(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-27
(45)【発行日】2022-05-11
(54)【発明の名称】フィンチューブ製造方法及びフィンチューブ製造装置
(51)【国際特許分類】
B21C 37/26 20060101AFI20220428BHJP
B21D 53/06 20060101ALI20220428BHJP
B21D 13/04 20060101ALI20220428BHJP
B23K 13/04 20060101ALI20220428BHJP
F28F 1/36 20060101ALI20220428BHJP
【FI】
B21C37/26
B21D53/06 H
B21D13/04 B
B23K13/04 Z
F28F1/36 D
(21)【出願番号】P 2021112834
(22)【出願日】2021-07-07
【審査請求日】2021-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】390038807
【氏名又は名称】サンキン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100109058
【氏名又は名称】村松 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】小▲高▼ 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】矢持 淳一
(72)【発明者】
【氏名】西村 友伸
(72)【発明者】
【氏名】野田 達起
(72)【発明者】
【氏名】向 裕二
(72)【発明者】
【氏名】津野 竜慈
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 優貴
(72)【発明者】
【氏名】成田 勝司
【審査官】中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開昭51-001358(JP,A)
【文献】特開昭58-009716(JP,A)
【文献】特開昭58-013410(JP,A)
【文献】特開平04-135014(JP,A)
【文献】特開平08-332519(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21C 37/22
B21C 37/26
B21D 53/06
F28F 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属管とその金属管に対して螺旋状に巻き付けられたフィンとを有するフィンチューブを製造するフィンチューブ製造方法であって、
ある方向に延びる金属帯であってその延び方向に沿って連続的に波打つ波形をなすものをその金属帯の幅方向の一方の端縁である内側縁が前記金属管の外周面に接近して所定の溶接位置でその金属管の外周面に接触するように当該金属帯を案内する金属帯案内工程と、
前記溶接位置において前記金属管の外周面に接触した前記金属帯の前記内側縁をその金属管の外周面に高周波電流溶接する溶接工程と、
前記金属管をその軸回りに回転させつつその軸方向に移動させることにより、前記溶接位置で前記金属管の外周面に溶接された前記金属帯を前記金属管に螺旋状に巻き付けて前記フィンに成形するフィン成形工程と、を備え、
前記金属帯案内工程では、前記波形の金属帯をその波高方向の両側から挟み込んで当該金属帯の前記波高方向への変位を制限するとともに当該金属帯の幅方向において前記内側縁と反対側の端縁である外側縁に接触して前記内側縁を前記溶接位置における前記金属管の外周面に接近させるように当該金属帯を押圧しつつ前記金属管への前記金属帯の巻き付けに伴う前記金属帯の延び方向に沿った移動に追随して回転する導電性素材からなるスクイズロールにより、前記金属帯を案内し、
前記溶接工程では、前記金属管の外周面に接触させた金属管接触電極と前記スクイズロールに接触させたスクイズロール接触電極との間で前記金属管と前記金属帯と前記スクイズロールとを通じて前記溶接位置を経由する高周波電流を流すことにより、前記金属帯の前記内側縁を前記溶接位置で前記金属管の外周面に高周波電流溶接する、フィンチューブ製造方法。
【請求項2】
前記溶接工程では、前記金属帯の波形の波高方向に沿う方向から見て前記金属帯と重なる位置で前記スクイズロール接触電極を前記スクイズロールに接触させた状態において前記金属管接触電極と前記スクイズロール接触電極との間で前記金属管と前記金属帯と前記スクイズロールとを通じて高周波電流を流す、請求項1に記載のフィンチューブ製造方法。
【請求項3】
前記溶接工程では、前記金属管への前記金属帯の巻き付けに伴う前記金属帯の移動方向における前記溶接位置の手前の位置で前記スクイズロール接触電極を前記スクイズロールに接触させた状態において前記金属管接触電極と前記スクイズロール接触電極との間で前記金属管と前記金属帯と前記スクイズロールとを通じて高周波電流を流す、請求項1又は2に記載のフィンチューブ製造方法。
【請求項4】
前記金属帯案内工程に先立って平坦な前記金属帯を前記波形に加工する波打加工工程をさらに備える、請求項1~3のいずれか1項に記載のフィンチューブ製造方法。
【請求項5】
前記波形の金属帯を平坦になるまで伸ばした場合の当該金属帯の伸長率は、前記フィン成形工程における前記金属管への当該金属帯の巻き付けによって当該金属帯の前記外側縁に生じる引張変形による当該外側縁の伸長率以下になるように設定されている、請求項1~4のいずれか1項に記載のフィンチューブ製造方法。
【請求項6】
前記波形の金属帯を平坦になるまで伸ばした場合の当該金属帯の伸長率は、前記フィン成形工程における前記金属管への当該金属帯の巻き付けによって当該金属帯の前記外側縁に生じる引張変形による当該外側縁の伸長率から33.3%を減じて得られる値以上になるように設定されている、請求項1~5のいずれか1項に記載のフィンチューブ製造方法。
【請求項7】
前記波形の金属帯の波高方向の寸法G
hは、前記フィンのうち前記金属管の軸方向に沿う方向において隣り合う部分の肉厚の中心間の間隔に相当するフィンピッチをPとし、前記フィンの肉厚をtとした場合に、以下の関係式(1)を満たす、請求項1~6のいずれか1項に記載のフィンチューブ製造方法。
G
h<(2/3)P-t ・・・(1)
【請求項8】
金属管とその金属管に対して螺旋状に巻き付けられたフィンとを有するフィンチューブを製造するためのフィンチューブ製造装置であって、
ある方向に延びる金属帯であってその延び方向に沿って連続的に波打つ波形をなすものをその金属帯の一方の端縁である内側縁が前記金属管の外周面に接近して所定の溶接位置でその金属管の外周面に接触するように前記金属帯を案内する案内装置と、
前記溶接位置において前記金属管の外周面に接触した前記金属帯の前記内側縁をその金属管の外周面に溶接する熱を生じさせる高周波電流が前記金属管と前記金属帯との間で流れるようにその高周波電流を発生させる高周波電流発生装置と、
前記溶接位置で前記金属管の外周面に溶接された前記金属帯が前記金属管に螺旋状に巻き付けられて前記フィンに成形されるように前記金属管をその軸回りに回転させつつその軸方向に移動させる金属管駆動装置と、を備え、
前記案内装置は、前記波形の金属帯をその波高方向の両側から挟み込んで当該金属帯の前記波高方向への変位を制限するとともに当該金属帯の幅方向において前記内側縁と反対側の端縁である外側縁に接触して前記内側縁を前記溶接位置における前記金属管の外周面に接近させるように当該金属帯を押圧しつつ前記金属管への当該金属帯の巻き付けに伴う当該金属帯の延び方向に沿った移動に追随して回転するように構成されたスクイズロールを有し、このスクイズロールは、導電性素材からなり、
前記高周波電流発生装置は、前記金属管の外周面に接触する金属管接触電極と、前記スクイズロールに接触するスクイズロール接触電極と、前記金属管接触電極及び前記スクイズロール接触電極に接続され、前記金属管接触電極と前記スクイズロール接触電極との間で前記金属管と前記金属帯と前記スクイズロールとを通じて前記溶接位置を経由して流れる高周波電流を発生させる電源と、を有する、フィンチューブ製造装置。
【請求項9】
前記スクイズロール接触電極は、前記金属帯の波形の波高方向に沿う方向から見て前記金属帯と重なる位置で前記スクイズロールに接触している、請求項8に記載のフィンチューブ製造装置。
【請求項10】
前記スクイズロール接触電極は、前記金属管への前記金属帯の巻き付けに伴う前記金属帯の移動方向における前記溶接位置の手前の位置で前記スクイズロールに接触している、請求項8又は9に記載のフィンチューブ製造装置。
【請求項11】
前記案内装置により前記金属帯が案内される位置よりも手前の位置で平坦な前記金属帯を前記波形に加工する波打加工装置をさらに備える、請求項8~10のいずれか1項に記載のフィンチューブ製造装置。
【請求項12】
前記波打加工装置により前記金属帯が加工される波形は、その波形に加工された前記金属帯を平坦になるまで伸ばした場合の当該金属帯の伸長率が前記金属管への前記金属帯の巻き付けによって当該金属帯の前記外側縁に生じる引張変形による当該外側縁の伸長率以下になるように設定されている、請求項11に記載のフィンチューブ製造装置。
【請求項13】
前記波打加工装置により前記金属帯が加工される波形は、その波形に加工された前記金属帯を平坦になるまで伸ばした場合の当該金属帯の伸長率が前記金属管への前記金属帯の巻き付けによって当該金属帯の前記外側縁に生じる引張変形による当該外側縁の伸長率から33.3%を減じて得られる値以上になるように設定されている、請求項11又は12に記載のフィンチューブ製造装置。
【請求項14】
前記波打加工装置により前記金属帯が加工される波形は、前記フィンのうち前記金属管の軸方向に沿う方向において隣り合う部分の肉厚の中心間の間隔に相当するフィンピッチをPとし、前記フィンの肉厚をtとした場合に、前記波形に加工された前記金属帯の波高方向の寸法G
hが以下の関係式(1)を満たすように設定されている、請求項11~13のいずれか1項に記載のフィンチューブ製造装置。
G
h<(2/3)P-t ・・・(1)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィンチューブ製造方法及びフィンチューブ製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱交換器等に用いられるフィンチューブが知られている。このフィンチューブは、金属管と、その金属管の周りに巻き付くように設けられた螺旋状のフィンとを有する。このようなフィンチューブを製造するための製造装置の一例が下記特許文献1に開示されている。
【0003】
