(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-28
(45)【発行日】2022-05-12
(54)【発明の名称】水門開閉装置
(51)【国際特許分類】
E02B 7/36 20060101AFI20220502BHJP
【FI】
E02B7/36
(21)【出願番号】P 2018106962
(22)【出願日】2018-06-04
【審査請求日】2021-05-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000241290
【氏名又は名称】豊国工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 隆司
(72)【発明者】
【氏名】中村 直哉
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-188058(JP,A)
【文献】特開2017-061852(JP,A)
【文献】特開2008-101423(JP,A)
【文献】実開昭54-046481(JP,U)
【文献】特開2014-101739(JP,A)
【文献】特開2017-160768(JP,A)
【文献】実開昭50-029045(JP,U)
【文献】特開昭63-134433(JP,A)
【文献】特開2007-051427(JP,A)
【文献】特開2015-068372(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 7/36
E02B 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が扉体に連結されたチェーンと、前記チェーン
が巻き掛けられ、前記チェーンを送って前記扉体を昇降移動させる駆動スプロケットと、前記チェーンの他端側を収納するチェーン収納部と
、を備えた水門開閉装置であって、
前記駆動スプロケットと前記チェーン収納部との間
に延びる前記チェーンの全範囲に亘って、前記チェーンの屈曲を規制するチェーンガイドを配置し
て、
該チェーンガイドは、前記チェーンの厚さ方向両端面を挟み込むように摺動可能に保持するガイドレールにて構成されることを特徴とする水門開閉装置。
【請求項2】
前記チェーンは、その長手方向に所定の間隔をおいて、前記チェーンの両側部にそれぞれ突出する掛止部を有しており、
前記チェーン収納部は、前記チェーンの両側部の掛止部をそれぞれ掛止する一対の掛止レールを有しており、
前記ガイドレールは、前記チェーンの両側部をそれぞれ摺動可能に保持する
ように一対備えられることを特徴とする請求項1に記載の水門開閉装置。
【請求項3】
前記チェーンガイドは、
前記駆動スプロケットとの間で受け渡しする前記チェーンを前記駆動スプロケットの下方に案内する下方ガイド部と、
前記チェーン収納部
との間で受け渡しする前記チェーンを前記チェーン
収納部の上方に案内する上方ガイド部と、
前記下方ガイド部と前記上方ガイド部との間で前記チェーンを案内する中間部と、
を備えていることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の水門開閉装置。
【請求項4】
前記上方ガイド部は、前記チェーンが巻き掛けられ、前記チェーンが送られることによって従動回転するアイドルスプロケットを含むことを特徴とする請求項3に記載の水門開閉装置。
【請求項5】
前記下方ガイド部の曲げられた部分の外側にチェーン支持ローラを設けたことを特徴とする請求項3または4のいずれかに記載の水門開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扉体を昇降移動させて水門を開閉する水門開閉装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水門開閉装置の従来技術として、例えば、特許文献1が知られている。特許文献1には、一端が扉体に連結されたチェーンと、前記チェーンの中間部が巻き掛けられ、前記チェーンを送って前記扉体を昇降移動させる駆動スプロケットと、前記チェーンの他端側を収納するチェーン収納体(以下、チェーン収納部という)とを備えており、さらに、前記チェーン収納部のチェーン受入れ部分の位置が前記駆動スプロケットの位置よりも高く配置された水門開閉装置が開示されている。