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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-27
(45)【発行日】2022-05-11
(54)【発明の名称】エネルギー変換素子
(51)【国際特許分類】
   H02N 10/00 20060101AFI20220428BHJP
【FI】
H02N10/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021032302
(22)【出願日】2021-03-02
【審査請求日】2022-01-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】719001749
【氏名又は名称】香取 健二
(72)【発明者】
【氏名】香取 健二
【審査官】小林 紀和
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-155429(JP,A)
【文献】特開2014-138549(JP,A)
【文献】特開昭60-098880(JP,A)
【文献】特開平03-230776(JP,A)
【文献】特開2020-174516(JP,A)
【文献】特開2005-086904(JP,A)
【文献】特開2020-169806(JP,A)
【文献】特開2002-204588(JP,A)
【文献】米国特許第04730137(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0253181(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0263599(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0082060(US,A1)
【文献】特開平9-268968(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 10/00
H02N 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転が可能でありかつ円盤状あるいは円筒状あるいは円錐状の形態を有し、温度により磁化が変化する感温磁性体と、該感温磁性体に磁場を印加するための永久磁石を含む磁場印加部とを有し、素子外部からの温度差入力により感温磁性体を回転させ、かつ該感温磁性体と該磁場印加部との間に液体または微粒子が分散された液体を充填することで、回転する感温磁性体と磁場印加部を継続的に熱伝導させることを特徴とするエネルギー変換素子において、該感温磁性体を加熱させる固定端子と該感温磁性体を冷却させる固定端子とで該感温磁性体に同時に同方向の回転トルクを発生させることを特徴とする温度差エネルギーを運動エネルギーへ変換するエネルギー変換素子。
【請求項2】
回転可能な円盤状あるいは円筒状あるいは円錐状の感温磁性体と、該感温磁性体との間で磁気による反力を発生する材料を含む固定端子とを有し、かつ該感温磁性体を冷却する際に生じる感温磁性体と固定端子の間の反力の増加を駆動力の一部あるいは全てとし、素子外部からの熱入力により感温磁性体を回転させることを特徴とするエネルギー変換素子。
【請求項3】
回転可能な円盤状あるいは円筒状あるいは円錐状の帯磁した永久磁石であり、かつ運転中に消磁状態にならない永久磁石である感温磁性体と、該感温磁性体との間で磁気による引力を発生する強磁性体を含む固定端子を有し、かつ該感温磁性体と、該感温磁性体との間で磁気による反力を発生する材料を含む固定端子とを有し、素子外部からの熱入力によって該引力の温度による変化に伴う回転トルクと、同時に該反力の温度による変化に伴う該引力の場合と同方向の回転トルクとにより該感温磁性体を回転させることを特徴とする〈請求項1又は請求書2〉記載のエネルギー変換素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、温度差エネルギーから運動エネルギーへ変換するエネルギー変換素子構造及び構成材料に関する。
【背景技術】
【0002】
温度差を運動エネルギーへ変換する手法について、数百℃以上の温度差領域についてはガスタービンが主に用いられている。より低い温度領域で温度差を運動エネルギーへ変換する手法については、低沸点媒体を沸騰させこれをタービンで運動エネルギーに変換するという、複雑な構造が必要となる(特開2013-036456)。
【0003】