下記特許文献1に開示されたフィンチューブの製造装置は、金属管の外周にフィンとなる薄い肉厚の金属帯を螺旋状に巻き付け、その金属帯の内縁を金属管の外周面に加熱溶着するものである。具体的には、このフィンチューブ製造装置は、金属管の外周面に接触する第1通電子と、金属帯の内縁に接触する第2通電子と、それらの第1及び第2通電子に接続されて当該第1通電子と当該第2通電子との間で高周波交流電流を流す電源とを有する。このフィンチューブ製造装置では、第1通電子と第2通電子との間で金属管の外周面及び金属帯の内縁を通って高周波交流電流が流れることにより、金属管の外周面及び金属帯の内縁が加熱され、金属管の外周面に接触した金属帯の内縁がその金属管の外周面に溶着されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記のようなフィンチューブの製造において金属帯が金属管に巻き付けられるときには、金属帯の幅方向の中央から外縁寄りの領域に引張変形が生じるとともに、金属帯の幅方向の中央から内縁寄りの領域に圧縮変形が生じる。近年、フィンチューブの伝熱性能の向上のために金属管の外周面から突出するフィンの高さを大きくすることが求められているが、前記のような引張変形の変形量は金属管から外側へ離れた部位ほど大きくなるため、フィンの高さを大きくすることによってそのフィンの外縁付近に過大な引張変形が生じ、その結果、フィンの外縁付近の領域に、局所的に肉厚が著しく減少した減肉箇所が生じたり、亀裂が生じたりする場合がある。また、フィンの高さを大きくする場合には、金属帯が金属管に巻き付けられるときに、その金属帯の幅方向の中央から外縁寄りの領域に生じる前記引張変形の変形量が大きくなるとともに、その金属帯の幅方向の中央から内縁寄りの領域に生じる前記圧縮変形の変形量が大きくなる。その結果、金属帯の外縁寄りの領域では金属帯の素材自体の伸長で前記引張変形の変形量を吸収しきることができなくなるとともに、金属帯の内縁寄りの領域では金属帯の素材自体の収縮で前記圧縮変形の変形量を吸収しきることができなくなって座屈が生じ、その結果、金属帯全体にうねりが発生して金属管への金属帯の高周波電流溶接が困難になる場合がある。
【0006】
本発明の目的は、金属帯を金属管に高周波電流溶接して巻き付けることによりフィンに成形するときに金属帯に発生するうねりを低減するとともにフィンの外縁付近に局所的に肉厚が著しく減少した減肉箇所及び/又は亀裂が生じるのを防ぎつつ、金属管の直径に対するフィンの高さの比率が大きいフィンチューブを製造することが可能なフィンチューブ製造方法及びフィンチューブ製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、例えば、金属帯の幅方向全体がその金属帯の延び方向に連続的に波打つ波形をなすように加工された金属帯を用い、その金属帯を金属管に高周波電流溶接して螺旋状に巻き付けることによりフィンに成形することが考えられる。こうすれば、金属帯が金属管に巻き付けられるときに、当該金属帯の外縁寄りの領域では、波形によって伸び代が確保されていることにより前記引張変形の変形量を吸収できる。また、金属帯が金属管に巻き付けられるときに、金属帯の内縁寄りの領域は、波形によって収縮しやすい形状になっていることから前記圧縮変形の変形量が大きくても座屈せずに波形を波長方向において縮めるように収縮する。このため、金属帯に発生するうねりを低減することが可能である。また、金属帯が金属管に巻き付けられてフィンに成形されるときにフィンの外縁付近に過大な引張変形が生じたとしても、金属帯に付与された波形により伸び代が確保されているため、フィンの外縁付近に前記減肉箇所及び/又は亀裂が生じるのを防ぐことができる。
【0008】
しかしながら、この場合、金属帯に付与された波形により、金属管に対する金属帯の高周波電流溶接を安定的に行えなくなるという別の問題が生じる。具体的には、金属管をその軸回りに回転させつつその軸方向に進行させることによって金属管の外周面に溶接された金属帯を金属管に螺旋状に巻き付ける際、金属帯はその金属帯に接触する通電子(電極)に対して摺動するため、この金属帯が前記のような波形に加工されていると、金属帯が通電子に対して摺動するときの接触状態の変動が大きくなり、その結果、金属帯に接触する通電子と金属管に接触する通電子との間で金属帯と金属管とを通じて流れる高周波電流が不安定になって高周波電流溶接を安定して行えなくなる。そこで、本願発明者は、このような問題を解決するために以下のフィンチューブ製造方法及びフィンチューブ製造装置を発明した。
【0009】
本発明により提供されるフィンチューブ製造方法は、金属管とその金属管に対して螺旋状に巻き付けられたフィンとを有するフィンチューブを製造する方法である。このフィンチューブ製造方法は、ある方向に延びる金属帯であってその延び方向に沿って連続的に波打つ波形をなすものをその金属帯の幅方向の一方の端縁である内側縁が前記金属管の外周面に接近して所定の溶接位置でその金属管の外周面に接触するように当該金属帯を案内する金属帯案内工程と、前記溶接位置において前記金属管の外周面に接触した前記金属帯の前記内側縁をその金属管の外周面に高周波電流溶接する溶接工程と、前記金属管をその軸回りに回転させつつその軸方向に移動させることにより、前記溶接位置で前記金属管の外周面に溶接された前記金属帯を前記金属管に螺旋状に巻き付けて前記フィンに成形するフィン成形工程と、を備える。前記金属帯案内工程では、前記波形の金属帯をその波高方向の両側から挟み込んで当該金属帯の前記波高方向への変位を制限するとともに当該金属帯の幅方向において前記内側縁と反対側の端縁である外側縁に接触して前記内側縁を前記溶接位置における前記金属管の外周面に接近させるように当該金属帯を押圧しつつ前記金属管への前記金属帯の巻き付けに伴う前記金属帯の延び方向に沿った移動に追随して回転する導電性素材からなるスクイズロールにより、前記金属帯を案内する。前記溶接工程では、前記金属管の外周面に接触させた金属管接触電極と前記スクイズロールに接触させたスクイズロール接触電極との間で前記金属管と前記金属帯と前記スクイズロールとを通じて前記溶接位置を経由する高周波電流を流すことにより、前記金属帯の前記内側縁を前記溶接位置で前記金属管の外周面に高周波電流溶接する。
【0010】
このフィンチューブ製造方法では、溶接工程において、金属管接触電極とスクイズロール接触電極との間で、波形の金属帯をその波高方向の両側から挟み込むとともに当該金属帯の内側縁を溶接位置における金属管の外周面へ接近させるように当該金属帯を押圧しつつ金属管への当該金属帯の巻き付けに伴う当該金属帯の延び方向に沿った移動に追随して回転する導電性素材からなるスクイズロールを介して金属帯に高周波電流が流れるため、金属管接触電極とスクイズロール接触電極との間で金属管と金属帯とスクイズロールとを通じて溶接位置を経由して流れる高周波電流を安定化でき、その結果、波形の金属帯の金属管に対する高周波電流溶接を安定して行うことができる。
【0011】
具体的には、前記のように波形の金属帯をその波高方向の両側から挟み込むとともにその内側縁を金属管の外周面へ接近させるように当該金属帯を押圧しつつ当該金属帯の移動に追随して回転するスクイズロールと波形の金属帯との接触状態の変動は、波形の金属帯に対して電極が直接接触する場合にその金属帯が延び方向に移動して電極に対して摺動するときの金属帯と電極との接触状態の変動の程度に比べて小さくなる。このため、波形の金属帯の内側縁を金属管の外周面に高周波電流溶接する溶接工程において、金属管接触電極とスクイズロール接触電極との間で金属管と金属帯とスクイズロールとを通じて溶接位置を経由する高周波電流を流すときにその高周波電流を安定化でき、波形の金属帯の金属管に対する高周波電流溶接を安定して行うことができる。
【0012】
また、このフィンチューブ製造方法によれば、金属帯を金属管に高周波電流溶接して巻き付けることによりフィンに成形するときに金属帯に発生するうねりを低減するとともにフィンの外縁付近に局所的に肉厚が著しく減少した減肉箇所及び/又は亀裂が生じるのを防ぎつつ、金属管の直径に対するフィンの高さの比率が大きいフィンチューブを製造することができる。具体的には、このフィンチューブ製造方法では、波形の金属帯の内側縁を金属管の外周面に高周波電流溶接するとともにその金属帯を金属管に巻き付けてフィンに成形するため、その金属帯の外側縁寄りの領域では波形によって伸び代が確保されていることによりその領域に生じる引張変形の変形量を吸収できる。また、金属帯の内側縁寄りの領域は、波形によって収縮しやすい形状になっていることから圧縮変形の変形量が大きくても座屈せずに波形を波長方向において縮めるように収縮する。このため、金属帯全体に発生するうねりを低減することができる。また、このフィンチューブ製造方法では、波形の金属帯の内側縁を金属管の外周面に高周波電流溶接するとともにその金属帯を金属管に巻き付けてフィンに成形するため、金属管の直径に対するフィンの高さの比率が大きいことに起因してフィンの外縁付近に過大な引張変形が生じる場合であっても、金属帯にその波形によって伸び代が確保されていることから、フィンの外縁付近に前記のような減肉箇所及び/又は亀裂が生じるのを防ぐことができる。
【0013】
従って、このフィンチューブ製造方法によれば、波形の金属帯の金属管に対する高周波電流溶接を安定して行うことができ、また、金属帯をフィンに成形するときに金属帯に発生するうねりを低減するとともにフィンの外縁付近に局所的に肉厚が著しく減少した減肉箇所及び/又は亀裂が生じるのを防ぎつつ、金属管の直径に対するフィンの高さの比率が大きいフィンチューブを製造することができる。
【0014】
前記溶接工程では、前記金属帯の波形の波高方向に沿う方向から見て前記金属帯と重なる位置で前記スクイズロール接触電極を前記スクイズロールに接触させた状態において前記金属管接触電極と前記スクイズロール接触電極との間で前記金属管と前記金属帯と前記スクイズロールとを通じて高周波電流を流すことが好ましい。
【0015】
こうすれば、消費電力を抑えながら金属管に対する金属帯の高周波電流溶接を行うことができる。具体的には、仮に、スクイズロール接触電極を金属帯の波形の波高方向に沿う方向から見て金属帯から外れた位置でスクイズロールに接触させた状態において金属管接触電極とスクイズロール接触電極との間で高周波電流を流す場合には、その高周波電流のうちスクイズロールから金属帯へ流れずに散逸する電流が増加するため、消費電力が増大する。これに対し、前記のように金属帯の波形の波高方向に沿う方向から見て金属帯と重なる位置でスクイズロール接触電極をスクイズロールに接触させた状態において金属管接触電極とスクイズロール接触電極との間で高周波電流を流す場合には、スクイズロールから金属帯へ流れずに散逸する電流を低減でき、その結果、消費電力を抑えながら金属管に対する金属帯の高周波電流溶接を行うことができる。
【0016】
前記溶接工程では、前記金属帯の波形の波高方向に沿う方向から見て前記金属帯と重なる位置で前記スクイズロール接触電極を前記スクイズロールに接触させた状態において前記金属管接触電極と前記スクイズロール接触電極との間で前記金属管と前記金属帯と前記スクイズロールとを通じて高周波電流を流すことが好ましい。
【0017】
