって既に記載された目的の少なくとも一部が少なくとも部分的に解決される方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
独立請求項の特徴は、上述の目的の少なくとも1つを少なくとも部分的に満たすことに寄与する。従属請求項は、目的の少なくとも1つを少なくとも部分的に満たすことに寄与する好ましい実施形態を提供する。
【0015】
[1]容器から骨セメントを分注するための装置であって、この装置を容器に可逆的に接続するための接続要素と、少なくとも部分的に雄ねじを有する棒状の分注要素と、少なくとも部分的に第1雌ねじを有する切替システムとを備え、第1雌ねじは、分注要素が、結合された第1切替システム位置において容器内に軸方向に螺合されることができ、分注要素が、分離された第2切替システム位置において容器内に自由に軸方向に押し込まれることができるように、雄ねじに噛み合い式に結合されることができ、第1雌ねじは、スリーブ状に分注要素を取り囲み、切替システムは、分注要素の長手方向軸の周りの回転運動によって、第1切替システム位置と第2切替システム位置との間で可逆的にシフト(移動)されることができることを特徴とする装置。
【0016】
[2]上記切替システムが、上記第1雌ねじを有する第1中空筒体と、上記第1中空筒体に軸方向に接続される第2中空筒体とを有し、
上記第1中空筒体と上記第2中空筒体とは、上記切替システムが、上記第1切替システム位置と上記第2切替システム位置との間で、上記長手方向軸の周りの上記第1中空筒体の第2中空筒体に対して反対方向への回転運動によって可逆的にシフトされることができるように接続されていることを特徴とする実施形態1に記載の装置。
【0017】
[3]第2中空筒体が、少なくとも部分的に第2雌ねじを有し、上記雄ねじは、長手方向軸に沿って延びる少なくとも1つの雄ねじ溝を有し、
第1雌ねじは、長手方向軸に沿って延びる少なくとも1つの第1雌ねじ溝を有し、
第2雌ねじは、長手方向軸に沿って延びる少なくとも1つの第2雌ねじ溝を有することを特徴とする実施形態2に記載の装置。
【0018】
[4]上記少なくとも1つの雄ねじ溝が雄ねじを雄ねじ部に分割し、
上記少なくとも1つの第1雌ねじ溝が第1雌ねじを第1雌ねじ部に分割し、
少なくとも1つの第2雌ねじ溝が第2雌ねじを長手方向軸に沿って第2雌ねじ部に分割することを特徴とする実施形態3に記載の装置。
【0019】
[5]上記少なくとも1つの雄ねじ溝、少なくとも1つの第1雌ねじ溝、及び少なくとも1つの第2雌ねじ溝の半径が、上記雄ねじ部、第1雌ねじ部、及び第2雌ねじ部の半径と同等又はそれよりも大きいことを特徴とする実施形態4に記載の装置。
【0020】
[6]上記雄ねじ、上記第1雌ねじ、及び上記第2雌ねじが、本質的に同一の傾斜角度を有することを特徴とする実施形態3から実施形態5のいずれか1つに記載の装置。
【0021】
[7]上記雄ねじ、上記第1雌ねじ、及び上記第2雌ねじが、それぞれ、同一数の雄ねじ溝、第1雌ねじ溝、及び第2雌ねじ溝を有し、それぞれが、本質的に同一の半径を備えることを特徴とする実施形態3から実施形態6のいずれか1つに記載の装置。
【0022】
[8]上記少なくとも1つの第1雌ねじ溝及び上記少なくとも1つの第2雌ねじ溝が、上記第2切替システム位置において、本質的に共通の軸上に位置することを特徴とする実施形態3から実施形態7のいずれか1つに記載の装置。
【0023】
[9]分注要素を容器内に自由に軸方向に押し込むために、少なくとも1つの第1雌ねじ溝及び少なくとも1つの第2雌ねじ溝が、第2切替システム位置において、雄ねじを第1雌ねじ溝及び第2雌ねじ溝に自由に軸方向に押し込むことができるように、上記雄ねじに配向しており、特に、共通の軸上に位置することを特徴とする実施形態8に記載の装置。
【0024】
[10]上記少なくとも1つの第1雌ねじ溝及び上記少なくとも1つの第2雌ねじ溝が、上記第1切替システム位置において共通の軸上に位置していないことを特徴とする実施形態3から実施形態9のいずれか1つに記載の装置。
【0025】
[11]上記少なくとも1つの第1雌ねじ溝及び少なくとも1つの第2雌ねじ溝が、第1切替システム位置において共通の軸上に位置しておらず、分注要素を容器内に軸方向に螺合することができるように、雄ねじが第1雌ねじ及び第2雌ねじと互いに結合することを特徴とする実施形態10に記載の装置。
【0026】
[12]上記装置が、プラスチック、特に堆肥化可能なプラスチック、好ましくはガラス繊維強化プラスチック、金属、又はプラスチック、特に堆肥化可能なプラスチック、好ましくはガラス繊維強化プラスチック及び金属の組合せで作られていることを特徴とする実施形態1から実施形態11のいずれか1つに記載の装置。
【0027】
[13]上記第1中空筒体が、上記接続要素を取り囲むことを特徴とする実施形態1から実施形態12のいずれか1つに記載の装置。
【0028】
[14]装置によって容器から骨セメントを分注する方法であって、この装置は、
上記装置を容器に可逆的に接続するための接続要素と、
少なくとも部分的に雄ねじを有する棒状の分注要素と、
少なくとも部分的に第1雌ねじを有する切替システムと
を備え、第1雌ねじは、
分注要素が、結合された第1切替システム位置において容器内に軸方向に螺合されることができ、
上記分注要素が、分離された第2切替システム位置において容器内に自由に軸方向に押し込むことができるように、雄ねじに噛み合い式に結合されることができ、
当該方法は、少なくとも
a)上記接続要素によって上記装置を上記容器に接続する工程と、
b)上記切替システムを第2切替システム位置へ移動する工程と、
c)上記分注要素を上記容器内へ軸方向にシフトさせる工程と、
d)上記分注要素の長手方向軸の周りの回転運動によって上記切替システムを第1切替システム位置に移動させる工程と、
e)上記分注要素を容器内に螺合することによって、骨セメントを上記容器から分注する工程と
を備える方法。
【0029】
[15]工程d)における回転運動が、切替システムの第1中空筒体を、切替システムの第2中空筒体に対して回転方式でシフトさせることを特徴とする実施形態14に記載の方法。
【0030】
[16]上記第1中空筒体が第1雌ねじを有し、上記第2中空筒体が第2雌ねじを有し、
上記雄ねじが少なくとも1つの雄ねじ溝を有し、
上記第1雌ねじが少なくとも1つの第1雌ねじ溝を有し、
上記第2雌ねじが少なくとも1つの第2雌ねじ溝を有し、
上記少なくとも1つの雄ねじ溝が上記雄ねじを雄ねじ部に分割し、
上記少なくとも1つの第1雌ねじ溝が、上記第1雌ねじを第1雌ねじ部に分割し、
上記少なくとも1つの第2雌ねじ溝が上記第2雌ねじを第2雌ねじ部に分割し、それぞれ上記長手方向軸に沿っており、上記少なくとも1つの第1雌ねじ溝及び上記少なくとも1つの第2雌ねじ溝が、上記第2切替システム位置において本質的に共通の軸上に配置されており、上記雄ねじ部が、工程c)で、共通の軸に沿って上記容器内へシフトさせられることを特徴とする実施形態14又は実施形態15に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は、容器から骨セメントを分注する装置を示す。
図2図2は、第2切替システム位置における図1の装置の切替システムの概略断面を示す。
