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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-28
(45)【発行日】2022-05-12
(54)【発明の名称】ヘアカラー剤組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/46 20060101AFI20220502BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20220502BHJP
   A61K 8/365 20060101ALI20220502BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20220502BHJP
   A61K 8/41 20060101ALI20220502BHJP
   A61K 8/42 20060101ALI20220502BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20220502BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20220502BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20220502BHJP
   A61Q 5/06 20060101ALI20220502BHJP
   A61Q 5/10 20060101ALI20220502BHJP
【FI】
A61K8/46
A61K8/19
A61K8/365
A61K8/37
A61K8/41
A61K8/42
A61K8/44
A61K8/49
A61K8/73
A61Q5/06
A61Q5/10
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019005580
(22)【出願日】2019-01-16
(65)【公開番号】P2020111556
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2020-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】397021235
【氏名又は名称】株式会社サニープレイス
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【弁理士】
【氏名又は名称】坂野 博行
(72)【発明者】
【氏名】向井 信人
(72)【発明者】
【氏名】向井 孝
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-067597(JP,A)
【文献】特開2015-040193(JP,A)
【文献】特開2012-171952(JP,A)
【文献】特開2012-246229(JP,A)
【文献】特開2008-208067(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チオグリコール酸、3-メルカプト-1,2-プロパンジオール、システアミン、ならびにこれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも1種と、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウムと、塩基性染料と、HC染料、アミノ酸と、カチオン界面活性剤と、増粘剤と、油剤と、pH調整剤と、湿潤剤とを含有するヘアカラー剤組成物であって、前記ヘアカラー剤組成物のpHは、pH6.8~10であるヘアカラー剤組成物。
【請求項2】
前記pH調整剤は、クエン酸、リン酸、乳酸、リンゴ酸、アンモニア水、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、モノエタノールアミン、リン酸アンモニウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸アンモニウム、乳酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸ナトリウムから選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項1記載のヘアカラー剤組成物。
【請求項3】
前記アミノ酸は、システイン、アルギニン、リシン、ヒスチジンならびにこれらの塩から選択される少なくとも1種である請求項1又は2に記載のヘアカラー剤組成物。
【請求項4】
前記塩基性染料は、INCI(INCI:International Nomenclature of Cosmetic Ingredient:化粧品原料国際命名法)名において、塩基性青3(ベーシックブルー3)、塩基性青7(ベーシックブルー7)、塩基性青9(ベーシックブルー9)、塩基性青26(ベーシックブルー26)、塩基性青75(ベーシックブルー75)、塩基性青77(ベーシックブルー77)、塩基性青99(ベーシックブルー99)、塩基性青124(ベーシックブルー124)、塩基性赤51(ベーシックレッド51)、塩基性赤76(ベーシックレッド76)、塩基性黄57(ベーシックイエロー57)、塩基性紫2(ベーシックバイオレット2)、塩基性茶16(ベーシックブラウン16)、又は塩基性茶17(ベーシックブラウン17)から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のヘアカラー剤組成物。
