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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-28
(45)【発行日】2022-05-12
(54)【発明の名称】金属薄板接合装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 20/00 20060101AFI20220502BHJP
【FI】
B23K20/00 310P
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017211815
(22)【出願日】2017-11-01
(65)【公開番号】P2019084535
(43)【公開日】2019-06-06
【審査請求日】2020-10-19
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度国立研究開発法人科学技術振興機構 研究成果展開事業 研究成果最適展開支援プログラム 産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】592189206
【氏名又は名称】株式会社小松精機工作所
(74)【代理人】
【識別番号】100096002
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 弘之
(74)【代理人】
【識別番号】100091650
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 規之
(72)【発明者】
【氏名】相澤 龍彦
(72)【発明者】
【氏名】杉田 良雄
(72)【発明者】
【氏名】白鳥 智美
【審査官】黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】実開平05-013660(JP,U)
【文献】特開2009-176841(JP,A)
【文献】特開2005-230827(JP,A)
【文献】特開昭53-102247(JP,A)
【文献】特開平6-15465(JP,A)
【文献】特開2004-315884(JP,A)
【文献】特開2016-168597(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の金属薄板を積層させた接合対象物を載置する加工台と、
上記接合対象物に圧力を加える加圧部材と、
上記加工対象物の一面及び反対面に当接される一対の加熱板と、
一方の加熱板と加工台との間、及び他方の加熱板と加圧部材との間に介装される一対の断熱材と、
上記加工台、加圧部材、加熱板及び断熱材を収納する真空槽と、
この真空槽の外部に配置された誘導加熱用のコイルと、
上記コイルに高周波電流を供給する電源を備え、
上記の各加熱板は、誘導加熱可能な金属材より構成されることを特徴とする金属薄板接合装置。
【請求項2】
上記加熱板にスリットを形成することにより、加熱板が複数の発熱セルに区分されていることを特徴とする請求項1に記載の金属薄板接合装置。
【請求項3】
上記加熱板の表面温度を計測する温度センサと、
この温度センサから出力される加熱板の表面温度の値が、所定の上限値を越えた時点で上記コイルへの電源供給をOFFすると共に、所定の下限値を下回った時点で上記コイルへの電源供給をONする制御手段を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の金属薄板接合装置。
【請求項4】
上記加熱板の表面温度を計測する温度センサと、
この温度センサから出力される加熱板の表面温度の値が、所定の上限値を越えた時点で上記コイルに供給する電力量を低減させると共に、所定の下限値を下回った時点で上記コイルに供給する電力量を増加させる制御手段を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の金属薄板接合装置。
【請求項5】
上記の各加熱板と接合対象物との間に、窒化アルミ板、炭化珪素板、グラファイト板、アモルファスカーボン板の何れかよりなる融着防止板を介装させたことを特徴とする請求項1~4の何れかに記載の金属薄板接合装置。
【請求項6】
所定の周期で、上記コイルを上下に往復移動させる機構を備えたことを特徴とする請求項1~5の何れかに記載の金属薄板接合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、金属薄板接合装置に係り、特に、複数枚の薄いSUS板等を拡散接合する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、薄いSUS等の金属板(金属箔)を接合する方法の一つとして、拡散接合(熱圧着)技術が実用化されている。