そして、特許文献1には、前記チェーンの他端側が巻回されて、チェーンの他端側を垂下させるよう案内する案内スプロケットと、該案内スプロケットを回転させて、前記チェーンの他端側をチェーン収納部に向けて送り出すように付勢する付勢手段とが記載されている。この付勢手段として、前記駆動スプロケットからの回転駆動を前記案内スプロケットに伝達する回転伝達手段と、案内スプロケットを回転駆動する案内スプロケット駆動装置とが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示されているように、案内スプロケットを回転させて、前記チェーンの他端側をチェーン収納部に向けて送り出すように付勢するよう構成された付勢手段を含む従来の水門開閉装置にあっては、付勢手段として、上記の回転伝達手段と案内スプロケット駆動装置のいずれの場合でも、複雑な構成となることから、部品数が多くなることに伴い広い設置スペースを必要とするとともに組立工数を削減することが困難であり、また、維持管理を簡素化することが困難であり、改善する余地があった。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、簡単な構成で、一端が扉体に連結されたチェーンを、駆動スプロケットの回転によって、チェーン収納部のチェーン受入れ部分に確実に送ることができる水門開閉装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、一端が扉体に連結されたチェーンと、前記チェーンが巻き掛けられ、前記チェーンを送って前記扉体を昇降移動させる駆動スプロケットと、前記チェーンの他端側を収納するチェーン収納部と、を備えた水門開閉装置であって、前記駆動スプロケットと前記チェーン収納部との間に延びる前記チェーンの全範囲に亘って、前記チェーンの屈曲を規制するチェーンガイドを配置して、該チェーンガイドは、前記チェーンの厚さ方向両端面を挟み込むように摺動可能に保持するガイドレールにて構成されることを特徴とする。
請求項1の発明では、チェーンガイドのチェーン収納部側端部がチェーン収納部の上方に配置される。扉体を上昇させる場合、駆動スプロケットを開方向に回転駆動する。チェーンは、中間部が駆動スプロケットに巻き掛けられているため、他端側に送られる。このとき、駆動スプロケットとチェーン収納部との間に配置されたチェーンガイドによりチェーンの屈曲が規制されているため、駆動スプロケットとチェーン収納部の受入れ部分との高さ方向の位置関係が、略同じ場合、または、いずれか一方が高い場合であっても、駆動スプロケットからチェーン収納部のチェーン受入れ部分へと、駆動スプロケットの回転だけでチェーンを押出して確実に送ることができる。そして、チェーン収納部のチェーン受け入れ部の位置が駆動スプロケットの位置よりも高く配置されている場合では特に、チェーンガイド内で送られるチェーンの自重がチェーンガイドからチェーン収納部のチェーン受入れ部に送り出されたチェーンの自重により軽減される。そのため、駆動スプロケットの回転駆動力に大きな負荷がかかることがない。また、扉体を下降させる場合、扉体の自重によりチェーンが一端側に送られるように駆動スプロケットの回転を許容するか(受動的な回転)、または、必要に応じて駆動スプロケットを閉方向に回転駆動する(能動的な回転)。チェーンは、中間部が駆動スプロケットに巻き掛けられているため、一端側に送られる。このとき、チェーン収納部に収納されていたチェーンは、チェーン収納部のチェーン受入れ部分からチェーンガイドに引き出される。そして、チェーンは、チェーンガイドによって駆動スプロケットに向かって安定して確実に送られ、一端側に引き出されることとなる。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の発明において、前記チェーンは、その長手方向に所定の間隔をおいて、前記チェーンの両側部にそれぞれ突出する掛止部を有しており、前記チェーン収納部は、前記チェーンの両側部の掛止部をそれぞれ掛止する一対の掛止レールを有しており、前記ガイドレールは、前記チェーンの両側部をそれぞれ摺動可能に保持するように一対備えられることを特徴とする。
