(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-27
(45)【発行日】2022-05-11
(54)【発明の名称】作業用手袋
(51)【国際特許分類】
A41D 19/015 20060101AFI20220428BHJP
A41D 13/08 20060101ALI20220428BHJP
【FI】
A41D19/015 110Z
A41D19/015 110B
A41D13/08 107
(21)【出願番号】P 2020185162
(22)【出願日】2020-11-05
【審査請求日】2022-04-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000180368
【氏名又は名称】四国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134979
【氏名又は名称】中井 博
(74)【代理人】
【識別番号】100167427
【氏名又は名称】岡本 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】武井 友幸
【審査官】▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-140015(JP,U)
【文献】特開2011-80185(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 19/015
A41D 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
手の指を収容する指部を備えた手袋であって、
該指部の側面に設けられる保護具を備えており、
該保護具が、
前記指部において、指の節と対応する位置の側面に設けられた平板状の保護プレートを有しており、
該保護プレートは、
前記指部の手のひら側に第一端縁が位置しかつ該指部の手の甲側に第二端縁が位置するように該指部の側面に連結されており、
前記第一端縁から前記第二端縁までの長さが、前記指部に挿入される指における該保護プレートと対応する位置に配置される部位の厚さよりも長くなるように形成されている
ことを特徴とする作業用手袋。
【請求項2】
前記保護プレートは、
前記指部において手の外方側に位置する側面、または、前記指部の両側面に設けられている
ことを特徴とする請求項1記載の作業用手袋。
【請求項3】
前記保護プレートは、
前記指部の軸方向において隣接する保護プレート同士が非連結である
ことを特徴とする請求項1または2記載の作業用手袋。
【請求項4】
前記保護プレートは、
前記指部を伸ばした状態において該指部を側面から見たときに、該指部の軸方向において隣接する保護プレートの端部が重なり、かつ、前記指部を曲げた状態において該指部を側面から見たときに、該指部の軸方向において隣接する保護プレートの少なくともいずれか一方の端部が前記指部に挿入される指の関節の側方に配置されるように設けられている
ことを特徴とする請求項1、2または3記載の作業用手袋。
【請求項5】
前記保護具は、
前記指部の手のひら側の面を物体の表面に接触させた状態において、該物体の表面と前記保護プレートとが直交した状態となるように該保護プレートの姿勢を保持する姿勢保持部材を備えている
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の作業用手袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業用手袋に関する。さらに詳しくは、作業の際に手や指を保護する機能を有する作業用手袋に関する。
【背景技術】
【0002】
工事現場における様々な作業では、作業者の手や指を損傷する可能性がある。例えば、鉄筋や木材等の資材を運搬する場合には、資材間や資材と他の部材(例えば地面等)との間に手や指が挟まれる可能性がある。また、鉄筋等を切断する作業では、電動工具等の刃物が手や指に接触して手や指を切創する可能性がある。かかる問題を防ぐために、手を保護する機能を有する手袋が開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、手の指の甲側にプロテクターを設けた手袋が開示されており、特許文献2~4には、手の指の甲側と側面とを覆うようにトンネル状に形成された保護部材を設けた手袋が開示されている。かかる構成の手袋であれば、手の甲に電動工具等の刃物が接触しても、刃物が直接手の甲に接触することを防ぐことができるので、手や指を切創することを防止できる。
