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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-28
(45)【発行日】2022-05-12
(54)【発明の名称】マグネット付きフック
(51)【国際特許分類】
   A47G 29/00 20060101AFI20220502BHJP
【FI】
A47G29/00 J
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2016102251
(22)【出願日】2016-05-23
(65)【公開番号】P2017209146
(43)【公開日】2017-11-30
【審査請求日】2019-04-10
【審判番号】
【審判請求日】2021-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】505369930
【氏名又は名称】株式会社エスディアイジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100076406
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 勝徳
(74)【代理人】
【識別番号】100085534
【弁理士】
【氏名又は名称】内山 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】山下 和雄
【合議体】
【審判長】小川 恭司
【審判官】熊谷 健治
【審判官】佐々木 芳枝
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/203624(WO,A1)
【文献】特開平9-306725(JP,A)
【文献】実開昭57-141577(JP,U)
【文献】特開2003-471(JP,A)
【文献】特開2005-279220(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面、裏面、上面、両側面及び下面を備えるとともに横幅が高さよりも大きい横長の長
方形状で盤状の本体と、前記本体の幅方向の中間部に取付けられたフック部材と、一対の
マグネットと、一対の蓋部材とから形成されており、
前記本体は、エラストマー製の一体成形品であり、前記本体の幅方向の中間部における
表面側及び裏面側のそれぞれに、複数の縦方向の溝状部が形成されており、前記本体の左
側部及び右側部のそれぞれに、前記一対のマグネットの一つを収納する四角柱状の収納穴
部が前記下面又は前記上面から縦方向に形成されており、
前記一対のマグネットのそれぞれは、柱状で、前記各収納穴部に収納されており、
前記一対の蓋部材のそれぞれは、前記各収納穴部に前記マグネットが収納された状態で
、前記各収納穴部の入口に取付けられており、
前記本体の中間部における表面側は、上方部が前記左側部と前記右側部と面一に形成さ
れているとともに、前記上方部よりも下方となる下方部が窪んだ窪み部に形成されており

前記本体の前記中間部における表面側に形成された複数の縦方向の溝状部は、2本であ
り、幅方向の中心線が線対称となる位置に形成されており、
前記本体の裏面側は、前記中間部と前記左側部と前記右側部とが面一に形成されており、
前記本体の中間部における裏面側に形成された複数の縦方向の溝状部は、3本であり、
幅方向の中心線と、前記中心線が線対称となる位置であって前記表面側に形成された2本
の溝状部よりも外側となる位置とに形成されており、
前記フック部材は、前記2本の溝状部の間に取付けられていることを特徴とするマグネ
ット付きフック。
【請求項2】
前記本体の中間部における表面側に形成された2本の各溝状部は、スリット状に形成さ
れており、
前記本体の中間部における裏面側に形成された3本の各溝状部は、水平断面において外
側が仮想底辺となる三角形状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のマグネ
ット付きフック。
【請求項3】
前記本体の中間部における幅方向の中心に、表裏を貫通する取付孔が形成されており、
前記フック部材は、金属製であり、物品が吊るされるフック部と、前記取付孔に挿通さ
れて回転可能な状態で裏面側端部にカシメ部が形成された円柱状取付部とを備えており、
