(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-27
(45)【発行日】2022-05-11
(54)【発明の名称】脱分化シーフェンネル細胞の凍結乾燥物を含む、毛髪成長を促進するための化粧又は医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/9789 20170101AFI20220428BHJP
A61K 36/23 20060101ALI20220428BHJP
A61Q 7/00 20060101ALI20220428BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20220428BHJP
A61Q 5/02 20060101ALI20220428BHJP
A61Q 5/12 20060101ALI20220428BHJP
A61K 8/44 20060101ALI20220428BHJP
A61K 8/896 20060101ALI20220428BHJP
A61P 17/14 20060101ALI20220428BHJP
A61K 47/18 20060101ALI20220428BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20220428BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61K36/23
A61Q7/00
A61Q5/00
A61Q5/02
A61Q5/12
A61K8/44
A61K8/896
A61P17/14
A61K47/18
A61K47/34
(21)【出願番号】P 2020502367
(86)(22)【出願日】2018-07-11
(86)【国際出願番号】 FR2018051744
(87)【国際公開番号】W WO2019016446
(87)【国際公開日】2019-01-24
【審査請求日】2021-06-28
(32)【優先日】2017-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】517296248
【氏名又は名称】バイオテックマリン
(73)【特許権者】
【識別番号】398057293
【氏名又は名称】ソシエテ・デクスプロワタシオン・デ・プロデュイ・プール・レ・アンデュストリー・シミック・セピック
【氏名又は名称原語表記】SOCIETE D’EXPLOITATION DE PRODUITS POUR LES INDUSTRIES CHIMIQUES SEPPIC
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】ラエティティア・カットゥザット
(72)【発明者】
【氏名】ジュリアン・フォーイランド
【審査官】小川 慶子
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-507005(JP,A)
【文献】特表2004-520357(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61K 36/23
A61Q 1/00-90/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
毛髪成長を促進するための治療処置方法に使用される未分化クリスマム・マリティマム(Crithmum maritimum)細胞の凍結乾燥物。
【請求項2】
有効量の未分化クリスマム・マリティマム(Crithmum maritimum)細胞の凍結乾燥物を含む局所組成物(C
1)を頭皮に適用することを含む、毛髪成長を促進するための非治療的プロセス。
【請求項3】
100質量%当たり、
- 0.05質量%~0.5質量%の未分化クリスマム・マリティマム(Crithmum maritimum)細胞の凍結乾燥物、
- 0.01質量%~5質量%の、アシル基が10~12個の炭素原子を含むN-アシル天然α-アミノ酸の少なくとも1種、
- 0.01質量%~5%の、式(II):
ZO-(CH
2)
3-NH-C(=O)-CH(CH
3)
2-CH
2-OH (II)
(式中、Zは、式:P(R
3O)(OM)(=O)-(ここで、R
3は、アルコキシル化ポリシロキサン誘導体を表し、及びOMは、遊離又は造塩のOH基を表す)のリン系基を表す)
のアルコキシル化及びリン酸化ポリシロキサン類のリン酸基を有する少なくとも1種の界面活性剤
を含む局所組成物(C’
1)。
【請求項4】
化粧品における、請求項3に記載の組成物(C’
1)の使用。
【請求項5】
毛髪成長を促進するための治療処置方法に使用される、請求項3に記載の組成物(C
1)。
【請求項6】
請求項3に記載の局所組成物(C
1)を頭皮に適用することを含む、毛髪成長を促進するための非治療的プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛髪成長を促進するための新規なプロセス、新規な相乗組成物及びまた前記プロセスにおけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪は、機械的又は化学的ストレス因子、特に大気汚染又は天然か人工かにかかわらず紫外線に起因するストレス因子のいずれにせよ、人体外部の各種因子により攻撃を受ける。
【0003】
ヒトは、頭部に100万及び身体に400万の合わせて500万の毛包の平均的蓄えを有することが知られている。毛髪は、脂腺性毛包として知られる皮膚付属物で成長する。この付属物は、脂腺の付着した毛包で成長する頭髪又は体毛自体を含む。立毛筋は、各毛髪の基部に位置する。それは、毛髪の毛根鞘の基部から皮膚の表面表皮に延在し、震えたり鳥肌が立ったりしたときの熱調節に関与する。各毛包は、神経が分布し、豊富に血管新生され、触覚の受容及びまた頭髪/体毛成長の確保を可能にする。
【0004】