【0004】
そして、特許文献2には、手のひらを平面に接触させている状態で手の甲側から外力が加わった場合、保護部材となる剛体材と平面との間に指を保護し得る空間が形成されるので、指に外力が伝達されることを防止できる旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-279503号公報
【文献】特許第6485837号公報
【文献】特開2005-325456号公報
【文献】特開2009-62649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献2~4の手袋のように、トンネル状に形成された保護部材を設ける場合、保護部材の内部の空間(つまり指を入れる部分)はその幅を指の幅よりも広く設けなければ、指を保護部材内に入れることができない。このため、保護部材では、その内部の空間が、その幅が指の幅よりも広く、また、高さは指の厚みよりも長くなるように形成される。かかる内部空間を有する保護部材を備えた手袋を着用して資材等をつかんだ場合、保護部材の側面同士は接触した状態になるが、指は保護部材の内部で自由に動くことができる状態になる。つまり、資材等を握っても指同士が離れた状態になるので、資材等をしっかりと保持することができない。しかも、指同士が離れた状態になれば資材等を掴んだ感覚が通常の手袋を着用して資材等を掴んだときと大きく異なる状態になるので、資材等の取り扱い性が悪くなる可能性がある。したがって、特許文献2~4の手袋では、作業者の指を保護することはできても、作業者の作業性が低下する可能性がある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑み、作業者の指を保護することができしかも作業者の作業性の低下も防止できる作業用手袋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明の作業用手袋は、手の指を収容する指部を備えた手袋であって、該指部の側面に設けられる保護具を備えており、該保護具が、前記指部において、指の節と対応する位置の側面に設けられた平板状の保護プレートを有しており、該保護プレートは、前記指部の手のひら側に第一端縁が位置しかつ該指部の手の甲側に第二端縁が位置するように該指部の側面に連結されており、前記第一端縁から前記第二端縁までの長さが、前記指部に挿入される指における該保護プレートと対応する位置に配置される部位の厚さよりも長くなるように形成されていることを特徴とする。
第2発明の作業用手袋は、第1発明において、前記保護プレートは、前記指部において手の外方側に位置する側面、または、前記指部の両側面に設けられていることを特徴とする。
第3発明の作業用手袋は、第1または第2発明において、前記保護プレートは、前記指部の軸方向において隣接する保護プレート同士が非連結であることを特徴とする。
第4発明の作業用手袋は、第1、第2または第3発明において、前記保護プレートは、前記指部を伸ばした状態において該指部を側面から見たときに、該指部の軸方向において隣接する保護プレートの端部が重なり、かつ、前記指部を曲げた状態において該指部を側面から見たときに、該指部の軸方向において隣接する保護プレートの少なくともいずれか一方の端部が前記指部に挿入される指の関節の側方に配置されるように設けられていることを特徴とする。
第5発明の作業用手袋は、第1から第4発明のいずれかにおいて、前記保護具は、前記指部の手のひら側の面を物体の表面に接触させた状態において、該物体の表面と前記保護プレートとが直交した状態となるように該保護プレートの姿勢を保持する姿勢保持部材を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
第1発明によれば、保護プレートの第一端縁から第二端縁までの長さが対応する位置の指の厚さよりも長いので、指の厚さ方向から物体が接触した場合でも、指よりも先に保護プレートに物体を接触させることができる。すると、物体によって指が損傷することを防止できる。しかも、隣接する指の間には保護プレートが設けられているだけであるので、資材等をしっかりと保持することができる。
第2発明によれば、誤って刃物等が手に接触しても、刃物等を保護プレートに接触させることができるので、刃物等による指の切創を防止できる。
第3発明によれば、指部の軸方向において隣接する保護プレート同士が非連結であるので、保護プレートが指の曲げ伸ばしの抵抗になることを防止できる。
第4発明によれば、指を曲げ伸ばししても、指の関節の位置に少なくとも一枚の保護プレートを配置できるので、指の関節の損傷を防止できる。
