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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-27
(45)【発行日】2022-05-11
(54)【発明の名称】ミリング方法
(51)【国際特許分類】
   B23Q 15/08 20060101AFI20220428BHJP
   G05B 19/416 20060101ALI20220428BHJP
【FI】
B23Q15/08
G05B19/416 E
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020569133
(86)(22)【出願日】2019-07-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-13
(86)【国際出願番号】 EP2019067869
(87)【国際公開番号】W WO2020011623
(87)【国際公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-09-07
(31)【優先権主張番号】102018116553.6
(32)【優先日】2018-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520483844
【氏名又は名称】エクセロン ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】EXERON GMBH
【住所又は居所原語表記】Beffendorfer Strasse 6,78727 Oberndorf a.N.(DE)
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】特許業務法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー,ヨアヒム
【審査官】木原 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-218706(JP,A)
【文献】特開2019-082851(JP,A)
【文献】特開平11-065631(JP,A)
【文献】特開平11-309645(JP,A)
【文献】国際公開第2017/056025(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 15/08
G05B 19/416
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能なスピンドル上に配置されたミリングツールを用いてワークピースを加工する方法であり、前記スピンドルが加工パスに沿って前記ワークピースに対して移動され、または、前記ワークピースが前記加工パスに沿って前記スピンドルに対して移動され、そして前記スピンドルは、スピンドル軸を中心として回転し、そして前記加工パスに沿った前記スピンドルの回転速度および/または回転の位相ポジションが制御される方法であって、
前記加工パスは、直線的な並列パスを含み、そして前記加工パスに沿った前記スピンドルの位相ポジションは、隣接するパスにおいて実質的に同じであり、
前記位相ポジションは、前記加工パスに沿った前記ワークピースに対する前記スピンドルの回転速度および/または前記スピンドルのフィード速度を変化させることによって制御されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記加工パスに沿った前記回転速度および/または前記位相ポジションは、少なくとも1つの同期点において所定の所望の値に制御されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記加工パスに沿った前記回転速度および/または前記位相ポジションは、複数の同期ポイントでそれぞれ所定の所望の値に制御されることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
同期ポイントに達する前に、トリガポイントで速度および位相ポジションのセットポイント値への前記制御が開始されることを特徴とする、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記位相ポジションは、スピンドル速度を減少または増加させることによって制御されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記位相ポジションは、前記加工パスに沿った前記ワークピースに対する前記スピンドルの前記フィード速度を減少または増加させることによって制御されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
複数の切刃を有するミリングツールの前記位相ポジションは、前記切刃のピッチの倍数だけシフトされることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記スピンドル上に配置されたミリングツールに対してワークピースを変位させる手段と、前記スピンドルの回転速度および回転位相を制御する手段とを備えることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法を実行するための装置。
【請求項9】
前記スピンドルは、ポジション制御された電気モータによって駆動されることを特徴とする、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記スピンドルの角度ポジションを決定する手段を備えることを特徴とする、請求項8または9に記載の装置。
【請求項11】
請求項1~7のいずれか1項に記載の方法を実行するためのコンピュータプログラム。
【請求項12】
請求項1~7のいずれか1項に記載の方法を実行するためのコンピュータプログラムを符号化するためのデータ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転可能なスピンドル上に配置されたミリングツールを用いてワークピースを加工する方法であって、スピンドルが加工パスに沿ってワークピースに対して移動され、または、ワークピースが加工パスに沿ってスピンドルに対して移動され、そしてスピンドルはスピンドル軸を中心に回転され、加工パス(経路)に沿ったスピンドルの回転速度および/または回転の位相ポジションが制御される方法、および該方法を実行する装置およびコンピュータプログラム、並びに該コンピュータプログラムを符号化するためのデータ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
現代の加工ツールでは、数値制御がワークピースに対するツールの位置決めおよび移動を制御するために使用されている。仕様に従ってワークピースを加工するためには、ツールをワークピースに対して所定のパスで移動させる必要がある。従って、これはパス制御とも称される。所望のパスは、数値制御により実行されるパートプログラム内で定義される。数値制御は、パートプログラムの幾何学的命令を、加工ツールの種々のフィード軸の位置制御に対する命令に変換する。ミリングプロセスの間、ツールを駆動するミリングスピンドルは、通常パートプログラムで指定された技術的に一定の速度で操作される(DIN 66025に準拠したS-ワード)。同様に、パス速度は、通常ツールのためのパートプログラム内でプログラムされ(DIN 66025に準拠したF-ワード)、これはTCP(ツールセンターポイント)またはツール上のツール係合ポイントを参照する。
【0003】
一般的なミリングプロセスは、例えば、DE10 2015112577 A1、DE 10 2010 060 220 A1、WO 2017/056025 A1、またはJP 2017-001153 A1により知られている。
【0004】
ミリングによって製造される表面が「トリミング」によって製造される場合、ツールの刃先の相互作用が、ワークピース上の隣接するミリングパスで互いに相対的なそれらの位相ポジションに関して勝手にシフトされる理由がいくつかある。例えば、スピンドルポジションは、パスフィードに正確には結合されていないか(例えば、速度制御スピンドルを用いた場合)、または隣接するミリングパスにおけるパス長積分は、歯のフィードの倍数ではない(フィード軸とスピンドルとの間の所定の位置的結合をオフセットする)。
【0005】
加えて、フィード速度には、ばらつきがあり、例えば、位置決めのための早送りや、または、反転中のフィード速度の低下がある。一定のスピンドル速度では、これはパスパラメータとスピンドルポジションとの間の同期性が失われることを意味する。プログラムされたフィード速度に再び達すると、スピンドルの角度ポジションは事実上ランダムである。
【0006】
その結果、先行技術により製造されたミリングワークピースは、図8に示されるように、通常不規則な直線状の表面構造を示す。図8では、ツールパスが左から右に延びている。隣接するツールパス内のツールエッジの接点がランダムに同期される様子を確認することができる。しかしながら時々シフトが発生し、これにより表面が光学的に不均一な外観(より広いストライプ)となる。射出成形等のためのツールの場合、この構造が最終製品に転写され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的の一つは、隣接するツールパスにおける刃先相互作用の位相調整を標的とされた態様で生成することを可能にする方法を提供することである。