また磁性流体を用いた冷却システムが研究されている(特開昭64-12852,特開2018-046036,非特許文献1)。ここでは装置内部の発熱により生じた熱を発熱により生じる磁性流体の流動により冷却する手法である。ポンプレスの冷却装置として考案され、低い温度差でも磁性流体の流動化が生じるが、運動エネルギーとして取り出すことは考慮されていない。〈JP4904528B2〉においては流体の運動からドラムを回転させるとの記載があるが、ここではマイクロ波又はミリ波を照射する必要があり、複雑な構成が必要となる。
【0004】
本発明者は特願2020-044836において、温度差エネルギーから運動エネルギーへ変換する素子を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-036456
【文献】特開昭64-12852
【文献】特開2018-046036
【文献】JP4904528B2
【文献】特願2020-044836
【非特許文献】
【0006】
【文献】Iwamoto, Y., Yamaguchi, H., and Niu, X.-D., “Magnetically-Driven Heat Transport Device using a Binary Temperature-Sensitive Magnetic Fluid”, Journal of Magnetism and Magnetic Materials, Vol. 323 (2011), pp. 1378-1383.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
工場や家庭で排出される100℃程度以下の比較的低温度差領域においては、温度差エネルギーを運動エネルギーへ直接変換できる単純な手法が一般的に提供されていない。前述の様に低沸点溶媒を沸騰させ、この蒸気でタービンを回転させる手法があるが装置が複雑かつ大規模になる。また温度差で発電するゼーベック素子を用いて発電し、この電気によりモーターを回転させる手法もあるが、前記2種類の素子が必要となる。
【0008】
本発明は温度差エネルギーから運動エネルギーへ変換する手法において、溶媒の蒸発やタービンの駆動という複雑な手法や2種類以上の素子の組み合わせを行うのではなく、マイクロ波、ミリ波も用いることなく、単純な構造の素子で騒音振動を伴うことなく直接的に運動エネルギーを出力させることを目的とする。
【0009】
本発明者が開発した手法(特願2020-044836)は温度差エネルギーから運動エネルギーへ変換する手法において、複雑な動作を伴うことなく直接にエネルギー変換を行い、素子に温度差エネルギーを入力することで騒音振動を伴うことなく直接的に運動エネルギーを出力させる。この手法をより発展させることが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の課題を解決するために、第1の開示は、回転可能な円盤状あるいは円筒状あるいは円錐状の帯磁した永久磁石である感温磁性体と、前記感温磁性体との間で磁気による引力を発生する強磁性体を含む固定端子を有し、素子外部からの熱入力により帯磁した永久磁石である感温磁性体を回転させることを特徴とするエネルギー変換素子の構造である。
【0011】
第2の開示は、回転可能な円盤状あるいは円筒状あるいは円錐状の感温磁性体と、前記感温磁性体との間で磁気による反力を発生する材料を含む固定端子を有し、素子外部からの熱入力により感温磁性体を回転させることを特徴とするエネルギー変換素子の構造である。
【0012】
第3の開示は、回転可能な円盤状あるいは円筒状あるいは円錐状の感温磁性体と、前記感温磁性体との間で磁気による引力を発生する強磁性体を含む固定端子を有し、且つ前記感温磁性体との間で磁気による反力を発生する材料を含む固定端子を有し、素子外部からの熱入力により感温磁性体を回転させることを特徴とする第1,2の開示のエネルギー変換素子の構造である。
【0013】
第4の開示は感温磁性体と、固定端子との間に液体または微粒子が分散された液体を充填することで、回転する感温磁性体と固定端子を継続的に熱伝導させる第1-3の開示のエネルギー変換素子の構造である。
【0014】
第5の開示は感温磁性体と,前記感温磁性体との間で磁気による引力を発生する固定端子との間に充填する液体または微粒子が分散された液体は磁性流体であることを特徴とする第1,3,4の開示のエネルギー変換素子の構造である。
【0015】
第6の開示は温度差入力端子を同一感温磁性体上に複数対設置することを特徴とする第1-5の開示のエネルギー変換素子の構造である。
【0016】