【請求項5】
前記HC染料は、INCI(INCI:International Nomenclature of Cosmetic Ingredient:化粧品原料国際命名法)名において、HC青2(HCブルー2)、HC青12(HCブルー12)、HC青14(HCブルー14)、HC青15(HCブルー15)、HC青16(HCブルー16)、HC青18(HCブルー18)、HC黄2(HCイエロー2)、HC黄4(HCイエロー4)、HC黄5(HCイエロー5)、HC赤1(HCレッド1)、HC赤3(HCレッド3)、又はHC橙1(HCオレンジ1) から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のヘアカラー剤組成物。
【請求項6】
前記カチオン界面活性剤は、4級アンモニウム塩、及び/又は3級アミンである請求項1~5のいずれか1項に記載のヘアカラー剤組成物。
【請求項7】
前記4級アンモニウム塩は、塩化アルキルトリメチルアンモニウム液、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、又は臭化ステアリルトリメチルアンモニウムである請求項6記載のヘアカラー剤組成物。
【請求項8】
前記3級アミンは、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド、又はべヘナミドプロピルジメチルアミンである請求項6記載のヘアカラー剤組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載のヘアカラー剤組成物を含むヘアカラ―剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘアカラー剤組成物に関し、特に、皮膚障害を低減可能なヘアカラー剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘアカラーリングとして、主として、医薬部外品の永久染毛料であるヘアカラーと、化粧品の半永久染毛料であるヘアマニキュアやヘアカラートリートメント等がある。特に、永久染毛料のヘアカラーにはパラフェニレンジアミン(酸化染料)という物質が含まれるものが主流となっているが、黒色系の濃色の場合はジアミン系化合物の配合量が多くなるので更に注意が必要となっている。
【0003】
例えば、パラフェニレンジアミン(酸化染料)を含むヘアカラーリング組成物として、(a)水溶性過酸素ブリーチ;(b)有機ペルオキシ酸ブリーチ前駆体及び/又は予め形成された有機ペルオキシ酸から選択されたブリーチング助剤;並びに、(c)1以上のヘアカラーリング剤を含むことを特徴とするヘアカラーリング組成物が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表平11-501947
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1も含め、従来技術においては、パラフェニレンジアミン(酸化染料)を含むものは、上述のように黒色系の濃色の場合はジアミン系化合物の配合量が多くなるので更に注意が必要となっている以外に、近年、パラフェニレンジアミン(酸化染料)という物質が原因で皮膚障害が報告されている。
【0006】
また、半永久染毛料のヘアマニキュアは1回の使用で色素(酸性染料)が髪の内部まで浸透し2~3週間の色持ちが特徴であるが、頭皮に付着し放置時間が長くなれば長くなるほど染まった色素が取れにくくなり、施術する側では生え際ギリギリまで塗布するのが難しく、施術者の技量の割にはヘアカラーに比べて染まりが悪いためサロンや美容室では敬遠されがちな染毛料となっている。
【0007】
そこで、本発明は、パラフェニレンジアミンフリーで、皮膚障害を低減可能なヘアカラー剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明者らは、ヘアカラートリートメントについて鋭意検討した結果、本発明を見出すに至った。
【0009】
すなわち、本発明のヘアカラー剤組成物は、チオグリコール酸3-メルカプト-1,2-プロパンジオール、システアミン、ならびにこれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも1種と、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウムと、塩基性染料と、HC染料、アミノ酸と、カチオン界面活性剤と、増粘剤と、油剤と、pH調整剤と、湿潤剤とを含有するヘアカラー剤組成物であって、前記ヘアカラー剤組成物のpHは、pH6.8~10であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明のヘアカラー剤組成物の好ましい実施態様において、前記pH調整剤は、クエン酸、リン酸、乳酸、リンゴ酸、アンモニア水、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、モノエタノールアミン、リン酸アンモニウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸アンモニウム、乳酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸ナトリウムから選択される少なくとも一種であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明のヘアカラー剤組成物の好ましい実施態様において、前記アミノ酸は、システイン、アルギニン、リシン、ヒスチジンならびにこれらの塩から選択される少なくとも1種であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明のヘアカラー剤組成物の好ましい実施態様において、前記塩基性染料は、INCI(INCI:International Nomenclature of Cosmetic Ingredient:化粧品原料国際命名法)名において、塩基性青3(ベーシックブルー3)、塩基性青7(ベーシックブルー7)、塩基性青9(ベーシックブルー9)、塩基性青26(ベーシックブルー26)、塩基性青75(ベーシックブルー75)、塩基性青77(ベーシックブルー77)、塩基性青99(ベーシックブルー99)、塩基性青124(ベーシックブルー124)、塩基性赤51(ベーシックレッド51)、塩基性赤76(ベーシックレッド76)、塩基性黄57(ベーシックイエロー57)、塩基性紫2(ベーシックバイオレット2)、塩基性茶16(ベーシックブラウン16)、又は塩基性茶17(ベーシックブラウン17)から選択される少なくとも1種であることを特徴とする。
【0013】
また、本発明のヘアカラー剤組成物の好ましい実施態様において、前記HC染料は、INCI(INCI:International Nomenclature of Cosmetic Ingredient:化粧品原料国際命名法)名において、HC青2(HCブルー2)、HC青12(HCブルー12)、HC青14(HCブルー14)、HC青15(HCブルー15)、HC青16(HCブルー16)、HC青18(HCブルー18)、HC黄2(HCイエロー2)、HC黄4(HCイエロー4)、HC黄5(HCイエロー5)、HC赤1(HCレッド1)、HC赤3(HCレッド3)、又はHC橙1(HCオレンジ1) から選択される少なくとも1種であることを特徴とする。
【0014】
また、本発明のヘアカラー剤組成物の好ましい実施態様において、前記カチオン界面活性剤は、4級アンモニウム塩、及び/又は3級アミンであることを特徴とする。
【0015】
また、本発明のヘアカラー剤組成物の好ましい実施態様において、前記4級アンモニウム塩は、塩化アルキルトリメチルアンモニウム液、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、又は臭化ステアリルトリメチルアンモニウムであることを特徴とする。
【0016】
また、本発明のヘアカラー剤組成物の好ましい実施態様において、前記3級アミンは、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド、又はべヘナミドプロピルジメチルアミンであることを特徴とする。
【0017】
また、本発明のヘアカラー剤は、本発明のヘアカラー剤組成物を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明のヘアカラー剤組成物によれば、パラフェニレンジアミンを含まず、かぶれで困っている方や接触性皮膚炎を心配される方などに適し、かつ高齢化でヘアカラーの使用期間が長くなる可能性を秘めているため安心して使える色持ちの良く、また施術する側でも安心して頭皮への付着を気にせず新生部まで塗布出来るヘアカラー製品を提供することが可能であるという有利な効果を奏する。
【0019】
また、本発明のヘアカラー剤組成物によれば、特定成分の使用により、浸透性が良好であり、染色料等の量を少なくすることが可能であるという有利な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、各種色素を用いた場合の、3-メルカプト-1,2-プロパンジオールの0%、1%、3%溶液中で処理した毛髪断面試料の光学顕微鏡による観察結果を示す図である。
図2図2は、Basic Brown16 0.2%とBasic Blue77 0.2%を混ぜて黒褐色にした場合の、3-メルカプト-1,2-プロパンジオールの0%、0.5%、1%、3%溶液中で処理した毛髪断面試料の光学顕微鏡による観察結果を示す図である。
図3図3は、Basic Brown16 0.2%とBasic Blue77 0.2%を混ぜて黒褐色にした場合の、3-メルカプト-1,2-プロパンジオールの0%、0.5%、1%、3%、4%、5%及び10%溶液中で処理した毛髪断面試料の光学顕微鏡による観察結果を示す図である。(念のため、先日出願したPCTの追加データ等を挿入しています。ご確認願います。)