毛包は、主に、真皮乳頭を含む毛球、その細胞集団を構成する線維芽細胞、ケラチノサイトとメラノサイトとを含むマトリックス及び内側上皮鞘と、外側上皮鞘と、結合上皮鞘との3つの鞘を含む毛幹から構成される。毛髪は、退行期と、休止期と、成長期との3つの識別可能な期から構成される成長周期に従って成長する。退行期(毛髪の「死」として知られる)は、2~3週間継続する毛包の退縮期であり、その間、毛球及び上皮鞘の上皮細胞の大部分は、増殖を停止し、毛包の2/3未満が影響を受けるアポトーシスを開始する。細胞分化は、停止に至るほどかなり減少する。真皮乳頭は、上皮との接触を維持する。毛球の体積が減少し、真皮乳頭から分離するまで表皮の表面まで上昇する。
【0005】
6~7ヶ月間継続する休止期は、潜伏期であり、その間、有意な細胞分化も有意な細胞増殖も何ら起こらず、アポトーシスは、中止した状態である。真皮乳頭は、真皮の深さに残り、毛球の残りの部分に徐々に接触するようになる。
【0006】
男性では2~4年間、女性で6年間まで継続する成長期は、毛球及び二次胚に位置する特殊化細胞区画に位置する上皮幹細胞及びプロジェニター幹細胞の活性化により開始される。この活性化に続いて、真皮乳頭近傍のケラチノサイトの迅速な増殖及び分化が起こり、新たな毛球の形成及び内側鞘の成長をもたらす。
【0007】
この成長周期は、毛球領域に在住する毛包の幹細胞の再生能により一生を通じて25~30回繰り返される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
毛髪成長を促進する新規な化粧活性剤の開発を目指した研究に関連して、本発明者らは、好塩性植物細胞に関心を持つようになった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このため、第1の態様によれば、本発明の主題は、毛髪成長を促進するための治療処置方法に使用される未分化クリスマム・マリティマム(Crithmum maritimum)(シーフェンネル)細胞の凍結乾燥物である。
【0010】
以上に規定された使用で実現される未分化クリスマム・マリティマム(Crithmum maritimum)細胞の前記凍結乾燥物は、当業者に公知の方法により、より特定的には仏国特許出願公開第2,864,446号明細書の7~9頁に記載のプロセスに従って調製される。
【0011】
本発明の他の一態様によれば、前記発明の主題は、有効量の前記未分化クリスマム・マリティマム(Crithmum maritimum)(シーフェンネル)細胞の凍結乾燥物を含む局所組成物(C1)を頭皮に適用することを含む、毛髪成長を促進するための非治療的プロセスである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
「有効量」という用語は、適度に慎重な消費者が、自らの毛髪の成長に関して挙げられた改善が実際に見られることを目で観察できる程度に十分な量を意味する。本明細書の続きに提示される実験研究では、前記組成物(C1)の全質量を基準にして0.05質量%~0.5質量%の前記凍結乾燥物の量を有効量とみなし得ることが明らかにされる。
【0013】
本発明の主題である前記凍結乾燥物を含む前記局所組成物(C1)は、好ましくは、頭皮及び/又は毛髪を処理するのに好適な形態、例えばオイル、クリーム、ミルク、パウダー、ローション、フォーミング配合物又はシャンプーである。そのため、それは、リンスアウト又はリーブイン配合物であり得る。
【0014】
そのため、本発明の主題である組成物(C1)は、一般的には、油中水型、水中油型、水中油中水型若しくは油中水中油型であるか又はパウダーの形態であるかにかかわらず、水性、若しくは水性アルコール性、若しくは水性グリコール性の溶液の形態であるか、又はサスペンジョン、エマルジョン、マイクロエマルジョン若しくはナノエマルジョンの形態である。
【0015】
組成物(C1)は、1種以上の薬学的又は美容的に許容可能な賦形剤も含む。
【0016】
「美容的に許容可能」という表現は、1993年6月14日の指令第93/35/EEC号により改正された1976年7月27日の欧州経済共同体理事会指令(Council of the European Economic Community Directive)第76/768/EEC号に準拠して、排他的に主に、それらの洗浄、着香、外見補正及び/若しくは体臭の是正並びに/又はそれらの保護若しくはそれらの良好な状態の維持を目的として、人体の各種部分(表皮、体毛及び頭髪系、爪、口唇並びに生殖器)又は歯及び口腔粘膜に接触させることを意図されたいずれかの物質又は調製物を含むことを意味する。
【0017】
本発明の主題である組成物(C1)は、ボトル、ポンプボトルタイプのデバイス又は加圧形態でエアロゾルデバイスにパッケージされ得る。
【0018】
以上に規定された組成物(C1)に任意選択的に存在する薬学的又は美容的に許容可能な賦形剤としては、例えば、起泡及び/又は洗浄界面活性剤、増粘及び/又はゲル化界面活性剤、増粘剤及び/又はゲル化剤、安定化剤、膜形成化合物、溶媒及び共溶媒、ヒドロトロピー剤、鉱水又は湧水、可塑剤、乳化剤及び共乳化剤、不透明化剤、真珠光沢剤、過加脂剤、金属イオン封鎖剤、キレート化剤、オイル、ワックス、抗酸化剤、香料、エッセンシャルオイル、保存剤、コンディショニング剤、デオドラント、体毛及び皮膚を漂白することを意図された漂白剤、皮膚又は毛髪に処置及び/又は保護作用を提供することを意図された活性成分、サンスクリーン、ミネラルフィラー又は顔料、視覚効果を与えること又は活性剤をカプセル化することを意図された粒子、剥脱粒子、テクスチャー剤、光学増白剤並びに昆虫忌避剤が挙げられる。
【0019】
組成物(C1)で未分化シーフェンネル細胞の凍結乾燥物と組み合わされ得る起泡及び/又は洗浄界面活性剤の例としては、陰イオン性、陽イオン性、両性又は非イオン性の起泡及び/又は洗浄界面活性剤が挙げられ得る。
【0020】
