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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-28
(45)【発行日】2022-05-12
(54)【発明の名称】過熱水蒸気生成装置
(51)【国際特許分類】
   F22G 1/16 20060101AFI20220502BHJP
   H01F 5/00 20060101ALI20220502BHJP
   H05B 6/10 20060101ALI20220502BHJP
   H05B 3/00 20060101ALI20220502BHJP
   H05B 6/36 20060101ALI20220502BHJP
【FI】
F22G1/16
H01F5/00 R
H05B6/10 301
H05B3/00 340
H05B6/36 D
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018072893
(22)【出願日】2018-04-05
(65)【公開番号】P2019184104
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000110158
【氏名又は名称】トクデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(72)【発明者】
【氏名】水嶋 深
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-191680(JP,A)
【文献】特開2012-163230(JP,A)
【文献】特開2012-052707(JP,A)
【文献】特開2010-177069(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22G 1/00 - 7/14
H05B 6/02 - 6/44
H05B 3/00
H01F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
螺旋状に巻回した導体管を誘導加熱又は通電加熱することによって前記導体管内を流れる水蒸気を加熱して過熱水蒸気を生成する過熱水蒸気生成装置であって、
前記導体管の径方向内側又は径方向外側の少なくとも一方において前記導体管の巻回軸に沿って設けられた伝熱部材と、
前記導体管及び前記伝熱部材を覆うように設けられた断熱材とを備え
前記伝熱部材は、周方向に亘って設けられるとともに、軸方向に沿ってスリットを有する金属板である、過熱水蒸気生成装置。
【請求項2】
前記伝熱部材は、前記導体管の径方向外側において前記導体管を取り囲むように設けられている、請求項記載の過熱水蒸気生成装置。
【請求項3】
前記導体管の内側に設けられた内側鉄心と、
前記導体管の外側に設けられるとともに、前記内側鉄心とともに閉磁路を形成する磁路形成部と、
前記内側鉄心及び前記磁路形成部の間に設けられ、前記内側鉄心の内部に磁束を発生させる誘導コイルと、
前記内側鉄心及び前記磁路形成部の間に設けられ、前記水蒸気が流れる予熱管と備え、
前記予熱管は前記導体管に接続されており、
前記水蒸気は、前記予熱管を流れた後に、前記導体管に流れるように構成されている、請求項1又は2記載の過熱水蒸気生成装置。
【請求項4】
前記予熱管は、前記導体管及び前記磁路形成部の間に設けられた外側予熱管と、前記導体管及び前記内側鉄心の間に設けられた内側予熱管とを含む、請求項記載の過熱水蒸気生成装置。
【請求項5】
前記伝熱部材は、前記導体管と前記外側予熱管との間に設けられた外側伝熱部材と、前記導体管と内側予熱管との間に設けられた内側伝熱部材とを含む、請求項記載の過熱水蒸気生成装置。
【請求項6】
前記導体管は、上流側部分と下流側部分とで異なる金属により形成されている、請求項1乃至の何れか一項に記載の過熱水蒸気生成装置。
【請求項7】
前記上流側部分を形成する金属の耐熱温度は、前記下流側部分を形成する金属の耐熱温度よりも低い、請求項記載の過熱水蒸気生成装置。
【請求項8】
前記上流側部分と前記下流側部分とは溶接により接続されている、請求項又は記載の過熱水蒸気生成装置。
【請求項9】
前記上流側部分は、ステンレス鋼から形成されており、