図4図4は、Basic Brown16 0.2%とBasic Blue77 0.2%を混ぜて黒褐色にした場合の、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウムの0%、0.5%、1%、3%、5%、7%、10%溶液中で処理した毛髪断面試料の光学顕微鏡による観察結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明のヘアカラー剤組成物は、チオグリコール酸、システイン、3-メルカプト-1,2-プロパンジオール、システアミン、ならびにこれらの誘導体及び塩からなる群より選ばれる少なくとも1種と、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウムと、塩基性染料と、HC染料、アミノ酸と、カチオン界面活性剤と、増粘剤と、油剤と、pH調整剤と、湿潤剤とを含有するヘアカラー剤組成物であって、前記ヘアカラー剤組成物のpHは、pH3.5以上であることを特徴とする。これは、チオグリセリン(科学名:3-メルカプト-1,2-プロパンジオール)及び/又はヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウムと、等を配合することによってpHを上げたり加温をしなくても、チオグリセリン等を配合せずにpHを上げ加温して染毛したものより染毛が良好であることが、今回本発明者らが見出したことによる。また、本発明のヘアカラー剤組成物においては、pH6.8以上にすることによって、キューティクルを開き易くすることが判明し、同時にL-アルギニン、L-リシン、L-ヒスチジン、またその塩類といった塩基性アミノ酸を毛髪内部に送り込み、痛みで流出した塩基性アミノ酸を補って補修しながらカラートリートメント出来る製品であることが分かった。すなわち、ヘアカラートリートメント等では、キューティクル(毛小皮)及び毛髪表面近くのコルテックスを染めるもので、十分に色もちが良いヘアカラーを達成できない場合もあったが、本発明のヘアカラ―剤組成物を適用すると、キューティクルを開くことが可能であり、ひいては、色もちが良いヘアカラーを達成し得るという有利な効果を奏するものである。
【0022】
また、本発明において、チオグリコール酸、システィン、3-メルカプト-1,2-プロパンジオール、システアミン、ならびにこれらの誘導体及び塩類からなる群より選ばれる少なくとも1種、及び/又はヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウムとしたのは、これらの成分を含むことにより、染料等の成分を毛髪内部に深く浸透させることが可能であり、少量の染料でも十分にヘアカラーを実現でき、しかも、長期間に渡って染料の効果を維持することが可能であるためである。本発明において、チオグリコール酸、システィン、3-メルカプト-1,2-プロパンジオール、システアミン、ならびにこれらの誘導体及び塩類、及び/又はヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウムのうち、臭いと結晶析出等の観点から、好ましくは3-メルカプト-1,2-プロパンジオール、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウムを使用することができる。
【0023】
本発明の好ましい実施態様において、チオグリコール酸、システィン、3-メルカプト-1,2-プロパンジオール、システアミン、ならびにこれらの誘導体及び塩類からなる群より選ばれる少なくとも1種の成分、又はヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウムの含有量は、前記ヘアカラー剤の全量に対して、低刺激性であり且つ毛髪への浸透促進作用にも優れた組成物という観点から、0.01~10.0重量%、好ましくは0.05~5.0重量%、より好ましくは、0.1~3.0%重量%としてもよい。
【0024】
また、本発明のヘアカラー剤組成物の好ましい実施態様において、キューティクルを開き易くしpHを所望の値以上に調整するという観点から、前記pH調整剤は、クエン酸、リン酸、乳酸、リンゴ酸、アンモニア水、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、モノエタノールアミン、リン酸アンモニウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸アンモニウム、乳酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸ナトリウムから選択される少なくとも一種を挙げることができる。弱アルカリ性で毛髪への残留が少ないという観点から、好ましくは、前記pH調整剤としては、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム等を挙げることができる。
【0025】
キューティクルを効率よく開き、色もちを良好に発揮し得るという観点から、本発明のヘアカラー剤組成物のpH値としては、好ましくは、pH3.5以上、より好ましくは、pH5~11、さらに好ましくは、pH6.8~10に調整することができる。
【0026】
また、本発明のヘアカラー剤組成物の好ましい実施態様において、前記アミノ酸は、システイン、アルギニン、リシン、ヒスチジンならびにこれらの塩から選択される少なくとも1種であることを特徴とする。また、アミノ酸の量としては、特に限定されないが、毛髪の保湿及び柔軟性を保つという観点から、組成物の合計量に対して、好ましくは、0.01~0.5質量%、より好ましくは、0.01~0.3質量%、さらに好ましくは0.02~0.2質量%とすることができる。
【0027】
