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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-27
(45)【発行日】2022-05-11
(54)【発明の名称】靴、特に運動靴
(51)【国際特許分類】
   A43B 5/02 20060101AFI20220428BHJP
   A43B 23/06 20060101ALI20220428BHJP
   A43B 7/12 20060101ALN20220428BHJP
【FI】
A43B5/02
A43B23/06
A43B7/12
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020560248
(86)(22)【出願日】2018-04-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-30
(86)【国際出願番号】 EP2018060819
(87)【国際公開番号】W WO2019206423
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2020-12-25
(73)【特許権者】
【識別番号】511264353
【氏名又は名称】プーマ エス イー
【氏名又は名称原語表記】PUMA SE
【住所又は居所原語表記】Puma Way 1,91074 Herzogenaurach Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】ドノバン、パトリック
(72)【発明者】
【氏名】シエギスマーンド、アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ラミッグ、アーウィン
【審査官】柿沼 善一
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-529036(JP,A)
【文献】特表2005-520611(JP,A)
【文献】国際公開第1998/014081(WO,A1)
【文献】特開平06-141909(JP,A)
【文献】国際公開第2017/077021(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/002581(WO,A1)
【文献】特表2015-534877(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 5/02
A43B 23/06
A43B 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アッパー(2)、および前記アッパー(2)と連結されるソール(3)を含む、靴(1)であって、
前記アッパー(2)は、前記靴(1)の意図された用途で着用者の脚を少なくとも部分的に取り囲む編み構造(4)を含み、
前記編み構造(4)は、前記アッパー(2)の側面において前記アッパー(2)の縦方向延伸部(L)に沿って並んで配置される複数の開口部(5)と、前記アッパー(2)の内側において前記アッパー(2)の前記縦方向延伸部(L)に沿って並んで配置される複数の開口部(6)とから成る第1の組、を含み、前記第1の組は、前記ソール(3)の底部(7)から測定される前記アッパー(2)の定められた第1の高さレベル(h1)で配置され、
前記編み構造(4)は、前記アッパー(2)の前記側面において前記アッパー(2)の前記縦方向延伸部(L)に沿って並んで配置される複数の開口部(8)と、前記アッパー(2)の前記内側において前記アッパー(2)の前記縦方向延伸部(L)に沿って並んで配置される複数の開口部(9)とから成る第2の組、を含み、前記第2の組は、前記ソール(3)の前記底部(7)から測定される前記アッパー(2)の定められた第2の高さレベル(h2)で配置され、前記第2の高さレベル(h2)は前記第1の高さレベル(h1)と異なり、
前記編み構造(4)の前記開口部(5)(6)(8)(9)を覆う半透膜(10)が前記着用者の前記脚と前記編み構造(4)との間に配置され、前記アッパー(2)は、前記開口部(5)(6)(8)(9)の少なくとも一部分を囲む補強構造(16)を含み、前記補強構造(16)は、前記アッパー(2)の編地基材に加えられる編み構造によって実現され、
前記開口部(5)(6)(8)(9)は締め紐(13)を前記開口部(5)(6)(8)(9)に通すように適応され、