前記下流側部分は、インコネルから形成されている、請求項乃至の何れか一項に記載の過熱水蒸気生成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、螺旋状に巻回した導体管を誘導加熱又は通電加熱することによって、導体管内を流れる水蒸気を加熱して過熱水蒸気を生成する過熱水蒸気生成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の過熱水蒸気生成装置において、特許文献1に示すように、二次コイルを形成する螺旋状に巻回した導体管の複数重を、螺旋の軸方向に延びる電気接続部材で溶接等により電気接続し、短絡回路を構成して電気的リアクタンスを低減させて加熱効率を向上させたものが知られている。
【0003】
この過熱水蒸気生成装置は、例えば120℃の水蒸気を螺旋導体管に導入して加熱し、例えば700~1200℃の過熱水蒸気を生成するものである。このように高温の水蒸気を扱う装置であるため、螺旋導体管の周りには断熱材が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-71624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来は、螺旋導体管の高温(例えば700~1200℃)となる出口部分の温度に合わせて断熱材の使用量が決定されており、螺旋導体管の比較的低温(例えば120℃)となる入口部分では断熱材が過剰量となってしまう。なお、螺旋導体管の温度分布に合わせて断熱材の厚みなどを異ならせることが考えられるが、その設計及び組み立てが複雑になってしまう。
【0006】
そこで本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、導体管の加熱温度により生じる装置の温度分布(温度勾配)を小さくして断熱材の使用量を削減することをその主たる課題としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明に係る過熱水蒸気生成装置は、螺旋状に巻回した導体管を誘導加熱又は通電加熱することによって前記導体管内を流れる水蒸気を加熱して過熱水蒸気を生成する過熱水蒸気生成装置であって、前記導体管の径方向内側又は径方向外側の少なくとも一方において前記導体管の巻回軸方向に沿って設けられた伝熱部材と、前記導体管及び前記伝熱部材を覆うように設けられた断熱材とを備えることを特徴とする。
【0008】
この過熱水蒸気生成装置によれば、導体管の径方向内側又は径方向外側の少なくとも一方において導体管の巻回軸方向に沿って伝熱部材を設けているので、導体管の周辺部材における温度分布(温度勾配)を小さくすることができる。その結果、導体管の過熱水蒸気の出口付近における周辺部分の温度を下げることができるので、断熱材の使用量を削減することができる。また、断熱材の使用量を削減することにより、装置を小型化することができるとともに、材料コストを低減することができる。
【0009】
周方向における温度分布を小さくするためには、前記伝熱部材は、周方向に亘って設けられていることが望ましい。
【0010】
前記伝熱部材は、前記導体管の径方向外側において前記導体管を取り囲むように設けられていることが望ましい。
この構成であれば、伝熱部材の体積を無理なく大きくすることができ、伝熱効果を高めることができる。また、伝熱部材が熱源である導体管を取り囲む構成であるので、導体管から外部に漏れ出る熱を内部に閉じ込めることができる。
【0011】
流体加熱装置の具体的な実施の態様としては、前記導体管の内側に設けられた内側鉄心と、前記導体管の外側に設けられるとともに、前記鉄心とともに閉磁路を形成する磁路形成部と、前記鉄心及び前記磁路形成部の間に設けられ、前記鉄心の内部に磁束を発生させる誘導コイルと、前記鉄心及び前記磁路形成部の間に設けられ、前記水蒸気が流れる予熱管と備え、前記予熱管は前記導体管に接続されており、前記水蒸気は、前記予熱管を流れた後に、前記導体管に流れるように構成されている。
この構成であれば、導体管から外部に漏れ出た熱を利用して水蒸気を予熱することができる。つまり、導体管からの放熱による損失を低減して水蒸気を効率良く加熱することができる。
【0012】
前記予熱管は、前記導体管及び前記磁路形成部の間に設けられた外側予熱管と、前記導体管及び前記鉄心の間に設けられた内側予熱管とを含むことが望ましい。
この構成であれば、導体管の径方向両側を外側予熱管及び内側予熱管で挟む構成とすることができ、導体管から径方向両側に漏れ出た熱を遮断する機能を発揮するため、断熱材の使用量を削減することができる。
【0013】
前記伝熱部材は、前記導体管と前記外側予熱管との間に設けられた外側伝熱部材と、前記導体管と内側予熱管との間に設けられた内側伝熱部材とを含むことが望ましい。