第7の開示は第1-6に記載のエネルギー変換素子を同一回転軸に複数設置し回転トルクを増強させることを特徴とするエネルギー変換素子の接続手法である。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、騒音振動を伴うことなく、また複数の種類の素子を用いることもなく単純に温度差エネルギーを運動エネルギーへ変換することができる。なお、ここに記載された効果は必ずしも限定されるものではなく、本開示中に記載されたいずれかの効果またはそれらとは異質な効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本開示の第3の回転する円盤状永久磁石である感温磁性体を用いた場合の実施形態に係るエネルギー変換素子の構成を示す断面図である。
図2】本開示の第3の回転する円盤状永久磁石である感温磁性体を用いた場合の実施形態に係るエネルギー変換素子の構成を示す断熱性間隙充填剤及び潤滑油を除いた上面図である。
図3】本開示の第3の回転する円盤状永久磁石である感温磁性体を用いた場合の実施形態に係るエネルギー変換素子の構成を示す上面図である。
図4】本開示の第7の回転する円盤状永久磁石である感温磁性体を用いた場合の積層素子の実施形態に係るエネルギー変換素子の構成を示す断面図である。
図5】本開示の第6の温度差入力端子を同一感温磁性体上に複数対設置した例の断熱性間隙充填剤及び潤滑油を除いた上面図である。
図6】本開示の第6の温度差入力端子を同一感温磁性体上に複数対設置した例の上面図である。
図7】本開示の第6の温度差入力端子を同一感温磁性体上に複数ペア設置した場合において、高温入力、低温入力をそれぞれ上下に分離した例の断面図である。
図8】本開示の第7の回転する円盤状永久磁石である感温磁性体を用いた場合の直列接続とする積層素子の実施形態に係るエネルギー変換素子の構成を示す断面図である。
図9】本開示の第1の回転する円盤状永久磁石である感温磁性体を用いた場合の実施形態に係るエネルギー変換素子の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
ここで記載している低温、高温との表現であるが、相対的なものであり、例えば低温入力が40℃、高温入力が100℃である場合など、高温入力に比較して低温であるとの要件である。高温入力に比較して低温であれば、室温よりも高温であっても構わない。

本開示の実施形態について以下の順序で説明する。
1 第1-6の実施形態
2 第7の実施形態
【0020】
<1 第1-6の実施形態>
「感温磁性体」
従来研究されている感温磁性体を用いた冷却システム(特開昭64-12852,特開2018-046036,非特許文献1)では感温磁性体として磁性流体を用いる。
本発明人が発明した(特願2020-044836)において、従来の液体循環型では無く、回転軸により回転する固体の円盤状あるいは円筒状あるいは円錐状の感温磁性体を用いる。該固体感温磁性体を挟み込むようにして、該感温磁性体を回転させる強力な磁場を有する高温入力端子と、磁場を印加しないかあるいは高温入力側よりも弱い磁場を有する低温入力端子を設置する。ここでは感温磁性体に外部から磁場を印加することにより感温磁性体と固定端子の間に引力を発生させ、この引力の温度による増減から感温磁性体に回転トルクを発生させるものである。感温磁性体は温度により磁化が変化する磁性体であり、Mn-Zn Ferrite,Sr-Ferrite,Ni-Fe系合金等がある。
本発明では、感温磁性体に帯磁した永久磁石を用いる。これにより、温度差入力端子である固定端子には永久磁石を用いないでも感温磁性体と固定端子との間に磁気的な引力を発生させ、これの温度依存性により回転トルクを発生させることができる。また固定端に永久磁石を用いることで、磁気的な反力も発生させることができる。反力の温度依存性により、反力を用いても感温磁性体に回転トルクを発生させることができる。高温入力端子と低温入力端子にそれぞれ引力と反力の温度依存により共にトルクを発生させることができる。
永久磁石である感温磁性体にはSr-Ferrite系を含む六方晶フェライト系、Nd-Fe-B系等マグネットを挙げることができる。またこれらの材料に添加物等を導入するか作製条件を調整することにより、目的の温度域での磁化の温度依存性を調整することができる。温度の入力範囲は永久磁石である感温磁性体のTc以下であり、低温状態に戻した場合にHcが変化しない範囲での高温入力とする必要がある。
感温磁性体の形状としては前記円盤状のほかに円筒状、円錐状としても良い。
【0021】
「高温入力端子」
