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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-28
(45)【発行日】2022-05-12
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法および半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/365 20060101AFI20220502BHJP
   C30B 29/16 20060101ALI20220502BHJP
   C23C 16/448 20060101ALI20220502BHJP
   C23C 16/40 20060101ALI20220502BHJP
   H01L 21/338 20060101ALI20220502BHJP
   H01L 29/778 20060101ALI20220502BHJP
   H01L 29/812 20060101ALI20220502BHJP
   H01L 21/368 20060101ALI20220502BHJP
   H01L 21/331 20060101ALI20220502BHJP
   H01L 29/737 20060101ALI20220502BHJP
【FI】
H01L21/365
C30B29/16
C23C16/448
C23C16/40
H01L29/80 H
H01L21/368 Z
H01L29/72 H
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2017169149
(22)【出願日】2017-09-04
(65)【公開番号】P2019046984
(43)【公開日】2019-03-22
【審査請求日】2020-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】511187214
【氏名又は名称】株式会社FLOSFIA
(73)【特許権者】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(72)【発明者】
【氏名】神野 莉衣奈
(72)【発明者】
【氏名】藤田 静雄
(72)【発明者】
【氏名】金子 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】松田 時宜
(72)【発明者】
【氏名】四戸 孝
(72)【発明者】
【氏名】人羅 俊実
【審査官】桑原 清
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-007871(JP,A)
【文献】特開2015-018881(JP,A)
【文献】特開2008-294370(JP,A)
【文献】国際公開第2007/123093(WO,A1)
【文献】特開2006-062931(JP,A)
【文献】特開2015-120620(JP,A)
【文献】国際公開第2016/035696(WO,A1)
【文献】西中 浩之、吉本 昌広,ミストCVD法によるε-Ga2O3エピタキシャル成長,第77回応用物理学会秋季学術講演会 講演予稿集,日本,2016年,p.16-062
【文献】Hiroyuki Nishinaka, Daisuke Tahara, Masahiro Yoshimoto,Heteroepitaxial growth of ε-Ga2O3 thin films on cubic (111) MgO and (111) yttria-stablized zirconia,Japanese Journal of Applied Physics,日本,The Japan Society of Applied Physics,2016年11月11日,Volume55, Number12,1202BC-1~1202BC-4
【文献】Yuichi OSHIMA,Epitaxial growth of phase-pure ε-Ga2O3 by halide vapor phase epitaxy,JOURNAL OF APPLIED PHYSICS,米国,2015年08月24日,118,085301-1 - 085301-5
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/365
C30B 29/16
C23C 16/448
C23C 16/40
H01L 21/338
H01L 21/368
H01L 21/331
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子走行層と電子供給層とを積層する工程を少なくとも含む半導体装置の製造方法であって、前記電子供給層および前記電子走行層の積層を、それぞれミストCVD法を用いて、六方晶または三方晶の結晶構造を有し、ガリウムを少なくとも含む半導体結晶を主成分として含む第1の半導体膜、および第1の半導体膜の主成分とは組成が異なり、ε-Ga またはその混晶である半導体結晶を主成分として含む第2の半導体膜をそれぞれ形成することにより行うことを特徴とする製造方法。
【請求項2】
第1の半導体膜の主成分が、アルミニウムを含む請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
電子供給層と電子走行層とを少なくとも有する半導体装置であって、前記電子供給層が、六方晶または三方晶の結晶構造を有し、ガリウムを少なくとも含む第1の半導体結晶を主成分して含み、前記電子走行層が、第1の半導体結晶とは組成が異なり、ε-Ga またはその混晶である第2の半導体結晶を主成分として含むことを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