起泡及び/又は洗浄陰イオン界面活性剤としては、アルキルエーテルスルフェート、アルキルスルフェート、アルキルアミドエーテルスルフェート、アルキルアリールポリエーテルスルフェート、モノグリセリドホスフェート、α-オレフィンスルホネート、パラフィンスルホネート、アルキルホスフェート、アルキルエーテルホスフェート、アルキルスルホネート、アルキルアミドスルホネート、アルキルアリールスルホネート、アルキルカルボキシレート、アルキルスルホスクシネート、アルキルエーテルスルホスクシネート、アルキルアミドスルホスクシネート、アルキルスルホアセテート、アルキルサルコシネート、アシルイセチオネート、N-アシルタウレート、アシルラクチレート、N-アシルアミノ酸誘導体、N-アシルペプチド誘導体、N-アシルタンパク質誘導体の脂肪酸のN-アシル誘導体のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アミン塩、アミノアルコール塩が挙げられ得る。
【0021】
起泡及び/又は洗浄両性界面活性剤としては、アルキルベタイン、アルキルアミドベタイン、スルタイン、アルキルアミドアルキルスルホベタイン、イミダゾリン誘導体、ホスホベタイン、アンホポリアセテート及びアンホプロピオネートが挙げられ得る。
【0022】
起泡及び/又は洗浄陽イオン界面活性剤としては、特に第4級アンモニウム誘導体が挙げられ得る。
【0023】
起泡及び/又は洗浄非イオン界面活性剤としては、より特定的には8~16個の炭素原子を含む線状又は分岐状の飽和又は不飽和の脂肪族基を含むアルキルポリグリコシド、例えばオクチルポリグルコシド、デシルポリグルコシド、ウンデシレニルポリグルコシド、ドデシルポリグルコシド、テトラデシルポリグルコシド、ヘキサデシルポリグルコシド、1,12-ドデカンジイルポリグルコシド、エトキシル化水素化カスターオイル誘導体、例えばPEG-40水素化カスターオイルというINCI名で販売されている製品、ポリソルベート、例えばポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート70、ポリソルベート80、ポリソルベート85、ココナッツカーネルアミド、N-アルキルアミンが挙げられ得る。
【0024】
組成物(C1)で未分化シーフェンネル細胞の凍結乾燥物と組み合わされ得る増粘及び/又はゲル化界面活性剤の例としては、任意選択的にアルコキシル化されたアルキルポリグリコシド脂肪酸エステル、例えばエトキシル化メチルポリグルコシドエステル、例えばGLUCAMATE(商標)LT及びGLUMATE(商標)DOE120という商品名でそれぞれ販売されているPEG120メチルグルコーストリオレエート及びPEG120メチルグルコースジオレエート、アルコキシル化脂肪酸エステル、例えばCrothix(商標)DS53という名称で販売されているPEG150ペンタエリトリチルテトラステアレート、Antil(商標)141という名称で販売されているPEG55プロピレングリコールオレエート、脂肪鎖ポリアルキレングリコールカルバメート、例えばElfacos(商標)T211という名称で販売されているPPG-14ラウレスイソホリルジカルバメート、Elfacos(商標)GT2125という名称で販売されているPPG-14パルメス-60ヘキシルジカルバメートが挙げられ得る。
【0025】
組成物(C1)で未分化シーフェンネル細胞の凍結乾燥物と組み合わされ得る増粘剤及び/又はゲル化剤の例としては、高分子電解質タイプの線状又は分岐状又は架橋のポリマー、例えば部分造塩又は完全造塩のアクリル酸ホモポリマー、部分造塩又は完全造塩のメタクリル酸ホモポリマー、部分造塩又は完全造塩の2-メチル[(1-オキソ-2-プロペニル)アミノ]-1-プロパンスルホン酸(AMPS)ホモポリマー、アクリル酸とAMPSとのコポリマー、アクリルアミドとAMPSとのコポリマー、ビニルピロリドンとAMPSとのコポリマー、AMPSと(2-ヒドロキシエチル)アクリレートとのコポリマー、AMPSと(2-ヒドロキシエチル)メタクリレートとのコポリマー、AMPSとヒドロキシエチルアクリルアミドとのコポリマー、AMPSとN,N-ジメチルアクリルアミドとのコポリマー、AMPSとトリス(ヒドロキシメチル)アクリルアミドメタン(THAM)とのコポリマー、アクリル酸又はメタクリル酸と(2-ヒドロキシエチル)アクリレートとのコポリマー、アクリル酸又はメタクリル酸と(2-ヒドロキシエチル)メタクリレートとのコポリマー、アクリル酸又はメタクリル酸とヒドロキシエチルアクリルアミドとのコポリマー、アクリル酸又はメタクリル酸とTHAMとのコポリマー、アクリル酸又はメタクリル酸とN,N-ジメチルアクリルアミドとのコポリマー、アクリル酸又はメタクリル酸とAMPSと(2-ヒドロキシエチル)アクリレートとのターポリマー、アクリル酸又はメタクリル酸とAMPSと(2-ヒドロキシエチル)メタクリレートとのターポリマー、アクリル酸又はメタクリル酸とAMPSとTHAMとのターポリマー、アクリル酸又はメタクリル酸とAMPSとN,N-ジメチルアクリルアミドとのターポリマー、アクリル酸又はメタクリル酸とAMPSとアクリルアミドとのターポリマー、アクリル酸又はメタクリル酸とアルキルアクリレートとのコポリマー(その炭素鎖は、4~30個の炭素原子、より特定的には10~30個の炭素原子を含む)、AMPSとアルキルアクリレートとのコポリマー(その炭素鎖は、4~30個の炭素原子、より特定的には10~30個の炭素原子を含む)、遊離、部分造塩又は完全造塩の強酸官能基を有する少なくとも1つのモノマーと、少なくとも1つの中性モノマーと、式(VIII):
CH2=C(R’3)-C(=O)-[CH2-CH2-O]n-R’4 (VIII)
(式中、R’3は、水素原子又はメチル基を表し、R’4は、8~30個の炭素原子を含む線状又は分岐状のアルキル基を表し、及びnは、1以上且つ50以下の数を表す)
の少なくとも1つのモノマーとの線状、分岐状又は架橋のターポリマーが挙げられ得る。
【0026】