第5発明によれば、物体から加わる力を確実に保護プレートによって支えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態の作業用手袋1の概略説明図であり、(A)が外観図であり、(B)は保護具10の位置を示した概略透視図である。
【
図2】(A)は本実施形態の作業用手袋1の右手用手袋の概略断面図であり、(B)は(A)のX線断面図である。
【
図3】(A)は本実施形態の作業用手袋1の左手用手袋の概略断面図であり、(B)は(A)のX線断面図である。
【
図4】(A)は本実施形態の作業用手袋1の右手用手袋の概略断面図であって、手を入れた状態を示した図であり、(B)は(A)のX線断面図である。
【
図5】本実施形態の作業用手袋1の右手人差し指を入れる指部2fの側面を親指側から見た状態の拡大図であり、(A)は指を伸ばした状態であり、(B)は指を曲げた状態である。
【
図6】指の両側面に各保護プレート11~13を設けた例である。
【
図7】(A)は姿勢保持部材21を設けた例であり、(B)は保護部材25を設けた例である。
【
図8】本実施形態の作業用手袋1の使用状況の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態の作業用手袋は、作業の際に作業者が着用する手袋であって、作業者の手を保護しつつ作業性の低下を防止することができるものである。
【0012】
本実施形態の作業用手袋を作業者が着用して実施する作業はとくに限定されない。例えば、鉄筋や木材等の資材の運搬や、木材の切断等の資材の加工等の作業が、本実施形態の作業用手袋を作業者が着用して実施する作業として挙げることができる。
【0013】
<本実施形態の作業用手袋1>
図1~
図3に示すように、本実施形態の作業用手袋1は、一般的な手袋本体2に保護具10が設けられたものである。
【0014】
手袋本体2は、作業用手袋1を作業者が着用したときに、作業者の手のひら及び手の甲を収容する本体部2bを備えている。この本体部2bの基端には、手を本体部2bに入れる開口が形成されており、本体部2bの側面には親指を入れる指部2fが設けられている。また、本体部2bの先端には、人差し指、中指、薬指、小指の各指を収容する4本の指部2fが設けられている。これら5本の指部2fは、各指を入れる空間、つまり、指部2fの内部空間2hを有しており(
図2、
図3参照)、この内部空間2hは指部2fの基端部において本体部2bの内部空間と連通されている。
【0015】
図1~
図5に示すように、各指部2fの内部空間2hには、それぞれ複数の保護プレート11~13が設けられている。具体的には、各指部2fにおいて、指の末節が収容される部分には保護プレート11が設けられており、各指部2fにおいて指の基節が収容される部分には保護プレート13が設けられている(
図4、
図5参照)。また、親指以外の指が収容される指部2fでは、指の基節と末節の間に位置する中節が収容される部分に保護プレート12が設けられている(
図4、
図5参照)。
【0016】
各保護プレート11~13は、その外表面が指部2fの外方側の内側面と対向するように(好ましくは面接触するように)設けられている。言い換えれば、各保護プレート11~13は、その内表面が指部2fに収容された指の外方に位置する側面と面接触するように設けられている。
【0017】
なお、本明細書では、指部2fの外方側および指の外方とは、人差し指、中指が収容される指部2fおよび人差し指、中指では親指側を意味しており、薬指が収容される指部2fおよび薬指では小指側を意味している。また、親指が収容される指部2fおよび親指では人差し指と逆側が指部2fおよび親指の外方側になり、小指が収容される指部2fおよび小指では薬指と逆側が指部2fおよび小指の外方側になる。
【0018】
各保護プレート11~13は、いずれも指部2fの軸方向に沿って長い板状の部材であり、その第一端縁11a~13aが指部2fの腹側に位置し、その第二端縁11b~13bが指部2fの背側に位置するように設けられている(
図5(A)参照)。各保護プレート11~13は、第一端縁11a~13aから第二端縁11b~13bまでの長さ(以下、各保護プレート11~13の幅という)が、指部2fの各保護プレート11~13と対応する位置に収容される指の厚さよりも長くなるように形成されている(
図5(A)参照)。
【0019】
また、各保護プレート11、12は、指部2fの軸方向における端部が、指部2fにおいて指の末節と中節との間の関節(第一関節)と対応する部分に位置するように設けられている。具体的には、指部2fを側面から見たときに(