こうすれば、消費電力を抑えながら金属管に対する金属帯の高周波電流溶接を行うことができる。具体的には、仮に、スクイズロール接触電極を金属管への金属帯の巻き付けに伴う当該金属帯の移動方向において溶接位置を越えた位置でスクイズロールに接触させた状態において金属管接触電極とスクイズロール接触電極との間で高周波電流を流す場合には、その高周波電流のうち溶接位置へ流れずに金属管に溶接された後の金属帯(フィン)へ流れる電流が増加するため、消費電力が増大する。これに対し、前記のようにスクイズロール接触電極を金属帯の前記移動方向における溶接位置の手前の位置でスクイズロールに接触させた状態において金属管接触電極とスクイズロール接触電極との間で高周波電流を流す場合には、スクイズロールから金属管に溶接された後の金属帯(フィン)へ流れる電流を低減して溶接位置へ流れる電流を増やすことができ、その結果、消費電力を抑えながら金属管に対する金属帯の高周波電流溶接を行うことができる。
【0018】
前記フィンチューブ製造方法は、前記金属帯案内工程に先立って平坦な前記金属帯を前記波形に加工する波打加工工程をさらに備えることが好ましい。
【0019】
こうすれば、一般的に流通している平坦な形状の金属帯を用いてフィンチューブ製造方法の一連の工程の中で金属帯の波形への加工を行うことができるため、フィンチューブの製造のために特殊な形状の金属帯である波形の金属帯を予め用意する必要がない。このため、前記のように波形の金属帯からフィンを成形する場合であっても、フィンチューブの製造のための金属帯の用意にかかる負担の増大を抑制できる。
【0020】
前記波形の金属帯を平坦になるまで伸ばした場合の当該金属帯の伸長率は、前記フィン成形工程における前記金属管への当該金属帯の巻き付けによって当該金属帯の前記外側縁に生じる引張変形による当該外側縁の伸長率以下になるように設定されていることが好ましい。
【0021】
こうすれば、波形の金属帯から成形されるフィンのうち少なくともその外縁に波形が残存するのを防ぐことができ、その結果、フィンに残存する波形の谷部に滞積する異物による当該フィンの伝熱性能の低下を軽減できる。具体的には、前記のように波形の金属帯を平坦になるまで伸ばした場合の金属帯の伸長率が前記のように金属管への金属帯の巻き付けによってその外側縁に生じる引張変形による当該外側縁の伸長率以下に設定されていると、その金属帯を金属管に螺旋状に巻き付けてフィンに成形するときに当該金属帯の外側縁における波形は伸ばされて平坦になる。このため、フィンのうち少なくとも前記金属帯の外側縁から形成される外縁には、波形が残存するのを防ぐことができる。フィンの外縁に波形が残存する場合には、フィンの外縁よりも内側の部分にも波形が残存することになり、フィンチューブの使用時にフィンの周囲を流れる流体中に混在する異物がフィンの内外方向の全体において波形の谷部に滞積してその滞積した異物による当該フィンの伝熱性能の低下の程度が大きくなる。これに対し、本構成では、前記のようにフィンのうち少なくともその外縁に波形が残存するのを防ぐことができるため、フィンに残存する波形の谷部に滞積する異物による当該フィンの伝熱性能の低下を軽減できる。
【0022】
前記波形の金属帯を平坦になるまで伸ばした場合の当該金属帯の伸長率は、前記フィン成形工程における前記金属管への当該金属帯の巻き付けによって当該金属帯の前記外側縁に生じる引張変形による当該外側縁の伸長率から33.3%を減じて得られる値以上になるように設定されていることが好ましい。
【0023】
こうすれば、波形の金属帯の内側縁を金属管の外周面に溶接するとともにその金属帯を金属管に螺旋状に巻き付けることによって成形するフィンにおいて肉厚の誤差が許容範囲内に収まるようにすることができる。
【0024】
前記波形の金属帯の波高方向の寸法Ghは、前記フィンのうち前記金属管の軸方向に沿う方向において隣り合う部分の肉厚の中心間の間隔に相当するフィンピッチをPとし、前記フィンの肉厚をtとした場合に、以下の関係式(1)を満たすことが好ましい。
Gh<(2/3)P-t ・・・(1)
【0025】
こうすれば、スクイズロールのうち波形の金属帯をその波高方向の両側から挟み込む部分である挟込部の厚みを波形の金属帯の波高方向への変位を阻止可能な剛性が得られる最小の厚みである波形の金属帯の波高方向の寸法と同じ厚みにした場合であっても、スクイズロールの挟込部が金属管に溶接後のフィンに接触して高周波電流がフィンへ漏電するのを防止できる。
【0026】
本発明により提供されるフィンチューブ製造装置は、金属管とその金属管に対して螺旋状に巻き付けられたフィンとを有するフィンチューブを製造するための製造装置である。このフィンチューブ製造装置は、ある方向に延びる金属帯であってその延び方向に沿って連続的に波打つ波形をなすものをその金属帯の一方の端縁である内側縁が前記金属管の外周面に接近して所定の溶接位置でその金属管の外周面に接触するように前記金属帯を案内する案内装置と、前記溶接位置において前記金属管の外周面に接触した前記金属帯の前記内側縁をその金属管の外周面に溶接する熱を生じさせる高周波電流が前記金属管と前記金属帯との間で流れるようにその高周波電流を発生させる高周波電流発生装置と、前記溶接位置で前記金属管の外周面に溶接された前記金属帯が前記金属管に螺旋状に巻き付けられて前記フィンに成形されるように前記金属管をその軸回りに回転させつつその軸方向に移動させる金属管駆動装置と、を備える。前記案内装置は、前記波形の金属帯をその波高方向の両側から挟み込んで当該金属帯の前記波高方向への変位を制限するとともに当該金属帯の幅方向において前記内側縁と反対側の端縁である外側縁に接触して前記内側縁を前記溶接位置における前記金属管の外周面に接近させるように当該金属帯を押圧しつつ前記金属管への当該金属帯の巻き付けに伴う当該金属帯の延び方向に沿った移動に追随して回転するように構成されたスクイズロールを有し、このスクイズロールは、導電性素材からなる。前記高周波電流発生装置は、前記金属管の外周面に接触する金属管接触電極と、前記スクイズロールに接触するスクイズロール接触電極と、前記金属管接触電極及び前記スクイズロール接触電極に接続され、前記金属管接触電極と前記スクイズロール接触電極との間で前記金属管と前記金属帯と前記スクイズロールとを通じて前記溶接位置を経由して流れる高周波電流を発生させる電源と、を有する。
【0027】
このフィンチューブ製造装置では、前記フィンチューブ製造方法の場合と同様の理由により、波形の金属帯の金属管に対する高周波電流溶接を安定して行うことができ、また、金属帯をフィンに成形するときに金属帯に発生するうねりを低減するとともにフィンの外縁付近に局所的に肉厚が著しく減少した減肉箇所及び/又は亀裂が生じるのを防ぎつつ、金属管の直径に対するフィンの高さの比率が大きいフィンチューブを製造することができる。
【0028】
前記スクイズロール接触電極は、前記金属帯の波形の波高方向に沿う方向から見て前記金属帯と重なる位置で前記スクイズロールに接触していることが好ましい。
【0029】
この構成によれば、前記フィンチューブ製造方法の場合と同様の理由により、消費電力を抑えながら金属管に対する金属帯の高周波電流溶接を行うことができる。
【0030】
前記スクイズロール接触電極は、前記金属管への前記金属帯の巻き付けに伴う前記金属帯の移動方向における前記溶接位置の手前の位置で前記スクイズロールに接触していることが好ましい。
【0031】
この構成によれば、前記フィンチューブ製造方法の場合と同様の理由により、消費電力を抑えながら金属管に対する金属帯の高周波電流溶接を行うことができる。
【0032】
前記フィンチューブ製造装置は、前記案内装置により前記金属帯が案内される位置よりも手前の位置で平坦な前記金属帯を前記波形に加工する波打加工装置をさらに備えることが好ましい。
【0033】
この構成によれば、一般的に流通している平坦な形状の金属帯をフィンチューブ製造装置に供給してフィンチューブ製造装置のうちの波打加工装置により金属帯の波形への加工を行うことができるため、フィンチューブの製造のために特殊な形状の金属帯である波形の金属帯を予め用意する必要がない。このため、波形の金属帯からフィンを成形する場合であっても、フィンチューブの製造のための金属帯の用意にかかる負担の増大を抑制できる。
【0034】
前記波打加工装置により前記金属帯が加工される波形は、その波形に加工された前記金属帯を平坦になるまで伸ばした場合の当該金属帯の伸長率が前記金属管への前記金属帯の巻き付けによって当該金属帯の前記外側縁に生じる引張変形による当該外側縁の伸長率以下になるように設定されていることが好ましい。
【0035】
この構成によれば、前記フィンチューブ製造方法の場合と同様の理由により、波形に加工された金属帯から成形されるフィンのうち少なくともその外縁に波形が残存するのを防ぐことができ、その結果、フィンに残存する波形の谷部に滞積する異物による当該フィンの伝熱性能の低下を軽減できる。
【0036】
前記波打加工装置により前記金属帯が加工される波形は、その波形に加工された前記金属帯を平坦になるまで伸ばした場合の当該金属帯の伸長率が前記金属管への前記金属帯の巻き付けによって当該金属帯の前記外側縁に生じる引張変形による当該外側縁の伸長率から33.3%を減じて得られる値以上になるように設定されていることが好ましい。
【0037】
この構成によれば、波形に加工された金属帯の内側縁を金属管の外周面に溶接するとともにその金属帯を金属管に螺旋状に巻き付けることによって成形されるフィンにおいて肉厚の誤差が許容範囲内に収まるようにすることができる。
【0038】
前記波打加工装置により前記金属帯が加工される波形は、前記フィンのうち前記金属管の軸方向に沿う方向において隣り合う部分の肉厚の中心間の間隔に相当するフィンピッチをPとし、前記フィンの肉厚をtとした場合に、前記波形に加工された前記金属帯の波高方向の寸法Ghが以下の関係式(1)を満たすように設定されていることが好ましい。
Gh<(2/3)P-t ・・・(1)
【0039】
この構成によれば、スクイズロールのうち波形の金属帯をその波高方向の両側から挟み込む部分である挟込部の厚みを波形に加工された金属帯の波高方向への変位を阻止可能な剛性が得られる最小の厚みである当該金属帯の波高方向の寸法と同じ厚みにした場合であっても、スクイズロールの挟込部が金属管に溶接後のフィンに接触して高周波電流がフィンへ漏電するのを防止できる。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、波形の金属帯の金属管に対する高周波電流溶接を安定して行うことができ、金属帯を金属管に高周波電流溶接して巻き付けることによりフィンに成形するときに金属帯に発生するうねりを低減するとともにそのフィンの外縁付近に局所的に肉厚が著しく減少した減肉箇所及び/又は亀裂が生じるのを防ぎつつ、金属管の直径に対するフィンの高さの比率が大きいフィンチューブを製造することが可能なフィンチューブ製造方法及びフィンチューブ製造装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】本発明の一実施形態によるフィンチューブ製造装置がフィンチューブを製造している状態を側方から見た図である。
【
図2】
図1に示したフィンチューブ製造装置のうちの金属管に対する金属帯の溶接位置周辺の構造を上方から見た図である。
【
図3】
図1に示したフィンチューブ製造装置のうちの金属管に対する金属帯の溶接位置周辺の構造を金属管の軸心に沿った移動方向の後側から前側へ向かって見た図である。
【
