IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社テクニカの特許一覧

<>
  • 特許-超音波洗浄装置 図1
  • 特許-超音波洗浄装置 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-28
(45)【発行日】2022-05-12
(54)【発明の名称】超音波洗浄装置
(51)【国際特許分類】
   B08B 3/12 20060101AFI20220502BHJP
【FI】
B08B3/12 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018001676
(22)【出願日】2018-01-10
(65)【公開番号】P2019118895
(43)【公開日】2019-07-22
【審査請求日】2020-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】503421830
【氏名又は名称】株式会社テクニカ
(74)【代理人】
【識別番号】100165423
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 雅久
(72)【発明者】
【氏名】荒井 武夫
【審査官】石井 茂
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04408494(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B06B 1/00-3/04
B08B 1/00-13/00
G01H 1/00-17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄液及びその洗浄液に浸漬される被洗浄物が入れられる洗浄槽と、
前記洗浄槽内の前記洗浄液中に超音波を放射する超音波振動子と、
前記超音波振動子に接続され前記超音波振動子に前記超音波の電力を供給する超音波発振器と、
前記超音波発振器に設けられ前記超音波発振器から出力される電力を制御する出力調整回路と、
前記超音波の出力を測定する超音波測定器と、を備え、
前記超音波測定器は、前記洗浄液中に挿入される回転自在なプロペラを有し、
前記プロペラは、その回転軸を上下方向として前記超音波振動子の上方の前記洗浄液中に挿入された状態で前記超音波によって回転し、
前記超音波測定器は、前記プロペラの回転を検出することにより前記超音波の出力を測定することを特徴とする超音波洗浄装置。
【請求項2】
前記超音波測定器は、前記プロペラの回転を検出する近接センサを有することを特徴とする請求項1に記載の超音波洗浄装置。
【請求項3】
前記超音波測定器は、前記プロペラの前記回転軸の傾きを検出する水平器を備えていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の超音波洗浄装置。
【請求項4】
前記超音波測定器には、前記洗浄液中における前記プロペラの挿入深さを調整可能な水位アジャスタが設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の超音波洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波の放射によって洗浄液中の被洗浄物を洗浄する超音波洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波で洗浄液中の被洗浄物を洗浄する超音波洗浄装置が知られている。例えば、特許文献1には、洗浄槽内で機械部品等の被洗浄物を洗浄する超音波洗浄装置が開示されている。
【0003】
同文献の超音波洗浄装置は、洗浄液を入れる洗浄槽と、この洗浄槽の外部に設置される超音波発振器と、洗浄槽の底面に固定される超音波振動子と、を有する。そして、この超音波洗浄装置は、超音波発振器により超音波振動子を介して洗浄槽の洗浄液中に超音波を放射してキャビテーション(真空核)を発生させ、その衝撃力によって被洗浄物を洗浄する構成である。超音波発振器には、洗浄効果を高めるために周波数を調整して出力する出力調整回路が設けられている。
【0004】
また、特許文献2には、超音波洗浄装置における超音波の音圧レベルをプローブによって測定する超音波音圧測定装置が開示されている。超音波音圧測定装置のプローブは、超音波振動を電圧に変換して音圧レベルを測定するセンサである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-144349号公報