図5(A)参照)、保護プレート11の中節側の端部と保護プレート12の末節側の端部とが、第一関節と対応する位置で重なるように設けられている。
【0020】
さらに、各保護プレート12、13は、指部2fの軸方向における端部が、指部2fにおいて指の中節と基節との間の関節(第二関節)と対応する部分に位置するように設けられている。具体的には、指部2fを側面から見たときに、保護プレート12の基節側の端部と保護プレート13の中節側の端部とが、第二関節と対応する位置で重なるように設けられている。
【0021】
なお、親指が収容される指部2fに設けられた保護プレート11、13では、指部2fの軸方向における端部が、指部2fにおいて指の末節と基節との間の関節(第一関節)と対応する部分に位置するように設けられている。具体的には、指部2fを側面から見たときに、保護プレート11の基節側の端部と保護プレート13の末節側の端部とが、第一関節と対応する位置で重なるように設けられている。
【0022】
そして、各保護プレート11~13は、直接各指部2fに連結されている。例えば、各保護プレート11~13は、糸によって各指部2fに縫い付けたり、金具によって各指部2fに固定されたり、接着剤によって各指部2fに接着したりすることによって、各指部2fに連結されている。しかも、各保護プレート11~13は、指部2fの軸方向において隣接する保護プレート同士は連結されていない。具体的には、親指以外の指部2fに設けられる各保護プレート11~13では、保護プレート11と保護プレート12、および、保護プレート12と保護プレート13は連結されていない。親指が収容される指部2fに設けられる保護プレート11,13では、両者が連結されていない。
【0023】
以上のごとき構成であるので、本実施形態の作業用手袋1を手に着用すれば、各指の外方側面に各保護プレート11~13が配置される。すると、電動工具等の刃物が手の外方から手に接近しても、各保護プレート11~13に刃物を接触させることができ、刃物が指に接触することを防止できる。したがって、本実施形態の作業用手袋1を手に着用すれば、刃物等による指の切創を防止できる。
【0024】
また、本実施形態の作業用手袋1を手に着用すれば、指の腹を机や床等に接触させた際に、各保護プレート11~13の第二端縁11b~13bが指よりも上方に突出した状態にできる。すると、指の上方から(つまり指の背側から)物体が接近しても、その物体は指に接触する前に各保護プレート11~13に接触する。そして、各保護プレート11~13が板状の部材であるので、各保護プレート11~13の表面が指の腹が接触している机や床等とほぼ直交するように配置されれば、物体から指に向かって加わる力を各保護プレート11~13によって支えることができる。
【0025】
例えば、机や床等においた手の上方から鉄筋等の物体が指の上に落下した場合でも、物体は各指部2fに設けられた複数の各保護プレート11~13によって支えられるので、物体からの衝撃が指に加わることを防止できる。
【0026】
なお、指を開いた状態では、各保護プレート11~13が自由に姿勢を変更できるので、物体から指の方向に加わる力を支えられない可能性がある。しかし、指を閉じれば、隣り合う指によって各保護プレート11~13が挟まれた状態になり、各保護プレート11~13の姿勢が固定されるので、物体から指の方向に加わる力を各保護プレート11~13によって支えることができる。
【0027】
とくに、
図8に示すように、本実施形態の作業用手袋1を手に着用した状態で鉄筋等の物体を作業者が掴めば、隣り合う指によって各保護プレート11~13を強く挟むことできる。すると、指による各保護プレート11~13の姿勢を維持する力も強くなるので、物体から指の方向に加わる力をより安定して各保護プレート11~13によって支えることができる。
【0028】
そして、本実施形態の作業用手袋1では、保護具10として指の側面に各保護プレート11~13を設けているだけである。すると、指の表面を覆うように、つまり、指の両側面と背面を覆うような保護部材を設ける場合に比べて、本実施形態の作業用手袋1を手に着用したときにおける作業者の違和感を少なくできるし、作業用手袋1を軽量化することができる。
【0029】
しかも、指部2fの軸方向において隣接する保護プレート11~13同士は連結されていないので、指を曲げ伸ばししたり物を掴んだりする際に各保護プレート11~13が邪魔にならない。したがって、各保護プレート11~13を設けても、作業者の作業性の低下を防止できる。
【0030】