図4】金属帯が金属管に溶接されて巻き付けられることによりフィンに成形される様子を金属管の軸心に沿う方向から見た図である。
【
図5】金属管の直径に対するフィンの高さの比率(h/d×100)と外側縁伸長率B(%)及び内側縁収縮率C(%)に相当する値との関係を示す図である。
【
図6】金属帯を挟み込むスクイズロールの挟込部が金属管に溶接後のフィンに接触するのを回避してスクイズロールからフィンへの漏電を防ぐために必要な金属帯とフィンとの間の間隙と挟込部の厚みとの関係を模式的に示す図である。
【
図7】第1の特定の事例において、フィンチューブ製造装置の波打加工装置により波形に加工された金属帯を平坦になるまで伸ばした場合の当該金属帯の伸長率A(%)の上限値及び下限値を規定する条件(a),(b),(c)とそれらの条件によって特定される伸長率A(%)の範囲を示す図である。
【
図8】第2の特定の事例において、フィンチューブ製造装置の波打加工装置により波形に加工された金属帯を平坦になるまで伸ばした場合の当該金属帯の伸長率A(%)の上限値及び下限値を規定する条件(a),(b),(c)とそれらの条件によって特定される伸長率A(%)の範囲を示す図である。
【
図9】複数種類の直径の金属管に対して形成可能な最大のフィンの高さをフィンの肉厚及びフィンピッチを変更しながら調べた実験の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0043】
本発明の一実施形態によるフィンチューブ製造装置1は、熱交換器に用いられるフィンチューブ100を製造する装置であり、このフィンチューブ100は、円筒状の金属管101とその金属管101に螺旋状に巻き付けられた状態で溶接された金属帯112からなるフィン102とを有するものである。
図1は、本実施形態によるフィンチューブ製造装置1がフィンチューブ100を製造している状態を側方から見た図である。なお、この
図1では、金属管101に対する金属帯112の溶接位置150周辺の構造を見やすくするため、後述の支持装置3の図示を省略している。
【0044】
金属管101は、例えばステンレス鋼などの金属によって形成された円筒管である。この金属管101内の空間が熱交換を行う一方の流体を流通させる流路となる。金属管101は、その軸心を中心とした円筒状の外周面を有する。
【0045】
フィン102は、金属管101の外周面からその金属管101の径方向外側へ突出するように設けられており、金属管101の軸心を中心軸とした螺旋状を呈している。このフィン102は、フィンチューブ100の伝熱面積を大きくして、金属管101内の空間を流通する一方の流体とフィンチューブ100の外側の他方の流体との熱交換効率を向上させる。
【0046】
フィン102は、金属管101の周りに当該金属管101の軸心を中心とした螺旋状に巻き付けられた状態でその金属管101の外周面に溶接された金属帯112からなる。金属帯112の素材、すなわちフィン102の素材は、例えばアルミニウムである。金属帯112は、薄い板体であり、例えば数mm以下の厚みと数cm程度の均一な幅とを有する。金属帯112は、当該金属帯112の延び方向に直交する幅方向における一方の端縁である内側縁112aと、当該金属帯112の幅方向において前記内側縁112aに対して反対側の端縁である外側縁112bとを有する。この金属帯112の内側縁112aが金属管101の外周面に溶接されるとともに当該金属帯112がその幅方向において金属管101の外周面から外側へ突出する状態で当該金属帯112が金属管101に螺旋状に巻き付けられることによって、その金属帯112からなるフィン102が形成されている。従って、金属管101の外周面に溶接された金属帯112の内側縁112aによって螺旋状のフィン102の内縁が形成され、金属帯112の外側縁112bによって螺旋状のフィン102の外縁が形成されている。
【0047】
以上のようなフィンチューブ100を製造するための本実施形態によるフィンチューブ製造装置1(以下、単に製造装置1と称する)は、金属管駆動装置2(
図1参照)と、支持装置3(
図2参照)と、波打加工装置4(
図1参照)と、案内装置5と、高周波電流発生装置8と、を備えている。
【0048】
金属管駆動装置2は、後述のように内側縁112aが金属管101の外周面に溶接された金属帯112が金属管101に螺旋状に巻き付けられるように金属管101をその軸回りに回転させつつその軸方向に移動させる装置である。この金属管駆動装置2は、金属管101をその軸心が略水平方向に延びる姿勢で保持し、そのように保持した金属管101を前記のように回転させつつ移動させる。金属管駆動装置2は、金属管101の軸方向における一端を保持する保持部10(
図1参照)と、その保持部10を金属管101の軸心に一致する軸回りに回転可能となるように支持する装置本体12と、その装置本体12に設けられていて保持部10を前記軸回りに回転させる図略の回転駆動装置と、装置本体12に設けられていて当該装置本体12を金属管101の軸方向に移動させる移動装置14とを有する。保持部10が金属管101を保持した状態で前記回転駆動装置がその保持部10を前記軸回りに一定の回転速度で回転させつつ、移動装置14が装置本体12を金属管101の軸方向に一定の回転速度で移動させることで、金属管駆動装置2は、金属管101をその軸心回りに回転させながらその軸心に沿って移動させるようになっている。
【0049】
支持装置3(
図2参照)は、案内装置5の後述のスクイズロール6と、高周波電流発生装置8の後述の金属管接触電極32及びスクイズロール接触電極34とを支持するためのものである。支持装置3は、金属管駆動装置2にセットされる金属管101の側方に配設される。この支持装置3は、所定の場所に据え付けられる支持台16と、その支持台16上に設けられた支持軸18及び図略の電極支持部とを有する。
【0050】
支持軸18は、スクイズロール6が回転可能となるように当該スクイズロール6を支持するものである。支持軸18は、スクイズロール6と同心となるように当該スクイズロール6を貫通しており、それによって、スクイズロール6がその軸心回りに回転可能となっている。支持軸18は、金属管101の軸心に対して僅かに傾いて延びている。
【0051】
図略の電極支持部は、高周波電流発生装置8の後述する金属管接触電極32及びスクイズロール接触電極34を支持するものである。
【0052】
波打加工装置4は、金属帯112が後述のように案内装置5によって案内される位置よりもその金属帯112の移動方向における手前の位置で金属帯112をその延び方向に沿って連続的に波打つ波形に加工する装置である。この波打加工装置4は、金属帯112の延び方向及び厚み方向の両方に直交する幅方向における当該金属帯112の全体に前記波形が付与されるように当該金属帯112を波打加工する。この波打加工装置4は、一対の加工ローラ22(
図1参照)と、ローラ駆動装置24(
図3参照)と、を有する。
【0053】
一対の加工ローラ22は、金属帯112をその厚み方向の両側から挟み込んで金属帯112に波形を付与するものである。この一対の加工ローラ22は、各々の軸心が金属帯112の延び方向に対して直交する方向に延びる姿勢で配置されるとともに、互いに平行となるように並列に配置される。一対の加工ローラ22のそれぞれは、金属帯112に付与する波形に対応した波形をなす外周面を有する。一対の加工ローラ22は、それらの外周面の波形が互いに噛み合うように並列に配置されている。ローラ駆動装置24は、一対の加工ローラ22を各々の軸回りに互いに逆向きで且つ金属帯112を案内装置5側(溶接位置150側)へ送り出す向きに回転させる。一対の加工ローラ22の互いに噛み合う波形の外周面の間に金属帯112が挟み込まれてそれらの加工ローラ22が前記のように回転することによって、金属帯112が波形に加工されるようになっている。なお、一対の加工ローラ22が金属帯112に付与する波形は、所定の条件を満たすように設定されており、その条件については後述する本実施形態のフィンチューブ100の製造方法において説明する。
【0054】
案内装置5は、金属帯112の内側縁112aが金属管101の外周面に接近して所定の溶接位置150でその金属管101の外周面に接触するように金属帯112を案内するものである。この案内装置5は、前記波打加工装置4によって波形に加工された金属帯112を案内する。案内装置5は、前記波打加工装置4によって波形に加工された金属帯112を溶接位置150の手前でその波形の波高方向の両側から挟み込んで当該金属帯112の波高方向への変位を制限するとともに、当該金属帯112の幅方向において内側縁112aと反対側の端縁である外側縁112bに接触して内側縁112aを溶接位置150における金属管101の外周面に接近させるように当該金属帯112を押圧しつつ、金属管101への当該金属帯112の巻き付けに伴う当該金属帯112の延び方向への移動に伴ってその金属帯112の移動方向に沿う向きに回転するように構成されたスクイズロール6を有する。スクイズロール6は、溶接位置150の手前の位置における金属帯112の延び方向への移動に追随して回転するようになっている。
【0055】
スクイズロール6は、金属管101の軸方向と直交する方向における当該金属管101の側方に配置され、前記支持装置3の支持軸18によって支持されて前記のように回転可能となっている。このスクイズロール6は、導電性素材からなる。また、当該スクイズロール6の素材は、金属帯112の素材の融点よりも高い融点を有する。また、当該スクイズロール6の素材として、当該スクイズロール6の後述の挟込部6bの厚みを波形の金属帯112の波高方向の寸法と同じ厚みにした場合であってもその波形の金属帯112の波高方向への変位を阻止するのに必要な剛性を確保することが可能となる素材、具体的には金属帯112よりも高い剛性を確保可能な素材が採用される。金属帯112の素材がアルミニウムである場合には、以上のような条件を満たすスクイズロール6の素材の一例としてクロム銅(CrCu)もしくはベリリウム銅(BeCu)が挙げられる。当該スクイズロール6は、外側縁接触部6aと、一対の挟込部6bとを有する。
【0056】
外側縁接触部6aは、金属帯112の外側縁112bに接触してその金属帯112の幅方向において当該金属帯112を金属管101の溶接位置150側へ押圧する部分である。また、外側縁接触部6aは、スクイズロール6のうち前記支持軸18によって支持される部分である。具体的には、この外側縁接触部6aは、円筒状をなし、前記支持軸18に対して同心となるように装着され、その軸心回りに回転可能となるように前記支持軸18によって支持されている。当該外側縁接触部6aの外周面が金属帯112の外側縁112bに対してその金属帯112の幅方向外側から接触するようになっている。
【0057】