図3図3は、第1切替システム位置における図2の装置の切替システムの概略断面を示す。
図4図4は、骨セメントを充填した容器に固定した図1の装置の概略断面を示す。
図5図5は、容器に挿入された分注要素を含む図4の装置を示す。
図6図6は、容器から骨セメントを分注した後の図5の装置を示す。
図7図7は、装置によって容器から骨セメントを分注する方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
一般事項
本明細書では、範囲仕様は、限界として言及された値も含む。従って、変数Aに関して「XからYまでの範囲」というタイプの指定は、Aが値X、Y、及びXとYとの間の値をとることができることを意味する。タイプ「Yまで」の範囲は、変数Aについて片側で制限され、従って、値としてY及びY未満を意味する。
【0033】
記載された特徴は、用語「本質的に」と組み合わせることができる。用語「本質的に」は、実際の条件及び製造技術の下で、「オーバーラップ」、「垂直」、「直径」、又は「1つの軸上に位置する」などの概念の数学的に正確な解釈は、決して正確に特定することができず、特定の製造関連の誤差公差内でのみ特定することができると理解されるべきである。例えば、「本質的に平行な軸」は、互いに対して85°~95°の角度を引き、「本質的に同一の体積」は、5体積%までの偏差を含む。「本質的にプラスチックからなる装置」は、例えば、>95~<100重量%のプラスチック含有量を含む。
【0034】
詳細な説明
本発明の第1主題は、容器から骨セメントを分注するための装置であって、
この装置を容器に可逆的に接続するための接続要素と、
少なくとも部分的に雄ねじを有する棒状の分注要素と、
少なくとも部分的に第1雌ねじを有する切替システムと
を備え、
第1雌ねじは、分注要素が、結合された第1切替システム位置において容器内に軸方向に螺合されることができ、分注要素が、分離された第2切替システム位置において容器内に自由に軸方向に押し込まれることができるように、雄ねじに噛み合い式に結合されることができ、
第1雌ねじが分注要素をスリーブ状に取り囲み、切替システムが、分注要素の長手方向軸の周りの回転運動によって第1切替システム位置と第2切替システム位置との間で可逆的にシフトすることができることを特徴とする装置に関する。
【0035】
当該装置は、装置を容器、特に容器の開放軸方向端部に可逆的に接続するための接続要素を有する。この接続要素は、装置と容器とが共通の軸上に位置するように、装置と容器とを接続する。接続要素は、装置を容器に可逆的に接続するために、様々な方法で具体化することができる。一実施形態では、接続要素は、容器の対応する雄ねじへの接続を確立するための雌ねじとして具体化される。さらなる実施形態では、接続要素は、容器の対応する凹部と係合する1つ又は複数の係合フックとして具体化される。さらなる好ましい実施形態では、当該装置及び容器は、差し込み式閉鎖を介して互いに接続される。
【0036】
当該装置は、容器から骨セメントを分注するための棒状の分注要素を有する。この目的のために、分注要素は、接続要素に接続された容器の開放端に軸方向に挿入され、これは、連続挿入に応答して、容器の開放端の反対側に位置する分注端から骨セメントを分注することにつながる。容器に挿入できるようにするために、分注要素は、容器の内径と本質的に等しいか又はそれより小さい外径、並びに容器から骨セメントを完全に分注するのに十分な長さを有する。
【0037】
分注要素を挿入することによる容器からの骨セメントの分注は、様々な方法で実現することができる。一実施形態では、分注要素は、直接的な物理的接触によって骨セメントに作用する。この目的のために、分注要素は、容器の分注側に面し、容器の内径に本質的に対応する直径を有する軸方向端部を有する。容器内へのシフトに応答して、このタイプの分注要素の軸方向端部は、骨セメントが容器から押し出されるように、容器の内壁と協働する。さらなる好ましい実施形態では、分注要素は、容器内に位置して分注要素と骨セメントとの間に空間的に位置する分注ピストンに作用する。この分注ピストンは、本質的に容器の内径に対応する分注ピストン直径を有する。分注ピストンに面する分注要素の端部は、分注ピストンを容器の分注側の方向にシフトさせ、従って、分注要素を容器内に連続的に挿入しながら、骨セメントを容器から押し出す。
【0038】
この装置は切替システムを有する。この切替システムは、容器内への分注要素の移動のタイプを制御する役割を果たす。この目的のために、切替システムは、2つの切替システム位置を有し、これに関して、第1切替システム位置は、回転運動のみを提供し、第2切替システム位置は、分注要素の容器内への押し込み移動を提供する。
【0039】
2つの切替システム位置のうちの1つへの設定によって、分注要素の移動のタイプを制御するために、分注要素は、少なくとも部分的に、雄ねじを有し、切替システムは、少なくとも部分的に、第1雌ねじを有する。第1切替システム位置においては、雄ねじと第1雌ねじは、互いに結合され、相互に対する分注要素及び切替システムの相対的な回転運動が分注要素を容器内に螺合するように、形状接続的に及び/又は非形状接続的に協働する。第1切替システム位置においては、雄ねじと第1雌ねじとが、容器内への分注要素の導入が、回転運動を介してのみ行われ得るように協働する。装置の使用者のために回転運動を容易にするために、分注要素は、例えば、手のひらに適合する細長いハンドルのような螺合手段を有することができる。第2切替システムの位置においては、雄ねじと第1雌ねじが分離されるため、分注要素は、押し込み動作によって容器内に自由に軸方向に移動することができる。第2切替システム位置においては、分注要素を容器に導入するために回転運動は不要である。
【0040】
第1雌ねじは、分注要素を、従って雄ねじもスリーブ状に取り囲む。スリーブ状にとは、第1雌ねじが、第1切替システム位置並びに第2切替システム位置において、分注要素の全断面円周を取り囲み、その部分領域だけを囲むわけではないことを意味する。雌ねじのスリーブ状設計の利点は、装置の高い機械的安定性であり、これは、特に、高粘性骨セメントを分注するために分注要素を第1切替システム位置において螺合するときに必要とされる。堅固なスリーブ状の取り囲みは、雄ねじと第1雌ねじとの意図しない分離を防止する。というのも、その分離は、雄ねじと雌ねじとの断面結合の場合にのみ可能であるからである。さらなる利点は、分注要素の均等な機械的応力であり、それは、分注要素の断面表面全体にわたって延在し、従って、装置の機械的安定性に寄与する。
【0041】
切替システムは、分注要素の長手方向軸の周りの回転運動によって、第1切替システム位置と第2切替システム位置との間で可逆的にシフトされ得る。切替システムは、例えば装置の使用者によって切替システムに外力が作用しない限り、設定された切替システム位置に留まる。この装置は、例えば、装置の使用者によるような外力なしに一方の切替システム位置から他方の切替システム位置へと切替システムを独立して移動させる、例えばばねのような復元要素を有していない。このタイプの切替システムの利点は、使用者が、例えばばね等の復元要素に対して連続的に力を加える必要がなく、従って、装置及び容器を取り扱うために両手を自由にすることである。これにより、使用者はこの装置をより簡単に扱うことができる。さらなる利点は、特に、例えば復元要素等の必要とされる可動式の構成要素の数が少ないために、このタイプの切替システムは、高い機械的安定性を有し、従って、誤動作のリスクが低減されることである。