これは、金属板同士を真空中で所定の温度まで加熱した状態で接合面を加圧し、しばらく保持すると金属の拡散現象により接合されるというものであり、接着剤等の介在物に頼らずに、接合面を確実に接合させることができる技術である(非特許文献1参照)。
この拡散接合を実現するためには、接合面の清浄性や平坦性が求められるのは勿論であるが、接合面における均熱性も不可欠となる。
【0003】
図11は、従来の拡散接合の原理を説明するための模式図であり、真空槽80内において、SUS材等よりなる複数枚の金属薄板を積層した接合対象物20を、プレスロッド12及び上側の押し板82と、ベースロッド18及び下側の押し板82との間に配置して加圧する様子が描かれている。
各押し板82は、何れも耐熱材よりなる。
接合対象物20である各金属薄板は、赤外線ヒータ84による輻射熱により、約800℃まで加熱される。
【0004】
【文献】拡散接合(熱圧着)とはインターネットURL:http://www.yama-tech.com/kakusan/検索日:2017年10月17日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、従来は赤外線ヒータ84からの輻射熱によって複数の金属薄板を間接的に加熱する方式であるため、接合対象物20以外の部分(プレスロッド12、上側の押し板82、ベースロッド18、下側の押し板82)にも熱が伝わってしまい、接合対象物20が拡散接合温度に到達するのに時間を要するという問題があった。
また、高温のまま金属薄板を取り出すと輪郭部が酸化するため、250℃以下にまで冷却する必要があるが、この冷却にも長時間を要することとなる。
【0006】
例えば、所定の条件下において、厚さ100μmの複数枚のSUS薄板が約800℃の拡散接合温度に到達するのに約30分、加圧接合に要する時間として約15分、真空中から取り出すための冷却時間として約60分、合計で約105分を要している。
【0007】
この発明は、このような従来技術の問題点を解決するために案出されたものであり、加熱対象の熱容量をできるだけ小さくすることにより、拡散接合に要する時間を短縮化できる技術の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、請求項1に記載した金属薄板接合装置は、複数枚の金属薄板を積層させた接合対象物を載置する加工台と、上記接合対象物に圧力を加える加圧部材と、上記加工対象物の一面及び反対面に当接される一対の加熱板と、一方の加熱板と加工台との間、及び他方の加熱板と加圧部材との間に介装される一対の断熱材と、上記加工台、加圧部材、加熱板及び断熱材を収納する真空槽と、この真空槽の外部に配置された誘導加熱用のコイルと、上記コイルに高周波電流を供給する電源を備え、上記の各加熱板は、誘導加熱可能な金属材より構成されることを特徴としている。
【0009】
また、請求項2に記載した金属薄板接合装置は、請求項1の装置であって、さらに、上記加熱板にスリットを形成することにより、加熱板が複数の発熱セルに区分されていることを特徴としている。
【0010】
請求項3に記載した金属薄板接合装置は、請求項1または2の装置であって、さらに、上記加熱板の表面温度を計測する温度センサと、この温度センサから出力される加熱板の表面温度の値が、所定の上限値を越えた時点で上記コイルへの電源供給をOFFすると共に、所定の下限値を下回った時点で上記コイルへの電源供給をONする制御手段を備えたことを特徴としている。
【0011】
請求項4に記載した金属薄板接合装置は、請求項1または2の装置であって、さらに、上記加熱板の表面温度を計測する温度センサと、この温度センサから出力される加熱板の表面温度の値が、所定の上限値を越えた時点で上記コイルに供給する電力量を低減させると共に、所定の下限値を下回った時点で上記コイルに供給する電力量を増加させる制御手段を備えたことを特徴としている。
【0012】
請求項5に記載した金属薄板接合装置は、請求項1~4の装置であって、さらに、上記の各加熱板と接合対象物との間に、比較的熱伝導性に優れた絶縁材よりなる融着防止板を介装させたことを特徴としている。
【0013】