一対の挟込部6bは、金属帯112をその波形の波高方向の両側から挟み込む部分である。一対の挟込部6bは、それぞれ、円板状をなしている。当該一対の挟込部6bの一方は、外側縁接触部6aの軸方向の一端側に取り付けられ、他方は、外側縁接触部6aの軸方向の他端側に取り付けられている。一対の挟込部6bは、外側縁接触部6aと同心となっている。一対の挟込部6bは、外側縁接触部6aの径方向外側に広がっており、それらの間に波形の金属帯112を受け入れる隙間をあけて互いに平行に配置されている。また、スクイズロール6は、一対の挟込部6b間の間隔を変更可能に構成されている。具体的には、一方の挟込部6bが外側縁接触部6bに対してその軸方向に変位可能となっており、図略の位置固定部によって外側縁接触部6bの軸方向における任意の位置で当該一方の挟込部6bの位置を固定できるようになっている。一対の挟込部6b間の間隙は、波打加工装置4により波形に加工される金属帯112の波高方向の寸法に等しい大きさに設定されている。
【0058】
高周波電流発生装置8は、前記溶接位置150において金属帯112の内側縁112aを金属管101の外周面に溶接する熱を生じさせる高周波電流(高周波交流電流)を発生する装置である。この高周波電流発生装置8は、前記溶接位置150を経由して金属管101の外周面と金属帯112の内側縁112aとの間で流れる高周波電流を発生させる。この高周波電流発生装置8は、金属管接触電極32と、スクイズロール接触電極34と、電源36とを有する。
【0059】
金属管接触電極32は、前記図略の電極支持部によって支持されて、金属管101の外周面に接触している。この金属管接触電極32は、金属管101の軸心回りの回転方向と逆向きに溶接位置150から所定距離だけ離れた位置で金属管101の外周面に接触している。金属管接触電極32は、金属管101がその軸心回りに回転しつつその軸心に沿って移動するのに伴って当該金属管101の外周面が当該金属管接触電極32に対して摺動するのを許容するようにその金属管101の外周面に接触している。
【0060】
スクイズロール接触電極34は、前記図略の電極支持部によって支持されて、スクイズロール6に接触している。このスクイズロール接触電極34は、スクイズロール6の一対の挟込部6bのうち金属管駆動装置2による金属管101の移動方向において後側に位置する一方の挟込部6bに接触している。具体的には、スクイズロール接触電極34は、金属帯112の波形の波高方向に沿う方向から見て金属帯112と重なり且つ溶接位置150へ向かう金属帯112の移動方向において溶接位置150の手前の位置で前記一方の挟込部6bに接触しており、その一方の挟込部6bのうち他方の挟込部6bと反対側を向く外側面に対して接触している。スクイズロール接触電極34は、スクイズロール6が回転するのに伴って前記一方の挟込部6bの外側面が当該スクイズロール接触電極34に対して摺動するのを許容するようにその一方の挟込部6bの外側面に接触している。すなわち、スクイズロール接触電極34は、回転するスクイズロール6の一方の挟込部6bに対して摺接している。
【0061】
電源36は、金属管接触電極32とスクイズロール接触電極34とにそれぞれ導線を介して接続されている。電源36は、金属管接触電極32とスクイズロール接触電極34との間で金属管101と金属帯112とスクイズロール6の前記一方の挟込部6bとを通じて溶接位置150を経由して流れる高周波電流を発生させる。この高周波電流により溶接位置150で熱が発生し、その溶接位置150で金属管101の外周面に接触した金属帯112の内側縁112aがその金属管101の外周面に溶接するようになっている。
【0062】
次に、本実施形態によるフィンチューブ100の製造方法について説明する。本実施形態による製造方法では、前記のような構成の製造装置1を用いてフィンチューブ100を製造する。本実施形態による製造方法は、波打加工工程と、金属帯案内工程と、溶接工程と、フィン成形工程と、を備える。
【0063】
具体的に、この製造方法では、まず、製造装置1の金属管駆動装置2の保持部10に金属管101を保持させる。そして、波打加工装置4により金属帯112を波形に加工する波打加工工程が行われる。この波打加工工程では、平坦な金属帯112の先端を波打加工装置4の一対の加工ローラ22間に挟み込む。そして、ローラ駆動装置24を作動させてそのローラ駆動装置24に一対の加工ローラ22を回転させ、それによって、金属帯112を波打加工する。この波打加工により金属帯112に付与する波形は、金属帯112の延び方向に連続的に波打ち且つ金属帯112の幅方向全体に亘るものであり、以下の条件(a),(b),(c)を全て満たすように設定された波形である。
【0064】
(a)波打加工装置4により波形に加工された金属帯112を平坦になるまで伸ばした場合の当該金属帯112の伸長率A(%)が、金属管101への金属帯112の巻き付けによって当該金属帯112の外側縁112bに生じる伸長による変形率である外側縁伸長率B(%)以下であること。
【0065】
(b)金属帯112の前記伸長率A(%)が、前記外側縁伸長率B(%)に相当し且つ金属管101への金属帯112の巻き付けによって当該金属帯112の内側縁112aに生じる収縮による変形率である内側縁収縮率C(%)に相当する値から33.3%を減じて得られる値以上であること。
【0066】
(c)波打加工装置4により波形に加工された金属帯112の波高方向の寸法をGhとし、螺旋状のフィン102のうち金属管101の軸方向に沿う方向において隣り合う部分の肉厚の中心間の間隔に相当するフィンピッチをPとし、フィン102の肉厚をtとした場合に、以下の関係式(1)が満たされること。
Gh<(2/3)P-t ・・・(1)
【0067】
前記条件(a)及び(b)における金属帯112の伸長率A(%)は、次式(2)によって求められる。
A={Gl-(Gp/2)}/(Gp/2)×100 ・・・(2)
【0068】
この式(2)において、Glは、前記波形の任意の谷の頂点の位置から隣り合う山の頂点の位置までのその波形の金属帯112に沿った長さであり、Gpは、前記波形の波長方向の寸法、すなわち前記波形の任意の山の頂点とそれに隣り合う別の山の頂点との間の間隔である。
【0069】
また、前記条件(a)及び(b)における前記外側縁伸長率B(%)は、金属帯112が金属管101に巻き付けられてフィン102に成形されるときに収縮(圧縮変形)及び伸長(引張変形)のいずれも生じない中立部位となる金属帯112の幅方向の中央の部位の金属管101の軸心を中心とした周長を基準とする前記外側縁112bの金属管101の軸心を中心とした周長の伸長率である。また、前記条件(b)における前記内側縁収縮率C(%)は、前記中立部位となる金属帯112の幅方向の中央の部位の金属管101の軸心を中心とした周長を基準とする前記内側縁112aの金属管101の軸心を中心とした周長の収縮率である。
【0070】
具体的に、金属帯112が金属管101に巻き付けられてフィン102に成形されるときには、金属帯112の幅方向の中央から内側縁112a寄りの領域には収縮による変形(圧縮変形)が生じる一方、金属帯112の幅方向の中央から外側縁112b寄りの領域には伸長による変形(引張変形)が生じ、また、金属帯112の幅方向の中央の部位から形成されるフィン102の高さ方向の中央の部位Pc(
図4参照)は、収縮及び伸長のいずれも生じない中立部位となる。そして、このとき、収縮による変形が最も大きくなるのは、金属帯112の内側縁112aから形成されるフィン102の内縁であり、また、伸長による変形が最も大きくなるのは、金属帯112の外側縁112bから形成されるフィン102の外縁である。よって、前記外側縁伸長率B(%)は、金属帯112が金属管101に巻き付けられてフィン102に成形されるときに生じる金属帯112の伸長による変形を最も顕著に示す値となり、前記内側縁収縮率C(%)は、金属帯112が金属管101に巻き付けられてフィン102に成形されるときに生じる金属帯112の収縮による変形を最も顕著に示す値となるため、これらの外側縁伸長率B(%)及び内側縁収縮率C(%)を用いて、金属帯112からフィン102が成形されるときの金属帯112の変形に起因する問題が生じないようにするための前記条件(a)及び(b)が設定されている。
【0071】
前記外側縁伸長率B(%)と前記内側縁収縮率C(%)は同じ値となり、それらの値は次式(3)によって求められる。
B=C=h/(d+h)×100 ・・・(3)
【0072】
この式(3)において、dは、金属管101の直径である。また、hは、金属管101の外周面から突出するフィン102の高さであり、金属管101の外周面からフィン102の外縁までの金属管101の径方向における距離に相当する。
【0073】
前記式(3)の導出の過程は、以下の通りである。
【0074】
前記外側縁伸長率B(%)は、金属帯112の幅方向の中央の部位から形成されるフィン102の高さ方向の中央の部位Pcの周長L
cと、金属帯112の外側縁112bから形成されるフィン102の外縁の周長L
oとから、次式(4)によって求められる。なお、フィン102の高さ方向の中央の部位Pcの周長L
cは、金属管101の軸心101a(
図4参照)を中心とした当該中央の部位Pcの周長である。また、フィン102の外縁の周長L
oは、金属管101の軸心101aを中心とした当該外縁の周長である。
B=(L
o-L
c)/L
c×100 ・・・(4)
【0075】
フィン102の高さ方向の中央の部位の周長Lcは、金属管101の直径d及びフィン102の高さhから次式(5)によって求められる。
Lc=2π(d/2+h/2)=π(d+h) ・・・(5)
【0076】
また、フィン102の外縁の周長Loは、金属管101の直径d及びフィン102の高さhから次式(6)によって求められる。
Lo=2π(d/2+h)=π(d+2h) ・・・(6)
【0077】
よって、前記外側縁伸長率B(%)は、金属管101の直径d及びフィン102の高さhを用いて次式(7)のように表される。
B={π(d+2h)-π(d+h)}/π(d+h)×100=h/(d+h)×100 ・・・(7)
【0078】
前記内側縁収縮率C(%)は、フィン102の高さ方向の中央の部位の周長Lc及びフィン102の内縁の周長Liから次式(8)によって求められる。なお、フィン102の内縁の周長Liは、金属管101の軸心101aを中心とした当該内縁の周長である。
C=(Lc-Li)/Lc×100 ・・・(8)
【0079】
フィン102の内縁の周長Liは、フィン102の内縁を金属管101の軸心101aに沿う方向に見た場合の当該フィン102の内縁の直径が金属管101の直径dと等しいことからこの金属管101の直径dを用いて次式(9)によって求められる。
Li=2π×(d/2)=π×d ・・・(9)
【0080】
よって、前記内側縁収縮率C(%)は、金属管101の直径d及びフィン102の高さhを用いて次式(10)のように表される。
C={π(d+h)-π×d}/π(d+h)×100=h/(d+h)×100 ・・・(10)
【0081】
前記波打加工により金属帯112が加工される波形についての前記条件(a)は、その波形に加工された金属帯112が金属管101に巻き付けられてフィン102に成形されるときにフィン102のうち少なくとも金属帯112の外側縁112bから形成される外縁には波形が残存しないようにするための条件である。すなわち、仮に、前記波打加工により波形に加工された金属帯112を平坦になるまで伸ばした場合の当該金属帯112の伸長率A(%)が前記外側縁伸長率B(%)よりも大きい場合には、その波形に加工された金属帯112が金属管101に巻き付けられてフィン102に成形されるときに伸長による変形(引張変形)が最も大きくなる金属帯112の外側縁112bであっても波形が解消されず、その外側縁112bから形成されるフィン102の外縁に波形が残存することになる。このため、前記条件(a)のように前記伸長率A(%)が前記外側縁伸長率B(%)以下に設定される。