【0042】
当該装置の一実施形態は、上記切替システムが、上記第1雌ねじを有する第1中空筒体(中空シリンダ)と、上記第1中空筒体に軸方向に接続された第2中空筒体とを有し、上記第1中空筒体と上記第2中空筒体とが、上記長手方向軸の周りの上記第1中空筒体の第2中空筒体に対して反対方向への回転運動によって、上記切替システムを上記第1切替システム位置と上記第2切替システム位置との間で可逆的にシフトさせることができるように接続されていることを特徴とする。
【0043】
切替システムは、第1中空筒体と第2中空筒体を有する。中空筒体は、管状要素として理解されるべきであり、この管状要素は、内部と、内部を取り囲む要素壁とを備える。長手方向軸に垂直に、中空筒体は断面を有し、ここで、断面は異なる形状をとることができる。断面は、例えば、楕円形、正方形、五角形、六角形、不規則形又は円形とすることができる。取り扱いが容易なため、使用者にとって円形断面が好ましく、それにより、第1中空筒体及び/又は第2中空筒体は、中空筒体内だけでなく、互いに比較して異なるサイズの断面を有することができる。一実施形態において、第1中空筒体及び/又は第2中空筒体は、外側に構造を有し、この構造が、使用者にとっては、第2中空筒体に対して反対方向への第1中空筒体の回転を容易にすることが好ましい。一実施形態では、第1中空筒体及び/又は第2中空筒体は、それぞれの外側に突起を有する。さらなる好ましい実施形態では、第1中空筒体及び/又は第2中空筒体は、装置の長手方向軸に沿って延びる少なくとも1つのビード(玉縁)を有する。ビードは、特に手術条件下で手袋を着用する場合に、中空筒体の外面の把持が増大するので好ましい。一方で、これは、第1切替システム位置及び第2切替システム位置への切替システムの移動を容易にし、回転運動中に片手又は両手でスリップする使用者のリスクを下げる。
【0044】
第1中空部は、雌ねじを有し、そして、2つの中空筒体の長手方向軸の周りの反対方向の回転が可能なように第2中空筒体と軸方向に接続されている。第1中空筒体と第2中空筒体とは、互いに異なる方法で連結して、反対方向の回転を与えることができる。ねじ、プラグ接続、又は差し込み式閉鎖は、可能な接続型の例である。
【0045】
第1中空筒体が第2中空筒体に対して反対方向に回転できることは、様々な方法で具体化することができる。一実施形態では、第1中空筒体及び第2中空筒体は、任意の程度に回転方向に互いに逆向きに回転することができ、この反対方向の回転の継続に応じて切替システムを第1切替システム位置及び第2切替システム位置に交互に移動させることができる。さらなる好ましい実施形態では、第1中空筒体及び第2中空筒体は、任意の程度に回転方向に互いに逆回転させることはできず、回転方向の回転可能性は停止部によって制限される。一実施形態では、回転可能性は、正確に1つの停止部によって制限され、その結果、第1中空筒体と第2中空筒体との回転方向が、この停止部までは反対方向になることによって、切替システムを第1切替システム位置に移動させることができ、この停止部までは反対方向の回転によって、第2切替システム位置に移動させることができる。さらなる好ましい実施形態では、上記切替システムは、2つの停止部を有し、第1停止部までの反対方向の上記第1中空筒及び上記第2中空筒の回転が上記切替システムを上記第1切替システム位置に移動させ、かつ、上記第2停止部までの反対方向の回転運動が上記切替システムを上記第2切替システム位置に移動させる。少なくとも1つの停止部の存在により、使用者は、切替システム位置の切り替えが行われたかどうかの明確な物理的応答を得る。また、使用者は、好ましくは、例えば、第1中空筒体及び/又は第2中空筒体における光学マーキングによって、例えばカラーマーキングによって、強調記号(アクセント)又はノッチによって、それぞれ設定された切替システム位置を読み取ることができる。
【0046】
第1中空筒体及び第2中空筒体は、様々な方法で協働して、分注要素の長手方向軸の周りの第1中空筒体の第2中空筒体に対して反対方向への回転運動によって、第1切替システム位置と第2切替システム位置との間で切替システムを可逆的に切り替えることができる。
【0047】
当該装置の一実施形態は、第2中空筒体が、少なくとも部分的に第2雌ねじを有し、分注要素の雄ねじが、長手方向軸に沿って延びる少なくとも1つの雄ねじ溝を有し、第1雌ねじが、長手方向軸に沿って延びる少なくとも1つの第1雌ねじ溝を有し、第2雌ねじが、長手方向軸に沿って延びる少なくとも1つの第2雌ねじ溝を有することを特徴とする。
【0048】
この実施形態では、第1中空筒体及び第2中空筒体は、第1雌ねじ及び第2雌ねじが、雄ねじと確動的に及び/又は非確動的に協働できるように、分注要素の周りにスリーブ状に配置される。一実施形態では、第2雌ねじは、本質的に第1雌ねじに直接軸方向に隣接し、その結果、第2雌ねじは、第1雌ねじの延長部分を表す。さらなる実施形態では、第1雌ねじと第2雌ねじとの間にギャップがあり、これに関して、ギャップは雄ねじよりも小さい軸方向長さを有し、その結果、雄ねじは、少なくとも第1雌ねじ又は第2雌ねじと、いつでも、噛み合い式に及び/又は非噛み合い式に協働することができる。
【0049】
第1切替システム位置において、第1雌ねじ及び/又は第2雌ねじは、雄ねじと噛み合い式に及び/又は非噛み合い式に協働する。従って、雄ねじは、2つの雌ねじのうちの少なくとも1つに常に結合され、分注要素の容器への軸方向の導入は、回転運動によってのみ可能である。
【0050】
第2切替システム位置において第1雌ねじ及び第2雌ねじから雄ねじを分離するために、雄ねじは少なくとも1つの雄ねじ溝を有し、第1雌ねじは少なくとも1つの第1雌ねじ溝を有し、第2雌ねじは少なくとも1つの第2雌ねじ溝を有する。各ねじのそれぞれのねじ溝は、分注要素の長手方向軸に沿って延びる。各ねじにおける少なくとも1つの第1雌ねじ溝及び少なくとも1つの第2雌ねじ溝は、第1雌ねじ及び第2雌ねじの軸方向の広がり全体にわたって延在する。少なくとも1つの雄ねじ溝は、骨セメントを完全に分注するために分注要素が容器内に導入されなければならない限り、少なくとも雄ねじ上に延在し、それによって、その延在部分は、容器に面する分注要素の端部を取り囲む。それぞれのねじのねじフランクの高さは、それぞれのねじ溝にそって小さくなる。1つの実施形態では、ねじフランクの高さはゼロに低下され、その結果、それぞれのねじは、ねじ溝に沿って完全な遮断を有する。ねじフランクの高さをゼロにすることは、ねじ溝が、各ねじのねじターンの最低ノッチを構成する高さに位置することを意味する。さらなる実施形態では、それぞれのねじは、ねじ溝に沿ってゼロに低下するのではなく、ねじ溝の外側のねじフランクと比較して、例えば高さの50%に低下するに過ぎない。さらなる実施形態では、それぞれのねじは、ねじ溝に沿ったねじターンの最も深いノッチを越えて低下する。
【0051】