組成物(C1)で未分化シーフェンネル細胞の凍結乾燥物と組み合わされ得る高分子電解質タイプの線状又は分岐状又は架橋のポリマーは、溶液、水性サスペンジョン、油中水型エマルジョン、水中油型エマルジョン又はポリマーパウダーの形態をとり得る。挙げられ得る例には、Simulgel(商標)EG、Simulgel(商標)EPG、Sepigel(商標)305、Simulgel(商標)600、Simulgel(商標)NS、Simulgel(商標)INS100、Simulgel(商標)FL、Simulgel(商標)A、Simulgel(商標)SMS88、Sepinov(商標)EMT10、Sepiplus(商標)400、Sepiplus(商標)265、Sepiplus(商標)S、Sepimax(商標)禅、Aristoflex(商標)AVC、Aristoflex(商標)AVS、Novemer(商標)EC1、Novemer(商標)EC2、Aristoflex(商標)HMB、Cosmedia(商標)SP、Flocare(商標)ET25、Flocare(商標)ET75、Flocare(商標)ET26、Flocare(商標)ET30、Flocare(商標)ET58、Flocare(商標)PSD30、Viscolam(商標)AT64及びViscolam(商標)AT100という名称で販売されている製品が含まれる。
【0027】
組成物(C1)で未分化シーフェンネル細胞の凍結乾燥物と組み合わされ得る増粘剤及び/又はゲル化剤の例としては、単糖のみからなる多糖、例えばグルカン又はグルコースホモポリマー、グルコマンノグルカン、キシログリカン、ガラクトマンナン(ただし、D-マンノース主鎖上のD-ガラクトース単位の置換度(DS)は、0~1、より特定的には1~0.25である)、例えばカッシアガム(DS=1/5)、ローカストビーンガム(DS=1/4)、タラガム(DS=1/3)、グアーガム(DS=1/2)又はコロハガム(DS=1)に由来するガラクトマンナンが挙げられ得る。
【0028】
組成物(C1)で未分化シーフェンネル細胞の凍結乾燥物と組み合わされ得る増粘剤及び/又はゲル化剤の例としては、単糖誘導体からなる多糖、例えばガラクタンスルフェート、より特定的にはカラゲナン及び寒天、ウロナン、より特定的にはアルギン、アルギネート及びペクチン、単糖とウロン酸とのヘテロポリマー、より特定的にはキサンタンガム、ジェランガム、アラビアガム及びカラヤガムの滲出物、グルコサミノグリカン、セルロース及びセルロース誘導体、例えばメチルセルロース、エチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロース、シリケート、デンプン、親水性デンプン誘導体及びポリウレタンが挙げられ得る。
【0029】
組成物(C1)で未分化シーフェンネル細胞の凍結乾燥物と組み合わされ得る安定化剤の例としては、単結晶ワックス、より特定的にはオゾケライト、ミネラル塩、例えば塩化ナトリウム又は塩化マグネシウム、シリコーンポリマー、例えばポリシロキサンポリアルキルポリエーテルコポリマーが挙げられ得る。
【0030】
組成物(C1)で未分化シーフェンネル細胞の凍結乾燥物と組み合わされ得る溶媒の例としては、水、有機溶媒、例えばグリセロール、ジグリセロール、グリセロールオリゴマー、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-プロパンジオール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、キシリトール、エリトリトール、ソルビトール、水溶性アルコール、例えばエタノール、イソプロパノール又はブタノール及び水と前記有機溶媒との混合物が挙げられ得る。
【0031】
組成物(C1)で未分化シーフェンネル細胞の凍結乾燥物と組み合わされ得る湧水又は鉱水の例としては、少なくとも300mg/lのミネラル分を有する湧水又は鉱水、特にAvene水、Vittel水、Vichy流域水、Uriage水、La Roche Posay水、La Bourboule水、Enghien-les-bains水、Saint-Gervais-les-bains水、Neris-les-bains水、Allevard-les-bains水、Digne水、Maizieres水、Neyrac-les-bains水、Lons le Saunier水、Rochefort水、Saint Christau水、Fumades水及びTercis-les-bains水が挙げられ得る。
【0032】
組成物(C1)で未分化シーフェンネル細胞の凍結乾燥物と組み合わされ得るヒドロトロピー剤の例としては、キシレンスルホネート、クメンスルホネート、ヘキシルポリグルコシド、(2-エチルヘキシル)ポリグルコシド又はn-ヘプチルポリグルコシドが挙げられ得る。
【0033】
組成物(C1)で未分化シーフェンネル細胞の凍結乾燥物と組み合わされ得る乳化用界面活性剤の例としては、非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤及び陽イオン界面活性剤が挙げられ得る。
【0034】
組成物(C1)で未分化シーフェンネル細胞の凍結乾燥物と組み合わされ得る乳化用非イオン界面活性剤の例としては、ソルビトールの脂肪酸エステル、例えばMontane(商標)40、Montane(商標)60、Montane(商標)70、Montane(商標)、80及びMontane(商標)85という名称で販売されている製品、グリセリルステアレートと5mol~150molのエチレンオキシドでエトキシル化されたステアリン酸とを含む組成物、例えばSimulsol(商標)165という名称で販売されている135molのエチレンオキシドでエトキシル化されたステアリン酸とグリセリルステアレートとを含む組成物、マンニタンエステル、エトキシル化マンニタンエステル、スクロースエステル、メチルグルコースエステル、14~36個の炭素原子を含む線状又は分岐状の飽和又は不飽和の脂肪族基を含むアルキルポリグリコシド、例えばテトラデシルポリグルコシド、ヘキシルデシルポリグルコシド、オクタデシルポリグルコシド、ヘキシルデシルポリキシロシド、オクタデシルポリキシロシド、エイコシルポリグルコシド、ドデコシルポリグルコシド、(2-オクチルドデシル)ポリキシロシド、(12-ヒドロキシステアリル)ポリグルコシド、14~36個の炭素原子を含む線状又は分岐状の飽和又は不飽和の脂肪アルコールと、以上に記載のアルキルポリグリコシドとの組成物、例えばMontanov(商標)68、Montanov(商標)14、Montanov(商標)82、Montanov(商標)202、Montanov(商標)S、Montanov(商標)WO18、Montanov(商標)L、Fluidanov(商標)20X及びEasynov(商標)というブランド名で販売されている組成物が挙げられ得る。