前記半透膜(10)は、底部領域(14)および最上領域(15)において前記アッパー(2)と連結され、かつ前記開口部(5)(6)(8)(9)の領域において前記アッパー(2)と連結されないことを特徴とする、靴(1)。
【請求項2】
前記半透膜(10)は、前記着用者の前記脚から前記半透膜(10)を通してかつ前記開口部(5)(6)(8)(9)を介して前記アッパー(2)の外側への湿気および/または水蒸気の流れを可能にし、かつ、前記アッパー(2)の外側からの湿気が前記着用者の前記脚に移行することを防止することを特徴とする、請求項1に記載の靴。
【請求項3】
前記編み構造(4)は、前記アッパー(2)の前記側面において前記アッパー(2)の前記縦方向延伸部(L)に沿って並んで配置される開口部(11)の少なくとも1つまたは複数の組と、前記アッパー(2)の前記内側において前記アッパー(2)の前記縦方向延伸部(L)に沿って並んで配置される開口部(12)の少なくとも1つまたは複数の組と、を含み、追加の開口部(11、12)の両方の組は、前記ソール(3)の前記底部(7)から測定される前記アッパー(2)の定められた高さレベル(h3)で配置されることを特徴とする、請求項1または2に記載の靴。
【請求項4】
前記半透膜(10)は、ポリスルホン(PSU)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド(PI)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、またはポリアミド(PA)から成るまたはこれらを含むことを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の靴。
【請求項5】
編成された前記補強構造(16)は、前記アッパー(2)の前記編地基材より高い密度のメッシュ、および/または前記アッパー(2)の前記編地基材の前記メッシュに加えられる追加のメッシュを有することを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の靴。
【請求項6】
前記アッパー(2)の前記編地基材は基本肉厚(t)を有し、かつ前記補強構造(16)は増大した肉厚(T)を有することを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の靴。
【請求項7】
前記増大した肉厚(T)は、基本肉厚(t)の、少なくとも120%であることを特徴とする、請求項に記載の靴。
【請求項8】
補強部(17)は、前記アッパー(2)のインステップ領域に配置されることを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の靴。
【請求項9】
前記補強部(17)の伸縮性は前記アッパー(2)の材料の伸縮性より、少なくとも2倍高いことを特徴とする、請求項に記載の靴。
【請求項10】
前記補強部(17)は、前記アッパーの残りの部分と別個に製造されこの部分と連結されることを特徴とする、請求項またはに記載の靴。
【請求項11】
前記靴はサッカー靴であり、前記ソール(3)は複数のクリート(18)を含むことを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の靴。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アッパー、および該アッパーと連結されるソールを含む、靴、特に運動靴、具体的には、サッカー靴に関し、アッパーは、靴の意図された用途で着用者の脚を少なくとも部分的に取り囲む編み構造を含む。
【背景技術】
【0002】
従来のサッカー用履物は、耐水および防水のものが多いが、着用者に十分な通気をもたらしていない。また、着用者の脚における靴のフィット性は、このような靴にもたらされる既定の紐締めの可能性があるため満足いくものではないことが多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