前記円柱状取付部は、前記取付孔の内径よりも大径の頭部と、前記取付孔の内径よりも
小径の軸部とを備え、前記頭部の外周には一対の挿入穴が形成されており、
前記円柱状取付部における軸部の外径よりも大径の軸部用穴を備えた縦長板状の取付補
強板が形成されており、
前記本体の中間部に、前記取付補強板を差込む差込穴部が前記下面から上方に向けて形
成されており、
前記フック部材は、前記円柱状取付部が前記差込穴部に差込まれた前記取付補強板にお
ける軸部用穴を貫通した状態で、前記本体に取付けられており、
前記フック部は、1本の線材が中心で折り曲げられた状態で形成されている先端部と、
前記円柱状取付部の頭部における一対の挿入穴に回転可能な状態で挿入されている一対の
取付端部とを備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載のマグネット付きフック
【請求項4】
前記一対のマグネットのそれぞれは、四角柱状に形成されており、前記四角柱状の両側
壁部にヨークが吸着された状態で、前記各収納穴部に収納されていることを特徴とする請
求項1~3のいずれかに記載のマグネット付きフック。
【請求項5】
前記本体はシリコーンゴム製であり、
前記マグネットは、ネオジム磁石であり、
前記フック部材はスチール製であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の
マグネット付きフック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品を吊るすマグネット付きフックに関する技術であり、特に、エラストマー製本体の中間部の表裏にそれぞれ複数の溝状部を形成し、両側部にそれぞれマグネットを収納して、平坦面はもちろんのこと、円周面、角面、凸曲面などの曲面にも吸着可能なマグネット付きフックとした技術である。
【背景技術】
【0002】
従来、平坦なスチール製壁面に磁力により吸着するマグネット付きフックは、汎用されている(例えば、特許文献1参照)
また、従来、角面に吸着することができるマグネット付きフックが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
特許文献2に記載されたマグネット付きフックは、接合用ちょう番の左右にフック部材を設け、フック部材の背面にマグネットを取付けたものである。
さらに、従来、円周面に吸着することができるマグネット付きフックが知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0004】
特許文献3に記載されたマグネット付きフックは、しなりのある柔らかい材質から成る補助板の裏側に複数のマグネットを貼り付け、補助板の表側中央にフックを取りつけたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-43561号公報
【文献】特開2006-296643号公報
【文献】特開2011-220515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のマグネットフックは、垂下壁、斜壁、天井などの平坦面に磁力により吸着することができるが、曲面に吸着できないという課題があった。
また、特許文献2に記載のマグネットフックは、平面、角面、凹凸曲面などに吸着することができるが、ちょう番を用いており部品点数が多く、複雑な構造で、高価であり、取扱いが難しいという課題があった。
【0007】
特許文献3に記載のマグネットフックは、円周面専用であり、平坦面に吸着することができないという課題があった。
本発明は、従来のマグネットフックの課題を解決するために、エラストマー製本体の中間部の表裏にそれぞれ複数の溝状部を形成し、両側部にそれぞれマグネットを収納して、平坦面、円周面、角面、凸曲面などに吸着可能なマグネット付きフックを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る本発明のマグネット付きフックは、表面、裏面、上面、両側面及び下面
を備えるとともに横幅が高さよりも大きい横長の長方形状で盤状の本体と、前記本体の幅
方向の中間部に取付けられたフック部材と、一対のマグネットと、一対の蓋部材とから形
成されており、
前記本体は、エラストマー製の一体成形品であり、前記本体の幅方向の中間部における