【0035】
組成物(C1)で未分化シーフェンネル細胞の凍結乾燥物と組み合わされ得る陰イオン界面活性剤の例としては、グリセリルステアレートシトレート、セテアリルスルフェート、石鹸、例えばナトリウムステアレート又はトリエタノールアンモニウムステアレート及び造塩アミノ酸のN-アシル誘導体、例えばステアロイルグルタメートが挙げられ得る。
【0036】
組成物(C1)で未分化シーフェンネル細胞の凍結乾燥物と組み合わされ得る乳化用陽イオン界面活性剤の例としては、アミンオキシド、クアテルニウム-82及び特許出願国際公開第96/00719号パンフレットに記載の界面活性剤並びに主に脂肪鎖が少なくとも16個の炭素原子を含むものが挙げられ得る。
【0037】
組成物(C1)で未分化シーフェンネル細胞の凍結乾燥物と組み合わされ得る不透明化剤及び/又は真珠光沢剤の例としては、ナトリウムパルミテート、ナトリウムステアレート、ナトリウムヒドロキシステアレート、マグネシウムパルミテート、マグネシウムステアレート、マグネシウムヒドロキシステアレート、エチレングリコールモノステアレート、エチレングリコールジステアレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールジステアレート及び12~22個の炭素原子を含む脂肪アルコールが挙げられ得る。
【0038】
組成物(C1)で未分化シーフェンネル細胞の凍結乾燥物と組み合わされ得るテクスチャー剤の例としては、N-アシルアミノ酸誘導体、例えばAminohope(商標)LLという名称で販売されているラウロイルリシン、Dryflo(商標)という名称で販売されているオクテニルデンプンスクシネート、Montanov(商標)14という名称で販売されているミリスチルポリグルコシド、セルロース繊維、コットン繊維、キトサン繊維、タルク、セリサイト及びマイカが挙げられ得る。
【0039】
組成物(C1)で未分化シーフェンネル細胞の凍結乾燥物と組み合わされ得るオイルの例としては、ミネラルオイル、例えば流動パラフィン、流動ワセリン、イソパラフィン又は白色ミネラルオイル、動物起源のオイル、例えばスクアレン又はスクアラン、植物オイル、例えばフィトスクワラン、スイートアーモンドオイル、ココナッツカーネルオイル、カスターオイル、ホホバオイル、オリーブオイル、ナタネオイル、ラッカセイオイル、ヒマワリオイル、コムギ胚芽オイル、トウモロコシ胚芽オイル、ダイズオイル、コットンオイル、アルファルファオイル、ケシオイル、カボチャオイル、マツヨイグサオイル、ミレットオイル、オオムギオイル、ライムギオイル、サフラワーオイル、ククイオイル、トケイソウオイル、ヘーゼルナッツオイル、パームオイル、シアバター、キョウニンオイル、ビューティーリーフオイル、シシンブリウムオイル、アボカドオイル、カレンジュラオイル、花又は植物に由来するオイル、エトキシル化植物オイル、合成オイル、例えば脂肪酸エステル、例えばブチルミリステート、プロピルミリステート、イソプロピルミリステート、セチルミリステート、イソプロピルパルミテート、オクチルパルミテート、ブチルステアレート、ヘキサデシルステアレート、イソプロピルステアレート、オクチルステアレート、イソセチルステアレート、ドデシルオレエート、ヘキシルラウレート、プロピレングリコールジカプリレート、ラノリン酸に由来するエステル、例えばイソプロピルラノレート、イソセチルラノレート、脂肪酸のモノグリセリド、ジグリセリド及びトリグリセリド、例えばグリセリルトリヘプタノエート、アルキルベンゾエート、水素化オイル、ポリ(α-オレフィン)、ポリオレフィン、例えばポリ(イソブタン)、合成イソアルカン、例えばイソヘキサデカン、イソドデカン、過フッ素化オイル、シリコーンオイル、例えばジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、アミン変性シリコーン、脂肪酸変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、アルコール及び脂肪酸で変性されたシリコーン、ポリエーテル基変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、フルオロ基変性シリコーン、環状シリコーン及びアルキル基変性シリコーンが挙げられ得る。本特許出願では、「オイル」という用語は、25℃の温度で液状外観を有する水不溶性の化合物及び/又は化合物の混合物を意味する。
【0040】
組成物(C1)で未分化シーフェンネル細胞の凍結乾燥物と組み合わされ得るワックスの例としては、ビーワックス、カルナウバワックス、カンデリラワックス、オウリキュリーワックス、ジャパンワックス、コルクファイバーワックス、サトウキビワックス、パラフィンワックス、リグナイトワックス、マイクロクリスタリンワックス、羊毛脂ワックス、オゾケライト、ポリエチレンワックス、シリコーンワックス、植物ワックス、室温で固体の脂肪アルコール及び脂肪酸、室温で固体のグリセリドが挙げられ得る。本特許出願では、「ワックス」という用語は、45℃以上の温度で固形外観を有する水不溶性の化合物及び/又は化合物の混合物を意味する。
【0041】
組成物(C1)で未分化シーフェンネル細胞の凍結乾燥物と組み合わされ得る活性成分の例としては、以下の化合物が挙げられ得る。
- ビタミン及びその誘導体、特にそのエステル、例えばレチノール(ビタミンA)及びそのエステル(例えば、レチニルパルミテート)、アスコルビン酸(ビタミンC)及びそのエステル、アスコルビン酸の糖誘導体(例えば、アスコルビルグルコシド)、トコフェロール(ビタミンE)及びそのエステル(例えば、トコフェリルアセテート)、ビタミンB3又はB10(ナイアシンアミド及びその誘導体)、
- アシル基が8~18個の炭素原子を含むN-アシル天然α-アミノ酸、より一般的には、式(I):
【0042】
