(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-27
(45)【発行日】2022-05-11
(54)【発明の名称】被災状況把握装置
(51)【国際特許分類】
G06T 7/00 20170101AFI20220428BHJP
【FI】
G06T7/00 640
(21)【出願番号】P 2020151114
(22)【出願日】2020-09-09
【審査請求日】2020-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】399040405
【氏名又は名称】東日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】和田 雅樹
(72)【発明者】
【氏名】島原 広季
(72)【発明者】
【氏名】相原 貴明
【審査官】新井 則和
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-187058(JP,A)
【文献】国際公開第2008/016153(WO,A1)
【文献】清水 洋幸 外3名,電子情報通信学会2004年総合大会講演論文集 通信2 災害前後の航空画像とディジタル地図を用いた被災地域の検出,電子情報通信学会2004年総合大会講演論文集,日本,社団法人電子情報通信学会,2004年03月08日,p. 284
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00-7/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
災害が発生した被災地域を指定する被災地域情報を入力として、該被災地域情報に対応する前記災害の発生前後の衛星画像情報を地球観測衛星から取得する衛星画像情報取得部と、
前記被災地域に設置された設備と該設備の位置情報を対応付けた設備情報を記録した設備情報データベースと、
前記被災地域情報を入力として、前記被災地域情報に対応する前記設備情報を前記設備情報データベースから取得する設備情報取得部と、
前記衛星画像情報の変化から被災範囲を特定し、該被災範囲と前記設備情報を突き合わせて被災設備を抽出する被災設備抽出部と
を備え
、
前記被災設備抽出部は、
架線に加わる振動を表す振動波形又は光信号の波形も参照して前記被災設備を抽出する
ことを特徴とする被災状況把握装置。
【請求項2】
前記被災設備抽出部は、
前記被災範囲の大きさから前記設備が被災する被災確率を求め、前記被災設備に前記被災確率を添付して出力する
ことを特徴とする請求項
1に記載の被災状況把握装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被災状況把握装置に関する。
【背景技術】
【0002】
日本は、台風及び地震等の自然災害の多い国であり、近年これらの災害が激甚化している。通信事業者は、通信インフラを支える多数の設備を有している。災害発生時には、早期のサービス復旧に向けた設備の被災状況の把握が重要である。
【0003】
設備の被災状況を確認する手立てとして、地球観測衛星で撮影した衛星画像を用いる方法が知られている(例えば非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】[令和2年8月14日検索]、インターネット<URL:http://www.jaxa.jp/article/special/disaster/index_j.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、地球観測衛星で撮影した衛星画像の解像度は、高くても数十cmであるため通信設備の被災状況を把握することは困難であるという課題がある。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、解像度の低い衛星画像からでも設備の被災状況を把握することができる被災状況把握装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る被災状況把握装置は、災害が発生した被災地域を指定する被災地域情報を入力として、該被災地域情報に対応する前記災害の発生前後の衛星画像情報を地球観測衛星から取得する衛星画像情報取得部と、前記被災地域に設置された設備と該設備の位置情報を対応付けた設備情報を記録した設備情報データベースと、前記被災地域情報を入力として、前記被災地域情報に対応する前記設