第1の半導体結晶が、アルミニウムを含む請求項記載の半導体装置。
【請求項5】
パワーデバイスである請求項3または4に記載の半導体装置。
【請求項6】
高周波デバイスである請求項のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項7】
HEMTまたはHBTである請求項のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項8】
半導体装置を備える半導体システムであって、前記半導体装置が、請求項のいずれかに記載の半導体装置である半導体システム。
【請求項9】
六方晶または三方晶の結晶構造を有し、ガリウムを少なくとも含む半導体結晶を主成分として含む第1の半導体膜上に、第1の半導体膜の主成分とは組成が異なり、ε-Ga またはその混晶である半導体結晶を主成分として含む第2の半導体膜を形成して積層構造体を製造する方法であって、第1の半導体膜表面がステップテラス構造を含むことを特徴とする製造方法。
【請求項10】
第1の半導体膜の主成分が、アルミニウムを含む請求項記載の製造方法。
【請求項11】
第1の半導体膜のステップテラス構造が、アニールにより形成されたものである請求項9または10に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に高温高周波特性が求められるパワーデバイスに有用な、半導体装置の製造方法および半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、基板上にGaN層及びAlGaN層を順次形成し、GaN層を電子走行層として用いる電子デバイス(化合物半導体装置)の開発が活発である。このような化合物半導体装置の一つとして、例えば、特許文献1に記載のような、GaN系の高電子移動度トランジスタ(HEMT:high electron mobility transistor)が挙げられる。GaN系HEMTを電源用のインバータのスイッチとして使用することにより、オン抵抗の低減及び耐圧の向上の両立が期待されている。しかしながら、GaN系HEMTを作製する場合には、高品質な結晶性のGaN基板を得ることが困難であるため、実用に足るだけの高周波特性が得られない問題があった。さらに、高耐圧化のためにチップサイズを大きくする必要がある等の課題もあった。なお、GaN系HEMTの電子走行層の形成には、MOCVD法が一般的に用いられるため、真空装置が必要となり、製造コストの増大も課題となっていた。
【0003】
一方、GaNよりも広いバンドギャップを有する半導体材料として、酸化ガリウム(Ga)が注目されている。酸化ガリウム(Ga)は、室温において4.8-5.3eVという広いバンドギャップを持ち、可視光及び紫外光をほとんど吸収しない透明半導体である。そのため、特に、深紫外線領域で動作する光・電子デバイスや透明エレクトロニクスにおいて使用するための有望な材料であり、近年においては、酸化ガリウム(Ga)を基にした、光検知器、発光ダイオード(LED)及びトランジスタの開発が行われている(非特許文献1参照)。なお、酸化ガリウム(Ga)には、α、β、γ、σ、εの5つの結晶構造が存在し、一般的に最も安定な構造は、β-Gaである。
【0004】
酸化ガリウムを半導体として用いた高周波デバイスについても、検討がされはじめており、特許文献2および3には、β-Gaを半導体として用いた高電子移動度トランジスタ(HEMT)が記載されている。また、特許文献4には、α―Ga2O3を半導体として用いたHEMTが記載されている。しかしながら、特許文献2~4に記載のように、Gaを半導体として用いてHEMTを作製した場合には、特に高温における高周波特性等において、まだまだ満足できる性能のものは得られていなかった。また、β-Gaはβガリア構造であるので、一般に電子材料等で利用する結晶系とは異なり、半導体装置への利用は必ずしも好適ではない。さらに、β-Ga薄膜の成長は高い基板温度や高い真空度を必要とするので、製造コストも増大するといった問題もある。また、非特許文献2にも記載されているように、β-Gaでは、高濃度(例えば1×1019/cm以上)のドーパント(Si)でさえも、イオン注入後、800℃~1100℃の高温にてアニール処理を施さなければドナーとして使えなかった。
【0005】
一方、近年は、ε―Gaに関する検討も行われており、例えば、特許文献5には、空間群P63mcを有する単結晶基板またはβ―Ga単結晶基板上に、HVPE法を用いてε―Gaを製造することが記載されている。しかしながら、HVPE法を用いてε―Gaを成膜する場合には、GaN基板、AlN基板等の高価な基板を用いる必要があり、製造コストの面などにおいて工業的に有用なものではなかった。また、HVPE法を用いてε―Gaを作製した場合には、特に、電子走行層または電子供給層として実用に足るレベルの高い結晶性を有する半導体膜を得ることが困難である問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6018360号
【文献】特開2015-120620号公報
【文献】再表2013/035841号公報
【文献】特開2015-228495号公報
【文献】特開2017-7871号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】Jun Liang Zhao et al, “UV and Visible Electroluminescence From a Sn:Ga2O3/n+-Si Heterojunction by Metal-Organic Chemical Vapor Deposition”, IEEE TRANSACTIONS ON ELECTRON DEVICES, VOL. 58, NO.5 MAY 2011