【0043】
の化合物又は式(I)の前記化合物の混合物、例えば国際特許出願国際公開第94/26694号パンフレットに記載のもの又はProteol(商標)SAV505若しくはProteol(商標)OATという名称で販売されているもの、
- ポリフェノールリッチ植物エキス、例えばブドウエキス、マツエキス、ワインエキス、オリーブエキス、
- 植物エキス、例えばタンニンリッチ植物エキス、イソフラボンリッチ植物エキス又はテルペンリッチ植物エキス、淡水又は海水の藻類のエキス、海洋植物のエキス、海洋生物エキス一般、例えばサンゴエキス、エッセンシャルワックス、細菌エキス、セラミド、リン脂質、
- 頭髪及び/又は体毛を処理することを意図された作用剤、例えばメラノサイトの老化及び/又はアポトーシスに関与する細胞傷害剤からメラノサイトを保護することを意図された毛包メラノサイト保護剤、例えば欧州特許出願公開第1,515,688A2号明細書に記載のものから選択されるドーパクロムトートメラーゼ活性のミメティック、合成SODミメティック分子、例えばマンガン錯体、抗酸化化合物、例えばシクロデキストリン誘導体、ケイ素系アスコルビン酸誘導体、リシン又はアルギニンのピロリドンカルボキシレート、ケイ皮酸とビタミンCとのモノエステル及びジエステルの組合せ、
- 式(II):
ZO-(CH2)3-NH-C(=O)-CH(CH3)2-CH2-OH (II)
(式中、Zは、式:P(R3O)(OM)(=O)-(ここで、R3は、アルコキシル化ポリシロキサン誘導体を表し、及びOMは、遊離又は造塩のOH基を表す)のリン系基を表す)
のアルコキシル化及びリン酸化ポリシロキサン類のリン酸基を有する界面活性剤、例えばPecosil(商標)SPP50(INCI名:カリウムジメチコンコポリオールパンテニルホスフェート)という名称で販売されている製品。
【0044】
組成物(C1)で未分化シーフェンネル細胞の凍結乾燥物と組み合わされ得る抗酸化剤の例としては、EDTA及びその塩、クエン酸、酒石酸、シュウ酸、BHA(ブチルヒドロキシアニソール)、BHT(ブチルヒドロキシトルエン)、トコフェロール誘導体、例えばトコフェリルアセテート、抗酸化化合物の混合物、例えばINCI名:テトラナトリウムグルタメートジアセテートでAkzo Nobel社により販売されているDissolvine(商標)GL47Sが挙げられ得る。
【0045】
本発明のより特定の態様によれば、前記発明の主題は、100質量%当たり、
- 0.05質量%~0.5質量%の未分化シーフェンネル細胞の前記凍結乾燥物、
- 0.01質量%~5質量%の、アシル基が10~12個の炭素原子を含むN-アシル天然α-アミノ酸の少なくとも1種、
- 0.01質量%~5%の、式(II):
ZO-(CH2)3-NH-C(=O)-CH(CH3)2-CH2-OH (II)
(式中、Zは、式:P(R3O)(OM)(=O)-(ここで、R3は、アルコキシル化ポリシロキサン誘導体を表し、及びOMは、遊離又は造塩のOH基を表す)のリン系基を表す)
のアルコキシル化及びリン酸化ポリシロキサン類のリン酸基を有する少なくとも1種の界面活性剤
を含む局所組成物(C’1)及びその美容的使用である。
【0046】
本発明の主題は、毛髪成長を促進するための治療処置方法に使用される、以上に規定された組成物C’1)及びまた以上に規定された局所組成物(C’1)を頭皮に適用することを含む、毛髪成長を促進するための非治療的プロセスでもある。
【0047】
以下の実験の部は、本発明を例示するものであり、それを限定するものではない。
【0048】
1.モデルの選択及び妥当性
本発明の主題である凍結乾燥物の技術的効果を実証するために選択したモデルは、ヒトフェイスリフトの外植片上における遺伝子発現に関する研究モデルである。本発明の目的では、「ヒトフェイスリフト」という用語は、美容外科手術時に得られる側頭及び前頭から採取された皮膚サンプルに由来する廃棄ヒト皮膚を意味する。毛髪系に及ぼす成分の有効性を研究することが望まれる場合、この「廃棄ヒト皮膚」は、最適なモデルを構成する。さらに、「全ゲノム」遺伝子解析によれば、化合物により誘発されるレギュレーションのすべてを実証することが可能である。
【0049】
本発明の目的では、「全ゲノム遺伝子解析」という用語は、タンパク質をコードする遺伝子及び遺伝子配列の部分だけでなくタンパク質をコードしない部分についても、全ヒトゲノムに適用される分子生物学的方法を用いて、単一の実験でヒトゲノムのすべての前記遺伝子の発現及び前記遺伝子配列の変動を決定する解析を意味する。かかる「全ゲノム」遺伝子解析によれば、潜在的な生理学的性質に関して化学物質又は化学組成の有効性の全体像を想定したり、人体の生物学的レギュレーションのすべてを理解したりすることが可能である。この場合、かかる「全ゲノム」遺伝子解析によれば、同一の実験方法に従って未分化細胞の試験凍結乾燥物で処理された外植片で得られた結果と、プラセボ配合物で処理された外植片で得られた結果との比較により、所与の処理条件(局所適用、処理持続時間など)下で未分化細胞の試験凍結乾燥物に関連する生物学的性質が存在するかしないかを推定することが可能である。
【0050】
2.実験プロトコル
62歳のコーカサス人の男性のフェイスリフトから得られた3つの0.5cm2外植片を培養する。
【0051】
0.1質量%で未分化クリスマム・マリティマム(Crithmum maritimum)細胞(L1)の凍結乾燥物を含有するか又は含有しない(対照)2.5%のエタノール(vol/vol)を含有する水性アルコール性ゲルを調製する。
【0052】
t=0で2mg/外植片の割合でゲルを適用する。
【0053】
t=24時間で3つの処理された外植片を3つの部分にカットする。
【0054】
トランスクリプトーム研究のために第1の部分を用いて、それからRNAを抽出する。RNAを安定化させてその分解を回避するための緩衝液媒体である、Qiagen社により販売されている媒体(RNAlater(登録商標)RNA安定化試薬)にそれを浸漬する。
【0055】
組織学的研究のために第2の部分を-80℃で凍結させる。
【0056】