雄ねじと第1雌ねじ及び/又は第2雌ねじとの間の噛み合い式及び/又は非噛み合い式の相互作用は、ねじ溝のそれぞれの領域では起こらない。第2切替システム位置においては、少なくとも1つの第1雌ねじ溝及び少なくとも1つの第2雌ねじ溝は、分注要素を容器内に自由に軸方向に押し込むことができるように、互いに対して配置される。
【0052】
当該装置の一実施形態は、少なくとも1つの雄ねじ溝が雄ねじを雄ねじ部に分割し、少なくとも1つの第1雌ねじ溝が第1雌ねじを第1雌ねじ部に分割し、少なくとも1つの第2雌ねじ溝が第2雌ねじを長手方向軸に沿って第2雌ねじ部に分割することを特徴とする。
【0053】
ねじ部とは、それぞれのねじフランクの最大高さを構成するそれぞれのねじの領域であり、ねじ溝によって横断されることはない。ねじ部は、雄ねじ部並びに第1雌ねじ部及び/又は第2雌ねじ部の噛み合い式及び/又は非噛み合い式の協働が可能であるように具体化される。第1切替システム位置においては、雄ねじ部は、第1雌ねじ部及び/又は第2雌ねじ部と噛み合い式及び/又は非噛み合い式の態様で協働し、従って、分注要素は、回転運動によってのみ容器内に螺合され得る。第2切替システムの位置においては、少なくとも1つの第1雌ねじ溝と少なくとも1つの第2雌ねじ溝とは、第1雌ねじ溝と第2雌ねじ溝とに沿って、雄ねじ部を装置内で自由に軸方向にシフトさせることができるように、互いに対して配置される。
【0054】
分注要素の容器内への自由な軸方向のシフトを提供するために、当該装置の一実施形態は、少なくとも1つの雄ねじ溝、少なくとも1つの第1雌ねじ溝、及び少なくとも1つの第2雌ねじ溝の半径が、雄ねじ部、第1雌ねじ部及び第2雌ねじ部の半径と同等又はそれよりも大きいことを特徴とする。
【0055】
従って、第1雌ねじ溝及び第2雌ねじ溝の軸方向長さに沿った雄ねじ部の自由な軸方向のシフト、及び同時に、雄ねじ溝の軸方向長さに沿った第1雌ねじ部及び第2雌ねじ部の自由な軸方向のシフトが可能である。
【0056】
第1切替システム位置において、雄ねじと、特に雄ねじ部から、第1雌ねじ部及び/又は第2雌ねじ部と、特に第1雌ねじ部及び/又は第2雌ねじ部との噛み合い式及び/又は非噛み合い式の協働を提供するために、当該装置の一実施形態は、雄ねじ、第1雌ねじ、及び第2雌ねじ、特に雄ねじ部、第1雌ねじ部、及び第2雌ねじ部が、本質的に同一の傾斜角度を有することを特徴とする。
【0057】
雄ねじ並びに第1雌ねじ及び第2雌ねじは、異なる数のそれぞれのねじ溝を有することができ、それに関連して、異なる半径方向の広がりを持つ異なる数のそれぞれのねじ部を有することができる。しかしながら、分注要素の容器内への自由な軸方向のシフトが、第2切替システム位置において可能であるように、それぞれのねじは、第1雌ねじ溝及び第2雌ねじ溝に沿った雄ねじ部のシフト、及び同時に、雄ねじ溝に沿った第1雌ねじ部及び第2雌ねじ部のシフトが可能であるように空間的に配置可能でなければならない。
【0058】
当該装置の一実施形態は、雄ねじ、第1雌ねじ、及び第2雌ねじが、それぞれが本質的に同一の半径を備える、同一数の雄ねじ溝、第1雌ねじ溝、及び第2雌ねじ溝をそれぞれ有することを特徴とする。
【0059】
この実施形態の利点は、当該装置の高い機械的安定性、及び骨セメントを分注することに応答するそれぞれのねじへの均一な力の分配である。
【0060】
一実施形態では、それぞれのねじ部は、それぞれのねじ溝と同じ半径方向の広がりを有する。さらなる好ましい実施形態では、それぞれのねじ部は、それぞれのねじ溝よりも例えば1mm以下小さい小さな半径方向の広がりを有し、それによって、第2切替システム位置における分注要素の自由な軸方向シフトが、切替システム内の分注要素の簡略化された空間的位置決めに起因して、使用者にとって容易になる。
【0061】
それぞれのねじは、例えば2~12本のそれぞれのねじ溝を有し、この場合、ねじ溝の数が多いほど、それぞれのねじに力がより均等に分配される。より均一な力の分配は、当該装置の機械的安定性の増加をもたらす。ねじ溝の数が増加するにつれて、切替システム内の分注要素の一致する空間的位置決めの困難性も同様に増加する。6~10本のねじ溝数、特に8本のねじ溝が、高い機械的安定性と空間的位置決めの簡単さとの間の良好な妥協点であることが判明した。
【0062】
当該装置の一実施形態は、少なくとも1つの第1雌ねじ溝及び少なくとも1つの第2雌ねじ溝が、第2切替システム位置において本質的に共通の軸上に位置することを特徴とする。
【0063】
従って、雄ねじ及び第1雌ねじ、並びに雄ねじ及び第2雌ねじの分離、従って、分注要素の容器への完全な可逆的挿入が、分注要素の長手方向軸の周りの回転なしに可能であり、これは使用者にとって装置の操作を容易にする。
【0064】
雄ねじを第1雌ねじと第2雌ねじとから分離し、従って、分注要素を自由に軸方向にシフトさせるために、当該装置の一実施形態は、分注要素を容器内に自由に軸方向に押し込むために、第2切替システム位置において、雄ねじを第1雌ねじ溝及び第2雌ねじ溝に自由に軸方向に押し込むことができるように、少なくとも1つの第1雌ねじ溝と少なくとも1つの第2雌ねじ溝とが、雄ねじに配向しており、特に本質的に共通の軸上に位置することを特徴とする。
【0065】
当該装置の一実施形態は、少なくとも1つの第1雌ねじ溝及び少なくとも1つの第2雌ねじ溝が、第1切替システム位置において共通の軸上に位置していないことを特徴とする。
【0066】
従って、雄ねじは、第1雌ねじ及び/又は第2雌ねじに、噛み合い式に及び/又は非噛み合い式に接続され、分注要素は、結果的に、回転運動によって容器に螺合することによってのみ移動させることができる。
【0067】
雄ねじを切替システムに結合するために、当該装置の一実施形態は、少なくとも1つの第1雌ねじ溝及び少なくとも1つの第2雌ねじ溝が、第1切替システム位置において共通の軸上に位置しておらず、従って、雄ねじは、分注要素を容器内に軸方向に螺合できるように、第1雌ねじ及び第2雌ねじと結合することを特徴とする。
【0068】
その結果、第1雌ねじ、特に少なくとも1つの第1雌ねじ部、及び/又は第2雌ねじ、特に少なくとも1つの第2雌ねじ部は、雄ねじ、特に少なくとも1つの雄ねじ部と噛み合い式に及び/又は非噛み合い式に協働し、従って互いに結合される。
【0069】
当該装置は、異なる材料又は材料の組み合わせで作ることができる。
【0070】
当該装置の一実施形態は、当該装置が、プラスチック、特に堆肥化可能なプラスチック、好ましくはガラス繊維強化プラスチック、金属、又はプラスチック、特に堆肥化可能なプラスチック、好ましくはガラス繊維強化プラスチック及び金属の組合せで作られることを特徴とする。
【0071】
低コスト及び簡単な製造方法のため、プラスチックが好ましい。プラスチックの使用は、当該装置の経済的に持続可能な一回限りの使用を提供し、それによって、既に低い獲得コストに加えて、再使用のための費用集約的な消毒工程を省略することができる。プラスチックの機械的安定性を高めるために、特にガラス繊維で強化されたプラスチックが好ましい。特に堆肥化可能なプラスチックは、生態学的理由から好ましい。ポリアミド12又はポリアミド6等のポリアミド、及びポリイミドが、プラスチックの例である。当該装置の個々の選択された部分に特に高い機械的強度を付与するために、これらの部分は金属で作ることができる。鉄、鋼、銅、若しくはアルミニウム、又はこれらの金属の合金が、金属の例である。