【文献】特開2016-133309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した従来技術の超音波洗浄装置では、洗浄効率を高めるために改善すべき問題点があった。
具体的には、従来技術による超音波洗浄装置では、作業者は、プローブを用いて洗浄槽における超音波の音圧レベルを測定し、その測定値に基づいて超音波発振器の出力調整回路により超音波の出力を調整していた。しかしながら、従来のプローブによる超音波の音圧レベルを測定する方式では、超音波の出力を正確に測定することが難しく、超音波を洗浄に適した好適な出力レベルに調整することが困難であった。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、超音波洗浄における超音波の出力を高精度に測定することができ、洗浄の効率を向上させることができる超音波洗浄装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の超音波洗浄装置は、洗浄液及びその洗浄液に浸漬される被洗浄物が入れられる洗浄槽と、前記洗浄槽内の前記洗浄液中に超音波を放射する超音波振動子と、前記超音波振動子に接続され前記超音波振動子に前記超音波の電力を供給する超音波発振器と、前記超音波発振器に設けられ前記超音波発振器から出力される電力を制御する出力調整回路と、前記超音波の出力を測定する超音波測定器と、を備え、前記超音波測定器は、前記洗浄液中に挿入される回転自在なプロペラを有し、前記プロペラは、その回転軸を上下方向として前記超音波振動子の上方の前記洗浄液中に挿入された状態で前記超音波によって回転し、前記超音波測定器は、前記プロペラの回転を検出することにより前記超音波の出力を測定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の超音波洗浄装置によれば、洗浄液及びその洗浄液に浸漬される被洗浄物が入れられる洗浄槽と、洗浄槽内の洗浄液中に超音波を放射する超音波振動子と、超音波振動子に超音波の電力を供給する超音波発振器と、超音波発振器から出力される電力を制御する出力調整回路と、超音波の出力を測定する超音波測定器と、を備え、超音波測定器は、洗浄液中に挿入される回転自在なプロペラを有し、プロペラの回転を検出することにより超音波の出力を測定する。これにより、超音波測定器のプロペラの回転検出によって洗浄液中の広い範囲で超音波の出力を高精度に測定することができる。そして、超音波測定器で測定された超音波の出力に応じて出力調整回路が調整され、超音波発振器の出力が制御され、超音波振動子から放射される超音波の出力が洗浄に適した値になる。よって、超音波洗浄装置の洗浄効率を高めることができる。
【0010】
また、本発明の超音波洗浄装置によれば、超音波測定器は、プロペラの回転を検出する近接センサを有しても良い。これにより、汚れ等が含まれている洗浄液中であってもプロペラの回転数を正確に測定することができる。
【0011】
また、本発明の超音波洗浄装置によれば、超音波測定器は、プロペラの回転軸の傾きを検出する水平器を備えていても良い。これにより、超音波測定器を、超音波振動子から放射される超音波がプロペラの羽根に効率良く当たる角度に調節することができる。そのため、超音波を高精度に測定することができる。
【0012】
また、本発明の超音波洗浄装置によれば、超音波測定器には、洗浄液中におけるプロペラの挿入深さを調整可能な水位アジャスタが設けられても良い。これにより、超音波測定器のプロペラを、洗浄液の上面から好適な深さに挿入することができ、超音波の出力を高精度に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係る超音波洗浄装置の概略図である。
図2】本発明の実施形態に係る超音波洗浄装置の超音波測定器の(A)正面図、(B)底面図、である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態に係る超音波洗浄装置を図面に基づき詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る超音波洗浄装置1の概略構成を示す図である。超音波洗浄装置1は、機械部品や樹脂部品、ガラス部品等の被洗浄物を超音波で洗浄する装置である。図1に示すように、超音波洗浄装置1は、洗浄液Wが注入される洗浄槽2と、洗浄槽2の底面に固定される超音波振動子3と、洗浄槽2の外部に設置される超音波発振器4と、一部分が洗浄槽2内の洗浄液Wに挿入される超音波測定器10と、を有する。
【0015】