また、組織学的研究のために第3の部分をホルマリンに溶解させる。
【0057】
t=2日間、t=5日間及びt=7日間で残りの外植片にゲルを再適用し、t=8日間で培養を停止させる。
【0058】
続いて、各外植片を2つにカットし、次いで組織学的研究のために-80℃又はホルマリン溶液のいずれかで固定する。
【0059】
「mRNA」の抽出、その品質チェック、続いて逆転写工程、次いで増幅を行い、その後、62976遺伝子プローブを含有する「Whole Human Genome Microarray(8*60K)」全ゲノムチップ上にハイブリダイズさせてから、トランスクリプトーム解析を実施する。
【0060】
本発明の目的では、「トランスクリプトーム解析」という用語は、ゲノムの転写に由来するすべてのRNAの特徴付け及び定量を行う方法を意味する。トランスクリプトーム解析によれば、特定の組織又は特定の細胞型のゲノムの転写に由来するすべてのRNAの特徴付けを行って、異なる実験条件間で転写されたRNAを比較することが可能である。この場合、以上に規定したようにフェイスリフト外植片上でトランスクリプトーム解析を実施して、毛髪成長に関連するRNAの転写の品質及び量を同定する。本発明に関連して適用される本方法は、プラセボに接触して配置された外植片及び未分化クリスマム・マリティマム(Crithmum maritimum)細胞の凍結乾燥物に接触して配置された外植片に対して、毛髪成長に関与するヒト遺伝子レギュレーションのすべてを単一実験で評価するという目的を有する。
【0061】
本特許出願の目的では、「その品質チェック」という用語は、抽出後に得られたmRNAの量及び品質で実験を継続するのに十分な量を利用できるだけでなく、たとえ弱く発現される遺伝子であっても検出できるような状態を確保することに依拠する手順を意味し、当業者に公知の施行規格に準拠して行われる定性的態様によれば、RNAが分解しないことを確認することが可能である。
【0062】
本発明の目的では、「逆転写」という用語は、抽出RNAから相補的DNAへの変換に依拠する、当業者に公知の工程を意味する。
【0063】
本発明の目的では、「こうして得られた相補的DNAの増幅工程」という用語は、相補的DNAの1コピー又は数セグメントを関係する遺伝子配列の何百万ものコピーに増幅する技術、より特定的にはPCR(又はポリメラーゼ連鎖反応)として知られる技術を意味する。
【0064】
本発明の目的では、「チップ上のハイブリダイゼーション工程」という用語は、あらかじめ増幅されたDNA鎖を、全ヒトゲノムを代表する遺伝子断片がグラフトされた「Whole Human Genome Microarray(8*60K)」全ゲノムチップ上に配置することを意味する。増幅工程に由来するDNA配列が、チップ上に存在する同一DNA配列の存在下にある場合、これら配列は、対合する(ハイブリダイゼーション)。ハイブリダイゼーション又は対合の量は、実験の開始時に存在するRNAの量に比例すると推定されるため、従って、ハイブリダイゼーション又は対合の検出シグナルは、開始時の生物学的システム(処理又は未処理の外植片に由来する)における遺伝子の発現レベルに比例するであろう。
【0065】
本発明の目的では、「「Whole Human Genome Microarray(8*60K)」全ゲノムチップ」という用語は、全ヒトゲノムを代表するDNA断片が装着された担体(一般的にはガラス製のもの)でAgilent社により販売されているものを意味する。
【0066】
すでに記載したチップの定性的検証後、各遺伝子に対して「未分化クリスマム・マリティマム(Crithmum maritimum)細胞の凍結乾燥物の存在により処理された遺伝子の発現レベルの強度」と「プラセボ配合物で処理された遺伝子の発現レベルの強度」との比に特有な「変化倍率(FC)」として知られる変動係数を決定するように、当業者に公知の方法に従ってデータの規格化を実施する(同一の実験条件下で発現が変化しない「ハウスキーピング」遺伝子に対して規格化)。
【0067】
この実験評価方法の実施から得られる結果の解釈に関連して、以上に定義された変動係数(「又は変化倍率(FC)」)が1.45の値以上である場合、関係する遺伝子の過剰発現が有意であると判断され、以上に定義された変動係数(「又は変化倍率(FC)」)の値が0.65以下である場合、関係する遺伝子の抑制が有意であると判断されるであろうと推定される。
【0068】
当業者の一般知識により、本出願人は、特定の遺伝子をそれらがコードするタンパク質と結び付けて、且つ毛包のライフサイクルの特定の代謝に及ぼすこれらのタンパク質の作用と結び付けて、表1(以下参照)を導出することが可能であった。
【0069】
【0070】
3.結果
水性アルコール性ゲルを利用して0.1質量%の量で以上に規定したように未分化シーフェンネル細胞をフェイスリフト外植片に局所適用することにより、以上に記載のトランスクリプトーム解析法の実施後、44遺伝子の過剰発現及び34遺伝子の抑制の誘発が可能であった。
【0071】
これらの過剰発現された44遺伝子及び抑制された34遺伝子の中から、表2は、毛髪の再成長又は毛包のライフサイクルに関連する生物学的及び生理学的機序の関連遺伝子について、未分化シーフェンネル細胞の凍結乾燥物で処理された外植片の発現レベルとプラセボ方式の発現レベルとの間の変動係数(又は変化倍率(FC))の値をまとめる。
【0072】
【0073】
そのため、未分化シーフェンネル細胞の凍結乾燥物の適用により毛包幹細胞の保護及び増殖を可能にして、
- 毛包幹細胞の更新を促進及び保護すること(KRT19の過剰発現)、
- pH条件をレギュレートすることにより細胞の増殖及び分化を可能にすること(CA9の過剰発現)、
- 毛包間表皮プロジェニター及び毛包鞘表皮プロジェニターの増殖を可能にすること(ITGA6の過剰発現)
ができるとこれらの実験結果から結論付け得る。
【0074】
また、未分化シーフェンネル細胞の凍結乾燥物の適用により、
- 毛髪の成長相又は成長期の維持を促進すること(ITGA3及びCA6の過剰発現)、
- 新たな毛包の開始を促進すること(ITGA6及びDNER/ADAM15の過剰発現)