【0072】
接続要素は、当該装置の異なる箇所に取り付けることができる。
【0073】
取り扱いが単純であり、構成要素の数が最小であるため、当該装置の一実施形態は、第1中空筒体が接続要素を取り囲むことを特徴とする。
【0074】
本発明の第2目的は、装置によって容器から骨セメントを分注する方法であって、この装置は、
上記装置を容器に可逆的に接続するための接続要素と、
少なくとも部分的に雄ねじを有する棒状の分注要素と、
少なくとも部分的に第1雌ねじを有する切替システムと
を備え、
第1雌ねじは、
分注要素が、結合された第1切替システム位置において容器内に軸方向に螺合されることができ、
上記分注要素が、分離された第2切替システム位置において容器内に自由に軸方向に押し込むことができるように、雄ねじに噛み合い式に結合されることができ、
当該方法は、少なくとも
a)接続要素によって上記装置を上記容器に接続する工程と、
b)上記切替システムを第2切替システム位置へ移動する工程と、
c)上記分注要素を上記容器内へ軸方向にシフトさせる工程と、
d)上記分注要素の長手方向軸の周りの回転運動によって上記切替システムを第2切替システム位置に移動させる工程と、
e)上記分注要素を容器内に螺合することによって、骨セメントを上記容器から分注する工程と
を備える方法に関する。
【0075】
当該方法のさらなる実施形態は、工程d)における回転運動が、切替システムの第1中空筒体を、切替システムの第2中空筒体に対して回転方式でシフトさせることを特徴とする。記載された方法の利点は、使用者が、例えばばね等の復元要素に対して連続的に力を加えることによって、当該装置、特に切替システムを第2切替システム位置に保持する必要がないことである。従って、使用者は、当該装置を取り扱うために、特に分注要素を容器内に軸方向にシフトさせるために、両手を自由にすることができ、これにより、当該方法を実施することがより容易になる。
【0076】
当該方法のさらなる実施形態は、第1中空筒体が第1雌ねじを有し、第2中空筒体が第2雌ねじを有し、雄ねじが少なくとも1つの雄ねじ溝を有し、第1雌ねじが少なくとも1つの第1雌ねじ溝を有し、第2雌ねじが少なくとも1つの第2雌ねじ溝を有し、少なくとも1つの雄ねじ溝が雄ねじを雄ねじ部に分割し、少なくとも1つの第1雌ねじ溝が第1雌ねじを第1雌ねじ部に分割し、少なくとも1つの第2雌ねじ溝が第2雌ねじを第2雌ねじ部に分割し、各々が長手方向軸に沿っており、少なくとも1つの第1雌ねじ溝及び少なくとも1つの第2雌ねじ溝が第2切替システム位置において本質的に共通の軸上に配置されており、このため、雄ねじ部は、工程c)において、その共通の軸に沿って容器内にシフトされることを特徴とする。
【0077】
少なくとも1つの第1雌ねじ溝及び少なくとも1つの第2雌ねじ溝が、第2切替システム位置において本質的に共通の軸上に位置するということにより、使用者が容器内に単に押し込むという点で、工程c)において、分注要素の軸方向シフトを実行することができる。これにより、使用者は両手を自由にすることができ、これにより、当該方法を実行することがより容易になる。加えて、使用者は、分注要素を所望の位置に移動させるために、例えば復元要素を押すなど、当該装置が原因となる追加の力を加える必要がない。分注要素が容器内の所望の位置にある場合、使用者は、第1中空筒体の第2中空筒体に対するさらなる回転運動によって、切替システムを第1切替システム位置に移動させる。第2切替システム位置においては、第1雌ねじ溝及び第2雌ねじ溝は、共通の軸上には位置しないが、雄ねじ部は、第1雌ねじ部及び/又は第2雌ねじ部と噛み合い式に及び/又は非噛み合い式に態様で協働し、従って、分注要素に圧力を加えることによる連続した軸方向シフトはもはや不可能である。特に骨セメントを分注するための、分注要素の容器内への連続した移動は、分注要素を容器内に螺合することによって達成される。螺合は、所望の量の骨セメントが塗布(施用)されるまで行うことができる。切替システムは、好ましくは、骨セメントの分注が始まる程度まで分注要素が容器内に挿入されるとすぐに、第1切替システム位置から第2切替システム位置に移動されることになる。使用者からの力は、骨セメントの粘度に起因してその時点で増加し、その際には、螺合によって分注が使用者にとって容易になる。さらに、螺合は、挿入による分注と比較して、骨セメントの正確な計量を容易にする。第2切替システム位置における挿入は、それを迅速に行うことができるという利点を有する。これは、特に、時間が重要な手術の間に有利であり、骨セメントの迅速な硬化、例えば5分以内の硬化に起因して有利である。
【0078】
当該装置は、容器から骨セメントを分注することができることを特徴とする。本発明によれば、骨セメントは、医療技術の分野において、人工関節(例えば、股関節及び膝関節など)と骨材料との間の安定した接続を確立するのに適した物質であると理解される。骨セメントは、好ましくは、ポリメチルメタクリレート骨セメント(PMMA骨セメント)である。PMMA骨セメントは、すでに医学的用途で長年使用されており、Sir Charnleyの研究(Charnley, J. Anchorage of the femoral head prosthesis of the shaft of the femur. J.Bone Joint Surg. 1960;42,28-30を参照)に基づいている。この際、PMMA骨セメントは、第1開始成分として骨セメント粉末、第2開始成分としてモノマー液体から作ることができる。適切な組成物の場合、2つの出発成分は、互いに別々に貯蔵して安定であることができる。2つの出発成分を接触させるとき、骨セメントペーストとも呼ばれる塑性変形可能な骨セメントが、骨セメント粉末のポリマー成分を膨潤させることによって作り出される。その際、モノマーの重合は、ラジカルによって開始される。骨セメントの粘度は、上記骨セメントが完全に硬化するまで、モノマーの連続重合と共に上昇する。
【0079】
本発明によれば、骨セメント粉末は、少なくとも1つの粒子状ポリメチルメタクリレート及び/又は粒子状ポリメチルメタクリレートコポリマーを含む粉末であると理解される。スチレン及び/又はメチルアクリレートは、共重合体の例である。一実施形態では、骨セメント粉末は、骨セメント粉末内のモノマー液体の分布を支持する親水性添加剤をさらに含むことができる。さらなる実施形態では、骨セメント粉末は、重合を開始する開始剤を追加的に含むことができる。さらなる実施形態では、骨セメント粉末は、放射線不透過性材料をさらに含むことができる。なおさらなる実施形態では、骨セメント粉末は、例えば、抗生物質等の薬学的に活性な物質をさらに含むことができる。
【0080】
骨セメント粉末は、好ましくは、少なくとも1つの粒子状ポリメチルメタクリレート及び/又は粒子状ポリメチルメタクリレートコポリマー、開始剤、及び放射線不透過性材料を含むか、又はこれらの成分からなる。より好ましくは、骨セメント粉末は、少なくとも1つの粒子状ポリメチルメタクリレート及び/又は粒子状ポリメチルメタクリレートコポリマー、開始剤、放射線不透過性材料、及び親水性添加剤を含むか、又はこれらの成分からなる。最も好ましくは、骨セメント粉末は、少なくとも1つの粒子状ポリメチルメタクリレート及び/又は粒子状ポリメチルメタクリレートコポリマー、開始剤、放射線不透過性材料、親水性添加剤、及び抗生物質を含むか、又はこれらの成分からなる。本発明によれば、骨セメント粉末の粒状ポリメチルメタクリレート及び/又は粒状ポリメチルメタクリレートコポリマーの粒径は、150μm未満、好ましくは100μm未満の篩分級物に相当することができる。