また、本発明のヘアカラー剤組成物の好ましい実施態様において、前記塩基性染料は、INCI(INCI:International Nomenclature of Cosmetic Ingredient:化粧品原料国際命名法)名において、塩基性青3(ベーシックブルー3)、塩基性青7(ベーシックブルー7)、塩基性青9(ベーシックブルー9)、塩基性青26(ベーシックブルー26)、塩基性青75(ベーシックブルー75)、塩基性青77(ベーシックブルー77)、塩基性青99(ベーシックブルー99)、塩基性青124(ベーシックブルー124)、塩基性赤51(ベーシックレッド51)、塩基性赤76(ベーシックレッド76)、塩基性黄57(ベーシックイエロー57)、塩基性紫2(ベーシックバイオレット2)、塩基性茶16(ベーシックブラウン16)、又は塩基性茶17(ベーシックブラウン17)から選択される少なくとも1種であることを特徴とする。なお、INCI(INCI:International Nomenclature of Cosmetic Ingredient:化粧品原料国際命名法)は、国際命名法委員会(INC:International Nomenclature Committee)が作成した化粧品成分の国際的表示名称である。また、前記塩基性染料の量としては、特に限定されないが、染色力は強くないが毛髪へのダメージが少ないという観点から、組成物の合計量に対して、好ましくは0.0005~5質量%、より好ましくは、0.01~3質量%、さらに好ましくは、0.1~1質量%とすることができる。
【0028】
また、本発明のヘアカラー剤組成物の好ましい実施態様において、前記HC染料は、INCI(INCI:International Nomenclature of Cosmetic Ingredient:化粧品原料国際命名法)名において、HC青2(HCブルー2)、HC青12(HCブルー12)、HC青14(HCブルー14)、HC青15(HCブルー15)、HC青16(HCブルー16)、HC青18(HCブルー18)、HC黄2(HCイエロー2)、HC黄4(HCイエロー4)、HC黄5(HCイエロー5)、HC赤1(HCレッド1)、HC赤3(HCレッド3)、又はHC橙1(HCオレンジ1) から選択される少なくとも1種であることを特徴とする。なお、INCI(INCI:International Nomenclature of Cosmetic Ingredient:化粧品原料国際命名法)は、国際命名法委員会(INC:International Nomenclature Committee)が作成した化粧品成分の国際的表示名称である。また、前記HC染料の量としては、特に限定されないが、HC染料は毛髪内を染色するため、より深みのある発色を呈するという観点から、組成物の合計量に対して、好ましくは、0.0005~5質量%、より好ましくは、0.01~3質量%、さらに好ましくは0.1~1.5質量%とすることができる。
【0029】
また、本発明のヘアカラー剤組成物の好ましい実施態様において、毛髪に与える感触をさらに向上させるという観点から、前記カチオン界面活性剤は、4級アンモニウム塩、及び/又は3級アミンであることを特徴とする。また、本発明のヘアカラー剤組成物の好ましい実施態様において、前記4級アンモニウム塩は、塩化アルキルトリメチルアンモニウム液、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、又は臭化ステアリルトリメチルアンモニウムであることを特徴とする。また、本発明のヘアカラー剤組成物の好ましい実施態様において、前記3級アミンは、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド、又はべヘナミドプロピルジメチルアミンであることを特徴とする。また、前記カチオン界面活性剤の量としては、特に限定されないが、塩基性染料の毛髪染着力の向上という観点から、組成物の合計量に対して、好ましくは0.01~10質量%、より好ましくは0.1~5質量%、さらに好ましくは1~3質量%とすることができる。
【0030】
その他、本発明のヘアカラー剤組成物には、増粘剤、湿潤剤、油剤等を含むことができる。本発明においては、これら増粘剤等について、本発明の効果を逸脱しない限り、特に限定されず、公知のものを使用することができる。増粘剤としては、製品の安定性という観点から、例えばヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム、ポリエチレングリコール等を挙げることが出来る。また、前記増粘剤の量としては、特に限定されないが、製品の安定性向上という観点から、組成物の合計量に対して、好ましくは0.05~0.8質量%、より好ましくは0.1~0.5質量%、さらに好ましくは0.2~0.4質量%とすることができる。
【0031】
また、湿潤剤としては、グリセリン、ジグリセリン、1,3-ブチレングリコールを挙げることが出来る。また、前記湿潤剤の量としては、特に限定されないが、製品の塗布のしやすさという観点から、組成物の合計量に対して、好ましくは0.1~15質量%、より好ましくは0.5~10質量%、さらに好ましくは1~5質量%とすることができる。
【0032】