請求項2の発明では、チェーンの長手方向に所定の間隔をおいて設けられる掛止部は、チェーンの両側部にそれぞれ突出している。掛止レールの駆動スプロケット側の端部がチェーン収納部の受入れ部分を構成する。一対のガイドレールは、チェーンの掛止部に干渉することなく両側部それぞれ摺動可能に保持することができるよう構成されている。チェーンは、駆動スプロケットとチェーン収納部のチェーン受入れ部分との間で送られる際、チェーン自体の両側部をそれぞれ一対のガイドレールに摺動可能に保持されていることにより、チェーンの屈曲を規制した状態で送ることが具現化される。そして、掛止部がチェーンの長手方向に所定の間隔で複数設けられているため、チェーン収納部に送り出されたチェーンは、その掛止部がチェーン収納部の掛止レール上に掛止され、その結果、チェーンの長手方向に互いに隣接する掛止部の間がU字状に吊下げられた状態で収納される。そのため、チェーンを掛止部の間の長さのほぼ半分の長さとなる高さで収納することができる。また、最後にチェーン収納部の掛止レール上に掛止された掛止部から、チェーンガイドのガイドレールから送り出されて次にチェーン収納部の掛止レール上に掛止されることとなる掛止部までの間のチェーンの自重により、ガイドレール内で送られるチェーンの自重を軽減することができる。一方、チェーン収納部に収納されたチェーンを、ガイドレールを介して駆動スプロケットから送り出す場合には、掛止レール上掛止部が掛止レール上から離れて上昇し、ガイドレールに掛止されて、チェーンが巻き掛けられた駆動スプロケットから扉体を下降させる方向へと送り出される。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項1または2のいずれかに記載の発明において、前記チェーンガイドは、前記駆動スプロケットとの間で受け渡しする前記チェーンを前記駆動スプロケットの下方に案内する下方ガイド部と、前記チェーン収納部との間で受け渡しする前記チェーンを前記チェーン収納部の上方に案内する上方ガイド部と、前記下方ガイド部と前記上方ガイド部との間で前記チェーンを案内する中間部と、を備えていることを特徴とする。
請求項3の発明では、扉体を上昇させる場合、駆動スプロケットから受けたチェーンを下方ガイド部が駆動スプロケットの下方に案内する。その後、中間部により下方から上方に送り、この送られたチェーンを上方ガイド部によりチェーン収納部の上方から送り出してチェーン収納部に引き渡す。チェーンガイドの中間部によってチェーンを確実に下方ガイド部から上方ガイド部に確実に送ることができる。そのため、駆動スプロケットからチェーン収納部へと確実にチェーンを確実に送ることができる。一方、扉体を下降させる場合、チェーン収納部の収納されていたチェーンは、上方ガイド部からチェーンガイドに受け入れられ、中間部を介して下方ガイド部を通り、巻き掛けられた駆動スプロケットの能動的または受動的な回転により、一方端側へと送られる。
【0009】
請求項4に記載した発明は、請求項3に記載の発明において、前記上方ガイド部は、前記チェーンが巻き掛けられ、前記チェーンが送られることによって従動回転するアイドルスプロケットを含むことを特徴とする。
請求項4の発明では、アイドルスプロケットは、巻き掛けられたチェーンが送られることに伴って従動回転する。そのため、チェーンが上方ガイド部に衝合することなく、チェーン収納部のチェーン受入れ部分上に安定して確実に送り出し収納することができる。
【0010】
請求項5に記載した発明は、請求項3または4のいずれかに記載の発明において、前記下方ガイド部の曲げられた部分の外側にチェーン支持ローラを設けたことを特徴とする。
請求項5の発明では、下方ガイド部の曲げられた部分の外側にチェーン支持ローラが設けられていることにより、駆動スプロケットを開方向に回転させてチェーンをチェーン収納部に向けて送るときに、チェーンが下方ガイド部の曲げられた部分を外側に向かって押圧するのをチェーン支持ローラが受ける。そのため、チェーンのガイドレールに対する摩擦抵抗が低減される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、チェーンの屈曲を規制するチェーンガイドを、駆動スプロケットとチェーン収納部との間に配置するという簡単な構成で、一端が扉体に連結されたチェーンを、駆動スプロケットの回転によって、チェーン収納部のチェーン受入れ部分に確実に送ることが可能な水門開閉装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】水門と本発明の水門開閉装置の第1の実施の形態を示す正面図である。
【
図3】
図2に示した水門開閉装置の変形例を示す概略図である。
【
図4】チェーンと、このチェーンを保持するチェーンガイドの形状の一例(A)、および別の例(B)を説明するために示した断面図である。
【
図5】本発明の水門開閉装置の第2の実施の形態を示す要部拡大図である。