表面側及び裏面側のそれぞれに、複数の縦方向の溝状部が形成されており、前記本体の左
側部及び右側部のそれぞれに、前記一対のマグネットの一つを収納する柱状の収納穴部が
前記下面又は前記上面から縦方向に形成されており、
前記一対のマグネットのそれぞれは、柱状で、前記各収納穴部に収納されており、
前記一対の蓋部材のそれぞれは、前記各収納穴部に前記マグネットが収納された状態で
、前記各収納穴部の入口に取付けられており、
前記本体の中間部における表面側は、上方部が前記左側部と前記右側部と面一に形成さ
れているとともに、前記上方部よりも下方となる下方部が窪んだ窪み部に形成されており

前記本体の中間部における表面側に形成された複数の縦方向の溝状部は、2本であり、
幅方向の中心線が線対称となる位置に形成されており、
前記本体の裏面側は、前記中間部と前記左側部と前記右側部とが面一に形成されており、
前記本体の中間部における裏面側に形成された複数の縦方向の溝状部は、3本であり、
幅方向の中心線と、前記中心線が線対称となる位置であって前記表面側に形成された2本
の溝状部よりも外側となる位置とに形成されており、
前記フック部材は、前記2本の溝状部の間に取付けられているものである。
【0009】
請求項2に係る本発明のマグネット付きフックは、請求項1に係る本発明の構成に加え、前記本体の中間部における表面側に形成された2本の各溝状部は、スリット状に形成されており、
前記本体の中間部における裏面側に形成された3本の各溝状部は、水平断面において外側が仮想底辺となる三角形状に形成されているものである。
【0010】
請求項3に係る本発明のマグネット付きフックは、請求項1又は2に記載の本発明の構成に加え、前記本体の中間部における幅方向の中心に、表裏を貫通する取付孔が形成されており、
前記フック部材は、金属製であり、物品が吊るされるフック部と、前記取付孔に挿通されて回転可能な状態で裏面側端部にカシメ部が形成された円柱状取付部とを備えており、
前記円柱状取付部は、前記取付孔の内径よりも大径の頭部と、前記取付孔の内径よりも小径の軸部とを備え、前記頭部の外周には一対の挿入穴が形成されており、
前記円柱状取付部における軸部の外径よりも大径の軸部用穴を備えた縦長板状の取付補強板が形成されており、
前記本体の中間部に、前記取付補強板を差込む差込穴部が前記下面から上方に向けて形成されており、
前記フック部材は、前記円柱状取付部が前記差込穴部に差込まれた前記取付補強板における軸部用穴を貫通した状態で、前記本体に取付けられており、
前記フック部は、1本の線材が中心で折り曲げられた状態で形成されている先端部と、前記円柱状取付部の頭部における一対の挿入穴に回転可能な状態で挿入されている一対の取付端部とを備えているものである。
【0011】
請求項4に係る本発明のマグネット付きフックは、請求項1~3のいずれかに記載の本発明の構成に加え、前記一対のマグネットのそれぞれは、四角柱状に形成されており、前記四角柱状の両側壁部にヨークが吸着された状態で、前記各収納穴部に収納されているものである。
【0012】
請求項5に係る本発明のマグネット付きフックは、請求項1~4のいずれかに記載の本発明の構成に加え、前記本体はシリコーンゴム製であり、
前記マグネットは、ネオジム磁石であり、
前記フック部材はスチール製であることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載のマグネット付きフック。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る本発明のマグネット付きフックは、本体は、エラストマー製の一体成形品で、本体の幅方向の中間部における表面側及び裏面側のそれぞれに、複数の縦方向の溝状部が形成されており、本体の左側部及び右側部のそれぞれに、一対の柱状のマグネットの一つを収納する四角柱状の収納穴部が下面又は上面から縦方向に形成されており、各収納穴部の入口に蓋部材が取付られているから、簡単な構造でありながら、取外しの際に被吸着面の表面を傷つけることなく、本体がしなやかに曲がって平坦面はもちろんのこと、円周面、角面、凸曲面などの曲面にも吸着することができるのである。