洗浄槽2は、被洗浄物及びその被洗浄物を洗浄するための洗浄液Wが注入される容器であり、ステンレス等から形成されている。洗浄槽2には、洗浄液Wを注入するための図示しない注入口や、所定の高さで洗浄液Wをオーバーフローさせる図示しないスリット状開口部等が形成されている。
【0016】
なお、洗浄槽2には、洗浄槽2の液面レベルを一定に保つための図示しないオーバーフロー槽や、洗浄槽2からオーバーフローした洗浄液Wの溶存酸素を脱気する図示しない脱気装置等につながる図示しない循環回路が接続されても良い。また、洗浄槽2には、洗浄汚液を回収して蒸留再生する図示しない蒸留再生装置が配管接続されても良い。
【0017】
超音波振動子3は、例えば、ステンレスによって外観が略箱形状に形成されており、その表面にはハードクロムメッキが施されている。ハードクロムメッキされたステンレス材が用いられることにより、超音波振動子3の耐摩耗性、耐食性、耐久性を高めることができる。
【0018】
超音波振動子3は、洗浄槽2の内部に設置されて、配線7によって超音波発振器4に接続されている。なお、超音波振動子3は、洗浄槽2内の洗浄液Wに超音波を放射可能な構成であれば、洗浄槽2の外部に設置されても良い。
【0019】
超音波発振器4は、超音波振動子3に超音波を放射させるための電力を供給する装置である。超音波発振器4から超音波振動子3に電力が供給されることにより、超音波振動子3から洗浄液W中に超音波が放射される。これにより、洗浄液W中にキャビテーション(真空核)を発生させ、その衝撃力によって被洗浄物を洗浄することができる。
【0020】
超音波発振器4には、出力される超音波を調節するための出力調整回路5と、操作部6と、が設けられている。操作部6は、例えば、超音波発振器4の電源スイッチや、出力調整回路5に接続されて超音波の周波数や出力を調節するための入力をするダイヤル等である。操作部6によって出力調整回路5が調整されることにより、被洗浄物に付着した汚れに対して好適な周波数で、適正な電力を、超音波発振器4から超音波振動子3に供給することができる。これにより、超音波振動子3から洗浄に適した超音波が放射され、被洗浄物に付着した汚れを効率良く落とすことができる。
【0021】
超音波測定器10は、洗浄液W中の超音波の出力を測定する計測用の装置であり、プロペラ11と、そのプロペラ11を回転自在に支持する支柱部15と、を有する。超音波測定器10のプロペラ11は、洗浄槽2内の洗浄液W中に挿入されることにより、超音波の定常波によって回転する。そのため、プロペラ11の回転数を測定することにより、洗浄液W中に放射された超音波の出力を測定することができる。
【0022】
図2(A)は、超音波測定器10の正面図であり、図2(B)は、超音波測定器10の底面図である。図2(A)及び(B)に示すように、超音波測定器10は、プロペラ11と、近接センサ12と、水位アジャスタ13と、水平器14と、を有する。
【0023】
プロペラ11、近接センサ12、水位アジャスタ13及び水平器14は、例えば、ステンレス等の金属材料から略円棒状に形成された支柱部15に取り付けられている。なお、支柱部15の形状は、略角棒状等であっても良い。
【0024】
プロペラ11は、ステンレス等の金属材料等から形成される複数枚(例えば、4枚)の羽根を有している。プロペラ11の回転軸11aは、支柱部15の一端部に挿入され回転自在に支持されている。
【0025】
超音波測定器10のプロペラ11は、洗浄液W(図1参照)に挿入されることにより、超音波の出力によって回転する。そのため、プロペラ11の回転数を計測することにより、洗浄液W中の超音波の強さを測定することができる。
【0026】
このように、複数枚の羽根を有するプロペラ11の回転数を計測することにより、広い範囲の超音波の強さを正確に測定することができる。そのため、従来技術のようにプローブ等によって超音波の出力を測定する場合と比べて、超音波測定器10は、より正確に超音波の出力を測定することができる。
【0027】
また、支柱部15の移動によってプロペラ11の位置を変えることも可能であり、これにより、更に広い範囲で、超音波の出力を正確に計測することができる。なお、超音波測定器10は、作業者によって支柱部15が把持され、これによってプロペラ11が洗浄液W中に挿入される構成でも良い。また、超音波測定器10は、図示しない接続部材等によって支柱部15が洗浄槽2(図1参照)の上部に固定されても良い。また、超音波測定器10は、図示しないサーボモータ等を用いた位置制御可能な接続部材等に支持される構成でも良い。
【0028】