また、油剤としては、油脂、ロウ、炭化水素、アルキルグリセリルエーテル、エステル、シリコーン、高級アルコール等を挙げることができる。また、前記油剤の量としては、特に限定されないが、塗布放置時間の乾燥を防ぐとともに製品の安定性という観点から、好ましくは、1~30質量%、より好ましくは2~20質量%、さらに好ましくは3~15質量%とすることができる。
【0033】
また、本発明のヘアカラー剤は、本発明のヘアカラー剤組成物を含むことを特徴とする。所望により、又はヘアカラー剤の用途によって、ヘアカラー剤に適宜本発明のヘアカラー剤組成物を含めることができる。
【0034】
また、本発明のヘアカラー剤組成物の好ましい実施態様において、さらに、抗体産生抑制剤を含むことができる。抗体産生抑制剤としては、アレルギー疾患の予防や改善という観点から、ザクロ種子エキス、アガリクス属等に属するキノコ、ヤナギハッカ、エーデルワイス等抽出物を挙げることができる。
【0035】
例えば、抗体産生抑制剤として、ザクロ種子エキスを用いた場合を例に説明すれば以下の通りである。ザクロ種子エキスは、ザクロの種子由来のエキスである。本発明に適用するザクロ種子エキスは、ザクロの種子由来である限り、総てのザクロ種子エキスを対象とする。
【0036】
また、好ましい実施態様において、前記ザクロ種子エキスは、プニカ酸、又はエラグ酸を含むことを特徴とする。ザクロ種子エキスは、例えば、以下の方法により得ることができる。まず、ザクロ種子を粉砕して得た粉砕物を、エタノール、メタノール、水、ヘキサンからなる群から選択される少なくとも1種の溶媒に浸漬して、上清を分取して前記ザクロ種子エキスを得たことを特徴とする。例えば、振とう抽出させることができる。振とう抽出において、例えば、約4℃等の低温室にてローテーターにセットして回転させながら抽出することができる。
【0037】
より詳細には、まず、ザクロ種子を準備する。ザクロ種子は、必要に応じて洗浄し、乾燥する。乾燥は十分に行なうのが好ましい。後の粉砕を均質に行なうためである。
【0038】
次に、ザクロ種子を粉砕する。粉砕の方法は特に限定されず、ボールミル、ハンマーミル、ローラーミル、ロッドミル、サンプルミル、スタンプミル、ディスインテグレーター、乳鉢、冷却装置付きブレンダーなどの公知の粉砕機を用いることができる。なお、粉砕時における発熱により、ザクロ種子組成物の分解等が発生することも考えられることより、粉砕時間を数秒とし、十数回繰り返すことができる。
【0039】
次いで、ザクロ種子を粉砕し粉砕物を得た後、各種溶媒に前記粉砕物を浸漬する。この場合の溶媒は、特に限定されず、所望とする効果に対応して適宜溶媒を設定することができる。また、本発明のザクロ種子エキスの製造方法の好ましい実施態様において、溶媒が、エタノール、メタノール、ヘキサン、水からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする。溶媒としては、エタノール、メタノール、水、へキサン、酢酸エチル、クロロホルム、アセトンなどの極性、非極性溶媒を問わず挙げることができる。好ましくは、メタノール、エタノール、水等を挙げることができる。
【0040】
浸漬は、緩やかな攪拌下で行なうことができる。各種溶媒に前記粉砕物を浸漬して各種溶液を得る。各種溶液について、溶液の状態に応じて攪拌を行い、場合によりそのまま溶液を放置しても良い。攪拌する場合には、特に限定されないが、10時間~48時間、好ましくは、およそ1日(24時間)攪拌を持続させることができる。
【0041】
その後、上清を分取することによりザクロ種子エキスを得ることができる。必要に応じて、上清を蒸発乾固する。蒸発乾固は、エバポレーターを用いて、20℃~60℃、好ましくは、37℃~40℃の温浴上で行なうことができる。蒸発乾固することにより、ザクロ種子エキスを長期間保存することができる。
【0042】
ザクロ種子中に含まれる成分は、ザクロ種子を極性の異なる溶媒を用いて抽出することにより、その物性により振り分けられる。したがって、使用した溶媒により、ザクロ種子エキスの成分の種類及び含有量は異なる。
【0043】
なお、本発明において、ヘアカラー方法の一例を、以下に説明する。
【0044】
1)整髪剤や汚れの除去のため、適宜プレシャンプーを行う。
2)本発明に適用可能なヘアカラー剤(染毛成分含有)及び毛髪化粧料(塩基性キューティクル膨潤剤含有)を所定割合で混合したものを、刷毛によって毛髪に塗布する。
3)塗布した毛髪をラップで覆い、ヘアドライヤーやヒートキャップを用いて加温し、約30分置く。
4)3)の後、必要に応じて、キューティクルケア剤を毛髪に十分塗布し、約6分置く。
5)4)の後、適温の湯とシャンプー剤で洗髪する。
6)タオルドライ後、ヘアドライヤーで毛髪を乾かす。
【実施例
【0045】
以下では本発明の一実施例を説明するが、本発明は、下記の実施例に限定して解釈されるものではない。
【0046】
実施例1
アルカリ剤(pH調整剤)に関しては、弱アルカリ性で皮膚刺激が起きにくいという観点から、本実施例においては、炭酸水素アンモニウムを一例として、試験を行った。
【0047】
また、人の毛髪の約80%はアミノ酸由来のケラチンタンパク質により構成され、L-システインはその毛髪にも多く含まれるアミノ酸であり、L-システインおよびその塩類は毛髪の保湿および柔軟性を保たせる目的で配合を試みた。代表的な塩基性アミノ酸としてL-アルギニン、L-リシン、L-ヒスチジンがあるが、これらは損傷すると流出することが知られていて、塩基性アミノ酸およびその塩類を0.01~0.5質量%が好ましいことが判明した。