さらに、本発明のマグネット付きフックは、本体の中間部における表面側の2本の縦方向の溝状部は、幅方向の中心線が線対称となる位置に形成されており、本体の中間部における裏面側の3本の縦方向の溝状部は、幅方向の中心線と、中心線が線対称となる位置であって表面側に形成された2本の溝状部よりも外側となる位置とに表面側の溝状部と裏面側の溝状部とが幅方向で齟齬するように形成されているから、本体がより一層しなやかに曲がって、曲面への吸着がより一層確実にできるのである。
【0014】
請求項2に係る本発明のマグネット付きフックは、請求項1に係る本発明の効果に加え、本体の中間部における表面側に形成された2本の各溝状部は、スリット状に形成されており、本体の中間部における裏面側に形成された3本の各溝状部は、水平断面において外側が仮想底辺となる三角形状に形成されているから、金型での溝状部の形成が簡単でありながら、本体のしなやかさを奏することができるのである。
【0015】
請求項3に係る本発明のマグネット付きフックは、請求項1又は2に係る本発明の効果に加え、フック部材は、金属製であり、物品が吊るされるフック部と、本体に形成された取付孔に挿通されて回転可能な状態で裏面側端部にカシメ部が形成された円柱状取付部とを備えており、円柱状取付部は、取付孔の内径よりも大径の頭部と、取付孔の内径よりも小径の軸部とを備え、頭部の外周には一対の挿入穴が形成されており、円柱状取付部における軸部の外径よりも大径の軸部用穴を備えた縦長板状の取付補強板が形成されており、本体の中間部に、取付補強板を差込む差込穴部が下面から上方に向けて形成されており、フック部材は、円柱状取付部が差込穴部に差込まれた取付補強板における軸部用穴を貫通した状態で、本体に取付けられており、フック部は、1本の線材が中心で折り曲げられた状態で形成されている先端部と、円柱状取付部の頭部における一対の挿入穴に回転可能な状態で挿入されている一対の取付端部とを備えているから、フック部材に物品が吊下げられた際に、物品の荷重は取付補強板により本体に分散されて支持されるので、本体のしなやかさを保持しながら本体の歪みを緩和することができ、かつ、マグネット付きフックの吸着がいずれの方向になってもフック部を、物品を吊るすことのできる方向に位置させることができるのである。
【0016】
請求項4に係る本発明のマグネット付きフックは、請求項1~請求項3のいずれかに係る本発明の効果に加え、一対のマグネットのそれぞれには、四角柱状の両側壁部にヨークが吸着された状態で、各収納穴部に収納されているから、小形軽量でありながら、磁力による大きな吸着力を奏することがでるのである。
【0017】
請求項5に係る本発明のマグネット付きフックは、請求項1~請求項4のいずれかに係る本発明の効果に加え、シリコーンゴム製の本体と、ネオジム磁石と、スチール製フック部材としているから、本体の耐候性、耐久性が優れており、屋外の工事現場等でも使用ができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施の形態に係るマグネット付きフックの正面側上方から見た斜視図である。
図2図1の平面図(a)と、正面図(b)とである。
図3図1の背面図(a)と、底面図(b)とである。
図4図1の右側面図である。
図5図2(b)のA-A線断面図である。
図6図3(a)のB-B線断面図である。
図7】本発明の実施の形態に係るマグネット付きフックにおけるマグネットとヨークの斜視図である。
図8】本発明の実施の形態に係るマグネット付きフックにおけるフック部材の円柱状取付部の斜視図である。
図9】本発明の実施の形態に係るマグネット付きフックにおける取付補強板の斜視図である。
図10】本発明の実施の形態に係るマグネット付きフックにおける蓋部材の斜視図である。
図11】本発明の実施の形態に係るマグネット付きフックの使用例を示す図で、(a)は垂直平坦板への吸着及び(b)は水平平坦板への吸着を示す斜視図である。
図12】本発明の実施の形態に係るマグネット付きフックの他の使用例を示す図で、(a)は垂直角部への吸着、(b)は垂直円形パイプへの吸着及び(c)は水平円形パイプへの吸着を示す斜視図である。
図13】本発明の実施の形態に係るマグネット付きフックの他の使用例を示す図で、複数のマグネット付きフックを垂直平坦板に一列に一体的に吸着した例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を添付した図1図13に基づき詳細に説明する。