特に、目的の一つは表面品質の改善である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この問題は、請求項1に記載の手順によって解決される。この問題は特に、回転可能なスピンドル上に配置されたミリングツールを用いてワークピースを加工する方法であり、スピンドルが加工パスに沿ってワークピースに対して移動され、または、ワークピースが加工パスに沿ってスピンドルに対して移動され、そしてスピンドルが該プロセス中にスピンドル軸を中心に回転し、加工パスに沿ったスピンドルの回転速度および/または回転の位相ポジションが制御され、そして加工パスは直線的な並列パスを含む方法、により解決される。加工パスは、隣り合って配置された直線的な並列パスを含み、そしてスピンドルの位相ポジションは、隣接する複数のパスの加工パスに沿って同一または実質的に同一である。位相ポジションが同じであるため、ミリングプロセスによって表面に導入されるパターンは、隣接する複数のパスにおいて同じであり、その結果、均一に加工された表面の光学印象が生成される。従って、該表面テクスチャは、表面の研磨を省略し得る。
【0009】
位相ポジションは、加工パスに沿ったワークピースに対するスピンドルの回転速度および/またはスピンドルのフィード速度を変化させることによって制御される。
【0010】
本発明の一実施形態において、速度および/または位相ポジションは、加工パスに沿って、所定の所望の値に対する少なくとも1つの同期ポイントにおいて制御される。
【0011】
本発明の実施形態において、速度および/または位相ポジションは、加工パスに沿って、複数の同期ポイントで、それぞれ所定の設定値に制御され得る。
【0012】
本発明の実施形態において、同期ポイントに到する前に、トリガポイントで速度および位相ポジションのセットポイントへの制御が開始され得る。
【0013】
本発明の実施形態において、位相ポジションは、スピンドル速度を減少または増加させることによって制御され得る。従って、フィード速度を変えることなく、スピンドルの位相ポジションをスピンドル速度の調整のみで制御し得る。
【0014】
本発明の実施形態において、位相ポジションは、加工パスに沿ったワークピースに対するスピンドルのフィード速度を減少または増加させることによって制御され得る。この変形では、位相ポジションを同期させるために、フィードへの介入が用いられる。
【0015】
本発明の実施形態において、位相ポジションは、複数の切刃を有するミリングツールの切刃のピッチの倍数だけシフトされ得る。スピンドルの全回転(すなわち0°から360°(または角度モジュロ(modulo)360°))の範囲の角度に焦点を合わせる代わりに、位相は個々の切刃に同期される。例えば、ミリングヘッドが10の切刃を有する場合、36°(360°/10)毎に同期が行われ得る。
【0016】
また、上記課題は、本発明の方法を実行するための装置によって解決され、該装置は、スピンドル上に配置されたミリングツールに対してワークピースを変位させる手段と、スピンドルの回転速度および回転位相を制御する手段とを備える。
【0017】
本発明の実施形態において、スピンドルは、ポジション制御された電気モータによって駆動され得る。本発明の実施形態において、装置は、スピンドルの角度ポジションを決定する手段を含み得る。
【0018】
また、上記課題は、本発明の方法を実行するためのコンピュータプログラム、および、本発明の方法を実行するコンピュータプログラムを符号化するためのデータ構造によっても解決される。
【0019】
本発明がどのように実施されたかの例は、添付の図面を用いて以下でより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、パス計画の結果としての速度リミットプロファイルの概略図である。
図2図2は、下からのリミットプロファイルの近似としての速度リミットプロファイルの概略図である。
図3図3は、補間サイクルにおけるパス速度プロファイルのサンプリングの概略図である。
図4図4は、補間サイクルにおけるパス速度プロファイルおよびスピンドル速度プロファイルのジョイントサンプリングの概略図である。
図5図5は、ブロックリミットに向けたスピンドル位相補償の概略図である。
図6図6は、ブロックリミットに向けてフィードレベルを一時的に下げることによる位相補償の概略図である。
図7図7は、プログラムされたブロック境界への動的に不可能な軌道計画の場合の下流の位相補償の概略図である。
図8図8は、先行技術のミリングプロセスで製造されたミリングワークピースの表面の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
NC(数値制御)プログラムは、単純な幾何学的要素のシーケンスでミリングパスを記述する。サポートポイントまたはパスサポートポイントは、後続の2つの幾何学要素間のそれぞれの境界である。これらの座標は、NCブロックとして行ごとにNCプログラムから取得される。パスパラメータ(パス長積分とも称される)は、パートプログラムに記述されたパス上の1つのポイントを正確に記述し、これは、NCブロックのサポートポイントとサポートポイントとの間に位置し得る。