<各保護プレート11~13について>
各保護プレート11~13は、手袋本体2の大きさや、各保護プレート11~13を設ける指部2fに合わせて適切な幅や長さに形成すればよく、とくに限定されない。
【0031】
一般的な手袋の場合、そのサイズはS~LLサイズまであり、各サイズは、左手(右手)親指の第一関節とほぼ同位置にある生命線の始点と、小指の付け根と手首を結んだ線の、手首から3分の1の距離を結んだ手のひらの周りの長さ(手囲い)を、センチメートル単位で表したもので規定される(JIS-S-4051)。例えば、男性用手袋の場合であれば、Sサイズは手囲いが20.5cm以上~22.5cm未満、Mサイズは手囲いが22.5cm以上~24.5cm未満、Lサイズは手囲いが24.5cm以上~26.5cm未満、と規定されている。
【0032】
各サイズで指部2fの厚さ等が異なるため、各指部2fに適した幅や長さの各保護プレート11~13が設けられる。例えば、Mサイズに該当する作業用手袋1の場合であれば、中指を入れる指部2fに配置される保護プレート11~13の幅は、保護プレート11であれば15mm程度、保護プレート12であれば20mm程度、保護プレート13であれば23mm程度、に形成すれば、保護プレート11~13によって中指を保護することができる。
【0033】
また、中指を入れる指部2fに配置される保護プレート11~13の長さもとくに限定されない。指部2fを側面から見たときに、指部2fを伸ばした状態において隣接する保護プレート11~13の端部同士が重なり、かつ、指部2fを曲げた状態において隣接する保護プレート11~13の端部同士の重なりが維持されるような長さに形成されていることが望ましい(
図5参照)。例えば、手袋は各サイズで指部の長さが異なるが、Mサイズに該当する作業用手袋1の場合であれば、保護プレート11の長さを27mm程度、保護プレート12の長さを35mm程度、保護プレート13の長さを32mm程度、に形成すれば、上記状態とすることができる。
【0034】
各保護プレート11~13の形状も平板状であればとくに限定されず、両端が円弧状である短冊状に形成してもよいし、軽量化を目的として各保護プレート11~13の中央部に穴のような開口を設けてもよい。
【0035】
各保護プレート11~13の素材もとくに限定されず、物体が接触した際に座屈したり破損したりせずに物体から加わる力を支えることができる素材によって形成されていればよい。各保護プレート11~13は、その厚さや幅によってその剛性は変化するが、軽量化のために厚さを薄くしつつ(1~2mm程度)、数十kg~数百kg程度の衝撃を支えるのであれば、チタンやステンレスが望ましい。また、送電鉄塔等において充電部に近接する場所での作業を行う場合等には、電気絶縁性のあるセラミックスや強化プラスチックで各保護プレート11~13を形成することが望ましい。
【0036】
上述したように、各保護プレート11~13は、各指部2fにおける外方側だけに設けてもよいが、各指部2fの両側面に設けてもよい(
図6参照)。各指部2fの両側面に保護プレート11~13を設ければ、指の厚さ方向から物体が接触した場合に、指の両側面に設けられた各保護プレート11~13によって物体から加わる力を支えることができる(
図8参照)。すると、物体から加わる力による指の損傷を防止する効果を高めることができる。また、指の両側面に各保護プレート11~13が設けられているので、刃物等による指の切創を防止する効果も高めることができる。
【0037】
<姿勢保持部材21について>
保護具10は、各指部2fに設けられた各保護プレート11~13のみで形成してもよいが、各保護プレート11~13の姿勢を保持する姿勢保持部材21を設けてもよい。具体的には、指部2fの手のひら側の面を物体の表面に接触させた状態において、物体の表面と各保護プレート11~13の表面とが直交した状態となるように各保護プレート11~13の姿勢を保持する機能を有する姿勢保持部材21を設ける。例えば、
図8に示すように、鉄筋等を持ったときに、その鉄筋の表面と各保護プレート11~13の表面とが直交するように、各保護プレート11~13の姿勢を保持する姿勢保持部材21を設ける。すると、指の厚さ方向から物体(
図8ではハンマー)が接触した場合に、物体から加わる力を確実に各保護プレート11~13によって支えることができる。
【0038】
かかる姿勢保持部材21としては、例えば、以下のような構成を採用することができる。