【文献】Kohei Sasaki et al, “Si-Ion Implantation Doping in β-Ga2O3 and Its Application to Fabrication of Low-Resistance Ohmic Contacts”, Applied Physics Express 6 (2013) 086502
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、高温高周波特性に優れた半導体装置を工業的有利に得ることができる製造方法、および高温高周波特性に優れた半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上位目的を達成すべく鋭意検討した結果、電子走行層と電子供給層とを積層する工程を少なくとも含む半導体装置の製造方法において、前記電子供給層および前記電子走行層の積層を、それぞれミストCVD法を用いて、準安定の結晶構造を有する半導体結晶を主成分として含む第1の半導体膜、および第1の半導体膜の主成分とは組成が異なり、六方晶の結晶構造を有する半導体結晶を主成分として含む第2の半導体膜をそれぞれ形成することにより行うと、高温高周波特性に優れ、さらに、電子供給層および電子走行層の表面積が小さくても、高温高周波特性および高温耐圧性等の半導体特性に優れた半導体装置を、工業的有利に製造できることを知見し、このような製造方法および該製造方法によって得られた半導体装置が、上記した従来の問題を一挙に解決できるものであることを見出した。
また、本発明者らは、上記知見を得た後、さらに検討を重ねて本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、以下の発明に関する。
[1] 電子走行層と電子供給層とを積層する工程を少なくとも含む半導体装置の製造方法であって、前記電子供給層および前記電子走行層の積層を、それぞれミストCVD法を用いて、準安定の結晶構造を有する半導体結晶を主成分として含む第1の半導体膜、および第1の半導体膜の主成分とは組成が異なり、六方晶の結晶構造を有する半導体結晶を主成分として含む第2の半導体膜をそれぞれ形成することにより行うことを特徴とする製造方法。
[2] 準安定の結晶構造が、六方晶または三方晶の結晶構造である前記[1]記載の製造方法。
[3] 第1の半導体膜の主成分が、ガリウムを含む前記[1]または[2]に記載の製造方法。
[4] 第1の半導体膜の主成分が、アルミニウムを含む前記[1]~[3]のいずれかに記載の製造方法。
[5] 第2の半導体膜の主成分が、ガリウムを含む前記[1]~[4]のいずれかに記載の製造方法。
[6] 第2の半導体膜の主成分が、ε―Gaまたはその混晶を含む前記[1]~[5]のいずれかに記載の製造方法。
[7] 電子供給層と電子走行層とを少なくとも有する半導体装置であって、前記電子供給層が、準安定の結晶構造を有する第1の半導体結晶を主成分して含み、前記電子走行層が、第1の半導体結晶とは組成が異なり、六方晶の結晶構造を有する第2の半導体結晶を主成分として含むことを特徴とする半導体装置。
[8] 準安定の結晶構造が、六方晶または三方晶の結晶構造である前記[7]記載の半導体装置。
[9] 第1の半導体結晶が、ガリウムを含む前記[7]または[8]に記載の半導体装置。
[10] 第1の半導体結晶が、アルミニウムを含む前記[7]~[9]のいずれかに記載の半導体装置。
[11] 第2の半導体結晶が、ガリウムを含む前記[7]~[10]のいずれか記載の半導体装置。
[12] 第2の半導体結晶が、ε―Ga2O3またはその混晶を含む前記[7]~[11]のいずれかに記載の半導体装置。
[13] パワーデバイスである前記[7]~[12]のいずれかに記載の半導体装置。
[14] 高周波デバイスである前記[7]~[13]のいずれかに記載の半導体装置。
[15] HEMTまたはHBTである前記[7]~[14]のいずれかに記載の半導体装置。
[16] 半導体装置を備える半導体システムであって、前記半導体装置が、前記[7]~[15]のいずれかに記載の半導体装置である半導体システム。
[17] 準安定の結晶構造を有する半導体結晶を主成分として含む第1の半導体膜上に、第1の半導体膜の主成分とは組成が異なり、六方晶の結晶構造を有する半導体結晶を主成分として含む第2の半導体膜を形成して積層構造体を製造する方法であって、第1の半導体膜表面がステップテラス構造を含むことを特徴とする製造方法。
[18] 準安定の結晶構造が、六方晶または三方晶の結晶構造である前記[17]記載の製造方法。
[19] 第1の半導体膜の主成分が、ガリウムを含む前記[17]または[18]に記載の製造方法。
[20] 第1の半導体膜の主成分が、アルミニウムを含む前記[17]~[19]のいずれかに記載の製造方法。
[21] 第2の半導体の主成分が、ガリウムを含む前記[17]~[20]のいずれかに記載の製造方法。
[22] 第2の半導体膜の主成分が、ε-Ga2O3またはその混晶を含む前記[17]~[21]のいずれかに記載の製造方法。
[23] 第1の半導体膜のステップテラス構造が、アニールにより形成されたものである前記[17]~[22]のいずれかに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の製造方法は、高温での高周波特性に優れた半導体装置を工業的有利に製造することができる。また、本発明の半導体装置は、高温での高周波特性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例で用いたミストCVD装置の概略構成図である。