備情報を前記設備情報データベースから取得する設備情報取得部と、前記衛星画像情報の変化から被災範囲を特定し、該被災範囲と前記設備情報を突き合わせて被災設備を抽出する被災設備抽出部とを備え、前記被災設備抽出部は、架線に加わる振動を表す振動波形又は光信号の波形も参照して前記被災設備を抽出することを要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、解像度の低い衛星画像からでも設備の被災状況を把握することができる被災状況把握装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る被災状況把握装置の機能構成例を示すブロック図である。
【
図2】
図1に示す設備情報データベースのレコードの例を示す図である。
【
図4】本発明の第2実施形態に係る被災状況把握装置の機能構成例を示すブロック図である。
【
図5】
図1に示す被災状況把握装置が行う被災状況把握方法の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。複数の図面中同一のものに
は同じ参照符号を付し、説明は繰り返さない。
【0011】
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態に係る被災状況把握装置の機能構成例を示すブロック図である。
図1に示す被災状況把握装置100は、災害が発生した被災地域の位置情報を入力として、その地域に設置されている例えば通信設備の被災状況を把握できる装置である。
【0012】
被災状況把握装置100は、衛星画像情報取得部10、設備情報データベース20(以降、データベースはDBと略す)、設備情報取得部30、及び被災設備抽出部40を備える。被災状況把握装置100は、例えば、ROM、RAM、CPU等からなるコンピュータで実現することができる。その場合、各機能構成部の処理内容はプログラムによって記述される。
【0013】
衛星画像情報取得部10は、災害が発生した地域を指定する被災地情報を入力として、被災地域情報に対応する災害の発生前後の衛星画像情報を地球観察衛星から取得する。被災地域情報は、例えば、都道府県名、地域名、及び住所の何れであってもよい。
【0014】
衛星画像情報取得部10は、それらの被災地域情報を、例えば地域メッシュコードに変換する。地域メッシュコードは、緯度・経度に基づいて地域をほぼ同じ大きさの網の目(メッシュ)に分けたものである。
【0015】
日本工業規格(JIS C 6304)に第1次メッシュから第3次メッシュまでが標準地域メッシュとして定められている。第3次メッシュは最も細かく、第2次メッシュを緯度方向及び軽度方向に10等分した区域である。第3次メッシュの緯度差は30秒、経度差は45秒で、一辺の長さは約1kmである。
【0016】
地球観測衛星は、高度400~1000kmから地表を、光学センサ及びSARセンサ(Synthetic Aperture Radar)等で周期的に観測する人口衛星である。地球観測衛星は、各国が打ち上げており、例えば、日本の「だいち」、アメリカの「Landsat-8」、ヨーロッパの「Sentinel-2」等がある。
【0017】
地球観測衛星で地表を撮影した衛星画像情報は、有償又は無償で取得することが可能である。例えばNTTデータは、高解像度の衛星画像情報を提供するサービスを実施している。被災状況把握装置100は、これらのサービスを提供するネットワーク上のサイトにアクセスして、対象地域の災害発生前後の衛星画像情報を取得する。
【0018】
設備情報DB20は、被災地域に設置された設備を表す設備情報を記録したデータベースである。設備情報は、その地域に設置されている電柱及びマンホール等の情報である。具体例は後述する。
【0019】
設備情報取得部30は、被災地域情報を入力として、被災地域情報に対応する設備情報を設備情報DB20から取得する。被災地域情報は、都道府県名、地域名、及び住所の何れでもよい。設備情報取得部30は、被災地域情報に対応する設備情報を設備情報DB20から取得する。
【0020】
被災設備抽出部40は、被災前後の衛星画像情報の変化から被災範囲を特定し、該被災範囲と設備情報を突き合わせて被災設備を抽出する。被災範囲に設置された設備は、被災設備として抽出される。
【0021】