【0081】
本発明によれば、親水性添加剤は、粒子状及び/又は繊維状に具体化することができる。さらなる実施形態では、親水性添加剤は、メチルメタクリレートへの溶解度が低く、好ましくは不溶性であり得る。さらなる実施形態では、親水性添加剤は、親水性添加剤1グラム当たり少なくとも0.6gのメチルメタクリレートの吸収容量を有することができる。さらなる実施形態では、親水性添加剤は、少なくとも1つのOH基を含む化学物質を有することができる。その際に、好ましくは、親水性添加剤がその表面に共有結合したOH基を有することを想定することができる。セルロース、オキシセルロース、デンプン、二酸化チタン及び二酸化ケイ素を含む群から選択される添加剤は、このタイプの好ましい親水性添加剤の例であることができ、このうち、発熱性二酸化ケイ素が特に好ましい。一実施形態では、親水性添加剤の粒径は、100μm未満、好ましくは50μm未満、最も好ましくは10μm未満の篩分級物に対応することができる。親水性添加剤は、骨セメント粉末の総重量に基づいて、0.1~2.5重量%の量で含有されることができる。
【0082】
本発明によれば、開始剤は、ジベンゾイルペルオキシドを含有することができ、又はジベンゾイルペルオキシドからなることができる。
【0083】
本発明によれば、放射線不透過性材料は、診断放射線画像上で骨セメントを可視化することを可能にする物質であると理解される。放射線不透過性材料の例は、硫酸バリウム、二酸化ジルコニウム、及び炭酸カルシウムを含むことができる。
【0084】
本発明によれば、薬学的に活性な物質は、1つ又はいくつかの抗生物質、及び場合により1つ又はいくつかの抗生物質のための添加された補因子を含むことができる。薬学的に活性な物質は、好ましくは、1つ又はいくつかの抗生物質、及び場合により1つ又はいくつかの抗生物質のための添加された補因子からなる。とりわけ、ゲンタマイシン、クリンダマイシン、及びバンコマイシンは抗生物質の例である。
【0085】
本発明によれば、上記モノマー液体は、モノマーのメチルメタクリレートを含むことができ、又はメチルメタクリレートからなることができる。一実施形態では、モノマー液体は、モノマーに加えて、その中に溶解した活性化剤、例えば、N,N-ジメチル-p-トルイジンを含むか、又はメチルメタクリレート及びN,N-ジメチル-p-トルイジンからなる。
【実施例
【0086】
以下、本発明を実施例により例示的にさらに説明する。本発明は、実施例に限定されない。
【0087】
図面の説明
図1は、骨セメントを分注するための装置100を示す。装置100は、一部品として構成されているが、いくつかの構成要素から構成されている。この装置は、分注要素300を有する。分注要素300は、棒状に成形され、雄ねじ310を有する。雄ねじ310は、軸方向に走る雄ねじ溝315によって雄ねじ部320に分割されている。雄ねじ溝315は、雄ねじ310の雄ねじフランク311の高さをゼロに低下させる。雄ねじ溝315は、雄ねじ部320よりも大きな半径(半径方向の広がり)を有する。さらに、図示しない実施形態では、雄ねじ溝315は、雄ねじ部320と同じ半径を有する。
【0088】
第1端部301において、分注要素300は、ハンドルの形態のねじ手段350を有する。ハンドルの形態のねじ手段350は、使用者が装置100を使用することをより容易にし、特に、軸方向シフト及び長手方向軸700の周りの分注要素300の回転をより容易にする。
【0089】
第2端部302において、装置100は、切替システム200を有し、切替システム200は、スリーブ状に、分注要素300の周囲に配置され、雄ねじ310の全長に沿って軸方向に移動することができる。切替システム200は、一部品として構成されているが、いくつかの構成要素から構成されている。切替システム200は、第1中空筒体210と第2中空筒体250とを備え、これに関して、第1中空筒体210と第2中空筒体250とが、互いに軸方向に接続される。第1中空筒体210及び第2中空筒体250は、回転運動によって長手方向軸700の周りに互いに回転方式で移動させることができる。
【0090】
装置100の使用者のために第2中空筒体250に対して反対方向に第1中空筒体210の回転運動を容易にするために、第1中空筒体210及び第2中空筒体250は、軸方向に延びるビード(玉縁)280を有する。ビード280は、グリップを改善し、従って、回転運動の過程における望ましくない滑りに対する安全性を高める。さらなる図示されていない実施形態では、第1中空筒体210及び第2中空筒体250は、使用者の滑りを防止するために、ビード280の代わりに突起又は溝を有する。
【0091】
第1中空筒体210の第2中空筒体250に対する反対方向の回転運動のために、切替システム200は、第1切替システム位置と第2切替システム位置との間で可逆的にシフトすることができる。切替システム200が第1切替システム位置にあるか、第2切替システム位置にあるかを使用者に示すために、装置100は、第2中空筒体250においてノッチ361と、第1中空筒体210において第1矢印362a及び第2矢印362bとの形態の光学マーキング360を有する。ノッチ361及び第1矢印362aが軸方向に互いに重なって位置する場合、これは、切替システム200が第1切替システム位置又は第2切替システム位置に設定されていることを使用者に示す。ノッチ361の第2矢印362bとの軸方向の重なりは、対応する他の切替システム位置を使用者に示す。さらなる図示されていない実施形態では、切替システムは、ノッチ361並びに第1矢印362a及び第2矢印362bの代わりに、例えば、線、数、又は凹み等の他の種類の光学マーキング360を有する。
【0092】
図2は、図1から切替システム200の断面を示す。第1中空筒体210及び第2中空筒体250は、第1中空筒体210の第2中空筒体250に対する反対方向の回転運動が、切替システム200を第1切替システム位置と第2切替システム位置との間で可逆的に移動させることができるように、ねじ接続部205を介して互いに軸方向に接続されている。
【0093】
第1中空筒体210は第1雌ねじ220を有し、第2中空筒体250は第2雌ねじ260を有する。第1雌ねじ220は、軸方向に延在する第1雌ねじ溝225によって第1雌ねじ部230に分割される。第1雌ねじ溝225は、第1雌ねじフランク221の高さをゼロに低下させる。第2雌ねじ260は、軸方向に延在する第2雌ねじ溝265によって第2雌ねじ部270に分割される。第2雌ねじ溝265は、第2雌ねじフランク251の高さをゼロに低下させる。第1雌ねじ溝225は、第1雌ねじ部230よりも大きな半径(半径方向の広がり)を有し、第2雌ねじ溝265は、第2雌ねじ部270よりも大きな半径(半径方向の広がり)を有する。第1雌ねじ溝225及び第2雌ねじ溝265並びに第1雌ねじ部230及び第2雌ねじ部270はそれぞれ、同じ半径を有する。さらなる図示しない実施形態では、第1雌ねじ溝225、第1雌ねじ部230、第2雌ねじ溝265、及び第2雌ねじ部270は、同じ半径を有する。