請求項6に記載した金属薄板接合装置は、請求項1~5の装置であって、さらに、所定の周期で、上記コイルを上下に往復移動させる機構を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載した金属薄板接合装置にあっては、高周波誘導加熱(IH/induction heating)の原理により、接合対象物を加熱板によって加熱する方式であり、また加工台と加圧手段との間に断熱材が配置されているため、加熱対象を接合対象物に絞り込むことができる。
この結果、極めて短時間の中に、複数の金属薄板間を拡散接合することが可能となる。
【0015】
請求項2に記載した金属薄板接合装置にあっては、各加熱板がスリットの形成によって複数の発熱セルに区分されているため、表皮効果による発熱ムラが解消され、各金属薄板の全面を満遍なく接合することが可能となる。
また、スリットの形成パターンを異ならせた複数の加熱板を用意しておき、接合するワークに合わせて加熱板を適宜交換することにより、当該ワークに最適化された温度分布パターンを簡単に実現可能となる。
【0016】
請求項3及び4に記載した金属薄板接合装置の場合、加熱板の温度変化に応じてコイルに供給される電力量が制御されるため、加熱板の温度を拡散接合に最適なレベルに安定化させることが可能となる。
【0017】
請求項5に記載した金属薄板接合装置の場合、加熱板と接合対象物との間に比較的熱伝導性に優れた絶縁材よりなる融着防止板を介装させたことにより、加熱板による熱を均一化して接合対象物に伝えることが可能となり、ムラのない接合が実現される。
【0018】
請求項6に記載した金属薄板接合装置によれば、コイルを上下に往復移動させることによって各加熱板を満遍なく発熱させることが可能となり、ひいては金属薄板同士をムラなく拡散接合することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1は、この発明に係る第1の拡散接合装置10の基本構造を説明する模式図であり、ガラス製の真空槽11内に配置されたプレスロッド12と、プレスロッド12の下端に装着された断熱材14と、断熱材14の下面に配置された加熱板16と、ベースロッド18と、ベースロッド18の上端に装着された断熱材14と、断熱材14の上面に配置された加熱板16とを備えている。
また、上側の加熱板16と下側の加熱板16の間には、厚さ100μm程度のSUS材等よりなる複数枚の金属薄板を積層させた接合対象物20が配置されている。
上記断熱材14は、比較的熱伝導率の低い絶縁材よりなる。
上記加熱板16は、高周波誘導加熱による被加熱体となり得る鉄やステンレス鋼等の金属材よりなり、厚さは1mm程度に設定されている。
【0020】
真空槽11の外部における接合対象物20の周りには、高周波誘導加熱(IH)用の円形コイル22と、セラミック製の円筒カバー24が配置されている。
円形コイル22は、円筒カバー24の外周面に固定されている。
【0021】
ここで、図示しない高周波電源のスイッチをONし、円形コイル22に高周波電流(例えば400KHz)を流すと、上側の加熱板16及び下側の加熱板16の内部に渦電流が発生し、その結果、両加熱板16が発熱し、接合対象物20を加熱する。
同時に、プレスロッド12によって接合対象物20を所定時間・所定圧力で加圧することにより、金属薄板間の当接面が熱圧着される。
【0022】
このように、接合対象物20に接する上側の加熱板16及び下側の加熱板16自体が発熱源となり、またプレスロッド12及びベースロッド18との間に断熱材14が配置されているため、加熱対象が接合対象物20にほぼ限定されることとなり、加熱効率を飛躍的に向上させることが可能となる。
【0023】
図2は、高周波誘導加熱時における加熱板16の状態を示すために、プレスロッド12を外して上方から撮影した平面写真であり、上側の加熱板16の周辺部分に四角い枠状の高温発熱帯30が発生している(実際にはオレンジ色に発光している)。
このように、上側の加熱板16の周辺部分のみが高温に加熱され、その中央部分は比較的低温のまま残されるのは、交流電流の表皮効果及びコイルの近接効果によるものである。
【0024】
この結果、当然ながら接合対象物20内の各金属薄板も、上記高温発熱帯30の形状パターンに従って拡散接合されることとなり、それぞれの中央部分は未接合のまま残されることとなる。
拡散接合の目的によっては、上記のように各金属薄板の周辺部分のみを四角い枠状に接合することで事足りる場合もある。
【0025】
これに対し、金属薄板の当接面全体を拡散接合させるには、加熱板16の形状を工夫することで対応できる。
例えば図3に示すように、上側及び下側の各加熱板16に、表面から裏面に貫通する複数のスリット32を形成することにより、発熱領域を複数のセルに細分化することが該当する。