回転軸に取り付けられ、回転する円盤状の感温磁性体と磁気的な引力を生じる構成の高温入力端子を設置する。感温磁性体が帯磁した永久磁石である強磁性体の場合には、高温入力端子には該感温磁性体と引力を生じる強磁性体を用いる。高温入力端子の強磁性体は該感温磁性体と引力を生じる永久磁石であっても良い。帯磁した永久磁石である感温磁性体と高温入力端子との間に液体または微粒子が分散された液体を導入する。前記液体または微粒子が分散された液体には磁性流体を使用することができる。感温磁性体が回転しても磁性流体は磁場に引き寄せられ高温入力端子に留まる。磁性流体を通して、外部からの高温熱量は回転する円盤状の感温磁性体に熱伝導される。ここで高温入力端子を通して感温磁性体が加熱され、感温磁性体の磁化が小さくなる。磁場印加部中央付近と比較して磁場印加部入口付近の感温磁性体の磁化量が加熱されていない分大きくなっており、このため感温磁性体に回転トルクが生じる。
高温入力端子の磁性体は感温磁性体と磁気的な引力を発生する材料を設置し、感温磁性体の磁化の温度依存性により回転トルクを生じさせる。但し、後述の低温入力端子で感温磁性体に回転トルクを与えられる場合には、高温入力端子で回転トルクを与えなくても感温磁性を回転させることはできる。
【0022】
「低温入力端子」
高温入力端子から出た感温磁性体を冷却する必要がある。高温状態の感温磁性体を外部の低温状態により冷却するため、低温入力端子を設置する。外部からの低温状態を感温磁性体に伝達し、感温磁性体を冷却する。前記高温入力端子で感温磁性体に回転トルクを与える場合には、低温入力端子では回転トルクを与えなくても感温磁性体は回転する。
感温磁性体に帯磁した永久磁石を用いる場合に、低温入力端子に感温磁性体と反力を生じさせる永久磁石を設置することができる。この場合、低温入力端子の入口での感温磁性体の磁化と低温入力端子の出口との感温磁性体の磁化の大きさを比較した場合、低温入力端子で感温磁性体が冷却されるため、出口での感温磁性体の磁化がより増大しており、結果的に出口での反力が入口での反力よりも大となる。このため回転トルクが生じる。
感温磁性体に帯磁した永久磁石を用いる場合には高温入力端子、低温入力端子共に回転トルクを生じさせることが可能になる。
【0023】
磁気的な反力を生じるものは永久磁石の場合には帯磁した永久磁石である感温磁性体と同極の場合であるが、反磁性体を用いることもできる。
【0024】
感温磁性体と低温入力端子の間の熱伝導には潤滑油等の液体を用いることができる。高温入力端子では前記の様に熱伝達に磁性流体を用いてその場に留めておくことができるため、高温状態の液体が拡散することは無い。さらに高温入力端子と低温入力端子間の熱拡散を防止するため、高温入力端子と低温入力端子との間にフッ素系樹脂等の低熱伝導材を導入しても良い(図1,3,4,6-9)。
【0025】
「配置」
高温入力端子で加熱された感温磁性体は低温入力端子で冷却される。回転が始まれば高温入力端子でのトルク発生により連続回転が生じるが、回転を始める為には初期に回転方向を決定するための非対称性を導入する必要がある。図2に示すように、高温入力端子と低温入力端子とは円盤状感温磁性体に対して180°の位置には設けず、偏って設置する。円盤状感温磁性体が静止状態の際に偏った配置で高温、低温を入力した場合、高温入力端子端部、低温入力端子端部での感温磁性体に温度差が生じ、この温度差により初期回転トルクを生じさせることができる。
回転する感温磁性体において引力あるいは反力を生じる部分は回転トルクを生み出す原動力になるが、それ以外の部分においては熱拡散によりトルク減少の原因となる。ここで、引力あるいは反力を生じない部分の感温磁性体を断熱材に置き換えることにより回転トルクに関与しない熱拡散を減少させることができる(図2)。
温度差入力端子を同一感温磁性体上に複数ペア設置することができる(図5,6)。ここでも低温入力端子と高温入力端子は等間隔では無く、高温入力端子と隣接する2つの低温入力端子は初期回転トルクを得るため、間隔を異なる様に配置する必要がある。複数の温度差入力端子を同一感温磁性体上に設置した場合に各温度差入力への熱接続が煩雑になるが、例えば図7に示したように高温側は上面に、低温側は下面にと熱的に接続することで単純な熱入力とすることもできる。
低温入力端子、および高温入力端子は角形の形状を示したが、それぞれ円盤状磁気作業物質の形状に沿った扇形、円弧状にしても良い。
【0026】
<2 第7の実施形態>
「積層」
前記エネルギー変換素子は非常に単純な形態を採る。ここで素子を同一軸に接続することでトルクを増大することができる(図4)。
同一軸に接続された別個体の円盤状感温磁性体に対してそれぞれ高温入力端子と低温入力端子を設置する。別個体の素子の低温入力端子と低温入力端子、高温入力端子と高温入力端子とをそれぞれ熱伝導性良く接続することによりトルクを倍増できる。ここでは2段接続の例を示したが、所望のトルクを得るために必要に応じて同様に積層数を増すことができる。