【0048】
表1は、本発明の一実施態様におけるヘアカラー剤組成物の成分例を示す。
【0049】
【表1】
【0050】
調整方法は以下の通りである。
【0051】
調整方法:
1.表1の水相を75~77℃まで撹拌しながら加温する。
2.表1の油相を75~79℃まで加熱しながら撹拌し、均一にする。
3.75~77℃までに加熱した水相に色素を加えて均一にし、前記油相を加えて乳化し、均一になるまで撹拌する。
4.内容物をゆっくりと冷却し、43℃以下になったら防腐剤および清涼成分、消炎成分、アミノ酸群を加えて均一になるまで撹拌し、32℃以下になるまで冷却する。
【0052】
なお、pH測定には以下の機種および電極を用いた。
pHメーターの機種:F-71((株)堀場製作所)
pHメーターの電極:形式9615((株)堀場製作所)
【0053】
また、表1において、「チオグリセリン」を「オキシメチレンスルホキシル酸Na」(製造元:東京化成工業(株)、配合量の0.5%)に変更した場合にも同様に試験を行った。
【0054】
このようにして、本発明のヘアカラ―剤を調整して、毛束に色落ち試験をおこなったところ、色落ちに極めて優れていることが判明した。
【0055】
従来、パラフェニレンジアミンを含まないヘアカラー剤を塗布し放置すると、ベースカラーは、酸化染料に比べて安全性が高いとされている塩基性染料およびHC染料であるが、毛髪に染着するために染毛後の色持ちが悪く、シャンプーを繰り返すことなどにより色落ちしやすいという欠点があった。従来のヘアカラー剤に対して、本発明のヘアカラー剤は、ベースカラーが浸透しやすくなるばかりではなく、酸性染料を含まないために頭皮への付着を気にせず新生部から毛先まで塗布できることが判明した。
【0056】
このように、本発明のヘアカラー剤等は、毛髪染料を行う上で、従来のヘアカラー及びヘアマニキュアと比較し、1)染色を繰り返すことで毛髪が傷んでいる方は毛髪強度が低下し、弾力が無くなり、毛髪が細化する(従来のヘアカラー)、2)頭皮のかぶれが発生しているとかぶれ部分が染色してかなり取れにくい(従来のヘアマニキュア)といった問題が無く、より色持ちと浸透染着力が良い毛髪化粧料を提供することが判明した。すなわち、本発明においては、色持ち以外に、安全性も備わっていることも判明した。
【0057】
実施例2
本発明に適用可能な主な塩基性染料の浸透を比較した。毛髪市販白髪100%未処理毛(品番:BS-C、ビューラックス社製)長さ30cmを3等分し、染毛する毛髪試料とした。Basic Red 51、Basic Brown 16及び17は色素を精製水に0.2%溶解し25%アンモニア水(和光純薬工業(株)製)を用いてpHをアルカリ性に寄せ、チオグリセリンとして3-メルカプト-1,2-プロパンジオール(和光純薬工業(株)製)の0%、1%、3%溶液を調整した。アルカリ性の最適値は、pH7.5~10.0付近であるが、色素によって違いがあり、pHを上げ過ぎると溶液内で沈殿を生じてしまう色素もある。またBasic Blue 75、77、 99、 Basic Violet 2、Basic Yellow 57は染料の溶解性を上げるためにアミドベタイン型両面活性剤のヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン液(品番:ソフタゾリンCPB-R,川研ファインケミカル(株)製)5.0%に染料を0.7%溶解し精製水を加え25%アンモニア水(和光純薬工業(株)製)を用いてpHをアルカリ性に寄せ、3-メルカプト-1,2-プロパンジオールの0%、1%、3%溶液を調整した。1本の白髪を3等分した毛髪試料を各染料の3-メルカプト-1,2-プロパンジオールの0%、1%、3%溶液に浸し、40℃恒温槽を用いて30分間放置して染色した。上記毛髪試料を、PVA樹脂を用いて凍結包埋した後、ミクロトームを用いて、毛髪断面試料(切片厚:10μm)を作製した。そして、顕微鏡観察用試料としてスライドガラス上に載せて顕微鏡で比較した(図1)。
【0058】
図1に示すように、毛髪試料への染料の浸透程度は、3-メルカプト-1,2-プロパンジオールは、3%の場合が、染料いずれにおいても最も深く(断面外周からの色が濃い範囲が最も大きい)ことがわかる。特には、Basic Brown 16とBasic Blue 77の染料の場合に、浸透良好であることがより明確であった。
【0059】
実施例3
実施例2で浸透の良好だったBasic Brown 16とBasic Blue 77の染料を用いて毛髪市販白髪100%未処理毛(品番:BS-C、ビューラックス社製)を以下処方例(表2)で40℃恒温槽を用いて30分間放置して黒褐色に染毛した。表2は、この時の成分例と処方例を示す。上記毛髪試料を、PVA樹脂を用いて凍結包埋した後、ミクロトームを用いて、毛髪断面試料(切片厚:10μm)を作製した。そして、顕微鏡観察用試料としてスライドガラス上に載せて顕微鏡で比較した(図2)。
【0060】
【表2】
【0061】
実施例4
毛髪市販白髪100%未処理毛(品番:BM-W-A,ビューラックス社製)重さ1g、長さ10cmを実施例1の処方を用いて染毛し、卓上型超音波洗浄器を用いて以下洗浄液で5分間毛束を洗浄した。洗浄液にはアミノ酸系アニオン界面活性剤のN-ヤシ油脂肪酸アシル-L-グルタミン酸トリエタノールアミン液(品番:アミノサーファクトACMT-L、旭化成ファインケム(株)製)を使用した。表3は、洗浄液の成分を示す。