よって、本発明の目的は、靴、特に運動靴、具体的には、一般的な種類のサッカー靴を提案することであり、該靴は、防水のものであるが、湿気を靴の内部から靴の外側に移行させることを可能にする。さらに、着用者の脚における靴のフィット性は最適化されるものとする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によるこの目的のための解決策は、編み構造が、アッパーの側面においてアッパーの縦方向延伸部に沿って並んで配置される開口部の第1の組と、アッパーの内側においてアッパーの縦方向延伸部に沿って並んで配置される開口部の第1の組と、を含み、第1の開口部の両方の組が、ソールの底部から測定されるアッパーの定められた第1の高さレベルで配置され、該編み構造が、アッパーの側面においてアッパーの縦方向延伸部に沿って並んで配置される開口部の第2の組と、アッパーの内側においてアッパーの縦方向延伸部に沿って並んで配置される開口部の第2の組と、を含み、第2の開口部の両方の組が、ソールの底部から測定されるアッパーの定められた第2の高さレベルで配置され、第2の高さレベルが第1の高さレベルと異なり、編み構造の開口部を覆う半透膜が着用者の脚と編み構造との間に配置されることである。
【0005】
好ましくは、半透膜は、着用者の脚から半透膜を通してかつ開口部を介してアッパーの外側への湿気および/または水蒸気の流れを可能にし、かつ、アッパーの外側からの湿気が着用者の脚に移行することを防止する。
【0006】
編み構造は、アッパーの側面においてアッパーの縦方向延伸部に沿って並んで配置される開口部の少なくとも1つまたは複数の組と、アッパーの内側においてアッパーの縦方向延伸部に沿って並んで配置される開口部の少なくとも1つまたは複数の組と、を含むことができ、追加の開口部の両方の組は、ソールの底部から測定されるアッパーの定められた高さレベルで配置される。
【0007】
開口部は好ましくは、締め紐を同開口部に通すように適応される。
【0008】
好ましくは、半透膜は、ポリスルホン(PSU)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド(PI)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、またはポリアミド(PA)から成る、またはこれらを含む。
【0009】
半透膜は好ましくは、底部領域および最上領域においてアッパーと連結され、かつ開口部の領域においてアッパーと連結されない。
【0010】
アッパーは、開口部の少なくとも一部分を囲む補強構造を含むことができる。それによって、補強構造は、アッパーの編地基材に加えられる編み構造によって実現可能である。編成された補強構造は、好ましくは、アッパーの編地基材より高い密度のメッシュ、および/またはアッパーの編地基材のメッシュに加えられる追加のメッシュを有する。この概念のさらなる実施形態では、アッパーの編地基材は基本肉厚を有し、かつ補強構造は増大した肉厚を有し、該増大した肉厚は好ましくは、基本肉厚の少なくとも120%、具体的に好ましくは、少なくとも140%であることが提案される。
【0011】
補強縁部(collar)は、アッパーのインステップ領域に配置可能である。補強縁部の伸縮性は、好ましくは、補強縁部を超えたアッパーの材料の伸縮性より、少なくとも2倍高い、具体的に好ましくは、少なくとも3倍高い(すなわち、対応する材料の定められた形状を有する定められた試験片に張力(ニュートン)を加えると、伸長(mm)は、少なくとも2倍、好ましくは3倍高い)。補強縁部は好ましくは、アッパーの残りの部分と別個に製造され、好ましくは編成または縫製工程によって、この部分と連結される。
【0012】
靴は好ましくはサッカー靴であり、この場合、ソールは複数のクリートを含む。
【0013】
靴の提案された構造により、一方では、靴の耐水性を保証する解決策が利用可能である。他方では、履物物品は、半透膜の形態の膜層を取り入れることによって着用者の脚に通気性を与える。該膜層が編み構造と組み合わせられ、アッパーが実現される。そうすることによって、さまざまな紐締めの選択肢の可能となるため、使用者の脚における靴のカスタマイズされたフィット性が得られる。よって、提案された靴は、通気性および耐水性を有する。
【0014】
半透膜、すなわち膜層を積層してライニング材を作ることができ、該ライニング材も多孔性である。膜層によって、湿気および水蒸気は(靴の外部へ)一方向に通過できる一方、(靴の内部への)反対方向の湿気の流れを制限する。基本的に一連の開口部を形成する開口部の種々の組によって、この湿気の移動が容易になる。靴の組み立て後の膜層の実験室内試験によって、布地に積層した膜層は、湿気管理のための適した解決策となることが分かった。該膜は縫製によって上部構成部品に取り付け可能であり、膜層に対するいかなる損傷も防止する。
【0015】