この構成であれば、導体管に近い部分で温度分布を小さくするとともに、伝熱部材により均一化された温度により外側予熱管及び内側予熱管を流れる水蒸気を加熱することができる。
【0014】
上述したように過熱水蒸気生成装置の導体管は、例えば120℃の水蒸気が導入されて、例えば700~1200℃の過熱水蒸気を導出することから、導体管の材質としては、例えば700℃以上の耐熱温度を有する材質(例えばインコネル)を用いる必要がある。ところが、導体管の材質としてインコネルを用いた場合には、材料コストが高くなってしまう。
そこで、前記導体管は、上流側部分と下流側部分とで異なる金属により形成されていることが望ましい。
この構成であれば、導体管の上流側部分の温度及び下流側部分の温度に合わせた材料選択を行うことができ、導体管の合理的な設計が可能となり、導体管の材料コストを低減することができる。
【0015】
具体的には、前記上流側部分を形成する金属の耐熱温度は、前記下流側部分を形成する金属の耐熱温度よりも低いことが望ましい。
【0016】
導体管の構成を簡略化するとともに、その製造コストを削減するためには、前記上流側部分と前記下流側部分とは溶接により接続されていることが望ましい。
【0017】
具体的には、前記上流側部分は、汎用合金鋼であるステンレス鋼(例えばSUS304、SUS316等)から形成されており、前記下流側部分は、超耐熱鋼であるインコネルから形成されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0018】
このように構成した本発明によれば、導体管の径方向内側又は径方向外側の少なくとも一方において導体管の巻回軸方向に沿って伝熱部材を設けているので、導体管の加熱温度により生じる装置の温度分布を均一化して断熱材の使用量を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施形態に係る過熱水蒸気生成装置の構成を模式的に示す断面図である。
図2】同実施形態の過熱水蒸気生成装置の径方向における配置を模式的に示す図である。
図3】同実施形態の導体管の構成を模式的に示す断面図である。
図4】同実施形態の導体管の構成を模式的に示す正面図である。
図5】同実施形態の導体管における短絡電流の回路を示す図である。
図6】同実施形態の内側鉄心の構成を模式的に示す平面図及び正面図である。
図7】同実施形態の外側鉄心の構成を模式的に示す平面図及び正面図である。
図8】同実施形態の継鉄心の構成を模式的に示す平面図である。
図9】導体管の変形例を模式的に示す図である。
図10】変形実施形態の過熱水蒸気生成装置の径方向における配置を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<1.装置構成>
本実施形態に係る過熱水蒸気生成装置100は、外部で生成された例えば120℃の水蒸気を加熱して、例えば700~1200℃の過熱水蒸気を生成するものである。その他、過熱水蒸気生成装置100としては、水を加熱して例えば120℃の水蒸気を生成する飽和水蒸気生成部を有するものであっても良い。
【0021】
具体的に過熱水蒸気生成装置100は、導体管2を誘導加熱することによって導体管2内を流れる水蒸気を加熱して過熱水蒸気を生成するものであり、図1及び図2に示すように、螺旋状に巻回した導体管2と、導体管2の内側に設けられた内側鉄心3と、導体管2の外側に設けられるとともに、内側鉄心3とともに閉磁路を形成する磁路形成部4と、内側鉄心3及び磁路形成部4の間に設けられ、内側鉄心3の内部に磁束を発生させる誘導コイル5と、内側鉄心3及び磁路形成部4の間に設けられ、水蒸気が流れる予熱管6と備えている。
【0022】
導体管2は、所定の中心軸線上に沿って螺旋状(コイル状)に巻回されたものである。具体的に導体管2は、図3及び図4に示すように、螺旋状に巻回した内側管要素21と、当該内側管要素21の外側に設けられ、螺旋状に巻回した外側管要素22と、内側管要素21及び外側管要素22を流体的に接続するとともにそれらを短絡接続する接続管要素23a、23bとを備えている。なお、導体管2の材質としては、汎用合金鋼であるステンレス鋼(SUS304やSUS316等)や超耐熱鋼であるインコネル等である。
【0023】
内側管要素21及び外側管要素22の巻回方向は互いに逆向きとしてある(図3参照)。そして、内側管要素21の軸方向一端部と外側管要素22の軸方向一端部とが接続管要素23aにより接続されている。また、内側管要素21の軸方向他端部と外側管要素22の軸方向他端部とが接続管要素23bにより接続されている。
【0024】