図7(A)に示すように、各保護プレート11~13と平行に設けられた脚部材21aと、この脚部材21aの一端と各保護プレート11~13の第二端縁11b~13bとを連結する連結部材21bと、を有する姿勢保持部材21を設ける。そして、脚部材21aの高さを各保護プレート11~13の幅と同じ長さに形成する。すると、各保護プレート11~13の第一端縁11a~13aと脚部材21aの他端とが物体の表面に接触すれば、物体の表面と各保護プレート11~13の表面とを直交するように配置しやすくなる。例えば、鉄筋等を持ったときなどに、その鉄筋の表面と各保護プレート11~13の表面とを直交させやすくなる。この場合、
図7に示すように、姿勢保持部材21の脚部材21aの長さ、つまり、脚部材21aの保護プレート11、13の長さ方向に沿った長さは、保護プレート11、13の長さよりも短く形成する。すると、姿勢保持部材21の脚部材21aは指の側面の一部にしか存在しないので、指の両側面に各保護プレート11~13を設ける場合に比べて、指を動かしやすくなる。
一方、
図6のように指の両側面に各保護プレート11~13を設けた場合には、連結部材22によって指の両側面に位置する各保護プレート11~13が互いに平行になるように連結すれば、各保護プレート11~13を上記のような状態とすることができる。
【0039】
姿勢保持部材21を設けた場合、連結部材21bの長さ、つまり、各保護プレート11~13から脚部材21aまでの距離はとくに限定されない。姿勢保持部材21の脚部材21aと各保護プレート11~13との間に指を入れると、指の両側面が、各保護プレート11~13および脚部材21aに接触するように、連結部材21bは設けられていればよい。
同様に、指の両側面に位置する各保護プレート11~13を設けた場合、連結部材22の長さ、つまり、指の両側面に位置する各保護プレート11~13間の距離もとくに限定されない。指の両側面に位置する各保護プレート11~13間に指を入れると、指の両側面が、いずれも各保護プレート11~13に接触するように、連結部材22は設けられていればよい。
【0040】
<指の保護について>
各保護プレート11~13の内面、つまり、指部2f内に収容された指と対向する面には、各保護プレート11~13と指とが直接接触しないように布等の保護部材25を設けてもよい(
図7(B)参照)。かかる保護部材25を設ければ、各保護プレート11~13が外気などによって冷やされても、指が各保護プレート11~13によって冷やされることを防止できる。すると、寒冷地や山頂、鉄塔の上等の気温の低い場所で作業をする作業員が使用しても、手が冷やされて手が損傷したり、手が冷やされたことによって手の動きが悪くなったりすることを防止できる。
【0041】
なお、保護部材25を設ける方法はとくに限定されない。例えば、各保護プレート11~13の内表面に、各保護プレート11~13や指の動きを阻害しないように保護部材25を貼り付けてもよいし、指部2fの内側面との間に各保護プレート11~13を収容する空間が形成されるように保護部材25を設けてもよい。また、手袋本体2を二重化して布製の内手袋を保護部材25としてもよい。つまり、手袋本体2が外手袋と内手袋を有する構造として、この外手袋と内手袋の間に各保護プレート11~13を設けてもよい。この場合、各保護プレート11~13は、外手袋の内表面に連結してもよいし内手袋の外表面に連結してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の作業用手袋は、鉄筋、木材等の資材を運んだり資材を切断したりする作業の際に着用する作業用の手袋として適している。
【符号の説明】
【0043】
1 手袋
2 手袋本体
2f 指部
2b 本体部
10 保護具
11 保護プレート
11a 第一端縁
11b 第二端縁
12 保護プレート
12a 第一端縁
12b 第二端縁
13 保護プレート
13a 第一端縁
13b 第二端縁
21 姿勢保持部材
【要約】
【課題】作業者の手や指を保護することができしかも作業者の作業性の低下も防止できる作業用手袋を提供することを目的とする。
【解決手段】手の指を収容する指部を備えた手袋1であって、指部2fの側面に設けられる保護具10を備えており、保護具10が、指部2fにおいて、指の節と対応する位置の側面に設けられた平板状の保護プレート11~13を有しており、保護プレート11~13は、指部2fの手のひら側に第一端縁11a~13aが位置しかつ指部の手の甲側に第二端縁11b~13bが位置するように指部2fの側面に連結されており、第一端縁11a~13aから第二端縁11b~13bまでの長さが、指部2fに挿入される指における該保護プレートと対応する位置に配置される部位の厚さよりも長くなるように形成されている。
【選択図】
図1