【
図6】
図5に示した水門開閉装置の変形例を示す概略図である。
【
図7】本発明の水門開閉装置の第3の実施の形態を示す要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
最初に、本発明を適用する水門Gの実施の一形態を
図1に基づいて説明する。
【0014】
水門Gは、河川に通じる水路等の幅方向両側に一対の門柱10、10がそれぞれ立設されており(
図1では幅方向の一方における一対の門柱10、10のみが示されている。)、各門柱10の上部の間にわたって、操作台11が跨設されている。扉体2は、両門柱10、10の間に、上流側および下流側に移動不能に保持された状態で、昇降可能に配置されている。操作台11上には架台12が配置され、該架台12上に水門開閉装置が設けられる。
【0015】
水門Gは、扉体2を上昇させることにより開き、扉体2を水路等の底(下降限)Gaまで下降させることにより閉じることとなる。そして、扉体2の底Gaに対する高さ(開放度)を調整することで、水門Gを通る水量を調整することができる。
【0016】
次に、本発明による水門開閉装置1の実施の一形態を
図1~
図3に基づいて説明する。
本実施の形態における水門開閉装置1は、一端が扉体2に連結されたチェーン3と、回転駆動力を付与する駆動装置4と、チェーン3の中間部が巻き掛けられ駆動装置4によって回転駆動される駆動スプロケット5と、チェーン3の他端側を収納するチェーン収納部25と、駆動スプロケット5とチェーン収納部25との間に配置されるチェーンガイド6とを備えている。
【0017】
チェーン3は、扉体2の幅や高さなどを含む大きさや、扉体2の重量などに応じて、単列式または多列式のローラチェーンを採用することができる。本実施の形態では、
図4に示したように、2本の単列式ローラチェーンの外プレートを互いに密着させて平行に配し、最外側の外プレートにわたって連結ピンを設けて、1本の2列式ローラチェーンを構成している。以下の説明では、2列式ローラチェーンの外側の、各単列式ローラチェーンの外プレートと内プレートを合わせて最外側プレート群30と、この最外側プレート群30のなかの外側プレートのみを最外側プレート3aと称する。また、チェーン3は、必要に応じて、1本のチェーン3を扉体2の中央に連結することができ、また、2本のチェーン3、3を一対でそれぞれ扉体2の上部の両端近傍に連結することもできる。さらに、チェーン3の扉体2に対する連結は、チェーン3の一方の先端を扉体2の上部に直接固定する構成に限定されることはなく、図示は省略するが、扉体2の上部に動スプロケットを設け、この動スプロケットにチェーン3の一方の端部側の中間部を巻き掛けて、その先端部を例えば操作台11の下面に固定することもできる。
【0018】
チェーン3には、最外側プレート3aにそれぞれ突出する掛止部29が、チェーン3の長手方向に一定間隔をおいて複数設けられている。掛止部29の構成は、特に限定されることはなく、たとえば、ローラチェーンの長手方向に一定間隔をおいた特定の連結ピンを延長することにより構成することができ、また、図示は省略するが、ローラチェーンの連結ピンとは別のピンをローラチェーンの長手方向に一定間隔をおいた特定の最外側プレート3aに設けることもできる。さらに、掛止部29は、上記延長した連結ピンまたは連結ピンとは別のピン等を軸として回動し、後述するガイドレール60のフランジ62に対して転動するローラを含むこともできる。
【0019】
駆動装置4は、特に限定されることはなく、例えば電動モータを採用することができる。駆動装置4の出力軸(図示は省略する)と、駆動スプロケット5の回転軸との間には、必要に応じて減速機構(図示は省略する)を介装することができる。駆動スプロケット5の回転軸は、その下中心軸線を、水門Gを流れる水流と平行に、または水門Gの幅方向と平行に配置することができる。なお、上述したように複数本のチェーン3、3、・・・を用いる場合には、チェーン3に応じた数の駆動スプロケット5が設けられる。この場合、各駆動スプロケット5を共通の回転軸に取付けてもよく、また、個別の回転軸に取付けてもよい。
【0020】
本実施の形態におけるチェーン収納部25は、チェーン3の掛止部29をそれぞれ掛止する一対の掛止レール26、26と、該各掛止レール26、26を上方に支持する支持本体27とを備えている。支持本体27は、架台12上に配設される。
【0021】