接続管要素23aには水蒸気の導入ポート2p1が設けられており、接続管要素23bには過熱水蒸気の導出ポート2p2が設けられている。この構成により、接続管要素23aの導入ポート2p1から流入した水蒸気は、接続管要素23aにより内側管要素21及び外側管要素22に分岐して流れ、内側管要素21及び外側管要素22を流れた水蒸気(過熱水蒸気)は、接続管要素23bで合流して導出ポート2p2から流出する。
【0025】
また、このように接続した導体管2は、内側管要素21及び外側管要素22が接続管要素23により電気的に並列接続される構成である。そして、誘導コイル5により生じる磁束によって、内側管要素21及び外側管要素22に図5に示すように短絡電流が流れる。つまり、内側管要素21には、軸方向一端部21aから軸方向他端部21bに向かって短絡電流が流れ、外側管要素22には、軸方向他端部22bから軸方向一端部22aに向かって短絡電流が流れる。この構成により、導体管2とは別に電気接続部材を設ける必要が無く、導体管2自体の構成により短絡回路を形成することができる。
【0026】
内側鉄心3は、図1及び図2に示すように、導体管2の内側において導体管2の内側管要素21と同軸上に配置されている。本実施形態の内側鉄心3は、図6(A)に示すように、いわゆるインボリュート鉄心であり、幅方向断面がインボリュート曲線状に湾曲した湾曲部を有する複数の珪素鋼板を円周方向に放射状に積み重ねて円筒状に形成したものである。なお、内側鉄心3は、図6(B)に示すように、平板状の珪素鋼板を積み重ねて円筒状に形成したものであっても良い。
【0027】
磁路形成部4は、図1に示すように、内側鉄心3とともに閉磁路を形成するものであり、導体管2の外側において周方向に例えば等間隔に配置された複数の外側鉄心41と、内側鉄心3及び複数の外側鉄心41の上端同士及び下端同士を接続する上下の継鉄心42とを有する。なお、外側鉄心41は、周方向に等間隔でなくても良い。
【0028】
外側鉄心41は、図2に示すように、導体管2の外側において導体管2と同軸上に配置されている。本実施形態では、3つの外側鉄心41が、導体管2の外側において周方向に等間隔に配置されている。本実施形態の各外側鉄心41は、後述する継鉄心42との関係で、並列配置された2つの外側鉄心要素411、412から構成されている。また、各外側鉄心要素411、412は、図7に示すように、平板状の珪素鋼板を積み重ねて半円柱状又は半円筒状に形成したものである。これにより、過熱水蒸気生成装置100を径方向に小型化している。なお、外側鉄心41は、1つの外側鉄心要素からなるものであっても良い。
【0029】
上下の継鉄心42はそれぞれ、図8に示すように、3つの継鉄心要素421、422、423から構成されており、各継鉄心要素421、422、423は環状巻鉄心を変形させることにより構成されている。具体的に各継鉄心要素421、422、423は、環状巻鉄心を中央で屈曲するくの字状に変形させることにより構成されている。これら3つの継鉄心要素421、422、423を、それらの屈曲部が中心側に位置するように組み合わせることによりY字状の継鉄心42が構成される。各継鉄心要素421、422、423の両端部には、前記各外側鉄心要素411、412が接続される。また、継鉄心42の中央部には、内側鉄心3が接続される。つまり、3つの外側鉄心41は正三角形の頂点に位置し、内側鉄心3は正三角形の重心に位置する。これら各部は、内側鉄心3、外側鉄心41及び継鉄心42を挟む挟持部材7を介して、締結ボルト等の締結機構8により軸方向から締結して行われる。
【0030】
誘導コイル5は、図1及び図2に示すように、内側鉄心3の外側に巻回された内側誘導コイル51と、外側鉄心の内側に巻回された外側誘導コイル52とを有している。これら誘導コイル51、52は、内側鉄心3と同軸上に配置されている。誘導コイル51、52には、50Hz又は60Hzの単相電源(図示なし)が接続される。なお、内側誘導コイル51と外側誘導コイル52とは互いに直列又は並列に接続されている。
【0031】
予熱管6は、導体管2の巻回軸Cと同軸上に螺旋状(コイル状)に巻回されたものである。具体的に予熱管6は、図1及び図2に示すように、導体管2の内側に設けられ、螺旋状に巻回した内側予熱管61と、導体管2の外側に設けられ、螺旋状に巻回した外側予熱管62とを備えている。
【0032】
内側予熱管61は、導体管2と内側鉄心3との間、より具体的には導体管2と内側誘導コイル51との間に設けられている。また、外側予熱管62は、導体管2と外側鉄心41との間、より具体的には、導体管2と外側誘導コイル52との間に設けられている。
【0033】