膜は、(ソールに近い)アッパーの下端部(遠位端)からアッパーの上端部(近位縁)まで延在可能である。
【0016】
アッパー(補強縁部は除外する)は、好ましくは、非伸縮性上部体として作られ、伸縮性補強縁部に取り付けられる。これによって、アッパーがそれ自体ではかなり堅く、著しい伸縮性はないが、比較的弾性および伸縮性がある補強縁部によって靴の使用者は靴を履くことができることが保証される。
【0017】
提案された概念によって、ここでは、紐締めによってカスタマイズ可能な靴のフィット性に対する高まった需要を満たす解決策が存在する。編成されたアッパー構造における開口部の種々の組によって、ユーザは無数の異なる個々の位置に締め紐を位置付けることで、アッパーの特定の部位において、それぞれある程度支持し、かつ締めることができる。
【0018】
補強構造を実現するために、開口部(穴)は、特定の編成方法を使用してアッパー部分において編成可能である。開口部の周囲の縁部は具体的に編成可能である。ここで、強力なナイロン糸束(bundy yarn)は、高い引張り強さをもたらすように穴周辺部の補強のために使用可能である。
【0019】
このような高い引張り強さのナイロン糸はまた、編み構造の底層に加えられ得、かつさらなるナイロン糸、ポリエステル糸、ポリプロピレン糸、または編成に適した別の糸のいずれかと組み合わせ可能である。
【0020】
アッパーは、アッパーの縦方向延伸部に沿った種々の区間で、すなわち、(先頭の)つま革、(開口部の組を有する)中央領域、および(後部の)かかと領域において構造化可能である。述べた糸はこれらの領域でも使用可能である。また、後述される糸を使用することができる。
【0021】
アッパーは、最上層および基層を含むことができ、これらは共に編成される。
【0022】
最上層は、3つの別個のTPUコーティング糸から作られ得、これらのそれぞれは、ポリエステルフィラメント芯から成る300デニールであり、ポリエステル芯は糸の40%を占め、TPUコーティングは60%を占め、1本の糸全体は、1本の糸を作成するために多くのコーティングフィラメントが1つに束ねられるようなマルチフィラメント糸として分類される。さらに、150デニールを有するホットメルト糸が使用可能である。
【0023】
基層は、4本のポリエステル糸で構成可能であり、2本の糸は、編成前に撚り合わせた75デニールのポリエステル糸のものとすることができる。よって、2×75デニールポリエステルの2本の糸が利用可能である。さらに、450デニールのナイロン糸束が使用可能である。
【0024】
具体的に、(開口部を有する)アッパーの中央区間において、1つのナイロン糸束が3本のポリエステル糸と組み合わせられる時、ここでは有益である高い引張り強さが得られる。アッパーの全ての区間にわたって、ホットメルト糸を組み合わせて繊維を1つにまとめることができる。
【0025】
本発明の好ましい実施形態は、編み構造の上層に成形糸を取り入れる。これらの糸は、熱可塑性プラスチック材料でコーティングされたマルチフィラメントポリエステル芯を含む。熱および圧力を加えることによって、これらの糸は、これらの融点、この場合、通常140度~180度(融点)、に達すると成形可能である。冷却後、糸は加熱工程中に加えられた型の形状を維持する。この熱活性化工程の間、糸の耐摩耗性は非活性化方法と比較して改善可能であることが分かった。つまり、クリート付き履物に必要となる十分な耐摩耗性を得るためのさらなるコーティングが不要であることを意味する。
【0026】
アッパーの最上層は、3つの別個のTPUコーティング糸を含むことができ、これらは、1つの層を形成するために共に編成される。
【0027】
半透膜はそれ自体既知であり、例えば、「Gore-Tex」膜として既知である。ここで、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が膜用の材料として使用されることが多い。この材料の細孔によって水蒸気の通過が可能になる。しかしながら、液体水分子はより大きいため、膜を通過できない。
【0028】
図面において、本発明の一実施形態が示されている。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明によるサッカー靴の側面図である。
図2図1のものと同様の靴のサッカー靴の平面図である。
図3図2による靴の断面A-Aを示す図である。
図4図3による細部「X」を示す図である。
図5図4による視界「C」を示す図である。