【0082】
また、前記波打加工により金属帯112が加工される波形についての前記条件(b)は、その波形に加工された金属帯112から成形されるフィン102において肉厚の誤差が許容範囲内に収まるようにするとともに、そのフィン102の内縁に過大なコルゲートが形成されないようにするための条件である。
【0083】
具体的に、フィンチューブの品質についての国際規格である「INTERNATIONAL STANDARD FOR DIMENSIONS,TOLERANCES AND TESTS OF HIGH FREQUENCY RESISTANCE WELDED FINS(1990年6月有効)」があり、この国際規格には、フィンの肉厚の公差についての規定と、フィンの内縁のコルゲートの幅についての規定とが含まれている。
【0084】
前記国際規格におけるフィンの肉厚の公差についての規定では、フィンの肉厚が0.81mm~1mmである場合には肉厚の公差は±0.1mmであり、フィンの肉厚が1.01mm~1.6mmである場合には肉厚の公差は±0.13mmであり、フィンの肉厚が1.61mm~2mmである場合には肉厚の公差は±0.15mmであり、フィンの肉厚が2.01mm~2.5mmである場合には肉厚の公差は±0.17mmであり、フィンの肉厚が2.51mm~3.5mmである場合には肉厚の公差は±0.2mmであることと規定されている。なお、フィンの肉厚が0.8mm以下である場合には、その肉厚の公差を、前記国際規格に規定されたフィンの肉厚の公差から外挿される範囲、具体的には線形外挿法によって算出される範囲である±12%とする。
【0085】
また、前記国際規格におけるフィンの内縁のコルゲートの幅についての規定では、フィンの内縁のコルゲートの波高方向における幅がフィンの肉厚の3倍以下であることが規定されている。
【0086】
前記条件(b)は、従来のフィンチューブの製造方法、すなわち金属帯112に波打加工を行わず、平坦な金属帯112に溶接位置150の手前で直接接触した金属帯接触電極と金属管101の外周面に接触した金属管接触電極との間で高周波電流を流して金属帯112の内側縁112aを金属管101の外周面に高周波電流溶接するとともにその金属帯112を金属管101に螺旋状に巻き付けることによりフィン102に成形する方法で、金属管101の直径dと、フィン102の高さh(金属帯112の幅)と、フィン102の肉厚(金属帯112の肉厚)とを種々変更してフィンチューブ100を製造する実験を予め行い、その実験の結果から、成形されるフィン102に生じる肉厚の誤差を前記国際規格に規定されたフィンの肉厚の公差の範囲内もしくはそれから外挿されるフィンの肉厚の公差の範囲内に収めることができ、且つ、フィン102の内縁に形成されるコルゲートの波高方向の幅を前記国際規格に規定されたコルゲートの幅の範囲内に収めることが可能となる前記伸長率A(%)の範囲を導出して設定したものである。
図5には、前記実験の結果から得られた金属管101の直径dに対するフィン102の高さhの比率(h/d×100)と外側縁伸長率B(%)及び内側縁収縮率C(%)に相当する値との関係が示されている。
【0087】
前記実験の結果から、平坦な金属帯112を金属管101に螺旋状に巻き付けてフィン102に成形する場合に金属管101の直径dに対するフィン102の高さhの比率(h/d×100)が50%を超えていると、金属帯112の外側縁112b寄りの領域の引張変形によりフィン102に生じる肉厚の誤差が前記国際規格に規定されたフィンの肉厚の公差の範囲及びそれから外挿されるフィンの肉厚の公差の範囲から外れるか、もしくは、金属帯112の内側縁112a寄りの領域の圧縮変形によりフィン102の内縁に形成されるコルゲートの波高方向の幅が前記国際規格に規定されたコルゲートの幅の範囲から外れることが判った。金属管101の直径dに対するフィン102の高さhの比率(h/d×100)が50%である場合の前記外側縁伸長率B(%)及び前記内側縁収縮率C(%)は、前記式(3)から約33.3%になることが判り、また、前記比率(h/d×100)が大きくなるにつれて前記外側縁伸長率B(%)及び前記内側縁収縮率C(%)も大きくなる。従って、前記外側縁伸長率B(%)及び前記内側縁収縮率C(%)が、前記比率(h/d×100)が50%である場合に対応する約33.3%を超えて増加すると、金属帯112の外側縁112b寄りの領域の引張変形によりフィン102に生じる肉厚の誤差が前記国際規格に規定されたフィンの肉厚の公差の範囲及びそれから外挿されるフィンの肉厚の公差の範囲から外れるか、もしくは、金属帯112の内側縁112a寄りの領域の圧縮変形によりフィン102の内縁に形成されるコルゲートの波高方向の幅が前記国際規格に規定されたコルゲートの幅の範囲から外れると考えられる。このため、波打加工装置4により波形に加工される金属帯112を平坦になるまで伸ばした場合のその金属帯112の前記伸長率A(%)を前記外側縁伸長率B(%)及び前記内側縁収縮率C(%)に相当する値から33.3%を減じて得られる値以上に設定しておけば、金属管101の直径dに対するフィン102の高さhの比率(h/d×100)が50%よりも大きい場合であっても、その波形に加工された金属帯112が金属管101に巻き付けられてフィン102に成形されるときに金属帯112の外側縁112b寄りの領域の引張変形によりフィン102に生じる肉厚の誤差が前記国際規格に規定されたフィンの肉厚の公差の範囲内もしくはその範囲から外挿されるフィンの肉厚の公差の範囲内に収まるように金属帯112の外側縁112b寄りの領域の引張変形による肉厚の減少量を抑制できるとともに、金属帯112の内側縁112a寄りの領域の圧縮変形によりフィン102の内縁に形成されるコルゲートの波高方向の幅が前記国際規格に規定されたコルゲートの幅の範囲内に収まるように金属帯112の内側縁112a寄りの領域の圧縮変形によるコルゲートの波高方向の幅の増大を抑制できると考えられる。このため、前記条件(b)のように前記伸長率A(%)が前記外側縁伸長率B(%)及び前記内側縁収縮率C(%)に相当する値から33.3%を減じて得られる値以上に設定される。
【0088】
また、前記波打加工により金属帯112が加工される波形についての前記条件(c)は、スクイズロール6の挟込部6bの厚みを、波形の金属帯112の波高方向への変位を阻止するのに必要な当該挟込部6bの剛性を確保するために最低限必要となるその金属帯112の波高方向の寸法と同じ厚みにした場合に、当該スクイズロール6の挟込部6bが金属管101に溶接後のフィン102に接触して高周波電流がフィン102へ漏電するのを防止するための条件である。
【0089】
具体的に、スクイズロール6の挟込部6bの厚みを前記のように波形の金属帯112の波高方向の寸法と同じにした場合に前記のような漏電が生じるのを防ぐためには、仮にフィン102の内縁に形成されるコルゲートの波高方向の幅が前記国際規格におけるコルゲートの幅についての規定で許容された最大値であるフィン102の肉厚の3倍に相当する値になった場合であっても、金属管101に溶接前の金属帯112と金属管101に溶接後のフィン102との間に位置する一方の挟込部6bが溶接後のフィン102に確実に接触しないようにする必要がある。具体的には、
図6に示すように、金属管101に溶接前の金属帯112と金属管101に溶接後のフィン102との間に位置する一方の挟込部6bが溶接後のフィン102に確実に接触しないようにするには、溶接前の金属帯112と溶接後のフィン102のうちその肉厚tの3倍に相当する波高方向の幅を有するコルゲートが形成された当該フィン102の内縁との間の間隙Dが当該一方の挟込部6bの厚みTよりも大きくなることが必要である。前記間隙Dの大きさは、金属管101の軸心に沿う方向における溶接前の金属帯112の波高方向の幅の中心と溶接後のフィン102の肉厚の中心との間の間隔Iから金属帯112の波高方向の幅の半分とフィン102の肉厚を3倍した値の半分とを減じることによって算出される。ここで、金属管101の軸心に沿う方向における溶接前の金属帯112の波高方向の中心と溶接後のフィン102の肉厚の中心との間の間隔Iは前記フィンピッチPと等しいため、前記間隙Dは、金属帯112の波高方向の寸法G
hとフィン102の肉厚tとから、次式(11)によって算出される。
D=P-(G
h/2)-(3t/2) ・・・(11)
【0090】
そして、前記間隙Dが前記一方の挟込部6bの厚みTよりも大きくなるという条件は、挟込部6bの厚みTを波形の金属帯112の波高方向の幅Ghと同じにした場合、次式(12)によって表される。
{P-(Gh/2)-(3t/2)}>Gh ・・・(12)
【0091】
この式(12)から前記条件(c)の関係式(1)が導出される。
【0092】
そして、波打加工装置4により前記条件(a),(b),(c)を全て満たす波形に加工された金属帯112をその内側縁112aが溶接位置150で金属管101の外周面に接触するように当該金属帯112を案内する金属帯案内工程が行われる。具体的には、波形に加工された金属帯112は、スクイズロール6の一対の挟込部6b間に挿入され、その一対の挟込部6bが金属帯112をその波形の波高方向における両側から挟み込むとともに、スクイズロール6の外側縁接触部6aが金属帯112の外側縁112bに当接して押圧することにより、金属帯112の内側縁112aが溶接位置150へ向かうようにスクイズロール6によって案内される。このとき、金属帯112は、後述の金属管101への巻き付けに伴って当該金属帯112の延び方向に移動し、スクイズロール6は、この金属帯112の延び方向への移動に伴って外側縁接触部6aの軸回りに回転しつつその金属帯112を案内する。
【0093】
そして、溶接位置150で金属管101の外周面に接触した金属帯112の内側縁112aをその金属管101の外周面に高周波電流溶接する溶接工程が行われる。具体的には、高周波電流発生装置8の電源36が金属管接触電極32と金属帯接触電極34との間で金属管101と金属帯112とスクイズロール6とを通じて溶接位置150を経由するように流れる高周波電流を発生させ、この高周波電流により、溶接位置150で金属管101の外周面に接触した金属帯112の内側縁112aがその金属管101の外周面に溶接される。
【0094】
そして、金属管駆動装置2により金属管101をその軸回りに回転させつつその軸方向に移動させることにより、溶接位置150で金属管101の外周面に溶接された金属帯112を金属管101に螺旋状に巻き付けてフィン102に成形するフィン成形工程が行われる。このフィン成形工程は、前記溶接工程と同時並行で行われる。
【0095】
以上のようにして、金属管101とその金属管101の周りに螺旋状に巻き付けられて当該金属管101の外周面に溶接されたフィン102とからなるフィンチューブ100が製造される。
【0096】