【0094】
図2において、切替システム200は、第2切替システム位置で示されている。第2切替システム位置においては、第1雌ねじ溝225及び第2雌ねじ溝265、並びに第1雌ねじ部230及び第2雌ねじ部270が軸に沿って配置され、これらは本質的に結合して延在する。従って、第1雌ねじ溝225及び第2雌ねじ溝265は共に、第1雌ねじ220及び第2雌ねじ250の全長にわたって延びる雌ねじ溝全体275を形成し、第1雌ねじ部230及び第2雌ねじ部270は共に、第1雌ねじ220及び第2雌ねじ260の全長にわたって延びる雌ねじ部全体276を形成する。
【0095】
雌ねじ溝全体275は、図1の雄ねじ部320よりも大きな半径(半径方向の広がり)を有し、雌ねじ部全体は、図1の雄ねじ溝315よりも小さな半径(半径方向の広がり)を有する。第2切替システム位置において、図1からの分注要素300は、従って、シフトの動きによって、切替システム200に対して軸方向に可逆的にシフトさせることができる。第2切替システム位置において、図1からの分注要素300を切替システム200に対して自由に軸方向にシフトさせることができるように、雄ねじ部320は、雌ねじ溝全体275に沿って配置され、雄ねじ溝315は、雌ねじ部全体276に沿って配置される。
【0096】
第1中空筒体は、差し込み式閉鎖の形態の接続要素240を有し、この接続要素によって、装置100は、容器の対応する対向片、特に、骨セメントで満たされた容器に可逆的に固定されることができる。
【0097】
図3は、第1切替システム位置における図2からの切替システム200を示す。図2及び図3は、同じ切替システム200を示すが、異なる切替システム位置にある。図2は、第2切替システム位置における切替システム200を示し、図3は、第1切替システム位置における切替システム200を示す。第1雌ねじ溝225及び第2雌ねじ溝265、従って第1雌ねじ部230及び第2雌ねじ部270は、それぞれ、本質的な共通の軸上に配置されるのではなく、互いにオフセットしている。軸方向の広がりにおいて、第1雌ねじ溝225は、第2雌ねじ部270と本質的に共通の軸上に位置し、第1雌ねじ部230は、第2雌ねじ溝265と本質的に共通の軸上に位置する。従って、第1切替システム位置においては、図1からの雄ねじ部320を切替システム200に対して自由に軸方向にシフトさせることは不可能である。第1切替システム位置においては、第1雌ねじ220及び第2雌ねじ260は、図1からの雄ねじ部320が、いつでも第1雌ねじ部230及び/又は第2雌ねじ部270と噛み合い式に及び/又は非噛み合い式に協働するように、互いに対して配置され、それによって、図1からの分注要素300は、回転運動によってのみ、切替システム200に対して移動することができる。
【0098】
図4は、容器500の第1容器端部501に固定された図1の装置100を示す。装置100及び容器500は、接続要素240及び容器500の接続部505を介して、互いに軸方向に可逆的に接続される。連結要素240及び接続部505は共に、差し込み式閉鎖510を形成する。装置100及び容器500は共に、長手方向軸700上に配置される。
【0099】
容器500は、管状に構成され、内部520に、分注及び外科的目的のために利用可能な骨セメント600を有する。骨セメント600を分注するために、容器500は、内部520に、分注要素300と骨セメント600との間に空間的に配置された軸方向に可動な分注ピストン530を有する。分注ピストン530は、容器500の内径に本質的に対応する直径を含む、骨セメント600に面する平坦な外側531と、分注要素300に面する内側532とを有し、内側532は、キャップ状の様式で分注要素を部分的に受けるように構成される。さらなる図示されていない実施形態では、外側531は、平坦ではなく、例えば凸状又は円錐状に形成され、及び/又は内側532は、キャップ状に成形されず、例えば平坦であるように成形される。骨セメント600を特定の方法で所望の点に塗布するために、容器500は、第1容器端部501の反対側の第2容器端部502に分注注ぎ口540を有する。
【0100】
骨セメント600は、分注要素300の容器500への導入によって分注することができる。容器500内への分注要素300の導入方法は、切替システム200を介して制御される。第1切替システム位置においては、分注要素300は、回転運動によってのみ容器500内に導入され得るが、一方、分注要素300は、第2切替システム位置において容器500内に自由に軸方向に押し込まれ得る。従って、第2切替システム位置は、好ましくは、分注要素300が分注ピストン530と接触するまで、分注要素300の導入を可能にし、その導入は、使用者にとって迅速かつ容易である。提供された骨セメント600は、硬化が過度に進行する前に、例えば提供後5分までの時間窓内で短時間しか使用できないということに起因して、第2切替システム位置は、分注ピストン530と接触するまで分注要素300を導入するのに好ましい。骨セメント600がまだ容器500内に存在しておらず、分注注ぎ口540の方向に集められていない、図示されていないさらなる実施形態では、分注要素300の導入は、骨セメントがシフトし、従って分注要素300の、従って分注ピストン530の連続的な導入によって分注注ぎ口540の方向に骨セメント600を集め、また、シフトの動きによる分注注ぎ口540を通じた骨セメント600の分注が、骨セメント600のペースト状粘度のためにより困難になるまで、第2切替システム位置において行われることが好ましい。同じことが、分注ピストン530を有さないさらなる図示されていない実施形態にも当てはまる。分注ピストン530のない実施形態では、分注要素300は、少なくとも骨セメント600に面する端部が、容器500の内径に本質的に対応する外径を有するように構成され、それによって、分注要素300自体が分注ピストンとして作用する。
【0101】
図5は、分注要素300が容器500内に導入された、図4の装置100及び容器500を示す。図4とは対照的に、分注要素300は、分注ピストン530、特にカバー様の内側面532と接触しているが、この図では、分注ピストン530は分注注ぎ口540の方向にまだ移動されておらず、従って、容器500からの骨セメント600の分注は、まだ開始されていない。ペースト状の粘度と、容器500と比較して減少した分注注ぎ口540の断面積とにより、容器500内への分注要素300の継続的な導入は、使用者からの力の増加につながる。従って、図5に示す分注要素300の配置の場合には、第2切替システム位置から第1切替システム位置に切替システム200を移動させることが好ましい。従って、分注要素300は、もはやシフトの動きによって容器内に自由に軸方向に挿入できなくなるが、図1からの雄ねじ部320は、図3からの第1雌ねじ部分230及び/又は第2雌ねじ部分270と、噛み合い式に及び/又は非噛み合い式に協働する。従って、分注要素300は、回転運動を介してのみ容器500内にさらに導入することができ、これは、一方では、使用者からの所要の力を低減し、さらに、制御が困難なシフトの動きの場合よりも、骨セメント600のより正確な計量を提供する。