【0026】
ここでは、加熱板16の上辺に所定間隔で2本の比較的長い縦スリット32a, 32cが下辺に向けて形成されると共に、両者の中間に1本の比較的短いスリット32bが形成されている。
また、加熱板16の下辺には、所定間隔で2本の比較的短い縦スリット32d, 32fが上辺に向けて形成されると共に、両者の中間に1本の比較的長いスリット32eが形成されている。
また、加熱板16の左辺には、所定間隔で4本の比較的短い横スリット32g~32jが、右辺に向けて形成されている。
同様に、加熱板16の右辺には、所定間隔で4本の比較的短い横スリット32k~32nが、左辺に向けて形成されている。
【0027】
以上の結果、加熱板16は破線で囲まれた発熱セル34A~34Rに区画される。
各発熱セル34の面積が小さいと拾う磁束量が少なくなり、発熱が少なくなる。逆に大きいと、発熱量は大きくなるが表皮効果により、温度ムラが大きくなる。
このため、円形コイル22による磁束密度を考慮して、各発熱セルの大きさが調整される。
【0028】
例えば、加熱板16の四隅については円形コイル22に近接するため、発熱セル34D, 34E, 34Q, 34Rのように、一辺が比較的短く設定される。
これに対し、加熱板16の中央部については磁束数が少なくなるため、発熱セル34G及び34Kの一辺は比較的長く設定される。
【0029】
図4は、図2に示した平板状の加熱板16に代えて、スリット32を形成した加熱板16を配置して高周波誘導加熱を行った際の平面写真であり、ほぼ全面に亘って発熱している様子が見て取れる(実際には全体がオレンジ色に発光している)。
これは、複数のスリット32によって電流通路が分散化され、加熱板16が複数の発熱セルに区画されたことによる。
【0030】
上記円形コイル22に対し高周波電力を供給するに際し、温度センサ(図示省略)で両加熱板16の温度を監視しておき、所定の上限温度に達した時点で電源をOFFし、所定の下限温度に達した時点で電源をONする機能を備えた制御装置を設けることにより、加熱板16の温度を必要なレベルに安定させることが可能となる。
【0031】
図5は、縦軸に加熱板16の温度を、横軸に経過時間を表したグラフであり、図中の円で囲った部分が電源のON/OFFを切替えた期間に当たる。
このように、加圧・接合区間において複数のON/OFF切替え期間を設けることにより、加熱板16の温度を拡散接合に最適なレベルに安定化させることが可能となる。
なお、電源のON/OFFを繰り返す代わりに、加熱板16の温度に応じて電源の出力を加減する制御を行うことにより、加熱板16の定温化を実現することもできる。
【0032】
図6は、加熱時間の経過と加熱板16の発熱状態との対応関係を示すものであり、加熱板16は、電源スイッチをONして加熱を開始してから3秒後に同図(a)の状態になる。図示の通り、この段階では上側加熱板の周縁及びスリットに沿った狭い領域のみが高温となり、温度分布にムラが見られる。
同図(b)は、加熱開始から5秒後の状態を示しており、加熱板のほぼ全域が発熱してはいるが、それでも温度分布に若干のムラが見られる。
これに対し同図(c)は、加熱開始から8秒経過し、電源スイッチをOFFした直後の状態を示しており、上側加熱板の全領域が満遍なく高温に発熱し、温度分布のムラがほとんど生じていないことが見て取れる。
なお、同図(b)から(c)の間には、電源スイッチのON/OFF切替え制御が実行されている。
【0033】
図7は、この発明に係る第2の拡散接合装置40を示すものであり、上側の加熱板16と接合対象物20との間、及び下側の加熱板16と接合対象物20との間に、それぞれ熱伝導性に優れた絶縁材よりなる融着防止板(離型板)42を介装した点に特徴を有している。
この融着防止板42としては、例えば窒化アルミ板や炭化珪素板、グラファイト板、アモルファスカーボン板等が用いられる。
【0034】
このように、加熱板16と接合対象物20との間に融着防止板42を配置したことにより、まず、拡散接合後における接合対象物20の取り出しが容易となる利点が生じる。
【0035】
また、図8(a)に示すように、スリット32を形成した加熱板16を高周波誘導加熱しても、スリット32の形成箇所は当然ながら発熱することはないし、スリット32よって区切られた各発熱セルは、面積が等しくても磁束分布により拾う磁束量に差がでるため、発熱量に違いが生じる。同じ発熱セル内でも、表皮効果によって微妙に温度ムラが生じる。
これに対し、加熱板16の表面に熱伝導性に優れた絶縁材よりなる融着防止板42を配置すると、図8(b)に示すように、融着防止板42はスリット32の形成箇所も含め、全体が満遍なく高温に加熱されることとなり、結果的に接合対象物20をムラ無く加熱することが可能となる。