本実施形態では、金属管接触電極32とスクイズロール接触電極34との間で、波形の金属帯112をその波高方向の両側から挟み込むとともに当該金属帯112の内側縁112aを溶接位置150における金属管101の外周面へ接近させるように当該金属帯112を押圧しつつ金属管101への金属帯112の巻き付けに伴う当該金属帯112の延び方向に沿った移動に追随して回転する導電性素材からなるスクイズロール6を介して金属帯112に高周波電流が流れるため、金属管接触電極32とスクイズロール接触電極34との間で金属管101と金属帯112とスクイズロール6とを通じて溶接位置150を経由するように流れる高周波電流を安定化でき、その結果、波形の金属帯112の金属管101に対する高周波電流溶接を安定して行うことができる。
【0097】
具体的には、前記のように波形の金属帯112をその波高方向の両側から挟み込むとともにその内側縁112aを金属管101の外周面へ接近させるように当該金属帯112を押圧しつつ当該金属帯112の延び方向に沿った移動に追随して回転するスクイズロール6と波形の金属帯112との接触状態の変動は、波形の金属帯に対して電極が直接接触する場合にその金属帯が延び方向に移動して電極に対して摺動するときの当該金属帯と電極との接触状態の変動の程度に比べて小さくなる。このため、波形の金属帯112の内側縁112aを金属管101の外周面に高周波電流溶接する溶接工程において、金属管接触電極32とスクイズロール接触電極34との間で金属管101と金属帯112とスクイズロール6とを通じて溶接位置150を経由するように高周波電流を流すときにその高周波電流を安定化でき、波形の金属帯112の金属管101に対する高周波電流溶接を安定して行うことができる。
【0098】
また、本実施形態では、金属帯112をフィン102に成形するときに金属帯112に発生するうねりを低減するとともにそのフィン102の外縁付近に局所的に肉厚が著しく減少した減肉箇所及び/又は亀裂が生じるのを防ぎつつ、金属管101の直径に対するフィン102の高さの比率が大きいフィンチューブ100を製造することができる。具体的には、本実施形態では、波形の金属帯112の内側縁112aを金属管101の外周面に高周波電流溶接するとともにその金属帯112を金属管101に巻き付けてフィン102に成形するため、その金属帯112の外側縁112b寄りの領域では波形によって伸び代が確保されていることによりその領域に生じる引張変形の変形量を吸収できる。また、金属帯112の内側縁112a寄りの領域は、波形によって収縮しやすい形状になっていることから圧縮変形の変形量が大きくても座屈せずに波形を波長方向において縮めるように収縮する。このため、金属帯112全体に発生するうねりを低減することができる。また、本実施形態では、波形の金属帯112の内側縁112aを金属管101の外周面に高周波電流溶接するとともにその金属帯112を金属管101に螺旋状に巻き付けてフィン102に成形するため、金属管101の直径に対するフィン102の高さの比率が大きいことに起因してフィン102の外縁付近に過大な引張変形が生じる場合であっても、金属帯112にその波形によって伸び代が確保されていることから、フィン102の外縁付近に前記のような減肉箇所及び/又は亀裂が生じるのを防ぐことができる。
【0099】
従って、本実施形態では、波形の金属帯112の金属管101に対する高周波電流溶接を安定して行うことができ、また、金属帯112をフィン102に成形するときに金属帯112に発生するうねりを低減するとともにそのフィン102の外縁付近に局所的に肉厚が著しく減少した減肉箇所及び/又は亀裂が生じるのを防ぎつつ、金属管101の直径に対するフィン102の高さの比率が大きいフィンチューブ100を製造することができる。
【0100】
また、本実施形態では、案内装置5のスクイズロール6により金属帯112を溶接位置150へ案内する金属帯案内工程に先立って、平坦な金属帯112を波打加工装置4により波形に加工する波打加工工程が行われるため、一般的に流通している平坦な形状の金属帯112を用いて製造装置1によるフィンチューブ製造方法の一連の工程の中で金属帯112の波形への加工を行うことができる。このため、フィンチューブ100の製造のために特殊な形状である波形の金属帯を予め用意する必要がない。このため、波形の金属帯112からフィン102を成形する場合であっても、フィンチューブ100の製造のための金属帯112の用意にかかる負担の増大を抑制できる。
【0101】
また、本実施形態では、スクイズロール接触電極34が、金属帯112の波形の波高方向に沿う方向から見て金属帯112と重なり且つ金属帯112の移動方向における溶接位置150の手前の位置でスクイズロール6の挟込部6bに接触しているため、消費電力を抑えながら金属管101に対する金属帯112の高周波電流溶接を行うことができる。
【0102】
具体的には、仮に、スクイズロール接触電極34が金属帯112の波形の波高方向に沿う方向から見て金属帯112から外れた位置でスクイズロール6に接触している場合には、スクイズロール6から金属帯112へ流れずに散逸する電流が増加するため、消費電力が増大する。また、仮に、スクイズロール接触電極34が金属帯112の移動方向において溶接位置150を越えた位置でスクイズロール6に接触している場合には、高周波電流のうち溶接位置150へ流れずに金属管101に溶接された後のフィン102へ流れる電流が増加するため、消費電力が増大する。これに対し、本実施形態では、前記のように、スクイズロール接触電極34が金属帯112の波形の波高方向に沿う方向から見て金属帯112と重なり且つ金属帯112の移動方向における溶接位置150の手前の位置でスクイズロール6の挟込部6bに接触しているため、前記のように散逸する電流及び挟込部6bから金属管101に溶接された後のフィン102へ流れる電流を低減できる。そのため、消費電力を抑えながら金属管101に対する金属帯112の高周波電流溶接を行うことができる。
【0103】
また、本実施形態では、スクイズロール6の素材は、金属帯112の素材の融点よりも高い融点を有する。このため、金属管接触電極32とスクイズロール接触電極34との間で金属管101と金属帯112とスクイズロール6とを通じて高周波電流を流すことにより金属帯112を金属管101に高周波電流溶接するときの熱でスクイズロール6が融けるのを防ぐことができる。
【0104】
また、本実施形態では、波打加工装置4により金属帯112が加工される波形は、その波形に加工された金属帯112を平坦になるまで伸ばした場合の当該金属帯112の伸長率A(%)が金属管101への金属帯112の巻き付けによって金属帯112の外側縁112bに生じる引張変形による当該外側縁112bの伸長率である外側縁伸長率B(%)以下になるように設定されている。このため、前記波形に加工された金属帯112の内側縁112aが金属管101の外周面に溶接されるとともにその金属帯112が金属管101に螺旋状に巻き付けられるときに少なくともその金属帯112の外側縁112bの波形は解消されて平坦になる。よって、本実施形態では、金属管101への溶接前に金属帯112が波打加工装置4により波形に加工されても、金属管101に溶接されて螺旋状に巻き付けられた金属帯112からなるフィン102のうち少なくともその金属帯112の外側縁112bから形成される外縁には波形が残存するのを防ぐことができる。フィン102の外縁に波形が残存する場合には、フィン102の外縁よりも内側の領域にも波形が残存することになってフィン102全体に波形が残存することになり、当該フィン102を含むフィンチューブ100の使用時にフィン102の周囲を流れる流体中に混在する異物がフィン102の内外方向の全体において波形の谷部に滞積してその滞積した異物による当該フィン102の伝熱性能の低下の程度が大きくなる。これに対し、本実施形態では、前記のようにフィン102のうち少なくともその外縁には波形が残存するのを防ぐことができるため、フィン102に残存する波形の谷部に滞積する異物による当該フィン102の伝熱性能の低下を軽減できる。
【0105】
また、本実施形態では、波打加工装置4により金属帯112が加工される波形は、その波形に加工された金属帯112を平坦になるまで伸ばした場合の当該金属帯112の伸長率A(%)が、前記外側縁伸長率B(%)及び前記内側縁収縮率C(%)に相当する値から33.3%を減じて得られる値以上になるように設定されている。このため、波打加工装置4により波形に加工された金属帯112の内側縁112aが金属管101の外周面に溶接されるとともにその金属帯112が金属管101に螺旋状に巻き付けられることによって成形されるフィン102において肉厚の誤差を前記国際規格で規定された許容範囲内もしくはその範囲から外挿される許容範囲内に収めることができるとともに、フィン102の内縁に形成されるコルゲートの波高方向の幅を前記国際規格で規定された許容範囲内に収めることができる。
【0106】
また、本実施形態では、波打加工装置4により金属帯112が加工される波形は、その波形に加工された金属帯112の波高方向の寸法をGhとし、フィン102のうち金属管101の軸方向において隣り合う部分の肉厚の中心間の間隔に相当するフィンピッチをPとし、フィン102の肉厚をtとした場合に、次の関係式を満たすように設定されている。
Gh<(2/3)P-t
【0107】
このことから、上述のように、スクイズロール6の挟込部6bの厚みを波形に加工された金属帯112の波高方向への変位を阻止するのに必要な当該挟込部6bの剛性を確保するために最低限必要な厚みである金属帯112の波高方向の寸法と同じ厚みにした場合に、挟込部6bが金属管101に溶接後の金属帯112からなるフィン102に接触してスクイズロール接触電極34からスクイズロール6に供給される高周波電流がフィン102へ漏電するのを防止できる。
【0108】
本実施形態では、以上のように前記条件(a),(b),(c)によって、波打加工装置4により金属帯112が加工される波形の指標となる前記伸長率A(%)の範囲が規定される。
図7と
図8には、それぞれ、特定の事例について前記条件(a),(b),(c)によって前記伸長率A(%)の範囲がどのように規定されるかが示されている。
【0109】
図7に示されているのは、金属管101の直径が25.4mmであり、フィン102の肉厚が0.5mmであり、フィン102の高さが15.0mmであり、金属帯112が加工される波形の波長が5.0mmである場合の事例であり、フィンピッチP(mm)と前記伸長率A(%)との関係において前記条件(a),(b),(c)によって前記伸長率A(%)の範囲がどのように規定されるかが示されている。
【0110】
また、
図8に示されているのは、金属管101の直径が38.1mmであり、フィン102の肉厚が1.0mmであり、フィン102の高さが25.0mmであり、金属帯112が加工される波形の波長が10.0mmである場合の事例であり、フィンピッチP(mm)と前記伸長率A(%)との関係において前記条件(a),(b),(c)によって前記伸長率A(%)の範囲がどのように規定されるかが示されている。
【0111】
これらの
図7及び