内側予熱管61の一端部には、外部で生成された水蒸気が導入される導入ポート61pが設けられている。また、内側予熱管61の他端部は、外側予熱管62の他端部に接続されている。さらに、外側予熱管62の一端部は、導体管2の導入ポート2p1に接続されている。つまり、内側予熱管61の導入ポート61pから導入された水蒸気は、内側予熱管61及び外側予熱管62を流れた後に、導体管2に流入する。
【0034】
ここで、内側予熱管61の巻回方向と外側予熱管62の巻回方向とは互いに逆向きとなるように構成されている。これにより、内側予熱管61で誘起される誘起電圧の位相と外側予熱管62で誘起される誘起電圧の位相とが逆となり、内側予熱管61及び外側予熱管62に発生する短絡電流を打ち消し合うことができる。
【0035】
このように構成した過熱水蒸気生成装置100において、誘導コイル5に単相電源により交流電圧を印加することで、内側誘導コイル51及び外側誘導コイル52に電流が流れて内側鉄心3及び磁路形成部4に磁束が流れる。当該磁束によって導体管2の内側管要素21、外側管要素22及び接続管要素23a、23bに短絡電流が流れて、導体管2がジュール発熱する。これにより、導体管2を流れる水蒸気が加熱されて過熱水蒸気が生成される。
【0036】
然して、本実施形態の過熱水蒸気生成装置100は、図1及び図2に示すように、導体管2の加熱温度により生じる巻回軸方向における温度勾配(温度分布)を小さくする伝熱部材9が設けられている。
【0037】
本実施形態の伝熱部材9は、導体管2の径方向内側に導体管2の巻回軸Cに沿って内側伝熱部材91と、導体管2の径方向外側に導体管2の巻回軸Cに沿って外側伝熱部材92とである。
【0038】
内側伝熱部材91は、導体管2と内側予熱管61との間に設けられている。この内側伝熱部材91は、周方向に亘って略全体に設けられている。具体的に内側伝熱部材91は、内側予熱管61を取り囲むように設けられており、軸方向に沿って一部にスリットが形成された例えばC形状等の部分円筒形状をなすものである。この内側伝熱部材91としては、アルミニウムや銅等の熱伝導性に優れた材料からなる湾曲板である。
【0039】
外側伝熱部材92は、導体管2と外側予熱管62との間に設けられている。この外側伝熱部材92は、周方向に亘って周方向に亘って略全体に設けられている。具体的に外側伝熱部材92は、導体管2を取り囲むように設けられており、軸方向に沿って一部にスリットが形成された例えばC形状等の部分円筒形状をなすものである。この外側伝熱部材92としては、アルミニウムや銅等の熱伝導性に優れた材料からなる湾曲板である。
【0040】
そして、図1に示すように、過熱水蒸気生成装置100において導体管2、予熱管6及び伝熱部材9を覆うように断熱材10が設けられている。なお、図2では断熱材は図示していない。
【0041】
この断熱材10は、挟持部材7の間において外側鉄心41の内側の空間を埋めるように設けられている。具体的には、内側誘導コイル51と内側予熱管61との間、内側予熱管61と内側伝熱部材91との間、内側伝熱部材91と内側管要素21との間、内側管要素21と外側管要素22との間、外側管要素22と外側伝熱部材92との間、外側伝熱部材92と外側予熱管62との間、外側予熱管62と外側誘導コイル52との間、その他各部の空間を埋めるように設けられている。
【0042】
<2.本実施形態の効果>
このように構成した過熱水蒸気生成装置100によれば、導体管2の径方向内側又は径方向外側の少なくとも一方において導体管2の巻回軸方向に沿って伝熱部材9を設けているので、導体管2の周辺部材(内側伝熱部材91及び外側伝熱部材92)の軸方向における温度分布を小さくすることができる。その結果、導体管2の過熱水蒸気の出口付近において内側伝熱部材91及び外側伝熱部材92の温度を下げることができるので、断熱材10の使用量を削減することができる。また、断熱材10の使用量を削減することにより、装置100を小型化することができるとともに、材料コストを低減することができる。
【0043】
内側伝熱部材91及び外側伝熱部材92が周方向に亘って略全体に設けられているので、周方向における温度分布を小さくすることができる。また、外側伝熱部材92が導体管2を取り囲むように設けられているので、外側伝熱部材92の体積を無理なく大きくすることができ、伝熱効果を高めることができる。また、外側伝熱部材92が熱源である導体管2を取り囲む構成であるので、導体管2から外部に漏れ出る熱を内部に閉じ込めることができる。
【0044】