支柱部15のプロペラ11が取り付けられた端部近傍には、プロペラ11の回転数を測定するための近接センサ12が設けられている。近接センサ12は、例えば、非磁性体金属の検出が可能な高周波発振形が望ましい。これにより、ステンレス等の非磁性体金属から形成されたプロペラ11の回転数を高精度に測定することができる。
【0029】
なお、プロペラ11が鉄等の磁性体金属から形成されている場合には、近接センサ12は、磁性体金属を検出可能な高周波発振形であっても良い。また、プロペラ11が合成樹脂等によって形成される場合には、近接センサ12は、静電容量形であっても良い。
【0030】
近接センサ12には、図示を省略するが、配線を介してデジタル表示器等を有するアンプユニット等が接続されている。これにより、作業者は、アンプユニットのデジタル表示器を見て、プロペラ11の回転数を確認でき、洗浄槽2内の洗浄液W中に放射された超音波の出力を把握することができる。そして、超音波発振器4(図1参照)の出力調整回路5(図1参照)を調整することにより、超音波振動子3(図1参照)によって洗浄液W中に発生する超音波の出力を好適に制御することができる。
【0031】
なお、近接センサ12は、プロペラ11の検出結果を送信できるように、図示しない配線によって出力調整回路5に接続されても良い。このような構成により、出力調整回路5に予め設定された出力条件に基づき、プロペラ11及び近接センサ12によって測定される超音波の出力に応じて、超音波発振器4の電力を制御し、超音波振動子3から放射される超音波を制御することができる。
【0032】
超音波測定器10の支柱部15には、略リング状に形成された水位アジャスタ13が取り付けられている。水位アジャスタ13は、その中心穴部が支柱部15に嵌められており、水位アジャスタ13の外周近傍には、外方向に延びる円板部が形成されている。
【0033】
水位アジャスタ13の中心穴部には、例えば、ばね部材またはネジ部材が設けられており、水位アジャスタ13は、支柱部15に対してその軸方向に移動可能に支持されている。これにより、水位アジャスタ13の取り付け位置を変更して、水位アジャスタ13からプロペラ11までの距離を調整することができる。
【0034】
水位アジャスタ13が洗浄槽2内の洗浄液Wの上面位置になるように、超音波測定器10のプロペラ11を洗浄液W中に挿入することにより、洗浄液Wの上面からプロペラ11までの距離を設定した所定の値にすることができる。即ち、水位アジャスタ13によって、超音波測定時のプロペラ11の深さを好適に調整することができ、超音波の出力を高精度に測定することができる。
【0035】
超音波測定器10の支柱部15には、水平器14が取り付けられている。具体的には、水平器14は、支柱部15のプロペラ11が取り付けられる端部の反対側の端部近傍、即ち超音波の測定時に上方を向く端部近傍に取り付けられている。
【0036】
水平器14は、上面に気泡を観察する円形窓を有する円形水平器であり、気泡の位置により水平度を測るものである。水平器14は、プロペラ11の回転軸11aが鉛直な状態であることを検出できるよう、支柱部15の上端部近傍に略水平に取り付けられている。水平器14が設けられていることにより、プロペラ11の回転軸11aを略鉛直な状態にして、プロペラ11を略水平な状態で回転させることができ、超音波の強度を正確に測定することができる。
【0037】
なお、洗浄槽2または超音波測定器10には、洗浄液Wの液量またはプロペラ11の挿入位置や深さ等を測定する図示しないレベルゲージ等が設けられても良い。これにより、プロペラ11の位置を正確に調整し、超音波の出力を高精度に測定することができる。
【0038】
以上説明したとおり、本実施形態に係る超音波洗浄装置1によれば、超音波測定器10のプロペラ11の回転検出によって洗浄液W中の広い範囲で超音波の出力を高精度に測定することができる。そして、超音波測定器10で測定された超音波の出力に応じて出力調整回路5が調整され、超音波発振器4の出力が制御され、超音波振動子3から放射される超音波の出力が洗浄に適した値になる。よって、超音波洗浄装置1によれば、洗浄効率の高い優れた洗浄効果が得られる。
【0039】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更実施が可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 超音波洗浄装置
2 洗浄槽
3 超音波振動子
4 超音波発振器
5 出力調整回路
6 操作部
7 配線
10 超音波測定器
11 プロペラ
11a 回転軸
12 近接センサ
13 水位アジャスタ
14 水平器
15 支柱部
W 洗浄液
図1
図2