前記積層は並列接続の例を示したが、複数の素子を直列に接続することもできる(図8)。同一軸に接続された別個体の感温磁性体に対してそれぞれ高温入力端子と低温入力端子を設置する。別個体の素子の低温入力端子と高温入力端子とを熱伝導性良く接続することにより前記低温入力端子と高温入力端子は同じ温度となる。直列接続とすることで、大きな温度差入力に対応することができる。この場合、積層された各素子に用いる感温磁性体は同一である必要は無い。最適動作温度の異なる感温磁性体を各素子の動作温度に従い配置し、トルクの拡大を図ることができる。
【実施例
【0027】
以下、実施例により本開示を具体的に説明するが、本開示はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0028】
本実施例について以下の順序で説明する。
i エネルギー変換素子単体
ii エネルギー変換素子積層集合体
【0029】
〈i エネルギー変換素子単体での実施例〉
〈実施例1〉
径5mm、長さ50mmのステンレス製軸を用意した。前記軸中央に穴あき円盤状厚さ1.5mm、直径40mmの感温磁性体Sr Ferrite(ストロンチウムフェライト)を設置し、軸に固定した。円盤状感温磁性体Sr Ferrite直径40mmの中央部分、直径20mmの部分をSr Ferriteからポリカーボネートに置き換えている(図2)。Sr Ferrite永久磁石はあらかじめ、円盤垂直方向に帯磁させた。上面にN極、下面側にS極となるように帯磁した。軸回転により円盤状感温磁性体も回転する(図1)。
【0030】
高温入力端子として、感温磁性体に磁場を印加するため、円盤状感温磁性体を挟み込むようにヨーク付きの永久磁石を設置した。高温入力端子の永久磁石にはSr-Ferrite系マグネットを用いて感温磁性体ギャップ間隔は4.0mmとした。高温入力端子による磁場と永久磁石である感温磁性体の間には引力が働く様に、高温入力端子の永久磁石を配置した。永久磁石である感温磁性体と永久磁石の間にマグネタイト磁性紛からなる磁性流体を充填し、高温入力端子とした(図1)。
【0031】
高温入力端子の円周反対側から20°ずれた位置に低温入力端子を設置するため、円盤状感温磁性体を挟み込むようにヨーク付きの永久磁石を設置した。永久磁石にはSr-Ferrite系マグネットを用いてギャップ間隔は2.0mmとした。低温入力端子による磁場と永久磁石である感温磁性体の間には反力が働く様に、低温入力端子の永久磁石を配置した。感温磁性体と低温入力端子の間には潤滑油を導入し、熱伝導を確保した。
高温入力端子と低温入力端子の間にはフッ素系低熱伝導樹脂からなる間隙充填材を導入し熱伝導を低減させた。
【0032】
室温及び素子構成材料はすべて初期は23.0℃とした。高温入力端子が33.0℃、低温入力端子が13.0℃となるようにそれぞれ加熱、冷却したところ、円盤状の感温磁性体は8rpmで回転し温度差エネルギーが直接に運動エネルギーへ変換できることが判明した。後記〈比較例1〉に比べ回転数が速くなり、引力に加え反力も利用できる長所が明らかになった。
【0033】
〈比較例1〉
円盤状感温磁性体を同サイズのMn-Zn Ferrite(マンガンー亜鉛フェライト)とした。Mn-Zn Ferriteは感温磁性体であるが、ソフトフェライトなので、帯磁させること、反力を生じさせることは出来ない。高温入力端子にNdFeB系、低温入力端子にSr-Ferriteを用いてそれぞれ磁性流体をもちいて固定端子と感温磁性体の熱伝導を確保した。高温入力端子が33.0℃、低温入力端子が13.0℃となるようにそれぞれ加熱、冷却したところ、円盤状の感温磁性体は7.5rpmで回転した。
【0034】
〈実施例2〉
径5mm、長さ50mmのステンレス製軸を用意した。前記軸中央に穴あき円盤状厚さ1.5mm、直径40mmの感温磁性体Sr Ferrite(ストロンチウムフェライト)を設置し、軸に固定した。円盤状感温磁性体Sr Ferrite直径40mmの中央部分、直径20mmの部分をSr Ferriteからポリカーボネートに置き換えている。Sr Ferrite永久磁石はあらかじめ、円盤垂直方向に帯磁させた。上面にN極、下面側にS極となるように帯磁した。軸回転により円盤状感温磁性体も回転する。
高温入力端子として、永久磁石を用いず、鉄系ヨーク材料のみを設置した。ギャップ間隔は4.0mmとした。高温入力端子と永久磁石である感温磁性体の間には引力が働く。永久磁石である感温磁性体と鉄系ヨーク材料の間にマグネタイト磁性紛からなる磁性流体を充填し、高温入力端子とした。