一対の掛止レール26、26は、チェーンが屈曲する方向にそれぞれ伸びており、チェーンの最外側プレート間の幅よりもわずかに広く、チェーン3の両側部の掛止部29を掛止できる間隔で、互いに平行に配設されている。掛止レール26の駆動スプロケット5側の端部(図における左方の端部)は、チェーン3の受入れ部分26aを構成する。
【0022】
支持本体27の駆動スプロケット5から離れた側の端部(図における右方の端部)26bの高さは、駆動スプロケット5に近い側の端部26aの高さよりも低く設定されている。そのため、掛止レール26、26は、駆動スプロケット側の端部26aが、反対側の端部26bよりも高くなるように傾斜している。また、駆動スプロケット5から離れた側の低い支持本体27の上端には、チェーン3の他端の先端部が固定されている。この構成により、チェーン3の各掛止部29は、掛止レール26の受入れ部分となる駆動スプロケット5側の端部26aに掛止されると、チェーン3の自重によって掛止レール26上を駆動スプロケット5側から反対側の端部26b(
図3)に向かって順次移動することとなる。
【0023】
さらに、掛止レール26の、駆動スプロケット5と反対側の端部26b(
図3)における架台12の上面からの高さは、チェーン3の長手方向における掛止部29、29間の長さ(ピッチ)のほぼ半分の長さよりも高くなるよう設定されている。そのため、チェーン3の掛止部29を掛止レール26に掛止して吊り下げた状態で、チェーン3の掛止部29,29間の折り返した下端が架台12に接触することがない。
なお、チェーン収納部25は、係合部29の間のチェーン3を吊り下げる本実施の形態に限定されることはなく、他の型式のものを採用することができる。
【0024】
本実施の形態においては、駆動スプロケット5と掛止レール26の駆動スプロケット5側の端部26aとの高さ方向の位置関係は、支持本体27の上方に掛止レール26がチェーン3を吊り下げ得る高さに支持されており、しかも、掛止レール26の駆動スプロケット5側の端部26aが反対側の端部26b(
図3)よりも高くなるよう傾斜しているため、掛止レール26の駆動スプロケット5側の端部(すなわち、チェーン3の受入れ部分)26aが駆動スプロケット5の回転軸よりも高く位置している。
【0025】
チェーンガイド6は、
図4の(A)に示した実施の形態の場合、互いに所定の間隔をおいて平行に配設された一対のガイドレール60、60により構成されている。各ガイドレール60は、この実施の形態では全長にわたって、ウエブ61と、このウエブ61の幅方向両端にそれぞれ一体に成形されたフランジ62、62とを有する、断面がコの字状に成形されている。そして、
図4の(A)に示した実施の形態におけるガイドレール60は、ウエブ61の幅(すなわち、両フランジ62、62の間隔)が2列式のチェーン3の最外側プレート群30の各端面を摺動可能に保持し、且つ、両フランジ62、62のそれぞれの幅が最外側プレート群30の厚さと最外側プレート3aから突出する掛止部29の長さとを合わせた寸法よりもわずかに大きく設定されている。この
図4の(A)に示した実施の形態においては、一対のフランジ62、62の間で2列式のチェーン3の最外側プレート群30を保持する。すなわち、チェーンガイド6により支持されるチェーン3の両側部は、最外側プレート群30により構成されている。そのため、チェーン3は、最外側プレート群30が一対のフランジ62、62の間で保持されていることにより、その屈曲が規制されてガイドレールの形状に沿って送られることとなる。なお、ガイドレール60は、チェーン3の屈曲を制することができるよう摺動可能に保持することができるものであれば、断面形状がコの字状に限定されることはない。別のガイドレールの例として例えば
図4の(B)に示すように、チェーン3の各連結ピンの両端3b、3bをそれぞれ外側に突出させて、ガイドレール60’、60’がそれぞれ、最外側プレート3a、3aが摺接するとともに、各連結ピンの外側に突出した部分3b、3bを摺動可能に保持し且つチェーン3の長さ方向に所定の間隔で設けられた掛止部29を通過させることが可能な、断面形状Lの字状の対のレール60a’、60a’によりそれぞれ構成することもできる。この場合、各連結ピンの外側に突出した部分3b、3bが、チェーンガイド6により保持されるチェーン3の両側部を構成する。そして、チェーン3は、各連結ピンの外側に突出した部分3b、3bが断面形状Lの字状の対のレール60a’、60a’により保持されるため、その屈曲が規制されてガイドレールの形状に沿って送られることとなる。
【0026】
さらに、