【0102】
図6は、骨セメント600の分注が行われた後の、図5の装置100及び容器500を示す。分注要素300は、可能な限り容器500内に挿入され、特に螺合されている。骨セメント600は、所望の点で容器500から完全に分注され、それによって、分注注ぎ口540は、骨セメント600の残留物で満たされる。
【0103】
図7は、装置100を容器500に可逆的に接続するための接続要素240と、少なくとも部分的に雄ねじ310を有する棒状の分注要素300と、少なくとも部分的に第1雌ねじ220を有する切替システム200とを備え、第1雌ねじ220は、分注要素300が、結合された第1切替システム位置において容器500内に軸方向に螺合されることができ、分注要素300が、分離された第2切替システム位置において容器500内に自由に軸方向に押し込まれることができるように、雄ねじ310に噛み合い式に結合されることができる装置100によって、容器500から骨セメント600を分注するための方法800の工程810~850を含むフローチャートを示す。好ましい実施形態では、分注ピストン530は、容器500内で分注要素300と骨セメント600との間に支持される。
【0104】
工程810において、装置100は、接続要素240によって容器500に軸方向に可逆的に接続される。接続要素240は、好ましくは、装置100を容器500に可逆的に接続するために、容器500と差し込み式閉鎖510を形成する。
【0105】
さらなる工程820では、切替システム200は、第2切替システム位置に移動され、その結果、分注要素は、容器500内に自由に軸方向に挿入され得る。方法800の一実施形態では、工程810における装置100の容器500への接続は、工程820の前に行われる。方法800のさらなる実施形態では、切替システム200は、工程810の前に、第2切替システム位置に移動された。
【0106】
さらなる工程830において、分注要素300は、容器500内に自由に軸方向に挿入される。分注要素300は、好ましくは、使用者が押し込み動作に対して著しい抵抗を受けるまで、容器内に挿入される。この抵抗は、例えば、分注ピストン530との接触に応答して、又は容器500から分注注ぎ口540への骨セメントの移動の開始に応答して現れ得る。容器500内への分注要素300の自由な軸方向挿入の利点は、工程820が迅速に実行できることである。これは、特に、時間が重要な手術の一部として重要であり、骨セメント600は、化学組成物の機能としての硬化の前に所望の点に移動されるために、短い時間、例えば5分以内しか有さないためである。
【0107】
分注要素300が所望の地点まで容器500内に完全に挿入される場合、切替システム200は、さらなる工程840において、分注要素の長手方向軸700の周りの回転運動によって、第1切替システム位置に移動される。第1切替システム位置においては、分注要素300は、もはや第1容器内に自由に軸方向に挿入できなくなるが、回転運動を介してしかさらに導入されることができない。第2切替システム位置から第1切替システム位置への切替システム200の移動は、上記回転運動とは逆のさらなる回転運動によって可能となる。回転運動によって、切替システム200を第2切替システム位置から第1切替システム位置に移動させる利点は、装置100の使用者が、切り替えが行われた後に装置100をさらに動作させるために、又はさらなる外科用物体を動作させるために、再び両手を自由にすることである。切替システム200は、使用者が再び行動できるようになるまで、選択された切替システム位置に独立して留まる。
【0108】
方法800の好ましい実施形態では、切替システム200の第1切替システム位置及び第2切替システム位置への可逆的移動は、分注要素300の長手方向軸700の周りの第2中空筒体250に対して反対方向への第1中空筒体210の回転運動によって行われる。反対方向の回転運動は、長手方向軸に沿って延びる第1雌ねじ220の少なくとも1つの第1雌ねじ溝225と、第2雌ねじ260の少なくとも1つの第2雌ねじ溝265とを共通の軸に移動させる。第2切替システム位置においては、少なくとも1つの第1雌ねじ溝225及び少なくとも1つの第2雌ねじ溝265は、本質的に直線状に延びる雌ねじ溝全体275を形成する。雄ねじ310の雄ねじ部320が、雌ねじ溝全体275と本質的に同一の軸に沿って配置される場合、工程830において、分注要素300は、容器500内に自由に軸方向に挿入され得る。第1切替システム位置へのさらなる回転運動は、第1雌ねじ溝225を第2雌ねじ溝265に対して本質的に共通の軸から外れるように移動させ、それによって、雄ねじ部320は、もはや自由に軸方向にシフトすることはできず、代わりに、第1雌ねじ部分230及び/又は第2雌ねじ部分270と噛み合い式に及び/又は非噛み合い式に協働することができる。
【0109】
第1切替システム位置においては、これは、容器500内への分注要素300の螺合を提供する。
【0110】
さらなる工程850において、骨セメント600は、分注要素300を容器500内に螺合することによって容器500から分注される。その際、分注要素300は、所望の量の骨セメント600が適用されるまで、容器500内に螺合される。螺合はさらに、分注要素300の挿入と比較して、使用者がペースト状骨セメント600を分注することを容易にする。
【0111】
特許請求の範囲、明細書、及び図面に開示された特徴は、特許請求の範囲に記載された発明の様々な実施形態にとって、別々に、及び互いに任意に組み合わせて、必須であり得る。当該装置について開示された特徴は、当該方法についても開示されており、その逆も同様である。
【符号の説明】
【0112】
100 装置
200 切替システム
205 ねじ接続部
210 第1中空筒体
220 第1雌ねじ
221 第1雌ねじフランク
225 第1雌ねじ溝
230 第1雌ねじ部
240 接続要素
250 第2中空筒体
251 第2雌ねじフランク
260 第2雌ねじ
265 第2雌ねじ溝
270 第2雌ねじ部
275 雌ねじ全体
276 雌ねじ部全体
280 ビード(玉縁)
300 分注要素
301 分注要素の第1端部
302 分注要素の第2端部
310 雄ねじ
311 雄ねじフランク
301 分注要素の第1端部
302 分注要素の第2端部
311 雄ねじフランク
315 雄ねじ溝
320 雄ねじ部
350 ねじ手段
360 光学マーキング
361 ノッチ
362a 第1矢印
362b 第2矢印
500 容器
501 第1容器端部
502 第2容器端部
505 接続部
510 差し込み式閉鎖
520 内部
530 分注ピストン
531 外側
532 内側
540 分注注ぎ口
600 骨セメント
700 長手方向軸
800 骨セメントを分注するための方法
810 装置を容器と共に移動させる
820 切替システムを第2切替システム位置に移動させる
830 分注要素を容器内に軸方向に挿入シフトさせる
840 切替システムを第1切替システム位置に移動させる
850 骨セメントを分注する
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7