図6a】アッパーおよびアッパーのある特定の部分の作成を示す編成工程の異なる縫製を概略的に示す図である。
図6b】アッパーおよびアッパーのある特定の部分の作成を示す編成工程の異なる縫製を概略的に示す図である。
図6c】アッパーおよびアッパーのある特定の部分の作成を示す編成工程の異なる縫製を概略的に示す図である。
図6d】アッパーおよびアッパーのある特定の部分の作成を示す編成工程の異なる縫製を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1において、サッカー靴である靴1が示されており、該靴は、アッパー2、およびアッパー2と連結されるソール3を有する。ソール3は、底部7、およびソール3の底部側に配置される複数のクリート18を有する。アッパー2は、運動靴の製造の分野では周知である編み構造4から作られる。編み構造4は補強縁部17と連結される。また、補強縁部17は編成工程によって作られた後、編み構造4と連結される。編成または縫製工程によって連結が実行可能であり、また、(接着または熱接着のような)他の連結方法も可能である。
【0031】
靴1は、図2において平面図で示され、図3図2による断面A-Aを示す。図1による靴1および図2による靴は同一ではないが非常に類似していることは留意されるべきである。
【0032】
図1図3の概要から分かるように、編み構造4は、アッパー2の側面においてアッパー2の縦方向延伸部Lに沿って並んで配置される開口部5の第1の組を含み、また、アッパー2の内側においてアッパーの縦方向延伸部Lに沿って並んで配置される開口部6の第1の組を有する。第1の開口部5および開口部6の両方の組は、ソール3の底部7から測定されるアッパー2の定められた第1の高さレベルh1(図3を参照)で配置される。
【0033】
さらに、編み構造4は、アッパー2の側面においてアッパー2の縦方向延伸部Lに沿って並んで配置される開口部8の第2の組と、アッパー2の内側においてアッパー2の縦方向延伸部Lに沿って並んで配置される開口部9の第2の組と、を含み、第2の開口部8および開口部9の両方の組は、ソール3の底部7から測定されるアッパー2の定められた第2の高さレベルh2(図3を参照)で配置される。第2の高さレベルh2は第1の高さレベルh1と異なっている。
【0034】
各開口部の組の縦方向延伸部Lが実質的に靴全体の縦方向延伸部に対応するが、これと同一ではないことは言及されるべきである。図1において見ることができるように、縦方向延伸部Lの図示された方向は、水平方向にわずかに傾斜している。多くの場合、傾斜角はかなり小さい(10度を下回る)。この場合、単一の開口部5、6、8、9は、編み構造の外面に沿った図示される方向Lに沿って、基本的には水平方向に、列を成して順々に続いている。この場合、各高さレベルh1、h2は容易に判断され得る。示される、もっと傾斜した縦方向の場合、高さレベルh1、h2は、開口部5、6、8、9の列がこのような開口部の隣接する列より上または下に配置されるように理解されるものとする。このことは、図3からかなり明確に明らかになる。
【0035】
示される実施形態の場合のように、アッパーの、側面における開口部11の第3の組、および内側における開口部12の第3の組が配置される時に同じことが当てはまる(図2および図3を参照。図1では開口部のさらなる第4の組が示されるが図示されていない)。
【0036】
さらに、これは、図3において最も良く見ることができるように、編み構造4の開口部5、6、8、9を覆う半透膜10が着用者の脚と編み構造4との間に配置される。
【0037】
アッパー2の側面および内側における開口部5、6、8、9、11、12の少なくとも2列の配置により、図1に具体的に示されるように、締め紐13を柔軟に個々に通すことを可能にする一連の開口部が作成される。締め紐13は、個々に揃えられた開口部を通して案内されることで、着用者の脚における靴の最も適切で便宜的なフィット性を得ることができる。図1において、締め紐13がアッパー2の外面に沿ってどのように案内されるのか、および締め紐が編み構造4より下に(点線)どのように案内されるのかを見ることができる。そのように、靴の個々の紐締めが実現可能である。
【0038】
他方では、膜10は、図3に示されるように、アッパーの底部領域14および最上領域15のみにおいて編み構造4で固定される(例えば、接着または熱接着される)。膜10はまた、アッパー2の前足領域およびかかと領域に固定(例えば、接着または熱接着)可能である。しかしながら、開口部5、6、8、9、11、12の種々の組によって形成される配列では、膜10は、述べられたような、締め紐13を通すことを可能にするために、編み構造4と連結されない。これは図3に示されている。