高温入力端子の円周反対側から20°ずれた位置に低温入力端子を設置するため、円盤状感温磁性体を挟み込むように伝熱性材料(SiC:炭化ケイ素)を設置した。低温入力端子と感温磁性体との間には大きな磁気的な力は働かない。感温磁性体と低温入力端子の間には潤滑油を導入し、熱伝導を確保した。
高温入力端子と低温入力端子の間にはフッ素系低熱伝導樹脂からなる間隙充填材を導入し熱伝導を低減させた(図9)。
室温及び素子構成材料はすべて初期は23.0℃とした。高温入力端子が33.0℃、低温入力端子が13.0℃となるようにそれぞれ加熱、冷却したところ、円盤状の感温磁性体は6rpmで回転し温度差エネルギーが直接に運動エネルギーへ変換できることが判明した。感温磁性体に帯磁した永久磁石を用いた場合には高温入力端子、低温入力端子共に永久磁石を用いなくてもエネルギー変換素子として動作することが判明した。
【0035】
〈実施例3〉
これまで1枚の円盤状感温磁性体に対して1対の高温入力端子および低温入力端子の例を示したが、1枚の円盤状感温磁性体に対して複数対の高温入力端子および低温入力端子を設置することも可能である(図5)。この際、高温入力端子および低温入力端子の間隔は均一にするのではなく、初期回転が生じるように不均一にする必要がある。〈実施例〉と同様の回転円盤を用いて4対の温度差入力端子を設置した(図5)。各入力端子における磁場の大きさは〈実施例1〉と同様とした。室温及び素子構成材料はすべて初期は23.0℃とした。高温入力端子が33.0℃、低温入力端子が13.0℃となるようにそれぞれ加熱、冷却したところ、円盤状の感温磁性体回転数は12rpmとなった。
【0036】
〈ii エネルギー変換素子積層集合体〉
図1に示したエネルギー変換素子の同軸上に別個体のエネルギー変換素子を設置した。この際一方のエネルギー変換素子の高温入力端子がもう一方の高温入力端子と熱伝導性良く接続するように伝熱性材料を介して、低温入力端子側でも同様に密着固定するように設置しエネルギー変換素子積層集合体とした(図4)。
高温入力端子が33.0℃、低温入力端子が13.0℃となるようにそれぞれ加熱、冷却したところ、円盤状の感温磁性体は10rpmで回転し温度差エネルギーが直接に運動エネルギーへ変換できることが判明した。
同様にして積層構造を3段、4段とした場合それぞれ回転可能であることを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0037】
温度差エネルギーを直接的に運動エネルギーへ変換できるため、さらに気体の蒸発等の複雑な工程、他の機能性素子等複雑な構造が不要であるために高信頼性、低騒音、低振動でエネルギー変換システムが構築可能である。小温度差においても駆動可能であることから、工場、家庭内、輸送機器での排熱を利用して運動エネルギーへ変換することができる。すなわち排熱のための冷却ファン駆動及び各種ポンプ駆動、また体温により動き出さす各種感知器、玩具等にも応用することができる。
また発電機を接続して温度差による発電も行うことができる。ペルチェ素子の場合にはTe,Sb,Se等有害な元素が含まれることが一般的であるが、本発明の場合には有毒な元素を用いることなく温度差発電装置を構築することが可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 円盤状感温磁性体
2 磁性流体
3 潤滑油
4 鉄系磁気ヨーク材料
5 Srフェライト系永久磁石
6 断熱性間隙充填材
7 高温入力端子
8 低温入力端子
9 回転軸
10 伝熱性材料
11 積層状態高温入力端子
12 積層状態低温入力端子
13 断熱材
14 高温入力端子接合体
15 低温入力端子接合体
【要約】
【課題】騒音、振動が発生しない単純な構造を有する、温度差エネルギーから運動エネルギーへのエネルギー変換素子を提供する。
【解決手段】回転可能な円盤状の永久磁石である感温磁性体1と、これに磁場印加する部分5とを磁性流体2を用いて熱伝導し、永久磁石部分を通して外部からの熱を感温磁性体に誘導する。加熱された感温磁性体部分は磁化が小さくなり、加熱される前の感温磁性体がより磁場に引き付けられることにより回転トルクが生じる。感温磁性体1に永久磁石を用いることにより、反力も利用できる。低温入力端子8を通して感温磁性体1を冷却する。低温入力側では感温磁性体1との反力の温度依存から高温入力側7と同方向の回転トルクが生じる。簡単な構造により、低振動、低騒音、高信頼性のエネルギー変換素子を得られる。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9