以上説明したように本実施形態に係る被災状況把握装置100は、災害が発生した被災地域を指定する被災地域情報を入力として、該被災地域情報に対応する災害の発生前後の衛星画像情報を地球観測衛星から取得する衛星画像情報取得部10と、被災地域に設置された設備と該設備の位置情報を対応付けた設備情報を記録した設備情報DB20と、被災地域情報を入力として、被災地域情報に対応する設備情報を設備情報DB20から取得する設備情報取得部30と、衛星画像情報の変化から被災範囲を特定し、該被災範囲と設備情報を突き合わせて被災設備を抽出する被災設備抽出部40とを備える。これにより、解像度の低い衛星画像からでも設備の被災状況を把握することができる。
【0022】
つまり、本実施形態に係る被災状況把握装置100は、例えば、屋根の瓦の被災状況、ブルーシートの面積、浸水範囲、及び土砂崩れの範囲等といった一定以上の範囲の衛星画像の変化から被災範囲を特定する。したがって、解像度の低い衛星画像情報からでも被災範囲が特定でき、被災設備を正しく抽出することができる。
【0023】
以降、本実施形態に係る構成要素の具体例を示して更に詳しく説明する。
【0024】
(設備情報DB)
図2は、設備情報DB20のレコードの例を示す図である。
図2に示すように、左から1列目は地域情報、2列目は設備情報、3列目は位置情報である。地域情報は、例えば地域メッシュコードで指定する。地域メッシュコードで指定する場合は、衛星画像情報取得部10で変換した第3次メッシュを用いてもよい。また、地域情報は街区名で指定してもよい。
【0025】
つまり、設備情報DB20に入力される被災地域情報は、都道府県名、地域名、住所、及び第3次メッシュの何れであってもよい。第3次メッシュは、衛星画像情報取得部10で変換されたものでも、外部から入力されたもののどちらでも構わない。
【0026】
設備情報は、地域情報で表される地域に設置されている設備を表す情報である。例えば、電柱及びマンホール等である。地域情報が例えば第3次メッシュで表される場合の設備情報は、約1km四方の範囲(地域)に設置された設備名が羅列される。
【0027】
図2の設備情報は、その一部のみを表記している。位置情報は、設備が設置されている座標を表す。例えば、緯度・経度で表される。
【0028】
(衛星画像情報)
図3は、衛星画像情報の例を模式的に示す図である。
図2の横方向は衛星画像情報の経度、縦方向は同緯度である。
【0029】
図3に示す衛星画像情報は、例えば4分の1地域メッシュで表される範囲の衛星画像である。
図3において、上は北、下は南、右は東、左は西である。
【0030】
衛星画像情報取得部10は、地球観測衛星から第3次メッシュに対応する大きさの衛星画像情報を取得し、その約1km四方の衛星画像情報を例えば4等分する。第3次メッシュを4等分した4分の1地域メッシュの1辺の長さは約250mである。
【0031】
図3に示すように、衛星画像情報から南北に平仮名の「し」形状の道路、その南北の道路と直交する道路、及びその道路周辺に位置する家と倉庫等の構造物が見て取れる。衛星画像情報取得部10は、被災前後の同じ地域の衛星画像情報を取得する。被災前の衛星画像情報はアーカイブされている。
【0032】
被災設備抽出部40は、被災前後の衛星画像情報の変化から被災範囲αを特定する。例えば、被災範囲αをA地点とB地点を結ぶ線を対角線とする範囲と仮定する。
【0033】
被災設備抽出部40は、例えば、家の屋根の瓦の破損状況、ブルーシートで覆われた面積等で被災範囲αを特定する。例えば、A地点を北緯35°44′10″東経140°10′50″、B地点を北緯35°44′0″東経140°11′12″であると仮定する。
【0034】
その場合、被災設備抽出部40は、被災範囲αに含まれる電柱番号#1~#3の電柱を被災設備として抽出する。
【0035】
このように被災前後の衛星画像情報の変化から被災範囲αを特定し、その被災範囲αに設置されている設備を被災設備とする。したがって、衛星画像情報から被災設備を確実に抽出することができる。つまり、解像度の低い衛星画像からでも設備の被災状況を把握することができる。
【0036】
なお、被災設備抽出部40は、被災設備に被災確率を添付して出力するようにしてもよい。被災確率は、例えば電柱の倒壊確率である。電柱の倒壊確率は、過去の災害時の被災記録から求めることができる。
【0037】
例えば、被災範囲の大きさと電柱の倒壊確率とを対応付けた被災確率を予め用意しておく。被災範囲の大きさは、例えば、屋根の瓦が剥がれた面積、ブルーシートの面積等である。これらの面積と電柱の倒壊確率との間には相関がある。
【0038】