【0039】
開口部5、6、8、9、11、12は、通常編み構造4において円形または長円形の開口として設計される。最大直径は、通常3mm~7mm、好ましくは、4mm~6mmである。縦方向延伸部Lに沿った2つの開口部5、6、8、9、11、12の間の距離は、通常3mm~7mm、好ましくは、4mm~6mmである。1高さレベルh1、h2、h3(図3を参照)の間の距離は、通常8mm~12mm、好ましくは、9mm~11mmである。方向Lに沿った開口部の1つの組は、好ましくは7~14の開口部を有する。また、開口部の5組までは、アッパー2の側面および内側両方において配置可能である。
【0040】
これは、精密に揃えられた最適な紐締め用開口部が可能となるだけではない。さらには、開口部の整列により、蒸気を、靴の内部から膜10を通して靴の外部に逃すことができるように開口部の十分な領域が得られる。
【0041】
開口部5、6、8、9、11、12の高い機械的安定性を得るために、開口部5、6、8、9、11、12を形成する編み構造の縁部は補強可能である。これは図4および図5に示されている。編み構造4の基材の肉厚はtで示されている。述べられた、開口部の縁部領域では、ここで機械的安定性を高めるために増大させた肉厚Tが提供可能である。肉厚Tは肉厚tの120%以上とすることができる。そのように、補強構造16が得られる。
【0042】
増大させた肉厚は、開口部の周縁に沿った上記の領域において追加のメッシュが編成される編成工程によってもたらされ得る。メッシュの密度もここでは増大させることが可能である。
【0043】
態様の具体的な好ましい実施形態は下記になる。開口部の周縁は、例えば、追加のまたはより密度が高いメッシュによって、述べられたように補強可能である。熱可塑性を有する糸または糸の組み合わせは、編成工程に使用可能である。この場合、編み構造の表面を、(アイロンがけ工程のような)加熱工程によって靴に装着する前に平らにすることが可能である。この場合、編み構造の外面は平坦になる(すなわち、肉厚Tより大きくならない)が、開口部の周囲の領域における材料は、圧縮され機械的安定性が高くなる。
【0044】
編み構造4の外面はさらに、コーティング可能である、または印刷を加えることができる。
【0045】
編成されたアッパー4はまた、補強用リブなどのような表面構造を備えることができる。これは具体的には、ここではサッカー靴を補強するために前足領域で考慮に入れられ得る。
【0046】
編み構造4の好ましい実施形態では、2つの層、すなわち、アッパーの外面に配置される最上層および着用者の脚に面する底層が考案される。最上層は、熱可塑性プラスチック材料でコーティングされた糸から作られ得、これらの糸は外部がコーティングされたマルチフィラメント芯を含有する。よって、それらの糸は、熱および圧力を加えることによって溶融可能である。これらの糸は、十分な耐摩耗性をもたらすための追加のフィルムコーティングを必要としない。編み構造4の底層は、好ましくは、最低で2つの異なる糸タイプ、好ましくは、ポリエステルおよびナイロン束状から成り、これによって高い引張り強さがもたらされる。
【0047】
アッパー2の編成技法に関して、(編み機における針による糸の案内を概略的に示す)図6a~図6dには、本発明の好ましい実施形態が示されている。
【0048】
一般に、編成構造4に対して2つの層構造、すなわち、最上層および基(底)層が与えられる。上層および基層の編成のために、図6aに示されるように、平坦な編み組織が作成される。図6dに示されるような連結ステッチを使用して、最上層および底層を連結する。そうすることによって、図1の「D」によって示されるように、開口部のない領域に編み構造4が作成される。
【0049】
開口部5、6、8、9、11、12の縁部を作成するために、異なる編成技法が使用される。図6bに示されるようなロックステッチは、図4の「E」によって示されるように、穴構造の後縁部で使用される。しかしながら、図4の「F」によって示されるように、穴構造の前縁部においてロックステッチが使用される。
【0050】
編成工程は、対応する編成プログラムによって編み機において電子的に制御される。ここで、穴構造の後縁部および前縁部に対するロックステッチは、開口部をそれ自体編成するために(開口部を作成するためのフライステッチ、すなわち、この工程ではフックで留めない)および平坦な編み組織を作成するために同様にプログラミングされる。