図2】本発明における高電子移動度トランジスタ(HEMT)の好適な一例を模式的に示す図である。
図3】本発明におけるヘテロ接合バイポーラトランジスタ(HBT)の好適な一例を模式的に示す図である。
図4】電源システムの好適な一例を模式的に示す図である。
図5】システム装置の好適な一例を模式的に示す図である。
図6】電源装置の電源回路図の好適な一例を模式的に示す図である。
図7】実施例におけるXRD測定結果を示す図である。横軸が回析角(deg.)、縦軸が回折強度(arb.unit)を示す。
図8】実施例におけるAFM観察結果(AFM像)を示す図である。
図9】実施例におけるXRD測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の製造方法は、電子走行層と電子供給層とを積層する工程を少なくとも含む半導体装置の製造方法であって、前記電子供給層および前記電子走行層の積層を、それぞれミストCVD法を用いて、準安定の結晶構造を有する半導体結晶を主成分として含む第1の半導体膜、および第1の半導体膜の主成分とは組成が異なり、六方晶の結晶構造を有する半導体結晶を主成分として含む第2の半導体膜をそれぞれ形成することにより行うことを特長とする。本発明においては、第1の半導体膜および第2の半導体膜(以下、まとめて「前記半導体膜」ともいう)の積層を、例えば、前記半導体膜の原料溶液を霧化または液滴化し(霧化・液滴化工程)、得られたミストまたは液滴をキャリアガスでもって基体上まで搬送し(搬送工程)、ついで、前記基体上で前記ミストまたは液滴を熱反応させることによって、前記基体上に前記半導体膜を形成する(成膜工程)ことなどにより好適に行うことができる。
【0014】
(基体)
前記基体は、前記半導体膜を支持できるものであれば特に限定されない。前記基体の材料も、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、公知の基体であってよく、有機化合物であってもよいし、無機化合物であってもよい。前記基体の形状としては、どのような形状のものであってもよく、あらゆる形状に対して有効であり、例えば、平板や円板等の板状、繊維状、棒状、円柱状、角柱状、筒状、螺旋状、球状、リング状などが挙げられるが、本発明においては、基板が好ましく、結晶基板であるのがより好ましい。基板の厚さは、本発明においては特に限定されない。
【0015】
(結晶基板)
前記結晶基板としては、特に限定されないが、主面の全部または一部にε型の結晶構造を有している基板、三方晶の結晶構造を有している基板、六方晶の結晶構造を有している基板、β型の結晶構造を有している基板などが好適な例として挙げられ、このような好適な基板が、結晶成長面側の主面の全部または一部に前記結晶構造を有している基板であるのが好ましく、結晶成長面側の主面の全部に前記結晶構造を有している基板であるのがより好ましい。前記のε型の結晶構造を有している基板としては、例えば、ε―Ga基板等が挙げられる。前記の三方晶の結晶構造を有している基板としては、例えば、α―Al(サファイア)基板、α―Ga基板等が挙げられる。前記の六方晶の結晶構造を有している基板としては、例えば、SiC基板、ZnO基板、GaN基板等が挙げられる。本発明においては、前記結晶基板が、三方晶の結晶構造を有している基板であるのが好ましく、サファイア基板であるのがより好ましい。また、前記結晶基板は、オフ角を有していてもよい。前記結晶基板の基板形状は、板状であって、前記半導体膜の支持体となるものであれば特に限定されない。絶縁体基板であってもよいし、半導体基板であってもよいし、導電性基板であってもよい。前記基板の形状は、特に限定されず、略円形状(例えば、円形、楕円形など)であってもよいし、多角形状(例えば、3角形、正方形、長方形、5角形、6角形、7角形、8角形、9角形など)であってもよく、様々な形状を好適に用いることができる。本発明においては、前記基板の形状を好ましい形状にすることにより、基板上に形成される膜の形状を設定することができる。
【0016】
本発明においては、前記基体の表面にバッファ層が形成されているのも好ましい。前記バッファ層は、特に限定されないが、アルミニウム、ガリウムおよびインジウムから選ばれる1種または2種以上の金属を含むのが好ましく、ガリウムを少なくとも含むのがより好ましく、酸化ガリウムまたはその混晶であるのが最も好ましい。前記バッファ層の結晶構造も、特に限定されないが、本発明においては、六方晶または三方晶の結晶構造であるのが好ましい。前記バッファ層の形成手段は、特に限定されず、公知の手段であってよく、前記半導体膜の積層手段と同様であってよい。
【0017】
(霧化・液滴化工程)
霧化・液滴化工程は、前記原料溶液を霧化または液滴化する。前記原料溶液の霧化手段または液滴化手段は、前記原料溶液を霧化または液滴化できさえすれば特に限定されず、公知の手段であってよいが、本発明においては、超音波を用いる霧化手段または液滴化手段が好ましい。超音波を用いて得られたミストまたは液滴は、初速度がゼロであり、空中に浮遊するので好ましく、例えば、スプレーのように吹き付けるのではなく、空間に浮遊してガスとして搬送することが可能なミストであるので衝突エネルギーによる損傷がないため、非常に好適である。液滴サイズは、特に限定されず、数mm程度の液滴であってもよいが、好ましくは50μm以下であり、より好ましくは100nm~10μmである。
【0018】
(原料溶液)