また、導体管2の径方向両側に内側予熱管61及び外側予熱管62を設けているので、導体管2から外部に漏れ出た熱を利用して水蒸気を予熱することができる。つまり、導体管2からの放熱による損失を低減して水蒸気を効率良く加熱することができる。また、導体管2から径方向両側に漏れ出た熱を遮断する機能を発揮するため、断熱材10の使用量を削減することができる。また、導体管2に近い部分で温度分布を小さくできるとともに、伝熱部材9により均一化された温度により内側予熱管61及び外側予熱管62を流れる水蒸気を加熱することができる。
【0045】
<3.本発明の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
例えば、前記実施形態の導体管2は、2重管構造をなすものであったが、4重管又はそれ以上の偶数重の管要素を有するものであっても良い。この場合、2つの管要素毎にそれぞれ接続管要素で接続する。例えば、前記実施形態の導体管2を同心円状に複数配置した構成とすることが考えられる。
【0046】
前記実施形態の伝熱部材は、C形状の湾曲板であったが、その他、ヒートパイプであっても良いし、内部に気液二相の熱媒体が封入されたジャケット室を有するヒートプレートであっても良い。その他、熱伝導性に優れた金属からなる複数の金属板を周方向に配置した構成としても良い。
【0047】
前記実施形態の導体管2は、単一の材質からなるものであったが、複数の材質から構成しても良い。例えば図9に示すように、導体管2を、上流側部分2xと下流側部分2yとで異なる金属により形成しても良い。ここで、導体管2を巻回軸方向に2分割して上流側部分2xと下流側部分2yに分けることが考えられる。この構成であれば、導体管2の上流側部分2xの温度及び下流側部分2yの温度に合わせた材料選択を行うことができ、導体管2の合理的な設計が可能となり、導体管2の材料コストを低減することができる。なお、図9では、内側管要素21及び外側管要素22の両方において、上流側部分2xと下流側部分2yとで異なる金属により形成した例を示している。
【0048】
具体的には、上流側部分2xを形成する金属の耐熱温度を、下流側部分2yを形成する金属の耐熱温度よりも低くすることが考えられ、上流側部分2xを、汎用合金鋼であるステンレス鋼(例えばSUS304、SUS316等)から形成し、下流側部分2yを、超耐熱鋼であるインコネルから形成することが考えられる。
【0049】
このとき、上流側部分2xと下流側部分2yとを溶接により接続することが考えられる。これにより、導体管2の構成を簡略化するとともにその製造コストを削減することができる。ここで、溶接箇所2zの高温による損傷や劣化を避けるために低温側に溶接箇所2zを設けることもできる。つまり、上流側部分2xを短くして下流側部分2yを長くする構成となる。
【0050】
前記実施形態では、3つの外側鉄心41を有する構成であったが、図10に示すように2つの外側鉄心41を有する構成としても良い。この場合、2つの外側鉄心41は、内側鉄心3を挟むように両側に対向して設けられる。この場合、継鉄心42は、例えば環状巻鉄心を直線状に変形させることにより構成することが考えられる。
【0051】
前記実施形態の過熱水蒸気生成装置100を複数用いて、それらの導体管2を直列接続したものであっても良い。この場合、外部から導入された水蒸気は、全ての過熱水蒸気生成装置100の予熱管6を通過した後に各過熱水蒸気生成装置100の導体管2に流入するように配管接続することが考えられる。
【0052】
過熱水蒸気生成装置は、前記実施形態の構成に限られず、スコット変圧器を構成する脚鉄心に導体管を装着して、当該導体管を誘導加熱して水蒸気を加熱する構成であっても良い。この場合、スコット変圧器を構成する脚鉄心は3脚鉄心であり、その両側に位置する脚鉄心それぞれに導体管を装着する構成とすることが考えられる。
【0053】
さらに、過熱水蒸気生成装置の加熱方式としては、前記実施形態のように誘導加熱方式の他、螺旋状に巻廻した導体管に直接電流を流すことによりジュール発熱させる通電加熱方式のものであっても良い。
【0054】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0055】
100・・・過熱水蒸気生成装置
2 ・・・導体管
21 ・・・内側管要素
22 ・・・外側管要素
3 ・・・内側鉄心
4 ・・・磁路形成部
41 ・・・外側鉄心
42 ・・・継鉄心
5 ・・・誘導コイル
6 ・・・予熱管
61 ・・・内側予熱管
62 ・・・外側予熱管
9 ・・・伝熱部材
91 ・・・内側伝熱部材
92 ・・・外側伝熱部材
2x ・・・上流側部分
2y ・・・下流側部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10