【0036】
なお、図8(b)においては加熱板16に形成されたスリット32の存在を示すために敢えて小さめの融着防止板42を用いているが、実際には加熱板16と同程度の面積を備えた融着防止板42が用いられる。
【0037】
図9は、この発明に係る第3の拡散接合装置50を示すものであり、プレスロッド12及びベースロッド18の間に、上側の断熱材14、上側の加熱板16、第1の融着防止板42a、第1の接合対象物20a、第2の融着防止板42b、第2の接合対象物20b、第3の融着防止板42c、第3の接合対象物20c、第4の融着防止板42d、下側の加熱板16、下側の断熱材14を介装している。
すなわち、この第3の拡散接合装置50は、4枚の融着防止板42a~42dによって区分けされた3つの接合対象物20a~20cを一度に拡散接合することができる。
融着防止板42の数を増やすことにより、さらに多くの接合対象物20を一度に拡散接合することもできる。
【0038】
この場合、図示のように、上下移動機構52の可動部54を円筒カバー24に接続することが望ましい。
この可動部54は、上下移動機構52内のモータの作用により、所定の速度で円形コイル22を上下に往復移動させることができ、円形コイル22が最上位置に達した際に上側の加熱板16に最接近し、最下位置に達すると下側の加熱板16に最接近する。
この結果、上側の加熱板16と下側の加熱板16における発熱を均一化することが可能となる。
【0039】
加熱板16に設けるスリット32の形成パターン(形成数や寸法、位置、角度等)を工夫することにより、金属薄板間の接合パターンを任意の形状に調整することが可能となる。
【0040】
例えば図10(a)に示すように、加熱板16の上辺、下辺、左辺及び右辺の中央部に、一辺の3分の1程度の長さのスリット32を形成し、4つの発熱セルに区画した場合、発熱時には各発熱セルの周縁部分に高温発熱帯30が発生する。
したがって、このスリットパターンの加熱板16を用いて拡散接合を行うと、高温発熱帯30に沿って各金属薄板間が接合されると共に、各発熱セルの中央部分及び加熱板16の中央部分を繋いだ略「X」字状の未接合部位を得ることができる。
【0041】
あるいは図10(b)に示すように、加熱板16の4つの角を2等分するスリット32を追加し、8つの発熱セルに区画した場合も、発熱時には各発熱セルの周縁部分に高温発熱帯30が発生する。
したがって、このスリットパターンの加熱板16を用いて拡散接合を行うと、高温発熱帯30に沿って各金属薄板間が接合されると共に、各発熱セルの中央部分及び加熱板16の中央部分を繋いだ略「井」字状の未接合部位を得ることができる。
【0042】
上記においては、「加工台」としてのベースロッド18上に接合対象物20を載置すると共に、「加圧部材」としてのプレスロッド12によって接合対象物20が加圧される例を説明したが、ベースロッド18側からも接合対象物20に対して圧力を加えるように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】この発明に係る第1の拡散接合装置の基本構造を説明する模式図である。
図2】高周波誘導加熱時における加熱板の状態を示す平面写真である。
図3】加熱板に複数本のスリットを形成した様子を示す平面図である。
図4】複数本のスリットを形成した加熱板を用いて高周波誘導加熱を行った際の平面写真である。
図5】縦軸に加熱板の温度を、横軸に経過時間を表したグラフである。
図6】加熱時間の経過と加熱板の発熱状態との対応関係を示す写真である。
図7】この発明に係る第2の拡散接合装置の基本構造を説明する模式図である。
図8】熱伝導性に優れた融着防止板の有無による発熱状態の対比を示す写真である。
図9】この発明に係る第3の拡散接合装置の基本構造を説明する模式図である。
図10】加熱板に形成されたスリットのパターンと発熱パターンとの対応を示す写真である。
図11】従来の拡散接合装置の基本構造を示す模式図である。
【符号の説明】
【0044】
10 第1の拡散接合装置
11 真空槽
12 プレスロッド
14 断熱材
16 加熱板
18 ベースロッド
20 接合対象物
22 円形コイル
24 円筒カバー
30 高温発熱帯
32 スリット
34 発熱セル
40 第2の拡散接合装置
42 融着防止板
50 第3の拡散接合装置
52 上下移動機構
54 可動部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11