前記原料溶液は、ミストCVD法により前記半導体膜が得られる溶液であれば特に限定されず、無機材料を含んでいてもよいし、有機材料を含んでいてもよいが、本発明においては、金属またはその化合物を含むのが好ましい。前記金属は、特に限定されないが、アルミニウム、ガリウムおよびインジウムから選ばれる1種または2種以上を含むのが好ましく、ガリウムを少なくとも含むのがより好ましい。本発明においては、前記原料溶液として、前記金属を錯体または塩の形態で有機溶媒または水に溶解または分散させたものを好適に用いることができる。錯体の形態としては、例えば、アセチルアセトナート錯体、カルボニル錯体、アンミン錯体、ヒドリド錯体などが挙げられる。塩の形態としては、例えば、有機金属塩(例えば金属酢酸塩、金属シュウ酸塩、金属クエン酸塩等)、硫化金属塩、硝化金属塩、リン酸化金属塩、ハロゲン化金属塩(例えば塩化金属塩、臭化金属塩、ヨウ化金属塩等)などが挙げられる。
【0019】
また、前記原料溶液には、ハロゲン化水素酸や酸化剤等の添加剤を混合するのも好ましい。前記ハロゲン化水素酸としては、例えば、臭化水素酸、塩酸、ヨウ化水素酸などが挙げられるが、中でも、より良質な膜が得られるとの理由から、臭化水素酸またはヨウ化水素酸が好ましい。前記酸化剤としては、例えば、過酸化水素(H)、過酸化ナトリウム(Na)、過酸化バリウム(BaO)、過酸化ベンゾイル(CCO)等の過酸化物、次亜塩素酸(HClO)、過塩素酸、硝酸、オゾン水、過酢酸やニトロベンゼン等の有機過酸化物などが挙げられる。
【0020】
前記原料溶液には、ドーパントが含まれていてもよい。原料溶液にドーパントを含ませることで、ドーピングを良好に行うことができる。前記ドーパントは、本発明の目的を阻害しない限り、特に限定されない。前記ドーパントとしては、例えば、スズ、ゲルマニウム、ケイ素、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウムまたはニオブ等のn型ドーパント、またはp型ドーパントなどが挙げられる。ドーパントの濃度は、通常、約1×1016/cm~1×1022/cmであってもよいし、また、ドーパントの濃度を例えば約1×1017/cm以下の低濃度にしてもよい。また、さらに、本発明によれば、ドーパントを約1×1020/cm以上の高濃度で含有させてもよい。
【0021】
原料溶液の溶媒は、特に限定されず、水等の無機溶媒であってもよいし、アルコール等の有機溶媒であってもよいし、無機溶媒と有機溶媒との混合溶媒であってもよい。本発明においては、前記溶媒が水を含むのが好ましく、水または水とアルコールとの混合溶媒であるのがより好ましい。
【0022】
(搬送工程)
搬送工程では、キャリアガスでもって前記ミストまたは前記液滴を前記基体に搬送する。前記キャリアガスとしては、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、例えば、酸素、オゾン、窒素やアルゴン等の不活性ガス、または水素ガスやフォーミングガス等の還元ガスなどが好適な例として挙げられる。また、キャリアガスの種類は1種類であってよいが、2種類以上であってもよく、流量を下げた希釈ガス(例えば10倍希釈ガス等)などを、第2のキャリアガスとしてさらに用いてもよい。また、キャリアガスの供給箇所も1箇所だけでなく、2箇所以上あってもよい。キャリアガスの流量は、特に限定されないが、0.01~20L/分であるのが好ましく、1~10L/分であるのがより好ましい。希釈ガスの場合には、希釈ガスの流量が、0.001~2L/分であるのが好ましく、0.1~1L/分であるのがより好ましい。
【0023】
(成膜工程)
成膜工程では、前記基体上で前記ミストまたは液滴を熱反応させることによって、前記基体上に、前記半導体膜を成膜する。熱反応は、熱でもって前記ミストまたは液滴が反応すればそれでよく、反応条件等も本発明の目的を阻害しない限り特に限定されない。本工程においては、前記熱反応を、通常、溶媒の蒸発温度以上の温度で行うが、高すぎない温度(例えば1000℃)以下が好ましく、650℃以下がより好ましく、350℃~600℃が最も好ましい。また、熱反応は、本発明の目的を阻害しない限り、真空下、非酸素雰囲気下、還元ガス雰囲気下および酸素雰囲気下のいずれの雰囲気下で行われてもよいが、非酸素雰囲気下または酸素雰囲気下で行われるのが好ましい。また、大気圧下、加圧下および減圧下のいずれの条件下で行われてもよいが、本発明においては、大気圧下で行われるのが好ましい。なお、膜厚は、成膜時間を調整することにより、設定することができる。
【0024】
本発明においては、前記成膜工程の後、アニール処理を行ってもよい。アニールの処理温度は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、通常、300℃~900℃である。また、アニールの処理時間は、通常、1分間~48時間であり、好ましくは10分間~24時間であり、より好ましくは30分間~12時間である。なお、アニール処理は、本発明の目的を阻害しない限り、どのような雰囲気下で行われてもよく、非酸素雰囲気下であってもよいし、窒素雰囲気下であってもよいし、大気中であってもよい。
【0025】
上記のようにして、前記基体上に、前記半導体膜を形成する。第1の半導体膜および第2の半導体膜を、この順に形成してもよいし、この逆の順に形成してもよいが、本発明においては、前記基体上に、前記電子供給層として、第1の半導体膜を形成し、第1の半導体膜上に、電子走行層として、第2の半導体膜を形成するのが好ましい。
【0026】