【0022】
以下では、同期ポイントは、同時に適用されるパス(=パスパラメータ)の任意のポイントであると解釈される。
nSpdlnprog(スピンドル速度はプログラムで指定された値である)、
vbvprog(フィード速度はプログラムで指定された値である)、
φSpdlφprog(スピンドルの角度ポジション(位相)はプログラムで指定した値である)、
aSpdl=0(スピンドル速度は一定である)、
ab=0(スピンドルはx,y,z方向に加速されない)。
【0023】
トリガポイントは、同期ポイントに向けたモーションプロファイルを計画するためのスタート(時間および/またはパスパラメータ)である。
【0024】
CNC制御のNCプログラムで送り速度とスピンドル速度とをプログラミングすることにより、技術的に調整された歯のフィード速度が決定される。このプログラムされた(所望の、または最大の)フィード速度を、関係する軸の動的リミットを維持しながら、その最大値を超えることなく、可能な限り正確に維持することは、すべてのCNCのタスクである。パスの曲率のある領域では、軸フィードドライブに動的な過負荷をかけないように、またはパスの精度に関する所定の要件を満たすため、フィードレベルは下げられなければならない。これは、図1に示すように、いわゆるパス計画におけるいわゆる速度リミットプロファイルの事前計算によって実現される。
【0025】
図1および以下の文章では、各プログラムラインは、DIN/ISOまたはGコードに従って、N100までN10、N20等と表記される。各プログラムラインに対して、先行技術のCNC制御システムは、パス計画のための速度リミット値プロファイルとして最大フィード速度を決定する。速度リミット値プロファイルは、フィード速度、すなわちNCプログラムでプログラムされたフィード速度vlim,progを含み、そしてパス分析の結果としてブロック内のパス速度の動的に調整された最大値vlim,dyn、およびブロック遷移ごとの最大遷移速度vlim,uberを含む。
【0026】
下流のいわゆる速度プロファイルジェネレーターのタスクは、パスパラメータ(または、実装に依存する時間)にわたる速度プロファイルを計算することであり、これは、最大値を超えてはならないため、リミットプロファイルの最小値に下から(すなわちより低い値から)従う。時間の経過に伴う表現が選択された場合、速度プロファイルは2次の多項式セグメントとなり、そのセグメント境界は最も一般的なケースでは、センテンスの境界にも、後に補間器によってサンプリングされる時間のポイントにも正確には位置しない(図2に示されるように)。速度vは、上の図1に示されたvlim,prog、vlim,dynおよびvlim,uberの値のいずれよりも下にある。
【0027】
最後に、このようにして予め計算された速度プロファイルは、いわゆる補完のサイクル時間におけるいわゆるサンプリング補間器によってサンプリングされてIPOサンプリングポイントとして取得され、そして移動に関与する全てのフィード軸のポジションセットポイントが計算される。これはまた、正確なNCブロックリミットが一般に2つのIPOスキャンポイントの間にあるため、すべてのNCサポートポイントが正確なポジションセットポイントとして軸コントローラに出力されるわけではないことを意味する。スキャニングの概略は図3に示されている。時間間隔Taにおいて、ポジション値sbは全ての軸の対応するポジションセンサによって決定され、そしてコントローラに送信される。
【0028】
上記の速度プロファイルの決定、および結果として生じる全ての軸のフィード速度の制御は、先行技術から公知である。
【0029】
ポジション制御型のスピンドルの速度曲線は、スピンドルのパスによって決定され、そして制御される。加えて、スピンドルの角度(位相)は、特定のポイントで所定の値に制御される。グラフィック表現は、パス速度プロファイルの表現に基づいている。
【0030】
ポジション制御されたスピンドルの速度は、図4に示すように、パスパラメータ(または時間)にわたる速度プロットと同じ表現で、パス速度プロファイルとしてうまく表現され得る。周期的なポジションセットポイントは、その後、両方のプロファイルから同時にサンプリングされ得る。
【0031】
このような手順により、補間された各パスポイントは、正確に1つのスピンドル方向(すなわち、ゼロポイントに対するスピンドルの角度;スピンドルの回転の1つの位相)に割り当てられる。特に、一定のスピンドル速度と一定のパスフィードとの領域では、スピンドル速度とパス速度との間に「準ギヤ同期」がある。しかしながら、スピンドルとスピンドルのパスとの間の正確な速度結合の状態では、パス長積分に関連したスピンドル方向の自由度が依然として存在し、これは積分定数として数学的に理解され得る。本発明によれば、この自由度は、ターゲットパラメータ(=プログラムされた)を備えて提供され、そして動的リミットを維持しながら時間最適化された方法で生成される。