図1図6は本発明のマグネット付きフックの実施の形態に係る図であり、図1は斜視図、図2(a)は平面図、図2(b)は正面図、図3(a)は背面図、図3(b)は底面図、図4は右側面図、図5図2(b)のA-A線断面図及び図6図3(a)のB-B線断面図である。
また、図7図10は本発明のマグネット付きフックの構成部品を示す図であり、図7はマグネットに一対のヨークが吸着した状態の斜視図、図8はフック部材の円柱状取付部の斜視図、図9は取付補強板の斜視図及び図10は蓋部材の斜視図である。
さらに、図11図13は本発明のマグネット付きフックの使用例を示す斜視図であり、図11(a)は垂直平坦板への吸着例、図11(b)は水平平坦板下面への吸着例、図12(a)は垂直角部への吸着例、図12(b)は垂直円形パイプへの吸着例、図12(c)は水平円形パイプへの吸着例及び図13は垂直平坦板への複数の吸着例である。
【0020】
図1図6において、1はマグネット付きフックであり、マグネット付きフック1は、本体2と、フック部材3と、一対のマグネット4と、2対のヨーク41と、一対の蓋部材5とを主要構成部品として備えている。
本体2は、シリコーンゴムの一体成形品であり、表面2a、裏面2b、上面2c、左側面2d、右側面2e及び下面2fを備えるとともに、横幅が68.5mm、高さが40.5mm、厚さが13.5mmからなる横幅が高さよりも大きい横長の長方形状で盤状に形成されている。
【0021】
シリコーンゴムの硬さは、デュロメータタイプAによる硬さをHDA60としており、硬さの範囲としてはHDA55~HDA65が好ましい。
HDA55~HDA65が好ましいのは、HDA55未満ではフック部材3に重量の大きい物品を吊るした際に本体2が歪んで、吸着力が弱くなり、HDA65を超えると本体2が固くなって、曲面へのしなやかな吸着が損なわれることとなるからである。
【0022】
本体2の具体的な形状は、表面2aの高さが裏面2bの高さよりも高く、側面視において表面2a側が長辺で裏面2b側が短辺となる台形状であり、表面2a中央の上面2c側の高さが両端側の高さよりも大きい、正面視において上縁が大径の円弧状に形成されている。
また、本体の上面2cと下面2fとは表面2a側から裏面2b側に側面視において先細状の傾斜面に形成されている。
【0023】
本体2の左側部22における裏面2bと左側面2dとの角部に水平断面が矩形の縦方向の突起部22aが形成され、本体2の右側部23における裏面2bと右側面2eとの角部に水平断面が矩形の縦方向の切欠部23aが形成されている。
左側面2dと右側面2eとは側面の奥行方向の中程で表面2aの中心側に傾斜した傾斜面が形成されており、両側面2d、2eは傾斜面と垂直面とから形成されている
【0024】
また、本体2の中間部21における表面2a側は、上方部21aが左側部22と右側部23と面一に形成されているとともに、上方部21aよりも下方となる下方部21bが裏面2b側に窪んだ窪み部26に形成されている。
そして、本体2の裏面2b側は、中間部21と左側部22と右側部23とが面一に形成されている。
【0025】
さらに、本体2には、表面2a側と裏面2b側とにそれぞれ複数の溝状部6を形成してマグネット付きフック1を曲面にも吸着できるようにしており、具体的には、幅方向の中間部21における表面2a側に形成された2本の表面側溝状部61と、裏面2b側に形成された3本の裏面側溝状部62とを備えている。
本体2の中間部21における表面2a側の2本の縦方向の表面側溝状部61は、図6に示すように、幅方向の中心線63が線対称となる位置に形成されている。
【0026】
また、本体2の中間部21における裏面2a側の3本の縦方向の裏面側溝状部62は、幅方向の中心線63と、中心線63が線対称となる位置であって表面2a側に形成された2本の表面側溝状部61よりも外側となる位置とに形成されている。
このように、本体2の中間部21における表面2a側の2本の表面側溝状部61と裏面2b側の3本の裏面側溝状部62とは、幅方向で齟齬する位置に形成されていることにより、本体2がより一層しなやかに曲がって、曲面への吸着がより確実となるようにしているのである。
【0027】
そして、本体2の中間部21における表面2a側に形成された2本の各表面側溝状部61は、図6に示すように、スリット状であって、上方部21aの深さが7.5mmでスリット幅が底部で2.1mm、開口端で0.8mmの底部が幅広に形成されている。