被災確率(図示せず)は、被災設備抽出部40に備えてもよいし、被災設備抽出部40の外に用意しても構わない。被災確率は、特定した被災範囲の大きさをキーに容易に求めることができる。
【0039】
このように、被災設備抽出部40は、被災範囲の大きさから設備が被災する被災確率を求め、被災設備に被災確率を添付して出力するようにしてもよい。これにより、例えば復旧作業に優先順位を付けることが可能であり、作業を効率化することができる。
【0040】
〔第2実施形態〕
図4は、本発明の第2実施形態に係る被災状況把握装置の機能構成例を示すブロック図である。
図4に示す被災状況把握装置200は、振動波形又は光信号の波形が入力される被災設備抽出部240を備える点で被災状況把握装置100(
図1)と異なる。
【0041】
被災設備抽出部240は、架線に加わる振動を表す振動波形又は光信号の波形も参照して被災設備を抽出する。架線に加わる振動を表す振動波形は、一般的な振動光計測器で測定することができる。また、光信号の波形は、OTM(Optical Testing Module)で測定することができる。
【0042】
被災範囲を特定できればその範囲の電柱が倒壊したか否かは、振動波形で判定することが可能である。よって、振動光計測器の測定結果を参照することで被災設備の抽出精度を高めることができる。光信号の波形についても同様である。
【0043】
このように、本実施形態に係る被災設備抽出部240は、架線に加わる振動を表す振動波形又は光信号の波形も参照して被災設備を抽出する。これにより、被災設備の抽出精度を向上させることができる。
【0044】
〔被災状況把握方法〕
図5は、被災状況把握装置100が行う被災状況把握方法の処理手順を示すフローチャートである。
【0045】
被災状況把握装置100は、被災地域情報を取得する(ステップS1)。被災地域情報は、利用者が入力する。被災地域情報は、都道府県名、地域名、及び住所の何れであってもよい。
【0046】
衛星画像情報取得部10は、入力された被災地域情報を、JISで定められた地域メッシュコードに変換し、その地域メシュコードの被災前後の衛星画像情報を地球観測衛星から取得する(ステップS2)。被災前の衛星画像情報は、アーカイブされているものから最新のものを取得する。
【0047】
次に、設備情報取得部30は、地域メッシュコードで表される地域に設置されている設備情報を、設備情報DB20から取得する(ステップS3)。
【0048】
次に、被災設備抽出部40は、被災前後の衛星画像情報の変化から被災範囲を特定する(ステップS4)。そして、被災範囲と設備情報を突き合わせて被災設備を抽出する(ステップS5)。
【0049】
以上説明したように被災状況把握装置100が行う被災状況把握方法は、衛星画像情報取得部10が、災害が発生した被災地域を指定する被災地域情報を入力として、該被災地域情報に対応する災害の発生前後の衛星画像情報を地球観測衛星から取得し、設備情報取得部が、被災地域情報を入力として、前記被災地域情報に対応する前記設備情報を、被災地域に設置された設備と該設備の位置情報を対応付けた設備情報を記録した設備情報DB20から取得し、被災設備抽出部40が、衛星画像情報の変化から被災範囲を特定し、該被災範囲と設備情報を突き合わせて被災設備を抽出する。これにより、解像度の低い衛星画像からでも設備の被災状況を把握することができる。
【0050】
なお、被災確率は、電柱の倒壊確率の例を説明したが、本発明はこの例に限定されない。例えば、被災確率は回線の不通率等でもよい。被災確率は、過去の被災記録から容易に作成することができる。
【0051】
また、被災設備抽出部40は、人口知能を用いて構成してもよい。その場合、過去の災害時における衛星画像情報と設備の被災状況を被災設備抽出部40に学習させておく。そうすることで被災設備の抽出精度を向上させることができる。
【0052】
また、被災設備は、電柱及びマンホールの例を示したが、本発明はこの例に限定されない。電柱及びマンホールが形成する回線名等の各設備に付随する情報(基本情報)を記録した基本情報データベースを備え、被災設備と基本情報の両方を抽出するように構成してもよい。また、設備は、通信設備に限定されるものではない。
【0053】
このように本発明は、ここでは記載していない様々な実施形態等を含む。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0054】
10:衛星画像情報取得部
20:設備情報データベース
30:設備情報取得部
40,240:被災設備抽出部
100,200:被災状況把握装置
α:被災地域