【0032】
ターゲットパラメータの供給のために、正確なスピンドル方向がパス上の少なくとも1つのポイントに割り当てられる。本発明によれば、この割り当ては、特にNCプログラムにおいて有利に行われる。このような同期条件のプログラミングは、少なくとも隣接するミリングパス毎に1回(図5)、スピンドルの方向を固定する。所与の同期コマンドを用いて、本発明による手順のタスクは、最初に、動的なリミット値を維持しながら軌道計画が可能かどうかを決定する。軌道計画が可能な場合、同期性を確立するための2つの可能な方法が以下に記述される。さらに、軌道計画が不可能な場合にどのように対処するかについての手順も説明される。
【0033】
以下の説明では、CNC制御システムのシステム特性が与えられる(または最初に生成される)ことを想定している。
【0034】
本発明によれば、パス上の特定の幾何学的ポジションに、この時点で所望のスピンドル角度ポジションが割り当てられる。本発明の実施例において、これはCNCプログラム(おそらく、純粋パス記述に対して冗長である)のパートプログラムに追加のNCブロックベースを追加することによって実現される。DIN/ISO準拠のNCプログラムの構文拡張の(考えられる多くのうちの)一例を次に示す。これは「G119 S77」とともにN40行に挿入され、そこでコメントとして説明される。
【0035】
N10 M03 S1000
N20 G00 X-110 Y0 Z10
N30 G01 Z-1 F2000
N40 G01 X-100 G119 S77;ポジションX-100では、スピンドルは77°である必要がある
N50 G01 X+100
【0036】
構文拡張は、ゼロポイント(位相ポジション)に対するスピンドルの角度ポジションの指定を伴うパラメータSを期待する、G119コマンドを提供する。
【0037】
これにより、一定のフィード速度および一定のスピンドル速度において、パス長積分とミリングスピンドルの角度ポジションとの間に「準ギヤ同期」が生じる。実際には、この要件はおそらく、ミリングスピンドルのポジション制御操作によって最もよく満たされる。
【0038】
時間によるパスの三つの導関数(vmax、amax、jmax)のリミットが、全てのフィード軸およびミリングスピンドルに対して維持される境界条件の下では、パス軸およびミリングスピンドルの各運動状態に対して同期ポイントに到達するための必要な最小時間(従ってミリングパス上の最小パスでもある)が存在する。逆に、これは、いかなる短い時間または距離においても望ましい同期を物理的に確立することが不可能であることを意味する。従って、記述される手順には、そのような場合に何が起こるかも説明されなければならない。
【0039】
線形フィード軸とは対照的に、ミリングスピンドルの運動開始以降の累積ポジションは、本タスクにとって関心のないものである。0°...360°のモジュロ範囲内の角度ポジションのみが対象となる。これは、同期目標を達成するためにミリングスピンドルに要求される最大位相補償が、以下であることを意味する。
【0040】
【数1】
【0041】
モジュールエリアのセットポイントが指定されたスピンドルのポジション制御動作の更なる特別な特長としては、各セットポイントに2つの方法(前回転または後回転)で到達することができる。回転方向の情報が分かっている場合、ポジション仕様は360°/TAまで動作する。換言すれば、1msの補間サイクルで、最大60,000rpmのスピンドル速度である。
【0042】
軌道計画が可能であれば、2つの方法が用いられ得る。
【0043】
最初のプロセスでは、スピンドルが位相補償を行う。同期ポイントの定義は、同期ポイントが、一定のフィード速度が達成されるパス(パスパラメータ)上のそのような幾何学的位置にのみ配置され得ることを示している。上述した合体問題(nestling problem)の定義によれば、この同期ポイントは、パス上のブレーキ距離または加速距離が、vb=vprogに加えて、ブロックエントリの条件ab=0に準拠するのに十分である場合、そしてこのブレーキ距離または加速距離またはその持続時間がスピンドルの必要な位相補償を確立するのに十分である場合に、ブロック境界に正確に位置することができる。
【0044】
このような場合は、次のダイアグラムとなる:
....... N10 M03 S1000
:
N30 G00 X5 Y0 Z-5 F2000
N40 G00 X10 Y10 Z-1
N50 G00 X15 Y5
N60 G01 X85
N70 G01 X100 Y90 Z-2 F1500 G119 S77;スピンドルを77に同期