第1の半導体膜の主成分の結晶構造は、準安定の結晶構造であれば特に限定されないが、本発明においては、六方晶または三方晶の結晶構造であるのが好ましい。なお、準安定の結晶構造とは、複数の熱的安定相を有するもののうち、最も高温で安定な結晶構造以外の熱的安定相をいう。熱的安定相とは、通常、常温より高い温度域で安定な結晶構造をいう。例えば、第1の半導体膜の主成分が酸化ガリウムである場合、前記の準安定の結晶構造としては、α型、γ型、δ型またはε型等が挙げられる。また、本発明においては、第1の半導体膜の主成分が、アルミニウム、ガリウムおよびインジウムから選ばれる1種または2種以上の金属を含むのが好ましく、ガリウムを含むのも好ましく、高温高周波特性がより優れたものとなるので、アルミニウムを含むのが、より好ましい。また、本発明においては、第1の半導体膜の主成分が、酸化物半導体結晶であるのが好ましい。第2の半導体膜の主成分は、第1の半導体膜の主成分と組成が異なり、六方晶の結晶構造を有するものであれば、特に限定されない。第2の半導体膜の主成分は、ガリウムを含むのが好ましく、ε―Gaまたはその混晶を含むのがより好ましい。また、本発明においては、第2の半導体膜の主成分が、酸化物半導体結晶であるのが好ましい。ここで、主成分とは、例えば、第2の半導体膜がε―Gaを主成分として含む場合、第2の半導体膜中の金属元素中のガリウムの原子比が0.5以上の割合でε―Gaが含まれていればそれでよい。本発明においては、前記膜中の金属元素中のガリウムの原子比が0.7以上であることが好ましく、0.8以上であるのがより好ましい。なお、本発明においては、前記バッファ層を、前記電子走行層または前記電子供給層の一部または全部として、そのまま用いてもよい。
【0027】
また、本発明においては、前記半導体膜を、前記電子走行層および前記電子供給層として、そのままで用いてもよいし、公知の処理手段(例えば洗浄手段、研磨手段、エッチング手段、剥離手段等)による処理の後、前記電子走行層および前記電子供給層として用いてもよい。
【0028】
上記の好ましい製造方法によれば、電子供給層と電子走行層とを少なくとも有する半導体装置であって、前記電子供給層が、準安定の結晶構造を有する第1の半導体結晶を主成分して含み、前記電子走行層が、第1の半導体結晶とは組成が異なり、六方晶の結晶構造を有する第2の半導体結晶を主成分として含む半導体装置を得ることができる。第1の半導体結晶は、準安定の結晶構造を有する半導体結晶であれば、特に限定されないが、本発明においては、六方晶または三方晶の結晶構造を有する半導体結晶であるのが好ましい。また、第1の半導体結晶は、アルミニウム、ガリウムおよびインジウムから選ばれる1種または2種以上の金属を含むのが好ましく、ガリウムを含むのも好ましく、高温高周波特性がより優れたものとなるので、アルミニウムを含むのが、より好ましい。また、本発明においては、第1の半導体結晶が、酸化物半導体結晶であるのが好ましい。第2の半導体結晶は、六方晶の結晶構造を有しており、第1の半導体結晶とは異なる組成の半導体結晶であれば特に限定されない。本発明においては、第2の半導体結晶が、ガリウムを含むのが好ましく、ε―Gaまたはその混晶を含むのがより好ましい。また、本発明においては、第2の半導体結晶が、酸化物半導体結晶であるのが好ましい。ここで、主成分とは、例えば、前記電子走行層がε―Gaを主成分として含む場合、前記電子走行層中の金属元素中のガリウムの原子比が0.5以上の割合でε―Gaが含まれていればそれでよい。本発明においては、前記膜中の金属元素中のガリウムの原子比が0.7以上であることが好ましく、0.8以上であるのがより好ましい。
【0029】
第1の半導体結晶および第2の半導体結晶は、単結晶または多結晶であるのが好ましく、単結晶であるのがより好ましい。また、本発明においては、第1の半導体結晶および第2の半導体結晶は、バンドギャップが異なるのが好ましく、第1の半導体結晶のバンドギャップが第2の半導体結晶のバンドギャップよりも大きいのがより好ましい。前記電子供給層および前記電子走行層の厚さは、特に限定されず、それぞれ、1μm以上であってもよいし、1μm以下であってもよいが、本発明においては、前記電子供給層の厚さが、前記電子走行層の厚さよりも薄いのが好ましい。なお、前記電子走行層および電子供給層は、それぞれ、単層からなる層であってもよいし、多層からなる層であってもよい。また、前記電子走行層および前記電子供給層のそれぞれの表面積は、特に限定されないが、本発明においては、1mm以下であるのが好ましく、1mm角以下であるのがより好ましい。本発明においては、このような小型の半導体装置とした場合であっても、高温高周波特性および高温耐圧性等に優れた半導体装置を得ることができる。
【0030】
また、本発明においては、表面の一部または全部にステップテラス構造を含む第1の半導体膜を用いて、準安定の結晶構造を有する半導体結晶を主成分として含む第1の半導体膜上に、第1の半導体膜の主成分とは組成が異なり、六方晶の結晶構造を有する半導体結晶を主成分として含む第2の半導体膜を形成して積層構造体を製造するのが好ましく、このような好ましい積層構造体の製造方法も本発明に含まれる。本発明においては、前記積層構造体は、上記と同様にして、半導体装置に好適に用いられる。
「ステップテラス構造」は、単原子ステップまたは単分子ステップなどのステップが、原始的または分子的に平坦なテラス表面を形成している構造をいう。なお、前記ステップテラス構造の形成は、公知のステップテラス構造形成手段が用いられてよく、例えばステップテラス構造を有さない第1の半導体膜をアニール処理すること等によりステップテラス構造を形成することができる。前記アニール温度は、第1の半導体膜の結晶構造の安定温度内であれば特に限定されないが、高温であるのが好ましく、例えば、第1の半導体膜の主成分が、ガリウムおよびアルミニウムを含む場合には、800℃以上であるのがより好ましい。