図2に示した実施の形態におけるガイドレール60は、その長さ方向に下方ガイド部60aと上方ガイド部60bと中間部60cとが一体に連続しており、全体の形状として略S字状に成形されている。
【0027】
下方ガイド部60aは、
図2における上方のフランジ62aの端部が駆動スプロケット5の上方に位置しており、下方のフランジ62bの端部が駆動スプロケット5の下方に位置している。そして、下方ガイド部60aは、駆動スプロケット5の位置よりも下方に一端延び、その後、チェーン3がスムーズに送り出される程度の曲率半径R1(ガイドレール60の曲率半径については、外側と内側(上方と下方)に位置するフランジ62a、62b間の曲率とする。以下の他の部分における曲率についても、同じとする。)で曲げられて、
図2に示した実施の形態では水平方向に延びる部分60a’を介して上方に曲率半径R2で曲げられて成形されている。
なお、下方ガイド部は、
図2に示した実施の形態に限定されることはなく、
図3に示したように、
図2に示した実施の形態における水平方向に延びる部分60a’を有することなく、駆動スプロケット5の位置よりも下方に一端延びてから、所定の曲率半径R3で上方に向くまで曲げられて、中間部60cに連続する形状に成形することもできる。
中間部60cは、下方ガイド部60aから連続して成形されたたもので、
図1~3に示した実施の形態では鉛直に延びている。
【0028】
一方、上方ガイド部60bは、中間部60cから連続して、チェーン3がスムーズに送り出される程度の曲率半径R4で曲げられている。そして、上方ガイド部60bの、
図2、および
図3における上方のフランジ62aと下方のフランジ62bの端部は、扉体2の上昇時に押し出されたチェーン3の掛止部29を掛止レール26上に掛止させることができ、且つ、扉体2の下降時に掛止レール26の掛止部29が掛止されていたチェーンを引き込むことができる位置に設定されている。
【0029】
次に、上述した実施の形態における水門開閉装置の作動を説明する。
【0030】
扉体2を上昇させて、閉じていた状態から水門Gを開放する場合、または、水門Gの開放度を多くする場合、駆動装置4により駆動スプロケット5を開方向(
図2、
図3では右回り)に回転駆動する。駆動スプロケット5にチェーン3の中間部が巻き掛けられていため、チェーン3はチェーン収納部25に向かって送られる。このとき、チェーン3は、その屈曲がガイドレール60によって規制されているため、ガイドレール60内で押し出され、ガイドレール60の長手方向に沿って送られる。すなわち、駆動スプロケット5から下方ガイド部60aで一旦下方に向かい、その後上方に向きを変える。続いて、チェーン3は、ガイドレール60の直方向に延びる中間部60cを介して上方ガイド部60bに押し出され、上方ガイド部60bで所定の曲率で曲げられて下方に向かって送られ、ガイドレール60のチェーン収納部25側の端部から下方に向けて送り出される。そのため、駆動スプロケット5に巻き掛けられたチェーン3を、駆動スプロケット5の回転駆動だけで、駆動スプロケット5よりも上方に位置するチェーン収納部25のチェーン受入れ部分26aに確実に送ることができる。
【0031】
ガイドレール60のチェーン収納部25側の端部の下方にチェーン収納部25の掛止レール26の駆動スプロケット5側の端部が配置されているため、ガイドレール60のチェーン収納部25側の端部から送り出されたチェーン3は、その長手方向に所定の間隔で設けられた掛止部29が掛止レール26上に確実に受け入れられて、順次掛止されることとなる。そして、掛止レール26の傾斜により、掛止レール26上に受け入れられた掛止部29は、駆動スプロケット5とは反値側の端部26b(
図3)に向かって順次移動することとなる。チェーン3は、掛止レール26上に掛止された掛止部29、29の間が一対の掛止レール26、26間に進入し、各掛止部29でそれぞれ折り返されて、各掛止部29、29の間の長さの半分の高さでほぼU字状に吊り下げられる。
【0032】
また、最後にチェーン収納部25の掛止レール26上に掛止された掛止部29から、チェーンガイド6のガイドレール60から送り出されて次にチェーン収納部25の掛止レール26上に掛止されることとなる掛止部29までの間のチェーン3の自重により、ガイドレール60の下方ガイド部60aからから上方ガイド部60bに向かって中間ガイド部60cを送られるチェーン3の自重が軽減される。そのため、本実施の形態においては、扉体2を上昇させるときに、駆動スプロケット5を回転駆動する駆動装置4に大きな負荷をかけることなく、低い位置にある駆動スプロケット5から高い位置にあるチェーン収納部25のチェーン受入れ部分26aにチェーン3を少ない駆動力で送って収納することができる。