【0062】
【表3】
【0063】
【表4】
次に、毛髪洗浄回数による色落ちを数値化するために分光色彩計(日本電色工業株式会社製、装置名:SD6000)で測定した。各処方の洗浄回数の色彩(L*,a*,b*)を表4に示す。表4は、毛髪洗浄回数による色落ちに関する結果を示す。洗髪回数による色味違いについて明度(L*)等を用いて測定した。表4中、L*は明度で、明るい色と暗い色が数値化され、数値が小さければ小さいほど黒っぽいことになることを示す。a*は数値が大きくなればなるほど赤方向に進み、数値が小さければ緑方向に進むことを示す。また、b*は数値が大きければ黄方向に、数値が小さければ青方向に進むことを示す。
【0064】
したがって、チオグリセリンが0%の場合は、20回洗浄することによってL*、a*とb*の数値が大きくなっているので黒味が減って赤と黄が強くなっているので茶色に寄っているのが分かる。逆に3%の場合は、L*、a*、b*の数値がほとんど動いていないことから20回の洗浄でもほとんど変化がないことを示している。なお、L*の数値が0に近ければ近いほど黒っぽいという数値になる。これらの結果から、本発明によれば、明度の低下が少なく、洗髪による色落ちが極めて少ないことが分かる。
【0065】
実施例5
実施例2で浸透の良好だったBasic Brown 16とBasic Blue 77の染料を用いて毛髪市販白髪100%未処理毛(品番:BS-C、ビューラックス社製)を以下処方例(表5)で40℃恒温槽を用いて30分間放置して黒褐色に染毛した。表5は、この時の成分例と処方例を示す。上記毛髪試料を、PVA樹脂を用いて凍結包埋した後、ミクロトームを用いて、毛髪断面試料(切片厚:10μm)を作製した。そして、顕微鏡観察用試料としてスライドガラス上に載せて顕微鏡で比較した(図3)。図3は、Basic Brown16 0.2%とBasic Blue77 0.2%を混ぜて黒褐色にした場合の、3-メルカプト-1,2-プロパンジオールの0%、0.5%、1%、3%、4%、5%及び10%溶液中で処理した毛髪断面試料の光学顕微鏡による観察結果を示す図である。
【0066】
【表5】
【0067】
実施例6
実施例2で浸透の良好だったBasic Brown 16とBasic Blue 77の染料を用いて毛髪市販白髪100%未処理毛(品番:BS-C、ビューラックス社製)を以下処方例(表6)で40℃恒温槽を用いて30分間放置して黒褐色に染毛した。表6に成分例と処方例を示す。
【0068】
【表6】
上記毛髪試料を、PVA樹脂を用いて凍結包埋した後、ミクロトームを用いて、毛髪断面試料(切片厚:10μm)を作製した。そして、顕微鏡観察用試料としてスライドガラス上に載せて顕微鏡で比較した(図4)。図4は、Basic Brown16 0.2%とBasic Blue77 0.2%を混ぜて黒褐色にした場合の、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウムの0%、0.5%、1%、3%、5%、7%及び10%溶液中で処理した毛髪断面試料の光学顕微鏡による観察結果を示す図である。
【0069】
次に、実施例4と同様の洗浄液を準備して、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウムを用いて、同様に洗浄した場合に、毛髪洗浄回数による色落ちを数値化するために分光色彩計(日本電色工業株式会社製、装置名:SD6000)で測定した。各処方の洗浄回数の色彩(L*,a*,b*)を表7に示す。
【0070】
【表7】
表7は、毛髪洗浄回数による色落ちに関する結果を示す。洗髪回数による色味違いについて明度(L*)等を用いて測定した。表7中、L*は明度で、明るい色と暗い色が数値化され、数値が小さければ小さいほど黒っぽいことになることを示す。a*は数値が大きくなればなるほど赤方向に進み、数値が小さければ緑方向に進むことを示す。また、b*は数値が大きければ黄方向に、数値が小さければ青方向に進むことを示す。
【0071】
したがって、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウムを用いた場合、チオグリセリンのように染色力が上がるという効果は低いものの、配合しないときよりも配合した方が洗浄回数による色落ちが防げることが判明した。
【0072】
以上の結果から、チオグリセリン等を配合する場合に、pHを上げることや、加温をしなくても良好な堅牢特性を有する染毛が可能になることが分かった。また、チオグリセリン等を配合し、かつ加温とpHを上げることはより効果的となることも判明した。染料の塩基性青99と塩基性茶16の場合は、pH10付近までpHを上げていけばいくほど良好な堅牢特性を有する染毛が可能である一方、塩基性青77の場合はpH8以上に上げると色素が壊れて色彩が変わり弱い染毛になる傾向が判明した。
【0073】
以上のことから、毛髪等のカラーリングにおいて、チオグリセリン等を配合することで、毛髪に染料が入りやすくなることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明によると、毛髪を傷めにくく、皮膚障害を低減可能であるとともに、染料が毛髪に入りやすいカラーリング方法は、普及しやすく、産業上利用価値が高い。
図1
図2
図3
図4