ステップテラス構造を形成した第1の半導体膜を用いて第2の半導体膜を形成することにより、例えば安価なサファイア基板等を用いたり、真空装置のいらない成膜装置を用いたりすることができ、また、より容易かつ簡便に半導体装置を得ることができる。なお、第2の半導体膜の形成手段は特に限定されず、CVD、PVDなどの公知の成膜手段であってよいが、本発明においては、ミストCVD法であるのが好ましい。
【0031】
前記電子供給層は、ドーピングされているのも好ましい。ドーパントは、特に限定されず、公知のものであってよい。前記ドーパントとしては、例えば、スズ、ゲルマニウム、ケイ素、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウムまたはニオブ等のn型ドーパント、またはp型ドーパントなどが挙げられる。前記ドーパントの含有量は、前記電子供給層の組成中、0.00001原子%以上であるのが好ましく、0.00001原子%~20原子%であるのがより好ましく、0.00001原子%~10原子%であるのが最も好ましい。なお、前記電子供給層のキャリア密度は、ドーピング量を調節することにより、適宜設定することができる。なお、前記電子走行層は、ドーピングされていてもよいが、本発明においては、前記電子走行層がドーパントを含まないのが好ましい。前記電子走行層がドーピングされている場合のドーパントは、上記した電子供給層におけるドーパントと同様であってよい。
【0032】
前記半導体装置は、高温での高周波特性および高耐圧性に優れているため、パワーデバイスに有用である。前記半導体装置は、電極が半導体層の片面側に形成された横型の素子(横型デバイス)と、半導体層の表裏両面側にそれぞれ電極を有する縦型の素子(縦型デバイス)に分類することができ、本発明においては、横型デバイスにも縦型デバイスにも好適に用いることができるが、中でも、横型デバイスに用いることが好ましく、前記電子供給層上にゲート電極、ソース電極およびドレイン電極が設けられた横型デバイスとして用いるのがより好ましい。また、本発明においては、前記半導体装置が、高周波特性を活用する高周波デバイスであるのが好ましく、このような半導体装置としては、例えば、高電子移動度トランジスタ(HEMT)またはヘテロ接合バイポーラ・トランジスタ(HBT)などが挙げられる。
【0033】
以下、本発明の半導体装置の好適な例を、図面を用いて説明するが、本発明は、これらの例に限定されるものではない。なお、以下に例示する半導体装置において、本発明の目的を阻害しない限り、さらに他の層(例えば絶縁体層、半絶縁体層、導体層、半導体層、緩衝層またはその他中間層等)などが含まれていてもよいし、また、緩衝層(バッファ層)なども適宜省いてもよい。
【0034】
(HEMT)
図2は、本発明に係る高電子移動度トランジスタ(HEMT)の一例を示している。図2のHEMTは、電子供給層121a、電子走行層121b、n+型半導体層121c、半絶縁体層124、緩衝層128、ゲート電極125a、ソース電極125bおよびドレイン電極125cを備えている。
【0035】
なお、各電極の材料は、公知の電極材料であってもよく、前記電極材料としては、例えば、Al、Mo、Co、Zr、Sn、Nb、Fe、Cr、Ta、Ti、Au、Pt、V、Mn、Ni、Cu、Hf、W、Ir、Zn、In、Pd、NdもしくはAg等の金属またはこれらの合金、酸化錫、酸化亜鉛、酸化レニウム、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の金属酸化物導電膜、ポリアニリン、ポリチオフェン又はポリピロ-ルなどの有機導電性化合物、またはこれらの混合物並びに積層体などが挙げられる。前記電極の形成は、例えば、真空蒸着法またはスパッタリング法などの公知の手段により行うことができる。
【0036】
n+型半導体層は、特に限定されないが、電子供給層121aまたは電子走行層121bの主成分と同じかまたは類似している半導体を主成分とするのが好ましい。
【0037】
このようにして本発明の半導体装置を用いることにより、高温高周波特性により優れ、さらに、高温高耐圧等の半導体特性により優れた半導体装置を実現することができる。
【0038】
(HBT)
図3は、本発明に係るヘテロバイポーラ・トランジスタ(HBT)の一例を示している。図3のHBTは、エミッタ層221、ベース層222、コレクタ層223、サブコレクタ層224、基板229、コレクタ電極225a、ベース電極225bおよびエミッタ電極225cを備えている。本発明の半導体装置における電子供給層および電子走行層は、それぞれ、エミッタ層221およびベース層222、またはベース層222およびコレクタ層223に用いることができる。このようにして用いることにより、高温高周波特性により優れ、さらに、高温高耐圧等の半導体特性により優れた半導体装置を実現することができる。
【0039】
本発明の半導体装置は、上記した事項に加え、さらに公知の手段を用いて、パワーモジュール、インバータまたはコンバータとして好適に用いられ、さらには、例えば電源装置を用いた半導体システム等に好適に用いられる。前記電源装置は、公知の手段を用いて、配線パターン等に接続するなどすることにより、前記半導体装置からまたは前記半導体装置として作製することができる。図4に電源システムの例を示す。図4は、複数の前記電源装置と制御回路を用いて電源システムを構成している。前記電源システムは、図5に示すように、電子回路と組み合わせてシステム装置に用いることができる。なお、電源装置の電源回路図の一例を図6に示す。図6は、パワー回路と制御回路からなる電源装置の電源回路を示しており、インバータ(MOSFETA~Dで構成)によりDC電圧を高周波でスイッチングしACへ変換後、トランスで絶縁及び変圧を実施し、整流MOSFET(A~B’)で整流後、DCL(平滑用コイルL1,L2)とコンデンサにて平滑し、直流電圧を出力する。この時に電圧比較器で出力電圧を基準電圧と比較し、所望の出力電圧となるようPWM制御回路でインバータ及び整流MOSFETを制御する。