また、本体2の中間部21における裏面2b側に形成された3本の各裏面側溝状部62は、図3(a)、図6に示すように、水平断面において外側が5.0mmの仮想底辺で深さが2.0mmの三角形状に形成され、かつ、2本の外側の裏面側溝状部62には、上下方向中央部に幅1.0mmで深さ1.3mmのスリット62aが三角形状の底部から連続して形成されている。
【0028】
一対のマグネット4のそれぞれは、ネオジム磁石であり、図7に示すように、横幅が8mm、高さが20mm、奥行が10mmの四角柱状の直方体であり、各側壁部に軟鉄製のヨーク41が吸着されている。
各ヨーク31は、奥行が10.6mm、表面2a側3mmの高さが29mmで、裏面2b側7.6mmの高さが25.3mmの表面2a側の高さが大きい、厚さ(横幅)が1.5mmに形成して、マグネット4の各側壁を覆って、マグネット4の吸着力の増大を図っている。
【0029】
また、本体2の左側部22及び右側部23のそれぞれに、四角柱状のマグネット4の両側壁部にヨーク31が吸着された状態で収納する四角柱状の収納穴部24が本体2の下面2fから縦方向に一体に形成されている。
このように、本体2の両側部22、23にそれぞれ収納穴部24を一体形成後に、マグネット4と一対のヨーク31とを収納穴部24に収納するようにしたのは、マグネット4と一対のヨーク31とを収納した状態となるように本体2を一体成形すると、シリコーンゴムの成形時の温度により、マグネット4の性能(磁束密度)が低下し、室温に戻しても回復せず、マグネットとしての実用性がなくなるからである。
【0030】
そして、本体2の両側部22、23に形成された各収納穴部24に、マグネット4と一対のヨーク31とを収納した後に、各収納穴部24の入口25を閉じる蓋部材5を取付けるのである。
蓋部材5は、硬質の合成樹脂製であり、図10に示すように、蓋外面51と、収納穴部24に挿入する案内部52とを備えている。
【0031】
案内部52は収納穴部24の内壁に沿うように上方に立設され、蓋外面51は本体2の下面2fの傾斜に沿うように、案内部52に対して直角方向から傾斜して一体に形成されている。
本体2の中間部21における2本の表面側溝状部61の間となる幅方向の中心に、フック部材3を取付けるための表裏を貫通する段付きの取付孔27が、図5に示すように、形成されている。
【0032】
フック部材3は、スチール製であり、物品が吊るされるフック部31と、段付きの取付孔27に挿通されて回転可能な状態で裏面側端部に、図5に示すカシメ部32aが形成された円柱状取付部32とを備えている。
円柱状取付部32は、図8に示すように、図8に示すように、取付孔27の内径よりも大径の頭部33と、段付きの軸部34とを備え、段付きの軸部34の軸径が段付きの取付孔27の内径よりも小径に形成され、頭部33の外周にフック部31の先端をそれぞれ挿入するための一対の挿入穴35が形成されている。
【0033】
また、フック部材3を本体2に取付けるために取付補強板36を用いるのであり、取付補助板36は、図9に示すように、横幅が10mm、高さが25mm、厚さが1mmのスチール製の縦長板状で、円柱状取付部32における段付きの軸部34の先端側軸部の外径よりも大径の軸部用穴36aが下方に形成されている。
本体2の中間部21に、取付補強板36を差込む差込穴部28が下面2fから上方に向けて形成され、本体2の取付孔27と軸部用穴36aとを合致させた状態に取付補強板36を本体2の差込穴部28に差込むようにしている。
【0034】
また、フック部材3は、図5に示すように、円柱状取付部32が差込穴部28に差込まれた取付補強板36における軸部用穴36aを貫通した状態で、段付きの取付孔27に挿通されて回転可能な状態で、円柱状取付部32における段付き軸部34の裏面側端部に座金39を介してカシメ部32aが形成されることにより、本体2に取付けられている。
さらに、フック部31は、1本の線材が中心で折り曲げられた状態で形成されている先端部36と、円柱状取付部32の頭部33における一対の挿入穴35に回転可能な状態で挿入されている一対の取付端部38(図3(b))とを備えている。
【0035】
フック部材3は、このような構成を備えているので、本体2がどのような向きで吸着されても、フック部31の向きを調節することができるようにしている。
また、図4に示すように、フック部31における物品を吊下げる水平部から上方に立上る位置に、被吸着面となる壁面の傷を防止するシリコーンゴム製のチューブ状の保護部材31aが被覆されている。
【0036】