図8を参照して、金属帯112が加工される波形の形状の指標である前記伸長率A(%)の上限値は、成形されたフィン102の外縁に波形を残存させないようにするための前記条件(a)と金属管101に溶接後のフィン102に対するスクイズロール6の挟込部6bの接触による漏電を防止するための前記条件(c)とによって規定される。具体的には、前記条件(c)によって規定される前記伸長率A(%)の上限値が前記条件(a)によって規定される前記伸長率A(%)の上限値よりも小さくなるフィンピッチPの範囲では、前記伸長率A(%)の上限値は、前記条件(c)によって規定される。また、前記条件(a)によって規定される前記伸長率A(%)の上限値が前記条件(c)によって規定される前記伸長率A(%)の上限値よりも小さくなるフィンピッチPの範囲では、前記伸長率A(%)の上限値は、前記条件(a)によって規定される。
【0112】
また、前記伸長率A(%)の下限値は、成形されたフィン102の肉厚の誤差を許容範囲内に収めるとともにそのフィン102の内縁に形成されるコルゲートの波高方向の幅を許容範囲内に収めるための前記条件(b)によって規定され、フィンピッチPの大きさにかかわらず一定値となる。
【0113】
次に、本実施形態による製造装置1によりフィンチューブ100を製造した場合に形成可能となる最大のフィン102の高さの増加効果について調査した結果について説明する。具体的には、形成可能な最大のフィン102の高さをhmaxとし、金属管101の直径をdとし、前記伸長率A(%)の上限値をAmaxとすると、それらの最大のフィン102の高さhmaxと金属管101の直径dと前記伸長率A(%)の上限値Amaxとについて次の関係式(13)が成り立ち、この関係式(13)から形成可能な最大のフィン102の高さhmaxを算出できる。
hmax/(d+hmax)=(Amax+33.3%)/100・・・(13)
【0114】
そして、この調査では、第1実施例として、前記
図7に示された事例について前記条件(c)により前記伸長率A(%)の上限値が規定されるフィンピッチPの範囲において、その範囲における前記伸長率A(%)の上限値と、この
図7に示された事例での金属管101の直径25.4mmとを用いて、前記関係式(13)から形成可能な最大のフィン102の高さh
maxを算出した。なお、前提条件として、この第1実施例では、金属帯112が加工される波形の波長は前記
図7に示された事例と同様に5.0mmとするとともに、フィン102の肉厚は前記
図7に示された事例と同様に0.5mmとした。
【0115】
また、第2実施例として、前記
図8に示された事例について前記条件(c)により前記伸長率A(%)の上限値が規定されるフィンピッチPの範囲において、その範囲における前記伸長率A(%)の上限値と、この
図8に示された事例での金属管101の直径38.1mmとを用いて、前記関係式(13)から形成可能な最大のフィン102の高さh
maxを算出した。なお、前提条件として、この第2実施例では、金属帯112が加工される波形の波長は前記
図7に示された事例と同様に10.0mmとするとともに、フィン102の肉厚は前記
図8に示された事例と同様に1.0mmとした。
【0116】
また、第3実施例として、金属管101の直径が38.1mmであり、金属帯112が加工される波形の波長が16.0mmであり、フィン102の肉厚が1.6mmである事例について、前記条件(c)により前記伸長率A(%)の上限値が規定されるフィンピッチPの範囲において、その範囲における前記伸長率A(%)の上限値と金属管101の直径38.1mmとを用いて、前記関係式(13)から形成可能な最大のフィン102の高さhmaxを算出した。
【0117】
また、前記第1~第3実施例に対応する比較例として、前記波打加工装置4を備えていないとともに電流発生装置が前記スクイズロール接触電極34の代わりに溶接位置の手前で金属帯に直接接触する金属帯接触電極を有すること以外は前記製造装置1と同様に構成された従来のフィンチューブ製造装置によりフィンチューブを製造する第1~第3比較例において、前記第1~第3実施例の場合と同様に複数種類の直径の金属管に対して形成可能な最大のフィンの高さを調べた。この第1~第3比較例では、金属帯に波打加工を行わず、前記金属帯接触電極と金属管接触電極との間で金属管と金属帯とを通じて溶接位置を経由するように高周波電流を流すことによって金属帯を金属管に高周波電流溶接するとともにその金属帯を金属管に螺旋状に巻き付けることによってフィンに成形する。第1比較例における金属管の直径及びフィンの肉厚は前記第1実施例の場合と同様であり、第2比較例における金属管の直径及びフィンの肉厚は前記第2実施例の場合と同様であり、第3比較例における金属管の直径及びフィンの肉厚は前記第3実施例の場合と同様である。
【0118】
以上の第1~第3実施例及び第1~第3比較例による形成可能な最大のフィンの高さの調査結果が
図9に表されている。
【0119】
前記第1比較例では、フィンピッチの大きさにかかわらず、形成可能な最大のフィンの高さは、金属管の直径の50%に相当する12.7mmとなった。これに対し、前記第1実施例では、フィンピッチがいずれの大きさであっても、形成可能な最大のフィン102の高さは、前記第1比較例において形成可能な最大のフィンの高さよりも大きく、また、フィンピッチが増加するにつれて形成可能な最大のフィン102の高さが増加することが判った。
【0120】
また、前記第2比較例では、フィンピッチの大きさにかかわらず、形成可能な最大のフィンの高さは、金属管の直径の50%に相当する19mmとなった。これに対し、前記第2実施例では、フィンピッチがいずれの大きさであっても、形成可能なフィン102の最大の高さは、前記第2比較例において形成可能な最大のフィンの高さよりも大きく、また、フィンピッチが増加するにつれて形成可能なフィン102の最大の高さが増加することが判った。
【0121】
また、前記第3比較例では、フィンピッチの大きさにかかわらず、形成可能な最大のフィンの高さは、金属管の直径の50%に相当する19mmとなった。これに対し、前記第3実施例では、フィンピッチがいずれの大きさであっても、形成可能なフィン102の最大の高さは、前記第3比較例において形成可能な最大のフィンの高さよりも大きく、また、フィンピッチが増加するにつれて形成可能なフィン102の最大の高さが増加することが判った。また、前記第2実施例と前記第3実施例とを比較して、フィン102の肉厚(金属帯112の肉厚)が大きい方がフィンピッチの増加に対する形成可能な最大のフィン102の高さの増加率が大きい傾向にあることが判った。
【0122】
以上のような結果から、本実施形態の製造装置1により行うフィンチューブ100の製造方法のように、金属管接触電極32とスクイズロール接触電極34との間で金属管101と金属帯112とスクイズロール6とを通じて高周波電流を流すことにより波形の金属帯112を金属管101に高周波電流溶接するとともにその金属帯112を金属管101に螺旋状に巻き付けてフィン102に成形する場合には、従来の製造装置でフィンチューブを製造する場合に比べて、形成可能な最大のフィン102の高さを増加できることが判明した。
【0123】
(変形例)
なお、本発明によるフィンチューブ製造方法及びフィンチューブ製造装置は、前記実施形態のようなものに必ずしも限定されない。本発明によるフィンチューブ製造方法及びフィンチューブ製造装置に例えば以下のような技術を採用することが可能である。
【0124】
(1)スクイズロール接触電極がスクイズロールに接触する位置は、金属帯の波形の波高方向に沿う方向から見て金属帯から外れた位置であってもよく、また、金属帯の移動方向において溶接位置を越えた位置であってもよい。
【0125】
(2)金属帯の波形は、その金属帯を平坦になるまで伸ばした場合の当該金属帯の伸長率が金属管への金属帯の巻き付けによって当該金属帯の外側縁に生じる引張変形による当該外側縁の伸長率よりも大きくなるように設定されていてもよい。
【0126】
(3)金属帯の波形は、その金属帯を平坦になるまで伸ばした場合の当該金属帯の伸長率が金属管への金属帯の巻き付けによって当該金属帯の外側縁に生じる引張変形による当該外側縁の伸長率から33.3%を減じて得られる値よりも小さくなるように設定されていてもよい。
【0127】
(4)また、金属帯の波形は、フィンチューブ製造装置内で金属帯に加工されるものに必ずしも限定されない。例えば、既に波形をなす金属帯をフィンチューブ製造装置に供給し、その波形の金属帯を案内装置のスクイズロールにより溶接位置に案内して金属管の外周面に高周波電流溶接するとともに金属管に螺旋状に巻き付けることによりフィンを成形してもよい。この場合、前記実施形態の製造装置1から波打加工装置4を削除し、波形をなす金属帯を案内装置5のスクイズロール6の一対の挟込部6b間に挟み込んで溶接位置150へ案内するようにすればよい。この場合のフィンチューブ製造装置は、前記波打加工装置4を備えていないこと以外は、前記実施形態による製造装置1と同様である。また、この場合のフィンチューブ製造方法は、波打加工装置4による金属帯112の波打加工工程を備えていないこと以外は、前記実施形態におけるフィンチューブ製造方法と同様であり、フィンチューブ製造装置に供給する金属帯に付与されている波形は前記条件(a),(b),(c)を満たすものとする。
【0128】
(5)金属帯の素材、すなわちフィンの素材として、アルミニウム以外の種々の金属を採用可能である。例えば、フィンの素材として、銅もしくはカーボン鋼もしくはステンレス鋼などを採用可能である。このようなアルミニウム以外の金属をフィンの素材として採用する場合でも、スクイズロールを形成する導電性素材として、フィンの素材に採用した金属よりも高い融点を有する金属を採用することが好ましく、また、スクイズロールの挟込部の厚みを波形の金属帯の波高方向の寸法と同じ厚みにした場合であってもその波形の金属帯の波高方向への変位を阻止するのに必要な剛性を確保することが可能となる金属、具体的には金属帯よりも互い剛性を確保可能な金属をスクイズロールの素材として採用することが好ましい。
【符号の説明】
【0129】
1 フィンチューブ製造装置
2 金属管駆動装置
4 波打加工装置
5 案内装置
6 スクイズロール
8 高周波電流発生装置
32 金属管接触電極
34 スクイズロール接触電極
36 電源
100 フィンチューブ
101 金属管
102 フィン
150 溶接位置
【要約】
【課題】金属帯に発生するうねりを低減するとともにフィンの外縁付近に減肉箇所及び/又は亀裂が生じるのを防ぎつつ、金属管の直径に対するフィンの高さの比率が大きいフィンチューブを製造できるようにする。
【解決手段】フィンチューブ製造方法は、金属帯案内工程と、溶接工程と、フィン成形工程と、を備え、金属帯案内工程では、波形の金属帯112を波高方向両側から挟み込むとともにその内側縁112aを金属管101の外周面に接近させるように金属帯112を押圧しつつ金属帯112の移動に追随して回転する導電性素材からなるスクイズロール6により金属帯112を案内し、溶接工程では、金属管接触電極32とスクイズロール接触電極34との間で高周波電流を金属管101と金属帯112とスクイズロール6とを通じて溶接位置150を経由するように流すことにより、前記内側縁112aを金属管101の外周面に高周波電流溶接する。
【選択図】
図1