【0033】
一方、扉体2を下降させて、開いていた状態から水門Gを閉鎖する場合、または、水門Gの開放度を少なくする場合、扉体2の自重によりチェーン3が一端側に送られるように駆動スプロケット5の回転を許容するか(すなわち、駆動スプロケット5を受動的に回転させる)、または、必要に応じて駆動スプロケット5を閉方向(
図2、
図3では左回り)に回転駆動して(すなわち、駆動スプロケット5を能動的に回転させる)、チェーン3を一端側に送る。このとき、チェーン収納部25に収納されていたチェーン3は、上方に位置するチェーン収納部25のチェーン受入れ部分26aからチェーンガイド60に引き込まれ、チェーンガイド60の上方ガイド部60b、中間部60c、下方ガイド部60aを介して、下方に位置する駆動スプロケット5に向かって安定して確実に送られ、一端側に引き出されることとなる。チェーン収納部25のチェーン受入れ部分26aからチェーンガイド6に引き込まれるときのチェーン3の自重は、チェーンガイド6の上方ガイド部60bと下方ガイド部60aの高低差によるチェーン3の自重で軽減される。そのため、駆動スプロケット5を閉方向に回転駆動する必要がある場合であっても、小さな駆動力で駆動スプロケット5を回転させることができる。
【0034】
次に、本発明の水門開閉装置の第2の実施の形態を
図4~
図5に基づいて説明する。この第2の実施の形態においては、上述した第1の実施の形態と同様または相当する構成について同じ符号を付してその説明を省略し、異なる構成のみを説明することとする。
【0035】
上述した第1の実施の形態におけるチェーンガイド6は、下方ガイド部60a、中間部60c、および上方ガイド部60bにわたって全体に、ウエブ61と図面上における上方および下方のフランジ62a、62bを有する断面コ字状のガイドレール60により構成されていたのに対し、第2の実施の形態におけるチェーンガイド6は、上方ガイド部60bが第1の実施の形態における下方のフランジ62bを備えておらず、その代わりにアイドルスプロケット7を備えている。
【0036】
アイドルスプロケット7は、回動軸(図示は省略する)に回動可能に支持され、チェーン3が巻き掛けられており、チェーン3がその一方端側または他方端側に送られることに伴って従動回転する。チェーン3の、アイドルスプロケット7から下方ガイド部60aまでの自重が、アイドルスプロケット7から掛止部29が掛止レール26に支持されるまでの自重により軽減されることは、上述した第1の実施の形態と同様である。アイドルスプロケット7に巻き掛けられたチェーン3の、下方ガイド部60aまでの自重と、掛止部29がチェーン収納部25の掛止レール26に支持されるまでの自重とをアイドルスプロケット7が支持するので、第1の実施の形態における上方ガイド部60bの下方のフランジ62bに対するチェーン3の摩擦抵抗が大幅に少なくなり、また、アイドルスプロケット7の回動によってチェーン3がスムーズに送られるので、チェーン3が上方ガイド部60bの上方のフランジ62aに当ることがない。そのため、第2の実施の形態では、上方ガイド部60bの曲率半径R4を第1の実施の形態と比較して小さくしても、チェーン3をスムーズに送ることができる。したがって、この第2の実施の形態では、第1の実施の形態と比較して、さらに駆動スプロケットを回転させるため駆動力を軽減させることができる。
【0037】
なお、上述した第1および第2の実施の形態では、チェーンガイド6を構成するガイドレール60の中間部60cを鉛直に配置した場合を示したが、いずれの実施の形態でも、必要に応じて、下方ガイド部60aと上方ガイド部60bとの水平方向の相対的な位置を近づけ、または離すように、中間部60cを傾斜させることができる。
【0038】
また、上述した第1および第2の実施の形態において、チェーンガイド6を構成するガイドレール60の、特に下方ガイド部60aおよび上方ガイド部60bの内面には、チェーン3の摺動抵抗を軽減させるためにたとえばフッ素樹脂をコーティングしたシート材を貼るなどして固着することもできる。
【0039】