次に、本発明のマグネット付きフック1の使用例を図11図13に基づいて説明する。
図11(a)は垂直平坦板71に吸着されているマグネット付きフック1の使用例を示し、図11(b)はロッカー等の天板下面等の水平平坦面72に吸着されているマグネット付きフック1の使用例を示している。
【0037】
また、図12(a)は洗濯機や冷蔵庫の角部73に吸着されているマグネット付きフック1の使用例を示し、図12(b)は建設現場等の垂直円形パイプの円周面74に吸着されているマグネット付きフック1の使用例を示し、図12(c)は建設現場等の水平円形パイプの円周面75に吸着されているマグネット付きフック1の使用例を示している。
さらに、図13は複数のマグネット付きフック1を垂直平坦板76に横一列に一体的に吸着されている使用例を示し、隣合うマグネット付きフック1の一方のマグネット付きフック1の突起部22aに他方のマグネット付きフック1の切欠部23aが重なった状態で吸着されるのである。
【0038】
なお、以上の使用例は、マグネット付きフック1の代表的な使用例であり、マグネット付きフック1は平坦面のみでなく、各種曲面に吸着することができるのである。
以下に、取付け場所(被吸着面)と保持荷重との試験結果を示すが、被吸着面の塗装や仕上げ状態によって保持荷重は変わり、一般的な仕様による概略の試験結果である。
住宅のスチール製玄関ドア:3kgf~5kgf
平坦面(2mmの厚み):約5kgf
緩やかな曲面(0.8mm~1.2mmの厚み):2kgf~4kgf
天板(0.8mm~1.2mmの厚み):1.5kgf~2kgf
外径50mmの足場パイプ:2kgf~3kgf
外径25mm~30mmのパイプ:1kgf~1.5kgf
【0039】
以上の実施の形態では、本体2は、シリコーンゴム製としたが、シリコーンゴムに替えて、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂などのエラストマー製としてもよい。
また、溝状部6の形状を、表面側溝状部61がスリットで、裏面側溝状部62が三角形状としたが、このような形状でなくてもよく、要は溝状部6により本体2が曲面に吸着され易い柔軟性を保持できるようにすればよい。
【0040】
以上の実施の形態では、本体2の両側部22、23に収納穴部24を下面2fから縦方向に形成したが、上面2cから縦方向に形成するようにしてもよい。
以上の実施の形態では、フック部材3の本体2への取付に取付補助板36を用いたが本体2の表裏に座金を介設して取付補助板をなくしてもよく、フック部材の本体への取付に他の構造を採用してもよい。
【0041】
また、フック部材3は本体2に対して向きを自在に変更することができるようにしたが、向きが所定方向に固定されていてもよく、この場合、円柱状取付部32の本体2への取付けをカシメ部32aに替えてナットによる螺合でもよい。
以上の実施の形態では、蓋部材5は、案内部52を収納穴部24に挿入することにより、入口25に取付けるようにしたが、入口25に接着剤で固定するようにしてもよい。
【0042】
以上の実施の形態では、マグネット4を四角柱状に形成したが、多角柱状、円柱状などの各種断面形状の柱状にしてもよく、マグネット4には両側壁にヨーク41を吸着させたが、ヨークを省略してもよい。
また、以上の実施の形態では、具体的な数値や材質をあげて説明したが、これらは、マグネット付きフックとして、要求される仕様などにより、適宜設計すればよいのである。
【符号の説明】
【0043】
1 マグネット付きフック
2 本体
2a 表面
2b 裏面
2c 上面
2d 左側面
2e 右側面
2f 下面
21 中間部
21a 上方部
21b 下方部
22 左側部
23 右側部
24 収納穴部
25 入口
26 窪み部
27 取付孔
28 差込穴部
3 フック部材
31 フック部
32 円柱状取付部
32a カシメ部
33 頭部
34 軸部
35 挿入穴
36 取付補強板
36a 軸部用穴
37 先端部
38 取付端部
4 マグネット
41 ヨーク
5 蓋部材
6 溝状部
61 表面側溝状部
62 裏面側溝状部
63 中心線
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
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図10
図11
図12
図13