が可能であることもこれらの実験結果から結論付け得る。
【0075】
また、以上に記載したトランスクリプトーム解析法の実施により、酸化活性、微生物攻撃からの人体保護活性に関連する遺伝子について及びエピジェネティックレギュレーションに関連する遺伝子について、未分化シーフェンネル細胞の凍結乾燥物で処理された外植片の発現レベルとプラセボ方式の発現レベルとの間の変動係数(又は変化倍率(FC))の値を観測することが可能である。
【0076】
表3は、特定の遺伝子をそれらがコードするタンパク質と結び付け、且つ抗酸化活性、抗微生物活性及びエピジェネティックレギュレーション活性に関連する代謝に及ぼすこれらのタンパク質の作用と結び付ける当業者の一般知識を含有する。
【0077】
【0078】
表4は、表3に指定された抗微生物活性、抗酸化活性及びエピジェネティックレギュレーション活性に関する遺伝子について、未分化シーフェンネル細胞の凍結乾燥物で処理された外植片の発現レベルとプラセボ方式の発現レベルとの間の変動係数(又は変化倍率(FC))の値を含有する。
【0079】
【0080】
そのため、未分化シーフェンネル細胞の凍結乾燥物の適用により、
- 全体的抗酸化保護を提供すること(XDH及びGPX2の有意な過剰発現)、より特定的には白毛症を支配する酸化機序を制限すること、
- 特に成長期に皮膚バリアを弱くする細菌攻撃からの保護を行うこと(遺伝子PI3、LCN2及びPIGRの過剰発現)、
- 細胞分化期及びストレス反応時に遺伝子発現を制御すること(NEAT1の過剰発現)
が可能であるとこれらの実験結果から結論付け得る。
【0081】
結論として、未分化シーフェンネル細胞の凍結乾燥物の適用により、毛髪成長の促進並びに酸化ストレス及び細菌攻撃からの毛髪及び頭皮の保護を直接行うことが可能である。
【0082】
未分化クリスマム・マリティマム(Crithmum maritimum)細胞の新規な適用が実証された。そのため、すでに記載した色素脱失性及び瘢痕形成性に加えて、これらの細胞は、0.1%の用量で毛髪成長の活性も有する。
【実施例】
【0083】
実施例1:熱活性ヘアローション
処方
ブチレングリコール:3.0%
Simulsol(商標)1293:3.0%
凍結乾燥物(L1):1.0%
乳酸:qs pH=6
Sepicide(商標)HB:0.2%
Sepicide(商標)CI:0.3%
香料:0.3%
水:qs 100%
【0084】
実施例3:保護及びリラックスシャンプー
処方
Amonyl(商標)675 SB:5.0%
28%ナトリウムラウリルエーテルスルフェート:35.0%
凍結乾燥物(L1):1.0%
Capigel(商標)98:3.0%
Sepicide(商標)HB:0.5%
Sepicide(商標)CI:0.3%
水酸化ナトリウム:qs pH=7.2
香料:0.3%
色素(FDCブルー1/イエロー5):qs
水:qs 100%
【0085】
特性
得られたシャンプーは、透明な緑色の外観を有する。そのpHは、約7.2に等しく、及びその粘度は、1000cps(Brookfield(商標)LVT:M4V6)に等しい。
【0086】
実施例4:リーブオンプロテクター、抗ストレスヘアケア用品
処方
Ketrol(商標)T:0.5%
凍結乾燥物(L1):3.0%
ブチレングリコール:5.0%
DC 1501:5.0%
Simulgel(商標)EG:4.0%
Sepicide(商標)HB:0.5%
Sepicide(商標)CI:0.3%
香料:0.3%
水:qs 100%
【0087】
特性
得られたケア用品は、不透明ゲルの形態である。そのpHは、約6.5に等しく、及びその粘度は、40000cps(Brookfield(商標)LVT:M4V6)に等しい。
【0088】
実施例5:ストレスを受けて脆くなった毛髪のためのリンスオフ再構造化クリームマスク
処方
Ketrol(商標)T:0.5%
凍結乾燥物(L1):3.0%
ブチレングリコール:3.0%
Simulgel(商標)EG:1.0%
Montanov(商標)82:3.0%
ホホバオイル:1.0%
Lanol(商標)P:6.0%
Amonyl(商標)DM:1.0%
Lanol(商標)99:5.0%
Simulgel(商標)EG:4.0%
Sepicide(商標)HB:0.3%
Sepicide(商標)CI:0.2%
香料:0.2%
水:qs 100%
【0089】
特性
得られたマスクは、クリームの形態である。そのpHは、約6.2に等しく、及びその粘度は、40000cps(Brookfield(商標)LVT:M4V6)に等しい。
【0090】
実施例に使用した市販品の定義は、以下の通りである。
Simulsol(商標)1293は、SEPPIC社により販売されている、40に等しいエトキシル化数を有する水素化及びエトキシル化カスターオイルである。
Sepicide(商標)HBは、SEPPIC社により販売されている、フェノキシエタノールと、メチルパラベンとエチルパラベンと、プロピルパラベンとブチルパラベンとを含む保存混合物である。
Sepicide(商標)CIは、SEPPIC社により販売されているイミダゾリジニルウレアである。
Capigel(商標)98は、SEPPIC社により販売されているアクリレートコポリマー系液状増粘剤である。
Amonyl(商標)675SBは、SEPPIC社により販売されているスルホベタインである。
Simulgel(商標)EGは、SEPPIC社により販売されているコポリマーリバースラテックス(INCI名:ナトリウムアクリレート/ナトリウムアクリロイルジメチルタウレートコポリマー及びイソヘキサデカン及びポリソルベート80)である。
Ketrol(商標)Tは、Kelco社により販売されているキサンタンガムである。
Lanol(商標)99は、SEPPIC社により販売されているイソノニルイソノナノエートである。
DC1501は、Dow Chemical社により販売されている、シクロペンタシロキサンとジメチコノールとの混合物である。
Montanov(商標)82は、セテアリルアルコール及びココイルグルコシド系乳化剤である。