N80 G01 X150
【0045】
個々のプログラム行は、以前と同じようにN10、N20等でマークされる。深さポジションZ=-2でのX=100、Y=90、フィード速度2000のパスに加えて、プログラム行N70は、スピンドルがそこで77°の角度をとるべきであるという情報を含む。
【0046】
図5で作成された領域は、スピンドル位置の必要な位相補正に対応する速度-時間積分である。速度プロファイルの各セグメント境界は丸で囲まれている。この場合、移動は、フィード速度の計画に影響を与えることなく、そしてパートプログラムの総加工時間に悪影響を与えることなく、時間最適化される。同期処理を計算するには、以下の手順を実行する。スピンドルの方向条件を持つ(新しい)NCブロックが先読みバッファで検出された後、「通常の」新しいNCブロックが入力されるのと同様に、パス速度プロファイルに加えてスピンドル速度プロファイルが再計算される。
【0047】
先読みプロセスは、補間器内の速度プロファイル生成と共にリアルタイムで実行されるので、最終サイクルにおけるスピンドルへのポジションセットポイント出力は、正確なパスパラメータ、したがって同期ポイントに到達するまでの所要時間(パス移動および時間)と同様に、既知である。これにより、加工がスピンドル速度の補正を行わずに続行される場合に、同期ポイントにおけるスピンドルの角度ポジションが計算され得る。位相補償の必要量は、そのため、モジュロ円内のこれらの2つの角度ポジションの差である。マルチブレードツールの場合、所要の位相補償は、もちろん360°/角度位置まで短縮され得る。スピンドルの動的リミットを知ることにより、スピンドル速度プロファイルが計算され得、これにより正確にブロックリミットで同期ポイントを確立する。もしスピンドルの位相補正中にパスフィードが(本例のように)一定でない場合、スピンドルの同期プロセスが正確にブロックリミットで終了することが重要である。
【0048】
本発明に係る方法の第2の実施例によれば、位相補償は限定された時間だけフィードレベルを下げることにより達成される(図6参照)。
【0049】
速度プロファイルのフィードレベルを時間制限で低減する方法は、高速スピンドルに対して特に効率的である。スピンドル速度を変化させることなく、スピンドルがミリ秒内で実質的に任意の角度ポジションをとることができるので、フィード速度低下の必要な量と所要時間は短い。同期プロセスの計算は、以下の手順に従う。必要な位相補正量が上記の手順により最初に決定される。同期ポイントまでの必要な位相補正の計算の後、運動セクションが、スピンドルが必要な位相補正を通過するために必要な時間と全く同じ追加時間(当初の計画と比較して)を必要とするように、修正された速度プロファイルの部分が同期点に向かって計算される。
【0050】
軌道を見つけるのに十分な時間や距離がなければ、軌道計画は通常不可能である。本発明による手順は、プログラムされた同期ポイントから特定の距離...d(下流)である、下流の同期ポイントを決定するためのこのようなケースを提供する。選択された距離...dは、SおよびFワードから分かる計画フィード速度の整数倍である。Sワードはスピンドル速度を制御し、Fワードはフィード速度を制御する。従って、ツールの刃先の係合の同期性は、NCプログラムでプログラムされた幾何学的位置に対して、遅れて達成されるが、しかしながら依然として定義されている。十分に満たされた先読みバッファと、互いにあまり密接に追従しない同期条件を持つNCブロックとでは、このケースはおそらく実際にはめったに起こらないか、まったく起こらない。それを「誘発」する最も簡単な方法は、互いに非常に密接に追従する同期条件を持つNCブロックを使用することである。次のイラストレーションはそのような場合の例を示している。プログラムされたフィードレベルでは、動的リミット値を維持したまま、Xが0.1mmの距離内でスピンドルの方向を64°変更することはできない(図7参照)。
【0051】
....N10 M03 S1000
:
N30 G00 X5 Y0 Z-5 F2000
N40 G00 X10 Y10 Z-1
N50 G00 X15 Y5
N60 G01 X85
N70 G01 X100 Y90 Z-2 F1500 G119 S77; スピンドルを77に同期
N80 G01 X100,1 Y90 Z-2 G119 S13; スピンドルを13に同期
N90 G01 X150
【符号の説明】
【0052】
数式記号:
s 位置,ポジション,パス
v スピード
a 加速
j ジャーク
φ 角度ポジション
n スピード
TA 補間サイクル時間(IPOクロック)
インデックス:
b パス,NCパスを参照する値
Spdl スピンドル,パスを参照する値
prog (NCプログラム内)プログラム値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8