さらに、上述した第1および第2の実施の形態において、チェーンガイド6を構成するガイドレール60の下方ガイド部60aの曲率半径R1、R2、R3、および上方ガイド部60bの曲率半径R4若しくはアイドルスプロケット7の径は、ガイドレール60の形状に沿って屈曲を規制されつつ送られるチェーン3がガイドレール60の内面に当る角度を緩やかにすることができる程度に設定することができる。そして、下方ガイド部60aの曲率半径R1、R2、R3は、同じでもよく、必要に応じて異ならせることもできる。
【0040】
次に、本発明の水門開閉装置の第3の実施の形態を
図7に基づいて説明する。この第3の実施の形態においては、上述した第1および第2の実施の形態と同様または相当する構成について同じ符号を付してその説明を省略し、異なる構成のみを説明することとする。
【0041】
この実施の形態における水門開閉装置は、ガイドレール60、60の間であって、ガイドレール60の下方ガイド部60aの曲率半径R1、R2で曲げられた部分の外側に、かかる曲げられた部分に沿って、チェーン支持ローラ63が複数配設されている。そして、上述したようにチェーン3が2列式ローラチェーンにより構成されているため、各チェーン支持ローラ63は、チェーン3の各列における連結ピンに外挿された円筒状ローラ31、31(
図4を参照)にそれぞれ接するよう一対で構成されている。
図3および
図6に示したようにガイドレール60の下方ガイド部60aが曲率半径R3で曲げられた場合には、かかる曲率半径R3で曲げられた部分の外側に複数のチェーン支持ローラ63が配設される。チェーン支持ローラ63を設ける数は、特に限定されることはなく、下方ガイド部60aの曲率半径の大きさ等に応じて設定することができる。なお、本実施の形態では、チェーンガイド6の上方ガイド部6bを、第1の形態(
図1~3を参照)と第2の実施の形態(
図5、6を参照)のいずれの構成とすることができる。
【0042】
上述したように、駆動装置4により駆動スプロケット5を開方向に回転駆動して、ガイドレール60により屈曲が規制されたチェーン3をチェーン収納部25に向けて送る場合、送られるチェーン3はガイドレール60の下方ガイド部60aの曲率半径R1、R2で曲げられた部分を外側にむかって押圧する。そのため、チェーン3のガイドレール60に対する摩擦抵抗が大きくなり、駆動スプロケット5の回転駆動力に負荷がかかり、また、チェーン3とガイドレール60が摩耗することが考えられる。しかしながら、本実施の形態では、チェーン支持ローラ63が、ガイドレール60の下方ガイド部60aの曲率半径R1、R2で曲げられた部分において、チェーン3の外側にむかって押圧する力を受ける。したがって、チェーン3のガイドレール60に対する摩擦抵抗を低減させることができる。
【0043】
本発明では、極めて簡単な構成のガイドレール60により、チェーン3をガイドレール60の形状に沿って屈曲を規制した状態で送ることができるので、特にチェーン収納部のチェーン受け入れ部の位置が駆動スプロケットの位置よりも高く配置されている場合であっても、従来の技術で述べた回転伝達手段のような機構や、駆動装置4以外の案内スプロケットを回転駆動するための動力を必要とすることなく、下方に位置する駆動スプロケット5から上方に位置するチェーン収納部25の受け入れ部26aへ送ることができる。
【0044】
そして、チェーン3の、上方ガイド部60bから下方ガイド部60a側の自重が、上方ガイド部60bから既に掛止レール26上に掛止された掛止部29までの自重により軽減されるため、駆動スプロケット5を回転駆動するために必要な駆動力を極めて低くすることができる。
【0045】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されることはなく、チェーン収納部のチェーン受け入れ部の位置が駆動スプロケットの位置と同じ高さに配置されている場合、および、チェーン収納部のチェーン受け入れ部の位置が駆動スプロケットの位置よりも低く配置されている場合であっても、一端が扉体に連結されたチェーンを、駆動スプロケットの回転によって、チェーン収納部のチェーン受入れ部分に確実に送ることができる。なお、いずれの場合でも、チェーンガイド6のチェーン収納部25の受け入れ部26a側端部は、受け入れ部26aの上方に配置される。
【符号の説明】
【0046】
G:水門、 1:水門開閉装置、 2:扉体、 3:チェーン、 4:駆動装置、 5:駆動スプロケット、 6:チェーンガイド、 7:アイドルスプロケット、 25:チェーン収納部、 26:掛止レール、 29:掛止部、 60:ガイドレール、 60a:下方ガイド部、 60b:上方ガイド部、 60c:中間部、 63:チェーン支持ローラ