【実施例
【0040】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0041】
(実施例1)
1.電子供給層の形成
1-1.成膜装置
まず、図1を用いて、本実施例で用いたミストCVD装置19を説明する。ミストCVD装置19は、基板等の被成膜試料20を載置する試料台21と、キャリアガスを供給するキャリアガス源22aと、キャリアガス源22aから送り出されるキャリアガスの流量を調節するための流量調節弁23aと、キャリアガス(希釈)を供給するキャリアガス(希釈)供給源22bと、キャリアガス源(希釈)22bから送り出されるキャリアガス(希釈)の流量を調節するための流量調節弁23bと、原料溶液24aが収容されるミスト発生源24と、水25aが入れられる容器25と、容器25の底面に取り付けられた超音波振動子26と、内径40mmの石英管からなる成膜室27と、成膜室27の周辺部に設置されたヒータ28を備えている。試料台21は、石英からなり、被成膜試料20を載置する面が水平面から傾斜している。成膜室27と試料台21をどちらも石英で作製することにより、被成膜試料20上に形成される薄膜内に装置由来の不純物が混入することを抑制している。
【0042】
1-2.原料溶液の作製
アルミニウムアセチルアセトナート0.09mol/Lおよびガリウムアセチルアセトナート0.03mol/Lを超純水に溶解させ、これを原料溶液とした。
【0043】
1-3.成膜準備
上記1-2.で得られた原料溶液24aをミスト発生源24内に収容した。次に、被成膜試料20として、c面サファイア基板を試料台21上に設置させ、ヒータ28を作動させて成膜室27内の温度を450℃にまで昇温させた。次に、流量調節弁23を開いてキャリアガス源22からキャリアガスを成膜室27内に供給し、成膜室27の雰囲気をキャリアガスで十分に置換した後、キャリアガスの流量を3.0L/min、キャリアガス(希釈)の流量を0.5L/minにそれぞれ調節した。なお、キャリアガスとして窒素を用いた。
【0044】
1-4.成膜
次に、超音波振動子26を2.4MHzで振動させ、その振動を水25aを通じて原料溶液24aに伝播させることによって原料溶液24aを微粒子化させて原料微粒子を生成した。この原料微粒子が、キャリアガスによって成膜室27内に導入され、成膜室27内で反応して、被成膜試料20の成膜面でのCVD反応によって被成膜試料20上に成膜した。
【0045】
1-5.評価
上記1-4.にて得られた膜に付き、薄膜用XRD回折装置を用いて、15度から95度の角度で2θ/ωスキャンを行うことによって、膜の同定を行った。測定は、CuKα線を用いて行った。その結果、得られた膜は、α―(Al0.4Ga0.6であった。
【0046】
2.電子走行層の形成
アルミニウムアセチルアセトナートを原料溶液に用いなかったこと、ガリウムアセチルアセトナートに代えて、塩化ガリウムを用いたこと、および成膜温度を500℃としたこと以外は、上記1.と同様にして、上記1-4にて得られた電子供給層付きの基板上に、電子走行層を形成した。得られた電子走行層につき、上記1-5.と同様にして、XRD回折装置を用いて分析を行った。その結果を図7に示す。図7から分かるように、得られた膜は、ε―Gaであった。また、得られた膜につき、TEMによる電子線回折像の観察を行った結果、得られた膜は、高品質な単結晶膜であることが分かった。
【0047】
(実施例2)
電子供給層のα―(Al0.4Ga0.6を、α―(Al0.17Ga0.83となるように原料溶液のアルミニウムアセチルアセトナートとガリウムアセチルアセトナートの配合割合を調節したこと以外は実施例1の1.電子供給層の形成と同様にして、α―(Al0.17Ga0.83膜を得た。得られたα―(Al0.17Ga0.83膜を800℃でアニール処理し、ステップテラス構造を形成した。ステップテラス構造の確認はAFMを用いて行った。AFM像を図8に示す。
また、得られたステップテラス構造を有するα―(Al0.17Ga0.83膜を電子供給層として用いたこと以外は、実施例1の2.電子走行層の形成と同様にして電子供給層付きの基板上に電子走行層を形成した。XRD測定結果を図9に示す。図9から明らかな通り、電子走行層として、ε-Ga膜が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の半導体装置およびその製造方法は、半導体(例えば化合物半導体電子デバイス等)、電子部品・電気機器部品、光学・電子写真関連装置、工業部材などあらゆる分野に用いることができるが、とりわけ、パワーデバイス等に有用である。
【符号の説明】
【0049】
19 ミストCVD装置
20 被成膜試料
21 試料台
22a キャリアガス源
22b キャリアガス(希釈)源
23a 流量調節弁
23b 流量調節弁
24 ミスト発生源
24a 原料溶液
25 容器
25a 水
26 超音波振動子
27 成膜室
28 ヒータ
101a 電子供給層
101b 電子走行層
101c n+半導体層
105a ゲート電極
105b ソース電極
105c ドレイン電極
108 緩衝層
109 基板
221 エミッタ層
222 ベース層
223 コレクタ層
224 サブコレクタ層
225a コレクタ電極
225b ベース電極
225c エミッタ電極
229 基板

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9