【0051】
膜10は、別の織物構造(キャリア構造)に積層可能であり、かつ縫製工程によって編み構造4に付けられ得る。
【0052】
膜10および膜10の編み構造4への取り付けの具体的に好ましい実施形態は、下記のとおりである。
【0053】
膜10はそれ自体、上記のように、好ましくは、別個の(織物)構造(キャリア構造)に積層される。膜10はそれ自体、好ましくは、0.015mm~0.025mm、具体的に好ましくは0.02mmの肉厚を有し、これは、クリート付き履物物品の使用に関して、使用中の履物に対して物理的に必要となるため、かなり小さい。
【0054】
よって、膜を(織物)構造(キャリア構造)と積層して機械的安定性を向上させる。そうすることによって、(織物)キャリア構造との積層済み膜は、水蒸気の通過を可能にするための開口部を有する保護上層(編み構造4)の下に緩く位置付け可能である。
【0055】
単一の層膜10は、好ましくは、24時間で600~800g/m2の、好ましくは、24時間で700g/m2の透湿性を有する。(編み)構造(キャリア構造)は、(編み)構造および膜10の積層が、24時間で450~550g/m2の、好ましくは、24時間で500g/m2の透湿性を有するように選定される。
【0056】
ベンチマーク試験として、クリート付き履物にとって典型的な構成である、ホットメルトによるTPUスキンが地組織に加えられ得、この試料の通気性および防水レベルが膜10を積層させた同じ織物と比較される。これらの材料パッケージの両方が、完成した靴に取り入れられて、組立工程中のいずれの加熱工程および張り合わせ工程にも役立つ。
【0057】
試料はASTM E96-95 BW(23度、相対湿度50%)標準を使用して試験される(水蒸気透過に対する試験)。
【0058】
上記の好ましい構造、すなわち、(編成された)キャリア構造上の膜10から成る積層を使用することによって、提案された構造の明確な利益がもたらされる。ホットメルトによる一般的なTPUスキンと比較して提案された膜の積層を使用する時、平均で通気性は770%高くなることが言える。
【0059】
アッパー2とソール3との間の連結は、全ての既知の技法によって行われ得る。
【0060】
靴の組み立て工程中、フルボードラスト技法は、ハーフボードラスト技法およびハーフストローベル技法としても同様に利用できる。
【0061】
要約すれば、提案されたクリート付き履物部品は、複数の種々の糸フィラメントを組み合わせる編み構造を含む。編成された上部構成部品は、多種多様な紐締めの組み合わせを可能にする複数の開口部を含む。アッパーの側部領域および内側領域における開口部は、靴の内部への空気流を可能にする。内部のライニング構成は、通気性および耐水性がある膜に積層されたライニング材の組み合わせである。内層のライニング構成は、縫製によって、編み構造の近位端および遠位端において編成された外部構成部品に取り付けられる。この取り付け方法によって、膜層への損傷が回避される。
【0062】
アッパーは好ましくは、2つの構成部品、すなわち、アッパーの基本部分および(別個に)編成された補強領域から成る。補強縁部は、着用者の脚を受けるための伸縮性開口部を提供するためにポリエステルおよびスパンデックス糸を含む。補強縁部は、要件に応じてスパンデックス糸と撚り合わせた種々の糸を含むことができる。この伸縮性補強縁部は、非伸縮性アッパー部分に連結される。アッパーのこの非伸縮性部分は、2つの層において編成されるさまざまな糸を含む。最上層は単一の糸のタイプから成り得、底層は上部構成部品に強度を与えるために種々の糸タイプを含むことができる。
【符号の説明】
【0063】
1 靴
2 アッパー
3 ソール
4 編み構造
5 開口部の第1の組(側部)
6 開口部の第1の組(内側)
7 ソールの底部
8 開口部の第2の組(側部)
9 開口部の第2の組(内側)
10 半透膜
11 開口部のさらなる組(側部)
12 開口部のさらなる組(内側)
13 締め紐
14 アッパーの底部領域
15 アッパーの最上領域
16 補強構造
17 補強縁部
18 クリート
L 縦方向延伸部
h1 第1の高さレベル
h2 第2の高さレベル
h3 第3の高さレベル
t アッパーの基材の肉厚
T 補強構造の肉厚

図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
図6c
図6d